スポンサードリンク
マウスコンピューターのゲーミングブランドG-Tuneの高級モデル「G-Tune MASTERPIECE」シリーズからIntel第9世代Core-X最上位の18コア36スレッドモデル「Intel Core i9 9980XE」と最速ウルトラハイエンドGPU「NVIDIA GeForce RTX 2080 Ti」のマルチGPU NVLink SLIを搭載した2019年後半において最強最速のゲーミングBTO PC「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」のレビュー用サンプルをメーカーよりお借りできたのでレビューしていきます。
「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」は通常の空冷モデルではなく、3基の120mmファンで冷却を行う360サイズの大型水冷ラジエーターによって、G-Tuneが独自に水冷化したRTX 2080 TiグラフィックボードとCPUを一括で冷却する”ダブル水冷”が採用されたBTO PCです。発熱の大きいRTX 2080 Tiグラフィックボードは3スロット占有の大型空冷クーラー搭載モデルであってもPCケース内で十分な冷却を行うことが難しいのですが、独自に水冷化された同BTO PCではどうなのか、冷却性能を徹底検証していきます。
・G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DLの販売ページへ
MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL レビュー目次
1.MASTERPIECE i1730PA3-SP-DLのスペック
2.MASTERPIECE i1730PA3-SP-DLの梱包・付属品
3.MASTERPIECE i1730PA3-SP-DLの外観
4.MASTERPIECE i1730PA3-SP-DLの内部構造の概要
5.MASTERPIECE i1730PA3-SP-DLの裏配線スペースと電源ユニット
6.MASTERPIECE i1730PA3-SP-DLのマザーボード
7.MASTERPIECE i1730PA3-SP-DLのストレージ設置スペース
8.MASTERPIECE i1730PA3-SP-DLのグラフィックボード
9.MASTERPIECE i1730PA3-SP-DLのダブル水冷について
10.MASTERPIECE i1730PA3-SP-DLのCPU/GPU/ストレージのスペック
11.MASTERPIECE i1730PA3-SP-DLの温度・消費電力・ファンノイズ
12.MASTERPIECE i1730PA3-SP-DLのCPU性能とGPU性能
13.MASTERPIECE i1730PA3-SP-DLのレビューまとめ
【注意】
今回検証するのはレビュー用の貸出機であり一般販売されてユーザーの手元に届く新品ではないので、製品や梱包に若干の傷や痛みがある場合があります。通常は新品で綺麗な状態のものが届くはずなので、サンプル機に傷等があっても無視してください。
MASTERPIECE i1730PA3-SP-DLの概要とスペック
最初に今回レビューする「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」の概要と製品スペックについて簡単に紹介しておきます。今回お借りした「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」のレビュー用サンプル機の構成は次のようになっています。なおマザーボード等の一部パーツは製品公式ページで詳細な記載がないのでサンプル機に採用されているものとは別の部品が使用される可能性もあります。
MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL 詳細スペック | |
OS | Windows10 Home (64bit) DSP版 |
CPU | Intel Core i9-9980XE 18コア36スレッド |
CPUクーラー | Asetek製オリジナル水冷クーラー 360サイズラジエーター採用(CPU・GPU共有) |
マザーボード | MSI X299-S01 (非一般販売モデル、マニュアルなし) |
メモリ | ADATA AO2P24HCST2-BTCS 64GB (16GB*4枚), DDR4-2400 |
グラフィックボード | NVIDIA GeForce RTX 2080 Ti*2 NVLink SLI Asetek製オリジナル水冷クーラー 360サイズラジエーター採用(CPU・GPU共有) |
システムストレージ | Samsung PM981 NVMe M.2 SSD 1TB (型番:MZVLB1T0HALR-00000) |
データストレージ SSD |
(カスタマイズで追加可能) |
データストレージ HDD |
Seagate ST3000DM008 3TB HDD (SATA6Gb/s対応) |
光学ドライブ | DVDスーパーマルチドライブ スロットインスリム型 |
PCケース | G-Tune MASTERPIECE オリジナル 対応最大ファームファクタ:ATX (IN Win 303のカスタムモデル) |
電源ユニット | Enhance ATX-1152GB1 電源容量1200W, 80Plus GOLD認証取得 |
MASTERPIECE i1730PA3-SP-DLの梱包・付属品
まず最初にマウスコンピューターから購入した「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」がユーザーの手元にどんな状態で届くのかをご紹介しようと思います。配送業者からは下画像のような段ボール箱に梱包されて製品が届きました。(注:梱包の外箱については貸出機のため少々傷みがある場合があります)60*60*30cmサイズとかなり大きい段ボール箱で重量も重いです。PC本体は横置きの状態で不織布の袋に入れて硬めのスポンジ製スペーサーで安置されていました。黄色の用紙には重量が大きいので2人で取り出すようにとの注意書きがあります。
付属品としては電源ユニットに増設可能なプラグインケーブルとしてSATA*4ケーブルと4ピンペリフェラル*3&フロッピーケーブルの2つが付属します。
「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」のグラフィックボードにはDVI-D端子がありませんが、DisplayPort to DVI-D変換アダプタが付属します。
MASTERPIECE i1730PA3-SP-DLの外観
「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」のPCケース外観をチェックしていきます。「G-Tune MASTERPIECE」は2016年後半にフルモデルチェンジした際に、強化ガラス製サイドパネルを採用したPCケースのパイオニア的メーカーIn Win社の「In Win 303」をベースにしたオリジナルPCケースに変わりました。そのため今回お借りした「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」は若干の違いはあるものの基本的に「In Win 303」と同じデザインや内部構造になっています。
前置きはこの辺りにして早速、「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」の外観をチェックしていきます。
一般販売されているIn Win 303ではPCケースのフロントパネルは単純なフラットスチールパネルですが、G-Tune MASTERPIECEのフロントパネルはフラットな強化ガラスがほぼ全体を覆い、右端にはアクセントとしてメタリックレッドのヘアライン仕上げアルミニウム製プレートがはめ込まれて、非常に高級感のある面持ちになっています。
1つのPCケースの中で強化ガラス、アルミニウム、スチールの3つの異なる素材を採用したパネルが組み込まれていますが、それぞれが個性を強調し、質感を高めあう優れたデザインに仕上がっています。
右のメタリックレッドなアルミニウム製ライン上には、上から順番にパワースイッチ、USB3.0端子×2、ヘッドホン用3.5mmジャック、マイク用3.5mmジャック、USB2.0端子×2と主要なフロントI/Oが並び、さらに下にはスロットイン型のスリム光学ドライブが設置されています。MASTERPIECE i1730ではデフォルトでDVDスーパーマルチドライブが搭載されています。またフロントガラスパネルの中央には「G-Tune」のブランドロゴが薄っすらと刻印されています。
今回の「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DLではPCケース向かって左のサイドパネルに有料オプションの強化ガラスサイドパネルが採用されています。縁がほとんどない大型ガラスパネルなのでPCケース内を一望でき、金属にはないガラス特有の光沢が高級感を感じさせます。
ガラスパネルは純粋な透明ガラスではなくスモークガラスが採用されています。また前方下側にはG-Tuneのテキストロゴも刻印されています。
