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7月7日に発売が決定したAMDの次世代CPU「第3世代Ryzen」シリーズのスペックや性能から、”次世代を担う(New Performance Leader)”と謳われる同CPUの魅力を徹底解説します。
第3世代RyzenのラインナップやZen2アーキテクチャの特長・改良点など概要を紹介してから、6コア12スレッドの「Ryzen 5 3600」と「Ryzen 5 3600X」、8コア16スレッドの「Ryzen 7 3700X」の「Ryzen 7 3800X」、12コア24スレッドの「Ryzen 9 3900X」、16コア32スレッドの「Ryzen 9 3950X」など各モデルの仕様や性能について詳しくチェックしていきます。
目次
0.第3世代Ryzenのレビュー記事
1.はじめに - 2019年6月現在のCPU事情
・第2世代Ryzenの特長をまとめると
2.第3世代Ryzenのラインナップと販売ページ
3.第3世代Ryzen対応チップセットとPCIE4.0について
4.Zen2アーキテクチャの特長・改良点
・CPUダイとIOダイを組み合わせる新設計でボトルネックを解消
・性能指標 IPCが15%増加、シングルスレッド性能は21%向上
・ハイフレームレートPCゲーミングでIntel製CPUと競合する性能に
・AVX256対応でx265エンコードも高速に
・Windows10 May 2019(1903)によるZen CPUへの最適化
・メモコン改良でメモリOC耐性UP、スイートスポットは3600MHz/CL16
5.6コア12スレッド「Ryzen 5 3600X / 3600」のスペックと性能
・実売1.8万円のCore i5 9400Fの存在が若干ネックになるかも?
6.8コア16スレッド「Ryzen 7 3800X / 3700X」のスペックと性能
7.12コア24スレッド「Ryzen 9 3900X」のスペックと性能
・PCゲームプレイ&x264 Mediumの高画質配信に対応
8.16コア32スレッド「Ryzen 9 3950X」のスペックと性能
9.Ryzen APU「Ryzen 5 3400G / Ryzen 3 3200G」のスペックと性能
第3世代Ryzenのレビュー記事
当サイトでも第3世代RyzenのCPU本体や対応マザーボードについて詳細レビューを公開しています。前世代や競合のCPUと性能比較も行っているのでぜひ参考にしてください。・「AMD Ryzen 5 3600」をレビュー
・「AMD Ryzen 5 3500X」をレビュー。9400Fと価格で真っ向勝負!
・「AMD Ryzen 7 3700X」をレビュー
・「AMD Ryzen 9 3900X」をレビュー。9900Kや9920Xと徹底比較
・「AMD Ryzen 9 3950X」をレビュー。スリッパJrの革命的性能を徹底検証
・第3世代Ryzen対応X570チップセット搭載AM4マザーボードのレビュー記事一覧
はじめに - 2019年6月現在のCPU事情
第3世代Ryzenについて語る前に、第3世代Ryzenの凄さや特徴がわかるように2019年現在のCPU事情についてザックリと解説していきます。第2世代Ryzenの特長をまとめると
以上のように第2世代Ryzenの特長をまとめると下のようになります。・マルチスレッド性能(クリエイティブタスクにおける性能)のコストパフォーマンスに優れる
・60FPSターゲットのPCゲーミングではIntel製CPUと同等の性能
・144FPS~240FPSのハイフレームレートなPCゲーミングではIntel製CPUに劣る
第3世代Ryzenのラインナップ
第3世代Ryzenには16コア32スレッドの「Ryzen 9 3950X」を最上位モデルとして、12コア24スレッドの「Ryzen 9 3900X」、8コア16スレッドの「Ryzen 7 3800X」と「Ryzen 7 3700X」、6コア12スレッドの「Ryzen 5 3600X」と「Ryzen 5 3600」、Radeon Vega Graphicsを内蔵するRyzen APUとして4コア8スレッドの「Ryzen 5 3400G」と4コア4スレッドの「Ryzen 3 3200G」、以上の9モデルがラインナップされています。第3世代Ryzen ラインナップ&スペック一覧 | ||||||
