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AMD第3世代Ryzen CPUから、海外の一部地域のみで販売されている6コア6スレッドのスタンダードユーザー向けモデル「AMD Ryzen 5 3500X(型番:100-1000000158BOX)」をレビューしていきます。
6コア6スレッドCPUの「AMD Ryzen 5 3600」が、マルチスレッディング対応6コア12スレッドの上位モデルRyzen 5 3600や、2019年現在メインストリーム向けミドル帯の価格で競合する6コア6スレッドCPUのCore i5 9400FやCore i5 9600Kと比較して、クリエイティブタスクやPCゲーミングでどれくらいの性能を発揮するのか徹底検証していきます。
冒頭で書いたように「AMD Ryzen 5 3500X」は海外の一部地域のみで販売されている製品となっており、国内では正式には発売されていません。ただ並行輸入品がPC IDEAというPCパーツショップの取り扱いにおいてAmazonマーケットプレイス上で販売されていて、管理人もここで購入しました。
2019年11月29日時点ではキャッシュレス5%還元で送料込み19,931円でした。 国内未発売の並行輸入品とはいえPC-IDEA取り扱い品は3年保証に対応してくれるようなので、Core i5 9400Fの競合としてはかなり強いと思います。
AMD Ryzen 5 3500X レビュー目次
1.AMD Ryzen 5 3500Xの外観・付属品・概要
2.AMD Ryzen 5 3500Xの検証機材・動作設定
3.AMD Ryzen 5 3500Xの動作クロック・消費電力・温度
・AMD Ryzen 5 3500XのOC耐性について
4.AMD Ryzen 5 3500Xの基礎ベンチマーク
5.AMD Ryzen 5 3500Xのクリエイティブ性能
・3Dレンダリング性能
・動画エンコード性能
・RAW現像性能
・PCゲーム/スマホアプリのビルド性能
6.AMD Ryzen 5 3500Xのゲーミング性能
・4K解像度/60FPSターゲット
・フルHD解像度/ハイフレームレート
・バトルロイヤル系PCゲーム/240FPSターゲット
7.CPUエンコーダとリアルタイム配信について
8.AMD Ryzen 5 3500Xのレビューまとめ
・温度・消費電力について
・クリエイティブ性能について
・ゲーム性能について
・総評 - Ryzen 5 3500XをCore i5 9400Fと比較すると
AMD Ryzen 5 3500Xの外観・付属品・概要
「AMD Ryzen 5 3500X」の外観や付属品について簡単にチェックしておきます。またこの章では「AMD Ryzen 5 3500X」の仕様等について簡単に触れておきたい概要もあれば紹介します。「AMD Ryzen 5 3500X」を含めて第3世代Ryzenは第1/2世代Ryzenと同じAM4ソケットに対応するCPUなので、第1世代から第3世代までCPUの形状には変化はありません。裏面のCPUソケット側はLGAタイプのCPUソケットを採用するIntel製CPUと違って剣山状の金属端子が生えています。
「AMD Ryzen 5 3500X」は仕様値TDPが65WのCPUですが、TDP65Wの冷却に対応したCPUクーラー「AMD Wraith Stealth Cooler」が標準で付属します。
「AMD Wraith Stealth Cooler」の放熱フィン部分は押し出し加工のアルミニウムで造形されています。中央に銅柱が埋め込まれているわけでもなく、安価なCPUクーラーそのものといった仕様です。サーマルグリスは最初から塗布されているので、こだわりがなければ別途グリスを用意する必要はありません。
AMD Ryzen CPUに付属するCPUクーラーは現在5種類がラインナップされており、上位モデルにはLEDイルミネーションが搭載されていますが、「AMD Ryzen 5 3500X」に付属する「AMD Wraith Stealth Cooler」はその中でも冷却性能的には最下位のコンパクトなモデルで、LEDイルミネーションも非搭載となります。
上位モデル「AMD Ryzen 5 3600X」に付属する「AMD Wraith Spire Cooler」と比較すると、基本的な仕様はほぼ同じですが、全高が50mm程度でロープロファイルな「AMD Wraith Stealth Cooler」に対して、TDP95Wに対応する「AMD Wraith Spire Cooler」は全高が70mm程度となっています。
AMD公式に発表されている基本スペックを確認すると、「AMD Ryzen 5 3500X」はこれまでRyzen CPUではラインナップされてこなかったマルチスレッディングが無効な6コア6スレッドCPUです。単コア最大ブーストクロックは4.1GHz、ベースクロックは3.6GHzです。
上位モデルで6コア12スレッドの「AMD Ryzen 5 3600」が北米希望小売価格199ドルに対して、「AMD Ryzen 5 3500X」は北米149ドル相当で販売されており、Core i5 9400Fの価格を強く意識した製品になっています。
AMD Ryzen 5 3500XとAMD Ryzen 5 3600に加えて、競合製品のIntel Core i5 9400FとIntel Core i5 9600Kのスペックを早見表にまとめて比較すると次のようになっています。
上位モデルの「AMD Ryzen 5 3600」はIntel製CPUと比較してマルチスレッディングに対応した6コア12スレッドである反面、Core i5 9400Fよりも若干割高な価格でしたが、「AMD Ryzen 5 3500X」は同じ6コア6スレッドになって価格面で競合する製品となっています。また前世代と比較して2倍に増えたとアピールされているキャッシュ容量にも目が留まります。
Ryzen 5 3500X スペック簡易比較 | ||||
Ryzen 5 3500X |
Ryzen 5 3600X | Core i5 9400F | Core i5 9600K |
|
コアスレッド | 6コア6スレッド | 6コア12スレッド | 6コア6スレッド | |
ベースクロック | 3.6GHz | 3.6GHz | 2.9GHz | 3.7GHz |
最大ブースト | 4.1GHz | 4.2GHz | 4.1GHz | 4.6GHz |
オーバークロック |
O | X | O |
|
L3キャッシュ | 32MB | 9MB | ||
TDP | 65W | 65W | 65W | 95W |
CPUクーラー | 付属 | X | ||
iGPU |
X | O |
||
おおよその国内価格 (北米希望小売価格) |
2.0万円 (149ドル) |
2.6万円 (199ドル) |
1.8万円 (157ドル) |
3.0万円 (262ドル) |
上位モデル「AMD Ryzen 5 3600」の詳細レビューも公開中です。
・「AMD Ryzen 5 3600」をレビュー
「AMD Ryzen 5 3600」と「Intel Core i5 9400F」の性能比較に特化して、簡単のために内容を一部省略した比較記事も公開しています。
・Ryzen 5 3600とCore i5 9400Fはどちらが買いか徹底比較!
