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Ryzen 7 5800Xをベースに、3次元チップレット技術により大容量キャッシュメモリを搭載するAMD 3D V-Cache技術も採用した8コア16スレッドCPU「AMD Ryzen 7 5800X3D(型番:100-100000651WOF)」をレビューします。
製品公式ページ:https://www.amd.com/ja/products/cpu/amd-ryzen-7-5800x3d
AMD Ryzen 7 5800X3D レビュー目次
1.AMD Ryzen 7 5800X3Dの外観・付属品・概要
2.AMD Ryzen 7 5800X3Dの検証機材・動作設定
3.AMD Ryzen 7 5800X3Dの動作クロック・消費電力・温度
4.AMD Ryzen 7 5800X3Dの基礎ベンチマーク
5.AMD Ryzen 7 5800X3Dのクリエイティブ性能
・3Dレンダリング性能
・動画編集・エンコード性能
・RAW現像・写真リタッチ性能
・PCゲーム/スマホアプリのビルド性能
・AIアップスケール・自動分類性能
6.AMD Ryzen 7 5800X3Dのゲーミング性能
・4K解像度/60FPSターゲット
・フルHD解像度/ハイフレームレート
7.CPUエンコーダとリアルタイム配信について
8.AMD Ryzen 7 5800X3Dのレビューまとめ
・温度・消費電力について
・クリエイティブ性能について
・ゲーム性能について
・総評
AMD Ryzen 7 5800X3Dの外観・付属品・概要
「AMD Ryzen 7 5800X3D」の外観や付属品について簡単にチェックしておきます。またこの章では「AMD Ryzen 7 5800X3D」の仕様等について簡単に触れておきたい概要もあれば紹介します。「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めてRyzen 5000シリーズは初代から一貫してAM4ソケットに対応するCPUなので、CPUの形状には変化はありません。裏面のCPUソケット側はLGAタイプのCPUソケットを採用するIntel製CPUと違って剣山状の金属端子が生えています。
AMD公式に発表されている基本スペックを確認すると、
AMD Ryzen 5000シリーズのアッパーミドルモデル「AMD Ryzen 7 5800X3D」は、先行して発売された標準モデルRyzen 7 5800Xと同じく、8コア16スレッドのCPUです。
「AMD Ryzen 7 5800X3D」はベースクロック3.4GHz/単コア最大ブーストクロック4.5GHzでTDPは105Wです。コアスレッド数やTDPは5800Xと共通ですが、ベース/ブーストクロックは若干引き下がっています。
「AMD Ryzen 7 5800X3D」は既存のRyzen 7 5800Xをベースに設計されており、CPUコアと同じダイ上に(2次元実装で)、32MBのL3キャッシュを搭載しているのは共通ですが、さらにCPUダイ上に垂直にキャッシュメモリを積層するAMD 3D V-Cach技術によって追加で64MBのキャッシュメモリを搭載しています。
「Ryzen 7 5800X3D」は5800Xの32MBから3倍に増加した96MBのキャッシュメモリによって、同社が過去に最速ゲーミングCPUとしてアピールしたRyzen 9 5900Xを上回るゲーミング性能を実現します。
またAMD公式のベンチマークによると、競合Intelの最新CPUであるCore i9 12900Kを上回るゲーム性能を発揮するとのこと。
AMD Ryzen CPUというと全モデルがオーバークロック可能な倍率アンロックで、さらにRyzen 5000シリーズはV-Fカーブによる低電圧化でシングルスレッド性能も向上するPrecision Boost Overdrive 2に対応していることが特徴の1つでした。
しかしながら、「AMD Ryzen 7 5800X3D」はメモリ周波数(IF周波数)のOCには対応しているものの、CPUコア関連のオーバークロック機能には完全に非対応であり、PBOによるPPT/EDC/TDCといった電力制限関連の調整もできません。
Ryzen CPUは、『Infinity FabricというCPU内外のコンポーネントを相互接続するインターコネクトの動作周波数がメモリ周波数に同期する』という構造上、メモリ周波数がエンコードや3Dゲームを含めた総合的なパフォーマンスに大きく影響することが知られています。
Ryzen CPUでハイパフォーマンスな環境を構築する上ではメモリ周波数3200MHzでの安定動作が1つの指標になっています。
第1世代Ryzenではメモリ相性問題が話題に上ることも多く、発売初期には定格の2666MHzも難しいケースがしばしば見受けられましたが、第2世代Ryzen以降はメモリ互換性も大きく向上し、Ryzen 3000以降になるとXMP3200MHzに対応していればメモリ周波数3200MHzの安定動作も難しくないくらいに互換性が改善されていました。
Ryzen 3000シリーズではメモリ周波数3600MHz、メモリタイミングCL16が性能とコストのスイートスポットになるとAMD公式から発表されており、今回レビューする「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めRyzen 5000シリーズでも依然としてコスパのスイートスポットです。
一方でRyzen 5000シリーズのIFはOC耐性が向上しており、特性の良い個体であればメモリ周波数4000MHzにおいて、メモリ周波数とIF周波数の1:1同期が可能になっています。
Ryzen CPUでオススメなDDR4メモリやメモリの基礎知識等についてはこちらの記事で詳しく解説しているので気になる人は参照してみてください。
AMD Ryzen 7 5800X3Dの検証機材・動作設定
以下、「AMD Ryzen 7 5800X3D」の各種検証を行うベンチ機、および比較対象となる各CPUのベンチ機の詳細となります。AMD AM4(X570)環境 テストベンチ機の構成 | |
CPU | 【Ryzen 5000シリーズCPU】 AMD Ryzen 9 5950X (レビュー) AMD Ryzen 9 5900X (レビュー) AMD Ryzen 7 5800X3D (レビュー) AMD Ryzen 7 5800X (レビュー) AMD Ryzen 5 5600X (レビュー) |
マザーボード | ASUS ROG Crosshair VIII Dark Hero (レビュー) |
CPUクーラー | Corsair H150i PRO RGB (レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM x3 (レビュー) |
CPUクーラー (温度制限検証時) |
AMD Wraith Prism (レビュー) |
メインメモリ DDR4 |
G.Skill Trident Z Neo F4-3600C16Q-64GTZN DDR4 16GB×2=32GB (レビュー) 3600MHz, CL16-16-16-36 |
ビデオカード(共通) | ZOTAC RTX 3090 AMP Extreme Holo (レビュー) |
システムストレージ(共通) | Samsung SSD 980 PRO 500GB (レビュー) |
OS(共通) | Windows 11 Home 64bit |
電源ユニット(共通) | Corsair HX1200i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
比較に使用しているその他のテストシステムについてはこちらを参照してください。
AMD AM4(X570)環境では検証機材マザーボードとして「ASUS ROG Crosshair VIII Dark Hero」を使用しています。
ASUS ROG Crosshair VIII Dark HeroでCPU動作設定を標準設定のAutoとした場合、各CPUは仕様通りの定格動作で問題なく動作するので、測定に当たってソフトウェア的には特に個別の設定は行っていません。
ただしAMD Ryzen CPUではCPUクーラーの冷却性能が十分であれば電力制限を解除して自動的に動作クロックを引き上げる機能「XFR (Extended Frequency Range)」が効くため、電力制限の閾値となるPPTが仕様値のTDPよりも高く設定されています。例えばRyzen 9 3900XではTDP105Wを上回って仕様上の上限値となるPPT 142W以下で動作します。
Ryzen CPUの仕様値TDPと標準PPT | |||
仕様値TDP | 標準PPT | ||
Ryzen 5000 |
Ryzen 9 5950X | 105W | 142W |
Ryzen 9 5900X | 105W | 142W | |
