Kingston A2000 1TB


スポンサードリンク




Kingstonから新たにリリースされたSATA SSDより3倍以上高速な連続読み出し2200MB/sながら1TBモデルが99ドルでSATA SSDと同価格なハイコストパフォーマンスNVMe M.2 SSD「Kingston A2000 1TB(型番:SA2000M8/1000G)」のサンプル機をメーカーよりご提供いただけたのでレビューしていきます。
DSC01268_DxO


製品公式ページ:https://www.kingston.com/jp/ssd/a2000-nvme-pcie-ssd#product-features




Kingston A2000 1TB レビュー目次


1.Kingston A2000について
2.Kingston A2000 1TBの外観
3.Kingston A2000 1TBの検証機材と基本仕様
4.Kingston A2000 1TBのベンチマーク比較
5.Kingston A2000 1TBの連続書き込みについて
6.Kingston A2000 1TBの温度とサーマルスロットリングについて
7.Kingston A2000 1TBのデータコピー・ゲームロード比較
8.Kingston A2000 1TBのレビューまとめ



Kingston A2000について

「Kingston A2000」シリーズはメモリチップに3D NANDメモリチップ(メーカー非公表ですが、サンプル機ではMicron製TLC型96層3D NAND)、メモリコントローラーにSilicon Motion SM2263ENGが採用された、NVMe(PCI-E3.0x4)接続でM2280フォームファクタのM.2 SSDです。「Kingston A2000」シリーズの容量には250GB/500GB/1TBの3種類がラインナップされています。
「Kingston A2000」シリーズはNVMe M.2 SSDながら1TBモデルの北米希望小売価格が99ドルと、SATA SSD並みの安価な価格で提供されているところが最大の特長です。

「Kingston A2000」シリーズのアクセススピードは容量によって若干異なりますが、最大でシーケンシャル読出2200MB/s、シーケンシャル書込2000MB/s、ランダム読出250,000 IOPS、ランダム書込220,000 IOPSを実現しています。

「Kingston A2000」シリーズのMTBF(平均故障時間)は200万時間、書込耐性は250GBが150TBW、500GBが350TBW、1TBが600TBWとなっており、メーカーによる製品保証期間は5年間です。

Kingston A2000 スペック一覧
容量 250GB
(SA2000M8/250G)
500GB
(SA2000M8/5000G)
1TB
(SA2000M8/1000G)
コントローラー
Silicon Motion SM2263ENG
メモリー 3D NANDメモリチップ
(メーカー非公表ですが、サンプル機ではMicron製TLC型96層3D NAND)
連続読出 2000MB/s 2200MB/s
連続書込 1100MB/s 2000MB/s
4Kランダム読出 150,000 IOPS 180,000 IOPS 250,000 IOPS
4Kランダム書込 180,000 IOPS
200,000 IOPS
220,000 IOPS
消費電力 3mW(アイドル)、1.7W(読み出し最大)、4.5W(書き込み最大)
動作温度範囲 0°C~70°C
MTBF 200万時間
耐久性評価 150TBW 350TBW 600TBW
保証期間 メーカー5年


Kingston A2000 1TBの外観

まず最初にKingston A2000 1TBの外観や付属品について簡単にチェックしておきます。
Kingston A2000シリーズは製品情報が描かれた厚紙にプラスチック製スペーサーが埋め込まれた簡素なパッケージで梱包されています。
DSC01270_DxO
厚紙の封を開いてプラスチック製スペーサーを取り出すと、SSD本体に加えて、ストレージクローンアプリケーションのシリアルキーが記載されたシートも入っていました。
Kingston A2000 1TB review_09515_DxO

Kingston A2000シリーズのSSD本体デザインについては普通にM.2 2280サイズ、M-Key型のM.2 SSDです。PCB基板は青色になっています。
DSC01274_DxO
Kingston A2000シリーズの表面にはM.2端子を右端として、右から順番にメモリコントローラーとDDR4キャッシュメモリ、4枚のメモリチップが実装されています。
DSC01274s_DxO
Kingston A2000シリーズは最大容量の1TBモデルでも素子の実装は表面のみの片面実装です。
DSC01275_DxO

