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リモコン操作によるビデオ入力や表示設定の変更、USB Type-Cを含めた4系統のビデオ入力に対応するWQHD解像度で144HzリフレッシュレートのIPS液晶ゲーミングモニタ「BenQ EX2780Q」をレビューしていきます。
WQHD/144Hz/IPS液晶というスペックは2019年下半期で高画質かつ高速なゲーミングモニタとして定番になりつつありますが、「BenQ EX2780Q」はUSB Type-C対応や操作リモコン付属と独自の魅力があり、PCゲーミングだけでなく、コンソールゲーム機/スマホ/テレビなどマルチメディアに最適な製品です。
製品公式ページ:https://www.benq.com/ja-jp/monitor/video-enjoyment/ex2780q.html
マニュアル:https://benqesupport.blob.core.windows.net/esupport/LCD%20Monitor/UserManual/EX2780Q/EX2780Q_UM_JA_190805095907.pdf
BenQ EX2780Q レビュー目次
1.BenQ EX2780Qの概要
2.BenQ EX2780Qの開封・付属品
3.BenQ EX2780Qの液晶モニタ本体
4.BenQ EX2780QのOSD操作・設定
5.BenQ EX2780Qの画質・応答速度・遅延について
6.BenQ EX2780Qの144Hzリフレッシュレートについて
7.BenQ EX2780QのFreeSync/G-Sync CPについて
8.BenQ EX2780QのHDR表示やHDCP対応について
9.BenQ EX2780Qのレビューまとめ
BenQ EX2780Qの概要
最初に、「BenQ EX2780Q」の概要について簡単に説明しておきます。「BenQ EX2780Q」は解像度が2560×1440のWQHD解像度で27インチの液晶モニタです。液晶パネルタイプはノングレア(非光沢)で発色や視野角に優れたIPS液晶パネルが採用され、95% DCI-P3の広色域を実現しています。コントラスト比は通常1,000:1、応答速度は5ms (GTG)、輝度は標準350nit(cd/m^2)です。
「BenQ EX2780Q」はHDR表示にも対応し、VESAがPCモニター向けに展開している輝度認証のVESA DisplayHDR 400を取得しています。
「BenQ EX2780Q」のリフレッシュレートはネイティブ144Hzです。144Hzの高リフレッシュレートによって応答速度が高速になるのでブレや残像がなくなってクッキリとした滑らかな表示です。60FPSでは識別の難しいゲーム内遠方で動くエネミーやオブジェクトの発見などが容易になるので、オンライン対戦FPSゲームなど競技性の高いPCゲームにおいて対戦相手よりも優位に立つことができます。
「BenQ EX2780Q」はAMD/NVIDIA製グラフィックボードやXbox One Xを組み合わせることで利用可能な可変リフレッシュレート同期機能「AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync)」にも対応しており、ティアリングがなくスタッタリングを抑えた快適で鮮明なゲーミング環境を実現できます。NVIDIA製GPUとの互換性を証明するG-Sync Compatible認証は2019年11月現在は未取得です。AMD FreeSyncに対応したビデオ出力は、HDMIとDisplayPortの両方で、対応フレームレートは40~144Hzと広範囲です。
「BenQ EX2780Q」に搭載されたビデオ入力はHDMI2.0*2、DisplayPort1.2*1、USB Type-C(DisplayPort Alternate Mode)の4系統です。USB Type-CはUSB Power Delivery 10Wの給電にも対応しています。全てのビデオ入力がWQHD解像度/144Hzリフレッシュレートに対応します。
「BenQ EX2780Q」は付属リモコンによる、ビデオ入力の変更、HDRのオン/オフ切り替え、音量調整、画面輝度の調整など各種設定に対応しているところも特徴です。モニタ本体にもスティック型OSD操作ボタン「5-Key Navigator」や音量調整ダイヤルを搭載しています。
「BenQ EX2780Q」の寸法はモニタスタンド込みで幅614mm x 高459mm x 奥行196mm(モニタ単体では約65mm)となっています。付属モニタスタンドは上下チルトのみに対応し、左右首振りスイーベル、昇降高さ調整、90度回転ピボットには非対応です。チルト角は上15度から下5度の範囲で調節可能です。本体重量はモニタスタンドありで5.9kg、モニタスタンドなしの液晶パネル本体のみは5.3kgとなります。VESA100x100マウントにも対応しておりモニタアームも使用可能です。
BenQ EX2780Qの開封・付属品
まずは「BenQ EX2780Q」を開封していきます。「BenQ EX2780Q」は白地にカラーで製品に関するプリントが施されたパッケージが採用されており、パッケージサイズは27インチモニタが入っている箱としては最小限で、女性でも持ち運びには苦労しないと思います。
パッケージを開くと液晶モニタ本体や付属品が収められた発泡スチロール製スペーサーが現れます。ケーブル等の付属品が入った面を上に向けて、発泡スチロール製スペーサーを取り出します。
「BenQ EX2780Q」の付属品を簡単にチェックしておくと、HDMIケーブル、USB Type-Cケーブル、ACケーブル、リモコン、マニュアル&ドライバCD類が付属します。
「BenQ EX2780Q」のビデオ入力は1基のDisplayPort1.2と2基のHDMI2.0と1基のUSB Type-Cの4つがありますが、付属するケーブルはHDMIケーブルとUSB Type-Cケーブルが1本ずつです。
各種ケーブルを個別に購入するのであれば、4K/120Hz対応のDisplayPort1.4ケーブルなら「サンワサプライ KC-DP14シリーズ」、HDMI2.0ケーブルなら「エレコム Premium HDMIケーブル スリムタイプ DH-HDP14ESBKシリーズ」がおすすめです。いずれも標準で付属するケーブルよりもケーブル径が細くて取り回しが良いので管理人も個人的に使用しており、おすすめのケーブルです。
エレコム PREMIUM HDMIケーブル スリムタイプ 1.0m
エレコム PREMIUM HDMIケーブル スリムタイプ 1.5m
エレコム PREMIUM HDMIケーブル スリムタイプ 2.0m
エレコム
