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Samsung製の3bit MLC型 第5世代V-NANDメモリチップを採用するNVMe M.2 SSDのメインストリーム向けスタンダードモデル「Samsung SSD 970 EVO Plus」から、容量1TBモデル「Samsung SSD 970 EVO Plus 1TB(型番:MZ-V7S1T0B)」のサンプル機をメーカーよりお借りできたのでレビューしていきます。前モデルのSamsung SSD 970 EVOやMLC型で現行最速のSamsung SSD 970 PROと比較しながら、速くて丈夫で安い、3拍子揃った2019年最新メインストリーム向けNVMe M.2 SSDを徹底検証します。
代理店ページ:https://www.itgm.co.jp/product/ssd-970-evo-plus-m-2-nvme.php
製品公式ページ:https://www.samsung.com/semiconductor/minisite/jp/ssd/consumer/970evoplus/
データシート:https://s3.ap-northeast-2.amazonaws.com/global.semi.static/Samsung_NVMe_SSD_970_EVO_Data_Sheet_Rev.1.0.pdf
Samsung SSD 970 EVO Plus 1TB レビュー目次
1.Samsung SSD 970 EVO Plusについて
2.Samsung SSD 970 EVO Plus 1TBの外観
3.Samsung SSD 970 EVO Plus 1TBの検証機材と基本仕様
4.Samsung SSD 970 EVO Plus 1TBのベンチマーク比較
5.Samsung SSD 970 EVO Plus 1TBの連続書き込みについて
6.Samsung SSD 970 EVO Plus 1TBの温度とサーマルスロットリングについて
7.Samsung SSD 970 EVO Plus 1TBのデータコピー・ゲームロード比較
8.Samsung SSD 970 EVO Plus 1TBのレビューまとめ
Samsung SSD 970 EVO Plusについて
「Samsung SSD 970 EVO Plus」はSamsung製の第5世代V-NAND 3bit MLCメモリチップを採用することによって前モデル970 EVOよりもアクセススピードの高速化と、メインストリーム向け製品としては重要なさらなる低価格化を実現した最新NVMe M.2 SSDです。2019年2月現在、「Samsung SSD 970 EVO Plus」は国内市場向けに容量別で250GB/500GB/1TBの3モデルがラインナップされています。Samsung SSD 970 EVO Plusの2TBモデルは、製品公式ページよると「2019年6月発売予定(発売地域によって前後する場合あり)」とのこと。
「Samsung SSD 970 EVO Plus」はメモリチップにSamsung製の第5世代V-NAND 3bit MLC(一般に言うところのTLC型3D NAND)、メモリコントローラーにSamsung Phoenix Controllerが採用された、M.2 2280フォームファクタのNVMe(PCI-E3.0x4)接続M.2 SSDです。
ハードウェア構成における前世代の無印版970 EVOからの大きな変更点として、メモリチップが64層の第4世代V-NANDから、Samsungから90層以上(more than 90 layers)と公称されている第5世代V-NANDが採用されています。Samsungの第5世代V-NANDに関する公式プレスリリースによると、64層から90層以上へ150%の集積率を実現したことで、読み出し速度が40%以上、書き込み速度も30%以上向上しているとのこと。
「Samsung SSD 970 EVO Plus」のアクセススピードは容量によって若干異なりますが、最大でシーケンシャル読出3500MB/s、シーケンシャル書込3300MB/s、4KQD1ランダム読出19,000 IOPS、4KQD1ランダム書込60,000 IOPS、4KQD32ランダム読出600,000 IOPS、4KQD32ランダム書込550,000 IOPSの高速アクセスを実現しています。
「Samsung SSD 970 EVO Plus」のMTBF(平均故障時間)は150万時間、書込耐性は250GBが150TBW、500GBが300TBW、1TBが600TBWとなっており、メーカーによる製品保証期間は5年間です。
