Intel Xeon w7-2495X


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パーソナルワークステーション向けXeon Wシリーズながら倍率アンロックでOCに対応するXeon W-2400Xの最上位モデル、24コア48スレッドの「Intel Xeon w7-2495X」をレビューします。
メインストリーム向け最上位モデルのCore i9 13900KやRyzen 9 7950Xと比較して、クリエイティブタスクやPCゲーミングにおいてどれくらい性能を発揮するのか、各種ベンチマーク比較によって徹底検証していきます。
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製品公式ページ:https://www.intel.co.jp/content/www/jp/ja/products/sku/233416/intel-xeon-w72495x-processor-45m-cache-2-50-ghz/specifications.html





Intel Xeon w7-2495X レビュー目次


1.Intel Xeon w7-2495Xの外観・付属品・概要
2.Intel Xeon w7-2495Xの検証機材・動作設定


3.Intel Xeon w7-2495Xの動作クロック・消費電力・温度

4.Intel Xeon w7-2495Xの基礎ベンチマーク

5.Intel Xeon w7-2495Xのクリエイティブ性能
  ・3Dレンダリング性能
  ・動画編集・エンコード性能
  ・RAW現像・写真リタッチ性能
  ・PCゲーム/スマホアプリのビルド性能
  ・AIアップスケール・自動分類性能

6.Intel Xeon w7-2495Xのゲーミング性能
  ・4K解像度/60FPSターゲット
  ・フルHD解像度/ハイフレームレート

7.CPUエンコーダとリアルタイム配信について

8.Intel Xeon w7-2495Xのレビューまとめ
  ・温度・消費電力について
  ・クリエイティブ性能について
  ・ゲーム性能について
  ・総評



【機材協力:Intel】



Intel Xeon w7-2495Xの外観・付属品・概要

「Intel Xeon w7-2495X」の外観や付属品について簡単にチェックしておきます。またこの章では「Intel Xeon w7-2495X」の仕様等について簡単に触れておきたい概要もあれば紹介します。
メインストリーム向け最上位モデルCore i9 13900Kはオシャレな化粧箱に加え内部にIntel第13世代CPUダイをプリント後のシリコンウェーハを模した銀色の円盤が内蔵されているという豪華なパッケージでしたが、「Intel Xeon w7-2495X」はメインストリーム向け下位モデルと同じく紙製パッケージです。
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Xeon W-2400X/3400XシリーズCPUのパッケージは、CPUクーラーが付属しない第13世代CPUよりも一回り大きいくらいのサイズ感です。
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パッケージを開くとメインストリーム向けCPUと同じように茶色のスペーサーがあり、プラスチック製ケースにCPU本体が収められています。付属品は冊子、シール、そしてプロセッサーキャリアです。
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パッケージのチェックはこの辺りにして、肝心の「Intel Xeon w7-2495X」のCPU本体を見ていきます。
LGA4677ソケットに対応する「Intel Xeon w7-2495X」は、競合AMDのRyzen ThreadripperやEPYCと同様に縦長の形状です。
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「Intel Xeon w7-2495X」のサイズをIntel Core-XやAMD Ryzen Threadripperと比較してみました。Core-Xの2倍強、Ryzen Threadripperと同じくらいのサイズ感です。
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パッケージや外観の話はこの辺りにして、続いて「Intel Xeon w7-2495X」のスペックについて見ていきます。
Xeon W-2400Xシリーズの最上位モデル「Intel Xeon w7-2495X」は24コア48スレッドのCPUです。
CPUコアは全て、13900Kなどメインストリーム向け第13世代CPUのP-Coreと同等のアーキテクチャ Raptor Coveで構成されています。

単コア最大ブーストクロックは4.8GHz(TBM3.0有効時)、全コア最大ブーストクロックは3.3GHzとなっています。CPU消費電力の指標となるProcessor Base Powerは225W、Maximum Turbo Powerは270Wです。
Intel-Sapphire-Rapids-Xeon-W-2400_lineup

Sapphire Rapidsのコードネームで呼ばれる「第4世代Xeonスケーラブル・プロセッサー(4th Gen Xeon Scalable Processors:Xeon SP)には、4xタイルによるチップレット構造を採用するXCC(eXtreme Core Count)と、従来同様のモノリシックなMCC(Medium Core Count)という2種類のパッケージが用意されています。
Intel-4th-Gen-Xeon-Scalable-Family-Sapphire-Rapids_package
Intelのメインストリーム向け第12/13世代CPUでは高性能コアと高効率コアの2種類の混成でCPUを構成するIntel Hybrid Computing Architectureが採用されていますが、Sapphire Rapidsは高性能コアのみで構成されています。
Sapphire RapidsのCPUコアには、一般デスクトップ向け第13世代Raptor Lake-SのP-Coreと同じく、Raptor Cove(改良型Golden Cove)アーキテクチャが採用されています。
Intel-4th-Gen-Xeon_Core-Architecture

Platinum/Goldなどでランク分けされるXeon SP(Xeon Scalable Processors)は主にエンタープライズ向けCPUですが、同じ第4世代Xeonスケーラブル・プロセッサーを、パーソナルorスモールビジネスのワークステーション向けCPUとして展開したのがXeon W-2400/3400シリーズCPUです。
上記の通り、2種類のCPUパッケージが存在するので、Xeon W-2400シリーズはMCC、Xeon W-3400シリーズはXCCを採用する形で2種類がラインナップされています。
CPU直結PCIEレーン数がそれぞれ64レーンと112レーンなので、Sapphire Rapids-64L、Sapphire Rapids-112Lとも呼ばれます。
Intel Xeon W-2400X and 3400X Series
Intel Xeon W-2400X and 3400X Series_feature

Xeon W9-3495XやXeon W7-2495Xなど末尾”X”付きモデルは倍率アンロックなのでW790マザーボードと組み合わせれば、Core i9 13900Kなどメインストリーム向けのK付きCPU同様にCPUコアクロックのOCに対応します。
Intel Xeon W-2400X and 3400X_unlocked

Xeon W-2400X/3400XシリーズCPUは、LGA4677ソケットのW790チップセット搭載マザーボードと組み合わせて使用します。
Intel-Sapphire-Rapids-Xeon-W-2400_platform
Xeon W-2400X/3400XシリーズCPUのシステムメモリはDDR5メモリを採用し、定格でメモリ周波数4800MHzをサポートしています。
なお自作PCで一般的なアンバッファードなメモリにも対応していたCore-Xと異なり、Xeon W-2400X/3400XシリーズCPUの対応システムメモリはレジスタードDDR5メモリに限定されます。
Xeon W-2400Xは4チャンネル、Xeon W-3400Xは8チャンネルとなっており、いずれも1チャンネル当たり最大2枚のメモリモジュールに対応します。(実際に使用可能なメモリチャンネル数、モジュール数はマザーボードによる)
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W790チップセットはPCIE4.0相当のDMI4.0x8レーンによってCPUと接続されており、PCIE4.0x16レーン、PCIE3.0x12レーン、8基のSATA3.0、最大5基のUSB3.2 Gen2x2などを拡張できます。
下の比較表を見ての通り、W790チップセット自体の拡張性はメインストリーム向けのZ790チップセットとほとんど変わらない、というかPCIEやUSBといったインターフェースの仕様は前世代Z690チップセットとほぼ同じです。
Xeon W-2400X/3400XシリーズCPU環境が拡張性においてCore i9 13900Kなどメインストリーム向け第13世代CPU環境と大きく異なるのは、主にCPU直結PCIEレーン数とメモリチャンネル数(搭載可能メモリ数、容量)の2つです。
Intel W790 vs Z790
Xeon W-2400-3400_vs-13th Core-S

CPUクーラーマウント関連についても少し補足しておきます。Intel LGA4677ソケットは、Intel LGA1700やAMD AM5といったメインストリーム向けのLGAソケットと大きく異なるポイントとしてCPUソケット自体にはCPUを上から押さえつけて固定するフレームがありません。
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LGA4677ソケットではマザーボード自体にCPU単独で固定することはできないので、Intel Xeon W-2400X/3400XシリーズCPUのボックス品にはプロセッサーキャリアと呼ばれる、CPUクーラー側にCPUを固定するフレーム部品が付属しています。
CPUはプロセッサーキャリアによってCPUクーラーベースプレートに固定されて脱落することはないので、CPUクーラーの着脱時にCPUクーラーからCPUが落下してLGAソケットがピン折れする心配はありません。
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LGA4677ソケットの場合、CPUクーラーを固定するリテンションがそのままCPU底面接点とLGAピンの接触リテンションとなっており、Intelの公式仕様では『8 lbs・in (≒ 0.9Nm)』のトルクでネジ締めが推奨されています。
Intel LGA4677_install
万全を期すのであれば、Ryzen Threadripperに付属するような形状のトルクグリップT30のビットを用意するのがオススメです。(ENERMAX LIQTECH TR4 IIはプラスネジのビットが必要)
1/4”ビットのドライバーを使用しているのであればトルク空転ビットでも対応できます。あとは初期費用は割高になりますが可変トルク調整に対応したトルク空転ドライバーを買っておけば別プラットフォームで異なるトルクが必要になっても買い替えの必要がなく便利です。
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Intel Xeon w7-2495Xの検証機材・動作設定