「BenQ EX2780Q」はUSB Type-Cによるビデオ入力にも対応していますが、長さ2mのUSB Type-Cケーブル「エレコム USB Type-Cケーブル USB3.1(Gen1) 2.0m MPA-CC13A20NBK」で正常に表示できました。
「BenQ EX2780Q」に付属するモニタスタンドはフレームとフットプレートの2つの部品で構成されています。単純なラバー製の板ですがリモコンスタンドも付属します。
フットプレートをフレームに差し込んで底面のネジを締めるだけで簡単にモニタスタンドを組み立てられます。ネジにレバーが付いているのでドライバー不要で組み立てが可能です。
モニタスタンドを組み立てたら、「BenQ EX2780Q」のモニタ本体背面の溝に下の方向からモニタスタンドを差し込んでネジ止めすれば取り付け完了です。「BenQ EX2780Q」のモニタ本体のネジにはレバーが付いていないので組み立てにドライバーが必要です。
BenQ EX2780Qの液晶モニタ本体
続いて「BenQ EX2780Q」の液晶モニタ本体をチェックしていきます。「BenQ EX2780Q」の上と左右はフレームレス構造ですが、フレーム内パネル上には非表示領域があり、上左右の非表示領域の幅は8mm程度、フレームのある下は28mm程度です。下フレームの中央には鏡面プレートにはリモコンの受光部や、画面輝度など表示の自動調節に使用される照度・近接センサーが内蔵されています。
「BenQ EX2780Q」の背面に注目するとモニタ本体およびモニタスタンドは、シンプルな黒色プラスチック製で装飾性は少ないデザインです。
「BenQ EX2780Q」のモニタスタンドにはケーブルガイド機能があり、背面のプラスチック製カバーを上方向にずらして取り外すと、スタンド支柱内にケーブルをまとめて通し、裏に出すことができます。
「BenQ EX2780Q」のモニタ本体の厚さは最厚部で65mmほどと最近の液晶モニタとしては厚みが大きくなっています。モニタ本体重量は5.3kg程度です。
BenQ EX2780QにはtreVoloスピーカーと呼ばれる高音質な2.1ch内蔵スピーカーというハードウェアと、treVoloオーディオチームによって厳選のチューニングが施されたオーディオニーズ別5種類のサウンドモードというソフトウェアを組み合わせた「treVolo オーディオシステム」が搭載されています。
2W×2のステレオスピーカー(トゥイーター)は視聴するユーザーに向かって正面に配置されており、明瞭な中から高音域を実現します。包み込むような重低音によって臨場感を演出する5Wのウーファーはモニタ背面に分けて内蔵されています。
「BenQ EX2780Q」に搭載されたスピーカーには、スピーカーの反応を速くし、力強いサウンドと自然な音を実現するデュアルコイル構造とデュアルマグネット構造が採用され、マグネットにはネオジム磁石が使用されています。
一般に近年薄型化の傾向のあるモニタではコンパクトで低出力なスピーカーしか搭載されていませんが、「BenQ EX2780Q」では内蔵スピーカーの音質が重視され、長く表面積を広くとったアルミニウム合金製コーンが搭載されています。またウーファーのエンクロージャーは小型でも優れた低音を生み出すことが可能なスピーカーダクトを備えたバスレフ型構造(公式にはPorted Designと呼ばれる)が採用されています。アルミニウム合金製コーンとバスレフ型構造によって小さなスペースでも迫力ある重低音を響かせます。
もともとBenQ内でスピーカーを作成していたtreVoloオーディオチームの経験を活用して厳選のチューニングが施された、映画、ゲーム、台詞/ボーカル、ロック/パーティー、ポップ/ライブの5つのサウンドモード(イコライザープリセット)が選択できます。
映画モードは、特に映画を見るために設計されており、音声を調整してボーカルの質を高め、会話をクリアにし、低音を強化します。ゲームモードでは、音の定位と臨場感のある音声が強調されます。会話/ボーカルモードではクリアな音声品質を強調し、テレビ番組や言語学習に最適です。ロック/パーティーモードは音楽鑑賞向けで、低音と3Dオーディオ効果が強化されています。また、ポップ/ライブモードはリアルなライブ会場のような臨場感を演出するよう最適化されています。
モニタ本体背面のモニタスタンドの固定部左右には、下向きに各種I/OやAC端子が配置されています。
「BenQ EX2780Q」にはビデオ・オーディオ関連のI/Oポートとして背面左側に左から順に、2基のHDMI2.0ビデオ入力、1基のDisplayPort1.2ビデオ入力、1基のUSB Type-Cビデオ入力(DisplayPort Alternate Mode)、イヤホン・ヘッドホン用ステレオ出力3.5mmジャックが設置されています。
「BenQ EX2780Q」の付属モニタスタンドは上下チルトにしか対応しておらず、左右首振りスイーベル、昇降高さ調整、90度回転ピボットには非対応でモニタスタンドの機能としては乏しいというのが正直な感想です。
「BenQ EX2780Q」付属モニタスタンドの上下チルトの可動域は仕様通り下に5度、上に15度です。
BenQ EX2780Qは背面のプラスチック製カバーを取り外すとVESAマウントのネジ穴が現れます。VESA100x100規格のVESAマウントに対応しておりサードパーティ製のモニターアームを使用できます。モニタ単体の重量も5.3kgほどなのでモニターアームを問題なく利用可能です。
モニターアームについては管理人は「Lumen MA-GS102BK」、もしくは色違いでほぼ同機能な「サンワダイレクト 100-LA018」という製品をおすすめしています。モニターアームというとエルゴトロン製が一番の売れ筋ですが、クランプのネジが下に伸びているタイプのモニターアームは机に干渉して使えないという問題があり、MA-GS102BKはクランプを上側から六角レンチで締めるタイプでテーブル下の隙間が狭いデスクでも使用できるので管理人も使っています。
「Lumen MA-GS102BK」はモニタとアームを接続する部分がクイックリリースのブラケット式になっていてモニタアームからモニタ本体の着脱が非常に簡単です。ピボット機能もあるので設置後にモニタを縦・横で向きを切り替えることもできます。ただ関節の滑りに若干難があるので潤滑剤を塗布するのがおすすめです。
BenQ EX2780QのOSD操作・設定
「BenQ EX2780Q」のOSD機能についてチェックしていきます。
また「BenQ EX2780Q」のOSD操作はモニタ背面左側(正面から見て右側)に配置された操作スティックと2種類のボタンからも行えます。加えて正面から見て右側底面には音量調整ダイヤルも配置されています。
操作スティックは上下左右と押下の5つの操作が可能で、操作ボタン各種の応答も良好でした。操作スティックの中には応答が微妙な製品が少なくありませんが(特に押下)、「BenQ EX2780Q」は押下ボタンも含めて反応が良いのでかなり操作しやすく感じました。