Kingston A2000シリーズのメモリコントローラーはSilicon Motion製4チャンネルコントローラー「SM2263ENG」です。発熱の大きいメモリコントローラーのチップ表面にはニッケルメッキの金属プレートを装着して放熱を補助・促進しています。
メモリチップについてはメーカー仕様では3D NANDとのみ公表されていましたが、サンプル機では2019年最新となるMicron製TLC型96層3D NANDが4枚実装されていました。
DSC01276_DxO



Kingston A2000 1TBの検証機材と基本仕様

「Kingston A2000 1TB」の各種検証を行う環境としては、Intel Core i9 9900K&ASUS WS Z390 PROなどで構成されているベンチ機を使用しました。構成の詳細は下記テーブルの通りです。
テストベンチ機の構成
CPU Intel Core i9 9900K(レビュー
Core/Cache:5.1/4.7GHz, 1.300V
殻割り&クマメタル化(レビュー
CPUクーラー Fractal Design Celsius S36(レビュー
Noctua NF-A12x25 PWM (レビュー
メインメモリ G.Skill Trident Z Black
F4-4400C19D-16GTZKK
DDR4 8GB*2=16GB (レビュー
4000MHz, CL17-17-17-37-CR2
マザーボード
ASUS WS Z390 PRO
レビュー
ビデオカード 【基礎性能検証用】
MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC
レビュー

【PCゲームロード時間検証用】
ZOTAC RTX 2080Ti AMP Extreme Core
レビュー
システムストレージ
Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB
MZ-N6E1T0B/IT (レビュー
OS Windows10 Home 64bit
電源ユニット Corsair HX1200i (レビュー
ベンチ板 STREACOM BC1 (レビュー

Strage Test Bench_1
Strage Test Bench_2

ベンチ機のシステムストレージにはSamsung製3bit-MLC型64層V-NANDのメモリチップを採用するメインストリーム向け最新SATA接続M.2 SSD「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB」を使用しています。「Samsung SSD 860 EVO M.2」は2.5インチSATA SSDと同等のパフォーマンスをケーブルレスで発揮できる手軽さが魅力です。Samsung SSD 860 EVOシリーズの容量1TB以上のモデルは大容量データの連続書き込みにおける書き込み速度の低下というTLC型SSDの欠点も解消されているので、大容量ファイルをまとめて入れても余裕のあるメインストレージとしてお勧めのSSDです。
「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB」をレビュー
Samsung 860 EVO M.2 1TB


「Kingston A2000 1TB」のボリュームをWindows10上で作成したところ、空きスペースは931GBでした。
Kingston A2000 1TB_CDI



Kingston A2000 1TBのベンチマーク比較

「Kingston A2000 1TB」の性能を測るためストレージに関する基本的なベンチマークソフトを使用して測定を行います。比較対象として同じくNVMe M.2 SSDの「Samsung SSD 970 PRO 1TB(レビュー)」、「Samsung SSD 970 EVO Plus 1TB(レビュー)」、「Kingston KC2000 1TB(レビュー)」、「WD Black SN750 NVMe SSD 1TB(レビュー)」、およびSATA SSDの「WD Blue 3D NAND SATA SSD 1TB(レビュー)」、「Samsung SSD 860 EVO 1TB(レビュー)」等でも同様の測定を行いました。

まずはCrystalDiskMark6.0.2(8GiB)について、「Kingston A2000 1TB」やその他の比較対象ストレージのベンチマーク結果は次のようになっています。
「Kingston A2000 1TB」のベンチマークススコアは連続読み出し3200MB/s、連続書き込み2200MB/sとなりました。「Kingston A2000 1TB」は4Kランダム読み出しにおいてかなり高速な数値を出しているところが注目ポイントです。
Kingston A2000 1TB_CDM
Samsung 970 PRO 1TB_CDMSamsung 970 EVO Plus 1TB_CDMKingston KC2000 1TB_CDM
WD Black SN750 NVMe SSD 1TB_CDMWD Blue 3D NAND SATA SSD 1TB_CDMSamsung 860 EVO 1TB_CDM