以下、「Intel Xeon w7-2495X」の各種検証を行うベンチ機、および比較対象となる各CPUのベンチ機の詳細となります。
Intel LGA4677(W790)環境 テストベンチ機の構成
CPU Intel Xeon w7-3495X (レビュー
Intel Xeon w7-2495X (レビュー
Intel Xeon w5-2455X (レビュー
マザーボード ASUS Pro WS W790-ACE
レビュー
CPUクーラー ENERMAX LIQTECH TR4 II 360 (レビュー
Noctua NF-A12x25 PWM x3 (レビュー
メインメモリ G.Skill Zeta R5 DDR5 R-DIMM
F5-6000R3039G16GQ4-ZR5K
16GB×4=64GB (レビュー
6000MHz, CL30-39-39-96
ビデオカード(共通) PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8
Gaming VERTO EPIC-X RGB OC 3FAN
レビュー
システムストレージ(共通) Samsung SSD 990 PRO 1TB
レビュー
OS(共通) Windows 11 Home 64bit
電源ユニット(共通) Corsair HX1500i 2022 (レビュー
ベンチ板 STREACOM BC1 (レビュー



比較に使用しているその他のテストシステムについてはこちらを参照してください。



Intel Xeon w7-2495XなどXeon W-2400XシリーズCPUを検証するIntel LGA4677(W790)環境では、検証機材マザーボードとして「ASUS Pro WS W790-ACE」を使用しています。


ASUS製マザーボードではBIOS設定のASUS Multicore Enhancementを”Disabled - Enforce All limits”にすれば、Intel公式仕様通りの電力制限が適用されます。
ASUS Pro WS W790-ACE_BIOS_MCE


ディスクリートGPU、グラフィックボードがゲーミング性能において重要なのは言うまでもありませんが、近年ではクリエイティブタスクでもGPU支援による性能向上が主流になっているので、CPU性能比較の統一検証機材として、2022年最新のウルトラハイエンドGPUを搭載したグラフィックボード「PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8 Gaming VERTO EPIC-X RGB OC 3FAN」を使用しています。
GPU for CPU Test

PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8は、ベイパーチャンバー構造のベースコアや、厚みのあるファンブレードをバリヤーリングで結合した重厚な冷却ファンを採用する4スロット占有大型GPUクーラーにより、各社AIBモデルの中でもトップクラスの静音性を実現しています。
メーカーのPNYは2022年に株式会社アスクが販売代理店契約を結んだばかりの新参なので国内での知名度は高くありませんが、北米など海外市場では30年以上に渡りコンシューマーならびにビジネス向けで電子機器の製造・販売を行う大手メーカーです。
国内正規品なら代理店を介してPNY公式のグローバル保証と同じ3年間の長期保証が受けられるところも魅力です。
「PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8」をレビュー
PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8 Gaming VERTO EPIC-X RGB OC 3FAN

Intel Xeon W-2400X/3400XシリーズCPUの検証機ではシステムメモリとして、DDR5 R-DIMMながらIntel XMP3.0によるメモリOCに対応した「G.Skill Zeta R5 DDR5 R-DIMM(型番:F5-6000R3039G16GQ4-ZR5K)」を使用しています。
サーバー・WS向けプラットフォームなのでOCに躊躇する人もいると思いますが、Xeon W-2400X/3400XをCore-Xの後継、ゲームもクリエイティブタスクもこなせる超高性能なハイエンドデスクトップとして運用したい人には、6000MHz超のメモリOCに対応したG.Skill Zeta R5 DDR5 R-DIMMシリーズはオススメです。
「G.Skill Zeta R5 DDR5 R-DIMM」をレビュー。6000MHz/CL30のOCを試す!
G.Skill Zeta R5 DDR5 R-DIMM F5-6000R3039G16GQ4-ZR5K

ベンチ機のシステムストレージには「Samsung SSD 990 PRO 1TB」を使用しています。
Samsung SSD 990 PROは、PCIE4.0対応SSDで最速クラスの性能を発揮し、なおかつ電力効率は前モデル980 PRO比で最大50%も向上しており、7GB/s超の高速アクセスでも低発熱なところも魅力な高性能SSDです。 これからPCIE4.0対応プラットフォームの自作PCを組むなら、システム/データ用ストレージとして非常にオススメな製品です。
「Samsung SSD 990 PRO 1TB」をレビュー。性能も電力効率もトップクラス!
Samsung SSD 990 PRO 1TB

360サイズや240サイズなど120mmファンを複数搭載できるマルチファンラジエーターの簡易水冷CPUクーラーを使用するのであれば、「Noctua NF-A12x25 PWM」への換装もおすすめです。
「Noctua NF-A12x25 PWM」は、超硬質かつ軽量な新素材 Sterrox LCPの採用によってフレーム-ブレード間0.5mmの限界を実現させた次世代汎用120mm口径ファンとなっており、1基あたり3500円ほどと高価ですが、標準ファンよりも静音性と冷却性能を向上させることができます。
Noctua NF-A12x25シリーズのレビュー記事一覧へ
Noctua NF-A12x25 PWM chromax.black.swap


CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。


通常グリスを塗る量はてきとうでOKで、管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
ただしIntel Xeon W-2400X/3400XシリーズCPUはヒートスプレッダのサイズが大きいので、同じくヒートスプレッダが大きいAMD Ryzen Threadripperのグリスの塗り方としてNoctuaが推奨している方式を真似て、今回はグリスを塗りました。
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Intel Xeon w7-2495Xの動作クロック・消費電力・温度

「Intel Xeon w7-2495X」に関する検証のはじめに、「Intel Xeon w7-2495X」の動作クロック、消費電力、温度など同CPUの基本的な動作についてチェックしていきます。

「Intel Xeon w7-2495X」は24コア48スレッドのCPUです。
現在最新のIntel製メインストリーム向けCPUの上位モデルは高性能P-Coreと高効率E-Coreの混成ですが、「Intel Xeon w7-2495X」はシンプルに高性能コアのみで構成されています。
Intel Xeon w7-2495X_CPU-Z
「Intel Xeon w7-2495X」は定格動作において1コア~24コアまで同時に負荷がかかった時、アクティブコア数に応じた最大動作倍率(By Core Usage倍率)は、[2c: x48, 4c: x47, 6c: x44, 10c: x43, 14c: x40, 18c: x36, 20c: x35, 24c: x33]です。
「Intel Xeon w7-2495X」は定格のBy Core Usage倍率において、全24コアへ同時に負荷がかかっても最大で3.3GHz動作が可能です。
Xeon W-2400Xの前モデル的なCore-Xシリーズを含め、近年のIntel製CPUではCPU消費電力が仕様値TBP内に収まるかどうかは電力制限任せにして、全コア最大動作倍率を高めに設定する傾向がありますが、「Intel Xeon w7-2495X」は全コア負荷時の実動消費電力がTBPと概ね一致するような倍率設定です。
Intel Xeon w7-2495X_XTU
ちなみにIntel Xeon W-2400X/3400Xについては、定格設定ではBy Core Usage倍率に応じて異なるAVXオフセット値が適用されています。
Intel Xeon w7-2495X_HWiNFO

参考までに、「Intel Xeon w7-2495X」のコアtoコア遅延は次のようになっています。
「Intel Xeon w7-2495X」は従来同様のモノリシックなMCC(Medium Core Count)というダイを採用するCPUなので、コアtoコア遅延は一律で40~50ns程度です。
Intel Xeon w7-2495X_latency-heatmap

HWiNFOやCPU-Zから「Intel Xeon w7-2495X」のコアクロックの挙動を確認したところ、確かに負荷の軽い場面では最大4.8GHz程度で動作するコアがありました。
Intel Xeon w7-2495X_Boost-Clock_Single
また全コア最大動作倍率は特にゲーム性能で重要になりますが、今回レビューしている「Intel Xeon w7-2495X」はゲーム中のアクティブコア数が10~14コアまでなら4.0~4.3GHzで動作しますが、全コア負荷時は3.3GHzとかなり下がります。
スーパーメニーコアでBy Core Usage倍率もアクティブコア数に応じて大きく変わるので、実動クロックはゲーム次第なところもあるのですが、やはり定格倍率のままだとPCゲーミングには不向きだと思います。
Intel Xeon w7-2495X_Clock_game (2)

またIntel Xeon W-2400/3400シリーズCPUの製品仕様では、Processor Base Power(従来で言うところのTDP)が長期間電力制限/Power Limit 1(PL1)に、Maximum Turbo Powerが短期間電力制限/Power Limit 2(PL2)に一致します。
「Intel Xeon w7-2495X」はシンプルにPL1=PBP=225W、PL2=MTP=270Wです。
なおメインストリーム向けCPUと大きく異なり、Turbo Boost Power Time Window(短期間電力制限時間/Tau)は1sでかなり短い設定になっているので、短期間電力制限によるターボはほとんど効きません。
Intel Package Power Control

「Intel Xeon w7-2495X」の定格仕様である『PL1:225W、PL2:270W、Tau:1s』で動作させたところ、Cinebenchやx264エンコードなど、全コアへ同時に大きな負荷がかかった時の動作クロックの実動平均は3.0~3.2GHz前後で推移します。
CPU Package PowerはTau:1sなので約1秒程度だけPL1を超過しますが、その後はPL1の225W前後に張り付いています。
By Core Usageの全コア最大動作倍率は3.3GHzですが、PL1:225Wの電力制限やAVXオフセットにより、それよりも低い数字となっています。なおタスクがAVX命令をどれくらい使用するか、タスクの種類によって実動コアクロックは上記よりも多少上下する可能性があります。
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続いてCPU消費電力やCPU温度の検証結果をチェックしていきます。
当サイトのCPUレビューでは主として”CPU温度への影響要因”という意味においてCPU消費電力を評価しているので、動画のエンコードによって長期間電力制限が効いている状態の平均的な消費電力をCPU消費電力として比較します。

