信頼性の高いMicron純正メモリモジュールを採用、Intel XMP3.0/AMD EXPOによる低レイテンシなメモリOC対応でゲーミングPCにも最適なCrucial DDR5 Pro Overclocking UDIMMリーズから、6400MHz/CL38のメモリOCに対応する16GB×2枚組み 32GB容量メモリキット「Crucial DDR5 Pro OC CP2K16G64C38U5B」をレビューします。
【機材協力:Crucial/Micron】
16GB×2 / 6400MHz / CL38
Crucial DDR5 Pro Overclockingの外観
最初に「Crucial DDR5 Pro Overclocking」の外観をチェックしていきます。
JEDEC準拠の定格スペックのプロファイルのみを収録するCrucial DDR5 Pro標準モデルはSSDなど同社Proシリーズ同様にグレーと青色のツートンカラーですが、「Crucial DDR5 Pro Overclocking」はアクセントカラーが紫色に変わっています。
「Crucial DDR5 Pro Overclocking」はプラスチック製スペーサーが厚紙で挟んで接着されているという梱包です。プラスチック製スペーサーを取り出すには厚紙部分をカットする必要があり、非破壊では開封できません。
今回レビュー用に入手した「Crucial DDR5 Pro OC CP2K16G64C38U5B」は16GB容量のメモリモジュール 2枚組み、Intel XMP3.0やAMD EXPOによる6400MHz/CL38のメモリOCにも対応するメモリキットです。

「Crucial DDR5 Pro Overclocking」は、サラッとした質感のブラックカラー塗装が施されたアルミニウム製ヒートシンクを標準で搭載したメモリです。
ヒートシンクで大半は隠れていますが、メモリモジュールは黒色のPCB基板で、その片面にMicron純正メモリチップが計8枚実装されています。
「Crucial DDR5 Pro Overclocking」は公式曰く”折り紙”のようなポリゴン調でユニークな形状のアルミニウム製ヒートシンクを標準で搭載しています。天面にはブランドロゴ等もなく、シンプルに黒色の板状です。
ただし一部メーカーの厚み数mmのアルミニウム板のような大型ヒートシンクではなく、0.5mm厚程度のヒートシンクなので、冷却性能としては必要十分という感じです。
OC非対応のDDR5 Pro標準モデルと並べると無骨な印象の標準モデルと違って「Crucial DDR5 Pro Overclocking」は大分スタイリッシュです。
どちらも黒色塗装の分類としてはマットですが、標準モデルが墨のようなザラザラ感があるのに対して、「Crucial DDR5 Pro Overclocking」は少しツヤがありサラッとした塗装です。
「Crucial DDR5 Pro Overclocking」はヒートシンク搭載ながら、全高が約36mmのロープロファイル設計となっており、大型空冷CPUクーラーとも高い互換性があります。
ヒートシンクなしのDDR5メモリと比べると「Crucial DDR5 Pro Overclocking」の全高は約+3.3mmでした。全高の差がアルミニウム板分のDDR5 Pro標準モデルと比べると高いですが、空冷クーラーとの互換性的には誤差レベルです。
「Crucial DDR5 Pro Overclocking」を実際にマザーボードメモリスロットに装着するとこんな感じになります。
スタイリッシュな黒色塗装のアルミニウム製ヒートシンク搭載なので、近年の黒一色なハイエンドゲーミングマザーボードとも調和します。
ホワイトモデルもラインナップ
「Crucial DDR5 Pro Overclocking」には標準搭載ヒートシンクがホワイトカラーのバリエーションモデルもラインナップされています。ヒートシンクカラー以外は黒色モデルと全く同じです。