ATTO Disk Benchmark 4.00.0f2(512B-64MB, 8GB, QD1/QD4)について、「Kingston A2000 1TB」やその他の比較対象ストレージのベンチマーク結果は次のようになっています。
ATTO Disk Benchmarkはブロックサイズ別のシーケンシャル性能を主にチェックするベンチマークなので4KB~1MBを抜粋してリード/ライト性能をグラフにして比較しました。
Kingston A2000 1TB_ATTO_QD1_read
Kingston A2000 1TB_ATTO_QD1_write
Kingston A2000 1TB_ATTO_QD4_read
Kingston A2000 1TB_ATTO_QD4_write
Kingston A2000 1TB_ATTO_QD1Kingston A2000 1TB_ATTO_QD4


AS SSD Benchmark v2.0.6821.41776(5GB)について、「Kingston A2000 1TB」やその他の比較対象ストレージのベンチマーク結果は次のようになっています。
Kingston A2000 1TB_AS
Samsung 970 PRO 1TB_ASSamsung 970 EVO 1TB_AS
Kingston KC2000 1TB_ASWD Black SN750 NVMe SSD 1TB_AS
WD Blue 3D NAND SATA SSD 1TB_ASSamsung 860 EVO 1TB_AS


PCMark8 ストレージテストについて、「Kingston A2000 1TB」やその他の比較対象ストレージのベンチマーク結果は次のようになっています。
Kingston A2000 1TB_PCM8
Kingston A2000 1TB_PCM8-score



Kingston A2000 1TBの連続書き込みについて

「Kingston A2000 1TB」の高速キャッシュ領域の動作についてチェックします。
TLC型NANDやQLC型NANDと呼ばれる3bit以上のマルチレベルセルで動作するNANDが採用されているSSDでは、マルチレベルセル化によって遅くなる書き込み速度の底上げのため、NANDメモリの一部を高速キャッシュ領域とする機能が実装されています。2019年現在、TLCやQLCの記憶領域を動的にSLC化する製品が多いので、この高速キャッシュ領域のことをSLCキャッシュと呼ぶことにします。(可能性としてTLC型SSDやQLC型SSDがMLCで高速キャッシュを構築することもありうる)
このようなSLCキャッシュを有するSSDにおいては、連続した大容量の書き込みによって書き込み総量がSLCキャッシュを超過した場合、書き込み速度がステップ状にガクッと下がります。
例えば600MB/sが理論的な上限速度となるSATA SSDの場合は、動画ファイルなど数十GB以上の単一ファイルの連続書き込みが発生すると、SLCキャッシュ超過後はCrystalDiskMarkなどベンチマークソフトで表示される500MB/s程度の連続書き込み速度を維持できず、100~200MB/sまで書き込み速度が低下する可能性があります。

2.5インチSATA SSDの「Samsung 850 PRO 2TB(レビュー)」やNVMe M.2 SSDの「Samsung 970 PRO 1TB(レビュー)」はMLC型なので、HD Tune Proを使用して100GB以上の大容量な連続書き込みを行っても書き込み速度が下がることはなく、いずれも理想的な書き込み速度を維持することが可能です。
Samsung 970 PRO 1TB_HDT
SATA SSDの「PNY CS1311 960GB」はSLCキャッシュ領域による書き込み速度の底上げを行っている典型的なTLC型SSDとなっており、書き込み開始直後は500MB/sの書き込み速度をマークしているものの、全容量960GBに対して1.5%程度の13~15GBを書き込んだ後は300~350MB/sまで書き込み速度が低下します。
PNY SSD 960GB_HDTP
しかしながら2018年から2019年初頭にかけて主流な64層3D NANDや、2019年以降に採用製品の増えつつある90層オーバーの最新3D NANDでは、SLCキャッシュ超過後の書き込み速度が改善されています。
64層3D NANDを採用しているTLC型SATA SSDの「Samsung SSD 860 EVO(レビュー)」「WD Blue 3D NAND SATA SSD(レビュー)」「SanDisk SSD Ultra 3D(レビュー)」「Crucial MX500(レビュー)」などで、かつ容量が1TB以上の大容量モデルでは書き込み速度の低下は解消されています。(SATA3.0規格の速度上限が先にくるので)
SanDisk 3D SSD 2TB_HDTP
またTLC型SSDの書き込み速度の低下はNVMe SSDでも発生することがあります。「Samsung 970 EVO Plus 1TB(レビュー)」もTLC型NANDの一部を高速なSLCキャッシュとして用いて書き込み時にそこを優先的に使用する高速化技術「Intelligent TurboWrite」が使用されているので、SLCキャッシュ容量を超過する連続した大容量な書き込みが発生すると書き込み速度が低下します。
Samsung 970 EVO Plus 1TB_HDT