個人的な意見としては短期間電力制限は短期間かつCPU温度によっても制御されるのでCPU温度への影響要因として比重は小さく、また瞬間ピーク電力はせいぜいがTDP+100W程度なので、マザーボードVRM電源の破損を心配するほどではなく、その程度の電力超過は電源ユニットで十分吸収できるので、評価対象としてあまり意味がないと思っています。
またCPU製品仕様のTDPについては、定義がIntel/AMDで厳密には異なり、各社の具体的な測定・算出方法も不明なので、CPU動作クロックを含めて総合的に判断する必要があるものの、基本的には長期間電力制限時の消費電力がTDP仕様値とほぼ一致、もしくはTDP仕様値を下回れば正常であると評価します。
当レビュー記事では簡単のため割愛しますが、CPUの消費電力に関する評価基準の補足として下記の記事も参考にしてください。


CPUの消費電力測定には、当サイトの検証に使用するためワンオフで特注した測定ツール「CPU Power Tester」を使用しています。
CPU Power TesterはEPS電源端子、ATX24PIN電源、PCIEスロット経由の各消費電力を直接測定できるツールです。5分間程度の負荷に対して、1ms間隔でモニタリングを行い、平均値を”消費電力”、最大値を”瞬間的な最大電源負荷”とします。


消費電力の測定にあたってCPU負荷には、FF14ベンチマークの動画(再生時間6分40秒、4K解像度、60FPS、容量5.7GB)を変換ソースとして、HandBrakeによるx264動画エンコードを使用しています。
メニーコアになるほど単独のエンコードではCPUが遊ぶので、CPU使用率が100%前後に張り付くように、動画エンコードの同時実行数については4~6コアは並列なし、8~14コアは2並列、16コア以上は3並列のように適宜調整しています。
Power-Consumption-Test
注:CPUのストレステストについてはOCCTやPrimeなど専用負荷ソフトを使用しているレビューもありますが、管理人の私見としてはCPU負荷が非現実的なので、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースを想定した場合、ほぼ最大のCPU負荷となるx264による動画エンコードとストレステストに採用しています。


【注:以下説明が前後しますが、後ほど説明する動作設定で消費電力を測定しています。】

定格仕様や検証用設定で指定する電力制限を適用した状態で動画エンコードによるフル負荷をかけると、「Intel Xeon w7-2495X」など各CPUについてCPU Package Powerは次のようになりました。 全CPU比較データ
CPU Package PowerはIntelのPL1/PL2、AMDのPPTといったパラメーターによる電力制限の制御ソースとなる数値です。メーカー純正ソフトウェアのIntel Extreme Tuning Utility (XTU)やAMD Ryzen Master、サードパーティー製ソフトHWiNFOなどでソフトウェアモニタリングが可能です。
Intel Xeon w7-2495X_power_3_cpp

続いてCPU Power Testerを使用して実際の消費電力をチェックしていきますが、注意点として、マザーボード独自のコア電圧調整によってCPU消費電力は変化します。Intel/AMDともに現状ではCPU動作のリファレンスになるようなマザーボードがないので、あくまで今回のレビューに使用している検証機材マザーボードを組み合わせた場合の数値となります。
また組み合わせるマザーボードによってはCPU Package Powerにマイナスオフセットをかけて事実上の電力制限解除が行われる場合があります。管理人の判断で定格っぽい動作のものを選んでいますが、こういった事情も念頭に置いて検証結果をご確認ください。

定格仕様や検証用設定で指定する電力制限を適用した状態で動画エンコードによるフル負荷をかけると、「Intel Xeon w7-2495X」など各CPUについてEPS 8PIN電源の消費電力は次のようになりました。 全CPU比較データ
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定格仕様や検証用設定で指定する電力制限を適用した状態で動画エンコードによるフル負荷をかけると、「Intel Xeon w7-2495X」など各CPUについてEPS 8PIN電源&ATX 24PIN電源の消費電力は次のようになりました。 全CPU比較データ
Intel Xeon w7-2495X_power_2_eps+arx


Cinebench R23とEPS消費電力の関係からワットパフォーマンスを確認してみると、「Intel Xeon w7-2495X」は定格として設定されているPBP:225W付近の消費電力であれば、Core i9 13900KやRyzen 9 7950Xといったメインストリーム向けCPUで最も電力効率の高いCPUに近い性能を発揮しています。メインストリーム向けCPUの状況も考えてワットパフォーマンス的にスイートスポットを狙ったのがよく分かります。
Core i9 13900Kの高性能P-Coreと同じRaptor Coveアーキテクチャが採用されているので、同じ電力帯で比較すればワットパフォーマンスは決して悪くありません。
Intel Xeon w7-2495X_Performance_per-Wtt_c
電力と性能は2乗根的なカーブを描き、曲線部分が最も電力効率が高まるのですが、「Intel Xeon w7-2495X」ではそのスイートスポットはちょうど225W前後となっており、そこからは電力(コアクロック)の上昇に比例して、性能が伸びていきます。
あまり比較にはなりませんが、Core i9 13900Kはどれだけ電力を盛っても(OCしても)、スコアが40000を超えた辺りで収束していくので、300W以降も順調に性能が伸びていく「Intel Xeon w7-2495X」は300W超の区間においてCore i9 13900Kよりもワットパフォーマンスが良いという評価になります。
Intel Xeon w7-2495X_Performance_per-Wtt

また下のグラフは電力制限を調整した時のCPU Package Powerに対するマルチスレッド性能の比率です。
Cinebench R23 マルチスレッドスコアから各CPUの定格設定を基準に、電力制限解除で定格の全コア最大動作倍率に張り付いた状態を上限として性能比率を算出しています。

加えて3つの縦線は、Tom Clancy's Rainbow Six Extraction (フルHD/360FPS)、Cyberpunk 2077 (4K/60FPS)、Marvel’s Spider-Man Remastered (4K DLSS&RayTracing)のPCゲームをプレイした時のCPU Package Powerの平均値です。
ゲームシーンで理想的な性能を発揮できるように、電力制限を解除してコアクロックが全コア最大動作倍率に張り付くために必要なCPU Package Powerを見ています。

「Intel Xeon w7-2495X」はゲーム用途にはOCが必須なのでこの項目は省略しています。

「Intel Xeon w7-2495X」はProcessor Base Power/TDPが225Wの時に、ちょうどCore i9 13900Kの定格(PL1/PL2:253W)とほぼ同じマルチスレッド性能になります。
Specific Per Coreでx46~x48が許容されている定格倍率のまま(By Core Usage倍率は全コアx48)、電力制限を解除すると、電力制限を引き上げただけ性能が伸びていき、定格最大倍率と定格VFカーブのままでも最大で+50%程度まで性能を引き上げることが可能です。
実際には水冷CPUクーラーでもCPU Package Powerで500W前後を長期的に冷やすのは難しいので(PL2で数十秒のターボならいけますが)、「Intel Xeon w7-2495X」はNoctua NH-U14S DX-4677のような大型空冷環境ならPL1:350前後、水冷環境ならPL1:400W前後で、+25~35%程度のマルチスレッド性能向上を狙うのがオススメです。
Intel Xeon w7-2495X_Performance_per-and-game


この章の最後に、「Intel Xeon w7-2495X」を空冷CPUクーラーやAIO水冷CPUクーラーで運用する時のCPU温度についてです。

「Intel Xeon w7-2495X」は定格の電力制限が仕様値PBPと同じ225Wですが、24コアで分散しており、CPUダイサイズも非常に大きいので定格運用なら電力の数字ほどCPU温度は高くなりません。
200~250W程度のCPU Package Powerで比較するなら、Core i9 13900KがAIO水冷CPUクーラーを必須とするのに対して、「Intel Xeon w7-2495X」はLGA4677対応CPUクーラーであれば空冷でも問題なく運用できます。
Noctua NH-U12S DX-4677_temp_2495X-def_1
Noctua NH-U12S DX-4677_temp-cp_2495X-def

「Intel Xeon w7-2495X」と各種CPUクーラーを組み合わせた時のCPU温度や、対応可能な電力制限の解除(OC)についてはCPUクーラーのレビュー記事で詳しく紹介しているのでそちらを参照して下さい。







ベンチマーク用のCPU動作設定について

「Intel Xeon w7-2495X」の各種ベンチマーク時に使用しているCPU動作設定について予め説明しておきます。
IntelやAMDのメインストリーム向けCPUについては基本的に定格設定、もしくは簡単な電力制限解除で測定を行っており、各章の補足やグラフを見ればそのまま把握できるようになっているので、特に注意する要素はありません。

最初に結論を書いておくと
・”定格に近い動作設定”と”現状可能な実用OC設定”の2つの動作設定を用意
・クリエイティブタスク性能は上記2つの両方で検証している
・ゲーム性能はOC設定でのみ検証している
となります。


ゲーム性能の検証をOC設定に限定しているのはXeon W-2400シリーズCPUはBy Core Usage倍率で全コア負荷時の倍率が低いからです。「Intel Xeon w7-2495X」なら24コア負荷時にx33しかないので、個人的に測定する意味を感じないため、省略しています。
Intel Xeon w7-2495X_Clock_game (2)


