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オーストリアのCPUクーラーメーカーNoctuaが贈るサーバー・ワークステーション向けの120mmサイズ冷却ファン搭載サイドフロー型空冷CPUクーラー「Noctua NH-U12DX i4」のサンプル機を国内正規代理店TechAce様よりご提供いただけたのでレビューしていきます。Intel Xeon CPU対応マザーボードのCPUクーラーマウントNarrow ILMにも対応する同製品ですが、今回はLGA2066の18コア36スレッドCPU「Intel Core i9 7980XE」環境で、付属冷却ファンや同社の次世代120mmファン「Noctua NF-A12x25 PWM」を使用した場合について冷却性能を比較してみます。
国内正規代理店TechAce:https://techace.jp/product_info.php/products_id/2069
製品公式ページ:https://noctua.at/en/nh-u12dx-i4
マニュアル:https://noctua.at/media/blfa_files/manual/noctua_nh_u12dx_i4_manual_en.pdf
レビュー目次
1.Noctua NH-U12DX i4の梱包・付属品
2.Noctua NH-U12DX i4のヒートシンク
3.Noctua NH-U12DX i4の冷却ファン
4.Noctua NH-U12DX i4の外観
5.Noctua NF-A12x25 PWMについて
6.Noctua NH-U12DX i4の検証機材・セットアップ
7.Noctua NH-U12DX i4の各種クリアランス
8.Noctua NH-U12DX i4の冷却性能
9.Noctua NH-U12DX i4のレビューまとめ
補足.空冷クーラーと水冷クーラーの違いについて
Noctua NH-U12DX i4の梱包・付属品
まずは「Noctua NH-U12DX i4」の外観や付属品をチェックしていきます。Noctua製のコンシューマープラットフォーム向けCPUクーラーはカラー刷りの製品パッケージですが、「Noctua NH-U12DX i4」は同社のサーバー・ワークステーション向けCPUクーラーということで茶箱にステッカーを貼っただけの簡素なパッケージです。
Noctua NH-U12DX i4の外パッケージはN型箱になっており、CPUクーラー本体も茶色段ボールのスペーサーに収められていました。CPUクーラー本体を保護する段ボールは簡単な組み立て式でした。
各種付属品はビニール袋に入れられた状態で、CPUクーラー本体の下に収められていました。
マニュアル以外の付属品は、2基目の冷却ファンを装着するためのファンクリップ&防振ゴム、熱伝導グリス、ファンを低速で動作させるための降圧変換ケーブル「Low Noise Adapter」、LGA1356&LGA1366用マウントブラケット(NM-XFB3)、LGA1356/1366用スクリュー(NM-XBT2)、NarrowILR用マウントブラケット(NM-XFB4)、L字型ヘックスドライバーとなっています。
続いてCPUクーラー本体をチェックしていきます。
Noctua NH-U12DX i4は120mmサイズの冷却ファンを搭載しており見た目には標準的なサイドフロー型のCPUクーラーです。細かくチェックしていくとヒートシンクのアルミニウム放熱フィンがニッケルメッキで防錆処理されておりその独特の光沢も目を引きます。
ヒートシンクに冷却ファン等を装着した状態で重量を比較してみたところ、Ryzen Threadripper対応120mmサイズ空冷CPUクーラー「Noctua NH-U12S TR4-SP3」は862g、同社のフラッグシップ空冷CPUクーラー「Noctua NH-D15」は1285gに対して、「Noctua NH-U12DX i4」は750gでした。
Noctua NH-U12DX i4のヒートシンク
