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UWQHD解像度かつ144Hzリフレッシュレート、VRR同期に対応するウルトラワイド34インチIPS液晶ゲーミングモニタ「BenQ MOBIUZ EX3415R」をレビューします。
リモコンによるOSD操作が可能、PIP/PBP機能に対応、高音質2.1chスピーカー搭載など独自機能にあふれる「BenQ MOBIUZ EX3415R」はウルトラワイドゲーミングモニタの決定版なのか、徹底検証していきます。
製品公式ページ:https://www.benq.com/ja-jp/monitor/gaming/ex3415r.html
BenQ MOBIUZ EX3415R レビュー目次
1.BenQ MOBIUZ EX3415Rの概要2.BenQ MOBIUZ EX3415Rの開封・付属品
3.BenQ MOBIUZ EX3415Rの液晶モニタ本体
4.BenQ MOBIUZ EX3415RのOSD操作・設定
5.BenQ MOBIUZ EX3415Rの発色・輝度・視野角
6.BenQ MOBIUZ EX3415Rの144Hzリフレッシュレートについて
7.BenQ MOBIUZ EX3415Rの応答速度・表示遅延
8.BenQ MOBIUZ EX3415RのFreeSync/G-Sync CPについて
9.BenQ MOBIUZ EX3415RのMBR機能について
10.BenQ MOBIUZ EX3415RのHDR表示やCSゲーム機対応について
11.BenQ MOBIUZ EX3415Rのレビューまとめ
【機材協力:BenQ】
BenQ MOBIUZ EX3415Rの概要
「BenQ MOBIUZ EX3415R」は解像度が21:9アスペクト比3440×1440のUWQHD解像度、モニタサイズが34インチの液晶モニタです。液晶パネルは曲率1900で湾曲しています。液晶パネルタイプはノングレア(非光沢)で発色や視野角に優れたIPS液晶パネルが採用され、98% DCI-P3の広色域を実現しています。コントラスト比は通常1,000:1、応答速度は1ms(MPRT)、2ms(GTG)です。「BenQ MOBIUZ EX3415R」はHDR表示に対応し、輝度は標準200nits(cd/m^2)、最大400nits(cd/m^2)です。VESAがPCモニター向けに展開している輝度認証のVESA DisplayHDR 400を取得しています。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」のリフレッシュレートはネイティブ144Hzに対応します。144Hzの高リフレッシュレートによって応答速度が高速になるのでブレや残像がなくなってクッキリとした滑らかな表示です。60FPSでは識別の難しいゲーム内遠方で動くエネミーやオブジェクトの発見などが容易になるので、レーシングゲーム・スポーツゲームやFPSゲームなど競技性の高いPCゲームにおいて対戦相手よりも優位に立つことができます。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」はゲーミングPCやコンソールゲーム機のPlayStation 5やXbox Series X/Sを組み合わせることで利用可能な可変リフレッシュレート同期機能「AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync、HDMI Variable Refresh Rate)」にも対応しており、ティアリングがなくスタッタリングを抑えた快適で鮮明なゲーミング環境を実現できます。NVIDIA製GPUとの互換性を証明するG-Sync Compatible認証も取得については未定です。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」のビデオ入力はDisplayPort1.4とHDMI2.0×2の3系統です。またUSBハブとして周辺機器を接続するためのダウンストリームUSB3.0端子が2基搭載されており、USBアップストリームケーブルでPCに接続することで使用できます。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」には各種OSD設定の操作が可能なリモコンも付属します。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」にはtreVoloと呼ばれる高音質ソリューションが採用されています。2.0W×2+5Wウーファーという構成の高音質な内蔵スピーカーに加えて、treVoloオーディオチームによって厳選のチューニングが施されたオーディオニーズ別5種類のサウンドモードというソフトウェアを組み合わせた「treVolo オーディオシステム」が搭載されています。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」の寸法はモニタスタンド込みで幅815mm x 高さ425~525mm x 奥行269mm(モニタ単体では112mm)となっています。付属モニタスタンドは上下チルト、左右首振りスイーベル、昇降高さ調整に対応しています。チルト角は上15度から下5度、スイーベル角は左右15度、高さ調整は最大100mmの範囲で調節可能です。本体重量はモニタスタンドありで8.5kg、モニタスタンドなしの液晶パネル本端のみは5.6kgとなります。VESA100x100マウントにも対応しておりモニタアームも使用可能です。
BenQ MOBIUZ EX3415Rの開封・付属品
まずは「BenQ MOBIUZ EX3415R」を開封していきます。「BenQ MOBIUZ EX3415R」のパッケージサイズは34インチで横幅の大きいウルトラワイドモニタが入っていることを考えても、横幅1070mm×高さ500mm×奥行198mmと非常に大きいです。
側面には持ち手の穴が付いていますが、前述の通りパッケージサイズは非常に大きく、重量も13kgを超えているので、成人男性でも1人では持ち運びに苦労します。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」はN式箱という構造になっておりスペーサーを外パッケージから引っ張り出す手間がないのが特徴的です。
パッケージを開くと液晶モニタ本体や付属品が収められた発泡スチロール製のスペーサーが現れます。スペーサーは2段になっており、上の段にはモニタスタンドやケーブルなどの付属品が、下の段には液晶モニタ本体が収められています。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」には、HDMIケーブル、DisplayPortケーブル、USBアップストリームケーブル、ACアダプタ&ACケーブル、リモコン、マニュアル冊子類が付属します。
加えて後ほど説明しますが、IOポートカバーも付属しています。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」に付属するACアダプタのコンセントケーブル側端子はミッキー型と呼ばれることの多い3PIN端子です。
各種ケーブルを個別に購入するのであれば、4K/120Hz対応のDisplayPort1.4ケーブルなら「サンワサプライ KC-DP14シリーズ」、HDMI2.0ケーブルなら「エレコム Premium HDMIケーブル スリムタイプ DH-HDP14ESBKシリーズ」がおすすめです。いずれも標準で付属するケーブルよりもケーブル径が細くて取り回しが良いので管理人も個人的に使用しており、おすすめのケーブルです。
エレコム PREMIUM HDMIケーブル スリムタイプ 1.0m
エレコム PREMIUM HDMIケーブル スリムタイプ 1.5m
エレコム PREMIUM HDMIケーブル スリムタイプ 2.0m
エレコム
「BenQ MOBIUZ EX3415R」に付属するモニタスタンドはフレームとフットプレートの2つの部品で構成されています。
フットプレートをフレームに差し込んで底面のネジを締めるだけで簡単にモニタスタンドを組み立てられます。ネジにレバーが付いているのでドライバー不要で組み立てが可能です。
モニタスタンド装着に当たって、「BenQ MOBIUZ EX3415R」のモニタ本体は湾曲しているので破損を防止するために、梱包スペーサーに置いたままにしておくのがオススメです。
モニタスタンドを組み立てたら、「BenQ MOBIUZ EX3415R」のモニタ本体背面の溝に斜め下の方向からモニタスタンドを差し込めば取り付け完了です。
モニタスタンドの取り外しは、根本の下にあるスイッチでロックを外して、装着した時と逆に動かして引き出すだけです。
BenQ MOBIUZ EX3415Rの液晶モニタ本体
続いて「BenQ MOBIUZ EX3415R」の液晶モニタ本体をチェックしていきます。「BenQ MOBIUZ EX3415R」は概ねフレームレス構造ですが、フレーム内パネル上には非表示領域があり、上左右の非表示領域の幅は11mm程度です。下側にはドットメッシュ状のパネルが装着されたフレームがあり、幅は25mm程度です。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」の背面に注目するとMOBIUZシリーズを象徴するX字で4分割された流線形のスタイリッシュなデザインです。外装はプラスチックですがメタリックな質感のグレーカラーのおかげで高級感を感じます。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」のモニタスタンドはモニタ本体背面と同系色のグレーカラーですが、形状は角ばったデザインです。正面から見るとモニタスタンド足の内側はMOBIUZを象徴するアクセントカラーのオレンジ色になっています。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」のモニタスタンドにはケーブルホールがあるので、各種ケーブルをまとめることができます。