3D NAND(サンプルの実機を確認したところMicron製96層3D NAND)をメモリチップに採用する「Kingston A2000 1TB」はどのような挙動を見せるのか確認してみたところ、まず単純に全体容量の空きの状態では約300GBまではSLCキャッシュとして高速な書き込みが可能でした。一例として「Kingston A2000 1TB」が空き容量100%の状態で100GBの書き込みを実行すると2000MB/sの安定した書き込み速度を発揮します。
Kingston A2000 1TB_HDT
しかしながら「Kingston A2000 1TB」のSLCキャッシュの挙動は既存の製品に比べてかなり複雑で、使用済みデータ容量が300GBを超過すると、SLCキャッシュの容量が可変になりました。
いろいろと検証してみた中で「Kingston A2000 1TB」のSLCキャッシュの挙動について、おそらくと注釈が付きますが、定性的に確認できた、感じた傾向は箇条書きで次のようになっています。
  • SLCキャッシュ内書き込み速度は2000MB/s、SLCキャッシュ外では500MB/s
  • 最初の0~300GBまでの空き容量部分はSLCキャッシュ化される(使用済み容量300GB以下の時)
  • 常に確保できる動的SLCキャッシュは10GB容量
  • 300GB以上が使用済みの時、システムON時の空き容量から半動的SLCキャッシュ(数十GB)が生成?
  • SLCキャッシュの容量は使用済み領域のデータの種類にも影響される?
    (数十GBのファイルが一定数以上あると半動的SLCキャッシュが生成できないなど)
  • 書き込み速度がキャッシュ内1000MB/s以下、キャッシュ外100~300MB/sに低下するケースもある

下の3つは400GB程度を使用済みにしてSLCキャッシュ容量をHD Tune PROで確認してみた様子ですが、いずれも確認できるSLCキャッシュ容量が異なります。加えて管理人を若干混乱させるのが、読み出し速度において2000MB/s、1500MB/s、1300MB/sといくつかの値を示します。
Kingston A2000 1TB_HDT_400GB-Fill (1)
Kingston A2000 1TB_HDT_400GB-Fill (2)
Kingston A2000 1TB_HDT_400GB-Fill (3)
またシステム電源がONになった状態で前回のアクセスから十分に時間を経過させ(SLCキャッシュ内のデータがTLC領域に移動させられる時間を考慮)、HD Tune PROで検証してみた様子ですが、データの使用状況によっては下のように書き込み速度が500MB/sを下回り、200~300MB/s程度になってしまう状況もありました。
Kingston A2000 1TB_HDT_low-speed

加えて「Kingston A2000 1TB」のSLCキャッシュ容量を確認するためのHD Tune PROで行ったテストでは、読み出し速度にも影響(変化)が見られたので、一応確認のため「Kingston A2000 1TB」に80GBのゲームフォルダを含む140GB程度のテストデータを5つ複製し、各テストデータから80GBのゲームフォルダを読み出して、Samsung 970 PRO 1TBへ書き込むという形の追加検証も行いました。
Kingston A2000 1TB_use-data-read
データが書き込まれている領域によって読み出し速度が異なるのでは?という疑いも持っていたので、この検証を行いましたが、それについては杞憂でした。700GB程度を使用済みにして5つのテストデータから読み出しを行っても、保存領域による差は生まれませんでした。
ただしデータ全てが初期の300GB容量SLCキャッシュに収まる140GBだけが使用済みの状況では僅かながら早くコピーが完了しました。上のHD Tune PROの結果が示すように、初期の300GBなど半動的SLCキャッシュとTLCの記憶領域では読み出し速度に若干差が生まれるようです。
Kingston A2000 1TB_use-data-read-test