CPU | コア/ スレッド |
GPU | Base Clock / Boost |
トータル キャッシュ |
TDP | 価格 |
Ryzen 9 3950X | 16 / 32 |
- | 3.5 / 4.7 GHz | 72MB | 105W | 749ドル |
Ryzen 9 3900X | 12 / 24 | - | 3.8 / 4.6 GHz | 70MB | 105W | 499ドル |
Ryzen 7 3800X | 8 / 16 | - | 3.9 / 4.5 GHz | 36MB |
105W | 399ドル |
Ryzen 7 3700X | 8 / 16 | - | 3.6 / 4.4 GHz | 36MB | 65W | 329ドル |
Ryzen 5 3600X | 6 / 12 | - | 3.8 / 4.4 GHz | 35MB | 95W | 249ドル |
Ryzen 5 3600 | 6 / 12 | - | 3.6 / 4.2 GHz | 35MB | 65W | 199ドル |
Ryzen 5 3500 | 6 / 6 |
- | 3.6 / 4.1 GHz | 16MB | 65W | 129ドル |
Ryzen 5 3400G | 4 / 8 |
Vega 11 |
3.7 / 4.2 GHz | 6MB | 65W | 149ドル |
Ryzen 3 3200G | 4 / 4 |
Vega 8 |
3.6 / 4.0 GHz | 6MB | 65W | 99ドル |
第3世代Ryzenが発売されると、コアスレッド数別に並べたCPUのラインナップと価格は下のようになります。第3世代Ryzenの発売前で第2世代Ryzenが処分特価に近い状態のため、8コア8スレッド以下は若干値上がり傾向になりますが、依然としてIntel製CPU比でコアスレッド数に対するコストパフォーマンスはAMD製CPUの方が上です。
第3世代Ryzen発売後 コアスレッド別CPUラインナップと価格 | ||||
メインストリーム/ エンスージアスト |
Intel | AMD | ||
2コア4スレッド | Pentium Gold 5400G Pentium Gold 5600G |
8000円~ |
Athlon 240GE Athlon 220GE |
6000円~ |
4コア4スレッド | Core i3 9100F Core i3 9350KF |
12000円~ |
Ryzen 3 3200G | 13000円 |
4コア8スレッド | - | Ryzen 5 3400G | 20000円 | |
6コア6スレッド | Core i5 9400F Core i5 9600K(F) |
18000円~ | Ryzen 5 3500 | 16000円 |
6コア12スレッド | Core i7 8700 | 37000円~ | Ryzen 5 3600 Ryzen 5 3600X |
26000円 32000円 |
8コア8スレッド | Core i7 9700F Core i7 9700K(F) |
43000円 46000円 |
- | - |
8コア16スレッド | Core i9 9900K(F) |
58000円~ | Ryzen 7 3700X Ryzen 7 3800X |
43000円 51000円 |
10コア20スレッド | Core i9 10900X |
8.6万円 |
- | - |
12コア24スレッド | Core i9 9920X |
9.9万円 |
Ryzen 9 3900X |
6.5万円 |
14コア28スレッド | Core i9 9940X |
11万円 |
- | - |
16コア32スレッド | Core i9 9960X |
Ryzen 9 3950X |
9.6万円 | |
18コア36スレッド | Core i9 9980XE |
14万円 | - | - |
24コア48スレッド | - | - | Ryzen TR 3960X | 18万円~ |
28コア56スレッド | Xeon W-3175X |
38万円 | - | - |
32コア64スレッド | - | - | Ryzen TR 3970X | 25万円~ |
