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Thermal Grizzlyから発売された絶縁保護剤「TG SHIELD」を使用して、水冷化したGeForce RTX 3090へさらにクマメタル化を施したので、作業手順やクマメタル化によって冷却性能がどれくらい向上したのかレビューしていきます。
ちなみに内容的には前回のGeForce RTX 3090の水冷化のプチ続編となっているので、こちらの記事も是非先にご覧ください。
液体金属と絶縁保護剤TG SHIELDについて
先日、EKWB製RTX 3090リファレンス基板用フルカバー水冷ブロック「EKWB EK-Quantum Vector RTX 3080/3090」を使用してGeForce RTX 3090を水冷化したばかりですが、その時にはGPUコアと水冷ブロックの間のTIMにはクマグリスことKryonautを使用しました。今回はKryonautのような絶縁性のあるシリコングリスではなく、導電性がある代わりに熱伝導率が非常に高い液体金属Conductonautに塗り替えるというわけです。
まず予備知識として、Thermal Grizzly Conductonautなど液体金属グリスはアルミニウムに対して侵食性があるので、CPUやGPUと接する金属ベースプレートは少なくとも銅製、浸食を完全に抑えるにはニッケルメッキ処理が推奨されます。
さらに液体金属グリスは導電性があってマザーボードやグラフィックボード基板に零れるとショートによる破損の可能性があります。そのため当サイトではIHSで半密閉されて安全なので、液体金属グリスは基本的にCPUの殻割り時にCPUダイとIHSの間に塗る用途での使用を推奨しています。
しかしながら今回はThermal Grizzly製品の国内正規代理店である親和産業の協力で、新製品の絶縁保護剤「TG SHIELD」のサンプルをご用意していただけたので、今回は液体金属Thermal Grizzly Conductonautを使用した最終奥義”GPUのクマメタル化”に挑戦してみました。
「Thermal Grizzly TG SHIELD」は”絶縁保護剤”の名前の通り、液体金属を塗布するCPUコアやGPUコアの近くにある素子に液体金属が触れてショートするのを防ぐための保護剤です。
今回は記事の後半で紹介するようにGPUコア周辺の素子を保護するのに使用しますが、CPUの殻割りなど液体金属から素子や導体を保護する用途一般に使用できます。
マニキュアのようなビンに入っていて、蓋には保護剤を塗布するためのブラシが付いています。血のような赤色に染色されていますが、匂いを嗅いでみると、プラモデルを作ったことのある人は分かると思いますが、プラスチックを溶かすタイプの接着剤そのものでした。
当サイトでCPUを殻割りする時にオススメしている絶縁保護剤COM-G52はタックフリータイムが1時間程度ですが、「Thermal Grizzly TG SHIELD」は30分程度で硬化するとのこと。
水冷化RTX 3090へさらにクマメタル化を施す
予備知識の解説も済んだので、早速、水冷化GeForce RTX 3090のクマメタル化の手順を紹介していきます。毎度お馴染みですが、管理人のメイン機ではグラフィックボードの前後にKoolance製クイックディスコネクト「QD3」を入れています。グラフィックボードの前後にクイックディスコネクトがあるので、システム全体の水抜きを行わずに水冷化グラボの交換が行えます。
普通の水冷と違って電源オフから水冷ブロックの取り外しまで水漏れに注意しながら慎重に行っても10分程度で済んでしまうのがソフトチューブ&QDによる水冷環境のメリットです。
水冷化グラボを取り外したら、誤ってフィッティングを緩めないように注意しつつ、ネジ止めを緩めて水冷ブロックを取り外します。
水冷ブロックを取り外したら、前回塗っていたシリコングリスを入念に(といっても可能な限りですが)拭き取りました。Thermal Grizzlyからはグリス除去剤「TG REMOVE」(アセトンベースの高性能ナノクリーナー)も発売されているので、こういうものも使うと拭き取りやすいと思います。
GPUコア周辺の素子の間に少しグリスが残っているのですが、これくらいなら問題はないはずです。
シリコングリスの除去が済んだら、いよいよThermal Grizzly TG Shieldを使ってGPUコア周辺の素子を保護していきます。
TG Shieldには塗布用のブラシが付いていますが、幅が広くGPUコア周辺の小さいチップコンデンサだけに綺麗に塗布するのは難しいので、GPUコアをマスキングテープで保護しつつ、外周側にも貼ってスリットを作り、そこから保護剤を塗布する手法がオススメです。