「Samsung SSD 970 EVO Plus」にはメモリチップとしてSamsung製V-NAND 3bit MLC、一般に言うところのTLC型3D NANDが採用されています。TLC型NANDは上位モデル970 PROに採用されているMLC型NANDに比べて書き込み性能で劣るため、TLC型SSDでは一般に搭載するNANDフラッシュメモリーの一部をSLCキャッシュとして使用して書き込み性能を底上げする機能が採用されていますが、「Samsung SSD 970 EVO Plus」ではこのキャッシュ機能を強化し、必要に応じてSLCの領域を増減する「Intelligent TurboWrite」機能が採用されています。
「Intelligent TurboWrite」においてはキャッシュとなる疑似SLC領域は標準で数GBの容量が確保されますが、それを上回る大容量の書き込みアクセスが発生した場合にモデルによって定められた容量を追加でバッファ領域として利用できます。「Samsung SSD 970 EVO Plus」各モデルのSLC領域、可変領域、書込速度は次のテーブルのようになっています。
「Samsung SSD 970 EVO Plus」 Intelligent TurboWrite の仕様 | |||||
容量 | 250GB | 500GB | 1TB | 2TB | |
キャッシュ サイズ |
標準 | 4GB | 6GB | - | |
可変領域 | 9GB | 18GB | 36GB | ||
最大 | 13GB | 22GB | 42GB | ||
連続書込 | キャッシュ内 | 2300MB/s | 3200MB/s | 3300MB/s | |
キャッシュ外 | 400MB/s | 900MB/s | 1700MB/s |
Samsung SSD 970 EVO Plus スペック一覧 |
||||
容量 | 250GB (MZ-V7S250B/IT) |
500GB (MZ-V7S500B/IT) |
1TB (MZ-V7S1T0B/IT) |
2TB |
コントローラー |
Samsung Phoenix Controller | - | ||
メモリー | Samsung製 第5世代V-NAND 3bit MLC (TLC型90+層3D NAND) | |||
キャッシュ |
512MB LPDDR4 | 1GB LPDDR4 | ||
連続読出 | 3500MB/s | |||
連続書込 | 2300MB/s | 3200MB/s | 3300MB/s | |
4Kランダム読出 QD1T1 / QD32T4 |
17,000 IOPS / 250,000 IOPS |
19,000 IOPS / 480,000 IOPS |
19,000 IOPS / 600,000 IOPS |
|
4Kランダム書込 QD1T1 / QD32T4 |
60,000 IOPS / 550,000 IOPS |
|||
消費電力 | 30mW(アイドル) 4.2W(リード平均) |
30mW(アイドル) 5.8W(リード平均) |
30mW(アイドル) 6.0W(リード平均) |
|
動作温度範囲 | 0°C~70°C | |||
MTBF | 150万時間 | |||
耐久性評価 | 150TBW | 300TBW | 600TBW | |
保証期間 | メーカー5年 |
Samsung SSD 970 EVO Plus 1TBの外観
まず最初にSamsung SSD 970 EVO Plus 1TBの外観や付属品について簡単にチェックしておきます。パッケージの外観についてSamsung SSD 970 EVO PlusではSamsung製メインストリーム向けSSDではお馴染みのオレンジ色がアクセントカラーになっています。若干色味が変わっていますが、パッケージのデザインやサイズはSamsung SSD 970 EVOとほぼ同じです。
紙製のパッケージを開くとSSD本体はプラスチックのスペーサーに収められていました。付属品は保証規定書およびインストールガイドとなっています。
Samsung SSD 970 EVO PlusのSSD本体デザインについては普通にM.2 2280サイズ、M-Key型のM.2 SSDです。PCB基板は黒色になっています。
Samsung SSD 970 EVO Plusの表面シールの下にはM.2端子に近いものから順にメモリコントローラー、その隣にDRAMキャッシュ、残り半分には2枚のメモリチップが実装されています。(注:実装がほぼ同じなので参考に、970 EVOの写真を流用。表面、裏面ともシールやラベルを剥がすと保証対象外となります)
最大容量の1TBモデルでもメモリコントローラーやメモリチップが表面のみに実装される片面実装です
Samsung SSD 970 EVO PlusとSamsung SSD 970 EVOはほぼ共通のレイアウトで各種素子が実装されています。第5世代V-NANDを見越してメモリチップの交換+αな簡易の変更で、更新できるように設計されていたようです。