第3世代Ryzen CPUについては同時に発売されるX570チップセット搭載マザーボードがネイティブサポートするほか、前世代のX470チップセットもしくはB450チップセットを搭載したマザーボードもBIOSアップデートによって対応します。第1世代Ryzenと同時に発売されたX370チップセットやB350チップセットを搭載したマザーボードについては一部がベータ版扱いで対応BIOSが配布されるとのことです。
チップセットの違いは基本的に拡張性だけに影響してCPU性能に差は生じませんが、X470/B450チップセット搭載マザーボードの市場在庫についてはBIOSアップデートされていないものが混ざっているので注意が必要です。
BIOSのアップデートにはアップデート時に記録されているBIOSに対応したCPUが必要になります。Amazonは無理ですが、国内のPCパーツショップ通販であれば、マザーボードの注文時に備考欄へ『第3世代Ryzen対応BIOSにアップデート希望』と記入すれば対応してもらえると思います。
管理人が確認した限りでは、2019年9月末にAmazonで購入した主要4社のB450マザーボード4機種はいずれも第3世代Ryzenに対応するBIOSへアップデートされたものに切り替わっており、「AMD Ryzen 3000 Desktop Ready」の表示がありました。
国内Amazonをはじめ、TSUKUMO、PCショップアーク、ドスパラ、PCワンズ、パソコン工房、ソフマップなど主要なPCパーツ取り扱い通販であれば、第3世代Ryzenに対応済みのB450マザーボードが送られてくると考えて良いと思います。
・主要4社B450マザーボードを徹底比較!第3世代Ryzenにイチオシはどれか?
Ryzen CPUは、『Infinity FabricというCPU内外のコンポーネントを相互接続するインターコネクトの動作周波数がメモリ周波数に同期する』という構造上、メモリ周波数がエンコードや3Dゲームを含めた総合的なパフォーマンスに大きく影響することが知られています。Ryzen CPUでハイパフォーマンスな環境を構築する上ではメモリ周波数3200MHzでの安定動作が1つの指標になっています。
その反面、第1世代Ryzenではメモリ相性問題が話題に上ることも多く、発売初期には定格の2666MHzも難しいケースがしばしば見受けられましたが、第2世代Ryzen以降はメモリ互換性も大幅に改善されています。Intel環境向けでメモリ周波数3200MHz~3600MHzのOCメモリに採用されることの多いHynix製メモリチップは、第1世代Ryzenのころはあまり相性が良くないと言われていましたが、第2世代Ryzenの時点ですでにXMP3200MHzに対応していればメモリ周波数3200MHzの安定動作も難しくないくらいに互換性が改善されていました。
さらに第2世代RyzenでAMD公式仕様としてサポートされるのは、メモリ周波数2933MHzではデュアルランクのDDR4メモリ2枚組まででしたが、第3世代Ryzenでは同メモリ構成においてメモリ周波数3200MHzまでが公式にサポートされています。
またOCプロファイルや手動設定によるメモリOCを行う場合、第3世代Ryzenではメモリ周波数3600MHz、メモリタイミングCL16が性能とコストのスイートスポットになるとAMD公式から発表されています。
第3世代RyzenでオススメなDDR4メモリやメモリの基礎知識等についてはこちらの記事で詳しく解説しているので気になる人は参照してみてください。
・第3世代Ryzen自作PCにオススメなDDR4メモリの容量や速度を解説
「AMD Ryzen 5 3600」のCPUダイとヒートスプレッダ間のTIMには第1/2世代Ryzenと同様にソルダリングが採用されています。Intel第9世代CPUのSTIMと違って、液体金属グリス「Thermal Grizzly Conductonaut」と同等に冷える良質なソルダリングであることが著名なOCerから報告されています。
その他にも第3世代Ryzenでは、CPUダイとIOダイを組み合わせる新設計、AVX256対応などのZen2アーキテクチャ採用による第2世代Ryzenとの違いがありますが、それらの構造的な特徴については当記事では割愛するので、気になる方はこちらの記事を参照してください。
・次世代を担う第3世代Ryzenの魅力を徹底解説
AMD Ryzen 5 3500Xの検証機材・動作設定
以下、「AMD Ryzen 5 3500X」の各種検証を行うベンチ機、および比較対象となる各CPUのベンチ機の詳細となります。AMD AM4(X570)環境 テストベンチ機の構成 | |
CPU | 【第3世代Ryzen】 AMD Ryzen 9 3950X (レビュー) AMD Ryzen 9 3900X (レビュー) AMD Ryzen 7 3800X (レビュー) AMD Ryzen 7 3700X (レビュー) AMD Ryzen 5 3600X (レビュー) AMD Ryzen 5 3600 (レビュー) AMD Ryzen 5 3500X (レビュー) AMD Ryzen 3 3300X (レビュー) 【第2世代Ryzen】 AMD Ryzen 7 2700X(レビュー) AMD Ryzen 7 2700(レビュー) AMD Ryzen 5 2600X(レビュー) |
マザーボード | MSI MEG X570 ACE (レビュー) |
CPUクーラー | Corsair H150i PRO RGB (レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM x3 (レビュー) |
CPUクーラー (温度制限検証時) |
AMD Wraith Prism (レビュー) |
メインメモリ (第3世代Ryzen) |
G.Skill Trident Z Neo F4-3600C14Q-32GTZN DDR4 8GB*4=32GB (レビュー) 3600MHz, CL16-16-16-36-CR1 |
メインメモリ (第2世代Ryzen) |
G.Skill FLARE X F4-3200C14D-16GFX DDR4 8GB*2=16GB (レビュー) 3200MHz, CL14-14-14-34-CR1 |
ビデオカード(共通) | ZOTAC RTX 2080Ti AMP Extreme Core (レビュー) |
システムストレージ(共通) | Samsung 860 PRO 256GB (レビュー) |
OS(共通) | Windows10 Home 64bit |
電源ユニット(共通) | Corsair HX1200i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
AMD AM4(X570)環境では検証機材マザーボードとして「MSI MEG X570 ACE」を使用しています。「MSI MEG X570 ACE」でCPU動作設定を標準設定のAutoとした場合、各CPUは仕様通りの定格動作で問題なく動作するので、測定に当たってソフトウェア的には特に個別の設定は行っていません。
ただしAMD Ryzen CPUではCPUクーラーの冷却性能が十分であれば電力制限を解除して自動的に動作クロックを引き上げる機能「XFR (Extended Frequency Range)」が効くため、電力制限の閾値となるPPTが仕様値のTDPよりも高く設定されています。例えばRyzen 9 3900XではTDP105Wを上回って仕様上の上限値となるPPT 142W以下で動作します。
Ryzen CPUの仕様値TDPと標準PPT | ||
仕様値TDP | 標準PPT | |
Ryzen 9 3950X | 105W | 142W |
Ryzen 9 3900X | 105W | 142W |
Ryzen 7 3800X | 105W | 142W |
Ryzen 7 3700X |
65W | 88W |
Ryzen 5 3600X | 95W | 128W |
Ryzen 5 3600 | 65W | 88W |
Ryzen 5 3500X | 65W | 88W |
Ryzen 7 2700X | 105W | 141W |
Ryzen 7 2700 | 65W | 88W |
Ryzen 5 2600X | 95W | 128W |
CPU Package Power(CPU消費電力)がTDPを上回るPPTの範囲内で制限されるという動作は、CPU Package PowerがそもそもTDPの範囲内に収まるPCゲーム性能には基本的に影響しないものの、クリエイティブタスク性能には大きく影響し、また消費電力の測定にも当然影響します。そこでPCゲーム性能の測定を除いて、第3世代Ryzenの中でTDPを超えるCPU消費電力になるものについては、参考値としてPPTを仕様値TDPに一致させたケースについても測定を行います。
・Ryzen CPUの検証でPPT=TDPを参考値として測定する理由