具体的な塗り方は各自に任せますが、GPUコアの天面に保護剤が付着すると非常に面倒なのでマスキングテープで養生してから保護剤を塗布するように強く推奨します。
上下2辺を塗ったら10分程度置いて硬化を待ち、次に左右2辺を塗ります。一応、確実にシーリングするために管理人はこれを2周繰り返しました。保護剤を塗ったら硬化時間の30分程度放置しておきます。
TG Shieldが硬化したらクマメタルことThermal grizzly ConductonautをGPUコアへ塗布します。この辺りの手順は殻割りクマメタル化と全く同じです。Thermal grizzly Conductonautに付属するリムーバーでしっかりと脱脂して、同じく付属の綿棒で擦るように塗り広げます。
あと管理人が独自に追加した手順として、GPUコア周辺の素子はともかくさらに外側へ液体金属が零れていくとどうしようもないので、耐熱絶縁テープを二つ折りにして折り目を外に向けて囲うようにコア周辺に貼り付けました。たぶん水冷ブロックのベースコア周りに貼り付いて液体金属が外に零れるのを防いでくれるかなと。
塗り過ぎると零れるので注意が必要ですが、ベースプレート側が液体金属を弾く可能性もあるので、事前に脱脂して水冷ブロック側にも薄くクマメタルを塗り広げておきました。あとは水冷ブロックを装着し直したら水冷RTX 3090のクマメタル化も完了です。
冒頭で”禁断の奥義”と書いたようにCPUヒートスプレッダで半密閉にしない状態での液体金属の利用は個人的に推奨しておらず、また実際にGPUのクマメタル化は初めてだったので作業もおっかなびっくり、水冷ブロック再装着後もちゃんと動作するか(20万のグラボがご臨終したら…)不安だったのですが、簡単に確認だけしたところ無事にBIOSメニューが表示されて安心しました。
GeForce RTX 3090水冷化に加えて、クマシールドで安全に?行うクマメタル化も無事に完了したので、前回シリコングリスのKryonautで水冷化した時と比較して、TIMを液体金属のConductonautに塗り替えるとどれくらい冷えるのか検証してみました。
前回シリコングリスKryonautで水冷化に使用した時のデータですが、「EKWB EK-Quantum Vector RTX 3080/3090」のように高品質なフルカバー水冷ブロックであれば、RTX 3090の場合、GPU温度は水冷ブロックに流入する直前の水温+12~13度前後なりました。
液体金属のConductonautに塗り替えたところ同じ水温に対してGPU温度は3度前後低下しました。
確実に温度低下は期待できますが、一方で絶縁保護の手間とGPUコア周辺を保護してもショートの可能性はゼロではない(GPUダイとベースプレートからはみ出した液体金属がさらに外へ零れるかもしれない)ので、実用としてはシリコングリスKryonautで十分、クマメタル化はかなり趣味の領域になると思います。
結果を補足すると、GeForce RTX 3090はGPUダイの面積が非常に大きく、CPUのクマメタル化でもそうでしたがダイ面積が大きくなるほど液体金属vsシリコングリスの性能差は小さくなる傾向があります。ただ面積に対する熱量が増えると性能差が広がる傾向もまたあるので、TGP400W超のファクトリーOCなRTX 3090ならまた違った結果になるかもしれません。
また水冷ブロックEKWB EK-Quantum Vector RTX 3080/3090の製造品質が高く、きれいにGPUダイとベースプレートが接していたことも性能差が小さい1つの要因だったのではないかとも思います。
以上、『クマシールドで安全に!? 禁断のRTX 3090クマメタル化を試す』でした。
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クマシールドで安全に!? 禁断のRTX 3090クマメタル化を試す!
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) January 1, 2021
絶縁保護剤TG SHIELDを使用して水冷化GeForce RTX 3090へさらにクマメタル化を施します。作業手順やConductonautによってKryonautと比較して冷却性能がどれくらい向上したのかレビュー。https://t.co/xKyoYJYkwi pic.twitter.com/3cWJxsHFPn
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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