サーマルスロットリングの抑制に対しては前モデル同様に、発熱と性能のバランスを調整する独自のアルゴリズム「Dynamic Thermal Guard」を採用するプロセッサレベルの対策だけでなく、基板背面に貼られた銅製シール「Copper Seal(銅箔層ヒートスプレディングラベル)」や、発熱の大きいメモリコントローラーのチップ表面にもニッケルメッキの金属プレートを施すといった物理的アプローチで放熱を補助・促進しています。(注:表面、裏面ともシールやラベルを剥がすと保証対象外となります)
Samsung SSD 970 EVO Plus 1TBの検証機材と基本仕様
「Samsung SSD 970 EVO Plus 1TB」の各種検証を行う環境としては、Intel Core i9 9900K&ASUS WS Z390 PROなどで構成されているベンチ機を使用しました。構成の詳細は下記テーブルの通りです。テストベンチ機の構成 | |
CPU | Intel Core i9 9900K(レビュー) Core/Cache:5.1/4.7GHz, 1.300V 殻割り&クマメタル化(レビュー) |
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36(レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z Black F4-4400C19D-16GTZKK DDR4 8GB*2=16GB (レビュー) 4000MHz, CL17-17-17-37-CR2 |
マザーボード |
ASUS WS Z390 PRO (レビュー) |
ビデオカード | 【基礎性能検証用】 MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC (レビュー) 【PCゲームロード時間検証用】 ZOTAC RTX 2080Ti AMP Extreme Core (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB MZ-N6E1T0B/IT (レビュー) |
OS | Windows10 Home 64bit |
電源ユニット | Corsair HX1200i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
ベンチ機のシステムストレージにはSamsung製3bit-MLC型64層V-NANDのメモリチップを採用するメインストリーム向け最新SATA接続M.2 SSD「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB」を使用しています。「Samsung SSD 860 EVO M.2」は2.5インチSATA SSDと同等のパフォーマンスをケーブルレスで発揮できる手軽さが魅力です。Samsung SSD 860 EVOの容量1TB以上のモデルは大容量データの連続書き込みにおける書き込み速度の低下というTLC型SSDの欠点も解消されているので、大容量ファイルをまとめて入れても余裕のあるメインストレージとしてお勧めのSSDです。
・「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB」をレビュー
「Samsung SSD 970 EVO Plus 1TB」のボリュームをWindows10上で作成したところ、空きスペースは931GBでした。
Samsung SSD 970 EVO Plus 1TBのベンチマーク比較
「Samsung SSD 970 EVO Plus 1TB」の性能を測るためストレージに関する基本的なベンチマークソフトを使用して測定を行います。比較対象として同じくNVMe M.2 SSDの「Samsung SSD 970 PRO 1TB(レビュー)」と「Samsung SSD 970 EVO 1TB(レビュー)」と「WD Black 3D NVMe SSD 1TB(レビュー)」と「Corsair Force MP510 960GB(レビュー)」、およびSATA SSDの「Samsung SSD 860 PRO 1TB(レビュー)」、「Samsung SSD 860 EVO 1TB(レビュー)」等でも同様の測定を行いました。まずはCrystalDiskMark6.0.2(8GiB)について、「Samsung SSD 970 EVO Plus 1TB」やその他の比較対象ストレージのベンチマーク結果は次のようになっています。
「Samsung SSD 970 EVO Plus 1TB」のベンチマークススコアは連続読み出し3500MB/s、連続書き込み3300MB/sとなりました。連続読み出し3000MB/s越えの製品はそれなりに出てきていますが、3300MB/sという連続書き込み速度は2019年現在文句なしに最速クラスの製品です。