第3世代Ryzen検証環境のシステムメモリには、第3世代Ryzen&X570マザーボードのプラットフォームに最適化されたハイパフォーマンスOCメモリの最速モデル「G.Skill Trident Z Neo F4-3600C14Q-32GTZN」を使用しています。3600MHz/CL14の最速モデル、3200MHz/CL14や3600MHz/CL16といった定番スペックがラインナップされ、高級感のあるヒートシンクや8分割ARGB LEDを搭載してデザイン面でも優れる「G.Skill Trident Z Neo」シリーズは、第3世代Ryzenの自作PCで性能を追求するなら間違いのないオススメなOCメモリです。
・「G.Skill Trident Z Neo F4-3600C14Q-32GTZN」をレビュー
第3世代Ryzen関連の検証機材としてX570マザーボードの「MSI MEG X570 ACE」を使用しています。「MSI MEG X570 ACE」はRyzen 9シリーズも対応できる高耐久・低発熱な14フェーズVRM電源回路を搭載することに始まり、拡張ヒートパイプによるマザーボード全体のアクティブ冷却構造、グラフィックボードとの位置被りを避けるオフセットレイアウトなど非常に完成度の高い製品となっており、数あるX570マザーボードの中でもオススメの1枚です。
・「MSI MEG X570 ACE」をレビュー
ベンチ機のシステムストレージにはSamsung製MLCタイプ64層V-NANDのメモリチップを採用する2019年最速のプロフェッショナル向け2.5インチSATA SSD「Samsung SSD 860 PRO 256GB」を使用しています。Samsung SSD 860 PROシリーズは容量単価が高価ではあるものの、システムストレージに最適な256GBや512GBモデルは製品価格としては手を伸ばしやすい範囲に収まっており、Intel Core-XやAMD Ryzen TRのようなハイエンドデスクトップ環境はもちろん、メインストリーム向けでもハイパフォーマンスな環境を目指すのであれば、システムストレージ用に一押しのSSDです。
・「Samsung SSD 860 PRO 256GB」をレビュー
CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。Thermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスで適量が塗布されていれば、CPUクーラー固定時の圧着でヒートスプレッダ全体へ自然に伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
サーマルグリスの代用品として、数年スパンの長期使用においても性能低下が基本的になく再利用も可能、グリスが零れてマザーボードが汚れたり壊れる心配もないので、炭素繊維サーマルシート「Thermal Grizzly Carbonaut」もオススメです。
・「Thermal Grizzly Carbonaut」はRyzen 9 3900Xを冷やせるか!?
AMD Ryzen 5 3500Xの動作クロック・消費電力・温度
「AMD Ryzen 5 3500X」に関する検証のはじめに、「AMD Ryzen 5 3500X」の動作クロック、消費電力、温度など同CPUの基本的な動作についてチェックしていきます。「AMD Ryzen 5 3500X」は6コア61スレッドのCPUで、AMD公式の仕様ではベースクロック3.6GHz、単コア最大ブーストクロック4.1GHzとなっています。
HWiNFOから「AMD Ryzen 5 3500X」のコアクロックの挙動を確認したところ、確かに負荷の軽い場面では最大4.1GHz程度で動作するコアがありました。
「AMD Ryzen 5 3500X」をX570マザーボード「MSI MEG X570 ACE(BIOS:170)」と組み合わせてCPU動作をBIOS標準設定とし、CinebenchやAviult&x264エンコードを実行したところ、いずれのケースにおいても全6コアへ同時に大きな負荷がかかった時の動作クロックは平均3.95GHz程度でした。この時のCPU Package Powerは73W前後で推移しています。
「AMD Ryzen 5 3500X」のAMD公称仕様値としてはTDP65WのCPUですが、実際の内部設定としてはPPT88Wが許容されています。「AMD Ryzen 5 3500X」はCPUクーラーによるCPUの冷却が十分であれば(CPU温度が閾値95度以下であれば)、PPT88Wの制限下で動作しXFRによって仕様値ベースクロック3.6GHzよりも高い動作クロックへ引き上げられます。
続いてCPU消費電力の検証結果をチェックしていきますが、当サイトのCPUレビューでは主として”CPU温度への影響要因”という意味においてCPU消費電力を評価しているので、動画のエンコードによって長期間電力制限が効いている状態の平均的な消費電力をCPU消費電力として比較します。
個人的な意見としては短期間電力制限は短期間かつCPU温度によっても制御されるのでCPU温度への影響要因として比重は小さく、また瞬間ピーク電力はせいぜいがTDP+100W程度なので、マザーボードVRM電源の破損を心配するほどではなく、その程度の電力超過は電源ユニットで十分吸収できるので、評価対象としてあまり意味がないと思っています。
またCPU製品仕様のTDPについては、定義がIntel/AMDで厳密には異なり、各社の具体的な測定・算出方法も不明なので、CPU動作クロックを含めて総合的に判断する必要があるものの、基本的には長期間電力制限時の消費電力がTDP仕様値とほぼ一致、もしくはTDP仕様値を下回れば正常であると評価します。
当レビュー記事では簡単のため割愛しますが、CPUの消費電力に関する評価基準の補足として下記の記事も参考にしてください。
・2019年最新CPUの消費電力・発熱・TDP・温度について - 爆熱評価のウソほんと
CPU消費電力の測定には電源ユニット「Corsair HX1200i」のCorsair Linkによる電力ログ機能を用いてコンセントからの出力ではなく変換ロスを差し引いた入力電力をチェックしています。
また電力測定の際は上記の主電源ユニットに加えて、CPUへの電力供給を行うEPS端子を除いた、各種電源端子へ接続するために別の副電源ユニットを使用しています。そのため測定値にはEPS電源端子を経由して供給されるCPU消費電力以外の消費電力は含まれません。なお電源ユニットに対する実際の最大瞬間負荷は測定値より50~100W上回る場合があるので電源ユニットの電源容量選択の参考にする場合は注意してください。
CPUの消費電力や温度の測定を行う負荷テストについては、FF14ベンチマークの動画(再生時間6分40秒、4K解像度、60FPS、容量5.7GB)を変換ソースとして、Aviutl&x264を使って動画のエンコードを行います。動画エンコードの同時実行数については4~6コアは並列なし、8~14コアは2並列実行、16コア以上は3並列実行としています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTやPrimeなど専用負荷ソフトを使用しているレビューもありますが、管理人の私見としてはCPU負荷が非現実的なので、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースを想定した場合、ほぼ最大のCPU負荷となるx264による動画エンコードとストレステストに採用しています。
「AMD Ryzen 5 3500X」と比較対象の各CPUについて、上記負荷テスト中の”平均値を消費電力”、”最大値を瞬間的な最大電源負荷”と表記した場合、消費電力測定結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
「AMD Ryzen 5 3500X」はCPUクーラーによる冷却が十分な環境で運用する場合、XFRが効いて全コア4.00GHz程度で動作してTDP65Wの仕様値を上回り、CPU消費電力は77.5Wに達しました。PPT88Wが許容されていますが、その他の制限で先に頭打ちなります。手動設定でPPT:65Wに設定すると消費電力が71.5Wに下がります。
「AMD Ryzen 5 3500X」のPPT88Wにおける全コア同時クロックが4.0GHz前後に対して、PPT65Wに電力を制限すると全コア同時クロックが3.9GHz程度まで減少します。なおAMD製CPUでは同じ消費電力でもCPU温度によってコアクロックが変わり、「CPU Package Power = TDP」かつ「CPU温度 = 95度」になると全コア同時クロックがベースクロックに漸近します。
「AMD Ryzen 5 3500X」を含めRyzen CPU各種のCPU温度については、”冷えた方が性能が上がる”という点を除けば、運用上、ユーザーが気にする必要はありません。特に第3世代Ryzenは上から下まで全てのCPUに仕様値TDPに対応可能なCPUクーラーが付属しているので。