また「BenQ MOBIUZ EX3415R」のI/Oポートは外装パネルを大きく切り開く形で配置されていますが、付属のI/Oポートカバーによって背面から見てもスタイリッシュに仕上がります。I/Oポートカバーはプラスチックのツメでツールレスに簡単に着脱できます。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」の液晶パネルは34インチサイズですが、1900Rの曲率で湾曲しています。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」のモニタ本体の厚さは中央の最厚部で70~80mmほどと最近の液晶モニタとしては厚みが大きいですが、両端の最薄部で30mmなので体感としては薄めに感じます。「BenQ MOBIUZ EX3415R」はモニタ本体重量が5.6kg程度です。
BenQ MOBIUZ EX3415RにはtreVoloスピーカーと呼ばれる高音質な2.1ch内蔵スピーカー(2Wx2 & 5Wウーファー)というハードウェアと、treVoloオーディオチームによって厳選のチューニングが施されたオーディオニーズ別5種類のサウンドモードというソフトウェアを組み合わせた「treVolo オーディオシステム」が搭載されています。
2W×2のステレオスピーカー(トゥイーター)は視聴するユーザーに向かって正面に配置されており、明瞭な中から高音域を実現します。包み込むような重低音によって臨場感を演出する5Wのウーファーはモニタ背面に分けて内蔵されています。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」に搭載されたスピーカーには、スピーカーの反応を速くし、力強いサウンドと自然な音を実現するデュアルコイル構造とデュアルマグネット構造が採用され、マグネットにはネオジム磁石が使用されています。
一般に近年薄型化の傾向のあるモニタではコンパクトで低出力なスピーカーしか搭載されていませんが、「BenQ MOBIUZ EX3415R」では内蔵スピーカーの音質が重視され、長く表面積を広くとったアルミニウム合金製コーンが搭載されています。
またウーファーのエンクロージャーは小型でも優れた低音を生み出すことが可能なスピーカーダクトを備えたバスレフ型構造(公式にはPorted Designと呼ばれる)が採用されています。アルミニウム合金製コーンとバスレフ型構造によって小さなスペースでも迫力ある重低音を響かせます。
treVoloスピーカーにはTrue Soundという独自技術も採用されており、内蔵されたDSPチップによって低ビットレートの録音または高圧縮レベルによる高周波数データの損失を検出した場合、高周波成分を補正してくれます。
ソフトウェア面でも、もともとBenQ内でスピーカーを作成していたtreVoloオーディオチームの経験を活用して厳選のチューニングが施されたオーディオプリセットが用意されています。OSD設定から、FPS、RCG(レーシング)、SPG、シネマ、ライブ/ポップの5つのサウンドモード(イコライザープリセット)が選択できます。
シネマモードは、特に映画を見るために設計されており、音声を調整してボーカルの質を高め、会話をクリアにし、低音を強化します。FPS/RCG/SPGの3種類のゲームモードでは、音の定位と臨場感のある音声が強調されます。ライブ/ポップモードはリアルなライブ会場のような臨場感を演出するよう最適化されています。
モニタ本体背面のモニタスタンドフレームの根本の直下には下向きに各種I/OやAC端子が配置されています。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」にはビデオ入力等のI/Oポートとして左から順に、DC端子、2基のHDMI2.0ビデオ入力、1基のDisplayPort1.4ビデオ入力、ヘッドホン出力用3.5mmジャック、USB3.0アップストリーム端子、2基のUSB3.0ダウンストリーム端子が実装されています。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」の付属モニタスタンドの左右スイーベルの可動域は左右15度(30度)に対応していま
「BenQ MOBIUZ EX3415R」の付属モニタスタンドの上下チルトの可動域は仕様通り下に5度、上に15度となっています。
モニタの高さはモニタ本体とスタンドの付け根部分が上下に動く構造になっており、全高で425mm〜525mmの範囲内で調整できます。
BenQ MOBIUZ EX3415RはVESA100x100規格のVESAマウントに対応しておりサードパーティ製のモニターアームを使用できます。モニタ単体の重量も5.6kgほどなのでモニターアームを問題なく利用可能です。
なおVESAネジ穴が背面外装から窪んだ場所にあるモニタの場合、スライド式クイックリリースプレートを採用するモニターアームでは、背面外装とクリックリリースブラケットが干渉して設置できない可能性があります。また直接ネジ止めするタイプでも窪みの面積が狭くて、VESAブラケットとモニタ背面外装が直接干渉することも。
市販モニターアームのVESAブラケットがモニタ背面外装と干渉する場合はスペーサーやスタンドオフを使用してください。詳しくはこちらで。
オススメのモニターアームや調整機能が豊富なVESA汎用モニタースタンド、VESAマウントの干渉を避ける方法についてはこちらの記事で詳細に解説しているので、導入を検討している人は参考にしてください。
BenQ MOBIUZ EX3415RのOSD操作・設定
「BenQ MOBIUZ EX3415R」のOSD操作は、正面から見て右下の中央あたりに設置されている操作スティックを主に使用します。操作スティックの右隣には電源ボタン、左隣にはルーピングキーと呼ばれるビデオ入力選択のショートカットキーがあります。操作スティックと誤って電源スイッチを押下してしまうことがあるので、電源スイッチは少し離れた場所に設置して欲しかったところ。
加えて、「BenQ MOBIUZ EX3415R」はゲーミングモニタとしては珍しく、OSD機能の各種操作が行える専用リモコンが付属しています。モニタ本体のOSDスイッチで操作するよりも遥かに楽なので、基本的にリモコンで操作すればOKです。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」では操作スティックを押下もしくは左右に倒すとクイックメニューが表示されます。(上下に倒すと音量調整のショートカットメニューが表示されます) また操作スティックの左隣にあるルーピングキーと呼ばれるショートカットキーを押下するとビデオ入力選択のショートカットメニューが表示されます。
クイックメニューの一番下にある「メニュー」を操作スティックで選択するとモニタ右下に詳細設定メニューが表示されます。詳細設定メニューは34インチ画面の20分の1ほど、文字自体も小さいので視認性はあまり良くない気がします。OSDメニューと文字は1.5~2倍くらいのサイズがあったほうが良かった気がします。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」は国内正規品であればアウトボックス時点で日本語UIが適用されているはずです。誤って日本語以外を選択してしまった場合は下記の手順で日本語に変更が可能です。
BenQ MOBIUZ EX3415RのOSDの特長として、OSD詳細設定にアクセスしなくても頻繁に使う項目を調整できる「クイックメニュー」や、ビデオ入力毎にクイックメニューのレイアウトを個別調整可能な「シナリオ」という機能が採用されています。
各ビデオ入力に割り当て可能なクイックメニューは「標準」、「ゲーム」、「シネマ」の3種類のプロファイルがあります。標準設定では「ゲーム」のプロファイルが割り当てられています。
OSD詳細設定の「入力」から各ビデオ入力を選択後に操作スティックをさらに右に倒すと、各クイックメニューに割り当てるプロファイルを選択できます。
ルーピングキー(1.)の入力切替やクイックメニューの最上段(2.)にあるカラーモードの2つは固定ですが、クイックメニューの2段目から4段目までの3項目は各プロファイルで自由に機能を選択できます。
ビデオ入力毎にクイックメニューのプロファイルを割り当てる機能は「シナリオ」と名付けられています。シナリオをオフにすると、全てのビデオ入力には標準のプロファイルが適用されます。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」のOSDメニューには大きく分けて、「入力」「クイックメニュー」「カラーモード」「マルチ入力」「Eye Care」「オーディオ」「システム」の7つの項目が用意されています。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」の画質モードはトップメニューにあるカラーモードから選択できます。
プロファイルは、「ゲームHDRi」「シネマHDRi」「Display HDRi」といったHDR表示関連のモード(SDRソースの場合はHDR風になる)、「FPS」「RPG」「レーシング」といったゲームジャンル別のモード、さらに「カスタム」「sRGB」「M-Book」「ePaper」を加えた10種類が用意されています。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」において、ゲーム関連や発色関連の各種OSD設定はカラーモードの各種プロファイル内に配置されています。
一般的なモニタOSDと違って、トップメニューから項目を探しても見つからないので注意してください。またカラーモード毎にグレーアウトして選択できない項目が予め決まっています。各自で自由に設定したい場合はカスタムが一番調整可能な項目の多いカラーモードです。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」においてゲーム関連の設定は各カラーモードプロファイル内で個別設定として用意されています。
一般にオーバードライブと呼ばれる応答速度を調整する機能は、「BenQ MOBIUZ EX3415R」では従来のBenQモニタ製品同様に「AMA (Advanced Motion Accelerator)」の名前で設置されており、0~3の4段階で設定でき、数字が大きくなるほど補正が強くなります。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」はモーションブラーリダクション機能に対応しており、「ブレ削減」という名前で設定が用意されています。リフレッシュレートが100Hz以上の時に使用でき、ブレ削減を有効にするとVRR同期は無効化されます。