強化ガラスサイドパネルは純粋な透明ではなくブラックスモークのガラスなので部屋の明るさや冷却ファンとSLI HBブリッジ等のLEDイルミネーションとの兼ね合いでPCケース内部見え方が若干変わってきます。LEDテープなどを増設すればさらに綺麗なライトアップもできそうです。
強化ガラスサイドパネルは主流なネジ固定ではなく上側のフレームにワンタッチボタン式ハンドルが採用され、またガラスパネルの上下にはスチールシャーシとの緩衝役にプラスチック製フレームが装着することでガラスやスチールの傷を防止するなど強化ガラスパネル搭載PCケース先駆者のIn Winらしい配慮がなされています。
G-Tune MASTERPIECEのオリジナルPCケースとIn Win 303の大きな違いの1つとして正面から見て左側(マザーボード側)のサイドパネルがIn Win 303ではハンドルによるワンタッチ開閉構造の強化ガラスパネルが採用されているのに対し、MASTERPIECEのオリジナルPCケースでは、標準採用の強化ガラスサイドパネルに加えて、マザーボード裏パネルと同じヘックスライン形状のエアスリットが入ったスチールパネルを選択することもできます。
標準搭載の強化ガラスサイドパネルから、スチールパネルに変更すると価格は1500円分下がります。各サイドパネルで価格差はほぼないので、見た目を重視するなら強化ガラスサイドパネル、通気性と静音性を重視するならスチールパネルを選択すればいいと思います。
右サイドパネル(と標準のスチール製右サイドパネル)は上側の左右端にあるネジで固定されています。サイドパネル側にもネジ穴があるのでサイドパネル取り外し時に固定ネジが脱落しません(参考写真)。ヘックスライン形状のエアスリットは片面でも120サイズケースファン3基分の面積が確保されているのでフラットな外見ではありますが、通気性が悪いということはありません。
右サイドパネルのPCケース前方の下部には薄く「G-Tune」のブランドロゴが刻印されています。
「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」のPCケース天面はエアスリットのなし、ソリッドな黒色塗装のスチールパネルです。
「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」のリアI/Oには最新のUSB3.1 Gen2規格に対応したUSB端子としてType-AとType-Cの計2端子が設置されています。そのほかのUSB端子については4基のUSB2.0端子と4基のUSB2.0端子が搭載されています。マウス・キーボードなどの周辺機器を多数繋いでいてもVR HMDに十分対応可能なUSB端子数です。USB3.0/1は無線マウスと電波干渉を起こすことがあるのでUSB2.0が少し離れた場所に配置されている配慮も嬉しいです。加えてゲーマーには嬉しいPS/2端子も搭載されています。
グラフィックボードのビデオ出力については今回のサンプル機ではGeForce RTX 2080 Tiが搭載されていますが、リファレンスモデルと同じくDisplayPort*3、HDMI2.0*1、USB Type-Cの計5系統が設置されています。DVI-D端子は実装されていませんがDisplayPort to DVI-D変換アダプタが付属しています。
PCケースの底面には前方から後方まで120mmファン*3サイズのエアスリットが配置されています。「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」のPCケースは底面吸気が意識された設計なので、スライド式でPCケース左側から着脱可能な防塵ダストフィルターが標準で搭載されています。
PCケース足はプラスチック製で滑り止めのゴム足が装着されていました。高さは10~15mmほどでPCケース下部の吸気スペースが確保されています。
MASTERPIECE i1730PA3-SP-DLの内部構造
続いて「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」のPCケースの内部構造をチェックしていきます。まずはマザーボード側の俯瞰写真は次のようになっています。やはり「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」の最大の特徴、CPUとGPUを水冷化し360サイズラジエーターで一括冷却を行うダブル水冷システムが目を引きます。
「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」のCPUクーラーは、高性能な簡易水冷クーラーのOEM元として自作PC界隈では定番のAsetek製で、その中でも2019年最新世代となる第6世代水冷ヘッドが採用されています。
簡易水冷CPUクーラーのCPUヒートスプレッダと接するベース部分には熱伝導効率に優れた銅製ベースプレートが採用されています。
DDR4メモリスロットはCPUソケットの両脇に計8基ありますが、1枚当たり16GB容量のDDR4メモリ4枚で半数が埋められています。
「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」のサンプル機には「ADATA AO2P24HCST2-BTCS」という定格2400MHzで16GB容量のDDR4メモリが採用されていました。
「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」には、外排気ブロアーファンGPUクーラーを搭載したMSI製GeForce RTX 2080 Tiオリファンモデルにマウスコンピューター G-Tuneが独自の水冷化を施した専用グラフィックボードが採用されています。マルチGPU NVLink SLIに対応しており2枚のGeForce RTX 2080 Tiグラフィックボードが搭載され、2019年後半最強のゲーミング性能を発揮します。
旧モデルではIn Win 303のPCケース同様に長尺かつ大重量のグラフィックボードを支えるためのグラフィックボードホルダーがPCケースに備え付けられていましたが、「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」などの新モデルではグラフィックボードホルダーは廃止されています。メーカーによるとホルダーがなくてもグラフィックボードは安定して固定されているとのことです。
マザーボードの直上には3基の120角ケースファンや最大360サイズの水冷(簡易水冷)ラジエーターが搭載可能なファンマウントスペースが確保されており、「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」ではCPUとGPUを一括で冷却するダブル水冷のために360サイズの大型水冷ラジエーターが搭載されています。
旧モデルでは下の写真のような冷却ファンレイアウトで、底面吸気/側面排気になるようセッティングされていましたが、「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」はケース内に滞留し暖められた空気ではなく、側面から吸気されたばかりのフレッシュな空気でラジエーターを冷やせるようにファンの方向が逆向きに変更されました。
また背面のファンマウントスペースにも排気用にケースファンが1基搭載されています。ラジエーター冷却ファンとケースファンはいずれも「Corsair ML120 Pro (Red Led) CO-9050042-WW」という自作PCパーツ向けに一般販売されていて、1つ3000円ほどの高級パーツが採用されています。「Corsair ML120 Pro」は磁気浮上ベアリングを採用、防振ラバーダンパーを装備、400~2400RPMのレンジでPWM速度調整に対応など高性能・高品質な冷却ファンです。
「Corsair ML120 Pro (Red Led) CO-9050042-WW」にはファンの軸受け部分にLEDイルミネーションが内蔵されているのでPCが起動中、赤色LEDが点灯します。
ラジエーター冷却ファンの固定ネジには短尺のネジが使用されています。ラジエーターと下側フレームを挟む形で固定されているのですが、上側フレームのネジ穴通せる細軸ドライバーを使用しないとネジを外せません。
「Corsair ML120 Pro (Red Led) CO-9050042-WW」自体は高品質なパーツですが、LEDイルミネーション標準搭載であり、また冷却ファン自体も消耗品なので交換が必要になるケースを考えると、上側フレームにネジ頭がくるような長尺ネジで固定して欲しかったところです。
CPUとGPUとラジエーターは独自のクイックリリースフィッティングで連結されています。着脱可能な構造ですがユーザーによる着脱はサポート外となっているので注意してください。
PCケースをチェックする時の小姑窓さっし的な項目、PCIEスロットの固定ネジとシャーシの干渉についてですが、G-Tune MASTERPIECEでは固定ネジ上にシャーシが被っておらずしっかりとクリアランスが確保されています。これならドライバーでネジ止めも簡単です。
MASTERPIECE i1730PA3-SP-DLの裏配線スペースと電源ユニット