続いてNoctua NH-U12DX i4のヒートシンクをチェックしていきます。Noctua NH-U12DX i4のヒートシンクの放熱フィンは一般的なアルミニウム製ですがニッケルメッキ表面処理がされており、見た目に美しいだけでなく、汚れにくく錆びにくいというメリットもあります。Noctuaらしい質実剛健な工業製品的な美しさを全面に押し出したデザインです。
PCケースのサイドパネル側から見える放熱フィン上部にはメーカーロゴのNoctuaが刻印されています。
ヒートシンクの放熱フィンはベースコアを中心にして前後左右で対称な形状、ヒートパイプの配置も中心対称になっているので、天面ロゴの向きを除けば、ヒートシンク本体には前後の別はありません。放熱フィンのフィンピッチは狭すぎず広すぎずなちょうどいい塩梅で低速から高速まで幅広い冷却ファン動作に対応可能なピッチが採用されていました。側面は放熱フィンの末端が折り曲げ加工によって平面化されており、フィンを手で持った時に指を切る心配もありません。
ニッケルメッキの施された銅製ベースコアからは同じくニッケルメッキ銅製のヒートパイプが左右へ5本ずつ計10本伸びています。
Noctua NH-U12DX i4のベースコアプレートはニッケルメッキの銅製でCPUクーラーヒートスプレッダとの接触面積を最大化するために鏡面化(平滑化)されています。
ベースプレートのサイズはIntel LGA2066/2011系CPUの比較的大きいヒートスプレッダでも全体と接する十分なサイズになっています。
「Noctua NH-U12DX i4」をマザーボードに固定するためのリテンションには同社独自の簡単かつ安定した固定が可能な「SecuFirm2」という構造が採用されています。「Noctua NH-U12DX i4」にはLGA2066(SquareILM)に対応した専用のリテンションブラケットが標準で装着されています。スプリング付き六角スクリューが装着されており、付属のL字型六角ドライバーを使用して簡単かつ適切にCPUクーラーを装着可能となっています。
Noctua NH-U12DX i4の冷却ファン
Noctua NH-U12DX i4ではNF-F12 PWM Fanという標準的な120mm冷却ファンが付属します。PWM速度調整対応4PIN冷却ファンとなっており、300~1500RPMの範囲内で速度調整が可能です。ベージュのファンフレームとブラウンのファンブレードというNoctuaらしいカラーリングです。『これぞNoctua!』という肯定的な意見もあれば、『ダサい、きたない』といった否定的な意見もある賛否両論なデザインですが、少なくともパッと見でNoctuaの存在を頭に刻み込むというブランド認知には一役買っていることは間違いありません。冷却ファンのサイズは汎用120mmファンと同じです。
NF-F12 PWM Fan冷却ファンの軸を支えるフレームは緩い曲線を描き、ファン面に対してやや斜めに傾いたフレーム構造「Focused Flow frame」が採用されており、ファンから送られるエアフローの直進性を高める効果があります。
ファンフレーム内側を段階的なすり鉢状にする「Stepped Inlet Design」構造や内面に小さい窪みを設ける「Inner Surface Microstructures」構造によってエア流れを最適化し、静圧の改善やノイズの低減に寄与するそうです。
冷却ファンのヒートシンクへの固定方法はサイドフローCPUクーラーとしては一般的な針金のファンクリップを使用する方式です。
冷却ファンのネジ穴にファンクリップ左右端のU字部分を引っかけます。ファンフレームの四隅には防振ラバーパッドが装着されており冷却ファンの振動による共振の発生を抑制します。
あとはヒートシンクの溝にファンクリップ中央を引っかけるだけです。ファンクリップには中央に指をかけやすい凸形状があるので着脱も容易な構造になっています。
NF-F12 PWM Fanは単品でも販売されているので保守部品の入手性についても心配ありません。またファンクリップは1機目のファンで使用されているものに加えてもう1セット付属するので同冷却ファンを追加で購入すればプッシュプルのファンサンド構成も構築可能です。