・X570チップセット搭載AM4マザーボード 販売ページ:
<Amazon><PCショップアーク><パソコン工房>
<TSUKUMO><ドスパラ><PCワンズ><ソフマップ>
こちらの記事ではAMD第3世代Ryzen CPUを搭載するゲーミングBTO PCについて各社製品のスペックや価格を比較してオススメな機種を紹介しています。
・第3世代Ryzen搭載のオススメなBTO PCを解説
第3世代Ryzen対応チップセットとPCIE4.0について
第3世代Ryzen CPUについては同時に発売されるX570チップセット搭載マザーボードがネイティブサポートするほか、前世代のX470チップセットもしくはB450チップセットを搭載したマザーボードもBIOSアップデートによって対応します。第1世代Ryzenと同時に発売されたX370チップセットやB350チップセットを搭載したマザーボードについては一部がベータ版扱いで対応BIOSが配布されるとのことです。第3世代RyzenとX570チップセット搭載マザーボードを組み合わせると、現行のPCIE3.0よりも1レーン当たりの帯域幅が2倍になるPCIE4.0によってPCIE拡張スロットやNVMe SSDに対応したM.2スロットが利用できます。下方互換もあるので従来のPCIE3.0接続のグラフィックボードやNVMe SSDも問題なく使用できます。
PCIE4.0に対応するグラフィックボードは第3世代Ryzenと同時に発売される「Radeon RX 5700」シリーズのみであり、NVMe SSDについては今のところ発売が未定です。
性能面でもGPGPU的な用途でない限りグラフィックボードにおいてPCIE帯域がボトルネックになることはありません(PCゲームではPCIE3.0のx16とx8ですら性能差は数%)。性能的にPCIE4.0が魅力になるのはシーケンシャルアクセスが40%以上高速になるNVMe SSDくらいだと思われます。
PCIE4.0対応製品が普及してくると、レーン数半分でPCIE3.0と同等の帯域幅になるのでレーンを細分化することによって拡張性が高まるというメリットもあるので、PCIE4.0については今後に期待したい新機能です。
第2世代RyzenをX470もしくはB450マザーボードで運用しているユーザーが、X570マザーボードに買い替えるメリットについては、12コアや16コアのメニーコアCPUに対応すべく従来モデルよりも増強されたVRM電源回路&VRM電源クーラーが挙げられます。
第3世代RyzenのTDP自体は第2世代Ryzen最上位のRyzen 7 2700Xと同じく105Wに設定されていますが、冷却性能に応じた自動OC機能による動作クロックアップ(詳しくはこちらの記事で)にも対応しているので、第3世代Ryzenで高パフォーマンスを求めるならVRM電源周りが強化されたX570マザーボードに買い替えるのも十分にありだと思います。
・主要4社B450マザーボードを徹底比較!第3世代Ryzenにイチオシはどれか?
・第3世代Ryzen対応X570チップセット搭載AM4マザーボードのレビュー記事一覧
・X470チップセット搭載AM4マザーボードのレビュー記事一覧
Zen2アーキテクチャの特長・改良点
CPUダイとIOダイを組み合わせる設計でボトルネックを解消
第1世代RyzenのZenアーキテクチャ、その改良版となる第2世代RyzenのZen+アーキテクチャでは、中央にCCXと呼ばれる4コアのCPUが2つ入っており、それを取り囲むようにし、DDR4メモリコントローラーやPCIEコントローラーなど周辺I/O回路が実装されるという形で1つのCPUダイが構成されていました。CPUダイ1つだけで構成されるRyzen CPUについては上のダイ構造でも大きな問題はなかったのですが、インターコネクタ「Infinity Fabric」(CCX内部における各種コンポーネントの接続にも使用されている)によって複数のCPUダイを接続し、単一のCPUとする「EPYC」や「Ryzen Threadripper」ではCPUダイ毎に各種I/Oが実装されている構造が冗長になる(別のCPUダイを跨いでメモリアクセスを行うと遅延が大きくなりボトルネックとなる)という問題がありました。