Ryzen 7 5800X(3D) | 105W | 142W | |
Ryzen 5 5600X | 65W | 76W | |
Ryzen 3000 |
Ryzen 9 3950X | 105W | 142W |
Ryzen 9 3900X(T) | 105W | 142W | |
Ryzen 7 3800X(T) | 105W | 142W | |
Ryzen 7 3700X |
65W | 88W | |
Ryzen 5 3600X(T) | 95W | 128W | |
Ryzen 5 3600, 3500X |
65W | 88W | |
Ryzen 3 3300X | 65W | 88W |
AMD製CPUにおいてCPU Package Power(CPU消費電力)がTDPを上回るPPTの範囲内で制限されるという動作が、Intel製CPUのPL1/PL2とどのように異なり、またCPU比較において影響を与えるかについてはこちらの記事で解説しているので参考にしてください。
ディスクリートGPU、グラフィックボードがゲーミング性能において重要なのは言うまでもありませんが、近年ではクリエイティブタスクでもGPU支援による性能向上が主流になっているので、CPU性能比較の統一検証機材として、2022年最新のウルトラハイエンドGPUを搭載したグラフィックボード「ZOTAC GAMING GeForce RTX 3090 AMP Extreme Holo」を使用しています。
ZOTAC GAMING GeForce RTX 3090 AMP Extreme Holoは、NVIDIA GeForce RTX 30のAIBパートナーの中でも屈指のOCチューニング力を誇るZOTACによって良質なGPUコアが選別され、リファレンスよりも大幅に高いブーストクロック、さらにTGPを400W超に引き上げるという、RTX 3090グラフィックボードで最速を狙えるファクトリーOCが施されています。
加えて、ZOTACを高品質メーカーとして一躍ブランド力を押し上げたAMP Extremeシリーズの代名詞とも言える3スロットを占有する超弩級な大型GPUクーラーが採用されています。
・「ZOTAC GAMING GeForce RTX 3090 AMP Extreme Holo」をレビュー
ベンチ機のシステムストレージには「Samsung SSD 980 PRO 500GB」を使用しています。
Samsung SSD 980 PROは、PCIE4.0対応によって連続アクセススピードを最大で2倍に飛躍させただけでなく、ランダム性能の向上によってSSD実用性能においても前世代970 PROから大幅な向上を果たし、PCIE4.0アーリーアダプターなPhison PS5016-E16採用リファレンスSSDよりも高速なので、これからPCIE4.0対応プラットフォームの自作PCを組むなら、システム/データ用ストレージとして非常にオススメな製品です。
・「Samsung SSD 980 PRO 1TB」をレビュー。堂々の最速更新
システムメモリの検証機材のうちDDR4メモリに対応するシステムでは、高級感のあるヒートシンクや8分割ARGB LEDを搭載してデザイン面でも優れ、16GB×4枚組み64GBの大容量で3600MHz/CL16という高性能PCで定番スペックのメモリOCに対応した「G.Skill Trident Z Neo F4-3600C16Q-64GTZN」を使用しています。
G.Skill Trident Z Neoシリーズは当初Ryzen向けにリリースされた製品ですが、2枚組み16GB容量から最大256GBまで、メモリOCについても3200MHz/CL14や3600MHz/CL16といった定番スペックがラインナップされていて、最新のAMD環境だけでなく、最新のIntel環境でも高いパフォーマンスを発揮できるので、選んで間違いのないオススメなOCメモリです。
・「G.Skill Trident Z Neo F4-3600C16Q-64GTZN」をレビュー
360サイズや240サイズなど120mmファンを複数搭載できるマルチファンラジエーターの簡易水冷CPUクーラーを使用するのであれば、「Noctua NF-A12x25 PWM」への換装もおすすめです。
「Noctua NF-A12x25 PWM」は、超硬質かつ軽量な新素材「Sterrox LCP」の採用によってフレーム-ブレード間0.5mmの限界を実現させた次世代汎用120mm口径ファンとなっており、1基あたり3500円ほどと高価ですが、標準ファンよりも静音性と冷却性能を向上させることができます。
・「Noctua NF-A12x25 PWM」を360サイズ簡易水冷に組み込む
CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。Thermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスで適量が塗布されていれば、CPUクーラー固定時の圧着でヒートスプレッダ全体へ自然に伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
サーマルグリスの代用品として、数年スパンの長期使用においても性能低下が基本的になく再利用も可能、グリスが零れてマザーボードが汚れたり壊れる心配もないので、炭素繊維サーマルシート「Thermal Grizzly Carbonaut」もオススメです。
AMD Ryzen 7 5800X3Dの動作クロック・消費電力・温度
「AMD Ryzen 7 5800X3D」に関する検証のはじめに、「AMD Ryzen 7 5800X3D」の動作クロック、消費電力、温度など同CPUの基本的な動作についてチェックしていきます。「AMD Ryzen 7 5800X3D」は8コア16スレッドのCPUで、AMD公式の仕様ではベースクロック3.4GHz、単コア最大ブーストクロック4.5GHzとなっています。
参考までに、「AMD Ryzen 7 5800X3D」のコアtoコア遅延は次のようになっています。
「AMD Ryzen 7 5800X3D」は上位モデルRyzen 9とは異なり1つのCCDだけで構成されているので、コアtoコア遅延は全て20ns以下に収まります。
Ryzen 5000シリーズCPUが採用するZen 3アーキテクチャ、CCXが単一8コアCPUのUnified 8-Core Complexという最大の特長の通りです。
「AMD Ryzen 7 5800X3D」のほうが若干、遅延が大きいですが遅延の傾向は標準モデルのRyzen 7 5800Xとほぼ同じです。
ちなみに前世代Ryzen 3000シリーズの8コアモデル、Ryzen 7 3800XTはCCXがIF接続の4コア×2構成なので、CCD 1つだけの構成であっても4コアを跨ぐアクセスは80ns以下になっています。
あとIFを跨がないアクセスの遅延について、Ryzen 7 3800XTは30ns前後ですが、「AMD Ryzen 7 5800X3D」は20ns以下に高速化しています。
HWiNFOから「AMD Ryzen 7 5800X3D」のコアクロックの挙動を確認したところ、負荷の軽い場面では仕様値の最大4.50GHzを上回る4.55GHz程度で動作するコアがありました。
また全コア最大動作倍率は特にゲーム性能で重要になりますが、今回レビューしている「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めAMD Ryzen 5000シリーズCPUについてはIntel製CPUと異なり、電力制限内で動作可能な全コア最大動作倍率は公表されていません。
実動で確認してみたところ、「AMD Ryzen 7 5800X3D」はゲームのような負荷の軽いシーンであれば全コア4.4~4.5GHz前後で動作可能でした。
「AMD Ryzen 7 5800X3D」をX570マザーボード ASUS ROG Crosshair VIII Dark Heroと組み合わせてCPU動作をBIOS標準設定とし、Cinebenchやx264動画エンコードを実行したところ、いずれのケースにおいても全8コアへ同時に大きな負荷がかかった時の動作クロックは平均4.2GHz程度でした。
PPT/EDC/TDCがボトルネックになっているわけではありませんが、高負荷時の全コア最大動作倍率はゲームのような軽い負荷の時よりも若干下がるようです。タスクによって変動はありますが動画エンコードの場合、CPU Package Powerは概ね110W前後で推移しています。
「AMD Ryzen 7 5800X3D」のAMD公称仕様値としてはTDP105WのCPUですが、実際の内部設定としてはPPT142Wが許容されています。
「AMD Ryzen 7 5800X3D」はCPUクーラーによるCPUの冷却が十分であれば(CPU温度が閾値95度以下であれば)、PPT142Wの制限下で動作しXFRによって仕様値ベースクロックよりも高い動作クロックへ引き上げられます。