2基目のファン用のファンクリップもCPUクーラーに付属するのでNF-F12 PWM FanやNF-A12x25 PWMを追加で購入すればプッシュプルのファンサンド構成も構築可能です。単品販売のNF-F12 PWM FanやNF-A12x25 PWMにはPWM 4PINの分岐ケーブルも付属しているので、NF-F12 PWM Fanを追加で購入すればそのままデュアルファン構成にアップグレードできます。
なお追加ファンには標準ラバーパッドではなく「Noctua NH-U12DX i4」に付属している厚手のラバーパッドを装着してください。下は「Noctua NH-U14S TR4-SP3」の検証結果となりますが、標準厚のラバーパッドのままでヒートシンク後方に2基目の冷却ファンを装着すると高速回転時のファンノイズが若干大きくなります。
Noctua NH-U12DX i4の外観
ヒートシンクと冷却ファンの個別チェックも済んだところで、ヒートシンクへ冷却ファンを組み込んで「Noctua NH-U12DX i4」の完成状態の外観や寸法をチェックしていきます。Noctua NH-U12DX i4は120mmサイズの冷却ファンを搭載しており見た目には標準的なサイドフロー型のCPUクーラーです。細かくチェックしていくとヒートシンクのアルミニウム放熱フィンがニッケルメッキで防錆処理されておりその独特の光沢も目を引きます。
アルミフィン1枚1枚にファンクリップ用の溝があるので、ファンを固定する高さはユーザー側で自由に設定可能です。高い位置にファンを固定すれば、当然その分だけCPUクーラーの高さが高くなります。
冷却ファンが標準位置に配置されている場合はヒートシンクの方が最高位置が高いので、「Noctua NH-U12DX i4」の全高は製品仕様通り158mmです。
Noctua NF-A12x25 PWMについて
「Noctua NH-U12DX i4」の標準付属ファンNF-F12 PWM Fanから換装するのにおすすめなNoctuaの次世代120mm冷却ファン「Noctua NF-A12x25 PWM」について紹介します。「Noctua NF-A12x25 PWM」の付属品は、低ファンノイズ変換アダプタ(L.N.A.)、PWM対応4PINファン端子2分岐Y字ケーブル、PWM対応4PINファン端子300mm延長ケーブル、 防振ファンブッシュ「NA-AV2 anti-vibration mounts」、水冷ラジエーター用防振ガスケット「Anti-vibration gasket for water cooling radiators」、ファン固定用テーパーネジ4個となっています。
「Noctua NF-A12x25 PWM」は定格2000RPMのPWM速度調整対応4PIN冷却ファンです。PWM速度調整によって450~2000RPMの範囲内で速度調整が可能です。また付属の低ファンノイズ変換アダプタ(L.N.A.)を接続すると降圧調整によって定格回転数が1700RPMに下がります。
「Noctua NF-A12x25 PWM」はベージュのファンフレームとブラウンのファンブレードというNoctuaらしいカラーリングです。『これぞNoctua!』という肯定的な意見もあれば、『ダサい、きたない』といった否定的な意見もある賛否両論なデザインですが、少なくともパッと見でNoctuaの存在を頭に刻み込むというブランド認知には一役買っていることは間違いありません。
冷却ファンのサイズは汎用120mmファンと同じです。乱流の発生により静音化を向上させるファンブレードに刻み込まれた溝構造「Flow Acceleration Channels」も採用されています。
またファンフレーム内側を階段状のすり鉢形にする「Stepped Inlet Design」構造によって大風量の実現や、エア流れを最適化し静圧の改善やノイズの低減に寄与するそうです。ファンフレームの四隅には防振ラバーパッドが装着されており冷却ファンの振動による共振の発生を抑制します。