ただしOSD操作中に誤って操作してしまうことも少なくないので、電源ボタンはOSD操作とは少し離れた場所に設置してもらいたいところです。
電源を入れた状態でOSD操作ボタンを押下すると、円形コントロールメニューが表示されます。リモコンのメニューボタンを押下した場合は直接、詳細設定メニューが表示されます。ビデオ入力の選択も同様のメニューが採用されており、操作スティックやリモコンの円形上下左右キーによって直感的に選択できます。
円形コントロールアイコンの上下2方向のショートカットキーに割り当てる設定は、OSD詳細設定メニューの「カスタムキー」から任意に変更することができ、各自で変更頻度の高いものに切り替えておくと便利です。各項目から3つの設定を任意に選択でき、ショートカットキーを使用すると順番に設定が切り替わります。
円形コントロールメニュー表示中にスティックボタンを左に倒すとモニタ右下にOSDメニューが表示されます。OSD表示領域は27インチ画面の9分の1ほどとやや狭く、文字も小さいので視認性はあまり良くないと感じるかもしれません。
「BenQ EX2780Q」のOSDメニューには大きく分けて、「入力(ビデオ入力設定)」「画像(輝度や高画質化機能の設定)」「カラー設定(カラーモード、HDRモード、色温度などの設定)」「オーディオ」「Eye Care(ブルーライトカットなど)」「カスタムキー」「システム」の7つの項目が用意されています。
「BenQ EX2780Q」では、「ブルーライト軽減」「Rec.709」「Color Weakness」「M-Book」「標準」「ゲーマー1」「ゲーマー2」「ゲーマー3」「ユーザーカラー」の9個のカラープリセットが用意されています。「ゲーマー1~3」や「ユーザーカラー」は各自の好みの画質設定を行えるモードです。
一般にオーバードライブと呼ばれる応答速度を調整する機能は、「BenQ EX2780Q」では「AMA」の名前で配置されています。オーバードライブ補正の強度をオフ/高速/プレミアムの3段階で設定ができて、標準設定は高速になっています。
黒の強弱を調節して暗がりの視認性を高める機能「Black eQualizer」も用意されており、補正強度はレベル0~20の21段階で設定が可能です。標準設定ではレベル0(機能OFFの状態)が設定されており、レベルを上げるほど明るく(白く)なります。なお「Black eQualizer」はカラーモードの標準など一部のプリセットではグレーアウトして選択できず、ゲーマー1~3などのプリセットを使用する必要があります。
低解像度の映像ソースを高画質化する「スーパー解像度」は0(オフ)~3の4段階で設定できます。
ディスプレイに内蔵されたセンサーによって環境に応じてディスプレイの輝度や色温度を自動的に調節する「ブライトネスインテリジェンスPlus(B.I.+)」についてもOSDからON/OFFやセンサーの設定が可能です。
目の疲労を抑えるブルーライトカット機能については用途に応じた5つのカラープリセットが用意されています。
BenQ EX2780Qの画質・応答速度・遅延について
BenQ EX2780Qの画質についてチェックしていきます。直接的な画質ではありませんがBenQ EX2780Qの液晶パネルは光沢のあるグレアではなくアンチグレアタイプなので暗転時に自分の顔などが映り込みません。
液晶パネルには大きく分けてIPS液晶パネルとVA液晶パネルとTN液晶パネルの3種類があり、各社個別の製品によって個体差はあるものの、この3つの液晶パネルの特性を簡単にまとめると次のテーブルのようになります。
「BenQ EX2780Q」に採用されているIPS液晶パネルはTN液晶パネルやVA液晶パネルと比べると色再現性や視野角など一般に画質に直結する性能が優れている反面、価格が高価になりがちな液晶パネルです。TN液晶パネルに比べて応答速度が遅めなので、60Hzオーバーのリフレッシュレートを実現しているIPS液晶パネル採用ゲーミングモニタは少ないため、輪をかけて高価です。とはいえ画質とリフレッシュレートを両立できるので、予算に糸目をつかないエンスーゲーマー勢に好まれています。
液晶パネルの簡易比較表 | |||
IPS | VA | TN | |
色再現性 | ◎ | 〇 | △ |
コントラスト | 〇 | ◎ | △ |
視野角 | 〇 | 〇 | △ |
応答速度 | 〇 | △ | ◎ |
価格 (高RR) |
△ (×) |
△ | 〇 |
液晶パネルの種類による性能の違いについてはこちらの記事を参照してみてください。
・ゲーミングモニタの選び方[4] IPS/VA/TN液晶パネルを比較解説
「BenQ EX2780Q」(画質設定は標準のまま)で、いくつかのカラーグラデーション画像を表示して確認してみたところ、発色に優れたIPS液晶パネルなので滑らかなグラデーションで綺麗に表示されました。
「BenQ EX2780Q」は144Hzの高速リフレッシュレートながら、IPS液晶パネルが採用されているので視野角も良好です。
次に「BenQ EX2780Q」の応答速度や残像についてチェックしていきます。
応答速度の確認には「UFO Test: Ghosting」を使用します。同テストではUFOが移動する背景カラーを選択できますが、今回の検証ではブラック/グレー/ホワイトの3色を選択しています。
背景カラーがブラックの場合は各液晶パネルにおいて応答速度は高速な数値を示すので、概ね理想的な応答を確認することになります。背景カラーがホワイトの場合の応答速度は、ドキュメントやウェブページでテキストをスクロールした時の文字の滲み度合いの参考になります。背景カラーがグレーの場合、中間色に移るまでの応答速度を比較することになるので、一般的なゲームプレイにおける物理的な残像の少なさの指標として参考になります。
なおゲーミングモニタを選ぶ、もしくはモニタの応答速度や残像を評価する上で重要な予備知識である『液晶モニタの応答速度とオーバードライブ機能』についてはこちらの記事で簡単に紹介しているので、よくわからないという人は先に確認してみてください。
・ゲーミングモニタの選び方[1] 応答速度とオーバードライブについて
「BenQ EX2780Q」のOSDメニュー上ではオーバードライブ機能は「AMA」の名前で配置されています。オーバードライブ補正の強度をオフ/高速/プレミアムの3段階で設定ができます。標準設定は高速になっているので、以降の検証においても上で解説したオーバードライブの補正がかかります。
まずは簡単にシャッタースピードを十分に速くして「UFO Test: Ghosting」の様子を写真撮影してみたところ、「BenQ EX2780Q」に採用されているIPS液晶パネルは傾向として応答速度が比較的遅いこともあって、最大リフレッシュレートの144Hzで動作させても2,3フレーム前の残像が残る感じになりました。