ATTO Disk Benchmark 4.00.0f2(512B-64MB, 8GB, QD1/QD4)について、「Samsung SSD 970 EVO Plus 1TB」やその他の比較対象ストレージのベンチマーク結果は次のようになっています。
ATTO Disk Benchmarkはブロックサイズ別のシーケンシャル性能を主にチェックするベンチマークなので4KB~1MBを抜粋してリード/ライト性能をグラフにして比較しました。
AS SSD Benchmark v2.0.6821.41776(5GB)について、「Samsung SSD 970 EVO Plus 1TB」やその他の比較対象ストレージのベンチマーク結果は次のようになっています。
PCMark8 ストレージテストについて、「Samsung SSD 970 EVO Plus 1TB」やその他の比較対象ストレージのベンチマーク結果は次のようになっています。
Samsung SSD 970 EVO Plus 1TBの連続書き込みについて
「Samsung SSD 970 EVO Plus 1TB」に連続書き込みを行った場合の動作についてチェックします。TLC型NANDやQLC型NANDと呼ばれる3bit以上のマルチレベルセルで動作するNANDが採用されているSSDでは、書き込み速度の底上げのためNANDメモリの一部を高速なSLCキャッシュ化する機能が実装されています。SLCキャッシュ機能を有するSSDにおいて、SLCキャッシュ容量を超過する連続した大容量の書き込みが発生した場合、書き込み速度が階段的にガクッと下がる仕様になっています。
例えば600MB/sが理論的な上限速度となるSATA SSDの場合は、動画ファイルなど数十GB以上の単一ファイルの連続書き込みが発生すると、SLCキャッシュ超過後はCrystalDiskMarkなどベンチマークソフトで表示される500MB/s程度の連続書き込み速度を維持できず100~200MB/sまで書き込み速度が低下する可能性があります。
2.5インチSATA SSDの「Samsung 850 PRO 2TB(レビュー)」やNVMe M.2 SSDの「Samsung 970 PRO 1TB(レビュー)」はMLC型なので、HD Tune Proを使用して100GB以上の大容量な連続書き込みを行っても書き込み速度が下がることはなく、いずれも理想的な書き込み速度を維持することが可能です。
SATA SSDの「PNY CS1311 960GB」はSLCキャッシュによる書き込み速度の底上げを行っている典型的なTLC型SSDとなっており、書き込み開始直後は500MB/sの書き込み速度をマークしているものの、全容量960GBに対して1.5%程度の13~15GBを書き込んだ後は300~350MB/sまで書き込み速度が低下します。
しかしながら2018年から2019年初頭にかけて主流な64層3D NANDや、2019年以降に採用製品の増えつつある90層オーバーの最新3D NANDでは、SLCキャッシュを介さない書き込み速度が改善されています。
64層3D NANDを採用しているTLC型SATA SSDの「Samsung SSD 860 EVO(レビュー)」「WD Blue 3D NAND SATA SSD(レビュー)」「SanDisk SSD Ultra 3D(レビュー)」「Crucial MX500(レビュー)」などで、かつ容量が1TB以上の大容量モデルでは書き込み速度の低下は解消されています。(SATA3.0規格の速度上限が先にくるので)
またTLC型SSDの書き込み速度の低下はNVMe SSDでも発生することがあります。「Samsung 970 EVO 1TB(レビュー)」もTLC型NANDの一部を高速なSLCキャッシュとして用いて書き込み時にそこを優先的に使用する高速化技術「Intelligent TurboWrite」が使用されているので、SLCキャッシュ容量を超過する連続した大容量な書き込みが発生すると書き込み速度が低下します。
3bit MLC型第5世代V-NAND、所謂、TLC型90層以上の3D NANDをメモリチップに採用する「Samsung SSD 970 EVO Plus 1TB」はどのような挙動を見せるのか確認してみたところ、製品仕様でも紹介されているように書き込み開始直後は3300MB/s程度の書き込みスピードを維持していますが、書き込み総量が42GB程度に達すると可変容量な最大SLCキャッシュを超過するため書き込み速度は1700MB/s前後まで減少しました。
SLCキャッシュを超過すると書き込み速度が低下するとはいえ、低下後ですら1700MB/sという十分な速さを実現しており、SATA3.0規格の理想的な書き込み速度を3倍以上も上回る高速アクセスを実現しています。競合他社の製品ではSLCキャッシュ容量は10GB前後しかないので、3~4倍近く大容量なSLCキャッシュがある「Samsung SSD 970 EVO Plus 1TB」のほうが大容量データの書き込みにおける実用的な快適さは上回ると思います。