「Intel Xeon w7-2495X」などXeon W-2400シリーズCPUについては、2023年4月下旬現在、下記のような不具合、もしくは特殊な挙動を確認しています。
・電源プランは高パフォーマンスを推奨 (バランスはエクスプローラーの開閉でもラグる)
・Active Core Countが正常に検出されず、単コアブーストが効かない
・PL2は設定値より10%低い値でCPU Package Powerが制御される(CPUの仕様)
・Adaptive Override Voltageが正常に動作しない

まず『電源プランは高パフォーマンスを推奨』については、見ての通り、Windowsの電力プランをバランスではなく、高パフォーマンスにする必要があるというそのままの意味です。
バランス状態ではアイドルコアの動作周波数が800MHzまで下がりますが、省電力Cステートからアクティブ状態への移行が上手く機能していないのか、エクスプローラーを開く操作だけでも盛大にラグが生じます。
なお、ASRock W790 WSではBIOSバージョンを3.04にすると解消されたので、BIOSアップデートで対応できる問題のようです。


続いて定格動作に影響の大きい、『Active Core Countが正常に検出されず、単コアブーストが効かない』について説明します。
「Intel Xeon w7-2495X」の場合、2コアまで4.8GHz、4コアまで4.7GHzという高いコアクロックで動作するのが定格仕様ですが、現状でこれらの単コアブースト(1コアではないものの便宜上、そのように書きます)を継続して発揮できません。

BIOSから動作設定を調整して色々と確認してみた結果として、Active Core CountによるBy Core Usage倍率の制御が正常に動作していない、というのが当サイトの結論です。
制御ソースであるActive Core Countが実際に負荷がかかっているコア数と関係なく変動しており、それに応じて定格のBy Core Usage倍率によって実動コアクロックが制限されます。
「Intel Xeon w7-2495X」だとCinebench R23 シングルスレッドテストを単独で実行している状態なら、XTUから確認できるActive Core Countは通常、1~2で変動しますが、実際にはこの数値に対して平均的に+10の値でBy Core Usage倍率が制御されているような動作(実動コアクロックが4.0~4.3GHz)になりました。

定格設定のまま運用しても単コアブーストが正常に効かないので、今回、「Intel Xeon w7-2495X」のベンチマーク検証では下記の設定を”定格動作に近い”設定として使用しています。
・ASUS MultiCore Enhancement : Disabled
・By Core Usage倍率を1コアから全コアまで一律で最大倍率に
・Specific Per Coreは定格倍率のまま
・AVXオフセットは一律で-3
・電力制限はPL1:225W、PL2:300W、Tau:1s
・Vcc Core-nはデフォルトのAdaptive Mode、VccINは1.860V(Manual)
Intel Xeon w7-2495X_test-setting_def

上記設定について補足すると、前述の通り、Active Core Countの挙動がおかしいのでBy Core Usage倍率を一律で最大とすることでActive Core Countの影響を排除しています。
「Intel Xeon w7-2495X」はSpecific Per Coreによる最大動作倍率が定格設定でもベスト2コアがx48、次いで2コアがx47となっています。またTBM3.0に対応しているので、アクティブタスクは優先的に上記の優良コアに割り振られ、単コアブーストが実質的に正常動作となります。

定格のBy Core Usage倍率による全コア負荷時 33倍などコアクロックを下げる制御が無効化されていますが、長期間電力制限PL1によってCPU Package Powerが225W以下に収まるようにコアクロックは自動的に下がるので、マルチスレッド負荷時に全コア4.6GHzで動作してしまう、といったことはありません。
AVXオフセットはBy Core Usage倍率に対して適用されるので、各種一律で-3に設定しているものの、今回の設定だと4.5GHz上限になるだけで、それ以下の倍率ではネガティブオフセットが機能しません。ただベンチマーク測定には特に大きな影響もないはずです。

長期間電力制限 PL2は定格設定だと、Intel製CPUの仕様値の1つであるMaximum Turbo Powerに一致しますが、Xeon W-2400シリーズCPUの環境では今のところ、PL2の設定値より10%低い値でCPU Package Powerが制御されるので(不具合なのか仕様なのか不明)、ひとまず、「Intel Xeon w7-2495X」なら270Wが実際の制御値になるように10%高い300Wとしています。

VccIN(MBのVRM電源回路からFIVRへの供給電圧)をマニュアルモードで1.860Vにしているのは、検証機材に使用しているマザーボードの場合、By Core Usage倍率やSpecific Per Coreを調整すると自動的に昇圧されるので、単純にASUS MultiCore Enhancement : Disabledとしただけの状態に近い動作になるよう調整した結果です。


次に「Intel Xeon w7-2495X」のOC設定について、ベンチマーク測定に関わる部分を説明します。
「Intel Xeon w7-2495X」をCore i9 10980XEなどCore-Xの後継となるハイエンドデスクトップCPU的な使い方をするには定格設定における動作倍率の制限が厳しいので(By Core Usage倍率の全コア負荷時33倍のように)、上記の定格動作に近い設定に加えて、手動OCを施した状態でもベンチマーク測定を行っています。

ただし、冒頭で列挙した内の1つ、『Adaptive Override Voltageが正常に動作しない』という問題があるため、クリエイティブタスクとPCゲーミングを両立したOC設定が難しいというのが現状です。

Xeon W-2400シリーズCPUのOCについて簡略化すると、クリエイティブタスクではPL制限下でのコアクロック、PCゲーミングでは最大動作倍率が重要になります。(マルチスレッド負荷時に4GHz後半から5GHz超のコアクロックを長期的に冷やすのは現実的ではないので)
例えば、PCゲーミングの性能を引き上げるためにCPUコアクロックを5GHz超にOCして、マニュアル電圧やオフセット電圧でコア電圧を昇圧すると、昇圧前はPL制限下に4.0GHzで動作していた時のコア電圧も昇圧されてしまい、PL制限内にCPU Package Powerを収めるため、コアクロック(性能)が下がります。

V-Fカーブが存在する定格の最大動作倍率以下ではそのV-Fカーブを維持しつつ、OC動作倍率に対して新しくV-Fカーブを作るAdaptive Override Voltageを使用できないため、今回はオフセット電圧を使用しています。そのため前述の通り、クリエイティブタスクとPCゲーミングで性能がトレードオフになっており、理想的な実用OC設定とは言えない状態です。

ともあれ、今回、「Intel Xeon w7-2495X」のベンチマーク測定に使用したOC設定は下記の通りです。
・ASUS MultiCore Enhancement : Enabled
・By Core Usage倍率を1コアから全コアまで一律で最大倍率(x54)に
・Specific Per Coreはベスト4コアをx54、残りはx49
・AVXオフセットは一律で-3
・電力制限はPL1:400W、PL2:550W、Tau:32s
・Vcc Core-nはベスト4コアを+0.200V、残りを+0.100Vでオフセット電圧
・VccINはマザーボードのAuto設定(おそらく2.200V程度)
・Digi+ VRMのCPU Current Capabilityを140%
Intel Xeon w7-2495X_test-setting_OC
*Adaptive電圧を使用できないので、性能評価用の暫定的なOC設定です。記事内のベンチマーク内容なら何度繰り返しても安定しているのですが、UL ProcyonのAIベンチなどAVXの使い方次第というか一部の負荷では落ちることがあります。


「Intel Xeon w7-2495X」などXeon W-2400シリーズCPUの具体的なOC設定や実演例については、マザーボードのレビュー記事内で解説しているのでこちらを参照してください。






Intel Xeon w7-2495Xの基礎ベンチマーク

Intel Xeon w7-2495Xの基本的なCPU性能を専用ベンチマークソフトで検証しました。
この章ではULMarkからリリースされているPCMark 10という総合ベンチマークソフトを使用していますが、デスクトップ向けの高性能CPUの性能比較ベンチマークとしては頭打ちな傾向があります。最新世代ではEssentialsとProductivityが高いとシングルスレッド性能の向上を確認できる、くらいの扱いです。
レビュー項目の1つとして参考までにスコア比較していますが、より実用的なCPU性能、クリエイティブタスク性能やPCゲーミング性能については後半の個別性能比較を参考にしてください。

*Ryzen 7000は一部の高性能GPUを組み合わせた場合にVideo Editing, Sharpening OpenCLのスコアが0になる不具合があり、総合スコアとDigital Content Creationが空欄になっています。


「PCMark 10 Extended」のベンチマーク結果をチェックしていきます。
「PCMark 10」は動画再生能力、DirectX11のグラフィック性能、Webブラウジング、ビデオチャットなど一般ユースにおけるPCの総合的な性能を測定するためのベンチマークソフトです。

「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各CPU環境について、PCMark 10ベンチマークの総合スコアを比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Xeon w7-2495X_bench_PCM10_1

「PCMark 10 Extended」にはPCの基本性能を測る「Essentials」、ビジネスアプリケーション性能を測る「Productivity」、クリエイティブ性能を測る Digital Content Creation」、ゲーム性能を測る「Gaming」の大きく分けて4つのテストグループがあるので、個別にベンチマークスコアを比較してみました。

PCの基本性能を測る「Essentials」は、アプリケーションの起動に要する時間を測る「App Start-up」、 ウェブブラウジングの性能を測る「Web Browsing」、1対1または多対多のビデオ会議をシミュレートする「Video Conferencing」の3つのワークロードで構成されています。
モバイル版向けCPUのCore i7 1165G7を搭載するSurface Pro 7+との比較でわかりますが、一般的なPC利用において大半のデスクトップ向けCPUは十分な性能を備えています。
「Essentials」について「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Xeon w7-2495X_bench_PCM10_2