続いて「UFO Test: Ghosting」の様子を「SONY DSC-RX100M5」の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影し、「BenQ EX2780Q」のリフレッシュレートやオーバードライブ設定を変えてみたり、他のモニタを比較対象にしたりしながら各ケースの応答速度を比較してみます。
「BenQ EX2780Q」のリフレッシュレートを60Hzと144Hzに変えて「UFO Test: Ghosting」の様子を比較してみました。「BenQ EX2780Q」のリフレッシュレート60Hzではグレーバックでオーバーシュートが確認できます。「BenQ EX2780Q」の標準設定では144Hzで最も綺麗になるようにオーバードライブが調整されているようです。
またリフレッシュレートを上げるとそれに比例して応答速度も伸びてはいますが、リフレッシュレートの伸びに追いついていない様子で、144Hzでも2つ3つ前のフレームが見え残像感は残っています。
なお「BenQ EX2780Q」は144Hzリフレッシュレートにおいて、オーバードライブ設定の「AMA」を標準設定の高からプレミアムに変えてもオーバーシュートはほぼ発生しないので、144Hzリフレッシュレートで使用する時はAMAをプレミアムにするのがオススメです。ただし60Hzの時にプレミアムにすると大幅にオーバーシュートが発生するので注意してください。
「BenQ EX2780Q」と同じくWQHD解像度/144HzリフレッシュレートでIPS液晶パネルの「AORUS AD27QD」と、144Hz動作時の応答速度を比較してみました。
「BenQ EX2780Q」と比較すると、「AORUS AD27QD」は軽くオーバーシュート気味なので若干、応答速度が高速に見えますが、概ね同等の応答速度になっていると思います。
続いて「BenQ EX2780Q」と「AORUS AD27QD」に加えて、同じくハイリフレッシュレートなIPS液晶パネルを採用するゲーミングモニタとして、フルHD解像度で144Hzリフレッシュレートに対応する「Acer Nitro VG271(レビュー)」とウルトラワイドQHD解像度で120Hzリフレッシュレートに対応する「LG 34GK950G-B(レビュー)」を比較対象として「UFO Test: Ghosting」の様子を比較してみました。
「BenQ EX2780Q」は「AORUS AD27QD」と似たような性能であるのは上で比較した通りです。3万円程度と安価な「Acer Nitro VG271」よりは僅かながら高速ですが、目視ではほぼ大差ないかもしれません。一方で「LG 34GK950G-B」に比べるとその他の3つは残像を感じます。このようにハイリフレッシュレートなIPS液晶パネルを採用した製品では製品価格がパネルの応答速度に比例する傾向があります。
また「UFO Test: Ghosting」において下の写真のようにUFOが微かに表示された瞬間を始点に、その地点のUFOが完全に消えた時点を終点にして、その間隔のフレーム数を応答速度として算出し比較してみました。なおオーバードライブ機能によって発生するオーバーシュート/アンダーシュートによる逆像が発生してから消えるまでの時間は別に計算しています。
評価の目安として、”1000msをリフレッシュレートで割って2倍した数値”よりも測定値が小さければ、画面更新に応答速度が追いついています。60Hzの場合は33.3ms、120Hzの場合は16.6ms、144Hzの場合は13.9ms、240Hzの場合は8.3msを下回っていればOKです。
まずは背景カラーがブラックの時の「BenQ EX2780Q」やその他の比較対象モニタの応答速度の計測結果となります。背景カラーがブラックの場合は各液晶パネルにおいて応答速度は高速な数値を示すので、概ね理想的な応答を確認することになります。
続いて背景カラーがホワイトの時の「BenQ EX2780Q」やその他の比較対象モニタの応答速度の計測結果となります。背景カラーがホワイトの場合の応答速度は、ドキュメントやウェブページでテキストをスクロールした時の文字の滲み度合いの参考になります。
最後に背景カラーがグレーの時の「BenQ EX2780Q」やその他の比較対象モニタの応答速度の計測結果となります。背景カラーがグレーの場合、中間色に移るまでの応答速度を比較することになるので、一般的なゲームプレイにおける物理的な残像の少なさの指標として参考になります。
「BenQ EX2780Q」についてはブラック/ホワイトの背景カラーではAcer Predator X27やLG 34GK950G-Bとほぼ同等の結果が得られていましたが、背景カラーをグレーにすると144Hzリフレッシュレートでも応答速度が遅めになりました。やはり10万円を超える高価な製品と比べると応答速度は遅めです。
フルHD/144HzのASUS VG279QやAcer Nitro VG271と比較すると高速な応答速度になっており、同じく6万円程度のAORUS AD27QDに近い性能なので、やはり価格に比例する感じです。
最後に「BenQ EX2780Q」の表示遅延(内部遅延)について測定を行いました。
モニタにはGPUのビデオ出力が送られてきてから実際にモニタに表示されるまで遅延が存在し、この遅延が大きいと例えば、FPSゲームでゲームパッドのトリガーやマウスのクリックによる操作からワンテンポ遅れて、マズルフラッシュが表示される、といった現象が発生します。人間は当然目で見てから操作するので、格闘ゲームやFPSゲームなど1,2フレームを争うような競技性の高いゲームにおいてはモニタの表示遅延が可能な限り小さいことが望まれます。
モニタの表示遅延測定においてはモニタ以外の要因で表示遅延に差が出ると問題があるので、検証モニタへビデオ出力を行うPCはCore i9 9900KとGeForce RTX 2080 Tiを搭載した次のベンチ機で統一しています。
テストベンチ機の構成 | |
CPU | Intel Core i9 9900K(レビュー) Core/Cache:5.1/4.7GHz, 1.300V 殻割り&クマメタル化(レビュー) |
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36(レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z Black F4-4400C19D-16GTZKK DDR4 8GB*2=16GB (レビュー) 4000MHz, CL17-17-17-37-CR2 |
マザーボード |
ASUS WS Z390 PRO (レビュー) |
ビデオカード | ZOTAC RTX 2080Ti AMP Extreme Core (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB MZ-N6E1T0B/IT (レビュー) |