ブラックカラーモデル同様にサラッとした清潔感のある白色塗装が施されており、ポリゴン調でユニークな形状のアルミニウム製ヒートシンクはより一層”折り紙”のような感じがします。
最近の自作PCマザーボードではホワイトやシルバーのカラーリングが流行っていますが、「Crucial DDR5 Pro Overclocking」のホワイトモデルならそういった環境にも違和感なくマッチします。
あと写真を見ての通り、Crucial DDR5 Pro OCの6400MHz対応ホワイトモデルなど最新ロットではヒートシンク側面のCrucialロゴがCPUソケットとは逆側に来て、見栄えが良くなるデザインへとアップデートされています。
検証機材、メモリOCの基本
「Crucial DDR5 Pro OC 6400MHz (型番:CP2K16G64C38U5B)」の定格動作やXMP/手動設定を使用したオーバークロックの検証を行う前に、検証機材の紹介と、メモリOCの基本・手順についての説明をしておきます。
テストベンチ機の詳細
「Crucial DDR5 Pro OC 6400MHz」の検証環境は次のテーブルの通りです。
テストベンチ機の構成 | ||
---|---|---|
CPU | Intel Core Ultra 9 285K | |
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36 | レビュー |
Noctua NF-A12x25 PWM | レビュー | |
マザーボード | ASUS ROG MAXIMUS Z890 HERO | レビュー |
ASRock Z890 Nova WiFi | レビュー | |
GIGABYTE Z890 AORUS MASTER | レビュー | |
MSI MEG Z890 ACE | レビュー | |
ビデオカード | PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8 Gaming VERTO EPIC-X RGB OC 3FAN | レビュー |
システムストレージ | Samsung SSD 990 PRO 1TB | レビュー |
OS | Windows 11 Pro 64bit 22H2 | |
電源ユニット | Corsair HX1500i 2022 | レビュー |
ベンチ板 | STREACOM BC1 | レビュー |
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メモリOCの基本や効果
過去にはオシャレなヒートシンク目当てという傾向が強く、割と趣味の領域でしたが、現在はゲーミングPCなら性能重視でOCメモリを選ぶのも普通にアリです。
ゲーミングPCでメモリOCが注目された経緯
2020年以前は、システムメモリについては必要な容量さえ満たせば(当時は16GB程度、現在のゲーミングデスクトップPCなら32GBあれば十分)、OCによる性能の向上はCPUやGPUのOCに比べると実感し難い、というのが通説でした。
そのため管理人も一口にOCメモリと言っても性能向上を狙うよりは、オシャレなヒートシンク目当てに自作PCの装飾的な感覚で購入するのが個人的にはオススメな買い方だと思っていました。
Intel XMPに対応したOCメモリがあるとはいえ、2020年以前、当時はいまいちメモリOCの安定性が良くないというか、マザーボードとの相性問題が厳しかったのも一因です。
今のようにOCプロファイルを当てて一発安定ではなく、各自でOC設定の微調整が必要で、メモリOCの知識を求められました。
そういったメモリOCに対する評価が変わり始めたのはAMD Ryzen/Threadripper CPUの登場以降です。
初期のRyzen環境では『Infinity FabricというCPU内外のコンポーネントを相互接続するインターコネクトの動作周波数がメモリ周波数に同期する』という構造上、メモリ周波数がエンコードや3Dゲームを含めた総合的なパフォーマンスに大きく影響することからOCメモリが重要視されました。
性能に影響が大きいと分かるとCPU/マザーボード/メモリの各メーカーが最適化を進めたので、1,2年もするとOCプロファイルを当てればDDR4の3200MHz/C16、3600MHz/C18のような定番設定が一発で動くようになり、メモリOCのハードルがグンと下がりました。