「Kingston A2000 1TB」のSLCキャッシュの挙動についてはかなり複雑なため正確な解析が困難で、正直なところ定量的に評価できません。最初の300GBは2000MB/s程度の書き込み速度を実現していますが、実際に使用していって使用済み容量が300GBを超過すると、SLCキャッシュ容量は変動し、また使用済みデータの内容でもキャッシュ容量や書き込み速度の挙動が変わってしまうようなので、「Kingston A2000 1TB」に対してデータ書き込みで実用的に安定したパフォーマンスを期待するのは困難だと思います。
上のベンチマークや下のコピーテストと同様の書き込み性能が実際の使用において発揮できるかというと、たぶん無理なので、動画編集の素材置き場など大容量なデータの読み書きが頻繁に発生する用途には向きません。読み出し単独については基本的に安定しているので、OSインストール用の安価なシステムストレージとして使用するのが無難です。



Kingston A2000 1TBの温度とサーマルスロットリングについて

NVMe M.2 SSDでは重要になる項目として「Kingston A2000 1TB」の温度とサーマルスロットリングについてチェックしていきます。
アクセススピードが数GB/sに及ぶ非常に高速なNVMe接続に対応したM.2 SSDでは、そのコンパクトさゆえに放熱性能には表面積的な限界があり、連続したアクセスが発生するとメモリチップやメモリコントローラーが高温になって速度制限がかかるサーマルスロットリングが発生する可能性があることが知られています。
「Kingston A2000 1TB」について、連続した高速アクセス発生時の温度やサーマルスロットリング発生の有無をソフトウェアモニタリングとサーモグラフィーカメラを使用して検証します。

Kingston A2000 1TBのSSD温度の測定やサーマルスロットリング発生の有無の確認については、ヒートシンクがないPCIE-M.2アダプタ拡張ボードにSSDを装着して検証を行います、
DSC01311
測定時の検証負荷としては上で行ったベンチマーク測定同様にCrystalDiskMark6.0.0(QD32, 8GiB)を使用して間を置かず複数回ベンチマークをループさせ、その間のSSD温度や読み出し・書き込み速度のモニタリング値はHWiNFOを使用してログを取得します。
Samsung 970 PRO 1TB_temp test

Kingston A2000 1TBの検証結果を確認する前に比較参考のサンプルとして、2019年現在最速のNVMe M.2 SSDとして君臨している「Samsung SSD 970 PRO 1TB」において、上記の負荷テストを実行した結果を確認しておきます。
Samsung SSD 970 PRO 1TBのSSD温度とアクセススピードの推移は下のようになっています。Samsung SSD 970 PRO 1TBではメモリコントローラーとメモリチップの2種類の温度についてソフトウェアモニタリングが可能になっているようです。ベンチマークを複数回繰り返してもサーマルスロットリングによる大幅な速度低下は発生していませんが、2周目以降に連続書き込み速度の計測で若干速度低下が確認できます。1周目ですでにメモリコントローラーの温度は100度に達し、メモリチップも70度を超えておりかなり高温です。
Samsung SSD 970 PRO 1TB_temp
負荷テスト終盤におけるSamsung SSD 970 PRO 1TBのサーモグラフィーは下のようになっています。サーモグラフィーでもソフトウェアモニタリング同様に、「Samsung SSD 970 PRO 1TB」の右端にあるメモリコントローラー温度は100度を上回り、左半分に実装されたメモリチップは70度半ばになっています。
Samsung SSD 970 PRO 1TB_FLIR

さて本題のKingston A2000 1TBの温度やサーマルスロットリングの有無についてチェックしていきます。
まずソフトウェアモニタリングによるKingston A2000 1TBのSSD温度とアクセススピードの推移は下のようになっています。Kingston A2000 1TBでソフトウェアモニタリングが可能な温度はメモリチップ付近の温度になっているようです。ベンチマークを複数回繰り返してもサーマルスロットリングによる大幅な速度低下は確認できません。
Kingston A2000 1TB_temp
負荷テスト終盤におけるKingston A2000 1TBのサーモグラフィーは下のようになっています。「Kingston A2000 1TB」の右端にあるメモリコントローラー温度は最大で80度前後、メモリチップやDRAMキャッシュは60~70度となっています。Kingston A2000 1TBは読み出し/書き込みが2GB/s前後に収まるので、3GB/sオーバーの超高速なNVMe M.2 SSDと比較すると発熱は控えめで、運用しやすい温度に収まっています。
Kingston A2000 1TB_FLIR
ちなみに高速な上位モデルKingston KC2000 1TBのサーモグラフィーは下のようになっています。「Kingston KC2000 1TB」の右端にあるメモリコントローラー温度は最大で90度半ば、メモリチップやDRAMキャッシュは70~80度です。
Kingston A2000 1TB_FLIR (1)