第3世代Ryzenを含めRyzen CPUでは、数百個のセンサーによってモニタリングしたデータをRyzen独自のインターコネクタ「Infinity Fabric」を介してフィードバックし、「Pure Power」や「Precision Boost」でパフォーマンス向上を図る、というループ制御をリアルタイムで行っています。
「Pure Power」はパフォーマンスを維持しつつ消費電力を最小限に抑える機能です。一方で「Precision Boost」はPure Powerと相互連携して動作しており、同じ電力内で最大のパフォーマンスを発揮できるように、25MHz単位でCPU動作クロックを上下させる機能になっています。
・「Precision Boost Overdrive」を徹底解説
このような電力制御によって(下のグラフはRyzen 5 3600の例)、CPU温度95度を閾値としてCPUクーラーの性能に応じたCPU消費電力に漸近し、その範囲内で最大のパフォーマンスを発揮してくれるのがRyzen CPUです。CPUクーラーをアップグレードした分だけパフォーマンスは伸びますが、付属CPUクーラーでもRyzen CPUの独自機能がCPU温度やCPU消費電力を適切に調整してくれて、「AMD Ryzen 5 3500X」においてベースクロック3.6GHz/TDP65Wの動作は保証されるはずです。
AMD Ryzen 5 3500XのOC耐性について
「AMD Ryzen 5 3500X」のOC耐性について簡単に紹介しておきます。「AMD Ryzen 5 3500X」はその他の第3世代Ryzen CPUと同じく倍率アンロックなCPUとなっており手動設定でオーバークロックが可能です。
コア倍率とコア電圧のみを指定する非常に簡単なOC設定ですが「コア倍率:44倍、コア電圧1.400V」に固定することによって、「AMD Ryzen 5 3500X」を全コア4.4GHzにオーバークロックして、安定動作が確認できました。「AMD Ryzen 5 3500X」は定格動作において、単コア最大4.1GHz、全コア4.0GHz程度で動作するので、手動OCによってシングルスレッド性能とマルチスレッド性能の両方を高速化でき、全コア4.4GHzの場合は定格動作から10%程度の高速化が期待できます。
上位モデルではコア電圧を1.400Vに昇圧すると消費電力が飛躍的に大きくなって冷やすことが困難になりますが、6コア6スレッドの「AMD Ryzen 5 3500X」なら、全コア4.4GHz/コア電圧1.400VでもCPU消費電力は80~90W程度なので十分に運用可能な範囲に収まります。
AMD Ryzen 5 3500Xの基礎ベンチマーク
AMD Ryzen 5 3500Xの基本的なCPU性能を専用ベンチマークソフトで検証しました。この章ではPCMark 8とPCMark 10という総合ベンチマークソフトを使用していますが、デスクトップ向けの高性能CPUの性能比較ベンチマークとしては頭打ちな傾向があります。レビュー項目の1つとして参考までにスコア比較していますが、実用的なCPU性能については後半の個別性能比較を参考にしてください。
また同ベンチマークはシングルスレッド性能(動作クロックの高さ)が重要になる傾向も強く、近年のCPUを見ると、Intel第8/9世代Coreに比べて第2世代以前のAMD Ryzen CPUでは低めのスコアが出ていましたが、AMD第3世代RyzenはIntel第8/9世代Coreとそん色ないパフォーマンスを発揮できるようになっています。
まずは「PCMark 8 Creative Test (Run Accelerated)」のベンチマーク結果をチェックしていきます。「PCMark 8」は動画再生能力、DirectX9のグラフィック性能、Webブラウジング、ビデオチャットなど一般ユースにおけるPCの総合的な性能を測定するためのベンチマークソフトです。
「AMD Ryzen 5 3500X」を含めた各CPU環境のPCMark 8ベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
「PCMark 10 Extended」のベンチマーク結果をチェックしていきます。「PCMark 10」はPCMark 8と同様にPCの総合的な性能を測定するためのベンチマークソフトですが、DirectX11に対応するなどPCMark 8よりも最近のPCの性能測定に最適化されています。
「AMD Ryzen 5 3500X」を含めた各CPU環境について、PCMark 10ベンチマークの総合スコアを比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
「PCMark 10 Extended」にはPCの基本性能を測る「Essentials」、ビジネスアプリケーション性能を測る「Productivity」、クリエイティブ性能を測る Digital Content Creation」、ゲーム性能を測る「Gaming」の大きく分けて4つのテストグループがあるので、個別にベンチマークスコアを比較してみました。
PCの基本性能を測る「Essentials」は、アプリケーションの起動に要する時間を測る「App Start-up」、 ウェブブラウジングの性能を測る「Web Browsing」、1対1または多対多のビデオ会議をシミュレートする「Video Conferencing」の3つのワークロードで構成されています。
モバイル版Core i7 1065G7を搭載するSurface Pro 7との比較でわかりますが、一般的なPC利用において大半のデスクトップ向けCPUは十分な性能を備えています。
「Essentials」について「AMD Ryzen 5 3500X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
ビジネスアプリケーション性能を測る「Productivity」は、ワープロソフト(マイクロソフトWordなど)の処理性能をシミュレートする「Writing」、表計算ソフト(マイクロソフトExcelなど)の処理性能をシミュレートする「Spreadsheets」の2つのワークロードで構成されています。
モバイル版Core i7 1065G7を搭載するSurface Pro 7との比較でわかりますが、一般的なオフィスワークにおいて大半のデスクトップ向けCPUは十分な性能を備えています。
「Productivity」について「AMD Ryzen 5 3500X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
クリエイティブ性能を測る「Digital Content Creation」は、写真に対するフィルタリング処理の性能をシミュレートする「Photo Editing」、動画編集の性能をシミュレートするワークロード「Video Editing」、レイトレーシングによる3Dグラフィクス制作(3Dレンダリング)をシミュレーションする「Rendering and Visualization」の3つのワークロードで構成されています。
「Digital Content Creation」について「AMD Ryzen 5 3500X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
ゲーム性能を測る「Gaming」は、グラフィックボードの性能測定で幅広く活用されているベンチマークソフト「3DMark」に収録された「Fire Strike」と同じベンチマークテストを実行するワークロードです。
「Gaming」について「AMD Ryzen 5 3500X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
AMD Ryzen 5 3500Xのクリエイティブ性能
AMD Ryzen 5 3500Xについて3Dレンダリング、動画エンコード、RAW現像、PCゲーム/スマホアプリのビルドなどクリエイティブ作業に関する性能を各種ベンチマークソフトや実際のアプリケーションで検証しました。AMD Ryzen 5 3500Xの3Dレンダリング性能
CPUのマルチスレッド性能を比較するベンチマークソフトとして国内外で最も知られている「Cinebench R15」をはじめとして、Cinebenchの2019年最新バージョン「Cinebench R20」、オープンソース3DCGソフト「Blender」の公式ベンチマークソフト、3Dレンダラー「Corona Renderer」の公式ベンチマークソフト、3Dレンダラー「V-Ray」の公式ベンチマークソフトの4種類を使用して、CPUの3Dレンダリング性能についてベンチマーク測定を行いました。Cinebench R15は3Dレンダリング性能を測定するベンチマークソフトになっており、マルチスレッド性能を測定するテストとシングルスレッド性能を測定するテストの2種類を実行しています。また2019年最新バージョンのCinebench R20についてはマルチスレッド性能を測定するテストのみを実行しました。