Ryzen 3000/5000シリーズ以降、IF周波数はメモリ周波数/メモコン周波数と非同期設定が可能になったものの、それでも高周波数で1:1同期させた方が低遅延、高性能になるので3600MHz/C16のようなDDR4メモリが性能を追求するなら最適であり、最新のRyzen 7000シリーズでは6000MHz/CL30のDDR5メモリが高性能のスイートスポットとしてAMD公式からもアピールされています。
またGPU性能の大幅な向上や240Hz+のハイリフレッシュレートに対応したゲーミングモニタの登場によって、Intel環境においても144FPS~360FPSのハイフレームレートなPCゲーミングではCPUボトルネックの緩和にメモリ周波数のOCが効くことから、需要は高まりました。
GPU性能をフルに発揮できない、足を引っ張る要員として”CPUボトルネック”という言葉はPCゲーマーなら一度は聞いたことがあると思います。
実のところ”CPUボトルネック”は広義な言葉(として使われている)で、CPUそのものの性能不足ももちろん含むのですが、それ以外に、GPUドライバやゲームエンジンのオーバヘッド、そしてシステムメモリのアクセス遅延・帯域等もGPU性能の足枷になる原因として含んでいます。
変な表現ですが、メモリOCによって解消できるCPUボトルネックも少なくありません。
Core i9 14900K&RTX 4090の環境において、定格5600MHzのDDR5メモリと7200MHz OCのDDR5メモリでゲーム性能にどれくらい差が出るのか、最新18タイトルの実ゲームベンチマークで比較しているので参考にしてみてください。
フルHD・ハイフレームレートで効果が高いですが、近年増えつつあるリッチグラフィックな最新タイトルはCPUバウンドな傾向も強く、4Kのような高解像度でもメモリOCによって20%程度も性能が向上することがあります。

一方で、大容量キャッシュメモリによって非常に高いゲーム性能を発揮するRyzen 7 9800X3D環境であっても、GeForce RTX 4090、最新モデルならGeForce RTX 5080やRTX5090といった高性能GPUを組み合わせると、4KやWQHDの高解像度でもメモリ性能(CPU性能)を原因としたボトルネックは発生します。
JEDEC準拠の定格スペックメモリと比べて追加で予算は必要になりますが、+1万円未満で10万円を軽く超える高価なGPUの本来の性能(平均FPSで最大10%程度、最小FPSで最大20%程度)を引き出せる対価ということなら、意外と悪くないコスパです。