暗所を明るく(白く)表示して視認性を改善する「Black eQualizer」機能についてはFPSモードでのみ利用できます。Black eQualizerは0~10の11段階で設定が可能です。0は無効で、レベルを上げるほど明るく(白く)なります。
FPSモード以外のカラーモードでは類似の機能としてLight Tunerという設定が用意されています。Black eQualizerは黒レベルを引き上げて視認性を高めますが、Light Tunerは輝度・コントラスト・彩度を引き上げて明暗を強くする感じの調整です。
Light Tunerは-10~0~10の21段階で設定が可能です。0は無効で、レベルを上げるほど明るく(白く)なります。
画面の鮮やかさやトーンを調整することで視認性を改善する「色の鮮明さ(Color Vibrance)」機能については0~20の21段階で設定が可能です。
中央値の10は機能無効で、レベルを上げるほど彩度が強調され、レベルを下げるほど彩度が下がってモノクロ風に近づきます。
PIP/PBP機能について
「BenQ MOBIUZ EX3415R」は2つのビデオ入力を画面上に同時に表示する「PIP/PBP」にも対応しています。PIPでは主副のビデオソースを3つのビデオ入力から自由に選択でき、ディスプレイ切り替えによる主副の入れ替え、オーディオ切り替えによるオーディオソースの切り替えに対応します。
副画面のサイズには小/大の2サイズの選択肢があり、27インチWQHD相当で換算すると、小サイズは800x600、大サイズは1280×720で画面1/4程度の小窓として表示されます。副画面の解像度は最大でも1280×720が最大となり、接続している出力機器からもそのように認識されます。(主画面は3440×1440/144Hz対応で副画面の最大リフレッシュレートは主画面に依存)
副画面の表示位置は右上/右下/左上/左下から選択できます。任意に移動(微調整)することはできません。
PBPでは、3440×1440のUWQHD画面を1720×1440の2等分で左右に分割するモードと、3440×1440のUWQHD画面を2560×1440と880×1440の不均等で左右に分割するモードの2つの表示モードが用意されています。
主副のビデオソースを3つのビデオ入力から自由に選択でき、ディスプレイ切り替えによる主副の入れ替え、オーディオ切り替えによるオーディオソースの切り替えに対応します。
2560×1440と880×1440の不均等で左右に分割するPBPモードについては、左側に一般的な16:9アスペクト比でメイン画面を表示しつつ、右側に縦長画面を表示できるのでPlayStation 5やXbox Series X/Sといったゲーム機をメイン表示しながら、スマホで攻略ページやSNS、ストリーミングを表示するような使い方に最適です。
メインの左側はHDMI2.0なので4K/120FPSには非対応ですが、4Kエミュレートには対応しているので4K/60FPS/HDRやフルHD/120FPSの表示は可能です。
BenQ MOBIUZ EX3415Rの発色・輝度・視野角
BenQ MOBIUZ EX3415Rの発色・輝度・視野角など画質についてチェックしていきます。直接的な画質ではありませんがBenQ MOBIUZ EX3415Rの液晶パネルは光沢のあるグレアではなくアンチグレアタイプなので暗転時に自分の顔などが映り込みません。
液晶パネルには大きく分けてIPS液晶パネルとVA液晶パネルとTN液晶パネルの3種類があり、各社個別の製品によって個体差はあるものの、この3つの液晶パネルの特性を簡単にまとめると次のテーブルのようになります。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」に採用されているIPS液晶パネルはTN液晶パネルやVA液晶パネルと比べると色再現性や視野角など一般に画質に直結する性能が優れている反面、価格が高価になりがちな液晶パネルです。TN液晶パネルに比べて応答速度が遅めなので、60Hzオーバーのリフレッシュレートを実現しているIPS液晶パネル採用ゲーミングモニタは少ないため、輪をかけて高価です。とはいえ画質とリフレッシュレートを両立できるので、予算に糸目をつかないエンスーゲーマー勢に好まれています。
液晶パネルの簡易比較表 | |||
IPS | VA | TN | |
色再現性 | ◎ | 〇 | △ |
コントラスト | 〇 | ◎ | △ |
視野角 | 〇 | 〇 | △ |
応答速度 | 〇 | △ | ◎ |
価格 (高RR) |
△ (×) |
△ | 〇 |
液晶パネルの種類による性能の違いについてはこちらの記事も参照してみてください。
・IPS/VA/TN液晶パネルを比較解説 - ゲーミングモニタの選び方[4]
「BenQ MOBIUZ EX3415R」は144Hzの高速リフレッシュレートながら、IPS液晶パネルが採用されているので視野角も良好です。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」の発色について、色温度の標準設定である”通常”で、白色が極端に黄色や青色がかって見えることもなく、特に違和感はありませんでした。
色温度設定には寒色(薄青)/通常/暖色(薄赤)の3種類のプリセットがありますが、これらを切り替えても発色に違和感がある場合は、ユーザー設定でRGBのバランスを好みに合わせて整えてください。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」はガンマカーブ設定にも対応しており、5種類の設定値があります。ガンマ1~ガンマ5はそれぞれガンマの値が1.9、2.1、2.3、2.6、2.8に相当するようなモードになっており、ガンマ3が標準設定です。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」は測光センサーによる輝度や色温度の自動調整機能「B.I. +(ブライトネスインテリジェンス プラス)」も用意されています。
ここからはカラーキャリブレータを使用して、色域・色再現性・輝度・コントラスト・均一性など画質に直結するモニタの性能について詳細な検証結果を見ていきます。なおこれらのモニタ性能(特に輝度の均一性)については同じ製品であっても個体差が大きいのでご注意ください。検証にはカラーフィルター式(色差式)のX-Rite i1 Display Pro PlusとDatacolor SpyderX、そして分光式(スペクトロメーター)のX-Rite i1 Basic Pro 3を使用しています。
余談ですが、分光式のi1 Basic Pro 3は20万円程と非常に高価ですが、一般的な用途であれば測定精度は十分なので、イラスト製作や写真編集でカラーキャリブレーションを行う場合、カラーフィルター式のX-Rite i1 Display ProかDatacolor SpyderX Proで十分です。ユーザー数の多さで面倒が少ないのはX-Rite i1 Displayだと思います。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」のディスプレイ輝度について白色点の輝度をOSD設定別で測定しました。OSD上の輝度設定10%刻みで0%~100%の輝度変化は次のようになっています。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」において、一般に見やすい明るさと言われる120cd/m^2は輝度30%前後、室内照明に依りますが個人的に見やすいと感じる明るさの180~200cd/m^2は輝度90%前後です。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」はSDR表示の場合、最大輝度が200cd/m^2と暗いモニタです。製品スペックでも標準輝度が200cd/m^2だったのでスペック通りと言えばそうなのですが、一般的なモニタが300~400cd/m^2程度の最大輝度を発揮できるのと比較すると暗いので注意してください。
HDR表示時はもとより、モーションブラーリダクション機能を有効にすると最大輝度が300cd/m^2を超えるので、通常のSDR表示の時だけ200cd/m^2に抑えられているというのは不思議な仕様です。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」のディスプレイ輝度の均一性(Uniformity)を検証しました。画面中央の輝度が約120cd/m^2になるOSD設定において、画面を横9×縦5の45分割として各位置の白色点の輝度を測定し、120cd/m^2を基準にしたパーセンテージで等高線マップにしています。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」は左上の輝度低下が大きいことと、上半分が下半部よりも輝度が低いところは少々気になるものの、差分10%以内が80%以上、差分20%以内なら全てとなっており、輝度の均一性はウルトラワイド液晶モニタとしては良好な部類だと思います。
液晶モニタにおいて輝度の低下が特に大きい四隅&四辺は、上のような領域分割測定では見落とされてしまうので、同様に中央120cd/m^2を基準にして個別に測定したところ次のようになりました。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」については全体を白表示にしても上下端ギリギリ、10mm幅くらいまでいかないと暗さを感じません。全体白表示なので強調されていますが、カラフルな画面が表示される実用シーンでは特に問題にならない程度です。
今回入手した個体は左上だけ輝度低下20%でしたが、全体的に10%前後に収まっているので、輝度の均一性は良好だと思います。
画面中央の白色点が約120cd/m2になるOSD設定において「BenQ MOBIUZ EX3415R」のブラックレベルを測定したところ次のようになりました。ブラックレベルの測定にはX-Rite i1 Display Pro Plusを使用しています。
またこの時のコントラスト比も算出したところ次のようになっています。なおコントラスト比に大きく影響するブラックレベルはコンマ2桁での測定になるため測定精度が若干怪しく、ブラックレベル0.01の差でコントラスト比が大きく変わるので参考程度と考えてください。