Cinebench R15 マルチスレッド性能テストについて「AMD Ryzen 5 3500X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Cinebench R15 シングルスレッド性能テストについて「AMD Ryzen 5 3500X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Cinebench R20 マルチスレッド性能テストについて「AMD Ryzen 5 3500X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
3DCGソフト「Blender」の公式ベンチマークソフトについて「AMD Ryzen 5 3500X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
「Blender」の公式ベンチマークソフトのレンダリング時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i5 7600Kを基準にして(全CPU比較データではCore i5 9400Fが基準)、「AMD Ryzen 5 3500X」を含めた各種CPUのレンダリング速度を性能比としてグラフ化しました。 【全CPU比較データ】
3Dレンダラー「Corona Renderer」の公式ベンチマークソフトについて「AMD Ryzen 5 3500X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
3Dレンダラー「Corona Renderer」の公式ベンチマークソフトのレンダリング時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i5 7600Kを基準にして(全CPU比較データではCore i5 9400Fが基準)、「AMD Ryzen 5 3500X」を含めた各種CPUのレンダリング速度を性能比としてグラフ化しました。 【全CPU比較データ】
3Dレンダラー「V-Ray」の公式ベンチマークソフトについて「AMD Ryzen 5 3500X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
3Dレンダラー「V-Ray」の公式ベンチマークソフトのレンダリング時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i5 7600Kを基準にして(全CPU比較データではCore i5 9400Fが基準)、「AMD Ryzen 5 3500X」を含めた各種CPUのレンダリング速度を性能比としてグラフ化しました。 【全CPU比較データ】
AMD Ryzen 5 3500Xの動画エンコード性能
続いて無料で利用できる動画編集ソフトとして国内外で多数のユーザーがいる「Aviutl」と、商用動画編集ソフト「TMPGEnc Video Mastering Works 7」と「Adobe Premiere Pro(Media Encoder)」を使用して、「AMD Ryzen 5 3500X」を含めた各種CPUの動画エンコード性能を比較していきます。AviutlとTMPGEnc Video Mastering Works 7はいずれも、現在主流なH.264 (MPEG-4 AVC) ビデオストリームへエンコードを行う「x264」エンコーダ、そしてH.264より高圧縮・高画質で次世代規格として期待されているH.265(HEVC) ビデオストリームへエンコードを行う「x265」エンコーダが使用できるので、CPUをリソースとして各エンコーダで共通の動画ファイルのエンコードを行いました。
エンコードを行う動画ファイルについては、Tom Clancy's Ghost Recon Wildlandsのゲーム内ベンチマーク(60秒ほど)をNVIDIA ShadowPlayで録画したものを使用しています。1920×1080/60FPS/50Mbpsと3840×2160/60FPS/120Mbpsの2種類の動画ファイルを作成し、「1920×1080 to 1920×1080」、「3840×2160 to 1920×1080」、「3840×2160 to 3840×2160」の3種類のエンコードを行っています。
Aviutlのx264/x265のエンコード設定は次のスクリーンショットのようになっています。TMPGEnc Video Mastering Works 7については固定ビットレートで1920×1080へエンコードする場合は25Mbps、3840×2160へエンコードする場合は60Mbpsに設定しています。
なおエンコーダと解像度設定が同じであればaviutlとTMPGEncのCPU別エンコード速度の傾向は概ね一致するので、aviutlのケースを抜粋してグラフを掲載します。厳密にはソフトウェアによって若干CPUメーカー別で得意不得意もあるので、aviutlとTMPGEncの全CPU比較データはリンクから各自で参照してください。x2/x3/x4のバーについては同じエンコードを添え字の数だけ並列実行した時の合計変換フレームレートを示しています。
x264エンコーダによって1920×1080解像度の動画をH.264 (MPEG-4 AVC)の1920×1080解像度へエンコードした時のエンコード速度について「AMD Ryzen 5 3500X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)】
x264エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.264 (MPEG-4 AVC)の1920×1080解像度へエンコードした時のエンコード速度について「AMD Ryzen 5 3500X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)】
x264エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.264 (MPEG-4 AVC)の3840×2160解像度へエンコードした時のエンコード速度について「AMD Ryzen 5 3500X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)】
x265エンコーダによって1920×1080解像度の動画をH.265(HEVC)の1920×1080解像度へエンコードした時のエンコード速度について「AMD Ryzen 5 3500X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)】
x265エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.265(HEVC)の1920×1080解像度へエンコードした時のエンコード速度について「AMD Ryzen 5 3500X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)】
x265エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.265(HEVC)の3840×2160解像度へエンコードした時のエンコード速度について「AMD Ryzen 5 3500X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)】
加えてAdobe Premiere Pro(Media Encoder)による動画エンコードについても、「AMD Ryzen 5 3500X」を含めた各種CPUの動画エンコード性能を比較しました。
Adobe Premiere Proのエンコード設定はCPUリソースのx264エンコードで、1920×1080へエンコードする場合は25Mbps、3840×2160へエンコードする場合は60Mbpsの固定ビットレートです。Media Encoderでは1つのプロジェクトを複数の設定で同時にエンコードできますが、複数のプロジェクトを同時にエンコードすることができないので単一エンコードのみを比較しています。
Adobe Premiere Proによる動画エンコードについてはAMD Ryzen CPUは苦手である評価されていることが多いですが、2019年現在では最適化も進んでおり、コアスレッド数とコアクロックに比例した性能が発揮できるようになっています。
【Adobe Premiere Pro 全CPU比較データ:1920to1920 / 3840to1920 / 3840to3840】
AMD Ryzen 5 3500XのRAW現像性能
続いてDxO PhotoLabによるRAW現像を行って「AMD Ryzen 5 3500X」を含めた各種CPUの性能を比較していきます。「SONY DSC-RX100M5」で撮影した5472×3648解像度のRAW画像ファイル 100枚に対して、DxO PhotoLabの画質プリセット「DxO 標準」をベースにノイズ除去を「PRIME」に変更したプリセットを適用し、RAW現像を行いました。なおDxO PhotoLabによるRAW現像は並列処理数を設定できますが、CPUコア数の半分もしくはそれより一つ少ないくらいの並列処理で最速になるようです。DxO PhotoLabによるRAW現像速度について「AMD Ryzen 5 3500X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