インターコネクタ「Infinity Fabric」によって複数のCPUダイを接続し、スケーラブルなメニーコアCPUとして扱うというコンセプト自体は、歩留まりの観点からも非常に優れていたので、この冗長性によるCPU性能のボトルネックを解消するため、第3世代RyzenのZen2アーキテクチャではCPUコアのみで構成される「CCD」と、各種I/Oが集約された「cIOD」という2種類のダイを組み合わせる構造に変わりました。
なおCCDに含まれるCCX自体が4コアから8コアに増えるという予想もありましたが、Zen2ではCCXは4コアのまま2基を内包するという従来の構成を踏襲しています。
第3世代Ryzenの上位モデルRyzen 9シリーズの16コア32スレッド「Ryzen 9 3950X」と12コア24スレッド「Ryzen 9 3900X」は、Ryzen Threadripper同様に複数のCPUダイを組み合わせてメニーコアCPUが構成されていますが、2つのCCDを1つのcIODで繋ぎ、その先にメモリ等が接続されているので、Threadripperで問題だった『CPUダイを跨ぐメモリアクセス』というボトルネックが解消されています。
性能指標 IPCが15%増加、シングルスレッド性能は21%向上
第3世代Ryzenは前世代と比較して、コアクロック当たりの性能指標になるIPC(Instruction-per-Clock)が15%向上しています。7nmプロセス採用や設計の改良によるCPUコアクロックの上昇も含めると、第3世代RyzenのZen2アーキテクチャではシングルスレッド性能が第2世代Ryzen比で合計21%程度向上しているようです。
ハイフレームレートPCゲーミングでIntel製CPUと競合する性能に
上で紹介したIPCの改善・動作周波数の上昇によるシングルスレッド性能の向上や、メモリ周波数の上昇とL3キャッシュの倍増によるレイテンシの低下などによって、Ryzen CPUでは従来苦手とされてきた144FPS~240FPSのハイフレームレートなPCゲーミングにおいてIntel製CPUと同等のパフォーマンスが発揮できるようになっています。第2世代Ryzenのプレススライドを振り返ってみると、AMD自身もこの弱点を認識していたようで、フルHD解像度におけるゲーム性能は144FPS以下、概ね60FPSターゲットでIntel製CPUと比較されていました。
しかしながら一転して第3世代Ryzenでは各種メジャータイトルについて144FPS~240FPSのハイフレームレートなPCゲーミングにおいて、Ryzen 5 3600X対Core i5 9600K、およびRyzen 9 3900X対Core i9 9900Kで性能を比較した公式ベンチマークが発表されており、この分野における第3世代Ryzenの優れたパフォーマンスへの自信が伺えます。
AVX256対応でx265エンコードも高速に
Zen/Zen+は命令セット「AVX 2(AVX 256)」を本来の256bit幅ではなく128bit幅*2で実行していましたが、第3世代RyzenのZen2アーキテクチャではAVX 2を256bit幅で単一に実行できるように改良されています。AVX 2は高圧縮率な次世代規格x265(HEVC)によるエンコードに使用されているため、第2世代Ryzenは特殊な対応方法がボトルネックとなりx265エンコードを苦手としていましたが、第3世代Ryzenではそれも解消されておりマルチスレッド性能に対して、AVX 2をサポートするIntel Core CPUと同等のパフォーマンスが期待できます。
Windows10 May 2019(1903)によるZen CPUへの最適化
第3世代Ryzenだけでなく第1世代Ryzenや第2世代Ryzenも含めた、CCXで構成されるZenアーキテクチャ採用CPU共通の話題になりますが、2019年春リリースのWindows10メジャーアップデート1903では、「CCX構造(4コアCPUの2個1構造)を意識したスレッド割り当て」、「CPUコアクロック上昇の高速化」という2つの改良が組み込まれています。Windows10自体のRyzenシリーズへの最適化によって、実際のベンチマークでも、ハイフレームレートなPCゲーミング(Rocket League)において15%、PCMark10のアプリケーション起動テストで6%のパフォーマンス向上が確認できているとのことです。