続いて「BenQ MOBIUZ EX3415R」の色域と色の正確性を検証してみました。
まずモニタのOSD設定はカスタムモードを選択して、Light Tunerを0に、ディスプレイ輝度が120cd/m^2になるように調整しています。Light Tunerの補正を無効化していることを除けばカスタムモードの標準設定のままとなっており、OSD設定から任意に指定できる色関連の設定をデフォルトにした状態です。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」は上記の設定において、100% sRGBに加えて、90% Adobe RGB、95% DCI-P3という非常に広い色域をカバーしています。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」は色域の広さは非常に優秀なのですが、色の正確性は平均ΔEが5.78とかなりズレが大きくなっています。X-Riteによると『ΔE=5程度で2つの色をかわるがわる見比べた時違いが分かるレベル』とのこと。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」はPCゲーミングや映画視聴向けで迫力ある表示になるように最適化(色の調整)が施されているので、イラストレーターなど色の正確性が求められる用途では微妙です。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」で色の正確性が悪いのは、ガンマカーブのズレが原因です。今回の検証ではカスタムモードなどのカラーモードで選択できるガンマ設定を”3”にしていますが、一般的なガンマ2.2カーブとのズレがかなり大きくなっています。
ガンマ2.3相当の”3”設定だけでなく、ガンマ2.1相当の”2”設定など各種設定で入力RGB40以上でのズレが大きく、カラーモードをsRGBにした場合だけ(この時ガンマ設定はグレーアウト)、ガンマカーブがガンマ2.2の標準カーブに近づきます。
カラーモードをsRGBにすると色域がsRGBとピッタリ一致するので、Adobe RGBやDCI-P3を基準にするとカバー率が下がります。ガンマカーブが正常になるので、色の正確性は改善しますが、それでも平均ΔEは1.65程度です。
次にX-Rite i1 Basic Pro 3を使用してカラーキャリブレーションを行いました。キャリブレーション設定は下のスクリーンショットの通りですが、i1 Profilerの標準設定をそのまま採用しています。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」では色温度を標準設定にするとRGBの強さに差が大きいとアラートが出たので、手動で調整できるユーザー設定モードでR(赤)=100, G(緑)=99, B(青)=94としてキャリブレーションを行いました。
X-Rite i1 Basic Pro 3によってカラーキャリブレーションで作成したICCファイルを適用し、同じくX-Rite i1 Basic Pro 3で行った品質検証(色の正確性の検証)の結果は次のようになっています。X-Rite i1 Basic Pro 3は分光式(スペクトロメーター)のカラーキャリブレータなので、測定精度はこちらの方が高いはずです。
上の測定結果ではカラーキャリブレーション前の色の正確性はΔE 5.78でしたが、カラーキャリブレーション後にX-Rite i1 Basic Pro 3で測定した色の正確性はΔE 3.1に改善しました。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」はカスタムモードなど色域が制限されないカラーモードにおいてガンマカーブが適切でなく、カラーキャリブレーションを施したとしても高い色精度を得ることができません。色域の広さと色の正確性を両立することが難しく、イラストレーターなど色の正確性が求められる用途には不向きなモニタです。
また分光型測色計(スペクトロメーター)で測定した輝度120cd/m^2における白色点のカラースペクトラムが次のようになっています。
カラースペクトラムから発色の良いモニタを見分けるざっくりとしたポイントは『RGB各色のピークが鋭く立ち上がり、かつ高さが同程度であること』です。一般的な液晶モニタは白色LEDバックライト(青色LEDを光源として赤緑(≒黄)蛍光体を組み合わせて白色を生成する)を採用しているので青色のピークが高くかつ鋭くなります。白色を基準として測定した場合、緑と赤のピークの高さは色温度のOSD設定で若干上下します。
以上から簡単化すると『緑と赤のピークが鋭くなっているかどうか』をチェックすればカラースペクトラムの良し悪しがざっくりと判定できます。
一般的な液晶パネル(IPS/VA/TNに依らず)であれば下画像の左側のように青のピークだけが強く、残りの分離が弱い波形になりますが、LG製Nano-IPSで有名なKSF蛍光体や、Quantum Dot(量子ドット)といった最新技術が採用された液晶パネルは各色の分離が良く、ピークも急峻になります。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」については緑がややなだらかなものの、赤と青のピークは急峻で、一般的なIPS液晶パネルよりも赤緑青の3色の分離が良好です。
公式ページではLG製Nano-IPS液晶パネルや同等の技術を採用した液晶パネルとして特にアピールされていませんが、赤色に小さい山があるLG製Nano-IPS(KSF蛍光体を採用する液晶パネル)の特長が綺麗に出ています。
KSF蛍光体では赤が強く出やすいのですが、赤と青の強弱については色温度の設定の影響だと思います。
BenQ MOBIUZ EX3415Rの144Hzリフレッシュレートについて
「BenQ MOBIUZ EX3415R」の最大の特徴の1つである144Hzリフレッシュレートについてチェックしていきます。まずは「BenQ MOBIUZ EX3415R」の特徴の1つである”144Hzリフレッシュレート”について、その意味自体は特に説明せずとも読者はご存知だと思いますが、一般的な60Hzリフレッシュレートの液晶モニタが1秒間に60回の画面更新を行うのに対して、144Hzリフレッシュレートであれば標準的な60Hzの2.4倍となる1秒間に144回の画面更新を行います。
最近では競技ゲーマー向け製品で240Hzの超高速リフレッシュレートなゲーミングモニタも普及しつつあり、さらには、それを1.5倍に上回る360Hzの超々高速なリフレッシュレート対応製品も各社から販売されています。
1秒間に144回の画面更新を行う144Hzリフレッシュレートの物理的なメリットとしては、単純に秒間コマ数が増えるので映像がより滑らかになります。上の章で詳しく検証したようにリフレッシュレートが上がると応答速度も上がって細部がクッキリとしたシャープな映像に見えやすくなり、加えて画面更新間隔が短くなるので表示遅延が小さくなり、一般的な60Hz環境よりもスピーディーなプレイで他者を圧倒しやすくなります。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」ではNVIDIA GeForce RTX 30シリーズやAMD Radeon RX 6000シリーズなど最新グラフィックボードのDisplayPort1.4のビデオ出力に接続することによって、モニタリフレッシュレートを144Hzなどに自由に設定できます。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」に搭載された2基のサブ入力はいずれもHDMI2.0なので、3440×1440のUWQHD解像度において最大100Hzリフレッシュレートまで対応します。WQHD解像度であれば144Hzや120Hzにも対応します。
モニタリフレッシュレートの設定は、NVIDIA製GPUの場合は上のスクリーンショットのようにNVIDIAコントロールパネルから、AMD製GPUの場合はWindowsのディスプレイ設定から行います。
オンライン対戦FPSなど競技性の高いゲームにおいて144Hzや240Hzなど高リフレッシュレートのモニタを使用した時の実用的なアドバンテージとして、ゲーム内視線を左右に振った時の視認性が上がるという例は直感的にもわかりやすいメリットですが、その他にもゲーム内遠方に存在して動いているエネミーやオブジェクトの視認性が上がるというメリットも存在します。
下の比較動画では4分割して映像を並べていますが、右下以外の3つは右下画面の緑枠部分を拡大するよう接写して、「SONY DSC-RX100M5」の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影したものになっています。リフレッシュレート別で左上は60Hz、右上は120Hz、左下は240Hzとなっていますが、赤枠で囲った建物の出入り口付近で左方向に移動する敵の動きはリフレッシュレートが上がるほど視認しやすくなるのがわかると思います。
またハイリフレッシュレートなゲーミングモニタでは表示遅延も小さくなります。
表示遅延が小さいメリットとしては、視認と操作の繰り返し応答が良くなることに加えて、例えば下の動画のように壁に隠れたターゲットが壁から出てきた時、画面に表示されるのが実際に速くなります。
240~360Hz・FPSでシステム遅延が小さい環境の攻撃側に敵(守備側)が見えているのに対して、一般的な60Hz・FPSでシステム遅延が大きい環境の守備側は敵(攻撃側)が見えていない様子がハッキリと映っています。
主観の画面表示を基準にしてみると、クロスヘア中央にターゲットをエイムしてから撃ち始めた場合、240Hzのほうが60Hzより先に着弾します。ターゲットが逃げる場合は50ms程度の差で撃ち漏らす場合もあります。
技術云々ではなく、単純に、クロスヘア中央にエイムするという同じタイミングで撃ちあっていたら、リフレッシュレートが高いモニタを使っている方が勝ちます。加えて操作と画面表示の繰り返し応答も早いので、当然、リフレッシュレートが高い方がエイムもスムーズになります。
なお「BenQ MOBIUZ EX3415R」で3440×1440解像度/144FPSを狙うには、元から軽めのPCゲームや画質設定を下げた最新PCゲームであってもグラフィックボードのGPU性能はかなり高い水準で要求されます。