「NF-A12x25 PWM」と「NF-F12 PWM」を比較すると「NF-A12x25 PWM」ではモーターハブが若干大型化されています。また中心部の材質をスチール製に、金色のアクスルマウントは真鍮製になっており補強が施されています。軸受けは従来機種でも採用されているNoctua第2世代「SSO2ベアリング」が使用され、さらに真鍮製CNCベアリングシェルによって軸ブレをなくし、高い耐久性が実現されています。
NF-F12 PWMでは直進整流効果が期待できる11枚羽の軸フレーム構造「Focused Flow frame」が採用されていましたが、「Noctua NF-A12x25 PWM」ではファンブレード回転方向と直交する向きに4本の軸フレームが伸びているシンプルな構造が採用されています。
「Noctua NF-A12x25 PWM」の最大の特徴は何といっても、0.5mmという限界に挑んだフレーム-ブレード間の隙間の小ささです。この間隔が狭いほど漏れる空気は少なくなりエアの直進性も増すので、回転数に対する風量の効率が増し、静音性も向上するという、シンプルイズベストなアプローチになっています。
超硬質かつ軽量な新素材「Sterrox LCP」をファンブレードの素材として採用することによって、ファンブレード回転時の振動が軽減され、中心軸からぶれず、遠心力による変形が発生しないので、フレーム-ブレード間0.5mmの限界を実現しています。
「NF-A12x25 PWM」と「Noctua NH-U12DX i4」に標準で付属する冷却ファン「NF-F12 PWM」とはラバーパッドの規格が同じなので「NF-A12x25 PWM」を2基購入すればファンサンド構成でも問題なく使用できます。
Noctua NH-U12DX i4の検証機材・セットアップ
「Noctua NH-U12DX i4」を検証機材のベンチ機にセットアップします。Noctua NH-U12DX i4の検証機材としてはIntel Core i9 7980XEやASRock X299 OC Formulaなどで構成されているベンチ機を使用しました。構成の詳細は下記テーブルの通りです。テストベンチ機の構成 | |
CPU | Intel Core i9 7980XE 殻割り&クマメタル化 (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z Black F4-4200C19Q2-64GTZKK DDR4 8GB*4=32GB (4枚のみ使用) (レビュー) |
マザーボード |
【動作確認用】 ・ASRock X299 OC Formula (レビュー) 【メモリクリアランス確認用】 ・ASRock X299 Extreme4 ・ASUS PRIME X299-DELUXE(レビュー) ・ASUS ROG RAMPAGE VI EXTREME(レビュー) ・GIGABYTE X299 AORUS Gaming 7(レビュー) ・GIGABYTE X299 AORUS Gaming 9 ・MSI X299 GAMING M7 ACK(レビュー) ・MSI X299 XPOWER GAMING AC(レビュー) |
ビデオカード | EVGA GTX 1080 Ti SC2 iCX (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung SSD 860 PRO 256GB (レビュー) |
データストレージ |
SanDisk SSD Ultra 3D SATA SSD SDSSDH3-2T00-J25 (レビュー) |
OS | Windows10 Home 64bit |
電源ユニット | Corsair HX1200i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
検証機材のCPUにはX299チップセット搭載LGA2066マザーボードで使用可能なIntel Core-X CPU最上位モデルで18コア36スレッドの「Intel Core i9 7980XE」を使用しています。検証機材のCore i9 7980XEはCPUダイとヒートスプレッダ間のグリスを液体金属グリスに塗り替えているので通常よりも低い温度で動作しています。
・【一家に1台】汐見板金の国産殻割りツール「Delid Master」をレビュー!