「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」の裏配線スペースをチェックしていきます。まずはマザーボード裏側の裏配線スペースの俯瞰写真は次のようになっています。
「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」の場合はLGA2066マザーボードなので関係ありませんが、CPUソケット周辺部分はマザーボードトレイが大きく開口されているので、マザーボードをPCケースに設置したままでバックプレート型マウント構造のCPUクーラーを装着できます。
「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」の採用される1200W 80PLUS GOLD認証電源の正体は「Enhance ATX-1152GB1」という電源ユニットでした。国内では一般に流通していない電源ユニットでEnhanceというメーカーも耳慣れないユーザーが多いかもしれませんが、SilverStoneやCorsairなどが販売している自作PC向け電源ユニットのOEM元なので製品の品質自体は問題ないと思います。
「Enhance ATX-1152GB1」の電源ユニット冷却ファンには140mm角ファンが採用されていました。
「Enhance ATX-1152GB1」はフルプラグインの電源ケーブル構造が採用されています。未使用のプラグイン端子としてはEPS電源用(黒色8PIN)が1つ、PCIE補助電源用(青色8PIN)が4つ、SATA/4ピンペリフェラル用(黒色6PIN)が3つとなっています。
ただし製品に付属するプラグインケーブルはSATA*4ケーブルと4ピンペリフェラル*3&フロッピーケーブルの計3本のみとなっています。PCIE補助電源はすでにGeForce RTX 2080 Ti NVLink SLIで使用されている8PIN端子が4基あるので十分だと思うのですが、EPS電源ケーブルは付属して欲しいところです。
電源ユニットが設置された裏配線スペース上側とストレージやマザーボード裏のある下側は一見パーティションで区切られていますが、電源ユニットのすぐ左にはマザーボードのある表側や裏配線スペース下側につながるケーブルホールが設けられているので、スムーズなケーブルマネジメントが可能です。
裏配線スペースの厚みは30mmで十分なゆとりがあり、ケーブルの取り回しで苦労することはないと思います。
MASTERPIECE i1730PA3-SP-DLのマザーボード
「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」に使用されているマザーボードをチェックしていきます。製品公式ページではX299チップセット採用とだけ書かれていましたが、MASTERPIECE i1730PA3-SP-DLのレビュー用サンプル機にはMSIのOEMマザーボードである「MSI X299-S01」という型番のものが搭載されていました。
全体を見比べるとわかりやすいですが、「MSI X299-S01」はMSI製の安価なX299マザーボード「MSI X299 Raider」をベースにU.2端子やメタルアーマーなど付加価値的な要素をそぎ落とした専用マザーボードとなっています。
「MSI X299-S01」ではCPUへの電力供給を行うVRM電源として9フェーズが採用されています。EPS端子が8PINの1つだけなのでCore i9 9980XEのOCを各自で行う場合は4GHz以下に収めておくのが無難そうです。
BTO PC組み込みマザーボードではVRM電源にヒートシンクが装着されていないものも多いですが、「MSI X299-S01」には比較的大きいヒートシンクが装着されています。
チップセットにはマットブラックな塗装が施されたアルミニウム製ヒートシンクが装着されています。
「MSI X299-S01」のPCIEスロットレイアウトは[N/A、x16、N/A、x16、x16、x1、x16]となっています。
「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」は水冷クーラー標準搭載なのであまり関係がありませんが、最上位スロットが空きスロットになっているので大型のハイエンド空冷CPUクーラーを搭載してもスペースに余裕があります。
マルチGPU構成なので2/3段と5/6段のPCIEスロットは占有されていますが、4段目のx16サイズスロットはPCIE3.0x4、7段目のPCIEスロットはPCIE3.0x8帯域に対応しており、NVMe SSDやビデオキャプチャカードなどの増設が可能です。
NVMe SSDに対応したM.2スロットはPCIEスロット間に2基が設置されています。
下段のM.2スロットは空きスロットになっているので増設可能ですが、NVMe接続のM.2 SSDを増設する場合はSATA_5~8が排他利用、SATA接続のM.2 SSDを増設する場合はSATA_5が排他利用になるので注意が必要です。
上側のM.2スロットにはMSI独自のSSDヒートシンク「M.2 Shield」が設置されており、同ヒートシンクを使用することで、グラフィックボードなど発熱から保護し、M.2 SSDがむき出しの状態よりもサーマルスロットリングの発生を遅くする効果が見込まれます。
ストレージや光学ドライブの増設に使用するSATA端子はマザーボードの右下に平行端子が6基と垂直端子が2基実装されています。今回のサンプル機ではSATA SSD、SATA HDD、光学ドライブで3つ使用されているので、残り5基は空きで増設が可能です。
「MSI X299 S01」は組み込み用の廉価マザーボードですが、MSI独自の高音質オンボードサウンド機能を従来機種よりもさらに強化した「AUDIO BOOST 4」も採用されています。日本ケミコン製のオーディオコンデンサを採用し、オーディオパートはマザーボードから物理的に分離され、左右のオーディオチャンネルがレイヤー分けされることでクリアな音質を実現します。
ファン端子はマザーボード下に3か所、CPUソケット左上に1か所、CPUソケット右上に2か所の計6か所となっています。いずれもPWM対応4PINファン端子で、マザーボードBIOS上からファンコントロールの設定が可能です。SYS_FAN1端子とPUMP_FAN1端子は未使用なので冷却ファンの増設に使用可能です。
マザーボード上のファン端子のうち下部に設置された3つについては、360サイズ水冷ラジエーターに装着された3つの120サイズ冷却ファンと接続されています。
内部USB2.0ヘッダーはマザーボード下側に2つ実装され、うち1つはフロントI/OのUSB端子用で使用されています。CMOSクリア用のハードウェアスイッチは実装されていないので、CMOSクリア用の2PINヘッダー「JBAT1」を短絡してCMOSクリアを行います。CMOSクリアにはグラフィックボードを取り外す必要があるので、BIOSの設定に失敗して正常に動作しなくなった場合は付録を参考にCMOSクリアを試してみてください。
「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」に採用されているマザーボード「MSI X299-S01」は残念ながら自作PCパーツとして一般販売されているモデルではありませんでした。一般販売モデルの「MSI X299 Raider」をベースにしたマザーボードなので上でチェックしたように基本的に必要な機能が揃っており、各種クーラーも十分なサイズなのでマザーボードとしては悪くない製品なのですが、一般販売品ではないので残念ながら
・英語、日本語ともにマザーボードのマニュアルは存在しない
・最新BIOSやドライバ・ソフトウェアを公式ページからダウンロードできない
など各自でメンテナンスや保守を行いたいユーザーや保証終了後の長期的な利用を考えるとデメリットがあります。個人的には板だけ取り換えたくなります。
「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」は50万円を超える超高級BTO PCなので欲を言えば標準で自作PCパーツとして一般販売されているマザーボードを採用して欲しいところですが、せめて標準マザーボードとして「MSI X299-S01」を採用するとしても「MSI X299 GAMING PRO CARBON AC」など自作erにも定評のあるミドルハイクラスのマザーボードをカスタマイズから選択できるようにして欲しいところです。このクラスのBTO PCを購入するユーザーであれば2,3万円追加で積んでも上位マザーボードへカスタマイズしたいという人も少なくないと思います。
MASTERPIECE i1730PA3-SP-DLのストレージ設置スペース
「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」のストレージ設置スペースをチェックしていきます。マザーボード側フロント寄りスペースには2.5インチストレージを設置可能なマウンタが2基設置されています。
今回のサンプル機ではデータストレージ用の2.5インチSATA SSDは搭載されていませんが、カスタマイズ項目で2台目のSSDを選択するとこのポジションにSSDが増設されます。
また裏配線スペースには3.5インチストレージ用スペースとスリム光学ベイ用スペースがあり、「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」では3TBの3.5インチHDDとスリムDVDドライブが設置されています。