OS | Windows10 Home 64bit |
電源ユニット | Corsair HX1200i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
キーボード | HyperX Alloy FPS メカニカルゲーミングキーボード (レビュー) |
モニタの表示遅延を測定する具体的な方法としては、キー押下時にそのキーのLEDが点灯するキーボードを使用して、LEDの点灯から画面表示への反映までの間隔を遅延時間として測定します。画面表示の確認については簡単にメモ帳を使用しています。この様子を「SONY DSC-RX100M5」の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影し、遅延フレーム数を数えて遅延時間を算出します。同計測を各モニタ(と各リフレッシュレート)ごとに10回ずつ行って、その平均値を表示遅延とします。
「BenQ EX2780Q」やその他の比較モニタの表示遅延の測定結果は次のようになりました。
「BenQ EX2780Q」については、ZOWIE XL2546のようなガチの競技ゲーマー向け製品よりは遅延が若干大きいですが、その他のハイリフレッシュレートなIPS液晶ゲーミングモニタと同等な遅延となっており、一般的な体感はもちろんのこと、FPSゲームや格闘ゲームでも問題にはならない程度の表示遅延だと思います。
また上のグラフからはリフレッシュレートが上がると表示遅延が小さくなるという関係がわかります。
表示遅延が小さいメリットとしては、視認と操作の繰り返し応答が良くなることに加えて、例えば下の動画のように壁に隠れたターゲットが壁から出てきた時、画面に表示されるのが実際に速くなります。
BenQ EX2780Qの144Hzリフレッシュレートについて
「BenQ EX2780Q」の大きな特徴の1つである144Hzリフレッシュレートについてチェックしていきます。「BenQ EX2780Q」の特徴の1つである”144Hzリフレッシュレート”について、その意味自体は特に説明せずとも読者はご存知だと思いますが、一般的な60Hzリフレッシュレートの液晶モニタが1秒間に60回の画面更新を行うのに対して、144Hzリフレッシュレートであれば標準的な60Hzの2.4倍となる1秒間に144回の画面更新を行います。さらに最近では競技ゲーマー向けのTN液晶モニタですが240Hzの超高速リフレッシュレートなゲーミングモニタも販売されています。
1秒間に144回の画面更新を行う144Hzリフレッシュレートの物理的なメリットとしては、単純に秒間コマ数が増えるので映像がより滑らかになります。上の章で詳しく検証したようにリフレッシュレートが上がると応答速度も上がって細部がクッキリとしたシャープな映像に見えやすくなり、加えて画面更新間隔が短くなるので表示遅延が小さくなり、一般的な60Hz環境よりもスピーディーなプレイで他者を圧倒しやすくなります。
「BenQ EX2780Q」ではNVIDIA GeForce RTX20/GTX16シリーズやAMD Radeon VII/RX Vega/5XXシリーズなど最新グラフィックボードのDisplayPort1.2もしくはHDMI2.0のビデオ出力に接続することによって、モニタリフレッシュレートを144Hzなどに自由に設定できます。
モニタリフレッシュレートの設定は、NVIDIA製GPUの場合はNVIDIAコントロールパネルから、AMD製GPUの場合はWindowsのディスプレイ設定から行います。
「BenQ EX2780Q」に搭載されている2基のHDMIビデオ入力は両方ともver2.0なので、DisplayPortだけでなくHDMIもWQHD/144Hzに対応しています。
オンライン対戦FPSなど競技性の高いゲームにおいて高リフレッシュレートなモニタを使用した時の実用的なアドバンテージとして、ゲーム内視線を左右に振った時の視認性が上がるという例は直感的にもわかりやすいメリットですが、その他にもゲーム内遠方に存在して動いているエネミーやオブジェクトの視認性が上がるというメリットも存在します。
下の比較動画では4分割して映像を並べていますが、右下以外の3つは右下画面の緑枠部分を拡大するよう接写して、「SONY DSC-RX100M5」の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影したものになっています。リフレッシュレート別で左上は60Hz、右上は120Hz、左下は240Hzとなっていますが、赤枠で囲った建物の出入り口付近で左方向に移動する敵の動きはリフレッシュレートが上がるほど視認しやすくなるのがわかると思います。
NVIDIA公式からもハイリフレッシュレートなゲーミングモニタとハイフレームレートに対応可能な高性能グラフィックボードを使用するメリットについて紹介する「動画が公開されています。
なお「BenQ EX2780Q」でWQHD解像度/144FPSを狙うには、元から軽めのPCゲームや画質設定を下げた最新PCゲームであってもグラフィックボードのGPU性能がそれなりに要求されます。液晶モニタに「BenQ EX2780Q」を使用するのであれば2019年最新のミドルハイクラスGPUであるNVIDIA GeForce RTX 2070 SUPERやAMD Radeon RX 5700 XTがおすすめです。
・GeForce RTX 20XX/GTX 16XX SUPERシリーズのレビュー記事一覧へ
・Radeon RX 5700シリーズのレビュー記事一覧へ
BenQ EX2780QのFreeSync/G-Sync CPについて
続いて「BenQ EX2780Q」の大きな特徴の2つ目となる可変リフレッシュレート同期機能「AMD FreeSync / NVIDIA G-Sync Compatible(VESA Adaptive-Sync)」についてチェックしていきます。モニタの画面更新(リフレッシュ)に関する基本的な予備知識や、「AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync)」と「NVIDIA G-Sync Compatible」の関係についてはこちらの記事を参考にしてください。
・ゲーミングモニタの選び方[3] FreeSyncとG-Sync Compatibleについて
なお当サイトのレビューではNVIDIA環境について、G-Syncモジュールが搭載されたモニタにおける可変リフレッシュレート同期機能を単純にG-Syncと呼び、AMD FreeSync(VESA Adaptive-Sync)に対応したモニタにおける可変リフレッシュレート同期機能はG-Sync CompatibleもしくはAdaptive-Syncと呼びます。またドライバでそのモニタが正式にサポートされている場合はG-Sync Compatible認証取得済みと補足します。
「AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync) / NVIDIA G-Sync Compatible」には対応可能なフレームレート(リフレッシュレート)の上限と下限が製品ごとに設定されており、「BenQ EX2780Q」は40Hz~144Hzの範囲内で可変リフレッシュレート同期に対応しています。また「AMD FreeSync」に対応するビデオ入力はHDMIとDisplayPortの両方です。「NVIDIA G-Sync Compatible」に対応するビデオ入力は機能の仕様上、DisplayPortのみとなっています。
「AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync) / NVIDIA G-Sync Compatible」が正常に動作してリフレッシュレートが可変になると、「BenQ EX2780Q」のOSDメニューから確認できるリフレッシュレートがフレームレートに合わせて変動するようになるので、機能が正しく動作しているかはここを見て確認してください。
AMD FreeSyncの使い方
可変リフレッシュレート同期機能「AMD FreeSync」を有効化する手順について説明します。AMD製GPU搭載PCの場合はRadeon Settingsのディスプレイ設定からAMD FreeSyncを有効にします。以上でAMD FreeSync自体は有効化が完了します。
また上で紹介した参考記事中で解説しているように、AMD FreeSyncではテアリング解消とマウス遅延低減のどちらを優先するかで垂直同期の有無を各自で選択する必要があります。垂直同期は通常ゲーム内設定でON/OFFの切り替えが可能ですが、ドライバ側が上書きしてゲーム内からは切り替えられない場合があります。ゲーム内で設定して希望通りの動作にならない時はRadeon Settingsのゲームプロファイルもチェックしてください。
NVIDIA G-Sync Compatibleの使い方
可変リフレッシュレート同期機能「NVIDIA G-Sync Compatible」を有効化する手順について説明します。2019年1月15日以降の最新ドライバによってNVIDIA GeForce環境でもAdaptive-Syncが利用可能になっています。
417.71以降の最新ドライバをインストールして、DisplayPortビデオ出力にAdaptive-Sync対応モニタを接続すると、G-Sync対応モニタを接続した時と同様にAdaptive-Syncを有効化するための設定が、NVIDIAコントロールパネル上の「G-Syncの設定」に表示されます。
「G-Sync、G-Syncとの互換性を有効化(Enable G-Sync, G-Sync Compatible)」のチェックボックスをチェックして、下のモニタアイコンに使用するモニタの名前が表示・選択されていることを確認し、適用をクリックすればNVIDIA GeForce環境でAdaptive-Syncを有効化できます。
なお今回レビューする「BenQ EX2780Q」のようにG-Sync Compatible認証を取得していない一般のAMD FreeSync/VESA Adaptive-Sync対応モニタでも、互換性が検証されていないと注記が表示されますが、NVIDIA製GPU環境においてAdaptive-Syncを利用できます。
AMD FreeSync/NVIDIA G-Sync Compatibleの効果
可変リフレッシュレート同期機能「AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync) / NVIDIA G-Sync Compatible」の効果やメリットについて説明していきます。機能的にはほぼ同じなので以下まとめてFreeSyncと呼ぶことがあります。AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync) / NVIDIA G-Sync Compatibleの検証に際してはリプレイ機能があって同一シーンで検証がしやすいので「Project Cars 2」を使用しています。またフレームレートやテアリングの発生の様子を確認しやすいように、画面左上にはGPUフレームレートOSD、画面左端にはGPUフレームバッファで色の変わるカラーバーが表示されるようにしています。加えてモニタが対応していればモニタOSDのリフレッシュレート表示機能も使用します。
画面右上のフレームレートはGPUフレームバッファから算出されているので必ずしもリフレッシュレートとは一致しません。画面左端のカラーバーは連続するフレーム間、つまりn番目とn+1番目のフレームではそれぞれ異なる色になっているため、同時に複数色のカラーバーが表示されている画面はテアリングが発生していることを意味します。
まずは同期なし、垂直同期、FreeSync、FreeSync+垂直同期の違いを分かりやすく体感してもらうため、モニタリフレッシュレート60HzにおいてGPU側出力フレームレートが30FPS~60FPSの間で変動するようにして、「SONY DSC-RX100M5」の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影して、画面表示の様子を比較してみました。
同期なしでは盛大にテアリングが発生し、垂直同期ではスタッター(カクつき)が発生しているのがわかります。一方でFreeSyncと垂直同期の両方を有効にした場合はテアリングもスタッターも発生しません。ただし例外として動画で50秒以降のフレームレートが40FPSを下回るとAMD FreeSyncの対応フレームレート外となるためスタッターが発生しています。またFreeSyncのみを有効にして垂直同期は無効の場合、同期なしと比べて圧倒的にテアリングが減っているのがわかります。ただし対応フレームレート内であっても稀にテアリングが発生し、対応フレームレート外では同期なし同様にテアリングが発生します。
続いて144Hzリフレッシュレートにおいて、GPU側出力フレームレートが100FPS前後で変動するようにして、先ほど同様に同期なし、垂直同期、FreeSync、FreeSync+垂直同期の様子を16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影して比較してみました。
FreeSync有効であれば同期なしのテアリングや垂直同期のスタッターに悩まされることなく滑らかで綺麗な映像が表示できています。FreeSyncの60Hz/50FPS前後と144Hz/100FPS前後を比較すると当然ですが後者の方がコマ割りが増えるので16倍速スローモーションでもスムーズに見えます。