・18コア36スレッド「Core i9 7980XE」を殻割りで4.5GHzにOCレビュー
ベンチ機のシステムストレージにはSamsung製MLCタイプ64層V-NANDのメモリチップを採用する18年最速のプロフェッショナル向け2.5インチSATA SSD「Samsung SSD 860 PRO 256GB」を使用しています。Samsung SSD 860 PROシリーズは容量単価が高価ではあるものの、システムストレージに最適な256GBや512GBモデルは製品価格としては手を伸ばしやすい範囲に収まっており、Intel Core i9 CPU&X299のようなエンスー環境のシステムストレージ用に一押しのSSDです。
・「Samsung SSD 860 PRO 256GB」をレビュー
CPUクーラーの設置方法について、当サイトの評価基準となるチェックポイントは次の3つです。
- LGA115Xの場合、CPU固定バックプレートが単独でマザーボードに固定できるか
- マウントパーツ設置状態でCPUを交換できるか
- 空冷の場合、ネジ止めの場合はマザーボード側から固定できるか
簡易水冷or水冷ブロックの場合、ハンドスクリューなどツールレス固定ができるか
上の3項目を全て満たす例として本格水冷用のCPU水冷ブロックですが「EK-Supremacy EVO」のマウンタ構造は「バックプレートをM/Bに固定可能」「完全ツールレス」「マウンタ設置状態でCPUの交換が可能」なので本格水冷・簡易水冷クーラーの水冷ブロック固定方式としてはベストだと思っています。水冷クーラーメーカーにはどんどん真似してもらいたい理想的な構造です。
一応テンプレなので管理人的に高評価なCPUクーラーマウントについて説明しましたが、「Noctua NH-U12DX i4」の対応プラットフォームではCPUソケットに予めCPUクーラー固定用ネジ穴があるので、別途マウントパーツを装着する必要はありません。CPUクーラー本体に装着されたリテンションのネジを締めて固定するだけなので非常に簡単です。
CPUクーラーをマザーボードに固定する準備はこれで完了したので熱伝導グリスをCPUのヒートスプレッダに塗布します。熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
Thermal Grizzly Kryonaut TG-K-001-RS(少量、1g)
Thermal Grizzly Kryonaut TG-K-015-RS(1.5ml)
Thermal Grizzly Kryonaut TG-K-030-RS(3.0ml)
親和産業
グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
熱伝導グリスを塗ったらCPUクーラーヒートシンクを乗せて付属のL字型ヘックスドライバーでネジ止めして、ファンクリップでヒートシンクに冷却ファンを装着したらNoctua NH-U12DX i4の設置完了です。
Noctua NH-U12DX i4の各種クリアランス
CPUクーラーの性能検証に入る前に、空冷CPUクーラーにはつきものである最上段PCI-EスロットやVRM電源ヒートシンクやヒートシンクを搭載したシステムメモリとのクリアランス問題についてNoctua NH-U12DX i4の事情をチェックしていきます。まず最初にIntel Skylake-X Core i9 CPUに対応するX299チップセット搭載LGA2066マザーボードと直接的に関係のあるプライマリグラフィックボード用PCI-Eスロットとのクリアランスについてチェックします。クリアランスの検証マザーボードとしては後ほど冷却性能の検証機材としても使用する「ASRock X299 OC Formula」に加えて、「ASUS PRIME X299-DELUXE」「ASUS ROG RAMPAGE VI EXTREME」「GIGABYTE X299 AORUS Gaming 7」「MSI X299 GAMING M7 ACK」「MSI X299 XPOWER GAMING AC」「ASRock X299 Extreme4」の7機種について確認しました。
「Noctua NH-U12DX i4」のプライマリグラフィックボード用PCI-Eスロットのクリアランスについて、検証機材マザーボードには1段目から3段目までのPCIEスロットがありましたが、いずれもグラフィックボードとCPUクーラーが干渉することなく設置できました。
なお比較的大型な空冷CPUクーラーの多くに言えることですが、CPUクーラーとグラフィックボードの隙間が狭いので、CPUクーラーの設置自体は問題ないのですが取り外しの際には少し困るかもしれません。取り外しのためには定規などを使用してPCI-Eスロットのグラフィックボード固定爪を解除する必要があります。