AMD Ryzen 5 3500XのPCゲーム/スマホアプリのビルド性能
最後に「Unreal Engine 4」や「Unity」などフリーウェアながら高画質なPCゲームやスマホゲームを製作可能なゲームエンジンを使用したゲーム制作におけるCPU性能の検証として、「Unreal Engine 4」で「AMD Ryzen 5 3500X」を含めた各種CPUの性能を比較していきます。検証にはEpic Games Storeで無料配布されているデモプロジェクト「Infiltrator」を使用したビルド時間の比較を行います。検証設定としてリアルタイム表示はオフ、ライティングの品質をプロダクションとしています。Unreal Engine 4のバージョンは4.22.3、Windows10のバージョンは1903で統一しています。
「Unreal Engine 4 - Infiltrator」のビルド時間について「AMD Ryzen 5 3500X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
「Unreal Engine 4 - Infiltrator」のビルド時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i5 7600Kを基準にして(全CPU比較データではCore i5 9400Fが基準)、「AMD Ryzen 5 3500X」を含めた各種CPUのビルド速度を性能比としてグラフ化しました。 【全CPU比較データ】
AMD Ryzen 5 3500Xのゲーミング性能
AMD Ryzen 5 3500XのPCゲームに関する性能を実ゲームを用いたベンチマーク測定で検証しました。なお章タイトルではゲーミング性能と表記してはいますが、Intel第7/8/9世代Core-SやAMD第2/3世代Ryzenなどここ数年で発売された4コア4スレッド以上のCPUであればフルHD~4K解像度の60FPSターゲットにおいてCPUボトルネックが発生するケースは多くありません。そのためCPUゲーム性能比較の具体的な内容は”高フレームレートにおけるCPUボトルネック比較”と表現するのが実状に即しています。
ただし最新の超高画質で重いゲームの場合、ゲームプレイの裏で次のシーンのロード作業が動くとロードが遅くなったりスタッター(カクツキ)が発生することがあるので、ゲーミングPCに搭載するCPUとして6コア6スレッド以上を個人的に推奨しています。
ゲームタイトルにもよりますがPCゲームにおけるCPU負荷は基本的にTDP内に収まることが多く、CPUコアクロックは全コア最大動作倍率に張り付きます。フレームレートに対するCPUボトルネックの緩和においては、この全コア最大動作倍率の高さが重要になり、クリエイティブタスクと違って電力制限は支配的ではなくなります。(PCゲームではIntel製CPUのPL1、AMD製CPUのPPTは影響をほとんど及ぼさなくなる)
Core i9 9900KやRyzen 7 3700XのようにTDPに対して全コア動作倍率の高いCPUでは、PCゲームにおいてもCPU使用率が高くなるハイフレームレートでCPU消費電力がTDPを超過するタイミングもありますが、TDP内に制限した場合と比較して大きな差は出ません。
そのためクリエイティブタスクなどここまでの検証において複数の電力制限で測定していたCPUも、PCゲームでは簡単のため電力制限が緩い方だけを使用して性能を測定します。
「AMD Ryzen 5 3500X」の場合、PCゲームにおいては全コアが4.0~4.1GHz前後にブーストした状態になります。
各CPUのゲーミング性能を測定するため統一検証機材として、2019年最新にして最速のGPUである「NVIDIA GeForce RTX 2080 Ti」を搭載したグラフィックボード「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme Core」を使用しています。
ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme Coreは、RTX 2080 TiのAIBパートナーの中でも屈指のOCチューニング力を誇るZOTACによって良質なGPUコアが選別され、リファレンスよりも200MHz以上も高いブーストクロック、さらにGDDR6メモリのメモリクロックまで引き上げるという、RTX 2080 Tiグラフィックボードで最速を狙えるファクトリーOCが施されています。加えて、ZOTACを高品質メーカーとして一躍ブランド力を押し上げたAMP Extremeシリーズの代名詞とも言える3スロットを占有する超弩級な大型GPUクーラーが採用され、静音性も非常に優れたモデルです。
・「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme」をレビュー
CPU別ゲーミング性能の比較には2019年最新PCゲームから、Assassin's Creed Odyssey、Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands、Shadow of the Tomb Raider、Middle-Earth: Shadow of Warの4種類を使用しています。60FPSの標準フレームレートをターゲットとした4K(3840×2160)解像度/高画質設定と、100FPS以上のハイフレームレートをターゲットとしたフルHD(1920×1080)解像度/中画質設定の2種類について、各ゲームで平均フレームレートと最小フレームレートを測定しました。
なおCPUボトルネック比較の性質上、平均FPSと最小FPSをある程度の精度で測定する必要があるため、検証ではほぼ同一シーンで測定が可能なゲーム内ベンチマークを使用しています。
AMD Ryzen 5 3500Xのゲーム性能 - 4K解像度/60FPSターゲット
まずは60FPSの標準フレームレートをターゲットとした4K(3840×2160)解像度/高画質設定のゲーミング性能について「AMD Ryzen 5 3500X」や比較対象CPUのベンチマーク結果をチェックしていきます。なお上述の通り60FPSターゲットでは基本的にCPUボトルネックは発生しないので、グラフの掲載順は性能(平均フレームレート)による昇順ではなく、当サイト既定のCPU分類順としています。
Assassin's Creed Odyssey(4K解像度、超高-画質プリセット)に関する「AMD Ryzen 5 3500X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands(4K解像度、非常に高い-画質プリセット)に関する「AMD Ryzen 5 3500X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Shadow of the Tomb Raider(4K解像度、DirectX12、最高-画質プリセット)に関する「AMD Ryzen 5 3500X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Middle-Earth: Shadow of War(4K解像度、ウルトラ-画質プリセット)に関する「AMD Ryzen 5 3500X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
AMD Ryzen 5 3500Xのゲーム性能 - フルHD解像度/ハイフレームレート
続いて100FPS以上のハイフレームレートをターゲットとしたフルHD(1920×1080)解像度/中画質設定のゲーミング性能について「AMD Ryzen 5 3500X」や比較対象CPUのベンチマーク結果をチェックしていきます。Assassin's Creed Odyssey(フルHD解像度、中-画質プリセット)に関する「AMD Ryzen 5 3500X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands(フルHD解像度、中-画質プリセット)に関する「AMD Ryzen 5 3500X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Shadow of the Tomb Raider(フルHD解像度、DirectX12、中-画質プリセット)に関する「AMD Ryzen 5 3500X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Middle-Earth: Shadow of War(フルHD解像度、中-画質プリセット)に関する「AMD Ryzen 5 3500X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