続いてCPU消費電力やCPU温度の検証結果をチェックしていきます。
当サイトのCPUレビューでは主として”CPU温度への影響要因”という意味においてCPU消費電力を評価しているので、動画のエンコードによって長期間電力制限が効いている状態の平均的な消費電力をCPU消費電力として比較します。
個人的な意見としては短期間電力制限は短期間かつCPU温度によっても制御されるのでCPU温度への影響要因として比重は小さく、また瞬間ピーク電力はせいぜいがTDP+100W程度なので、マザーボードVRM電源の破損を心配するほどではなく、その程度の電力超過は電源ユニットで十分吸収できるので、評価対象としてあまり意味がないと思っています。
またCPU製品仕様のTDPについては、定義がIntel/AMDで厳密には異なり、各社の具体的な測定・算出方法も不明なので、CPU動作クロックを含めて総合的に判断する必要があるものの、基本的には長期間電力制限時の消費電力がTDP仕様値とほぼ一致、もしくはTDP仕様値を下回れば正常であると評価します。
当レビュー記事では簡単のため割愛しますが、CPUの消費電力に関する評価基準の補足として下記の記事も参考にしてください。
CPUの消費電力測定には、当サイトの検証に使用するためワンオフで特注した測定ツール「CPU Power Tester」を使用しています。
CPU Power TesterはEPS電源端子、ATX24PIN電源、PCIEスロット経由の各消費電力を直接測定できるツールです。5分間程度の負荷に対して、1ms間隔でモニタリングを行い、平均値を”消費電力”、最大値を”瞬間的な最大電源負荷”とします。
消費電力の測定にあたってCPU負荷には、FF14ベンチマークの動画(再生時間6分40秒、4K解像度、60FPS、容量5.7GB)を変換ソースとして、HandBrakeによるx264動画エンコードを使用しています。
メニーコアになるほど単独のエンコードではCPUが遊ぶので、CPU使用率が100%前後に張り付くように、動画エンコードの同時実行数については4~6コアは並列なし、8~14コアは2並列、16コア以上は3並列のように適宜調整しています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTやPrimeなど専用負荷ソフトを使用しているレビューもありますが、管理人の私見としてはCPU負荷が非現実的なので、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースを想定した場合、ほぼ最大のCPU負荷となるx264による動画エンコードとストレステストに採用しています。
定格仕様や検証用設定で指定する電力制限を適用した状態で動画エンコードによるフル負荷をかけると、「AMD Ryzen 7 5800X3D」など各CPUについてCPU Package Powerは次のようになりました。 【全CPU比較データ】
CPU Package PowerはIntelのPL1/PL2、AMDのPPTといったパラメーターによる電力制限の制御ソースとなる数値です。メーカー純正ソフトウェアのIntel Extreme Tuning Utility (XTU)やAMD Ryzen Master、サードパーティー製ソフトHWiNFOなどでソフトウェアモニタリングが可能です。
続いてCPU Power Testerを使用して実際の消費電力をチェックしていきますが、注意点として、マザーボード独自のコア電圧調整によってCPU消費電力は変化します。Intel/AMDともに現状ではCPU動作のリファレンスになるようなマザーボードがないので、あくまで今回のレビューに使用している検証機材マザーボードを組み合わせた場合の数値となります。
また組み合わせるマザーボードによってはCPU Package Powerにマイナスオフセットをかけて事実上の電力制限解除が行われる場合があります。管理人の判断で定格っぽい動作のものを選んでいますが、こういった事情も念頭に置いて検証結果をご確認ください。
定格仕様や検証用設定で指定する電力制限を適用した状態で動画エンコードによるフル負荷をかけると、「AMD Ryzen 7 5800X3D」など各CPUについてEPS 8PIN電源の消費電力は次のようになりました。 【全CPU比較データ】
定格仕様や検証用設定で指定する電力制限を適用した状態で動画エンコードによるフル負荷をかけると、「AMD Ryzen 7 5800X3D」など各CPUについてEPS 8PIN電源&ATX 24PIN電源の消費電力は次のようになりました。 【全CPU比較データ】
Cinebench R23とEPS消費電力の関係、ワットパフォーマンスを確認してみると、「AMD Ryzen 7 5800X3D」の電力効率は標準モデルのRyzen 7 5800Xとほぼ同等です。
一方でIntel製CPUと比較すると(5800X3Dは電力調整ができないので同じ消費電力で比較)、Ryzen 5000初期ラインナップと同時期のIntel Core i9 11900K/10900Kは上回っているものの、「AMD Ryzen 7 5800X3D」の登場時には発売されていた最新CPUのCore i9 12900KやCore i7 12700Kには単純な性能でも電力効率でも及びません。
また下のグラフは電力制限を調整した時のCPU Package Powerに対するマルチスレッド性能の比率です。
Cinebench R23 マルチスレッドスコアから各CPUの定格設定を基準に、電力制限解除で定格の全コア最大動作倍率に張り付いた状態を上限として性能比率を算出しています。
加えて3つの縦線は、Tom Clancy's Rainbow Six Extraction (フルHD/360FPS)、Cyberpunk 2077 (4K/60FPS)、Marvel’s Spider-Man Remastered (4K DLSS&RayTracing)のPCゲームをプレイした時のCPU Package Powerの平均値です。
ゲームシーンで理想的な性能を発揮できるように、電力制限を解除してコアクロックが全コア最大動作倍率に張り付くために必要なCPU Package Powerを見ています。
「AMD Ryzen 7 5800X3D」は電力制限を調整できないのですが、ゲームシーンにおける消費電力の参考として一応グラフを作成しました。
Cinebenchや動画エンコードなどCPUにフル負荷がかかるタスクで発生するCPU消費電力は110W前後に対して、PCゲームプレイ中に「AMD Ryzen 7 5800X3D」のコアクロックが全コア最大動作倍率に張り付くのに必要な電力制限の下限は60~80W程度です。
この章の最後に、「AMD Ryzen 7 5800X3D」を空冷CPUクーラーやAIO水冷CPUクーラーで運用する時のCPU温度についてです。
「AMD Ryzen 7 5800X3D」に動画エンコード等でフル負荷がかかった時の消費電力は110W程度です。
標準モデルRyzen 7 5800XとPPT/EDC/TDCといった電力制限のパラメーターは同じですが、CPUにフル負荷がかかった時の全コア最大動作倍率が低めに設定されていて、そちらが先にボトルネックになるため消費電力は控えめになっています。
Ryzen 7 5800Xは1つのCPUダイだけで140Wの発熱が生じていたので、定格のまま運用すると上位モデルRyzen 9よりもCPU温度が高く、冷やしにくい傾向でしたが、「AMD Ryzen 7 5800X3D」は120サイズの空冷CPUクーラーやAIO水冷クーラーでも問題なく運用できます。
「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めRyzen CPU各種のCPU温度については、”冷えた方が性能が上がる”という点を除けば、運用上、ユーザーが気にする必要はありません。
Ryzen CPUでは、数百個のセンサーによってモニタリングしたデータをRyzen独自のインターコネクタ Infinity Fabricを介してフィードバックし、Pure PowerやPrecision Boostでパフォーマンス向上を図る、というループ制御をリアルタイムで行っています。
Pure Powerはパフォーマンスを維持しつつ消費電力を最小限に抑える機能です。一方でPrecision BoostはPure Powerと相互連携して動作しており、同じ電力内で最大のパフォーマンスを発揮できるように、25MHz単位でCPU動作クロックを上下させる機能になっています。
・「Precision Boost Overdrive」を徹底解説
このような電力制御によって一定のCPU温度を閾値としてCPUクーラーの性能に応じたCPU消費電力に漸近し、その範囲内で最大のパフォーマンスを発揮してくれるのがRyzen CPUです。(下のグラフはRyzen 5 3600と付属CPUクーラーの例)