ビジネスアプリケーション性能を測る「Productivity」は、ワープロソフト(マイクロソフトWordなど)の処理性能をシミュレートする「Writing」、表計算ソフト(マイクロソフトExcelなど)の処理性能をシミュレートする「Spreadsheets」の2つのワークロードで構成されています。
モバイル版向けCPUのCore i7 1165G7を搭載するSurface Pro 7+との比較でわかりますが、一般的なオフィスワークにおいて大半のデスクトップ向けCPUは十分な性能を備えています。
「Productivity」について「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Xeon w7-2495X_bench_PCM10_3

クリエイティブ性能を測る「Digital Content Creation」は、写真に対するフィルタリング処理の性能をシミュレートする「Photo Editing」、動画編集の性能をシミュレートするワークロード「Video Editing」、レイトレーシングによる3Dグラフィクス制作(3Dレンダリング)をシミュレーションする「Rendering and Visualization」の3つのワークロードで構成されています。
「Digital Content Creation」について「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Xeon w7-2495X_bench_PCM10_4

ゲーム性能を測る「Gaming」は、グラフィックボードの性能測定で幅広く活用されているベンチマークソフト「3DMark」に収録された「Fire Strike」と同じベンチマークテストを実行するワークロードです。
「Gaming」について「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Xeon w7-2495X_bench_PCM10_5



Intel Xeon w7-2495Xのクリエイティブ性能

Intel Xeon w7-2495Xについて3Dレンダリング、動画編集・エンコード、RAW現像・写真リタッチ、PCゲーム/スマホアプリのビルド、AI機能による超解像・写真分類などクリエイティブ作業に関する性能を各種ベンチマークソフトや実際のアプリケーションで検証しました。

Intel Xeon w7-2495Xの3Dレンダリング性能

まずは「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUの3Dレンダリング性能を比較していきます。
CPUのマルチスレッド性能を比較するベンチマークソフトとして国内外で最も知られているCinebenchの2021年リリース最新バージョン「Cinebench R23」、オープンソース3DCGソフト「Blender」の公式ベンチマークソフト、3Dレンダラー「V-Ray」の公式ベンチマークソフトの4種類を使用してベンチマーク測定を行いました。

Cinebench R23は3Dレンダリング性能を測定するベンチマークソフトになっており、マルチスレッド性能を測定するテストとシングルスレッド性能を測定するテストの2種類を実行しています。
Intel Xeon w7-2495X_Cinebench R23

Cinebench R23 マルチスレッド性能テストについて「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Xeon w7-2495X_rendering_1_cine_r23_multi

Cinebench R23 シングルスレッド性能テストについて「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Xeon w7-2495X_rendering_1_cine_r23_single

3DCGソフト「Blender」の公式ベンチマークソフト(ver3.4.0)
について「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Blender Benchmark 3.0ではmonster/junkshop/classroomの3つのレンダリングが実行され、それぞれ分間サンプル数がベンチマークスコアとして表示されます。Core i5 12400Fを基準にして(全CPU比較データではCore i5 12400Fが基準)、3つのスコアについて性能比率を算出し、その平均値をグラフ化しています。
Intel Xeon w7-2495X_rendering_2_blender

3Dレンダラー「V-Ray」の公式ベンチマークソフト(ver5.2.0)について「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
V-Rayのベンチマークソフトのレンダリングサンプル数が結果として表示されますが、性能差が直感的にわかりにくいので、Core i5 12400Fを基準にして(全CPU比較データではCore i5 12400Fが基準)、各種CPUのレンダリング速度を性能比としてグラフ化しています、
Intel Xeon w7-2495X_rendering_3_vray


Intel Xeon w7-2495Xの動画エンコード・動画編集性能

続いて「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUの動画編集や動画エンコードの性能を比較していきます。
検証には、無料で利用できる動画編集ソフトとして国内外で多数のユーザーがいる「Aviutl」、大量の動画ファイルを一括エンコードする時に便利なフリーソフト「HandBrake」を使用しています。
またアマチュアからプロまで動画編集ソフトとして幅広く使用されている「Adobe Premiere Pro」の実用性能を検証するベンチマークとしてULMarkのUL Procyon Video Editing Benchmarkも測定しています。


まずは単純に動画ファイルをそのまま圧縮するエンコード作業の性能比較として、HandBrakeを使用したエンコード性能をチェックします。
HandBrakeは、現在主流なH.264 (MPEG-4 AVC) ビデオストリームへエンコードを行う「x264」エンコーダ、そしてH.264より高圧縮・高画質で次世代規格として期待されているH.265(HEVC) ビデオストリームへエンコードを行う「x265」エンコーダが使用できるので、CPUをリソースとして各エンコーダで共通の動画ファイルのエンコードを行いました。
エンコードを行う動画ファイルについては、Tom Clancy's Ghost Recon Wildlandsのゲーム内ベンチマーク(60秒ほど)をNVIDIA ShadowPlayで録画したものを使用しています。1920×1080/60FPS/50Mbpsと3840×2160/60FPS/120Mbpsの2種類の動画ファイルを作成し、それぞれ解像度はそのままにCRF値指定でエンコードを行っています。
HandBrake_test
比較グラフのx2/x3/x4のバーについては同じエンコードを添え字の数だけ並列実行した時の合計変換フレームレートを示しています。
ソースファイルやエンコード設定にも依りますが、フルHD解像度では8コア16スレッド程度、4K解像度では16コア32スレッド程度でマルチスレッド分散がボトルネックになり始め、単独エンコードではCPUが遊び始めます。
20コアオーバーのウルトラメニーコアCPUでマルチスレッド性能をフルに活用しようと思うと、8K解像度のような超高解像度のエンコード、もしくは複数並列エンコードを行う必要があるので注意してください。

x264エンコーダによって1920×1080解像度の動画をH.264 (MPEG-4 AVC)の1920×1080解像度へエンコードした時のエンコード速度について、「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Xeon w7-2495X_encode_1_handbrake_x264_1920-1920

x264エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.264 (MPEG-4 AVC)の3840×2160解像度へエンコードした時のエンコード速度について、「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Xeon w7-2495X_encode_2_handbrake_x264_3840-3840

x265エンコーダによって1920×1080解像度の動画をH.265(HEVC)の1920×1080解像度へエンコードした時のエンコード速度について、「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Xeon w7-2495X_encode_3_handbrake_x265_1920-1920

x265エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.265(HEVC)の3840×2160解像度へエンコードした時のエンコード速度について、「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Xeon w7-2495X_encode_4_handbrake_x265_3840-3840


続いてAviutlで編集した動画プロジェクトのエンコード速度について、「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUの性能を比較していきます
編集プロジェクト自体は単純で、4K解像度とフルHD解像度(4K解像度に拡大)の2つの動画ファイルを使用し、それぞれの動画を左右にフェードイン/アウト、後は画面上にテキストをオーバーレイさせているだけです。YouTubeにアップしている下の動画が完成物となっており、冒頭1分間部分のエンコード速度を測定しています。


Aviutlで作成した3840×2160解像度の4K動画プロジェクトをH.264 (MPEG-4 AVC)の3840×2160解像度へエンコードした時のエンコード速度について、「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
動画編集ソフトにも依りますが、Aviutlの場合、動画開始直後のように単独の4K映像に文字をオーバーレイするだけでもエンコード出力のCPU使用効率が下がります。
カット編集だけならAviutlもHandBrakeも大差ありませんが、編集したプロジェクト1つをエンコード出力した場合、上で見たHandBrakeによる単純エンコードと比較してマルチスレッド性能に比例したスケーリングは鈍り、シングルスレッド性能で差が出る傾向が強まります。
Intel Xeon w7-2495X_encode_5_aviutl_x264_3840-Project


続いてAdobe Premiere Proの実用性能を検証するベンチマークソフト、UL Procyon Video Editing Benchmarkのベンチマーク結果から、「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUの動画編集性能を比較していきます
Adobe Premiere Proはver23.0を使用しています。UL Procyon Video Editing BenchmarkにはフルHD解像度と4K解像度の2種類のプロジェクトがあり、それぞれにおいてCPUのみを使用するテストとGPU支援を有効にするテストを行い、トータルのベンチマークスコアを算出しています。

Adobe Premiere Proの実用性能を検証するベンチマークソフト、UL Procyon Video Editing Benchmarkについて、「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ:Total Score / FHD(CPU) / FHD(CPU&GPU) / 4K(CPU) / 4K(CPU&GPU)
Intel Xeon w7-2495X_encode_6_ul-procyon_1
Intel Xeon w7-2495X_encode_6_ul-procyon_6-tile


この章の最後に、映画/ポストプロダクション/放送業界に向けて世界最高品質の製品を開発しているBlackmagic Design社製の動画編集ソフト DaVinci Resolveの実用性能について、Puget Systemsから配布されているベンチマークソフト PugetBench for DaVinci Resolveを使用して、「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUの動画編集性能を比較していきます。
DaVinci Resolveは有償版のDaVinci Resolve Studio(ver18.1.1)を使用し、PugetBench for DaVinci ResolveのExtended Testを実行しています。
PugetBench for DaVinci Resolve Extended Testには4K Media、8K Media、GPU Effect、Fusionの4つのテストが実行され、それぞれのサブスコアからトータルのベンチマークスコアが算出されます。