メモリ性能の見分け方
メモリの性能は簡単に言うと『動作クロック(周波数)が高く』『メモリタイミングが小さい』ほど性能が高くなります。
メモリ周波数については4800MHzや56000MHzなど〇〇MHzと周波数で表示されていたり、DDR5-4800やDDR5-5600のような規格として表記されていますが、製品仕様としてハッキリと明記されているのですぐにわかると思います。メモリ周波数は数値が高いほうが高速です。
一方、メモリタイミングは若干複雑で、「30-38-38-38」や「36-40-40-96」のような数字の羅列で表記されています。
メモリ周波数とは逆に、メモリタイミングは数値が小さい方が高速です。
メモリタイミングの中でも最初の1つ目はCAS Latencyという名前でCL16やCL18と単独で表記されることもあり、メモリタイミングを代表する数値になっています。初心者はCAS Latencyだけ見ておけばOKです。
IMC周波数との同期で逆に遅延が増える
基本的にメモリ周波数のスペックが高いほど高性能なメモリでしたが、現在ではこの事情が少々変わっています。*システムメモリの帯域と遅延は、高いメモリ周波数と小さいメモリタイミングの兼ね合いですが、OCメモリメーカーはあえて実性能を度外視してメモリ周波数を引き上げるために、メモリタイミングを過度に緩めるようなチューニングをすることはないので。
Intel Core Ultra 200SシリーズCPUにせよ、AMD Ryzen 9000/7000シリーズCPUにせよ、非常に高いメモリ周波数のOCを実現するために、メモリコントローラー(IMC)周波数とメモリ周波数の同期を可変にしています。
Intel Core Ultra 200SシリーズCPUでは定格の5600MHzから8400MHzくらいまでは2:1同期が可能ですが、それ以上では4:1同期になります。AMD Ryzen 9000/7000シリーズCPUでは定格の5600MHzから6400MHzくらいまでは1:1同期が可能ですが、それ以上では2:1同期になります。
メモリ周波数が上がれば通常、システムメモリの遅延と帯域はどちらも向上しますが、IMC周波数の同期が下がると遅延は逆に増大します。
高帯域が効くのか、低遅延が効くのかはゲームの種類、クリエイティブタスクなど各種用途によって異なるので、IMC周波数同期の低下が要求されるハイクロックなメモリOCも一概にダメとは言い切れず、ケースバイケースです。
ただ、ハイクロックなメモリほど
- 動作を安定させるのが難しい
- 高選別品なので高価になる
ということも事実なので、費用対効果を考えると、現状ではIMC周波数の同期が下がらない範囲でハイクロックなOCメモリを選ぶのがオススメです。
メモリスペックと性能の早見表
高性能なOC対応DDR5メモリの目安として、メモリ周波数とメモリタイミングの組み合わせは下のテーブルを覚えておくとOCメモリを選ぶ時に便利です。*厳密に言えば、メモリチップの種類(メーカーや世代)、メモリモジュールのランク、主要スペックとしては公表されないセカンド・サードタイミングと呼ばる数十種類を超えるサブタイミングによってメモリの性能は変わります。
ただ、そこまで網羅するのはメモリOCに精通したOCerでもないと現実的でないので、早見表くらいの理解で十分だと思います。
OC特化MBではなく、一般的なメモリスロットが4基のマザーボードなら動作するスペックを抜粋しています。
Intel Core Ultra 2000SシリーズCPU環境に対応するDDR5メモリのOCスペック早見表です。
Intel Core Ultra 2000SシリーズCPUは最新規格のCUDIMMと組み合わせた場合、8000~9000MHzのメモリOCにも対応します。
ただし、IMC周波数が2:1同期できるのは8400MHzまでとなっており、8400MHzより上は4:1同期で遅延が増え、2xメモリスロットのOC特化MBでないと安定動作が難しくなるので、最高でも8400MHzを上限に考えてください。
一般的なUDIIMM DDR5メモリで対応できる7200MHz/CL36や6400MHz/CL36の辺りは入手性とコスパの観点からオススメです。とにかく性能を追求するならCUDIMM DDR5メモリの8400MHz/CL40対応品を検討してみてください。
代表的なOC DDR5メモリのスペック | |||
---|---|---|---|
6400MHz | 7200MHz | 8400MHz | |
実用最速 | CL30 30-39-39-102 | CL34 34-45-45-115 | CL40 40-52-52-134 |
高性能 定番スペック | CL32 32-40-40-102 | 36-46-46-115 38-44-44-105 | CL36~38|
低価格 安定性重視 | 38-40-40-84 | CL36~38||
定格 | CL52 (CUDIMMのみ) 52-52-52-103 |
基本スペックと収録OCプロファイル
「Crucial DDR5 Pro OC 6400MHz (型番:CP2K16G64C38U5B)」のスペックや収録されているOCプロファイルについて解説します。
Intel XMP3.0とAMD EXPOはメモリはどちらもDDR5メモリのOCプロファイルです。
ただ、CPUのメモリOC耐性に対してメモリ周波数とCLなどプライマリタイミングのスペックが重なるOCメモリなら、OCプロファイルの種類に依らず正常動作するというのも事実なので、『OCメモリを新規に購入する時は合わせた方が良い』くらいの認識でOKです。
XMPはIntel製CPU環境向け規格
メモリOCで有名なXMPプロファイルは「インテル エクストリーム・メモリー・プロファイル」の略称でありIntelの策定した規格です。