高冷却性能なCPUクーラーへアップグレードした分だけパフォーマンスは伸びますが、一部モデルに付属するCPUクーラーや120サイズの小型CPUクーラーでもRyzen CPUの独自機能がCPU温度やCPU消費電力を適切に調整してくれます。
AMD Ryzen 7 5800X3Dの基礎ベンチマーク
AMD Ryzen 7 5800X3Dの基本的なCPU性能を専用ベンチマークソフトで検証しました。この章ではULMarkからリリースされているPCMark 10という総合ベンチマークソフトを使用していますが、デスクトップ向けの高性能CPUの性能比較ベンチマークとしては頭打ちな傾向があります。レビュー項目の1つとして参考までにスコア比較していますが、より実用的なCPU性能については後半の個別性能比較を参考にしてください。
「PCMark 10 Extended」のベンチマーク結果をチェックしていきます。
「PCMark 10」は動画再生能力、DirectX11のグラフィック性能、Webブラウジング、ビデオチャットなど一般ユースにおけるPCの総合的な性能を測定するためのベンチマークソフトです。
「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各CPU環境について、PCMark 10ベンチマークの総合スコアを比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
「PCMark 10 Extended」にはPCの基本性能を測る「Essentials」、ビジネスアプリケーション性能を測る「Productivity」、クリエイティブ性能を測る Digital Content Creation」、ゲーム性能を測る「Gaming」の大きく分けて4つのテストグループがあるので、個別にベンチマークスコアを比較してみました。
PCの基本性能を測る「Essentials」は、アプリケーションの起動に要する時間を測る「App Start-up」、 ウェブブラウジングの性能を測る「Web Browsing」、1対1または多対多のビデオ会議をシミュレートする「Video Conferencing」の3つのワークロードで構成されています。
モバイル版向けCPUのCore i7 1165G7を搭載するSurface Pro 7+との比較でわかりますが、一般的なPC利用において大半のデスクトップ向けCPUは十分な性能を備えています。
「Essentials」について「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
ビジネスアプリケーション性能を測る「Productivity」は、ワープロソフト(マイクロソフトWordなど)の処理性能をシミュレートする「Writing」、表計算ソフト(マイクロソフトExcelなど)の処理性能をシミュレートする「Spreadsheets」の2つのワークロードで構成されています。
モバイル版向けCPUのCore i7 1165G7を搭載するSurface Pro 7+との比較でわかりますが、一般的なオフィスワークにおいて大半のデスクトップ向けCPUは十分な性能を備えています。
「Productivity」について「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
クリエイティブ性能を測る「Digital Content Creation」は、写真に対するフィルタリング処理の性能をシミュレートする「Photo Editing」、動画編集の性能をシミュレートするワークロード「Video Editing」、レイトレーシングによる3Dグラフィクス制作(3Dレンダリング)をシミュレーションする「Rendering and Visualization」の3つのワークロードで構成されています。
「Digital Content Creation」について「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
ゲーム性能を測る「Gaming」は、グラフィックボードの性能測定で幅広く活用されているベンチマークソフト「3DMark」に収録された「Fire Strike」と同じベンチマークテストを実行するワークロードです。
「Gaming」について「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
AMD Ryzen 7 5800X3Dのクリエイティブ性能
AMD Ryzen 7 5800X3Dについて3Dレンダリング、動画編集・エンコード、RAW現像・写真リタッチ、PCゲーム/スマホアプリのビルド、AI機能による超解像・写真分類などクリエイティブ作業に関する性能を各種ベンチマークソフトや実際のアプリケーションで検証しました。AMD Ryzen 7 5800X3Dの3Dレンダリング性能
まずは「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUの3Dレンダリング性能を比較していきます。CPUのマルチスレッド性能を比較するベンチマークソフトとして国内外で最も知られているCinebenchの2021年リリース最新バージョン「Cinebench R23」、オープンソース3DCGソフト「Blender」の公式ベンチマークソフト、3Dレンダラー「V-Ray」の公式ベンチマークソフトの4種類を使用してベンチマーク測定を行いました。
Cinebench R23は3Dレンダリング性能を測定するベンチマークソフトになっており、マルチスレッド性能を測定するテストとシングルスレッド性能を測定するテストの2種類を実行しています。
Cinebench R23 マルチスレッド性能テストについて「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Cinebench R23 シングルスレッド性能テストについて「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
3DCGソフト「Blender」の公式ベンチマークソフト(ver3.2.1)について「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Blender Benchmark 3.0ではmonster/junkshop/classroomの3つのレンダリングが実行され、それぞれ分間サンプル数がベンチマークスコアとして表示されます。Core i5 10400を基準にして(全CPU比較データではCore i5 12400Fが基準)、3つのスコアについて性能比率を算出し、その平均値をグラフ化しています。
3Dレンダラー「V-Ray」の公式ベンチマークソフト(ver5.2.0)について「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
V-Rayのベンチマークソフトのレンダリングサンプル数が結果として表示されますが、性能差が直感的にわかりにくいので、Core i5 10400を基準にして(全CPU比較データではCore i5 12400Fが基準)、各種CPUのレンダリング速度を性能比としてグラフ化しています、
AMD Ryzen 7 5800X3Dの動画エンコード・動画編集性能
続いて「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUの動画編集や動画エンコードの性能を比較していきます。検証には、無料で利用できる動画編集ソフトとして国内外で多数のユーザーがいる「Aviutl」、大量の動画ファイルを一括エンコードする時に便利なフリーソフト「HandBrake」を使用しています。
またアマチュアからプロまで動画編集ソフトとして幅広く使用されている「Adobe Premiere Pro」の実用性能を検証するベンチマークとしてULMarkのUL Procyon Video Editing Benchmarkも測定しています。
まずは単純に動画ファイルをそのまま圧縮するエンコード作業の性能比較として、HandBrakeを使用したエンコード性能をチェックします。
HandBrakeは、現在主流なH.264 (MPEG-4 AVC) ビデオストリームへエンコードを行う「x264」エンコーダ、そしてH.264より高圧縮・高画質で次世代規格として期待されているH.265(HEVC) ビデオストリームへエンコードを行う「x265」エンコーダが使用できるので、CPUをリソースとして各エンコーダで共通の動画ファイルのエンコードを行いました。
エンコードを行う動画ファイルについては、Tom Clancy's Ghost Recon Wildlandsのゲーム内ベンチマーク(60秒ほど)をNVIDIA ShadowPlayで録画したものを使用しています。1920×1080/60FPS/50Mbpsと3840×2160/60FPS/120Mbpsの2種類の動画ファイルを作成し、それぞれ解像度はそのままにCRF値指定でエンコードを行っています。