取り付けよりも取り外しで困るというのは大型空冷CPUクーラーのあるあるネタなので注意してください。取り外しの際はグラフィックボード固定爪の解除のためにプラスチックの定規など細くて固いものを事前に用意しておくことをお勧めします。
続いて「Noctua NH-U12DX i4」を使用した場合のメモリとのクリアランスをチェックしていきます。メモリのクリアランス検証の機材としては主に「Samsung B-Die バルクメモリ(レビュー)」「Corsair Dominator Platinum(レビュー)」「G.Skill Trident Z Red/RGB/Black(レビュー)」「G.Skill Flare X(レビュー)」「Kingston HyperX Fury」「Kingston HyperX Savage(レビュー)」「Corsair VENGEANCE LPX(レビュー)」を使用してCPUクーラーとの干渉の有無をチェックします。
Intel Skylake-X Core i9 CPUに対応するX299 LGA2066環境はクアッドチャンネルで最大8枚のメモリ装着に対応しており、使用するメモリ数に対して通常は次のようなレイアウトが推奨されています。CPUクーラーとメモリの干渉が発生する可能性が高いのは4枚刺し、もしくは8枚刺しを行う場合のCPUソケットに最も近い位置にある左右2つづつの4スロットとなります。
まずは標準構成となる「Noctua NH-U12DX i4」のヒートシンク前方(CPUソケット右側)にのみ冷却ファンを設置した場合についてですが、今回検証したマザーボード7種についてはメモリ8枚刺しで最もCPUソケットに近い位置のスロットにメモリを装着しても、いずれのマザーボードでも3mm~5mm前後の余裕があり、全高が40mm前後の大型ヒートシンクを搭載するメモリであっても干渉は発生しませんでした。
またオプションとなる「Noctua NH-U12DX i4」のヒートシンク後方(CPUソケット左側)にも冷却ファンを設置したプッシュプルのファンサンド構成にした場合についてですが、今回検証したマザーボード7種についてはメモリ8枚刺しで最もCPUソケットに近い位置のスロットにメモリを装着しても、いずれのマザーボードでもギリギリの余裕があり、全高が40mm前後の大型ヒートシンクを搭載するメモリであっても干渉は発生しませんでした。
今回検証した7機種のX299チップセット搭載LGA2066マザーボードにおいて「Noctua NH-U12DX i4」とグラフィックボードやメモリとの干渉は発生しなかったので、X299チップセット搭載LGA2066マザーボードについては基本的に干渉の心配はないと思います。
Noctua NH-U12DX i4の冷却性能と静音性
続いて本題となる「Noctua NH-U12DX i4」の冷却性能と静音性を詳細に検証していきます。検証システムをベンチ板に置いた状態で測定を行っているためCPUクーラーが水冷・空冷によらず基本的にCPUクーラーの理想的な性能をチェックすることになります。
Core i9 7980XEの動作周波数はマザーボードの標準設定によって変わってしまいますが、検証機材マザーボードのASRock X299 OC FormulaなどTDPによって電力制限が正常に機能する多くのマザーボードでは全コアに対して大きな負荷がかかった場合、動作周波数は2.9~3.0GHzとなります。
「Noctua NH-U12DX i4」に標準付属ファンNF-F12 PWMを装着してファン回転数を1200RPMとしたところCPU温度は60度前後に収まりました。非殻割りのCore i9 7980XEであっても定格動作であれば「Noctua NH-U12DX i4」で問題なく運用できると思います。
冷却性能についてさらに詳しくチェックする前に、サウンドレベルメーター(騒音計)を使用して「Noctua NH-U12DX i4」のファンノイズをチェックしてみました。騒音計の収音部分とノイズ発生部分との距離が15cm程度になる位置で測定を行っています。簡易水冷の場合はラジエーターとポンプ両方からの距離が15cm程度になるように設置しています。
電源OFF時の騒音値は33~35dBです。目安として40dBを超えたあたりからファンノイズがはっきりと聞こえるようになり、45dB前後で煩く感じます。50dBを超えてくるとヘッドホンをしていても煩く感じます。同じ騒音値でも不快に感じたり感じなかったりと音の性質にもよるので注意してください。
「Noctua NH-U12DX i4」のヒートシンクに「Noctua NF-A12x25 PWM」と「Noctua NF-F12 PWM」をそれぞれ装着してみた場合のファンノイズの騒音値はファン回転数別で次のようになっています。