DaVinci Resolveの実用性能を検証するベンチマークソフト PugetBench for DaVinci Resolveについて、「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ:Total Score / 4K Media / 8K Media / GPU Effect / Fusion
Intel Xeon w7-2495X_encode_7_davinci-resolve_1
Intel Xeon w7-2495X_encode_7_davinci-resolve_6-tile


Intel Xeon w7-2495XのRAW現像・写真リタッチ性能

続いて「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUのRAW現像や写真リタッチの性能を比較していきます。
検証には、強力なノイズ除去機能PRIMEや最新版DeepPRIMEで評判の写真編集ソフトDxO PhotoLab 6によるRAW現像に加えて、アマチュアからプロまで動画編集ソフトとして幅広く使用されている「Adobe Lightroom Classic」と「Adobe Photoshop」の実用性能を検証するベンチマークとしてULMarkのUL Procyon Photo Editing Benchmarkも測定しています。

まずはDxO PhotoLab 6によるRAW現像について、「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUの性能を比較していきます
ミラーレス一眼カメラSONY α1で撮影した8640×5760解像度のRAW画像ファイル 100枚に対して、DxO PhotoLab 6の画質プリセット「DxO 標準」をベースにノイズ除去をPRIMEに変更したプリセットを適用し、RAW現像を行いました。
なおDxO PhotoLab 6によるRAW現像は並列処理数を設定できますが、CPUコア数の半分前後の並列処理で最速になるようです。
DxO Photolab_test

DxO PhotoLab 6によるRAW現像速度について、「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Xeon w7-2495X_photo_1_DxO


続いてAdobe Lightroom ClassicとAdobe Photoshopの実用性能を検証するベンチマークソフト、UL Procyon Photo Editing Benchmarkのベンチマーク結果から、「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUのRAW現像と写真リタッチの性能を比較していきます
UL Procyon Photo Editing BenchmarkにはAdobe Lightroom Classic ver11.5を使用したバッチ処理テスト(Batch Processing test)に加えて、Adobe Lightroom Classicで簡易処理を施した写真セットをAdobe Photoshop ver23.5.3で編集するテスト(Image Retouching test)の2種類を行い、トータルスコアが算出されます。

Adobe Lightroom ClassicとAdobe Photoshopの実用性能を検証するベンチマークソフト、UL Procyon Photo Editing Benchmarkについて、「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ:Total Score / Retouch / Batch
Intel Xeon w7-2495X_photo_2_ul-procyon_1
Intel Xeon w7-2495X_photo_2_ul-procyon_4 -tile


Intel Xeon w7-2495XのPCゲーム/スマホアプリのビルド性能

最後に「Unreal Engine 4/5」や「Unity」などフリーウェアながら高画質なPCゲームやスマホゲームを製作可能なゲームエンジンを使用したゲーム制作におけるCPU性能の検証として、Unreal Engine 4で「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUの性能を比較していきます。
Epic Games Storeで無料配布されているUnreal Engine 4のデモプロジェクト Infiltratorを使用したビルド時間の比較を行います。検証設定としてリアルタイム表示はオフ、ライティングの品質をプロダクションとしています。Unreal Engine 4のバージョンは4.27.2で統一しています。
Unreal Engine 4_Infiltrator_test

「Unreal Engine 4 - Infiltrator」のビルド時間について、「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
「Unreal Engine 4 - Infiltrator」のビルド時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i5 12400Fを基準にして(全CPU比較データではCore i5 12400Fが基準)、各種CPUのビルド速度を性能比としてグラフ化しています、
Intel Xeon w7-2495X_dev_Unreal-Engine


Intel Xeon w7-2495XのAI性能

ディープラーニングや人工知能(AI:Artificial Intelligence)の流行に合わせて、近年の最新CPUではAI支援機能の実装も目玉の1つになっているので、一般ユースに近い活用方法として、AIによる写真の超解像化や写真の自動分類で「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUの性能を比較していきます。

まずはAIによって低解像度の写真を高精細な高解像度にアップスケールできる「Topaz Gigapixel AI」を使用して、「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUの性能を比較していきます。
500×500解像度前後の写真を50枚用意し、AIモデルStandardによって4倍の解像度にアップスケールするのにかかる時間を測定しました。
Topaz Gigapixel AIはOpenVINOツールキットにより、第10世代以降のIntel Core CPUで採用されているDL Boostと呼ばれるディープラーニングを支援する新しい命令に対応していますが、CPUのマルチスレッド性能でゴリ押しも効くアプリです。

Topaz Gigapixel AIのAIアップスケール速度について、「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
処理時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i5 12400Fを基準にして(全CPU比較データではCore i5 12400Fが基準)、各種CPUのAIアップスケール速度を性能比としてグラフ化しています、
Intel Xeon w7-2495X_ai_1_topaz-gigapixel-ai

続いてAIによって写真の被写体(人物、犬猫、自動車など)を自動で分類できる「Nero AI Photo Tagger」を使用して、「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUの性能を比較していきます。
500×500解像度前後の写真を計1300枚(犬、猫、自動車の3種類)用意し、AI認識によって自動分類するのにかかる時間を測定しました。
Nero AI Photo TaggerはOpenVINOツールキットにより、第10世代以降のIntel Core CPUで採用されているDL Boostと呼ばれるディープラーニングを支援する新しい命令に対応しています。
CPUのAI支援機能が効果を発揮するのはもちろん、AVX512命令でも大幅に性能が向上する用途です。

Nero AI Photo TaggerのAI自動分類速度について、「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
処理時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i5 12400Fを基準にして(全CPU比較データではCore i5 12400Fが基準)、各種CPUのAI自動分類速度を性能比としてグラフ化しています、
Intel Xeon w7-2495X_ai_2_nero_ai_photo_tagger



Intel Xeon w7-2495Xのゲーミング性能

「Intel Xeon w7-2495X」のPCゲームに関する性能を実ゲームを用いたベンチマーク測定で検証しました。
なお章タイトルではゲーミング性能と表記してはいますが、近年発売された4コア4スレッド以上のCPUであればフルHD解像度~4K解像度の60FPSターゲットにおいてCPUボトルネックが発生するケースは多くありません。そのためCPUゲーム性能比較の具体的な内容は”高フレームレートにおけるCPUボトルネック比較”と表現するのが実状に即しています。

ゲーミングPCに搭載するなら、Intel Core i5 12400(F)やAMD Ryzen 5 5500など6コア12スレッド以上のCPUを当サイトでは推奨しています。
最新の超高画質で重いゲームの場合、ゲームプレイの裏で次のシーンのロード作業が動くとロードが遅くなったりスタッター(カクツキ)が発生することがあります。またベンチマーク結果からフレームレートの数値的に60FPS前後なら問題なさそうに見えても、2コア~4コアの場合、ゲームの起動やロードの時間が極端に長くなることがあり快適にプレイできない可能性もあります。



各CPUのゲーミング性能を測定するため統一検証機材として、2022年最新にして最速のウルトラハイエンドGPUを搭載したグラフィックボード「PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8 Gaming VERTO EPIC-X RGB OC 3FAN」を使用しています。
GPU for CPU Test
PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8は、ベイパーチャンバー構造のベースコアや、厚みのあるファンブレードをバリヤーリングで結合した重厚な冷却ファンを採用する4スロット占有大型GPUクーラーにより、各社AIBモデルの中でもトップクラスの静音性を実現しています。
メーカーのPNYは2022年に株式会社アスクが販売代理店契約を結んだばかりの新参なので国内での知名度は高くありませんが、北米など海外市場では30年以上に渡りコンシューマーならびにビジネス向けで電子機器の製造・販売を行う大手メーカーです。
国内正規品なら代理店を介してPNY公式のグローバル保証と同じ3年間の長期保証が受けられるところも魅力です。
「PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8」をレビュー
PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8 Gaming VERTO EPIC-X RGB OC 3FAN


CPU別ゲーミング性能の比較には近年の高画質PCゲームから、Assassin’s Creed Valhalla、Cyberpunk 2077、F1 2022、Far Cry 6、Marvel’s Guardians of the Galaxy、Shadow of the Tomb Raider、Tom Clancy's Rainbow Six Extraction、Forza Horizon 5、MONSTER HUNTER RISE : SUNBREAK、Marvel’s Spider-Man Remastered、Call of Duty: Modern Warfare II、The Witcher 3: Next Gen Update、Hogwarts Legacy、Microsoft Flight Simulator(4Kのみ)の14タイトルを使用しています。
前述の通り、CPUがゲーム性能に与える影響の多くは100FPS以上の高フレームレートにおけるボトルネックの解消なので、フルHD(1920×1080)解像度/高画質設定について、各ゲームで平均フレームレートと1% Lowフレームレートを測定しました。
また参考としてAssassin’s Creed Valhalla、Cyberpunk 2077、Shadow of the Tomb Raider、Marvel’s Spider-Man Remastered、Microsoft Flight Simulator、The Witcher 3: Next Gen Update、Hogwarts Legacyの7種類については4K解像度をターゲットとしたベンチマーク測定も行っています。
CPU-Review_Game-Bench_2022

ゲームタイトルにもよりますがPCゲームにおけるCPU負荷であれば、CPU Package PowerはIntelのPBPやAMDのTDPよりも十分に低い数値に収まることが多く、CPUコアクロックは全コア最大動作倍率に張り付きます。
フレームレートに対するCPUボトルネックの緩和においては、この全コア最大動作倍率の高さが重要になり、クリエイティブタスクと違って電力制限は支配的ではなくなります。(PCゲームではIntel製CPUのPL1、AMD製CPUのPPTは影響をほとんど及ぼさなくなる)