XMP3.0は最新のDDR5メモリに対応したメモリOCプロファイル規格です。
前バージョンのXMP2.0は”DDR4メモリ”に対応したメモリOCプロファイル規格です。そもそも対応するメモリ規格が異なるので、XMP3.0とXMP2.0の違いを気にする必要はありません。
2025年最新CPUのIntel Core Ultra 200Sシリーズの時点ですでにDDR4メモリのサポートは終了しているので、最新CPUと一緒にOCメモリを選ぶ場合、自動的にDDR5メモリかつIntel XMP3.0になります。
AMD製CPU向け規格はAMD EXPO
XMP/EXPOは異なるCPU環境でも動く
Intel環境向けの規格なのでAMD製CPU環境において”XMPでOCする”等の表現をするのは厳密には正しくありませんが、XMPプロファイルとして収録されたメモリ周波数とメモリタイミングの設定値からAMD Ryzen環境に合わせたメモリOCプロファイルを自動生成する機能が各社マザーボードのBIOS上に実装されています。]
この機能によって異なる組み合わせでも実質同じようにOCできるので、『 XMP = メモリOCプロファイル 』くらい汎用的な言葉とザックリ理解してもさほど支障はありません。
当記事中でも、AMD製CPU環境においてXMPプロファイルを流用したメモリOCを、便宜上細かいことを気にせずに”XMPを使用したOC”などXMPとして表記することがあります。
逆にEXPO対応メモリもIntel製CPU環境ではマザーボードが自動的に最適なOCプロファイルへ変換してくれるので、大抵は正常に動きます。
すでにXMP3.0/EXPOのOCメモリを使っている人が他社製CPUに乗り換える時に必ずしもOCメモリを買い替える必要はない、という意味です。
OCメモリだけ、もしくはCPUも一緒に新規に購入する場合は、当然、CPUとOCメモリの種類は揃えるのがベストです。
メモリモジュールと定格動作
CrucialがMicronのコンシューマー向けブランドなので当然ですが、「Crucial DDR5 Pro OC 6400MHz (型番:CP2K16G64C38U5B)」にはMicron製DDR5メモリモジュールが採用されています。
電圧1.350Vでメモリ周波数6400MHz/メモリタイミングCL38に対応するOCメモリですが、素体にはJEDEC準拠の1.100Vで定格5600MHzに対応する16GB容量のメモリモジュールが採用されているようです。

他のOCメモリメーカー製品だと同じ型番でも製造時期やロットでSamsung製、SK Hynixs製など複数メーカーのメモリが混在しています。
Crucial DDR5 Pro Overclocking UDIMMシリーズは確実にMicron製メモリモジュールなので、相性問題等の細かいトラブルを排除できる確実性の高さも魅力です。
「Crucial DDR5 Pro OC 6400MHz (型番:CP2K16G64C38U5B)」はIntel Core Ultra 200SシリーズCPUやAMD Ryzen 9000/7000シリーズCPUの最新環境でハイクロック・低遅延なメモリOCに対応したモデルですが、SPDプロファイルとして収録されている最大スペックはJEDEC準拠の5600MHzです。
OCプロファイルを適用しない場合、CPU&MB環境がサポートするなら、定格最大メモリ周波数の5600MHz, CL46で動作します。
収録されているOCプロファイル
Crucial DDR5 Pro OCシリーズからは容量やOCの違いで様々なスペックが展開されています。
今回レビューする「CP2K16G64C38U5B」はOCプロファイルによる『6400MHz, CL38-40-40-84』のメモリOCに対応したモデルです。
Intel XMP3.0とAMD EXPOの一方にしか対応していないOCメモリが多い中、Crucial DDR5 Pro OCシリーズはOCメモリながら様々な環境への互換性を重視した設計になっていて、同等のスペックでIntel XMP3.0とAMD EXPO両方のOCプロファイルが収録されています。

「Crucial DDR5 Pro OC(型番:CP2K16G64C38U5B)」には最大スペックの『6400MHz, CL38』に加えて、
Intel XMP3.0やAMD EXPOに対応したOCメモリは、一般的に公式仕様として掲載されているOCプロファイル1つしか収録されていません。
そういったメモリだと、1つしか収録されていないOCプロファイルが適用しても安定しない場合、メモリOCに詳しくないユーザーは折角、高価なメモリを買ったのに、4800MHzや5600MHzなどJEDEC準拠のスペックでしか運用できず損することになります。
CPU・マザーボードとの相性が悪く、6400MHzのOCプロファイルが動かなくても、6000MHzなど下位モデルのOCプロファイルを試すことができます。
CP2K16G64C38U5Bはメーカーテストにおいて6400MHzの安定動作を確認している選別品なので、メモリモジュールの特性は当然、6000MHz対応品など下位モデルよりも優れています。価格差を気にしないのであれば、シンプルに上位互換です。