NVMe(PCIE3.0x4)接続に対応したM.2スロットがPCIEスロット間に2基設置されています。2基のM.2スロットのうち、上段にはNVMe M.2 SSDの発熱によるサーマルスロットリングの発生を抑制することができるヒートシンクカバーが設置されています。
システムストレージとしてプライマリグラフィックボード直下のM.2スロットに最大連続読出3200MB/sの超高速NVMe M.2 SSD「Samsung PM981 1TB(型番:MZVLB1T0HALR-00000)」が搭載されていました。
G-Tune MASTERPIECEのPCケースはデザイン重視のPCケースになっており、元になったIn Win 303自体がDIY水冷を想定したレイアウトで設計されているため、ストレージの拡張性が高いPCケースではありません。PCゲーム用途であればマザーボード上のM.2スロットと2.5インチ*2&3.5インチ*1のストレージ積載があれば十分ですが、HDDやSSDを大量にPCケース内に積んで使用することを目的としているなら別のPCケースを採用したBTO PCを検討するほうがいいと思います。
MASTERPIECE i1730PA3-SP-DLのグラフィックボード
「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」にはマウスコンピューター G-Tuneが独自の水冷化を施したウルトラハイエンドGPU「GeForce RTX 2080 Ti」が2基搭載されています。マウスコンピューター G-Tuneによる独自の水冷化が施されていますが、ベースになっているのは外排気ブロアーファンGPUクーラーを搭載したMSI製GeForce RTX 2080 Tiオリファンモデル「MSI GeForce RTX 2080 Ti AERO」です。
GTX 1080 Tiが搭載されていた旧モデルではバックプレート非搭載でしたが、「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」のグラフィックボードには金属製バックプレートが搭載されており、基板の反りを防止、背面素子の保護、さらに外見もスマートでカッコ良くなっています。
ビデオ出力端子はGeForce RTX 2080 Tiのリファレンスに準拠しておりDisplayPort*3、HDMI2.0*1、USB Type-Cの5系統です。DVI-D端子は実装されていませんがDisplayPort to DVI-D変換アダプタが付属します。
水冷チューブのグラフィックボード側の根本はストレートのロータリー構造になっており、捩じりが必要になる場合も容易にチューブを取り回すことができます。
「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」にはGeForce RTX 2080 TiのマルチGPU NVLink SLI構成が採用されていますが、NVLink SLIブリッジには「MSI GeForce RTX NVLink GPU BRIDGE」が使用されています。「MSI GeForce RTX NVLink GPU BRIDGE」はLEDイルミネーションも搭載しているので、PCが起動中は緑色に発光します。
MASTERPIECE i1730PA3-SP-DLのダブル水冷について
「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」ではCPUのCore i9 9980XEとGPUのRTX 2080 Ti NVLink SLIを360サイズの共有ラジエーターで一括冷却を行う、マウスコンピューターG-Tune独自の「ダブル水冷」という冷却システムが採用されています。旧モデルではゴム製水冷チューブが剥き出しでしたが、「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」では水冷チューブにファイバースリーブが巻かれており、ファブリックの光沢によって見た目に高級感が増し、ケーブル同士が引っかからないので取り回しも良くなっています。
360サイズラジエーター上には個別に制御が可能な120サイズの冷却ファンが3基設置されており、いずれもマザーボード上のファン端子に接続されています。
これらの3つの冷却ファンはマザーボードBIOS上からファンコントロールの設定が可能です。ファンコントロール設定を標準から変更する場合はBIOSメニューに入って左下の「HARDWARE MONITOR」のアイコンを選択します。
BIOSトップメニューで「HARDWARE MONITOR」を選択すると下のようなグラフィカルなファンコントロール画面が表示されます。
ファンコントロールを行うファン端子についてはマザーボード上に設置された6基全てに対して個別に設定が可能となっており、画面右上のアイコンから操作するファン端子を選択できます。「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」の場合は、CPU_1ファン端子に水冷ポンプ、System_2~4ファン端子に水冷ラジエーターの冷却ファンが接続されています。
ファン制御方法としてはPWM速度調整のPWMモードと電圧速度調整のDCモードが選択できます。PWMモードはPWM対応4PINファンが接続されているファン端子でのみ使用可能です。また設定方法としてソース温度依存のファンカーブを使用した「Smart Fan Mode」と定速回転モードが用意されています。
「Smart Fan Mode」のチェックボックスを選択すると下のように4点からなるソース温度依存のファンカーブによるファンコントロール設定を行えます。
「Smart Fan Mode」のチェックボックスを外すと定速回転モードとなりソース温度と関係なく、指定したPWMデューティ比or電圧に従って一定速度でファンが動作します。
「Smart Fan Mode」でファンコントロールのソースとなる温度については画面左の「Temperature Source」のプルダウンメニューから選択できます。CPU温度、System温度、MOS(VRM電源)温度、PCH(チップセット)温度、PCIE_1温度、M.2_1温度、M.2_2温度の7つから選択できます。
ソース温度が乱高下するような場合に、ソース温度と連動してファンが空ぶかし的な動作をしないようにソース温度の変化に対してファン制御に遅延をつける「〇〇Fan step up/down time」という機能も実装されており、0.1~1.0秒の遅延をつけることが可能です。
ダブル水冷システムについてはCPUとGPUを360サイズの共有ラジエーターで一括冷却を行う構造になっているので可能であれば水温ソースのファンコントロールができると一番良いのですが、同システムでは上述のソース温度から選択する必要があります。
後ほど詳しくチェックしていきますが、ラジエーター冷却ファンのファン回転数は3基全てを1200RPMに固定でも十分なので、各自の環境に合わせて1200~1600RPMくらいで定速回転にするのがオススメです。CPU温度依存のファンカーブを使用するにしてもCPU温度70~80度を閾値にしてステップ状の制御にするのが良いと思います。
G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DLのCPU/GPU/ストレージのスペックについて
G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DLの各種性能をチェックする前に、同PCに搭載されているCPUとGPUのスペックについて簡単に紹介します。G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DLのCPUスペック
「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」にはCPUとして、Intel製エンスージアスト向けCPUの第9世代Core-X最上位、18コア36スレッドモデル「Core i9 9980XE」が搭載されています。Core i9 9980XEのIntel公式仕様はコアスレッド数:18コア36スレッド、ベースクロック:3.0GHz、最大ターボクロック:4.5GHz、L3キャッシュ容量:24.75 MB SmartCache、TDP:165Wです。システムメモリにはADATA AO2P24HCST2-BTCSが4枚搭載されており、16GB*4=64GB容量、メモリ周波数は2400MHz、メモリタイミングは19-19-19-43-CR2です。Core i9 9980XEは定格2666MHzに対応したメモリなので、2666MHzのメモリを搭載しておいて欲しかったところです。
CPUスペックの話に戻りますが、「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」に搭載されるCore i9 9980XEは18コア36スレッドのCPUであり、定格動作において1コアから全18コアまで負荷がかかった時のコア数に対する動作倍率は『最大動作コア数 / 最大動作倍率』を1セットとして、[2/45, 4/42, 12/41, 16/39, 18/38]となっています。