Samsung SSD 970 EVO PlusのSLCキャッシュ機能「Intelligent TurboWrite」については、容量モデル別にSLCキャッシュ容量の仕様が公表されています。容量下位モデルの250GBでは最大キャッシュ容量13GBを超過すると書き込み速度が400MBps程度まで低下し、理想的なSATA SSDよりも低速になってしまいます。大容量書き込み時の書き込み速度を重視するのであれば容量500GB以上のモデルを選択するのがおすすめです。
「Samsung SSD 970 EVO Plus」 Intelligent TurboWrite の仕様 | |||||
容量 | 250GB | 500GB | 1TB | 2TB | |
キャッシュ サイズ |
標準 | 4GB | 6GB | - | |
可変領域 | 9GB | 18GB | 36GB | ||
最大 | 13GB | 22GB | 42GB | ||
連続書込 | キャッシュ内 | 2300MB/s | 3200MB/s | 3300MB/s | |
キャッシュ外 | 400MB/s | 900MB/s | 1700MB/s |
Samsung SSD 970 EVO Plus 1TBの温度とサーマルスロットリングについて
NVMe M.2 SSDでは重要になる項目として「Samsung SSD 970 EVO Plus 1TB」の温度とサーマルスロットリングについてチェックしていきます。アクセススピードが数GB/sに及ぶ非常に高速なNVMe接続に対応したM.2 SSDでは、そのコンパクトさゆえに放熱性能には表面積的な限界があり、連続したアクセスが発生するとメモリチップやメモリコントローラーが高温になって速度制限がかかるサーマルスロットリングが発生する可能性があることが知られています。
「Samsung SSD 970 EVO Plus 1TB」について、連続した高速アクセス発生時の温度やサーマルスロットリング発生の有無をソフトウェアモニタリングとサーモグラフィーカメラを使用して検証します。
Samsung SSD 970 EVO Plus 1TBのSSD温度の測定やサーマルスロットリング発生の有無の確認については、ヒートシンクがないPCIE-M.2アダプタ拡張ボードにSSDを装着して検証を行います、
測定時の検証負荷としては上で行ったベンチマーク測定同様にCrystalDiskMark6.0.0(QD32, 8GiB)を使用して間を置かず複数回ベンチマークをループさせ、その間のSSD温度や読み出し・書き込み速度のモニタリング値はHWinfoを使用してログを取得します。
Samsung SSD 970 EVO Plus 1TBの検証結果を確認する前に、NVMe M.2 SSDとしてはおそらく2019年現在、最速のNVMe M.2 SSDとして君臨し、認知度が高く普及している「Samsung 970 PRO 1TB」を比較参考のサンプルとして上記の負荷テストを実行した結果を確認しておきます。
Samsung SSD 970 PRO 1TBのSSD温度とアクセススピードの推移は下のようになっています。Samsung SSD 970 PRO 1TBに関してはSamsung 960 PRO同様にソフトウェアモニタリングが可能な温度はメモリコントローラーとメモリチップの2種類の温度になっているようです。ベンチマークを複数回繰り返してもサーマルスロットリングによる大幅な速度低下は発生していませんが、2周目以降に連続書き込み速度の計測で若干速度低下が確認できます。1周目ですでにメモリコントローラーの温度は100度に達し、メモリチップも70度を超えておりかなり高温です。
負荷テスト終盤におけるSamsung SSD 970 PRO 1TBのサーモグラフィーは下のようになっています。サーモグラフィーでもソフトウェアモニタリング同様に、「Samsung SSD 970 PRO 1TB」の右端にあるメモリコントローラー温度は100度を上回り、左半分に実装されたメモリチップは70度半ばになっています。
さて本題のSamsung SSD 970 EVO Plus 1TBの温度やサーマルスロットリングの有無についてチェックしていきます。
まずソフトウェアモニタリングによるSamsung SSD 970 EVO Plus 1TBのSSD温度とアクセススピードの推移は下のようになっています。Samsung SSD 970 EVO Plus 1TBに関してはSamsung 970 PRO同様にソフトウェアモニタリングが可能な温度はメモリコントローラーとメモリチップの2種類の温度になっているようです。ベンチマークを複数回繰り返してもサーマルスロットリングによる大幅な速度低下は確認できませんが、1周目ですでにメモリコントローラーの温度は100度に達し、メモリチップも70度を超えて、かなり高温です。