Crucial DDR5 Pro OCのメモリOCを試す
「Crucial DDR5 Pro OC(型番:CP2K16G64C38U5B)」を各種検証機材と組み合わせてメモリオーバークロックの動作検証を行いました。
DDR5メモリにおいて6000MT/s台の低レイテンシ設定や、7000~8000MT/sのハイクロック設定は温度影響によるメモリエラーが結構シビアですが、温度原因のエラー対策はサブタイミングや電圧を微調整するよりもファンを1台増設するほうが手っ取り早く簡単に解消できます。
Refresh Interval (tREFi) について
メモリOCで調整するサブタイミングにおいて「Refresh Interval (tREFi)」だけは数字が大きいほどメモリ動作が高速・低遅延になります。またtREFiはメモリ温度によるメモリエラー発生にも影響の大きい設定値です。
tREFiの設定値は『256×整数値 - 1』がよく使用されます。例えば256*128-1=32767は低遅延な反面、メモリ温度にシビアです。256*32-1=8191は速度はそこそこですが、温度に対して耐性が高い設定という感じです。
OCプロファイル適用時のMBによる自動設定も、ベンチマークスコア重視で25000~32000程度だったり、安定性重視で6000~8000程度だったり、MBメーカーやモデルによってまちまちです。また、同じ設定でもマザーボードによってエラー/ノーエラーが変わったりもするので地味に厄介です。

温度原因のメモリエラーとtREFIについて
DRAMはSSDなどSRAMと違って時間経過とともに信号電荷がかなりの速さで減少していくので、メモリデータを保持するために一定時間毎にリフレッシュという信号電荷を再び書き込む動作を行う必要があります。
リフレッシュ中はメモリにアクセスできなくなるため、リフレッシュを実行する間隔 Refresh Interval (tREFi)が長いほどメモリ動作は高速になります。*ちなみに似た名前の設定として「Refresh Cycle Time (tRFC)」がありますが、こちらは1回のリフレッシュにかかる時間(サイクル数)なので小さい方が高速です。
”時間経過とともに信号電荷がかなりの速さで減少していく”と書きましたが、この減少速度はメモリ温度の影響を受け、高温であるほど高速にメモリデータを失います。
メモリデータを失う前にリフレッシュを行う必要があるので、同じtREFiの設定値でもメモリストレステストにおいて、メモリ温度が低温ならノーエラーなのに、一定温度を超えるとエラーが出るということが起こります。
最新規格 DDR5メモリにおいて6000MHz台の低レイテンシ設定や、7000~8000MHzのハイクロック設定はこの温度影響によるメモリエラーが結構シビアです。
メモリストレステストを実行して5~10分程度が経過し、HWiNFO等のモニタリングソフトで確認できるメモリ温度が60~70度を超えた辺りでエラーが発生する場合は、メモリ温度が原因のエラーの可能性が高いです。
温度原因メモリエラーの実害と対策
PCゲームのプレイ中にメモリストレステスト的にメモリ温度が高温になることはないので、ゲーム用途でメモリOCを行う場合は、温度原因によるエラー発生はあまり気にする必要はありません。
ゲーム実況等でゲームの裏で配信ソフトが動いていても、NVEncなどGPU側ハードウェアエンコーダを使用しているなら同じく気にする必要はありません。
一方で、動画エンコードなどシステムメモリを大量に使用するクリエイティブタスクについてはメモリ温度がメモリストレステスト的に上昇するので実用的にも対策が必要です。
理屈としてはtREFiを調整することでメモリ温度原因のエラーは対策できるはずなのですが、同じ設定でもマザーボードによってエラー/ノーエラーが変わったりもするので地味に厄介です。tREFi以外に他の何が影響しているのか調べるのも大変なので筆者も諦めています。
メモリ電圧が1.300~1.400V程度の一般的な常用メモリOCであれば60~80mm径のファンで風を当ててやるだけでメモリ温度を50度前半かそれ以下に抑えることが可能です。
メモリ温度が60~70度を超えて発生する温度原因のメモリエラーについてはメモリ設定を調整するよりもスポットクーラーを増設して温度を下げる対策のほうが手っ取り早く楽なのでオススメです。
ただ8000MHz超のハイクロックかつ1.450V以上の高電圧の場合はファンを使っても十分に冷やすのが難しく、55度~60度に冷やしても温度原因でエラーが生じる可能性があります。その場合は、tREFiをAuto設定の設定値から引き下げる形で微調整をしてみてください。