比較グラフのx2/x3/x4のバーについては同じエンコードを添え字の数だけ並列実行した時の合計変換フレームレートを示しています。
ソースファイルやエンコード設定にも依りますが、フルHD解像度では8コア16スレッド程度、4K解像度では16コア32スレッド程度でマルチスレッド分散がボトルネックになり始め、単独エンコードではCPUが遊び始めます。
20コアオーバーのウルトラメニーコアCPUでマルチスレッド性能をフルに活用しようと思うと、8K解像度のような超高解像度のエンコード、もしくは複数並列エンコードを行う必要があるので注意してください。
x264エンコーダによって1920×1080解像度の動画をH.264 (MPEG-4 AVC)の1920×1080解像度へエンコードした時のエンコード速度について、「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
x264エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.264 (MPEG-4 AVC)の3840×2160解像度へエンコードした時のエンコード速度について、「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
x265エンコーダによって1920×1080解像度の動画をH.265(HEVC)の1920×1080解像度へエンコードした時のエンコード速度について、「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
x265エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.265(HEVC)の3840×2160解像度へエンコードした時のエンコード速度について、「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
続いてAviutlで編集した動画プロジェクトのエンコード速度について、「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUの性能を比較していきます
編集プロジェクト自体は単純で、4K解像度とフルHD解像度(4K解像度に拡大)の2つの動画ファイルを使用し、それぞれの動画を左右にフェードイン/アウト、後は画面上にテキストをオーバーレイさせているだけです。YouTubeにアップしている下の動画が完成物となっており、冒頭1分間部分のエンコード速度を測定しています。
Aviutlで作成した3840×2160解像度の4K動画プロジェクトをH.264 (MPEG-4 AVC)の3840×2160解像度へエンコードした時のエンコード速度について、「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
動画編集ソフトにも依りますが、Aviutlの場合、動画開始直後のように単独の4K映像に文字をオーバーレイするだけでもエンコード出力のCPU使用効率が下がります。
カット編集だけならAviutlもHandBrakeも大差ありませんが、編集したプロジェクト1つをエンコード出力した場合、上で見たHandBrakeによる単純エンコードと比較してマルチスレッド性能に比例したスケーリングは鈍り、シングルスレッド性能で差が出る傾向が強まります。
続いてAdobe Premiere Proの実用性能を検証するベンチマークソフト、UL Procyon Video Editing Benchmarkのベンチマーク結果から、「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUの動画編集性能を比較していきます
UL Procyon Video Editing BenchmarkにはフルHD解像度と4K解像度の2種類のプロジェクトがあり、それぞれにおいてCPUのみを使用するテストとGPU支援を有効にするテストを行い、トータルのベンチマークスコアを算出しています。
Adobe Premiere Proの実用性能を検証するベンチマークソフト、UL Procyon Video Editing Benchmarkについて、「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ:Total Score / FHD(CPU) / FHD(CPU&GPU) / 4K(CPU) / 4K(CPU&GPU)】
この章の最後に、映画/ポストプロダクション/放送業界に向けて世界最高品質の製品を開発しているBlackmagic Design社製の動画編集ソフト DaVinci Resolveの実用性能について、Puget Systemsから配布されているベンチマークソフト PugetBench for DaVinci Resolveを使用して、「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUの動画編集性能を比較していきます。
DaVinci Resolveは有償版のDaVinci Resolve Studio(ver17.4.6)を使用し、PugetBench for DaVinci ResolveのExtended Testを実行しています。
PugetBench for DaVinci Resolve Extended Testには4K Media、8K Media、GPU Effect、Fusionの4つのテストが実行され、それぞれのサブスコアからトータルのベンチマークスコアが算出されます。
DaVinci Resolveの実用性能を検証するベンチマークソフト PugetBench for DaVinci Resolveについて、「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ:Total Score / 4K Media / 8K Media / GPU Effect / Fusion】
AMD Ryzen 7 5800X3DのRAW現像・写真リタッチ性能
続いて「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUのRAW現像や写真リタッチの性能を比較していきます。検証には、強力なノイズ除去機能PRIMEや最新版DeepPRIMEで評判の写真編集ソフトDxO PhotoLab 5によるRAW現像に加えて、アマチュアからプロまで動画編集ソフトとして幅広く使用されている「Adobe Lightroom Classic」と「Adobe Photoshop」の実用性能を検証するベンチマークとしてULMarkのUL Procyon Photo Editing Benchmarkも測定しています。
まずはDxO PhotoLab 5によるRAW現像について、「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUの性能を比較していきます
ミラーレス一眼カメラSONY α1で撮影した8640×5760解像度のRAW画像ファイル 100枚に対して、DxO PhotoLab 5の画質プリセット「DxO 標準」をベースにノイズ除去をPRIMEに変更したプリセットを適用し、RAW現像を行いました。
なおDxO PhotoLab 5によるRAW現像は並列処理数を設定できますが、CPUコア数の半分前後の並列処理で最速になるようです。
DxO PhotoLab 5によるRAW現像速度について、「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
続いてAdobe Lightroom ClassicとAdobe Photoshopの実用性能を検証するベンチマークソフト、UL Procyon Photo Editing Benchmarkのベンチマーク結果から、「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUのRAW現像と写真リタッチの性能を比較していきます
UL Procyon Photo Editing BenchmarkにはAdobe Lightroom Classicを使用したバッチ処理テスト(Batch Processing test)に加えて、Adobe Lightroom Classicで簡易処理を施した写真セットをAdobe Photoshopで編集するテスト(Image Retouching test)の2種類を行い、トータルスコアが算出されます。
Adobe Lightroom ClassicとAdobe Photoshopの実用性能を検証するベンチマークソフト、UL Procyon Photo Editing Benchmarkについて、「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ:Total Score / Retouch / Batch】