ゲーミングモニタとして「BenQ MOBIUZ EX3415R」を使用するのであれば2021年最新のハイエンドGPUであるNVIDIA GeForce RTX 3070 TiやAMD Radeon RX 6800がおすすめです。
・GeForce RTX 30シリーズのレビュー記事一覧へ
・Radeon RX 6000シリーズのレビュー記事一覧へ
BenQ MOBIUZ EX3415Rの応答速度・表示遅延
次にゲーミングモニタのハードウェア性能として特に重要な、「BenQ MOBIUZ EX3415R」の応答速度や表示遅延についてチェックしていきます。まずは「BenQ MOBIUZ EX3415R」の応答速度について検証していきます。
なおゲーミングモニタを選ぶ、もしくはモニタの応答速度や残像を評価する上で重要な予備知識である『液晶モニタの応答速度とオーバードライブ機能』についてはこちらの記事で簡単に紹介しているので、よくわからないという人は先に確認してみてください。
・ゲーミングモニタの選び方[1] 応答速度とオーバードライブについて
「BenQ MOBIUZ EX3415R」のOSDメニュー上ではオーバードライブ機能は「AMA (Advanced Motion Accelerator)」の名前で設置されています。0~3の4段階で設定でき、数字が大きくなるほど補正が強くなります。標準設定は”2”になっています。
応答速度の確認には「UFO Test: Ghosting」を使用します。同テストではUFOが移動する背景カラーを選択できますが、今回の検証ではブラック/グレー/ホワイトの3色を選択しています。
背景カラーがブラックの場合は各液晶パネルにおいて応答速度は高速な数値を示すので、概ね理想的な応答を確認することになります。背景カラーがホワイトの場合の応答速度は、ドキュメントやウェブページでテキストをスクロールした時の文字の滲み度合いの参考になります。背景カラーがグレーの場合、中間色に移るまでの応答速度を比較することになるので、一般的なゲームプレイにおける物理的な残像の少なさの指標として参考になります。
まずは簡単にシャッタースピードを十分に速くして「UFO Test: Ghosting」の様子を写真撮影してみたところ、「BenQ MOBIUZ EX3415R」を144Hzリフレッシュレート、オーバードライブ設定を”2”で動作させると、ベストケースなら1つ前の残像がギリギリで見える程度でした。
同じく144Hzリフレッシュレートで、オーバードライブ設定を”3”にすると、オーバーシュートの逆像が若干生じるもののベストケースでは綺麗に1フレームだけが表示されます。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」の公式仕様では1ms(MPRT)、2ms(GTG)と公表されていますが、LG製など1ms GTGの高性能ゲーミングモニタと同等の応答速度です。(UWQHD/144Hz/IPSとなれば、そもそもLG製パネルなので当然と言えばそうですが)
さらに「BenQ MOBIUZ EX3415R」のリフレッシュレートを変えてみたり、他の液晶モニタを比較対象にしたりしながら、「UFO Test: Ghosting」の様子を「SONY DSC-RX100M5」の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影し、比較してみます。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」のリフレッシュレートをネイティブ対応する最大値の144Hzにした時、オーバードライブ設定AMAを”2”もしくは”3”にするとベストな応答を見せます。
”2”設定では素の残像が薄っすらとでて、”3”では過渡応答は速くなりますがオーバーシュートによる逆像が強まるので、120~144Hz動作時についてはこの2種類のどちらを選ぶかはお好みでという感じです。
可変リフレッシュレート同期機能を使用する場合、負荷に応じて60FPS~144FPSでフレームレート/リフレッシュレートが変動しますが、オーバードライブ設定AMAを”3”にすると60Hz~90Hzでオーバーシュートがかなり強く出てしまいます。
120Hz以上で安定するなら”3”でもいいですが、総合的に見て「BenQ MOBIUZ EX3415R」で最適なオーバードライブ設定は”2”だと思います。
なおリフレッシュレートが60Hz以下の場合、オーバードライブ設定AMAは”2”であっても若干ですがオーバーシュートの逆像が生じてしまいます。
VRR同期を使用しているのであれば無視してもいい程度ですが、HDMIサブ入力にCSゲーム機を接続し、60FPS上限で使用するなら、オーバードライブ設定AMAは”1”が最適値だと思います。
ここからはSONY DSC-RX100M5の960FPS(16倍速)よりもさらに高速な5760FPS(96倍速)のスーパースローモーションカメラを使用して「BenQ MOBIUZ EX3415R」の応答速度を比較検証していきます。
5760FPSスーパースローでも144Hzや120Hz時のオーバードライブ設定について確認しておくと、960FPSスーパースローでも見た通り、オーバードライブ設定AMAが”2”だと素の残像が出やすく、”3”だと過渡応答は高速になりますがオーバーシュートによる逆像が強まります。
144Hzでは”3”のほうがクッキリ感は強くなるかもしれませんが、VRR同期でリフレッシュレートが下がった時の応答を含め、総合的に考えるとオーバードライブ設定は”2”で決め打ちにするのが手軽だと思います。
続いて高解像度かつ144HzリフレッシュレートのIPS液晶モニタと応答速度を比較してみました。
比較対象には、4K解像度/144Hz対応の「LG 27GP950-B」と3840×1600解像度/144Hz対応の「LG 38GL950G-B」を使用し、144Hzリフレッシュレートで統一しています。
比較対象の2機種はいずれも1ms GTGの高性能ゲーミングモニタですが、動画を見ての通り、「BenQ MOBIUZ EX3415R」は遜色ない性能を発揮しています。公表こそされていないものの、LG製の1ms GTGな液晶パネルが採用されていると考えていい結果だと思います。
「UFO Test: Ghosting」において下の写真のようにUFOが微かに表示された瞬間を始点に、その地点のUFOが完全に消えた時点を終点にして、その間隔のフレーム数を応答速度として算出し比較してみました。なおオーバードライブ機能によって発生するオーバーシュート/アンダーシュートによる逆像が発生してから消えるまでの時間は別に計算しています。
測定には240Hz未満のモニタではSONY DSC-RX100M5の960FPSスーパースローモーションを使用していますが、240Hzを超えるモニタでは5760FPSのスーパースローモーションを使用しており、その場合は末尾に”*”マークを添えています。
評価の目安として、”1000msをリフレッシュレートで割って2倍した数値”よりも測定値が小さければ、画面更新に応答速度が追いついています。60Hzの場合は33.3ms、120Hzの場合は16.6ms、144Hzの場合は13.9ms、240Hzの場合は8.3ms、360Hzの場合は5.6msを下回っていればOKです。
まずは背景カラーがブラックの時の「BenQ MOBIUZ EX3415R」やその他の比較対象モニタの応答速度の計測結果となります。背景カラーがブラックの場合は各液晶パネルにおいて応答速度は高速な数値を示すので、概ね理想的な応答を確認することになります。
続いて背景カラーがホワイトの時の「BenQ MOBIUZ EX3415R」やその他の比較対象モニタの応答速度の計測結果となります。背景カラーがホワイトの場合の応答速度は、ドキュメントやウェブページでテキストをスクロールした時の文字の滲み度合いの参考になります。
最後に背景カラーがグレーの時の「BenQ MOBIUZ EX3415R」やその他の比較対象モニタの応答速度の計測結果となります。背景カラーがグレーの場合、中間色に移るまでの応答速度を比較することになるので、一般的なゲームプレイにおける物理的な残像の少なさの指標として参考になります。
最後に「BenQ MOBIUZ EX3415R」の表示遅延(内部遅延)について測定を行いました。
モニタにはGPUのビデオ出力が送られてきてから実際にモニタに表示されるまで遅延が存在し、この遅延が大きいと例えば、FPSゲームでゲームパッドのトリガーやマウスのクリックによる操作からワンテンポ遅れて、マズルフラッシュが表示される、といった現象が発生します。人間は当然目で見てから操作するので、格闘ゲームやFPSゲームなど1,2フレームを争うような競技性の高いゲームにおいてはモニタの表示遅延が可能な限り小さいことが望まれます。
システム表示遅延やディスプレイ表示遅延の測定には、フォトセンサーを使用した特殊な測定機器「PC Gaming Latency Tester」を使用しています。当サイトのレビュー用に特注した機器なので、詳細についてはこちらの記事を参照してください。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」やその他の比較モニタのディスプレイ表示遅延の測定結果は次のようになりました。測定方法的に遅延が2ms以下であればディスプレイ内部の表示遅延は誤差の範囲内で十分に小さいと考えてOKです。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」やその他の比較モニタのシステム表示遅延の測定結果は次のようになりました。この測定値は一般的なPCゲームにおける操作から画面表示の変化までの遅延に一致します。
グラフの通りリフレッシュレートを上げると応答速度だけでなく表示遅延も改善するのでゲーマーにとってハイリフレッシュレートなゲーミングモニタを選択するメリットは大きいということが分かると思います。
BenQ MOBIUZ EX3415RのFreeSync/G-Sync CPについて