FreeSyncのみを有効した時に映像フレームレートが対応フレームレート範囲外になるとテアリングが発生しますが、リフレッシュレートを上回ってしまう場合については、Radeon SettingsのフレームターゲットコントロールやRivaTunerのフレームレートリミットを使用することでテアリングの発生を抑制することができます。
なおNVIDIA GeForce環境でAdaptive-Syncを利用する場合も、フレームレートがリフレッシュレートを超過するとテアリングが発生するので、テアリングを完全になくすには垂直同期を有効化する必要があります。もしくは垂直同期無効においてテアリングを最小限に抑制するのであれば、RivaTunerやNvidia Profile Inspectorを使用してゲーム内フレームレートがモニタリフレッシュレートを上回らないように設定してください。
下の比較はいずれもFreeSyncが有効になっているのでスタッターもなく滑らかですが、単純にFreeSyncだけを有効にすると対応フレームレートの上限となるリフレッシュレートを超えた時にテアリングが発生します。
リフレッシュレートが144Hz(フレームレートの上限が144FPS)の場合は120FPS~140FPSが上限になるようにフレームレートに制限をかければ、マウス操作を低遅延しつつ、テアリングの発生も最小限に抑えて快適なゲームプレイが可能です。
またPUBGやCS:GOのようなオンライン対戦FPSや格闘ゲームなど1,2フレームを争う競技性の高いPCゲームでは、表示遅延(入力遅延)が発生する垂直同期は嫌われる傾向にありますが、144Hzや240Hzといったハイリフレッシュレートモニタにおいて、同期機能を無効化した場合に発生するテアリングがどのように影響するのか検証してみました。
テアリングはモニタ表示更新中のフレームバッファの更新で発生しますが、目で見た時の違和感はn番目とn+1番目のフレームの絵の差に影響されます。コマ割りが細かくなる高フレームレートではn番目とn+1番目の絵の違いは当然、低フレームレートの場合よりも小さくなります。そのため50FPSでは画面の分断のように知覚できたテアリングは、200FPSのような高フレームレートでは細かいノイズのような形で知覚されます。
100FPSを超える高フレームレートでは大きな分断に見えるテアリングの代わりに、細かいノイズのように感じるテアリングが増えてきます。『細かいノイズの発生程度であれば高リフレッシュレートモニタのテアリングは実用上は大した問題ではなく、可変リフレッシュレート同期機能は不要である』という意見がありますが、高リフレッシュレートモニタのアドバンテージとして先に解説した「ゲーム内遠方に存在して動いているエネミーやオブジェクトの視認性」と合わせて考えると、このノイズの有無は遠方の細かいエネミーやオブジェクトの発見に影響します。なので高リフレッシュレートモニタを使用するのであれば可変リフレッシュレート同期機能はあったほうがいい、というのが管理人の意見です。
BenQ EX2780QのHDR表示やHDCP対応について
最後に「BenQ EX2780Q」のHDR表示やHDCP対応について簡単にチェックします。「BenQ EX2780Q」のサブ入力として設置されている2基のHDMI端子は両方ともver2.0に対応しており、モニタの物理的な解像度がWQHDなので実際の表示自体は当然WQHDにダウンスケールされますが、PS4 ProやXbox One Xに接続した場合、4K/60FPS対応モニタとして認識され、4K解像度のビデオ出力が可能です。
PS4 ProやXbox One Xのビデオ出力設定を4K解像度にすると、最新のデジタル著作権保護HDCP2.2に対応し、Ultra HD Blu-rayなど著作権保護のあるコンテンツも再生が可能になります。またXbox One Xは1440pにも対応しているので、2560×1440のネイティブ解像度でビデオ出力が可能です。
Xbox One Xでは可変リフレッシュレート同期機能FreeSyncも使用できます。 なお「BenQ EX2780Q」はFreeSyncとHDRを併用できるモニタですが、AMD公式の対応モニタリストにも非対応と表記されている通り、FreeSync 2 HDRには非対応でした。
「BenQ EX2780Q」はHDR表示に対応しており、HDR表示のカラーモードとして「ゲームHDRi」「シネマHDRi」「Display HDR」の3つが用意されています。標準ではオフですが、HDR映像ソースが検出されると最後に選択されていたHDRモードへ自動的に切り替わります。
3つのHDRモードのうちDisplay HDRモードはVESA DisplayHDRが策定する規格に準拠したプリセット、ゲームHDRiモードとシネマHDRiモードはその名の通りゲームや映画と言った映像ソースに最適化されています。BenQ独自のHDRテクノロジーであるHDRiによって、画像のコントラストと鮮明度を向上させ、より詳細な表示を可能とし、暗い部分では隠れている部分を鮮明に表示し、明るい部分は露出オーバーならないよう調整しているとのことです。
HDRについて簡単に説明すると、HDR(ハイダイナミックレンジ)というのは、RGBの光の三原色の映像情報に加えて、輝度(明るさ)の情報が備わった映像ソースのことです。従来の表示機器や映像ソースでは10^3程度のダイナミックレンジしかありませんでしたが、HDRに対応することでダイナミックレンジが10^5程度と100倍近く拡張され、従来よりも細かい階調で明るさや暗さを表現できるようになり、「明るい場所は明るく、暗い場所は暗く」なるように画面の明るさを操作することで、白飛びや黒潰れをなくして高画質を実現しています。
HDRに関する説明は色々とあると思いますが、管理人は『明るい場所はより明るく、暗い場所はより暗く』と大雑把に理解しています。「明るい場所は明るく、暗い場所は暗く」するということは必ずしも”見えやすく”なるわけではありません。というか暗い場所は暗くなるので必然、暗い部分は見えにくくなります。逆に明るい場所が明るくなったら見えやすくなるかというと、再現可能な輝度の領域が増すので、ディスプレイによる描画は現実に近づきますが、太陽を覗き込んだ時のように特に明るい場所の周辺は光で潰れて(目の調光機能的な問題で)見えにくくなります。もちろん明暗が分かれることで境界線がクッキリして見えやすくなる場合もあります。
一部のゲーミングモニタに暗所を明るく(白く)して見えやすくする機能があるように、HDR表示は見やすさには直結しないので、見やすさという意味で画質が良くなるのかというと、その点はケースバイケースです。SDRダイナミックレンジの範囲内で平滑化されていた時に比べて、暗い部分が強調されることを考えると見えにくさの方が体感しやすい気がします。