AMD Ryzen 7 5800X3DのPCゲーム/スマホアプリのビルド性能
最後に「Unreal Engine 4/5」や「Unity」などフリーウェアながら高画質なPCゲームやスマホゲームを製作可能なゲームエンジンを使用したゲーム制作におけるCPU性能の検証として、Unreal Engine 4で「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUの性能を比較していきます。Epic Games Storeで無料配布されているUnreal Engine 4のデモプロジェクト Infiltratorを使用したビルド時間の比較を行います。検証設定としてリアルタイム表示はオフ、ライティングの品質をプロダクションとしています。Unreal Engine 4のバージョンは4.27.2で統一しています。
「Unreal Engine 4 - Infiltrator」のビルド時間について、「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
「Unreal Engine 4 - Infiltrator」のビルド時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i5 10400を基準にして(全CPU比較データではCore i5 12400Fが基準)、各種CPUのビルド速度を性能比としてグラフ化しています、
AMD Ryzen 7 5800X3DのAI性能
ディープラーニングや人工知能(AI:Artificial Intelligence)の流行に合わせて、近年の最新CPUではAI支援機能の実装も目玉の1つになっているので、一般ユースに近い活用方法として、AIによる写真の超解像化や写真の自動分類で「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUの性能を比較していきます。まずはAIによって低解像度の写真を高精細な高解像度にアップスケールできる「Topaz Gigapixel AI」を使用して、「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUの性能を比較していきます。
500×500解像度前後の写真を50枚用意し、AIモデルStandardによって4倍の解像度にアップスケールするのにかかる時間を測定しました。
Topaz Gigapixel AIはOpenVINOツールキットにより、第10世代以降のIntel Core CPUで採用されているDL Boostと呼ばれるディープラーニングを支援する新しい命令に対応していますが、CPUのマルチスレッド性能でゴリ押しも効くアプリです。
Topaz Gigapixel AIのAIアップスケール速度について、「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
処理時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i5 10400を基準にして(全CPU比較データではCore i5 12400Fが基準)、各種CPUのAIアップスケール速度を性能比としてグラフ化しています、
続いてAIによって写真の被写体(人物、犬猫、自動車など)を自動で分類できる「Nero AI Photo Tagger」を使用して、「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUの性能を比較していきます。
500×500解像度前後の写真を計1300枚(犬、猫、自動車の3種類)用意し、AI認識によって自動分類するのにかかる時間を測定しました。
Nero AI Photo TaggerはOpenVINOツールキットにより、第10世代以降のIntel Core CPUで採用されているDL Boostと呼ばれるディープラーニングを支援する新しい命令に対応しています。
CPUのAI支援機能が効果を発揮するのはもちろん、AVX512命令でも大幅に性能が向上する用途です。
Nero AI Photo TaggerのAI自動分類速度について、「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
処理時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i5 10400を基準にして(全CPU比較データではCore i5 12400Fが基準)、各種CPUのAI自動分類速度を性能比としてグラフ化しています、
AMD Ryzen 7 5800X3Dのゲーミング性能
「AMD Ryzen 7 5800X3D」のPCゲームに関する性能を実ゲームを用いたベンチマーク測定で検証しました。なお章タイトルではゲーミング性能と表記してはいますが、近年発売された4コア4スレッド以上のCPUであればフルHD解像度~4K解像度の60FPSターゲットにおいてCPUボトルネックが発生するケースは多くありません。そのためCPUゲーム性能比較の具体的な内容は”高フレームレートにおけるCPUボトルネック比較”と表現するのが実状に即しています。
ただし最新の超高画質で重いゲームの場合、ゲームプレイの裏で次のシーンのロード作業が動くとロードが遅くなったりスタッター(カクツキ)が発生することがあるので、ゲーミングPCに搭載するなら、Intel Core i5 12400(F)やAMD Ryzen 5 5500など6コア12スレッド以上のCPUを当サイトでは推奨しています。
各CPUのゲーミング性能を測定するため統一検証機材として、2022年最新のウルトラハイエンドGPUを搭載したグラフィックボード「ZOTAC GAMING GeForce RTX 3090 AMP Extreme Holo」を使用しています。
CPU別ゲーミング性能の比較には近年の高画質PCゲームから、Assassin’s Creed Valhalla、Cyberpunk 2077、F1 2022、Far Cry 6、Marvel’s Guardians of the Galaxy、Shadow of the Tomb Raider、Tom Clancy's Rainbow Six Extraction、Forza Horizon 5、MONSTER HUNTER RISE : SUNBREAK、Marvel’s Spider-Man Remasteredの10タイトルを使用しています。
前述の通り、CPUがゲーム性能に与える影響の多くは100FPS以上の高フレームレートにおけるボトルネックの解消なので、フルHD(1920×1080)解像度/高画質設定について、各ゲームで平均フレームレートと1% Lowフレームレートを測定しました。
また参考としてAssassin’s Creed Valhalla、Cyberpunk 2077、Shadow of the Tomb Raider、Marvel’s Spider-Man Remasteredの4種類については4K解像度/60FPSをターゲットとしたベンチマーク測定も行っています。
ゲームタイトルにもよりますがPCゲームにおけるCPU負荷であれば、CPU Package PowerはIntelのPBPやAMDのTDPよりも十分に低い数値に収まることが多く、CPUコアクロックは全コア最大動作倍率に張り付きます。
フレームレートに対するCPUボトルネックの緩和においては、この全コア最大動作倍率の高さが重要になり、クリエイティブタスクと違って電力制限は支配的ではなくなります。(PCゲームではIntel製CPUのPL1、AMD製CPUのPPTは影響をほとんど及ぼさなくなる)
Intel Core i9 12900やAMD Ryzen 7 5700Xのように定格の電力制限に対して全コア動作倍率の高いCPUの場合、PCゲームにおいてもCPU使用率が高くなるハイフレームレートでCPU消費電力がPBPやTDPを超過するタイミングもありますが、短期間電力制限PL2によるターボブーストやTDPよりも余裕をもって設定されたPPTによって高いコアクロックを維持し続けることができるので、影響は軽微です。
クリエイティブタスクの検証において複数の電力制限で測定していたCPUもPCゲームでは極端に大きい消費電力になることはないので、電力制限が緩い方を代表として測定しています。
AMD Ryzen 7 5800X3Dのゲーム性能 - 4K解像度/60FPSターゲット
まずは60FPSの標準フレームレートをターゲットとした4K(3840×2160)解像度のゲーミング性能について「AMD Ryzen 7 5800X3D」や比較対象CPUのベンチマーク結果をチェックしていきます。上述の通り4K高解像度の60FPSターゲットでは基本的にCPUボトルネックは発生しません。グラフの掲載順は平均フレームレートによる昇順ですが、4コア8スレッドや6コア6スレッドよりもコアスレッド数が多いCPUについては、ほぼ測定誤差の範囲内です。