続いて「BenQ MOBIUZ EX3415R」が対応する可変リフレッシュレート同期機能「AMD FreeSync / NVIDIA G-Sync Compatible (VESA Adaptive-Sync、HDMI Variable Refresh Rate)」についてチェックしていきます。モニタの画面更新(リフレッシュ)に関する基本的な予備知識や、「AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync)」と「NVIDIA G-Sync Compatible」の関係についてはこちらの記事を参考にしてください。
・ゲーミングモニタの選び方[3] FreeSyncとG-Sync Compatibleについて
なお当サイトのレビューではNVIDIA環境について、G-Syncモジュールが搭載されたモニタにおける可変リフレッシュレート同期機能を単純にG-Syncと呼び、AMD FreeSync(VESA Adaptive-Sync)に対応したモニタにおける可変リフレッシュレート同期機能はG-Sync CompatibleもしくはAdaptive-Syncと呼びます。またドライバでそのモニタが正式にサポートされている場合はG-Sync Compatible認証取得済みと補足します。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」は48Hz~144Hzの範囲内で「AMD FreeSync / NVIDIA G-Sync Compatible (VESA Adaptive-Sync、HDMI Variable Refresh Rate)」など可変リフレッシュレート同期に対応しています。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」はG-Sync Compatible認証を取得とのことですが、2021年10月現在最新のGeForce Driver 472.12ではG-Sync Compatible認証を未取得と表示されました。
なおNVIDIA環境からは「BenQ MOBIUZ EX3415R」のHDMI2.0ビデオ入力に接続時はVRR同期を使用できませんが、AMD製GPU環境やXbox Series X/SではVRR同期を使用できます。
DisplayPortとHDMIの可変リフレッシュレート同期機能の対応フレームレートは48Hz~144Hz、48Hz~100Hzの範囲内です。
可変リフレッシュレート同期機能が正常に動作してリフレッシュレートが可変になると、「BenQ MOBIUZ EX3415R」のOSDメニューから確認できるリフレッシュレートがフレームレートに合わせて変動するようになるので、機能が正しく動作しているかはここを見て確認してください。
AMD FreeSyncの使い方
可変リフレッシュレート同期「AMD FreeSync」を有効化する手順について説明します。AMD製GPU搭載PCの場合はRadeon設定のウィンドウ右上にある歯車アイコンを選択、トップメニュータブからディスプレイを選択の手順で表示される「Radeon FreeSync」のスライドスイッチから機能を有効化します。
また上で紹介した参考記事中で解説しているように、AMD FreeSyncではテアリング解消とマウス遅延低減のどちらを優先するかで垂直同期の有無を各自で選択する必要があります。垂直同期は通常ゲーム内設定でON/OFFの切り替えが可能ですが、ドライバ側が上書きしてゲーム内からは切り替えられない場合があります。ゲーム内で設定して希望通りの動作にならない時はRadeon Settingsのゲームプロファイルもチェックしてください。
NVIDIA G-Sync Compatibleの使い方
可変リフレッシュレート同期「NVIDIA G-Sync Compatible」を有効化する手順について説明します。2019年1月15日以降の最新ドライバによってNVIDIA GeForce環境でもAdaptive-Syncが利用可能になりました。ドライバの更新に合わせてG-Sync Compatible認証を取得するモニタが増えています。
417.71以降の最新ドライバをインストールして、DisplayPortビデオ出力にAdaptive-Sync対応モニタを接続すると、G-Sync対応モニタを接続した時と同様にAdaptive-Syncを有効化するための設定が、NVIDIAコントロールパネル上の「G-Syncの設定」に表示されます。
「G-SYNC、G-SYNCとの互換性を有効化(Enable G-SYNC, G-SYNC Compatible)」のチェックボックスをチェックして、下のモニタアイコンに使用するモニタの名前が表示・選択されていることを確認し、適用をクリックすればNVIDIA GeForce環境でAdaptive-Syncを有効化できます。
なおG-Sync Compatible認証を取得していない一般のAMD FreeSync/VESA Adaptive-Sync対応モニタでも、互換性が検証されていないと注記が表示されますが、NVIDIA製GPU環境においてAdaptive-Syncを利用できます。
AMD FreeSync/NVIDIA G-Sync Compatibleの効果
可変リフレッシュレート同期機能「AMD FreeSync / NVIDIA G-Sync Compatible」の効果やメリットについて説明していきます。機能的にはほぼ同じなので以下まとめてFreeSyncと呼ぶことがあります。AMD FreeSync / NVIDIA G-Sync Compatibleの検証に際してはリプレイ機能があって同一シーンで検証がしやすいので「Project Cars 2」を使用しています。またフレームレートやテアリングの発生の様子を確認しやすいように、画面左上にはGPUフレームレートOSD、画面左端にはGPUフレームバッファで色の変わるカラーバーが表示されるようにしています。加えてモニタが対応していればモニタOSDのリフレッシュレート表示機能も使用します。
画面右上のフレームレートはGPUフレームバッファから算出されているので必ずしもリフレッシュレートとは一致しません。画面左端のカラーバーは連続するフレーム間、つまりn番目とn+1番目のフレームではそれぞれ異なる色になっているため、同時に複数色のカラーバーが表示されている画面はテアリングが発生していることを意味します。
まずは同期なし、垂直同期、FreeSync、FreeSync+垂直同期の違いを分かりやすく体感してもらうため、モニタリフレッシュレート60HzにおいてGPU側出力フレームレートが30FPS~60FPSの間で変動するようにして、「SONY DSC-RX100M5」の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影して、画面表示の様子を比較してみました。
同期なしでは盛大にテアリングが発生し、垂直同期ではスタッター(カクつき)が発生しているのがわかります。一方でFreeSyncと垂直同期の両方を有効にした場合はテアリングもスタッターも発生しません。ただし例外として動画で50秒以降のフレームレートが40FPSを下回るとAMD FreeSyncの対応フレームレート外となるためスタッターが発生しています。またFreeSyncのみを有効にして垂直同期は無効の場合、同期なしと比べて圧倒的にテアリングが減っているのがわかります。ただし対応フレームレート内であっても稀にテアリングが発生し、対応フレームレート外では同期なし同様にテアリングが発生します。
続いて144Hzリフレッシュレートにおいて、GPU側出力フレームレートが100FPS前後で変動するようにして、先ほど同様に同期なし、垂直同期、FreeSync、FreeSync+垂直同期の様子を16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影して比較してみました。
FreeSync有効であれば同期なしのテアリングや垂直同期のスタッターに悩まされることなく滑らかで綺麗な映像が表示できています。FreeSyncの60Hz/50FPS前後と144Hz/100FPS前後を比較すると当然ですが後者の方がコマ割りが増えるので16倍速スローモーションでもスムーズに見えます。
FreeSyncのみを有効した時に映像フレームレートが対応フレームレート範囲外になるとテアリングが発生しますが、リフレッシュレートを上回ってしまう場合については、Radeon設定のRadeon Chillの最大FPSに”リフレッシュレートから3,4FPSを引いた値”を指定してください。(グローバル設定だけでなくゲームタイトル別に設定が可能)
なおNVIDIA GeForce環境でAdaptive-Syncを利用する場合も、フレームレートがリフレッシュレートを超過するとテアリングが発生するので、テアリングを完全になくすには垂直同期を有効化する必要があります。もしくは垂直同期無効においてテアリングをなくすには、NVIDIAコントロールパネルの「Max Frame Rate」に”リフレッシュレートから3,4FPSを引いた値”を指定してください。(グローバル設定だけでなくゲームタイトル別に設定が可能)
これの設定以外にもRivaTunerやNvidia Profile Inspectorを使用してゲーム内フレームレートがモニタリフレッシュレートを上回らないように設定することも可能です。
下の比較はいずれもFreeSyncが有効になっているのでスタッターもなく滑らかですが、単純にFreeSyncだけを有効にすると対応フレームレートの上限となるリフレッシュレートを超えた時にテアリングが発生します。
リフレッシュレートが144Hz(フレームレートの上限が144FPS)の場合は120FPS~140FPSが上限になるようにフレームレートに制限をかければ、マウス操作を低遅延しつつ、テアリングの発生も最小限に抑えて快適なゲームプレイが可能です。
またPUBGやCS:GOのようなオンライン対戦FPSや格闘ゲームなど1,2フレームを争う競技性の高いPCゲームでは、表示遅延(入力遅延)が発生する垂直同期は嫌われる傾向にありますが、144Hzや240Hzといったハイリフレッシュレートモニタにおいて、同期機能を無効化した場合に発生するテアリングがどのように影響するのか検証してみました。
テアリングはモニタ表示更新中のフレームバッファの更新で発生しますが、目で見た時の違和感はn番目とn+1番目のフレームの絵の差に影響されます。コマ割りが細かくなる高フレームレートではn番目とn+1番目の絵の違いは当然、低フレームレートの場合よりも小さくなります。そのため50FPSでは画面の分断のように知覚できたテアリングは、200FPSのような高フレームレートでは細かいノイズのような形で知覚されます。