「Noctua NF-A12x25 PWM」は同環境で「Noctua NF-F12 PWM」と比較すると300RPM~400RPM程度高いファン回転数で同じノイズレベルを実現しており静音性の高さが確認できます。
デュアルファン構成についても確認してみたところ、「Noctua NF-A12x25 PWM x2」は「Noctua NF-F12 PWM」のシングルファン構成よりも高い静音性となっており、「Noctua NF-F12 PWM x2」と比較すると400RPM程度高いファン回転数で同じノイズレベルでした。
「Noctua NF-A12x25 PWM」や「Noctua NF-F12 PWM」を「Noctua NH-U12DX i4」のヒートシンクに装着したそれぞれの場合におけるファン回転数に対するファンノイズの特性が確認できたので、続いてIntel Core i9 7980XEを使用して、冷却ファンを「Noctua NF-A12x25 PWM」、「Noctua NF-A12x25 PWM x2」、「Noctua NF-F12 PWM」、「Noctua NF-F12 PWM x2」に変えた4パターンについて冷却性能を比較してみました。
Intel Core i9 7980XEの動作設定は全コア3.5GHz、コア電圧1.000V、メモリ周波数3600MHzとしており、Cinebenchのスコアは3500ほどとなります。またCPU単体の消費電力は300~350W程度となります。
検証負荷については、FF14ベンチマークの動画(再生時間8分、WQHD解像度、60FPS、容量4.7GB)でAviutl+x264を使ってエンコードを行いました。エンコード時間はCore i9 7980XEの場合7,8分ほどなので同じ動画で3つ平行して1周させています。エンコード中のファン回転数は一定値に固定しています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から管理人の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。
まずはファンノイズの騒音値が38dB程度になるように統一して「Noctua NF-A12x25 PWM」は1800RPM、「Noctua NF-F12 PWM」は1400RPM、「Noctua NF-A12x25 PWM x2」は1500RPM、「Noctua NF-F12 PWM x2」は1100RPMにファン回転数を固定し、負荷テストを実施したところ、CPU温度の推移は次のようになりました。
「Noctua NF-A12x25 PWM」は同じノイズレベルに対して「Noctua NF-F12 PWM」よりもファン回転数でを300RPM~400RPM程度高く動作させることができるので、「Noctua NH-U12DX i4」に標準で付属するNF-F12 PWMからNF-A12x25 PWMへ換装することによって冷却性能と静音性の向上が期待できます。一方でデュアルファン構成についてはノイズレベルを揃えるとシングルファンよりも冷えないという結果になりました。NH-U12DX i4のヒートシンクがもともとシングルファンに最適化して設計されているのでシングルファンでも十分冷やせるようです。
続いてファンノイズの騒音値が43dB程度になるように統一して「Noctua NF-A12x25 PWM x2」は1800RPM、「Noctua NF-F12 PWM x2」は1400RPMにファン回転数を固定し、負荷テストを実施したところ、CPU温度の推移は次のようになりました。
先ほどはシングルファンとデュアルファンでノイズレベルを揃えましたが今回は各冷却ファンについてファン回転数が揃えてあります。ファン回転数が同じなのでシングルファンよりもデュアルファンのほうが騒音値は大きくなりますが、ファン回転数が同じなら当然、デュアルファンの方が冷却性能が高くなります。興味深い結果として騒音値43dBの「Noctua NF-F12 PWM x2(1400RPM)」と騒音値38dBの「NF-A12x25 PWM(1800RPM)」の冷却性能がほぼ一致しています。次世代120mm冷却ファン「Noctua NF-A12x25 PWM」の性能の高さがうかがい知れる結果です。
以上「Noctua NH-U12DX i4」のヒートシンクに冷却ファンとして「Noctua NF-A12x25 PWM」、「Noctua NF-A12x25 PWM x2」、「Noctua NF-F12 PWM」、「Noctua NF-F12 PWM x2」へ装着し変えた4パターンについて静音性や冷却性能を比較してみましたが、総合的に見ると「Noctua NF-A12x25 PWM」のシングルファンへの換装が最も冷却性能と静音性のバランスが良さそうです。