Intel Z890環境でメモリOCを実践
Intelの最新メインストリーム向けCPUであるCore Ultra 200SシリーズCPUの最上位モデル Core Ultra 9 285KとZ890マザーボードの環境で「Crucial DDR5 Pro OC 6400MHz (型番:CP2K16G64C38U5B)」のメモリOCを実践しました。

ASUS ROG MAXIMUS Z890 HERO
ASUS ROG MAXIMUS Z890 HERO(BIOS:1302)の環境で、16GB×2枚組み 32GBで6400MHz/CL38のメモリOCが安定動作しました。MCLK/UCLK同期は自動設定のまま2:1同期です。
OCプロファイルを適用するだけで安定動作したので、特に補足説明はありません。


ASRock Z890 Nova WiFi
ASRock Z890 Nova WiFi(BIOS:2.20 AS03)の環境で、16GB×2枚組み 32GBで6400MHz/CL38のメモリOCが安定動作しました。MCLK/UCLK同期は自動設定のまま2:1同期です。
OCプロファイルを適用するだけで安定動作したので、特に補足説明はありません。


GIGABYTE Z890 AORUS MASTER
GIGABYTE Z890 AORUS MASTER(BIOS:F16c)の環境で、16GB×2枚組み 32GBで6400MHz, CL38のメモリOCが安定動作しました。MCLK/UCLK同期は自動設定のまま2:1同期です。
OCプロファイルを適用するだけで安定動作したので、特に補足説明はありません。

MSI MEG Z890 ACE
MSI MEG Z890 ACE(BIOS:1.A41)の環境でも、16GB×2枚組み 32GBで6400MHz/CL38のメモリOCが安定動作しました。MCLK/UCLK同期は自動設定のまま2:1同期です。
OCプロファイルを適用するだけで安定動作したので、特に補足説明はありません。


AMD X870E環境でメモリOCを実践
AMDの最新メインストリーム向けCPUであるRyzen 9000シリーズCPUのゲーミング性能最強モデル Ryzen 7 9800X3DとX870Eマザーボードの環境で「Crucial DDR5 Pro OC 6400MHz (型番:CP2K16G64C38U5B)」のメモリOCを実践しました。

AMD Ryzen 9000シリーズCPUでは前世代に引き続き、6000MHz/CL30などメモリ周波数が6000MHzで低レイテンシなOCメモリが性能のスイートスポットとされています。
7000~8000MHzのようなハイクロックになるとメモリ周波数とUCLK(メモリコントローラー周波数)を1:1同期させるのは無理ですが、Ryzen 9000シリーズではUCLKのOC耐性が若干伸びていてメモリ周波数 6400MHzなら1:1同期が可能です。(CPU個体差も影響しますが)
ただ、多くのAMD 800シリーズチップセット搭載マザーボードではメモリ周波数 6400MHzのメモリOCを適用すると、MCLK/UCLKが自動設定のままだと2:1同期になってしまいます。

今回は6400MHz/CL38のOCプロファイル適用に加えて、MCLK/UCLKの同期設定を1:1同期に指定し、またSOC電圧も1.280Vに昇圧しています。これ以外に別の設定を加える場合は適宜、補足します。