100FPSを超える高フレームレートでは大きな分断に見えるテアリングの代わりに、細かいノイズのように感じるテアリングが増えてきます。『細かいノイズの発生程度であれば高リフレッシュレートモニタのテアリングは実用上は大した問題ではなく、可変リフレッシュレート同期機能は不要である』という意見がありますが、高リフレッシュレートモニタのアドバンテージとして先に解説した「ゲーム内遠方に存在して動いているエネミーやオブジェクトの視認性」と合わせて考えると、このノイズの有無は遠方の細かいエネミーやオブジェクトの発見に影響します。なので高リフレッシュレートモニタを使用するのであれば可変リフレッシュレート同期機能はあったほうがいい、というのが管理人の意見です。
BenQ MOBIUZ EX3415RのMBR機能について
「BenQ MOBIUZ EX3415R」はモーションブラーリダクション機能に対応しています。モーションブラーリダクション機能についてはこちらの記事で簡単に紹介しているので、よくわからないという人は先に確認してみてください。
・ゲーミングモニタの選び方[2] モーションブラーリダクションについて
「BenQ MOBIUZ EX3415R」に搭載されたモーションブラーリダクション機能「ブレ削減」は、144Hzや120Hzなどリフレッシュレートが100Hz以上の時に選択できます。ブレ削減を有効にするとVRR同期は無効化されます。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」のモーションブラーリダクション機能では輝度やオーバードライブ設定はグレーアウトせず、通常時と同様に設定を変更できます。
まずはモーションブラーリダクション機能「ブレ削減」が具体的にどのような動作をしているのか確認していきます。「BenQ MOBIUZ EX3415R」の144Hzリフレッシュレートでブレ削減が動作している時の様子を5760FPSスーパースローモーションムービーで撮影してみました。5760FPSで144Hzのモニタを撮影しているので、モニタの1フレームが更新されるまでを撮影した動画は40フレームに分割されます。
一般的なモーションブラーリダクション機能では通常表示前後にバックライトを消灯した黒表示を挟むのですが、「BenQ MOBIUZ EX3415R」のMBR機能をハイスピードカメラで観測すると、水色がかった点灯(緑と青が点灯)と赤黒い消灯(赤だけが点灯)が交互に表示されているのが分かります。
視覚は時間平均されるので通常は画面が水色がかって見えたり、赤黒くみえたりすることはありませんが、「BenQ MOBIUZ EX3415R」のMBR機能は、このような性質があるため、まばたきするタイミングによっては、赤色もしくは水色の残像が見えることがあります。
前述の通り40フレーム周期で1リフレッシュとなっていますが、明転時間は13フレーム、暗転時間は27フレームです。明暗比率は1:2なのでゲーミングモニタのMBR機能としては標準的な比率です。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」ではMBR機能有効時も輝度を調整できますが、輝度を増減させても明暗比率は変わらず、単純に明転時の輝度が調整されます。
画質に関する章のカラースペクトルで言及したように、「BenQ MOBIUZ EX3415R」にはKSF蛍光体(LG製Nano-IPSで有名)の技術を採用した液晶パネルが使用されています。
液晶パネルのバックライトにおいて青色LEDから白色光を生成する蛍光体は色々とあり、一般にその応答は高速なのですが、KSF蛍光体は赤色成分の応答が遅いので上のような表示になっています。(液晶パネルの応答とは別の現象で、バックライトの輝度が変化した時にだけ影響します)
『赤色成分の応答が遅い』という性質を分かりやすく確認するため、白黒赤緑青の5色の帯の静止画を表示して、KSF蛍光体の液晶パネルにMBR機能を有効にしました。下の静止画を単純に表示しているだけなので、液晶画素自体には一切変化がありません。
144Hzを5760FPSで撮影した1リフレッシュ、40フレームのうち変化が分かりやすいように一部を抜粋していますが、見ての通り、緑色と青色は1/5760単位で1~2フレーム以内に点灯と消灯が可能です。一方で赤色は緑・青色が点灯してからゆっくりと明るく、逆に消灯してからゆっくりと暗くなっています。
白色は赤緑青の三原色の合成なので、MBRの点灯タイミングは水色がかり、消灯タイミングは赤黒くなります。
またモーションブラーリダクション機能では、残像感を低減させる効果が期待できる反面、バックライトを消灯するので時間平均の輝度が下がって画面が暗くなるというデメリットが指摘されます。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」はMBR機能を使用しても最大300cd/m^2という高い輝度を発揮でき、また通常時と同様に輝度は0%~100%で調整できるので、暗い環境から明るい環境まで幅広く対応できると思います。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」に搭載された「ブレ削減」などモーションブラーリダクション機能は、人の目の錯覚が引き起こす残像やボヤケを解消する機能なので、写真や動画を見せて残像が抑制されている様子を実際に見せるというような解説は厳密には不可能です。
そのためレビューでは管理人が試用してみたインプレッションを伝えることくらいしかできないのですが、MBR機能を有効にすると動いている物体の輪郭がクッキリとして確かに視認しやすくなりました。下の写真は管理人が「UFO Test: Strobe Crosstalk」を見た時の感覚を表現したイメージ図ですが、輪郭のボヤケがなくなってネイティブスピードでも倍速ハイスピード動画のスローモーションで輪郭を追っている時に近い感覚で追従して見ることができました。
BenQ MOBIUZ EX3415RのHDR表示やCSゲーム機対応について
最後に「BenQ MOBIUZ EX3415R」のHDR表示やCSゲーム機の対応(4Kエミュレートなど)についてチェックしていきます。HDR表示やCSゲーム機対応について | |
HDMI ver, ポート数 |
HDMI2.0×2 |
HDR表示 | 対応 |
VRR同期 | 併用可能 |
カラーフォーマット | DP: 3440x1440/144Hz/10bit RGB HDMI: 3440x1440/100Hz/10bit RGB |
ピーク輝度(実測) | 430cd/m^2 |
輝度認証 | VESA DisplayHDR 400 |
ローカルディミング | 非対応 |
4Kエミュレート | 4Kエミュレート対応(ネイティブWQHD) |
PlayStation 5 | 4K/60FPS、フルHD/120FPS対応 |
Xbox Series X/S | 4K/60FPS、WQHD/120FPS対応 |
HDR表示への対応やカラーフォーマットについて
「BenQ MOBIUZ EX3415R」はHDR表示に対応しており、VESAがPCモニタ向けに展開している輝度認証のVESA DisplayHDR 400を取得しています。「BenQ MOBIUZ EX3415R」は映像ソース機器から常時、HDR信号を受け付けるように認識されますが、HDR映像の入力があると画像モードがHDRモードへ自動的に切り替わります。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」はHDRソースを検出した時に設定できる画像モードとして、「ゲームHDRi」「シネマHDRi」「Display HDR」の3つのモードが用意されています。
3つのHDRモードのうちDisplay HDRモードはVESA DisplayHDR 400が策定する規格に準拠したプリセット、ゲームHDRiモードとシネマHDRiモードはその名の通りゲームや映画と言った映像ソースに最適化されています。
BenQ独自のHDRテクノロジーであるHDRiによって、画像のコントラストと鮮明度を向上させ、より詳細な表示を可能とし、暗い部分では隠れている部分を鮮明に表示し、明るい部分は露出オーバーならないよう調整しているとのことです。
「ゲームHDRi」「シネマHDRi」「Display HDR」の3つのモードはモニタ右端に設置されたHDRiスイッチで表示されるショートカットメニューからも切り替えが可能です。
各HDRモードではディスプレイ輝度の項目がグレーアウトし、輝度制御が半自動になります。またHDRモード毎に一部のゲーミング機能や色設定も排他利用(グレーアウト)になります。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」はDisplayPort1.4に対応しているので、最新グラフィックボードを搭載したゲーミングPCと接続した場合、UWQHD/144Hz/HDR表示において、RGB 10bitのカラーフォーマットに対応します。G-Sync Compatibleなど可変リフレッシュレート同期機能も併用が可能です。
また「BenQ MOBIUZ EX3415R」のHDMI2.0ビデオ入力はUWQHD解像度において100Hzが最大リフレッシュレートですが、UWQHD/100Hz/HDR表示において、RGB 10bitのカラーフォーマットに対応します。NVIDIA環境は非対応ですが、AMD環境ではFreeSyncによるVRR同期も併用可能です。
HDRについて簡単に説明すると、HDR(ハイダイナミックレンジ)というのは、RGBの光の三原色の映像情報に加えて、輝度(明るさ)の情報が備わった映像ソースのことです。
従来の表示機器や映像ソースでは10^3程度のダイナミックレンジしかありませんでしたが、HDRに対応することでダイナミックレンジが10^5程度と100倍近く拡張され、従来よりも細かい階調で明るさや暗さを表現できるようになり、「明るい場所は明るく、暗い場所は暗く」なるように画面の明るさを操作することで、白飛びや黒潰れをなくして高画質を実現しています。