負荷テスト終盤におけるSamsung SSD 970 EVO Plus 1TBのサーモグラフィーは下のようになっています。サーモグラフィーでもソフトウェアモニタリング同様に、「Samsung SSD 970 EVO Plus 1TB」の右端にあるメモリコントローラー温度は100度を超過し、左半分に実装されたメモリチップは80度前後になっています。
Samsung SSD 970 EVO Plusは前世代の970 EVOよりもアクセススピードの高速化が実現されていますが、温度という観点から見ると970 EVOから変わりはないようです。冷えるようになったわけではありませんが、高速化しつつ温度的には同等なので決して悪い結果ではないと思います。
今回の負荷テストでは「Samsung SSD 970 EVO Plus 1TB」でサーマルスロットリングによる大幅な速度低下こそ確認できなかったものの、メモリコントローラーが100度以上、メモリチップも80度とかなり高温になるので、長期運用における温度原因の故障リスクを最小限にするため、可能であれば、M.2 SSDヒートシンクやヒートシンク付きPCIE拡張ボードの利用をおすすめします。
・「AquaComputer kryoM.2 evo/micro」をレビュー
・「SilverStone SST-TP02-M2」をレビュー
SilverStone M.2 SSD専用放熱ヒートシンク/パッドセット SST-TP02-M2
SilverStone
Samsung SSD 970 EVO Plus 1TBのデータコピー・ゲームロード性能比較
続いて「Samsung SSD 970 EVO Plus 1TB」で大容量・多数データのコピーやPCゲームのロード時間など実際の使用について性能比較をしてみました。比較対象として同じくNVMe M.2 SSDの「Samsung SSD 970 PRO 1TB(レビュー)」と「Samsung SSD 970 EVO 1TB(レビュー)」と「WD Black 3D NVMe SSD 1TB(レビュー)」と「Corsair Force MP510 960GB(レビュー)」、およびSATA SSDの「Samsung SSD 860 PRO 1TB(レビュー)」、「Samsung SSD 860 EVO 1TB(レビュー)」等でも同様の測定を行いました。
まずはファイルのコピーに関する実性能比較となります。検証に使用するデータとしては総容量が約80GBで多数のファイルが入ったPCゲームフォルダ(The Witcher 3とRise of the tomb Raiderなど)、および容量50GBの単一動画ファイルの2種類を使用しています。
データのコピーにおいては当然ですが、元データのあるストレージの読み出し性能とコピー先の書き込み性能の両方が重要になります。測定においては書き込み先/読み出し元の対象となるストレージが必要になるため、各ストレージのコピー相手にはM.2-PCIE変換アダプタ「Aquacomputer kryoM.2」に設置したSamsung SSD 970 PRO 1TBを使用しています。
コピーテストにおいて検証ストレージがコピー相手の「Samsung SSD 970 PRO 1TB」と同じくNVMe SSDの場合は、ASUS WS Z390 PROの1段目PCI-Eスロットにグラフィックボード、3段目PCI-Eスロットにコピー相手ストレージの「Samsung SSD 970 PRO 1TB」、5段目PCI-Eスロットに検証ストレージを設置しています。
Z390プラットフォームでは通常、複数のNVMe SSDへ同時にアクセスが発生すると、CPU-チップセット間のDMI 3.0の帯域がボトルネックになってトータルのアクセススピードが4GB/s程度に制限されますが、ASUS WS Z390 PROではPLXスイッチチップを介するものの、コピーテストで使用する2つのNVMe SSDはそれぞれCPU直結PCI-Eレーンに接続されているので、この問題は発生しません。
「Samsung SSD 970 EVO Plus 1TB」など各種検証ストレージとSamsung SSD 970 PRO 1TBとの間で50GBの動画ファイルおよび80GBのゲームフォルダをコピーした時間の比較結果は次のようになりました。
まずは50GBの動画ファイルのコピーについてですが、動画ファイルは単一の大容量ファイルなので実際のコピーではベンチマークのシーケンシャルリード・ライト性能が重要になってきます。
Samsung SSD 970 EVO Plus 1TBは動画ファイルのコピー読み出しにおいて、前世代970 EVOより高速化しており、Samsung 970 PRO 1TBに迫る速度です。数秒の差で横並びの結果とも言えますが、WD Black 3D NVMe SSD 1TBやCorsair Force MP510 960GBなど競合するNVMe M.2 SSDよりも高速です。Samsung SSD 970 EVO Plus 1TBはPCI-E3.0x4帯域のNVMe接続に対応した高速SSDなので、SATA3.0接続のSSDと比較すると4倍近い高速な読み出し速度を実現しており、読み出し速度は2200MB/s程度となっています。