組み合わせて使用するマザーボードによって第9世代Core-Xの電力制限の標準設定は異なりますが、「MSI X299-S01」では、「Turbo Boost Power Max(長期間電力制限/Power Limit 1)」と「Turbo Boost Short Power Max(短期間電力制限/Power Limit 2)」が、定格の165W/210Wから、BIOS標準設定では200W/240Wへと引き上げられていました。
マザーボードによっては実際の消費電力と、電力制限のソースとなるCPU Package Powerの間にオフセットがある場合があります。アイドル時と負荷時の消費電力差分、および負荷時のコアクロックを別のシステムと比較検証してみたところ、実際の動作としては「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」に搭載されたCore i9 9980XEは、TDP:255W程度(PL1:255W、PL2:295W)まで電力制限が標準で解除されていました。
Core i9 9980XEの電力制限についてはWindows上ユーティリティーソフト「Intel Extreme Tuning Utility」のほか、BIOS設定からも調整が可能です。
当レビュー記事では簡単のため割愛しますが、CPUの電力制限やTDP関連について気になる人はこちらの記事を参考にしてください。
・2019年最新CPUの消費電力・発熱・TDP・温度について - 爆熱評価のウソほんと
Core i9 9980XEはユーザーによる手動OCに対応したマザーボードですが、BTO PCのレビューなので手動OC関連については割愛します。「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」に搭載されたX299マザーボード「MSI X299-S01」でもOC設定の方法はMSI製品でほぼ共通なので気になる人は下の記事を参考にしてみてください。
・「MSI X299 GAMING PRO CARBON AC」をレビュー:OC設定について
1点だけTipsとして「MSI X299-S01」では、AVXという拡張命令を実行する時に(動画のエンコード時など)コアクロックを抑制するAVXオフセットが標準で有効になっています。XTUからは無効を意味する0の表示が確認できますが、実際の動作を見ると有効になっています。動画エンコード等でコアクロックがしっかりと上がらないときはBIOS設定からAVXオフセットを0に設定してみてください。
G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DLのGPUスペック
「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」は、NVIDIAの最新GPUであるTuring世代RTX 20XXシリーズにおいて最上位のウルトラハイエンドクラスに位置する「GeForce RTX 2080 Ti」が2基搭載され、従来のSLI接続よりも10倍以上の広い帯域となるNVLinkで接続されたマルチGPU「NVLink SLI」に対応しています。GeForce RTX 2080 Ti NVLink SLIは、SLIをサポートするゲームにおいてRTX 2080 Tiのシングルグラフィックボードと比較して50%以上高いパフォーマンスを発揮することが期待できます。
「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」に搭載されたRTX 2080 Tiグラフィックボード単体について確認しておくと、ブーストクロックが1545MHz、パワーリミット(TDP)も250Wとなっており、RTX 2080 Tiのリファレンス仕様に則したスペックでファクトリーOCは施されていません。
G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DLのストレージスペック
「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」には標準搭載のストレージとして、NVMe M.2 SSDの「Samsung PM981 NVMe M.2 SSD 1TB」と3.5インチSATA HDD「Seagate ST3000DM008 3TB HDD」の2台が内蔵されています。「Samsung PM981 NVMe M.2 SSD 1TB」と「Seagate ST3000DM008 3TB HDD」についてストレージ性能の測定において定番ベンチマークのCrystalDiskMarkの結果が次のようになっています。「Intel 760p 512GB」は2019年最新NVMe M.2 SSDとして十分に通用するスペックなのですが、PCゲームインストール先となるサブストレージに低速なHDDを採用しているのは個人的にはマイナスポイントです。
1~2TBの2.5インチSATA SSDが2万円前後、スケールメリットを考えれば2万円以下で2TB SSDの採用も難しくないはずなので、製品価格がその分上乗せされても最初からデータストレージには1TB以上の2.5インチSATA SSDを採用して欲しかったところです。
PCゲームのインストール先としてSSDとHDDではPCゲームのロード時間に大きな差があります。詳しくは下の記事を参照してください。「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」には2.5インチストレージを設置可能なスペースが2か所あるので、注文時にカスタマイズから追加するか、各自で2.5インチSATA SSDを増設するのがオススメです。
・【SATA SSD vs NVMe SSD vs HDD】 ゲームロード時間を比較
また下の記事では、MLC/TLC/QLCのマルチビットセルやNVMe/SATA3.0など2019年最新のSSD事情について徹底解説しています。ストレージについて詳しく知りたい方は参考にしてください。
・おすすめSSDまとめ。QLC/TLC/MLCやNVMe/SATA3.0など最新SSD事情を解説
G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DLの温度・消費電力・ファンノイズ
「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」のCPU・GPUスペックや具体的な動作設定等について紹介したので、性能をチェックする前に、G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DLの消費電力・温度・ファンノイズを見ていきます。CPU負荷時のCPU温度とCPUコアクロックについて
まずは「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」に搭載されたCPUの「Core i9 9980XE」にフル負荷をかけた時のCPU温度やコアクロックを確認します。なお「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」に搭載されたラジエーター冷却ファンやケースファンのファン回転数は1200RPMに固定します。「Core i9 9980XE」をG-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DLにおける標準設定で動作させて、ストレステストとして動画エンコードによって30分ほどフル負荷をかけ続けました。
Core i9 9980XEのCPU温度自体は80度以下に収まっており、300Wに迫るCPU消費電力を「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」のダブル水冷システムはよく御しきれていると思います。しかしながらCPUへ電力供給を行うVRM電源回路の冷却は不十分で、VRM電源回路のオーバーヒートによるコアクロックの低下、俗にいう”ファントムスロットリング”が発生しました。ストレステスト開始から16分を超えた辺り、VRM電源温度が110度に達するとそこを閾値としてコアクロックが乱高下しているのが分かります。
ソフトウェアモニタリングでもVRM電源温度は100度を大きく超過しましがた、サーモグラフィーでストレステスト中のVRM電源周りの温度を確認してみても、やはりVRM電源周りは100度を超えていました。
「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」環境においてCore i9 9980XEに長時間フル負荷がかかるようなタスクを実行する場合、ファントムスロットリングの発生を抑制するためVRM電源を冷やすスポットクーラーの増設を推奨します。
スポットクーラーを使用するのであれば、フレキシブルファンアーム「サイズ 弥七」や、可変アルミニウム製ファンフレームでVRM電源を狙って設置が容易な「IN WIN MARS」がオススメです。
・マザーボードVRM電源クーラーのレビュー記事一覧へ
ゲーム負荷時のGPU温度とCPU温度について