Assassin's Creed Valhara(4K解像度、画質プリセット:高)に関する「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Cyberpunk 2077(4K解像度、画質プリセット:高)に関する「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Shadow of the Tomb Raider(4K解像度、DirectX12、画質プリセット:最高、アンチエイリアス:オフ)に関する「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Marvel’s Spider-Man Remastered(4K解像度、DLSS:品質、画質プリセット:非常に高い、レイトレーシング:高/高/6)に関する「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Marvel’s Spider-Man Remasteredは非常にCPUボトルネックが強いタイトルです。4K解像度かつレイトレーシング表現有効でもCPU性能に応じてフレームレートが大きく変わります。
AMD Ryzen 7 5800X3Dのゲーム性能 - フルHD解像度/ハイフレームレート
続いて100FPS以上のハイフレームレートをターゲットとしたフルHD(1920×1080)解像度/高画質設定のゲーミング性能について「AMD Ryzen 7 5800X3D」や比較対象CPUのベンチマーク結果をチェックしていきます。Assassin's Creed Valhara(フルHD解像度、画質プリセット:高)に関する「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Assassin’s Creed ValhallaはNVIDIA GeForce RTX 30シリーズGPUのハードウェア/ドライバがボトルネックになっており、AMD Radeon RX 6000シリーズGPUよりも性能が伸びません。今回の統一検証機材グラフィックボードの場合、平均フレームレート130FPS前後であれば測定誤差の範囲内です。
Cyberpunk 2077(フルHD解像度、画質プリセット:高)に関する「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
F1 2022(フルHD解像度、画質プリセット:高)に関する「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Far Cry 6(フルHD解像度、画質プリセット:高)に関する「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Marvel's Guardians of the Galaxy(フルHD解像度、画質プリセット:高)に関する「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Shadow of the Tomb Raider(フルHD解像度、DirectX12、画質プリセット:高、アンチエイリアス:オフ)に関する「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Tom Clancy's Rainbow Six Extraction(フルHD解像度、画質プリセット:高、レンダースケール:固定100%)に関する「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Forza Horizon 5(フルHD解像度、画質プリセット:高)に関する「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
MONSTER HUNTER RISE(フルHD解像度、画質プリセット:高)に関する「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Marvel’s Spider-Man Remastered(フルHD解像、アンチエイリアス:オフ、画質プリセット:高い、レイトレーシング:オフ)に関する「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
最後に、今回検証した10種類のゲームについて各タイトルについて平均FPSと1% Low FPSでそれぞれ、Core i5 10400を基準にした性能比率を算出し、さらに平均値としてグラフにまとめました。(全CPU比較データではCore i5 12400Fが基準)
フルHD解像度/ハイフレームレートの相対的なPCゲーミング性能に関する「AMD Ryzen 7 5800X3D」を含めた各種CPUの比較結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
CPUエンコーダとリアルタイム配信について
ゲーム実況やライブ配信と呼ばれるPCゲームのリアルタイム配信について、現在ではNVIDIA GeForce RTX 3050やAMD Radeon RX 6600などハードウェアエンコード機能を使用できるエントリー~ミドルクラスのGPUを使用することでフルHD解像度で必要十分な画質とフレームレートが得られます。GPUエンコーダは動作自体も軽いので、これらGPUエンコーダの登場によってリアルタイム配信やプレイ動画の録画におけるCPUエンコーダの役目は終わったというのが一時期の私見でしたが、メインストリーム向けCPUのコアスレッド数の増加に伴い、x264 Mediumのような高画質プリセットのプレイ&録画が一般ユーザー的にも現実的になってきています。
Youtube LiveやTwitchなどリアルタイム配信(ライブストリーミング)サービスで、PlayStation 5/Xbox Series X|S/Nintendo Switch等のコンシューマーゲーム機や、PCゲームのプレイ動画・ゲーム実況を快適に配信するのに必要なCPU性能については、現在、連載を続けている【快適配信】シリーズで詳細に解説しています
一口にゲーム実況と言っても、『1.ビデオキャプチャを使用してPCは録画配信作業のみを行う』、『2.PC1台で同時にゲームプレイと録画配信を行う』の2つのケースに大別され、どちらで使用するのかで要求されるCPU性能やCPUメーカー毎の得手不得手など事情が変わってくるので注意してください。
ざっくりと現状でCPUを使用したリアルタイム配信・ゲーム実況に要求されるCPU性能だけ述べておくと、『ビデオキャプチャを使用した配信の最低水準は6コア12スレッドのCPU』、『ゲームをプレイしながら配信の最低水準は8コア16スレッドのCPU』です。
・【快適配信】シリーズの記事一覧へ
画質と快適性を求めるなら録画・配信専用マシンもオススメ
ビデオキャプチャ業界の進歩も目覚ましく、2018年に発売された「AVerMedia Live Gamer Ultra」を皮切りに、各社から4K/60FPS/HDRやフルHD/240FPSの映像ソースを無遅延なパススルー表示しつつ、フルHD/60FPSのプレイ動画として録画・配信できるUSB接続外付け機器型ビデオキャプチャが各社から発売されています。前述の通りフルHD/60FPSの録画・配信であれば、GPUのハードウェアエンコーダを利用することで必要十分な画質が得られて動作も軽いので、録画配信のために高性能な反面、非常に高額なCPUに投資するよりも、多少コストがかかっても「AVerMedia Live Gamer Ultra」などのビデオキャプチャと組み合わせて録画・配信用サブ機を構築するほうが、録画・配信の手法としてはわかりやすくてハードルが低いと思います。
AMD Ryzen 7 5800X3Dのレビューまとめ
「AMD Ryzen 7 5800X3D」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ or 概要
- 8コア16スレッドのCPU
- 定格のPPT:142W制限下において全コアが実動平均で4.20GHz程度
- CPUにフル負荷がかかった時の消費電力は110W程度なので5800Xよりも扱いやすい
- Ryzen 3000シリーズCPUと比較して15~20%も高速なシングルスレッド性能
- ハイフレームレートなPCゲーミングで最速クラスの性能
- 3D V-Cacheを採用する初のCPUで、デモ機としては非常に興味深い
- Intel第12世代CPUのK付き上位モデルと比較してマルチスレッド性能が低い
- 8コア16スレッドで6.5万円と割高
温度・消費電力について