ASUS ROG CROSSHAIR X870E HERO
ASRock X870E Taichi
ASRock X870E Taichi(BIOS:3.16)の環境で、16GB×2枚組み 32GBで6400MHz/CL38のメモリOCが安定動作しました。MCLK/UCLK同期も1:1同期です。
OCプロファイル適用とSoC電圧の昇圧、MCLK/UCLKの1:1同期を設定するだけで安定動作したので、特に補足説明はありません。
また、一緒に収録されている6000MHz/CL36なら単純にのOCプロファイルを適用するだけで安定動作します。
GIGABYTE X870E AORUS MASTER
GIGABYTE X870E AORUS MASTER(BIOS:F4g)の環境で、16GB×2枚組み 32GBで6400MHz/CL38のメモリOCが安定動作しました。MCLK/UCLK同期も1:1同期です。
OCプロファイルとSoC電圧の昇圧、MCLK/UCLKの1:1同期を設定するだけで安定動作したので、特に補足説明はありません。
また、一緒に収録されている6000MHz/CL36なら単純にのOCプロファイルを適用するだけで安定動作します。
MSI MPG X870E CARBON WIFI
MSI MEG Z890 ACE(BIOS:1.A1A)の環境でも、16GB×2枚組み 32GBで6400MHz/CL38のメモリOCが安定動作しました。MCLK/UCLK同期も1:1同期です。
OCプロファイルとSoC電圧の昇圧、MCLK/UCLKの1:1同期を設定するだけで安定動作したので、特に補足説明はありません。
また、一緒に収録されている6000MHz/CL36なら単純にのOCプロファイルを適用するだけで安定動作します。
レビューまとめ
最後に「Crucial DDR5 Pro OC 6400MHz (型番:CP2K16G64C38U5B)」を検証してみた結果のまとめです。
- OCプロファイルによって6400MHz, CL38が正常動作
- Intel Core Ultra 2000S環境に対応
- AMD Ryzen 9000 CPU環境に対応
- 6000MHzの低速なOCプロファイルも収録
- 現行のRyzen 9000/7000環境に最適な設定
- ヒートシンク付きながら全高が約36mmのロープロファイル
- 大型空冷CPUクーラーとも互換性が高い
- マットな黒色塗装でシンプルなヒートシンク付き、黒色基板のDDR5メモリ
- JEDEC準拠の5600MHz/1.100V動作なSPDプロファイルを収録
- Intel XMP3.0とAMD EXPOのOCプロファイルを両方とも収録
- ヒートシンクがフルホワイトカラーのモデルもラインナップ
- –
- メモリヒートシンクは簡素
- メモリ電圧的には必要十分
「Crucial DDR5 Pro OC 6400MHz (型番:CP2K16G64C38U5B)」の検証ではメーカー動作確認済みのOCプロファイルを使用することによって、Intel Core Ultra 200SシリーズCPU&Z890マザーボード環境、AMD Ryzen 9000シリーズCPU&X870Eマザーボード環境においてメモリ周波数6400MHz, CL38のオーバークロックが手軽に行え、安定動作が確認できました。
メモリOCによる性能の伸びしろが大きいIntel製CPUはもちろん、3D V-Cache技術によって大容量キャッシュを搭載するAMD Ryzen X3Dシリーズも、低レイテンシなメモリOCはスタッター軽減などCPUボトルネックの解消に効きます。
Crucial DDR5 Pro Overclocking UDIMMシリーズは定格メモリとの差額も大きくなく、Micron純正メモリモジュールによる高い信頼性も兼ね備えているので、高コスパかつ手堅いOCメモリです。
10万円を超える高価なGPUの本領を発揮させる足回りとしてOCメモリを導入しようと思っている人はぜひ検討してみてください。
AMD Ryzen 9000/7000シリーズCPUで6400MHzのメモリOCを行い、MCLK/UCLKを1:1同期させるにはSoC電圧の昇圧が必要です。
SoC電圧の昇圧も1.280V程度ならCPUが破損することはないと思いますが、不安ならAMD Ryzen 9000/7000シリーズCPUで定番の6000MHz/CL36のOCプロファイルも使用でき、こちらはOCプロファイルの適用だけで安定動作が可能です。
現行のAMD製CPUに対しても性能とコストのバランスが良い高性能OCメモリとして使用でき、今後、1段階メモリOC耐性が上がった最新CPUが登場した時も使い回せる将来性もあります。
以上、「Crucial DDR5 Pro OC 6400MHz」のレビューでした。
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16GB×2 / 6400MHz / CL38
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