続いてG-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DLに搭載されたGPUの「GeForce RTX 2080 Ti NVLink SLI」とCPUの「Core i9 9980XE」にPCゲームプレイ時に相当する負荷をかけ続けたときのGPU温度とCPU温度をチェックしていきます。「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」で採用されるダブル水冷システムによってRTX 2080 Ti SLIをしっかりと冷却することができるのかを確認します。ラジエーター冷却ファンとケースファンはファン回転数を1500RPMに固定します。またグラフィックボードに搭載されたブロアーファンはそのままだとGPU温度依存で1800~2000RPMとファン回転数が高くなりますが、グラフィックボード上のVRAMとVRM電源を冷やしているだけで、そこまでの回転数は必要ないため1200RPMに固定します。
RTX 2080 Ti NVLink SLIではPCIEスロットという限られたスペースに500W以上の熱源を配置することになるのでサーマルスロットリングによる性能低下が懸念されます。短時間のベンチマークではシングルGPUよりもはるかに高いパフォーマンスが発揮できたのに実際に長時間ゲームをプレイしてみると熱ダレで期待したパフォーマンスが発揮できなかったということも少なくありません。
「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」の冷却性能を確認するため、現在主流な3スロットレイアウトのマザーボードで前者/後者をプライマリ/セカンダリとして「簡易水冷&3スロット空冷」、「3スロット空冷&3スロット空冷」、「2スロット空冷&3スロット空冷」を比較対象に加えた4パターンのRTX 2080 TiのマルチGPUを構築し、それぞれの冷却性能やグラフィック性能を検証してみました。
今回使用するグラフィックボードは2019年最速のGeForce RTX 2080 TiのマルチGPUなので、測定負荷として3DMark Time Spy Extreme Stress Testを使用しました。
さらに「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」を含めた4パターンのRTX 2080 Ti NVLink SLIについて、Time Spy Extreme Stress Test中にボトルネックとなる高温な方のGPU温度の推移を比較すると次のようになっています。
2基のGPUが水冷化されている「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」は、比較対象の3パターンよりも大幅に冷えており、RTX 2080 Ti NVLink SLIの発熱に対して70度未満のGPU温度を維持できています。
さらに「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」を含めた4パターンのRTX 2080 Ti NVLink SLIについて、Time Spy Extreme Stress Test中のフレームレート、つまりグラフィック性能を比較した結果を見ていきます。
グラフのようにテスト開始直後100秒の平均フレームレート(avg_s)はいずれの構成で81~82FPSで一致しているのですが、テスト開始3分が経過すると徐々にフレームレートの推移に差が現れ出します。テスト終了直前100秒の平均フレームレート(avg_e)を見ると、RTX 2080 Tiグラフィックボードでは一般的な「3スロット空冷&3スロット空冷」のパフォーマンスが最も低くなり平均67.2FPS、対してグラフィックボードが水冷化されている「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」では平均80.8FPSで20%も性能が向上することがわかります。
RTX 2080 TiのマルチGPUの冷却については下記の記事も参考にしてみて下さい。
・RTX 2080 Ti NVLink SLIのプライマリGPUには簡易水冷グラボがおすすめ
G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DLの消費電力について
「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」の消費電力についてチェックしていきます。消費電力の測定にはBluetooth接続でスマホから消費電力をリアルタイムモニタリング可能なワットチェッカー「ラトックシステム REX-BTWATTCH1」を使用して、電源ユニット(ACアダプタ)の変換損を含めた「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」のシステム全体の消費電力をチェックしています。
「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」はバックグラウンドタスクによって変動もありますが、アイドル状態におけるシステム消費電力は概ね110W前後で推移します。
CPUに対してフル負荷のかかる動画のエンコードを行うと、「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」のシステム消費電力は380W前後で推移します。一方で主にGPUに対してフル負荷のかかる3DMark TimeSpy Extreme グラフィックテスト1では「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」のシステム消費電力は700W前後になります。
3DMark FireStrike Ultra グラフィックテスト1はCPU負荷が軽いのでCPU負荷次第ではさらに消費電力が上がる可能性もありますが、「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」の電源ユニットは電力容量1200Wなのでさらに高い負荷がかかっても電源ユニット自体の電力供給能力面では問題ありません。ただし瞬間的なピーク負荷としては1000W近い負荷がかかる場合もあるので電源ユニットを接続するコンセントや配線には注意してください。
G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DLのファンノイズについて
この章の最後に「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」のファンノイズをチェックしていきます。「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」には上述の通りCore i9 9980XEやRTX 2080 Ti NVLink SLIのフルパワーが遺憾なく発揮できるダブル水冷システムが採用されていることもあって、冷却機構自体の冷却性能や静音性については文句のない出来栄えなのですが、標準で採用されている電源ユニットの負荷時のファンノイズが非常に煩いところが残念でした。
「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」の騒音減は主に「水冷ラジエーターの冷却ファン」「グラフィックボード備え付けのブロアーファン」「電源ユニットの冷却ファン」の3つです。
このうち「ラジエーター冷却ファンとケースファン」を1500RPMに固定、「グラフィックボード備え付けのブロアーファン」を上で行ったストレステストと同様に1200RPMに固定して、アイドル状態とゲーム負荷状態で「電源ユニットの冷却ファン」のファンノイズをサウンドレベルメーター(騒音計)を使用して測定しました。
アイドル状態のノイズレベル45dBも最近のハイエンド電源でセミファンレスが流行っていることを考えると比較的ファンノイズが大きい方なのですが、ゲーム負荷時のノイズレベル64dBについてはファンノイズが非常に大きく、布団乾燥機と掃除機の間くらいの騒音でした。
距離を離して全体のノイズレベルで比較してみても、やはり電源ユニット冷却ファンがファンノイズにおけるボトルネックになっていることが分かります。
せっかくダブル水冷でRTX 2080 Ti NVLink SLI環境を静音性を維持しつつ冷却できているのに電源ユニットのファンノイズがボトルネックになってしまっています。50万円を超えるBTO PCに標準搭載される電源ユニットとして、静音性に文句をつけたいところです。せめてCorsair HX1200i、Cooler Master V1200 Platinum、Thermaltake Toughpower iRGB PLUS Platinum 1200Wなど自作erにも定評のある静音性に優れた大容量電源ユニットをカスタマイズのアップグレード項目として用意して欲しいです。
G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DLのCPU性能とGPU性能
最後に「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」のCPU性能とGPU性能をチェックしていきます。G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DLのCPU性能(クリエイティブタスク)