Intel Core i9 12900やAMD Ryzen 7 5700Xのように定格の電力制限に対して全コア動作倍率の高いCPUの場合、PCゲームにおいてもCPU使用率が高くなるハイフレームレートでCPU消費電力がPBPやTDPを超過するタイミングもありますが、短期間電力制限PL2によるターボブーストやTDPよりも余裕をもって設定されたPPTによって高いコアクロックを維持し続けることができるので、影響は軽微です。

クリエイティブタスクの検証において複数の電力制限で測定していたCPUもPCゲームでは極端に大きい消費電力になることはないので、電力制限が緩い方を代表として測定しています。
Intel製CPUの場合は単純に電力制限を無効化しています。AMD製CPUはブーストクロックの動作が少々複雑でPPT/EDC/TDCを下げた方がFPSが上がる、逆にPBOで性能が下がる場合もあるため、基本的に定格のまま測定し、必要に応じて判断しています。


【注:動作設定で説明した通り、Intel Xeon w7-2495XはOC設定でのみゲーム性能を検証しています。】
今回はベスト4コアを5.4GHz、残りを4.9GHzのOC設定で「Intel Xeon w7-2495X」のゲーム性能を検証しています。
「Intel Xeon w7-2495X」は定格ではBy Core Usage倍率の全コア負荷時がx33倍なので、ゲーム中のコアクロックは3.3GHz程度になるため、そのまま使用しても高いゲーム性能は期待できません。
ただCore i9 13900Kの高性能P-Coreと同じ高クロック動作に強いRaptor CoveアーキテクチャのCPUコアなので、適切にOC設定を適用すればインゲームで5GHz前後の動作は容易です。
Intel Xeon w7-2495X_Clock_game (1)



Intel Xeon w7-2495Xのゲーム性能 - 4K解像度/60FPSターゲット

まずは60FPSの標準フレームレートをターゲットとした4K(3840×2160)解像度のゲーミング性能について「Intel Xeon w7-2495X」や比較対象CPUのベンチマーク結果をチェックしていきます。
上述の通り4K高解像度の60FPSターゲットでは基本的にCPUボトルネックは発生しません。グラフの掲載順は平均フレームレートによる昇順ですが、4コア8スレッドや6コア6スレッドよりもコアスレッド数が多いCPUについては、ほぼ測定誤差の範囲内です。

Assassin's Creed Valhara(4K解像度、画質プリセット:高)に関する「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Xeon w7-2495X_game_1_3840_1_acv

Cyberpunk 2077(4K解像度、画質プリセット:高、FSR:オフ)に関する「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
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Shadow of the Tomb Raider(4K解像度、DirectX12、画質プリセット:最高、レイトレーシング表現:最高、アンチエイリアス:TAA)に関する「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Xeon w7-2495X_game_1_3840_3_sottr

Marvel’s Spider-Man Remastered(4K解像度、DLSS:品質、画質プリセット:非常に高い、レイトレーシング:高/高/6)に関する「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Marvel’s Spider-Man Remasteredは非常にCPUボトルネックが強いタイトルです。4K解像度かつレイトレーシング表現有効でもCPU性能に応じてフレームレートが大きく変わります。
Intel Xeon w7-2495X_game_1_3840_4_spider
*2024年4月現在、Eコア非搭載のIntel製CPUの一部で動作不安定のため、Core i5 12400Fは測定から外しています。

Microsoft Flight Simulator(4K解像度、画質プリセット:ウルトラ、アンチエイリアス:TAA、オンライン機能:オフ)に関する「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Microsoft Flight Simulatorは非常にCPUボトルネックが強いタイトルです。オンライン機能のワールドアップデートを適用すると特に影響が大きく、4K解像度の60~120FPSでもCPU性能(シングル・マルチスレッド性能もですがキャッシュ性能も影響が大きい)に応じてフレームレートが大きく変わります。
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The Witcher 3: Wild Hunt, Next Gen Update(4K解像度、DLSS:品質、画質プリセット:RTウルトラ、レイトレーシング:有効)に関する「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
The Witcher 3: Wild Huntは非常にCPUボトルネックが強いタイトルです。4K解像度の60~120FPSでもCPU性能に応じてフレームレートが大きく変わります。
2022年12月にレイトレーシングにも対応した次世代機向けアップデートが配信されており、それを適用して検証を行っていますが、ゲーム自体は2015年の発売と古く、Ryzen CPUの登場以前なので、当時主流というかほぼ一択な状態だったIntel製CPUに有利な傾向です。
Intel Xeon w7-2495X_game_1_3840_6_wit

Hogwarts Legacy(4K解像度、画質プリセット:高、レイトレーシング:オン/オン/高)に関する「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Hogwarts Legacyは非常にCPUボトルネックが強いタイトルです。4K解像度の60~120FPSでもCPU性能に応じてフレームレートが大きく変わります。
なおPC版は2023年4月現在、最適化が微妙で、今回測定に使用しているホグズミードなど一部のシーンではスタッターが強く、最小フレームレートは暴れる傾向があります。
Intel Xeon w7-2495X_game_1_3840_7_hl


Intel Xeon w7-2495Xのゲーム性能 - フルHD解像度/ハイフレームレート

続いて100FPS以上のハイフレームレートをターゲットとしたフルHD(1920×1080)解像度/高画質設定のゲーミング性能について「Intel Xeon w7-2495X」や比較対象CPUのベンチマーク結果をチェックしていきます。

Assassin's Creed Valhara(フルHD解像度、画質プリセット:高)に関する「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Xeon w7-2495X_game_2_1920_01_acv

Cyberpunk 2077(フルHD解像度、画質プリセット:高、FSR:オフ)に関する「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Xeon w7-2495X_game_2_1920_02_cyber

F1 2022(フルHD解像度、画質プリセット:高、異方性フィルタリング:x16、アンチエイリアス:TAA/FidelityFX)に関する「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Xeon w7-2495X_game_2_1920_03_f1

Far Cry 6(フルHD解像度、画質プリセット:高)に関する「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Xeon w7-2495X_game_2_1920_04_fc6

Marvel's Guardians of the Galaxy(フルHD解像度、画質プリセット:高)に関する「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Xeon w7-2495X_game_2_1920_05_goh

Shadow of the Tomb Raider(フルHD解像度、DirectX12、画質プリセット:高、アンチエイリアス:TAA)に関する「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Xeon w7-2495X_game_2_1920_06_sottr

Tom Clancy's Rainbow Six Extraction(フルHD解像度、画質プリセット:高、レンダースケール:固定100%)に関する「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Xeon w7-2495X_game_2_1920_07_rse

Forza Horizon 5(フルHD解像度、画質プリセット:高)に関する「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Xeon w7-2495X_game_2_1920_08_fh5

MONSTER HUNTER RISE(フルHD解像度、画質プリセット:高)に関する「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
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Marvel’s Spider-Man Remastered(フルHD解像度、アンチエイリアス:TAA、画質プリセット:高い、レイトレーシング表現:オフ)に関する「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Xeon w7-2495X_game_2_1920_10_spider

Call of Duty: Modern Warfare II(フルHD解像度、画質プリセット:バランス、アンチエイリアス:オフ)に関する「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Xeon w7-2495X_game_2_1920_11_cod

The Witcher 3: Wild Hunt, Next Gen Update(フルHD解像度、画質プリセット:高)に関する「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
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Hogwarts Legacy(フルHD解像度、画質プリセット:高、レイトレーシング:オン/オン/オン・高)に関する「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Xeon w7-2495X_game_2_1920_13_hl


最後に、今回検証した10種類のゲームについて各タイトルについて平均FPSと1% Low FPSでそれぞれ、Core i5 13400を基準にした性能比率を算出し、さらに平均値としてグラフにまとめました。(全CPU比較データではCore i5 12400Fが基準)
フルHD解像度/ハイフレームレートの相対的なPCゲーミング性能に関する「Intel Xeon w7-2495X」を含めた各種CPUの比較結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Xeon w7-2495X_game_3_1920_relative



CPUエンコーダとリアルタイム配信について

ゲーム実況やライブ配信と呼ばれるPCゲームのリアルタイム配信について、現在ではNVIDIA GeForce RTX 3050やAMD Radeon RX 6600などハードウェアエンコード機能を使用できるエントリー~ミドルクラスのGPUを使用することでフルHD解像度で必要十分な画質とフレームレートが得られます。

GPUエンコーダは動作自体も軽いので、これらGPUエンコーダの登場によってリアルタイム配信やプレイ動画の録画におけるCPUエンコーダの役目は終わったというのが一時期の私見でしたが、メインストリーム向けCPUのコアスレッド数の増加に伴い、x264 Mediumのような高画質プリセットのプレイ&録画が一般ユーザー的にも現実的になってきています。

YouTube LiveやTwitchなどリアルタイム配信(ライブストリーミング)サービスで、PlayStation 5/Xbox Series X|S/Nintendo Switch等のコンシューマーゲーム機や、PCゲームのプレイ動画・ゲーム実況を快適に配信するのに必要なCPU性能については、現在、連載を続けている【快適配信】シリーズで詳細に解説しています
一口にゲーム実況と言っても、『1.ビデオキャプチャを使用してPCは録画配信作業のみを行う』、『2.PC1台で同時にゲームプレイと録画配信を行う』の2つのケースに大別され、どちらで使用するのかで要求されるCPU性能やCPUメーカー毎の得手不得手など事情が変わってくるので注意してください。