メモコン改良でメモリOC耐性UP、スイートスポットは3600MHz/CL16
第3世代RyzenのZen2アーキテクチャでは、詳細については語られていませんがDDR4メモリコントローラー自体も改良が加えられて、第2世代Ryzenよりも高いメモリ周波数に対応できるようになっており、定格のメモリ周波数も3200MHzへと引き上げられています。メモリ周波数に同期し、CPUの総合的なパフォーマンスに影響するインターコネクタInfinity Fabric自体も低レイテンシ化、27%の高省電力化など改良が加えられています。第2世代RyzenのZen+アーキテクチャまではInfinity Fabricの動作周波数はメモリ周波数と完全に一致しており、これがメモリ周波数をOCする上でボトルネックになっていましたが、Zen2アーキテクチャではこの制限が限定的ですが緩和され、メモリ周波数に対して1:1モードと1:2モードの2種類がサポートされます。
モード切り替えはメモリ周波数に応じて強制される形になっており、メモリ周波数3800MHz以上では1:2モードでInfinity Fabricの動作周波数はメモリ周波数の半分になります。
第2世代Ryzenまでは3200MHz/CL14がベストパフォーマンスでしたが、AMDによると第3世代Ryzenではメモリ周波数3600MHz、メモリタイミングCL16が性能と価格のスイートスポットとのことです。「G.Skill Flare X F4-3200C14D-16GFX」や「G.Skill Trident Z RGB F4-3200C14D-16GTZRX」など第1/2世代Ryzen向けの3200MHz/CL14のOCメモリなら3600MHz/CL16の手動OCも難しくないはずなので、Ryzenユーザーでこれらを使用している人はメモリのアップグレードは必要なさそうです。
・第3世代Ryzen自作PCにオススメなDDR4メモリの容量や速度を解説
6コア12スレッド「Ryzen 5 3600X / 3600」のスペックと性能
「Ryzen 5 3600X」と「Ryzen 5 3600」は前世代のRyzen 5シリーズに引き続き6コア12スレッドのCPUとなっており、販売価格は200~250ドル程度で第3世代Ryzenにおいて最も一般ユーザー向けなモデルです。上位モデルに当たる「Ryzen 5 3600X」はベースクロック3.8GHz/単コアブーストクロック4.4GHzでTDPは95W、下位モデルの「Ryzen 5 3600」はベースクロック3.6GHz/単コアブーストクロック4.2HzでTDPは65Wです。北米希望小売価格が250ドルのAMD Ryzen 5 3600XとIntel Core i5 9600Kを比較すると、Core i5 9600Kがマルチスレッディングに非対応の6コア6スレッドに対して、Ryzen 5 3600Xはマルチスレッディングに対応する6コア12スレッドなので、クリエイティブタスクにおいて30%程度高いパフォーマンスを発揮できます。
第2世代Ryzenまでは苦手としていた144FPS~240FPSのハイフレームレートなPCゲーミングにおける性能についても、Ryzen 5 3600XはCore i5 9600Kと同等のパフォーマンスが発揮できるようです。
実売1.8万円のCore i5 9400Fの存在が若干ネックになるかも?
「Ryzen 5 3600X」と「Ryzen 5 3600」は希望小売価格から単純換算して国内販売価格は2.9万円と2.3万円になると思われます。相対的なパフォーマンスで比較すると「Ryzen 5 3600X/3600」が優位なのは間違いないのですが、競合製品のCore i5 9400Fが1.8~2.0万円と単純に安価なので、同じ価格帯で提供できないところはネックかもしれません。「Ryzen 5 3600X/3600」はメインストリーム向けCPUとして一番人気になるポテンシャルのあるモデルなのですが、価格面でもう一声欲しかったとも感じます。下位モデルのRyzen 5 3600についてはCore i5 9400Fと同じ149ドルくらいまで早期に値下がりしてくれると嬉しいのですが。
・Core i5 9400FとRyzen 5 2600Xはどちらが買いか徹底比較!