続いて「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」に搭載されたCore i9 9980XEのCPU性能に大きく依存する、クリエイティブタスクにおけるパフォーマンスをチェックしていきます。「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」に搭載されたCore i9 9980XEは、18コア36スレッドのCPUであり、全コア最大動作倍率は38倍です。電力制限として短期間電力制限:240W(実質295W前後)、長期間電力制限:200W(実質255W前後)が標準設定として適用されており、短期間電力制限が有効になる場合は全コアが3.8GHzに張り付き、長期間電力制限下においては3.6GHz~3.8GHzで各コアのコアクロックは変動し、概ね3.7GHzを超えるくらいで動作します。
「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」において18コア36スレッドCPUのCore i9 9980XEは全コア3.7~3.8GHzで動作するので、CPUのマルチスレッド性能を測定するベンチマークで定番のCinebench R15のスコアは3700程度、Cinebench R20のスコアは10000程度でした。
CPU性能の詳細な検証に用いるクリエイティブタスクについてはCPU使用率がフルロードになる3Dレンダリング、動画エンコード、RAW現像、ゲームビルドの4種類となっています。
具体的な測定内容は、3Dレンダリングはオープンソース3DCGソフト「Blender」の公式ベンチマークソフト、動画のエンコードは無料で利用できる動画編集ソフトとして国内外で多数のユーザーがいる「Aviutl」のx264エンコーダによる4K動画のエンコード、RAW現像はDxO PhotoLab(PRIMEあり、5472×3648解像度のRAW画像ファイル 100枚)、デモプロジェクト「Infiltrator」を使用したUnreal Engine 4によるゲームビルドです。
3DCGソフト「Blender」の公式ベンチマークソフトで測定する3Dレンダリング性能についてはレンダリング時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、比較対象の中で最も遅いものを基準にして、「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」を含めた各種CPUのレンダリング速度を性能比としてグラフ化しました。
x264エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.264 (MPEG-4 AVC)の3840×2160解像度へエンコードした時のエンコード速度について「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。
DxO PhotoLabによるRAW現像速度について「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。
「Unreal Engine 4 - Infiltrator」のビルド性能については、ビルド時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、比較対象の中で最も遅いものを基準にして、「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」を含めた各種CPUのビルド速度を性能比としてグラフ化しました。
Core i9 9980XEなどIntel第9世代Core-Xはワットパフォーマンスが悪いため、定格電力制限下では12コアや16コアの第3世代Ryzenに及ばないシーンが多く、十分な性能を発揮するにはユーザーによる手動OCが必要になります。(設定自体はそれほど難しくはない) Intel第9世代Core-XはOC設定や発熱に対応できるクーラーの用意など運用面においても若干ハードルが高いですが、CPU直結PCIEレーンの多さやメモリ帯域の高速さなど替えの効かない要素もあります。
その点、「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」に搭載されたCore i9 9980XEは標準設定で全コア3.6~3.8GHz動作になる電力制限解除のブースト設定となっており、性能の反面、定格よりも大きい300Wクラスの発熱にも対応できる強力なCPUクーラーも搭載しているので、Core i9 9980XEの優れたマルチスレッド性能がそのままの状態で遺憾なく発揮できています。
以上、簡単に「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」に搭載された「Intel Core i9 9980XE」の性能について解説しましたが、定格運用時もしくはOC時の性能についてさらに詳しく気になる場合は、個別レビュー記事を公開しているのでこちらを参考にしてください。
・「Intel Core i9 9980XE」をレビュー
・Intel Core i9 9980XEを4.4GHz OCで7980XEと比較レビュー
G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DLのGPU性能(PCゲーミング)
続いて「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」に搭載されたGPUであるGeForce RTX 2080 Ti NVLink SLIのPCゲーミング性能についてチェックしていきます。最初に補足として、「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」に搭載されたCore i9 9980XEはCPUにフル負荷がかかった場合、TDP制限によって全18コアが3.8GHzで動作するのは不可能ですが、全コアが稼働するものの負荷的には余裕でTDP範囲内に収まるワークロードであれば、多コア多スレッドなCore i9 9980XEでも多くのコアで3.8~4.0GHzのように高いコアクロック維持できます。これによって超メニーコアなエンスー向けCPUであってもメインストリーム向けCPUと同じようにPCゲームで高いパフォーマンスが発揮できます。
国内最大手かつ大人気のMMO RPG「ファイナルファンタジーXIV」の2019年最新大型アップデート「FFXIV: 漆黒のヴィランズ」の公式ベンチマークソフトで「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」のPCゲーミング性能を測定してみました。(FF14ベンチはスコア10000を超えるとメモリやCPUのボトルネックベンチになるためGPUだけ高速になってもスコアに差が出なくなります。)
「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」はフルHD解像度のグラフィック設定:最高品質においてベンチマークスコアは14000オーバーとなっており、快適度評価も「非常に快適」をマークしています。FFXIV: 漆黒のヴィランズの公式ベンチマークソフトでは総合スコアを1.5×100で割った値がちょうど平均FPSなので、「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」ならFFXIV: 漆黒のヴィランズを4K解像度で平均60FPSオーバーの滑らかなプレイも余裕です。
また2019年最新PCゲームと比較しても高画質でグラフィック負荷が重いPCゲームに分類されるシングルプレイ用ロールプレイングゲーム「ファイナルファンタジーXV」の公式ベンチマークソフトで「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」のPCゲーミング性能を測定してみました。
「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」は4K解像度のグラフィック設定:高品質においてベンチマークスコアは5000オーバーとなっており、快適度評価も「快適」をマークしています。ファイナルファンタジーXVの公式ベンチマークソフトでは総合スコアを100で割った値がちょうど平均FPSなので、ファイナルファンタジーXVはSLIに非対応のゲームとなっており、RTX 2080 Tiを搭載する「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」ですら平均60FPSを若干下回りますが、専用のテンサーコアを使用したディープラーニング(深層学習)によるアンチエイリアス/超解像機能「DLSS(Deep Learning Super Sampling)」を使用すれば、4K/60FPSで快適にプレイが可能です。
RTX 2080 Ti NVLink SLIは4K解像度など超高解像度かつ高リフレッシュレートのハイエンドゲーミング環境を満たす最後の手段となっています。2019年以降、SLIに対応する最新ゲームが減りつつあるのが心苦しいところではありますが。