AMD Ryzen 5 3500Xのゲーム性能 - バトルロイヤル系PCゲーム
最後に近年流行りのオンライン対戦PCゲームの中でも競技ゲーマーにも愛用される240Hzの超ハイリフレッシュレートなゲーミングモニタのユーザーが多いであろうバトルロイヤル系PCゲームにおけるCPU別ゲーム性能をチェックしていきます。検証にはバトルロイヤルというジャンルにおける4大タイトルと言っても過言ではない、Apex Legends、Call of Duty: Black Ops 4、Fortnite、PlayerUnknown’s Battlegroundsを使用します。
Apex Legends(フルHD解像度、RTX 2080 Tiの既定プリセット)に関する「AMD Ryzen 5 3500X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。
一応、平均FPSの昇順で並べましたが、Apex Legendsは240FPSターゲットでもCPUボトルネックの影響が小さいタイトルとなっており、第1/2世代Ryzenが若干劣る程度で、第3世代Ryzenや第9世代Coreなど最新CPUは6コア6スレッド以上なら横並びです。
Call of Duty: Black Ops 4(フルHD解像度、RTX 2080 Tiの既定プリセット)に関する「AMD Ryzen 5 3500X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。
Fortnite(フルHD解像度、高-画質プリセット)に関する「AMD Ryzen 5 3500X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。10月のチャプター更新で整合性のある検証ができなくなったので、AMD Ryzen 5 3500Xについては測定データなしとしていますが、Fortniteはコアスレッド数に比例する傾向があるのでRyzen 5 3600やCore i5 9400Fの位置に食いこむ性能だと思います。
PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS(フルHD解像度、中-画質プリセット)に関する「AMD Ryzen 5 3500X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。
PUBGのベンチマーク測定に使用しているトレーニングモードは他プレイヤーの影響を受けやすく測定精度は他の検証に比べるとやや劣るのですが、今回検証した中ではCore i9 9900Kが頭1つ飛びぬけ、第3世代Ryzen各種やCore i7は測定誤差の範囲内でほぼ同性能といった具合でした。それ以下ではCore i5(6C6T)とRyzen 5 3500X、Core i3(4C4T)、第2世代Ryzenと順に性能がスケーリングしていきます。
CPUエンコーダとリアルタイム配信について
ゲーム実況やライブ配信と呼ばれるPCゲームのリアルタイム配信について、現在ではNVIDIA GeForce GTX 1660やAMD Radeon RX 580などミドルクラスGPUをエンコーダとすることでフルHD解像度で必要十分な画質とフレームレートが得られます。GPUエンコーダは動作自体も軽いので、これらGPUエンコーダの登場によってリアルタイム配信やプレイ動画の録画におけるCPUエンコーダの役目は終わったというのが一時期の私見でしたが、メインストリーム向けCPUのコアスレッド数の増加に伴い、x264 Mediumのような高画質プリセットのプレイ&録画が一般ユーザー的にも現実的になってきています。
Youtube LiveやTwitchなどリアルタイム配信(ライブストリーミング)サービスで、PS4/Xbox/Switch等のコンシューマーゲーム機やPCゲームのプレイ動画・ゲーム実況を快適に配信するのに必要なCPU性能については、現在、連載を続けている【快適配信】シリーズで詳細に解説しています
一口にゲーム実況と言っても、『1.ビデオキャプチャを使用してPCは録画配信作業のみを行う』、『2.PC1台で同時にゲームプレイと録画配信を行う』の2つのケースに大別され、どちらで使用するのかで要求されるCPU性能やCPUメーカー毎の得手不得手など事情が変わってくるので注意してください。
ざっくりと現状でCPUを使用したリアルタイム配信・ゲーム実況に要求されるCPU性能だけ述べておくと、『ビデオキャプチャを使用した配信の最低水準は6コア12スレッドのCPU』、『ゲームをプレイしながら配信の最低水準は8コア16スレッドのCPU』です。
・【快適配信】シリーズの記事一覧へ
画質と快適性を求めるなら録画・配信専用マシンもオススメ
ビデオキャプチャ業界の進歩も目覚ましく、2018年に発売された「AVerMedia Live Gamer Ultra」は4K/60FPS/HDRやフルHD/240FPSの映像ソースを無遅延なパススルー表示しつつ、フルHD/60FPSのプレイ動画として録画・配信できるUSB接続外付け機器型ビデオキャプチャとなっており、プレイ動画の録画・配信に関する多様なニーズを網羅し得る名機です。・4K/HDRや240FPSのパススルー対応「AVerMedia Live Gamer Ultra」をレビュー
前述の通りフルHD/60FPSの録画・配信であればGTX 1060程度の性能のGPUをエンコーダとすることで必要十分な画質が得られて動作も軽いので、録画配信のために高性能な反面、非常に高額なCPUに投資するよりも、多少コストがかかっても「AVerMedia Live Gamer Ultra」などのビデオキャプチャと組み合わせて録画・配信用サブ機を構築するほうが、録画・配信の手法としてはわかりやすくてハードルが低いと思います。
・AVerMedia製ビデオキャプチャの最新おすすめ機種を機能比較
「AVerMedia Live Gamer Ultra」などUSB接続外付け機器型ビデオキャプチャと組み合わせて録画・配信用サブ機を構築するのであれば、ASRock Deskmini GTX 1060ベアボーン採用BTO PCの「G-GEAR alpha」や「GALLERIA Mini 1060」がおすすめです。
PCサイズはコンパクトなのでサブ機としてもあまり余分にスペースを占有せず、GPUにはGTX 1060を搭載しておりフルHD/60FPSのGPUエンコードにも余裕で対応できて、CPUには最大で「G-GEAR alpha」ならCore i7 8700、「GALLERIA Mini 1060」ならCore i7 7700を選択可能、2基の2.5インチSATA SSDと3基のM.2 SSDを搭載可能なのでストレージ拡張性も十分です。ASRock Deskmini GTXシリーズについてはレビューも公開しているので参考にしてみてください。
・GTX 1060搭載で容積2.7LのスーパーコンパクトPC「GALLERIA Mini 1060」をレビュー
・G-GEAR alphaシリーズの販売ページへ
AMD Ryzen 5 3500Xのレビューまとめ
「AMD Ryzen 5 3500X(型番:100-1000000158BOX)」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ or 概要
- 6コア6スレッドCPU
- 定格でメモリ周波数3200MHzに対応
- PPT88W制限下(実動73W程度)において全コアが実動平均で4.0GHz程度
- TDP65Wとしては全コアが実動平均で3.9GHz程度
- 6コア6スレッドCPUながら149ドル程度と高コストパフォーマンス
- クリエイティブタスクにおいてCore i5 9400Fより高速、9600Kと同等
- 144FPS+のハイフレームレートなPCゲーミングにも対応可能
- 一部海外市場限定の製品で、国内では並行輸入品のみが販売されている
- PPT88W設定なので、CPU温度が95度以下に収まる環境ではTDP88WのCPU相当として動く
温度・消費電力について
AMD Ryzen 5 3500XはXFR等による自動OC機能によってCPUクーラーの性能が十分(CPU温度が閾値以下)であれば、公称仕様値のTDP65Wを上回るPPT88Wまでの動作に対応しているため、検証環境によってはCPU温度が高い、消費電力が大きいと評価されることもあります。しかしながら、CPU消費電力が65W前後となるPPT65Wに制限したとしても、影響の大きいクリエイティブタスクにおいて性能が5%弱下がる程度です。またデフォルト設定で95度の閾値温度に達した時点でCPUクーラーの対応可能なCPU消費電力へ漸近していき、その範囲内で最大のパフォーマンスが発揮できるように調停する「Precision Boost 2 / Pure Power 2」が機能として組み込まれているので、CPU温度的にも安心かつ手軽に運用できます。