Noctua NH-U12DX i4のレビューまとめ
最後にNoctuaのIntel系サーバー・ワークステーション向けCPUクーラー「Noctua NH-U12DX i4」(国内正規代理店TechAce提供)を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- Noctua空冷らしい無骨なデザインでニッケルメッキのヒートシンクが美しい
- 120mmサイズ冷却ファン採用の標準サイズなのでオールラウンドに対応可能
- LGA2066マザーボードでは基本的にメモリとの干渉は発生しない
- LGA2066マザーボードでは基本的にグラフィックボードとの干渉は発生しない
- 18コア36スレッドCore i9 7980XEの定格動作を運用できる冷却性能
- NF-A12x25 PWMへの換装で静音性&冷却性能UPも狙える、デュアルファンにも対応
- 良くも悪くもNoctuaらしいベージュ&ブラウンの冷却ファンのカラーリング
- 大型グラフィックボードと組み合わせた場合に取り付けは問題ないが取り外しがやや難しい
冷却性能の検証結果からもわかるように「Noctua NH-U12DX i4」はIntelの最新エンスー向けCPUで18コア36スレッドの最上位モデル「Intel Core i9 7980XE」の定格を静音性を保ったままで十分に冷却できる性能があります。120mm径の冷却ファンが回転数1200RPM程度でも十分な冷却性能を発揮できるので静音性にも優れたCPUクーラーです。OCはせずそこそこの静音性でIntel Core i9 CPUを定格運用したいというようなLGA2066プラットフォーム入門のお供に最適なCPUクーラーだと思います。
「Noctua NH-U12DX i4」は120mmサイズ冷却ファンを搭載する標準的なサイズのサイドフロー型CPUクーラーなのでPCケースとの干渉を気にすることなくオールラウンドに対応可能な汎用性も魅力的なCPUクーラーです。
ニッケルメッキで表面処理された大型のアルミ放熱フィンを搭載するヒートシンクは工業製品的な美しさがあるものの、Noctuaを代表するベージュ&ブラウンのカラーリングの冷却ファンはかなりユニークなのでNoctua NH-U12DX i4は総じて人を選ぶデザインだと思います。
またNoctua NH-U12DX i4に限った話ではありませんが標準サイズの空冷CPUクーラーでも取り付けは比較的簡単ですが大型グラフィックボードと組み合わせた場合に取り外しに難儀する場合があるのでその点は事前に押さえておいてください。取り外しの際はグラフィックボード固定爪の解除のために定規など細くて固いものが必要になります。
標準付属の冷却ファン「Noctua NF-F12 PWM」も120mm冷却ファンとしては長らくNoctuaを支えてきた製品なので十分な性能を備えていますが、18年に発売されたばかりのNoctuaの次世代120mm冷却ファン「Noctua NF-A12x25 PWM」に換装すればさらに高い静音性と冷却性能を発揮できるので、「Noctua NH-U12DX i4」などNH-U12シリーズや他社製品含めて120mmサイズ冷却ファン搭載のサイドフロー型CPUクーラーへの換装は非常におすすめです。
以上、「Noctua NH-U12DX i4」のレビューでした。
Noctua NF-A12x25 PWM 120mmファン 定格2000RPM PWM対応
Noctua NF-A12x25 ULN 120mmファン 定格1200RPM PWM対応
Noctua NF-A12x25 FLX 120mmファン 定格2000RPM
Noctua(国内正規代理店TechAce)
<TSUKUMO:PWM/ULN/FLX><PCショップアーク>
補足:空冷クーラーと水冷クーラーの違いについて
「空冷クーラー」と「水冷クーラー」の2種類ついて同じところと違うところ、また原理的に考えた冷却性能の比較を簡単に補足しておきます。関連記事
・質実剛健なハイエンド空冷「Noctua NH-D15」をレビュー・次世代120mmファン「Noctua NF-A12x25 PWM」をレビュー
・LEDイルミネーション搭載「CRYORIG H7 QUAD LUMI」をレビュー
(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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Ryzen Threadripper対応120mmサイズ空冷CPUクーラー「」はg
↑となっていました。