今回の負荷テストでは「Kingston A2000 1TB」でサーマルスロットリングによる大幅な速度低下は確認できず、既存の連続アクセススピード3GB/s超なNVMe M.2 SSDと比較すると発熱は控えめでしたが、長期運用における温度原因の故障リスクを最小限にするのであれば、M.2 SSDヒートシンクやヒートシンク付きPCIE拡張ボードの利用をおすすめします。
M.2 SSDヒートシンクとしてはPCIE拡張ボードタイプなら「AquaComputer kryoM.2 無印/evo」、マザーボードM.2スロットで使用するコンパクトタイプなら「「SilverStone SST-TP02-M2」などがオススメです。
M.2 SSDヒートシンクのレビュー記事一覧へ
M.2 SSDヒートシンク


SilverStone M.2 SSD専用放熱ヒートシンク/パッドセット SST-TP02-M2
SilverStone
Amazon.co.jpで詳細情報を見る



Kingston A2000 1TBのデータコピー・ゲームロード性能比較

続いて「Kingston A2000 1TB」で大容量・多数データのコピーやPCゲームのロード時間など実際の使用について性能比較をしてみました。
比較対象として同じくNVMe M.2 SSDの「Samsung SSD 970 PRO 1TB(レビュー)」、「Samsung SSD 970 EVO Plus 1TB(レビュー)」、「Kingston KC2000 1TB(レビュー)」、「WD Black SN750 NVMe SSD 1TB(レビュー)」、「Corsair Force MP510 960GB(レビュー)、およびSATA SSDの「WD Blue 3D NAND SATA SSD 1TB(レビュー)」、「Samsung SSD 860 EVO 1TB(レビュー)」等でも同様の測定を行いました。

まずはファイルのコピーに関する実性能比較となります。検証に使用するデータとしては総容量が約80GBで多数のファイルが入ったPCゲームフォルダ(The Witcher 3とRise of the tomb Raiderなど)、および容量50GBの単一動画ファイルの2種類を使用しています。
Copy File
データのコピーにおいては当然ですが、元データのあるストレージの読み出し性能とコピー先の書き込み性能の両方が重要になります。測定においては書き込み先/読み出し元の対象となるストレージが必要になるため、各ストレージのコピー相手にはM.2-PCIE変換アダプタ「Aquacomputer kryoM.2」に設置したSamsung SSD 970 PRO 1TBを使用しています。
Copy_movieCopy_game

コピーテストにおいて検証ストレージがコピー相手の「Samsung SSD 970 PRO 1TB」と同じくNVMe SSDの場合は、ASUS WS Z390 PROの1段目PCI-Eスロットにグラフィックボード、3段目PCI-Eスロットにコピー相手ストレージの「Samsung SSD 970 PRO 1TB」、5段目PCI-Eスロットに検証ストレージを設置しています。
Copy_NVMe-NVMe_2019
Z390プラットフォームでは通常、複数のNVMe SSDへ同時にアクセスが発生すると、CPU-チップセット間のDMI 3.0の帯域がボトルネックになってトータルのアクセススピードが4GB/s程度に制限されますが、ASUS WS Z390 PROではPLXスイッチチップを介するものの、コピーテストで使用する2つのNVMe SSDはそれぞれCPU直結PCI-Eレーンに接続されているので、この問題は発生しません。
Copy_NVMe-NVMe