動画ファイルのコピー書き込みについてチェックしてみると「Samsung SSD 970 EVO Plus 1TB」のコピー書き込み時間は25秒程となり、コピー読み出し同様に970 EVOなどその他のTLC型NVMe M.2 SSDを上回って、970 PROに迫る速度です。
今回は検証に使用したコピーデータのサイズが50GBだったので、ほぼ全てのデータがキャッシュ内3300MB/sで転送されたためこのような結果になりましたが、Samsung SSD 970 EVO Plusは前章でも解説したようにTLC型SSDなので、1TBモデルの場合は最大42GB程度のSLCキャッシュを超過した後は書き込み速度が実測1500MB/sまで低下します。とはいえ競合製品を見るとキャッシュ外ではWD Black 3D NVMe SSD 1TBが1400MB/s、Corsair Force MP510 960GBが1000MB/sなので、比較機種中では970 PROを除けば、Samsung SSD 970 EVO Plus 1TBが最速です。
続いてゲームフォルダのコピーについてですが、ゲームフォルダは大小様々なファイルを含むので、実際のコピーではベンチマークの連続性能だけでなく、ランダム性能も重要になってきます。
Samsung SSD 970 EVO Plus 1TBはゲームフォルダのコピー読み出しにおいて、前世代のSamsung SSD 970 EVO 1TBよりも5秒程度の高速化を果たし、Samsung 970 PRO 1TBに迫る性能です。やはり動画ファイルのコピー読み出し同様にSATA3.0 SSDよりも3倍も高速な読み出し速度です。
Samsung SSD 970 EVO Plus 1TBのゲームフォルダのコピー書き込み速度についてみてみると、今回はSamsung SSD 970 EVO Plus 1TBの最大キャッシュ容量を超える計80GBのデータコピーのため、Samsung 970 PROとの差が広がっていますが、それでも前世代970 EVOや競合製品のTLC型NVMe M.2 SSD中では最速です。
続いて実際にPCゲームのロード時間も比較してみました。
PCゲームのロード時間比較に関してはゲームインストールデータへのアクセスが最も大きくなる4K解像度/最高グラフィック設定を対象とするため、統一検証機材として、2019年最新にして最速のGPUである「NVIDIA GeForce RTX 2080 Ti」を搭載したグラフィックボード「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme Core」を使用しています。
ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme Coreは、RTX 2080 TiのAIBパートナーの中でも屈指のOCチューニング力を誇るZOTACによって良質なGPUコアが選別され、リファレンスよりも200MHz以上も高いブーストクロック、さらにGDDR6メモリのメモリクロックまで引き上げるという、RTX 2080 Tiグラフィックボードで最速を狙えるファクトリーOCが施されています。加えて、ZOTACを高品質メーカーとして一躍ブランド力を押し上げたAMP Extremeの代名詞とも言える3スロットを占有する超弩級な大型GPUクーラーが採用され、静音性も非常に優れたモデルです。
・「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme」をレビュー
The Witcher 3ではグラフィック設定を4K解像度/最高グラフィック設定として、ノヴィグラドの広場からトゥサンのコルヴォ・ビアンコブドウ園までのファストトラベル時のロード時間を比較しています。
Rise of the Tomb Raiderでは4K解像度においてグラフィック設定をDirectX12で個別に最高グラフィック設定として、製鋼所の空き地までのファストトラベル時のロード時間を比較しています。
Final Fantasy XV PC版では4K以上の超高解像度向けに無料配布されている「FFXV WINDOWS EDITION 4K Resolution Pack」を使用して4K解像度/最高グラフィック設定で、『スタートメニューのロード画面からレスタルムまで』についてロード時間を比較しています。
以上の条件で「Samsung SSD 970 EVO Plus 1TB」など各ストレージについてゲームのロード時間比較を行った結果は次のようになりました。