8コア16スレッド「Ryzen 7 3800X / 3700X」のスペックと性能
「Ryzen 7 3800X」と「Ryzen 7 3700X」は前世代のRyzen 7シリーズに引き続き8コア16スレッドのCPUとなっており、販売価格は330~400ドル程度でメインストリーム向けハイエンドCPUとしてお手頃なモデルです。上位モデルに当たる「Ryzen 7 3800X」はベースクロック3.9GHz/単コアブーストクロック4.5GHzでTDPは105W、下位モデルの「Ryzen 7 3700X」はベースクロック3.6GHz/単コアブーストクロック4.4HzでTDPは65Wです。「Ryzen 7 3700X」は末尾X付きシリーズに変わっていますが、TDP65WなのでRyzen 7 2700の後継モデル的立ち位置です。北米希望小売価格が400ドルのAMD Ryzen 7 3800XとIntel Core i7 9700Kを比較すると、Core i7 9700Kがマルチスレッディングに非対応の8コア8スレッドに対して、Ryzen 7 3800Xはマルチスレッディングに対応する8コア16スレッドなので、クリエイティブタスクにおいて30%程度高いパフォーマンスを発揮できます。
Ryzen 7 3800XのPCゲーミング性能については、競合モデルのCore i7 9700KはCore i9 9900Kに並んでハイフレームレートPCゲーミングにおけるCPUボトルネックの緩和が期待できるCPUなので、苦手とするタイトルでは差が開きますが、差が開くタイトルの1つであるOverwatchでも現状で最速リフレッシュレート240Hzを上回る266FPSをマークしており、CSGOやPUBGのような競技性の高いPCゲームでCore i7 9700Kと同等のパフォーマンスを発揮しています。
Ryzen 7 2700Xでは8コア16スレッドCPUらしいパフォーマンスを発揮できなかったPCゲームのプレイ&録画において、「Ryzen 7 3800X」と「Ryzen 7 3700X」が実用に足る性能に達しているのかも気になるところです。
12コア24スレッド「Ryzen 9 3900X」のスペックと性能
「Ryzen 9 3900X」はメインストリーム向けデスクトップCPUとしては世界初の12コア24スレッドCPUです。Zen2アーキテクチャの特長で紹介した2 x CCD&1 x cIODの組み合わせで構成されており、8コアのうち6コアが有効化された2つのCCDによって12コア24スレッドCPUが構築されています。「Ryzen 9 3900X」はベースクロック3.8GHz/単コアブーストクロック4.6GHzで、従来ならエンスージアスト向けであった12コア24スレッドのメニーコアCPUながらTDPは105Wと省電力性能にも優れます。同じく12コア24スレッドのCore i9 9920Xが1199ドル、Ryzen Threadripper 2920Xが629ドルに対して、「Ryzen 9 3900X」はさらに安い499ドルという希望小売価格で提供されます。
「Ryzen 9 3900X」は価格面ではCore i9 9900Kの競合製品ですが、同じコアスレッド数のCore i9 9920Xと比較しても、TDP105Wで省電力性に優れ、なおかつCore i9 9920Xよりもシングルスレッド性能とマルチスレッド性能の両面で上回ることがアピールされています。
北米希望小売価格が499ドルのAMD Ryzen 9 3900XとIntel Core i9 9900Kを比較すると、Core i9 9900Kが8コア16スレッドに対して、Ryzen 9 3900Xは12コア24スレッドなので、クリエイティブタスクにおいて30%程度高いパフォーマンスを発揮できます。
Ryzen 9 3900Xは144FPS~240FPSのハイフレームレートなPCゲーミングに対応でき、競合製品のCore i9 9900KはハイフレームレートPCゲーミングにおけるCPUボトルネックの緩和が最も期待できるCPUなので、Ryzen 9 3900Xが苦手とするタイトルでは若干差が開きますが、差が開くタイトルの1つであるOverwatchでも現状で最速リフレッシュレート240Hzを上回る282FPSをマークしており、競技ゲーマーにも十分に訴求できる性能です。