「Kingston A2000 1TB」など各種検証ストレージとSamsung SSD 970 PRO 1TBとの間で50GBの動画ファイルおよび80GBのゲームフォルダをコピーした時間の比較結果は次のようになりました。
まずは50GBの動画ファイルのコピーについてですが、動画ファイルは単一の大容量ファイルなので実際のコピーではベンチマークのシーケンシャルリード・ライト性能が重要になってきます。
Kingston A2000 1TBは動画ファイルのコピー読み出しにおいて、同社製KC2000など既存の連続読み出し速度が3000MB/sを超える製品には及びませんが、同価格帯のSATA SSDと比較すると3倍以上高速な読み出し速度を実現しており、読み出し速度は1500MB/s程度となっています。
Kingston A2000 1TB_copy_movie_read
Kingston A2000 1TBは動画ファイルのコピー書き込みにおいて、SLCキャッシュ内に収まるデータサイズなので、CrystalDiskMark等で3000MB/s前後の高速な書き込み速度をマークするWD Black SN750 NVMe SSD 1TBやCorsair Force MP510 960GBを上回る速さでコピーを完了しています。
Kingston A2000 1TB_copy_movie_write

続いてゲームフォルダのコピーについてですが、ゲームフォルダは大小様々なファイルを含むので、実際のコピーではベンチマークの連続性能だけでなく、ランダム性能も重要になってきます。
「Kingston A2000 1TB」はゲームフォルダのコピー読み出しにおいて、動画ファイルのコピー読み出しと同様にSamsung SSD 970 EVO Plus 1TB、Kingston KC2000 1TB、WD Black SN750 NVMe SSD 1TBなど、高速な製品にやや遅れる結果となりましたが、それでも同価格帯のSATA SSDと比較して2.5倍程度高速です。
Kingston A2000 1TB_copy_game_read
Kingston A2000 1TBはゲームフォルダのコピー書き込みにおいて、SLCキャッシュ内でタスクを完了できる場合、Samsung SSD 970 EVO Plus 1TBやWD Black SN750 NVMe SSD 1TBを上回るパフォーマンスを発揮します。ただし使用済みデータ容量が300GBを超過した時点で、10GBもしくは変動する数十GBのSLCキャッシュしか使用できず、書き込み速度は500MB/sまで低下します。「Kingston A2000 1TB」の書き込み性能について実用的にはSATA SSD程度になることも想定しておくのが無難です。
Kingston A2000 1TB_copy_game_write



続いて実際にPCゲームのロード時間も比較してみました。
PCゲームのロード時間比較に関してはゲームインストールデータへのアクセスが最も大きくなる4K解像度/最高グラフィック設定を対象とするため、統一検証機材として、2019年最新にして最速のGPUである「NVIDIA GeForce RTX 2080 Ti」を搭載したグラフィックボード「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme Core」を使用しています。
ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme Coreは、RTX 2080 TiのAIBパートナーの中でも屈指のOCチューニング力を誇るZOTACによって良質なGPUコアが選別され、リファレンスよりも200MHz以上も高いブーストクロック、さらにGDDR6メモリのメモリクロックまで引き上げるという、RTX 2080 Tiグラフィックボードで最速を狙えるファクトリーOCが施されています。加えて、ZOTACを高品質メーカーとして一躍ブランド力を押し上げたAMP Extremeシリーズの代名詞とも言える3スロットを占有する超弩級な大型GPUクーラーが採用され、静音性も非常に優れたモデルです。
「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme」をレビュー
ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme


The Witcher 3ではグラフィック設定をフル解像度/最高グラフィック設定として、『スタートメニューのロード画面からノヴィグラドの広場まで』のロード時間を比較しています。


Rise of the Tomb RaiderではフルHD解像度においてグラフィック設定をDirectX12で個別に最高グラフィック設定として、『スタートメニューのロード画面からシベリアの荒野まで』のロード時間を比較しています。


Final Fantasy XV PC版では4K以上の超高解像度向けに無料配布されている「FFXV WINDOWS EDITION 4K Resolution Pack」を使用して4K解像度/最高グラフィック設定で、『スタートメニューのロード画面からレスタルムまで』についてロード時間を比較しています。


以上の条件で「Kingston A2000 1TB」など各ストレージについてゲームのロード時間比較を行った結果は次のようになりました。
ゲームロード時間を測定して比較してみたところ、SSD対HDDで2~3倍の時間差が生まれるのに対して、SSDの中では、QLCよりもMLC、SATAよりもNVMe、NANDよりもOptaneのようにして高速になる傾向は見受けられますが、それでもせいぜい1,2割程度と、実用的にはランダム要因な誤差に吸収されるくらいの時間差です。
今後PCゲームがさらに高解像度・高画質化してテクスチャなどのゲームデータが大きくなっていけば、NVMe SSDがSATA SSDよりもゲームのロード時間で明確に優位に立つかもしれません。
Kingston A2000 1TB_game