AMD Ryzen 5000シリーズCPUの上位モデルはXFR等による自動OC機能によってCPUクーラーの性能が十分(CPU温度が閾値以下)であれば、公称仕様値のTDP105Wを上回るPPT:142Wまでの動作に対応しているため、検証環境によってはCPU温度が高い、消費電力が大きいと評価されることもあります。「AMD Ryzen 7 5800X3D」に動画エンコード等でフル負荷がかかった時の消費電力は110W程度です。
標準モデルRyzen 7 5800Xと電力制限のパラーメーターは同じですが、クリエイティブタスクでフル負荷がかかった時の全コア最大動作倍率が低めに設定されていて、そちらが先にボトルネックになるため消費電力は控えめになっています。
Ryzen 7 5800Xは1つのCPUダイだけで140Wの発熱が生じていたので、定格のまま運用すると上位モデルRyzen 9よりもCPU温度が高く、冷やしにくい傾向でしたが、「AMD Ryzen 7 5800X3D」は120サイズの空冷CPUクーラーやAIO水冷クーラーでも問題なく運用できます。
AMD Ryzen 5000シリーズCPUは、デフォルト設定で95度の閾値温度に達した時点でCPUクーラーの対応可能なCPU消費電力へ漸近していき、その範囲内で最大のパフォーマンスが発揮できるように調停するPrecision Boost 2 / Pure Power 2が機能として組み込まれているので、CPU温度的にも安心かつ手軽に運用できます。
クリエイティブ性能について
「AMD Ryzen 7 5800X3D」のクリエイティブ性能について、Ryzen 7 5800Xの通常モデルよりも若干低いコアクロックという性質がそのまま反映されて、5%程度低い性能です。同CPUの最大の特長であるAMD 3D V-Cacheはクリエイティブタスクではあまりパフォーマンスに寄与しないようです。一方でIntelの最新CPUである第12世代Coreと比較すると、Core i9 12900K、Core i7 12700K、Core i5 12600KといったP-Core&E-Coreのハイブリット構造を採用している上位モデルには明らかに及びません。
「AMD Ryzen 7 5800X3D」は少しコアクロックが下がった5800Xなので8コア16スレッドCPUとして性能が悪いわけではないものの、6万円半ばと高価であり、Core i7 12700KFが5.7万円、Core i5 12600KFが3.8万円で購入できる状況で登場したこともあって、やはりクリエイティブタスク性能の評価は下がります。
Intel第12世代CPUの登場以前、Ryzen 5000の初期ラインナップから数ヵ月遅れての発売であれば評価は大きく違ったと思いますが。
ゲーム性能について
ゲーム性能検証の冒頭でも述べたようにフルHD~4K解像度の60FPSターゲットであれば4コア4スレッド以上の最新CPUであればどれを使用しても大差はありません。Ryzen 2000/3000の頃だとゲーム側の最適化の問題で60FPSターゲットであってもCPUによって差が出るケースも散見され、ゲーム用ならどちらかというとIntelという感じでしたが、Ryzen 5000以降ではこの差もほぼ無視できるレベルだと思います。
ただし最新の超高画質で重いゲームの場合、ゲームプレイの裏で次のシーンのロード作業が動くとロードが遅くなったりスタッター(カクツキ)が発生することがあるので、ゲーミングPCに搭載するなら、2万円台半ばから購入できることもありIntel Core i5 12400(F)やAMD Ryzen 5 5500など6コア12スレッド以上のCPUを当サイトでは推奨しています。
「AMD Ryzen 7 5800X3D」は同じCPUアーキテクチャ、少し低めのコアクロックながら、3次元チップレットで大容量キャッシュメモリを搭載するAMD 3D V-Cacheによって、Ryzen 7 5800Xの標準モデルと比較して最大で30%以上というゲーム性能向上を実現しています。
CPUボトルネックが厳しいゲームであれば平均FPSもしくは1% Low FPSが20%程度も向上するものも少なくないという非常に興味深いゲーム性能を発揮しました。
「AMD Ryzen 7 5800X3D」をIntel第12世代CPUと比較すると、AMDの公式ベンチマークで上回るとされたCore i9 12900Kに対して、今回、当サイトで検証した10タイトルによる”平均FPS”のベンチマーク比較では僅かに及びません。
比較に使用するタイトルや測定方法で多少前後するといえばそうですが、”1% Low FPS”はそういうレベルの差ではなく、Core i9 12900Kだけでなく、Core i7 12700Kにも劣るという結果でした。Intel第12世代Core i7/i9に対する相対的なコアスレッド数の少なさ、シングルスレッド性能の低さが反映された形です。
F1 2022のように「AMD Ryzen 7 5800X3D」がIntel第12世代CPUを大きく突き放すこともありますが、現状ではむしろそういったタイトルはレアケースです。
平均FPSの比較は抜粋するタイトル次第、「AMD Ryzen 7 5800X3D」とCore i9 12900K、Core i7 12700Kを同等性能と評価したとしても、”1% Low FPS”で劣るのは明らかなので、総合的に考えると最速はCore i9 12900K、Core i7 12700K、続いて「AMD Ryzen 7 5800X3D」というのが当サイトの評価です。
またプレイ動画の作成や編集においては動画のエンコード性能しかりCPUの性能(マルチスレッド性能)が重要であることは間違いないので、プレイ動画の作成という面もゲーム性能と捉えるなら、その意味でもCore i9 12900KやCore i7 12700Kを差し置いて「AMD Ryzen 7 5800X3D」を選ぶ理由はないかなと。
総評 - AMD 3D V-Cacheの技術デモとしては非常に興味深いが
「AMD Ryzen 7 5800X3D」はCPUダイ上に垂直にキャッシュメモリを積層するAMD 3D V-CacheによってRyzen 7 5800Xをベースに追加で64MBのキャッシュメモリを搭載しており、Ryzen 7 5800Xよりもコアクロックが若干低いにもかかわらず、AMD 3D V-Cacheの効果で平均FPSが最大30%も向上するという興味深い性能を発揮しました。1,2タイトルに限られる特殊事例というわけではなく、CPUボトルネックが厳しいゲームであれば平均FPSもしくは1% Low FPSが10~20%も向上しており、AMD 3D V-Cache技術そのものについては非常に期待が持てる結果です。
一方で、「AMD Ryzen 7 5800X3D」がゲーマー向けCPUとして買いかどうかと問われると、『今、5~6万円出してCPUを買うならIntel第12世代Core i7がオススメ』と迷わず答えます。
AMD 3D V-Cacheの効果で平均FPSは劇的に向上しており、特定タイトルではIntel第12世代CPUを大きく突き放すこともありますが、相対的に見てコアスレッド数の少なさやシングルスレッド性能の低さが1% Low FPSに影響しており、またゲーム実況・配信もするなら動画編集性能でも明確に劣るので、今あえて「AMD Ryzen 7 5800X3D」を選ぶ理由はない、というのが正直な感想です。(同CPUが発売された4月時点ですでに)
とはいえ繰り返しますが、AMD 3D V-Cache技術そのものについては非常に高く評価しています。「AMD Ryzen 7 5800X3D」もその技術デモとしては興味深いCPUでした。
今月末に発売が予定されているRyzen 7000シリーズCPUは3D V-CacheなしでもCore i9 12900Kを超えるゲーム性能を実現しているとのことなので、Ryzen 7000シリーズCPUのカウンターとしてIntelから登場が噂されている第13世代RaptorLake-SのさらなるカウンターにRyzen 7000X3Dが登場するのか、今後の展開に期待が高まります。
以上、「AMD Ryzen 7 5800X3D」のレビューでした。
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Ryzen 5000シリーズをベースに、3次元チップレット技術により大容量キャッシュメモリを搭載するAMD 3D V-Cache技術も採用した8コア16スレッドCPU「AMD Ryzen 7 5800X3D」をレビュー
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) September 7, 2022
3D V-Cacheデモ機としては興味深いが…。https://t.co/IHcZ1cH4Qy pic.twitter.com/x1tv9YYsbH
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