・RTX 2080 TiとRTX 2080のNVLink SLI性能をベンチマーク比較
MASTERPIECE i1730PA3-SP-DLのレビューまとめ
最後に18コア36スレッド「Intel Core i9 9980XE」とウルトラハイエンドGPU「NVIDIA GeForce RTX 2080 Ti」のマルチGPU NVLink SLIを搭載した2019年最強最速ゲーミングBTO PC「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- 4K動画編集などクリエイティブ作業にも対応できる「Core i9 9980XE」搭載
- 超高解像度・高FPSで最新ゲームがプレイ可能な「RTX 2080 Ti」のマルチGPU搭載
- CPU・GPUを360サイズの共有ラジエーターで冷却するダブル水冷システムを採用
- オリジナル水冷化RTX 2080 TiならSLI環境でもサーマルスロットリングとは無縁
- In Win 303をベースにしたオリジナルPCケースは高級感がある
- システムストレージは高速NVMe M.2 SSD「Samsung PM981 NVMe M.2 SSD 1TB」を採用
- M.2 SSD、PCIE NVMe SSD、サウンドボード等も拡張可能
- Core i9 9980XEをTDP255W相当で運用するにはVRM電源回路と冷却が不十分
- 電源ユニットの冷却ファンが非常に煩い
- BTO PC専用廉価マザーボード採用なのでマニュアルや公式サポートページがない
- 標準構成で85万円以上と非常に高価
18コア36スレッドCPUのCore i9 9980XEとウルトラハイエンドGPUであるGeForce RTX 2080 TiのマルチGPU NVLink SLIを搭載した「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」は2019年現在、最強のゲーミングマシンと言っても過言ではありません。パフォーマンスの反面、大きくなる発熱も独自のダブル水冷システムによって静音性を確保したまま十分に冷やすことが可能なのでRTX 2080 Ti NVLink SLIを搭載するBTO PCとしては一押しの1台です。
Core i9 9980XEはマルチスレッド性能が非常に高いCPUなので4K動画編集やリアルタイムエンコードによる動画配信などにも余裕で対応できます。RTX 2080 Tiはクリエイティブタスクにおけるハードウェア支援も効くので、ゲーマーのみならず、クリエイティブタスクを中心に行うパワーユーザーにもお勧めできる製品だと思います。
その圧倒的なパフォーマンスの反面、RTX 2080 Tiはシングルボードでも250~300Wという大きな発熱(消費電力)を伴うので、RTX 2080 Ti NVLink SLI環境は3スロット占有の大型グラフィックボードを使用しても十分な冷却が難しいという問題がありましたが、独自の水冷システムによってGPUを冷却する「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」であればRTX 2080 Tiの発熱による熱ダレでパフォーマンスが低下する心配もなく、3スロット占有のハイエンド空冷GPUクーラーを搭載するモデルと比較しても遥かに高いグラフィック性能と静音性を実現できます。
あえて難点を上げるとすれば、一般販売品ではないマザーボードが採用されていることと、電源ユニットの冷却ファンがかなり煩いことでしょうか。マザーボードについては基本的な機能は全て揃っているため実用上は特に問題もないのですが、電源ユニットのファンの煩さはかなりのマイナスポイントだと感じました。せっかくダブル水冷システムで確保した静音性も電源ユニットのファンノイズがボトルネックになっているのがもったいないです。標準採用の電源ユニットとは別に市販の高静音性な電源ユニットもカスタマイズ項目に加えて欲しいです。BTOの意味が…、という声が聞こえそうですが購入したら電源ユニットだけでも換装してしまうのが正直なところおすすめです。
今回はCore i9 9980XE&RTX 2080 Ti NVLink SLIを搭載する最上位モデル「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」を検証しましたが、一般ユーザーにもオススメなモデルとして同じくCPUとGPUを360サイズラジエーターで一括冷却するダブル水冷クーラーを採用しCore i9 9900K&RTX 2080 Tiを搭載した「G-Tune MASTERPIECE i1640PA2-SP2-DL」も販売されています。
一般的な空冷クーラーのBTO PCより値は張りますが、ダブル水冷クーラーはCore i9 9980XE&RTX 2080 Ti NVLink SLIで検証したように非常に優れた冷却性能と静音性を発揮するので、RTX 2080 Tiを搭載したBTO PCとして「G-Tune MASTERPIECE i1640PA2-SP2-DL」はぜひ検討したいモデルの1つです。
・G-Tune MASTERPIECE i1640PA2-SP2-DLの販売ページへ
以上、「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」のレビューでした。
・G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DLの販売ページへ
おまけ:マザーボードや電源ユニットの取り換え手順(注:メーカー保証外)
「G-Tune MASTERPIECE」のダブル水冷モデルについてはレビュー記事本文の通り、水冷自作erな管理人も納得の高性能・高品質なBTO PCでおすすめできる製品なのですが、マザーボードや電源ユニットは個人的にどうしても気になったので、マザーボードや電源ユニットの取り換えが可能かどうかを簡単にチェックしてみました。電源ユニットはケーブルの着脱だけなので比較的簡単だと思うのですが、マザーボードを取り換える上で問題になるのはCPU/GPUを一括で冷却しているダブル水冷システムなので、これを簡単かつ綺麗に避けてマザーボードが交換できるかどうかがポイントです。なお当然ですがマザーボードの取り換えはマウスコンピューターの公式サポート保証外となります。ある程度自作PCの知識があって、ダブル水冷システムが欲しいけどマザボや電源は交換したい、というちょっとニッチな層向けのおまけ項目なので注意してください。
前置きはこの辺りにして早速実践してみます。
まずはPCケースは平置きにし、グラフィックボードに接続されたPCIE補助電源ケーブルを取り外します。
PCIE補助電源をグラフィックボードから外したら、PCIブラケットの固定ネジも外して、グラフィックボードをマザーボードのPCIEスロットから取り外します。順番はどちらでもいいですが、水冷チューブの長さ的には下段から取り外すのが楽です。1スロット分のスペースはありますが、PCIEスロットのロックに手が届かない場合は上段のグラフィックボードから外してください。
続いてもう1つのグラフィックボードも取り外します。
さらにドライバーを使って固定ネジを緩め、CPUクーラーを取り外します。
以上でダブル水冷システムの水冷ループを維持したままで、マザーボードの取り外しか可能になります。
ここまで分解できれば自作PCの知識がある程度あればマザーボードの取り換えは難しくないと思います。なおX299マザーボードの多くではEPS端子に8+4PINや8+8PINが要求されます。付属の電源ではEPS端子を増設可能なプラグイン端子が残っているものの、「G-Tune MASTERPIECE i1730PA3-SP-DL」には肝心のプラグインケーブルが付属しません。SATA電源などから変換してEPS電源を用意することも可能ですが、マザーボードを取り換えるなら一緒に電源ユニットも上位Platinum認証やTitanium認証の電源に換装するのがおすすめです。
・Intel Core-X対応X299マザーボードのレビュー記事一覧
・自作PC電源ユニット(PSU)の徹底解説とおすすめ電源の選び方
関連記事
・おすすめBTO PCまとめ。予算・性能別で比較。カスタマイズ指南も・BTO PCにオススメなCPUを用途&予算別で5種厳選
・RTX 3080搭載のおすすめゲーミングBTO PCを徹底比較!
・RTX 3090搭載のおすすめBTO PCを徹底比較! 【TITAN RTX更新に最適】
・Core i9 10900K搭載のオススメなBTO PCを比較解説
・第3世代Ryzen搭載のオススメなBTO PCを解説
・Ryzen Threadripper 3970X/3960X搭載のオススメBTO PCを解説
・GTX 1660 SUPER搭載のおすすめゲーミングBTO PCを徹底比較!
・GTX 1660 Ti搭載のおすすめゲーミングBTO PCを徹底比較!
・RTX 2060搭載のおすすめゲーミングBTO PCを徹底比較!
・RTX 2060 SUPER搭載のおすすめゲーミングBTO PCを徹底比較!
・RTX 2070 SUPER搭載のおすすめゲーミングBTO PCを徹底比較!
(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
スポンサードリンク