ざっくりと現状でCPUを使用したリアルタイム配信・ゲーム実況に要求されるCPU性能だけ述べておくと、『ビデオキャプチャを使用した配信の最低水準は6コア12スレッドのCPU』、『ゲームをプレイしながら配信の最低水準は8コア16スレッドのCPU』です。


【快適配信】シリーズの記事一覧へ
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画質と快適性を求めるなら録画・配信専用マシンもオススメ

ビデオキャプチャ業界の進歩も目覚ましく、2018年に発売された「AVerMedia Live Gamer Ultra」を皮切りに、各社から4K/60FPS/HDRやフルHD/240FPSの映像ソースを無遅延なパススルー表示しつつ、フルHD/60FPSのプレイ動画として録画・配信できるUSB接続外付け機器型ビデオキャプチャが各社から発売されています。


前述の通りフルHD/60FPSの録画・配信であれば、GPUのハードウェアエンコーダを利用することで必要十分な画質が得られて動作も軽いので、録画配信のために高性能な反面、非常に高額なCPUに投資するよりも、多少コストがかかっても「AVerMedia Live Gamer Ultra」などのビデオキャプチャと組み合わせて録画・配信用サブ機を構築するほうが、録画・配信の手法としてはわかりやすくてハードルが低いと思います。
Intel Xeon w7-2495X review_00899







Intel Xeon w7-2495Xのレビューまとめ

「Intel Xeon w7-2495X」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。

良いところ or 概要
  • メインストリーム向け第13世代と同等の高性能コアによる24コア48スレッドCPU
  • PL1:225Wにおいて実動コアクロックは3.0~3.3GHz前後
  • 定格Specific Per Core最大倍率のまま電力制限解除で性能は最大で+50%程度
  • サーバー・WS向けのXeon CPUながら倍率アンロックでOCに対応
  • インゲーム5.0GHz前後にOCすればCore i9 12900K越えのゲーム性能を発揮できる
  • システムメモリはクアッドチャンネルで最大8枚のDIMMを搭載可能
  • DDR5 R-DIMM対応なので1TBを超えるシステムメモリを搭載可能
  • CPU直結PCIEレーンとしてPCIE5.0でx64レーンも使用できる
  • AVX512やAMXといったAIに強い拡張命令に対応
悪いところ or 注意点
  • 38万円程度と非常に高価(2023年4月現在)
  • W790マザーボード、LGA4677対応CPUクーラー、DDR5 R-DIMMメモリなど
    環境構築には主要パーツを一通り新調する必要がある
  • OC運用の場合、CPU消費電力は300~500Wと非常に大きくなる

温度・消費電力について

「Intel Xeon w7-2495X」のPBP(従来のTDP)は225Wとなっており、定格のまま運用してもCPU消費電力は200Wを超過しますが、メインストリーム向けCPUよりもCPUダイが圧倒的に大きく、またメニーコアで発熱も分散するので、消費電力の数字に感じるほど運用(冷却)は難しくありません。
LGA4677ソケットに対応しているCPUクーラーがそもそも少なく、Xeon W2400/3400で自作PC的にパーソナルワークステーションを組むとなったら、空冷CPUクーラーならNoctua製品一択になると思うので、悩みがないという意味では導入のハードルはかなり低いと思います。


「Intel Xeon w7-2495X」はProcessor Base Power/TDPの225Wの時に、ちょうどCore i9 13900Kの定格(PL1/PL2:253W)とほぼ同じマルチスレッド性能になります。
ワットパフォーマンス的にはこの辺りがスイートスポットではあるものの、マルチスレッド性能のコストパフォーマンスを考えるとかなりもったいない使い方です。
「Intel Xeon w7-2495X」は定格Specific Per Core最大倍率のままでも電力制限解除で性能が伸びるので、Noctua NH-U14S DX-4677のような大型空冷環境ならPL1:350前後、水冷環境ならPL1:400W前後で、+25~35%程度のマルチスレッド性能向上を狙うのがオススメです。
Intel Xeon w7-2495X_Performance_per-and-game


クリエイティブ性能について

「Intel Xeon w7-2495X」のクリエイティブ性能については、高性能コアのみで構成される24コア48スレッドCPUではあるものの、定格のBy Core Usage倍率や電力設定ではマルチスレッド負荷時のコアクロックが3.0~3.3GHz程度になるので、マルチスレッド性能はCore i9 13900Kと同等か、やや下回るくらいになります。
ただワットパフォーマンスを無視すれば、電力制限の解除やOCで性能は伸びていき、長期的には+30%以上、短期的には+50%程度もCore i9 13900Kを上回るマルチスレッド性能を発揮できます。
Intel Xeon w7-2495X_Performance_vs

また高性能P-Coreと高効率E-Coreの混成では12900Kや13700KなどE-Coreが8コアまでなら性能が順当に伸びるのですが、E-Coreが16コアのCore i9 13900KはUnreal Engine 4のビルドのように性能が伸び悩むタスクがあります。
「Intel Xeon w7-2495X」は24コア全てが高性能コアのみで構成されているので、そういった高性能P-Coreと高効率E-Coreの混成によるマルチスレッド性能の鈍化がなく、期待できる結果が分かりやすいところも魅力だと思います。
Intel Xeon w7-2495X_dev_Unreal-Engine

また「Intel Xeon w7-2495X」などXeon W-2400/3400シリーズCPUはAVX512やAMX(TMUL)といった最新の拡張命令にも対応しています。
Intelのメインストリーム向け第12/13世代CPUでは高効率E-Coreの影響でこれらの拡張命令にCPU全体として対応しておらず、AI系タスクで非ネイティブ対応ではあるもののAVX512をサポートするRyzen 7000に対して差を開けられていましたが、Xeon W-2400/3400シリーズCPUはその点もカバーできています。
Intel Xeon w7-2495X_ai_1_topaz-gigapixel-ai


ゲーム性能について

ゲーム性能検証の冒頭でも述べたようにフルHD~4K解像度の60FPSターゲットであれば4コア4スレッド以上の最新CPUであればどれを使用しても大差はありません。
Ryzen 2000/3000の頃だとゲーム側の最適化の問題で60FPSターゲットであってもCPUによって差が出るケースも散見され、ゲーム用ならどちらかというとIntelという感じでしたが、Ryzen 5000以降ではこの差もほぼ無視できるレベルだと思います。
ただし最新の超高画質で重いゲームの場合、ゲームプレイの裏で次のシーンのロード作業が動くとロードが遅くなったりスタッター(カクツキ)が発生することがあるので、ゲーミングPCに搭載するなら、2万円台半ばから購入できることもありIntel Core i5 12400(F)やAMD Ryzen 5 5500など6コア12スレッド以上のCPUを当サイトでは推奨しています。

「Intel Xeon w7-2495X」はWS向けCPUということもあって定格倍率設定はゲーム向きではないものの、倍率アンロックなCPUなので適切にOCすれば、2023年最新CPUの高性能ゲーミングCPUと肩を並べるゲーム性能を発揮できます。
Intel Xeon w7-2495X_game_3_1920_relative
Core i9 13900KやRyzen 7000X3Dといった現在最速のゲーミングCPUにこそ流石に及びませんが、「Intel Xeon w7-2495X」は今回適用したようなインゲーム5GHz程度のOCを行えば、Core i9 12900Kを上回るゲーム性能を発揮できるので、パーソナルワークステーションとしてのクリエイティブタスクだけでなく、時にはPCゲーミングにも使用したいという人にも不足はないはずです。
Intel Xeon w7-2495X_game_4_1920_vs-12900K


総評 - ハイエンドデスクトップCPU Core-Xの後継として十分

Xeon W-2400/3400シリーズCPUは、その名の通りパーソナルワークステーション向けのXeon WシリーズCPUですが、末尾X付きの倍率アンロックモデルが複数ラインナップされていることから、長らく更新の途絶えていたハイエンドデスクトップ向けCPU、Core-Xの後継的な位置付けでもあるという見方は間違いではないはずです。

「Intel Xeon w7-2495X」はOC前提にはなるものの、Core i9 13900Kを30~50%上回るマルチスレッド性能、第13世代CPU上位モデル並みのシングルスレッド性能、最新ゲーミングCPUに肩を並べるゲーム性能といった優れたCPU性能を発揮し、またクアッドチャンネルで8枚組みメモリに対応、CPU直結PCIEレーンとしてPCIE5.0x64レーンを使用できるという拡張性も備えており、Core-Xの後継に求められるものが一通り揃っています。

OC前提なのでCore i9 13900KやRyzen 9 7950Xといったメインストリーム向け最上位CPUと比較してワットパフォーマンスはお世辞にもよろしくなく、またMB/メモリ/クーラーといった環境一式を揃える必要があって、なおかつ全てが高価なので財布にも厳しいという2つのネガティブポイントはあるものの、エンスージアストとも呼ばれるハイエンドデスクトップCPU、Core-Xユーザーなら後継として選ぶ障害にはならないかなと。


以上、「Intel Xeon w7-2495X」のレビューでした。
Intel Xeon w7-2495X



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今回は自作PC向けパーツとして「Intel Xeon w7-2495X」を評価しましたが、Xeon W-2400シリーズCPUを搭載したパーソナルワークステーションが国内のBTO PCメーカーから発売されています。
自分で組むのはハードルが高い、一から組む時間がないなど自作PCを組むのが難しいという人は、TSUKUMOやマウスコンピューターから発売されているBTO PCを検討してみてください。



















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