付属CPUクーラーでも普通に運用する上ではもちろん問題ありませんが、折角ならPPT88Wまでのクロックアップを冷やしきることが可能なTDP90W程度に対応する120サイズのサイドフロー空冷CPUクーラーを組み合わせるのもオススメです。
クリエイティブ性能について
「AMD Ryzen 5 3500X」のクリエイティブ性能については、6コア6スレッドで全コア4.0GHz動作のCPUという額面通りのパフォーマンスです。競合Intelの第8/9世代Core i5と同じコアスレッド数ですが、第7世代以前のCore i5シリーズは4コア4スレッドCPUだったので、今回比較対象の1つになっているCore i5 7600Kよりも、3Dレンダリング、動画エンコード、RAW現像など各種クリエイティブタスクにおいて50%近い高速化を果たしています。
最新のIntel第9世代Core i5と比較すると、同価格帯のCore i5 9400Fを僅かながら上回り、上位モデルCore i5 9600Kと勝ったり負けたりなクリエイティブタスク性能を発揮します。(第3世代Ryzen の上位モデルが6コア12スレッドや8コア16スレッドなので、そこと比べると誤差程度に違いですが)
また第3世代RyzenはAVX2(AVX256)をネイティブ実行できるようになったので、第2世代以前は苦手とし、コアスレッド数に対してIntel製CPUよりも低速だったx265によるエンコードでも同コアスレッド数のIntel製CPUとそん色ない性能を発揮します。
価格も手の伸ばしやすい2万円台前半なので、第7世代以前のIntel製のCPUを使用しているユーザーにとってはCore i5 9400Fと並んで有力な買い替え候補だと思います。
上述の通り「AMD Ryzen 5 3500X」はCPUクーラーの冷却が十分であればPPT88Wの制限下で動作しますが、PPT65Wに制限したとしても全コア負荷時のコアクロックは4.0GHzから3.9GHzへ下がるだけ(いずれも冷却が十分な状態)なので性能差も5%以下に留まり、TDP65WのCPUとして考えても全く問題ない性能です。
ゲーム性能について
まずゲーム性能検証の冒頭でも述べたようにフルHD~4K解像度の60FPSターゲットであれば4コア4スレッド以上の最新CPUであればどれを使用しても大差はありません。ただし最新の超高画質で重いゲームの場合、ゲームプレイの裏で次のシーンのロード作業が動くとロードが遅くなったりスタッター(カクツキ)が発生することがあるので、ゲーミングPCに搭載するCPUとしては6コア6スレッド以上を個人的に推奨しています。また60FPSターゲットであってもAssassin's Creed OdysseyのようにCPUによって差が出るケースもあるので、PCゲームメーカーの最適化の優先順位まで考慮するとIntelのメインストリーム向け最新CPUのPCゲーミングにおける安定性にはやはり信頼がおけます。
GeForce RTX 2080 Tiを使用したハイフレームレート環境について、まず総評として、第2世代以前のRyzen CPUはIntel製CPUと比較してこの分野では超えられない壁があり明確に劣っていましたが、第3世代RyzenではIntel製CPUの各モデル個別に、各ゲームタイトル別に比較できるまでに性能が改善しています。Core i9 9900Kを除けば、両社製CPUの性能は伯仲しており、甲乙付け難いシーンが多いです。
細かく見ていくと、Assassin's Creed OdysseyやShadow of the Tomb Raiderのような高解像度60FPSを念頭に開発された最新高画質PCゲームと、Call of Duty: Black Ops 4やFortniteのような240FPSのハイフレームレートも考慮されているバトルロイヤル系PCゲームで若干傾向が変わってきます。
Assassin's Creed OdysseyやShadow of the Tomb Raiderのような高解像度60FPSを念頭に開発された最新高画質PCゲームをハイフレームレートでプレイする場合、最もCPUボトルネックの緩和が期待できるCPUはIntelのメインストリーム向けCPU最上位モデルのCore i9 9900KやCore i7 9700Kになり、上位モデルにおいては第3世代RyzenでもIntel製CPUと比較して若干劣る感じが見えます。
とはいえ「AMD Ryzen 5 3500X」は最新高画質PCゲームのハイフレームレートにおいて価格で競合するIntel Core i5(6C6T)シリーズとそん色ない性能を発揮しています。
Call of Duty: Black Ops 4やFortniteのように240FPSのハイフレームレートも考慮されているバトルロイヤル系PCゲームをプレイする場合、やはりCore i9 9900Kは頭一つ飛びぬけた性能を発揮していますが、PCゲーム自体がそもそもハイフレームレートを想定して設計されていることもあり、第2世代以前のRyzenでは最速のRyzen 7 2700XですらIntel製CPUに対して超えられない壁を感じたのに対して、第3世代Ryzenの上位モデル各種はバトルロイヤル系PCゲームにおいてCore i7やCore i5をそれぞれ打倒するシーンも確認でき、「AMD Ryzen 5 3500X」は同コアスレッド数のCore i5 9400FやCore i5 9600Kに並ぶ性能を発揮しています。
総評 - Ryzen 5 3500XをCore i5 9400Fと比較すると
PCゲームもできる(ただし60FPSターゲットなら)と注意書きの付いていた第2世代以前の面影はほぼなく、第3世代RyzenはハイフレームレートにおいてもIntel製CPUと伯仲するゲーミング性能を発揮できるようになっているので、CPUマルチスレッド性能にこだわらずGPUのアップグレードに予算を割くようなPCゲーミングのコスパ至上主義な層に「AMD Ryzen 5 3500X」は存在感を発揮します。国内において2019年末現在、最も売れ筋なCore i5 9400FとRyzen 5 3600は、GeForce GTX 1660~GeForce RTX 2060もしくはRadeon RX 5700などミドルクラスGPUと組み合わせるCPUの最有力候補です。しかし両者には1万円近い価格差があり、CPU価格差によってGPUを1ランクアップグレードできるため、PCゲームのプレイ専門層にはCore i5 9400Fのほうが魅力に映るというのがRyzen 5 3600の弱点でした。
それを踏まえると「AMD Ryzen 5 3500X」は純粋な価格で真っ向勝負できるという点において、”第3世代RyzenのCore i5 9400F”的なポジションの製品になっています。また上位モデルと比べると誤差程度の差ですが、クリエイティブタスクにおける性能はCore i5 9400Fより僅かに高くCore i5 9600Kと同等であり、さらにCore i5 9400Fと違って倍率アンロックなので全コア4.4GHzへの手動OCによって+10%程度の性能向上が見込めるところも含めると、”2万円以下で買えるCore i5 9600K”的なCPUとも評価できます。
自作PC向けはともかく、グラフィックボード等も含めたシステム全体の価格で予算が組まれることの多いBTO PC向けCPUとしては、Ryzen 5 3600比で1ランク上のGPUを狙えて、Core i5 9400Fと価格で真っ向勝負できる「AMD Ryzen 5 3500X」は国内でも販売解禁してもいいのではないかと思いました。
以上、「AMD Ryzen 5 3500X」のレビューでした。
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「AMD Ryzen 5 3500X」 レビュー
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) December 5, 2019
良い
✅6コア6スレッドのCPU
✅クリエイティブでCore i5 9400Fより高速、9600Kと同等
✅9400Fと真っ向勝負な価格
✅144FPS+なPCゲーミングにも対応
悪いor注意
⛔️国内で未発売https://t.co/O7V79UGujh
・B450チップセット搭載AM4マザーボードの販売ページ:
<Amazon><TSUKUMO><PCショップアーク>
<PCワンズ><ドスパラ><パソコン工房><ソフマップ>
検証機材として使用している以下のパーツもおすすめです。
Noctua NF-A12x25 PWM 120mmファン 定格2000RPM PWM対応
Noctua NF-A12x25 ULN 120mmファン 定格1200RPM PWM対応
Noctua
国内正規代理店Techaceの公式通販 で詳細情報を見る
<TSUKUMO:PWM/ULN><PCショップアーク>
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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4.4Ghz時のゲーミング性能比が気になるところです(´・ω・`)