HDRは原理的にはモニタから見える映像を”リアル”に近づける機能です。ただし実際のところはモニタ個別の色調設定などの都合で鮮やかになり過ぎたり色味が変わったりするので、「実際の視覚と同じ」という意味でリアルかというと疑問符が付くのですが。「明るい場所は明るく、暗い場所は暗く」なるので立体感は増して、平面表示の中に奥行を感じやすくなるという点ではリアルな表示に近づきます。個人的にはHDR表示の効果はSDRに比べて、鮮やかになって、立体感が増すと感じています。
4Kモニタの広告をフルHDモニタで見る以上に、SDRモニタでHDRについて体感的に理解することは困難です。なのでHDRについては店頭など実機で体験して気に入れば購入するくらいが正直なところおすすめです。HDRについては正直に言って”百聞は一見に如かず”な機能です。SDRモニタ上で調べるよりもHDR表示の実機を見て気に入るかどうかが全てな機能だと思います。
BenQ EX2780Qのレビューまとめ
最後に「BenQ EX2780Q」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- 画面サイズ27インチでゲーミングモニタとしては使いやすいサイズ
- 発色や視野角など画質に優れたIPS液晶パネル
- 液晶パネルは反射防止のアンチグレア
- ビデオ入力はDisplayPort1.2とHDMI2.0×2とUSB Type-Cの計4系統
- 4基全てのビデオ入力においてWQHD解像度で144Hzリフレッシュレートの高速動作
- 可変リフレッシュレート同期機能AMD FreeSync(VESA Adaptive-Sync)に対応
(DisplayPortとHDMIで40FPS~144FPSの範囲内で対応) - HDR表示に対応し、HDR輝度認証のVESA DisplayHDR 400を取得
- PS4やXboxの接続時は4K/60FPSの入力、HDCP2.2に対応
- OSD操作用の専用リモコンが付属
- 2.1チャンネルの高音質スピーカーを搭載
- モニタ本体重量5.3kgかつVESAマウント対応でモニターアームを使用可能
- 上記のハイスペックながら5.4万円程度でお手頃な価格
- モニタスタンドの組み立てにドライバーが必要
- 標準モニタスタンドの調整機能が乏しい
- 欲を言えば、OSDクロスヘア、MBRなどゲーマー向け機能も充実していて欲しかった。
「BenQ EX2780Q」は2560×1440のWQHD解像度、ネイティブ144Hzの高速リフレッシュレート、IPS液晶パネルというハイスペックな液晶パネルを採用したゲーミングモニタです。
同スペックの製品は3年ほど前が初出となっており、真新しさこそありませんが登場当時の最速グラフィックボードはGeForce GTX 1660相当のGeForce GTX 980で、WQHD/144Hzのフルスペックを発揮しようとするとマルチGPUが要求されたのが、2019年現在の最新GPUであればGeForce RTX 2070 SUPERやRadeon RX 5700 XTなどミドルハイクラスGPU1台で対応できるので、高解像度かつハイリフレッシュレートなゲーミングモニタとしてはちょうどいい製品です。
高色域・高視野角で発色に優れ高価なIPS液晶パネルながらネイティブ144Hzリフレッシュレートに対応しており、ハイフレームレートに対応したPCゲームであれば60FPSを大きく上回る滑らかな表示が可能です。応答速度も10万円を超える製品にこそ及びませんが、安価なIPS液晶パネル採用製品よりは確実に高速なので、6万円以下というミドルハイクラスGPUとの組み合わせに最適な価格帯となっています。
「BenQ EX2780Q」は可変リフレッシュレート同期機能「AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync)」に対応しています。FreeSync対応フレームレートとして40FPS~144FPSの幅広いフレームレートをカバーしており、60FPS前後しか維持できない最新の高画質な重いゲームから、100FPS以上を維持できる競技性の高い軽めなゲームまで、テアリングやスタッターのないクリアで滑らかな表示を実現します。 これまではAMD製GPUを搭載した環境でしか使用できない機能でしたが、19年1月からはNVIDIA製GPUでも可変リフレッシュレート同期機能Adaptive-Syncが利用できるようになったので間口もかなり広くなったと思います。
以上のような特徴は他社製品でも見られるものですが、「BenQ EX2780Q」を競合製品と差別化する特に重要な特徴は、「専用リモコンによるOSD操作」と「USB Type-Cを含めた4系統のビデオ入力」の2つだと思います。WQHD/144Hz/IPS液晶のゲーミングモニタは各社から発売されていてPCゲーミングという1点で考えると似たり寄ったりという評価になるのですが、「BenQ EX2780Q」はこの2つの特長によって、スマホ/モバイルPCとのUSB Type-Cによる接続や、PS4/Xboxなどコンソールゲーム機とのリモコン操作によるスムーズな切り替えにも対応しており、PCゲーミングだけでなくマルチメディアとの互換性を確保しています。
PCゲーミングだけに特化するのであれば同等のモニタスペックで、G-Syncモジュールを搭載している、OSDクロスヘアなどPCゲーミング機能が充実している等、その他の付加価値的な機能を備えた競合製品も候補に挙がるかもしれませんが、PCゲーミングだけでなく、スマホ/PS4/Xboxなどの多種多様なプラットフォームのゲームやモバイルPCやテレビチューナーとの接続といったマルチメディアな使い方を1台のモニタに集約させて完結させたいという人には「BenQ EX2780Q」はイチオシのゲーミングモニタです。
以上、「BenQ EX2780Q」のレビューでした。
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「BenQ EX2780Q」 レビュー
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) November 19, 2019
良い
✅WQHD/144HzのIPS液晶モニタ
✅HDRやFreeSyncに対応
✅USB Type-Cを含めた4基のビデオ入力
✅OSD操作用の専用リモコンが付属
✅2.1チャンネルの高音質スピーカーを搭載
悪いor注意
⛔️スタンドの調整機能が乏しいhttps://t.co/xTVH9KZe5t
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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