PCゲームプレイ&高画質配信に対応できる
「Ryzen 9 3900X」の大きな特徴の1つは、Core i9 9900Kに続いてメインストリーム向けCPUではPCゲームをプレイしながらx264 Mediumプリセットで高画質配信を行える2つ目のCPUであることです。AMD公式の比較ではx264 Slowプリセットが使用されているので性能比較としては微妙ですが(一般的にx264ならMediumプリセットで十分高画質なので)、この比較結果からRyzen 9 3900XはCore i9 9900Kと同等のインゲームフレームレートを維持しつつ、x264 Mediumプリセットで59FPSのフレーム落ちがほぼ発生しない良好なリアルタイムエンコードが可能だということがわかります。
16コア32スレッド「Ryzen 9 3950X」のスペックと性能
「Ryzen 9 3950X」はメインストリーム向けデスクトップCPUとしては世界初の16コア32スレッドCPUです。Zen2アーキテクチャの特長で紹介した2 x CCD&1 x cIODの組み合わせで構成されており、8コア全てが有効化された2つのCCDによって16コア32スレッドCPUが構築されています。「Ryzen 9 3950X」はベースクロック3.5GHz/単コアブーストクロック4.7GHzで、従来ならエンスージアスト向けであった16コア32スレッドのメニーコアCPUながらTDPは105Wと省電力性能にも優れます。同じく16コア32スレッドのCore i9 9960Xが1699ドル、Ryzen Threadripper 2920Xが899ドルに対して、「Ryzen 9 3950X」はさらに安い749ドルという希望小売価格で提供されます。他の第3世代Ryzenが7月7日発売に対して、「Ryzen 9 3950X」は2か月ほど遅れ、9月の発売が予定されています。下位モデルよりも高い単コアブーストクロックからも伺い知れますが、高クロックで安定動作し、低電圧特性に優れる良質なCPUコアを選別して作られるので、発売まで時間がかかるようです。
Ryzen APU「Ryzen 5 3400G / Ryzen 3 3200G」のスペックと性能
第3世代RyzenではRadeon RX Vega Graphicsを統合グラフィックスとして内蔵するRyzen APUとして、「Ryzen 5 3400G」と「Ryzen 3 3200G」の2モデルがラインナップされています。「Ryzen 5 3400G」は4コア8スレッド、Radeon RX Vega 11 Graphics搭載で基本スペックはRyzen 5 2400Gと同じですが、CPUコアクロックが最大ブースト3.9GHzから4.2GHzに、GPUコアクロックが1250MHzから1400MHzに上昇しています。
「Ryzen 3 3200G」は4コア4スレッド、Radeon RX Vega 8 Graphics搭載で基本スペックはRyzen 3 2200Gと同じですが、CPUコアクロックが最大ブースト3.7GHzから4.0GHzに、GPUコアクロックが1100MHzから1250MHzに上昇しています。
上位モデル「Ryzen 5 3400G」は前世代では非対応だった自動OC機能の上限を解除する機能「PBO(Precision Boost Overdrive)」にも対応しており、それに合わせて、anandtechによるとCPUダイとヒートスプレッダ間のTIMがシリコングリスから標準で金属製TIM(High-Quality-Metal TIM)に変わっているようです。
スペック的にはマイナーアップデートですが、金属製TIM(High-Quality-Metal TIM)採用で扱いやすくなった「Ryzen 5 3400G」はASRock Deskmini A300やMini-ITXサイズAM4マザーボードなどスモールフォームファクタで使用したいCPUとして魅力が増したと思います。
・「ASRock DeskMini A300」をレビュー
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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