ロード時間を測定して比較してみたところThe Witcher 3とRise of the Tomb Raiderではコンマ秒で差がある可能性はあるものの「Samsung SSD 970 EVO Plus 1TB」を含めて各SSDでは大きな差は確認できませんでした。
一方、Final Fantasy XV PC版ではNVMe(PCIE3.0x4)SSDの「Samsung SSD 970 EVO Plus 1TB」とSATA3.0 SSDとの間に若干ではありますが、ロード時間に差が確認できました。今後PCゲームが高解像度・高画質化してテクスチャなどのゲームデータが大きくなっていけば、NVMe SSDがSATA SSDよりもゲームのロード時間で明確に優位に立つかもしれません
Samsung SSD 970 EVO Plus 1TBのレビューまとめ
最後にSamsung製3bit MLC型 第5世代V-NANDメモリチップを採用するNVMe M.2 SSD「Samsung SSD 970 EVO Plus 1TB(型番:MZ-V7S1T0B)」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- NVMe規格として理想的な連続読み出し3500MB/sと連続書き込み3300MB/s(最大)
- 1TBは大容量書き込みで速度低下しても書き込み速度1700MB/sで高速
- ランダム読み出しとランダム書き込みも高速
- TLC型なので高速NVMe M.2 SSDとしては安価な価格帯
- 旧世代960 EVOよりも1.5倍の書き込み耐性(TBW)
- メーカー正規保証期間が5年間
- TLC型なので大容量の連続書き込みではSLCキャッシュ超過後に速度低下が発生する
250GBは400MB/s、500GBは900MB/s、1TBは1700MB/s - 連続して負荷がかかった時のメモコンやメモリチップの温度は高め
「Samsung SSD 970 EVO Plus 1TB」を検証してみたところ、基礎的な各種ベンチマークや実際の性能検証の多くで前世代970 EVOを上回り、NVMe M.2 SSDとして2019年現在最速のSamsung 970 PROとそん色ない性能を発揮し、第5世代V-NANDのポテンシャルを見せつけてくれました。「Samsung SSD 970 EVO Plus 1TB」はTLC型なので大容量データの書き込みでこそ遅れを取るものの、メインストリーム向け高速NVMe M.2 SSDとしては安価で手を伸ばしやすい定番モデルの1つとして非常に高い完成度に仕上がっています。
Samsung SSD 970 EVO Plus 1TBにはTLCタイプのSamsung製 第5世代V-NAND(90層以上の3D NAND)メモリが採用されているので、多くのTLC型SSDと同様の特徴が大容量書き込み時にでており、今回検証した1TBモデルでは容量可変で最大42GB程度のSLCキャッシュを超過する連続した大容量な書き込みアクセスでは理想値3300MB/sから1700MB/sまで書き込み速度が低下します。とはいえSATA3.0規格の理想的な書き込み速度の3倍なので十分高速です。単純にキャッシュ外の書き込み速度を見ても競合他社よりも高速であり、かつキャッシュ容量が最大42GBと競合製品よりも大きいので、実用上の快適性ではSamsung SSD 970 EVO Plusの方が上回る場面が多いのではないかと思います。
ただし容量下位モデルの250GBではキャッシュ外の書き込み速度が400MB/sになっており、理想的なSATA SSDを下回るので上位の容量モデルに比べて見劣りします。NVMe SSDである以上、SATA SSDよりは高速な動作を期待したいところなので、キャッシュ内速度のスペックにも差があることを踏まえて、最低でも500GBモデルを選択するのが管理人的にはおすすめです。
隙のなさそうなSamsung SSD 970 EVO Plusですが、唯一、高速化の代償として負荷時の温度はやはり高温です。今回の検証において連続して高負荷がかかった場合にはメモリコントローラーが100度、メモリチップが80度に達するケースも確認できたので、M.2 SSDヒートシンク等を使用して放熱の強化は図りたいところです。
前世代から順当にブラッシュアップを果たし、速くて丈夫で安いと3拍子揃ったSamsung SSD 970 EVO Plusは、250/500GBモデルをシステムストレージにするもよし、1TBモデルをメインストレージにするもよし、と容量バリエーションにも富んだ自作erの強い味方なので、2019年最新メインストリーム向けNVMe M.2 SSDとしてはおすすめ製品の1つです。
以上、「Samsung SSD 970 EVO Plus 1TB」のレビューでした。
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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