HDRに関する説明は色々とあると思いますが、管理人は『明るい場所はより明るく、暗い場所はより暗く』と大雑把に理解しています。
「明るい場所は明るく、暗い場所は暗く」するということは必ずしも”見えやすく”なるわけではありません。というか暗い場所は暗くなるので必然、暗い部分は見えにくくなります。逆に明るい場所が明るくなったら見えやすくなるかというと、再現可能な輝度の領域が増すので、ディスプレイによる描画は現実に近づきますが、太陽を覗き込んだ時のように特に明るい場所の周辺は光で潰れて(目の調光機能的な問題で)見えにくくなります。もちろん明暗が分かれることで境界線がクッキリして見えやすくなる場合もあります。
一部のゲーミングモニタに暗所を明るく(白く)して見えやすくする機能があるように、HDR表示は見やすさには直結しないので、見やすさという意味で画質が良くなるのかというと、その点はケースバイケースです。SDRダイナミックレンジの範囲内で平滑化されていた時に比べて、暗い部分が強調されることを考えると見えにくさの方が体感しやすい気がします。
HDRは原理的にはモニタから見える映像を”リアル”に近づける機能です。ただし実際のところはモニタ個別の色調設定などの都合で鮮やかになり過ぎたり色味が変わったりするので、「実際の視覚と同じ」という意味でリアルかというと疑問符が付くのですが。「明るい場所は明るく、暗い場所は暗く」なるので立体感は増して、平面表示の中に奥行を感じやすくなるという点ではリアルな表示に近づきます。個人的にはHDR表示の効果はSDRに比べて、鮮やかになって、立体感が増すと感じています。
4Kモニタの広告をフルHDモニタで見る以上に、SDRモニタでHDRについて体感的に理解することは困難です。なのでHDRについては店頭など実機で体験して気に入れば購入するくらいが正直なところおすすめです。HDRについては正直に言って”百聞は一見に如かず”な機能です。SDRモニタ上で調べるよりもHDR表示の実機を見て気に入るかどうかが全てな機能だと思います。
HDR表示におけるディスプレイ輝度やローカルディミングについて
「BenQ MOBIUZ EX3415R」はVESAがPCモニタ向けに展開している輝度認証のVESA DisplayHDR 400を取得しています。VESAがMicrosoft Store上で無料アプリとして公開しているVESA DisplayHDR Compliance Testsから、「BenQ MOBIUZ EX3415R」のディスプレイ輝度の扱いが確認できました。(データの読み方については管理人も怪しいので参考までに)
近年のモニタにおいてHDRモードのディスプレイ輝度は高輝度領域の広さや高輝度表示の継続時間に依存するので、i1 Display Pro Plusを使用してHDR時の最大輝度を条件別で測定してみました。なお持続最大輝度は十数秒後で測定しているのでもう少し下がる可能性もあります。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」は全体と10%部分、長時間の持続輝度のいずれも430cd/m^2の明るさで大きな変動はありませんでした。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」はDisplay HDRなど一部のHDRカラーモードにおいて全体のバックライト制御はありますが、バックライトが部分的に駆動するローカルディミングには非対応です。
CSゲーム機接続時の4KエミュレートやHDCP対応について
「BenQ MOBIUZ EX3415R」は3440×1440解像度の21:9アスペクト比ですが、CSゲーム機を接続した場合、中央に16:9アスペクト比で横伸びせずに表示が可能です。画面が横伸びしてしまう場合は、「システム - 表示 - 画面モード」から縦横比もしくは1:1を選択してください。
PIP/PBPで紹介したように、「BenQ MOBIUZ EX3415R」は左側に一般的な16:9アスペクト比でメイン画面を表示しつつ、右側に縦長画面を表示できます。
PlayStation 5やXbox Series X/Sといったゲーム機をメイン表示しながら、スマホで攻略ページやSNS、ストリーミングを表示するような使い方が可能です。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」のサブ入力として設置されている2基のHDMI端子はHDMI2.0で、4Kエミュレートに対応しています。
モニタの物理的な解像度が垂直1440なので実際の表示自体は当然WQHDにダウンスケールされますが、PlayStation 5やXbox Series X/Sに接続した場合、4K/60FPS対応モニタとして認識され、4K解像度のビデオ出力が可能です。
PlayStation 5やXbox Series X/Sのビデオ出力設定を4K解像度にすると、最新のデジタル著作権保護HDCP2.3に対応し、Ultra HD Blu-rayなど著作権保護のあるコンテンツも再生が可能になります。
PlayStation 5を「BenQ MOBIUZ EX3415R」に接続した場合、フルHD/120FPSに対応します。
Xbox Series X/Sは1440pにも対応しているので2560×1440のネイティブ解像度でビデオ出力が可能、加えて120Hzリフレッシュレートや可変リフレッシュレート同期機能も利用できます。
BenQ MOBIUZ EX3415Rのレビューまとめ
最後に「BenQ MOBIUZ EX3415R」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- 21:9アスペクト比の34インチウルトラワイド、1900Rで湾曲
- 発色や視野角に優れたIPS液晶パネルで、98% DCI-P3の広色域
- 液晶パネルは反射防止のアンチグレア
- IPS液晶としてはトップクラスに高速な応答速度
- ビデオ入力はDisplayPort1.4とHDMI2.0×2の計3系統
- DP1.4はUWQHD/144Hz/10bit RGB/HDR/VRRに完全対応
- HDMI2.0はUWQHD/100Hzや、4Kエミュレートで4K/60Hz/HDRに対応
- 可変リフレッシュレート同期機能に対応(48FPS~144FPS)
- HDR輝度認証のVESA DisplayHDR 400を取得
- PS5やXbox SXを接続時は4Kエミュレートで4K/60FPS
- フルHDやWQHDなら120FPSに対応、VRR同期も使用可能
- モニタ本体重量5.6kgかつVESAマウント対応でモニターアームを使用可能
- OSD操作用の専用リモコンが付属
- 2.1チャンネルの高音質スピーカーを搭載
- 製品価格が税込み13万円と非常に高価
- SDR表示において最大輝度が200cd/m^2で低め
- ガンマカーブが特殊なのでイラスト関連など色の正確性が求められる用途には不向き
- OSDクロスヘアなどゲーマー向け機能も充実していて欲しかった
「BenQ MOBIUZ EX3415R」の魅力はまず、21:9アスペクト比ウルトラワイドの3440×1440解像度でネイティブ144Hzリフレッシュレートに対応するところです。27インチWQHDの左右が伸びたような34インチウルトラワイド画面が1900Rで湾曲しているので、ゲーム画面に包み込まれるような臨場感と迫力を体感できます。
”UWQHD解像度かつ144Hzリフレッシュレート、VRR同期に対応するウルトラワイド34インチIPS液晶ゲーミングモニタ”というスペックに限れば、最大手のLGはもとより競合他社から発売済みの製品もありますが、「BenQ MOBIUZ EX3415R」は専用リモコンによるOSD操作が可能である、PIP/PBP機能に対応している、terVolo2.1チャンネル高音質スピーカーを搭載している、といった独自の魅力があります。
公式情報ではないものの検証結果を見る限り、「BenQ MOBIUZ EX3415R」にはLG製Nano-IPS液晶パネルが採用されており、1ms GTG相当の高速応答と一般的なIPS液晶モニタを大きく上回る優れた発色を実現しています。
応答速度についてはオーバードライブ設定のチューニングも良好で文句はないのですが、発色についてはゲーミング・映画視聴の用途に振り過ぎたのか、一般的なガンマカーブを適用できないため、色域の広さと色の正確さを両立出来ないところは気になりました。
ゲーミング・映画視聴において鮮やかで迫力のある画面にはなるのですが、色の正確さが求められるイラストレーターなどには向かないモニタになっているのでその点は注意してください。
「BenQ MOBIUZ EX3415R」は可変リフレッシュレート同期機能「AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync、HDMI Variable Refresh Rate)」に対応しています。VRR同期対応フレームレートとして48FPS~144FPSの幅広いフレームレートをカバーしており、60FPS前後しか維持できない最新の高画質な重いゲームから、100FPS以上を維持できる競技性の高い軽めなゲームまで、テアリングやスタッターのないクリアで滑らかな表示を実現します。
残念ながらNVIDIA製GPUとの互換性を証明するG-Sync Compatible認証は今のところ取得していませんが、NVIDIA製GPU環境でもVRR同期機能自体は利用できます。
以上、「BenQ MOBIUZ EX3415R」のレビューでした。
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UWQHD解像度/144Hz、VRR同期に対応するウルトラワイド34インチIPS液晶ゲーミングモニタ「BenQ MOBIUZ EX3415R」をレビュー。
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) October 12, 2021
リモコン操作にPIP/PBPも対応でウルトラワイドの決定版か!?https://t.co/BQIxeMQPhd pic.twitter.com/hdq6T5r330
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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