Kingston A2000 1TBのレビューまとめ

最後に「Kingston A2000 1TB(型番:SA2000M8/1000G)」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。

良いところ
  • SATA SSDよりも高速な連続読み出し2200MB/sと連続書き込み2000MB/s(最大)
  • コピー読み出しの速度はSATA SSDより2.5~3倍も高速
  • 連続アクセススピードが2GB/s程度なので、既存のNVMe M.2 SSDよりも低発熱
  • 1TBモデルが99ドルと、SATA SSD並みの価格帯で非常に安価
  • メーカー正規保証期間が5年間
悪いところor注意点
  • 大容量の連続書き込みではSLCキャッシュ超過後に速度低下が発生する
  • SLCキャッシュの挙動が複雑で、実用的には安定した書き込み性能は期待できない

「Kingston A2000 1TB」を検証してみたところ、仕様値の通りではありますが、既存のNVMe M.2 SSDが3GB/s超の非常に高速な連続アクセススピードをマークするのに対して、同製品は2GB/s前後に収まっています。連続アクセススピードの低さはコピーテストで実用的にも影響が若干見られますが、PCMark8 ストレージテストやゲームロード時間比較では大きな差は出なかったので、「Kingston A2000 1TB」はSATA SSDよりも2.5~3倍高速なファイルコピー速度を実現した安価なNVMe M.2 SSDとして運用できると思います。

製品仕様としてはメモリチップについては3D NANDとしか表記されていないので今後変わる可能性もありますが、今回のサンプル機ではMicron製96層3D NANDが採用されており、またTLC型SSDのようでSLCキャッシュ機能の存在も確認できました。
ただし使用済みデータ容量が300GBを超過する実用的な状況におけるSLCキャッシュ容量や超過後の速度の挙動がかなり複雑であり、安定した書き込み性能を期待するのは困難で、「Kingston A2000 1TB」は実用的にはSATA SSD相当かそれ以下の書き込み性能になる状況も想定するのが無難です。
また一般的なSSDレビューの検証では使用済みデータ容量が300GB未満に収まるため、書き込み性能については同製品のレビュー結果は基本的に当てにならないとも思います。

SLCキャッシュ構造の影響で実用的な書き込み性能についてはかなりクセのある製品なので、クリエイティブタスクの素材置き場など大容量データの読み書きが頻発する用途には向きませんが、1TBモデルが99ドルとSATA SSD並みに安価であり、読み出し性能については基本的に安定していて連続性能ではSATA SSDの2~4倍、ランダム性能では既存のNVMe SSD相当という高いパフォーマンスを発揮できるので、システムストレージ用の安価なSSDとしては検討してみる価値はあると思います。

以上、「Kingston A2000 1TB」のレビューでした。
Kingston A2000 1TB




関連記事

おすすめSSDまとめ。QLC/TLC/MLCやNVMe/SATA3.0など最新SSD事情を解説
SSDレビュー記事の一覧へSATA SSD><NVMe SSD><M.2 SSD
SSDレビュー記事の一覧へ

【SATA SSD vs NVMe SSD vs HDD】 ゲームロード時間を比較
SSD vs HDD ゲームロード時間比較

「Kingston KC2000 NVMe M.2 SSD 1TB」をレビュー
Kingston KC2000 1TB

「WD Black SN750 NVMe SSD 1TB ヒートシンク搭載版」をレビュー
WD Black SN750 NVMe SSD 1TB HS

「Samsung SSD 970 EVO Plus 1TB」をレビュー
Samsung SSD 970 EVO Plus 1TB

「Intel Optane SSD 905P M.2 380GB」をレビュー
Intel Optane SSD 905P M.2 380GB

「Samsung SSD 970 PRO 1TB」をレビュー
Samsung SSD 970 PRO 1TB

QLC型NVMe M.2 SSD「Crucial P1 1TB」をレビュー
Crucial P1 1TB

「Intel SSD 760p 512GB」をレビュー
Intel SSD 760p 512GB




(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)



スポンサードリンク