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AMD第3世代Ryzen Threadripper CPUから32コア64スレッドモデル「AMD Ryzen Threadripper 3970X」をレビューしていきます。
32コア64スレッドの「AMD Ryzen Threadripper 3970X」が、同社メインストリーム向け最上位で16コア32スレッドのRyzen 9 3950Xや、前世代エンスージアスト向け32コア64スレッドのRyzen Threadripper 2990WX、Intel製エンスージアスト向け第10世代Core-X最上位18コア36スレッドのCore i9 10980XE、さらに半エンタープライズ向けで28コア56スレッドのXeon W-3175Xと比較して、クリエイティブタスクやPCゲーミングでどれくらいの性能を発揮するのか徹底検証していきます。
AMD Ryzen Threadripper 3970X レビュー目次
1.AMD Ryzen Threadripper 3970Xの外観・付属品・概要
2.AMD Ryzen Threadripper 3970Xの検証機材・動作設定
3.AMD Ryzen Threadripper 3970Xの動作クロック・消費電力・温度
4.AMD Ryzen Threadripper 3970Xの基礎ベンチマーク
5.AMD Ryzen Threadripper 3970Xのクリエイティブ性能
・3Dレンダリング性能
・動画エンコード性能
・RAW現像性能
・PCゲーム/スマホアプリのビルド性能
6.AMD Ryzen Threadripper 3970Xのゲーミング性能
・4K解像度/60FPSターゲット
・フルHD解像度/ハイフレームレート
7.CPUエンコーダとリアルタイム配信について
8.AMD Ryzen Threadripper 3970Xのレビューまとめ
・温度・消費電力について
・クリエイティブ性能について
・ゲーム性能について
・総評 - HEDT向けCPUとしては独壇場
AMD Ryzen Threadripper 3970Xの外観・付属品・概要
「AMD Ryzen Threadripper 3970X」の外観や付属品について簡単にチェックしておきます。またこの章では「AMD Ryzen Threadripper 3970X」の仕様等について簡単に触れておきたい概要もあれば紹介します。「AMD Ryzen Threadripper 3970X」はメインストリーム向けRyzen CPUの上位モデルであるRyzen 9 3950XやRyzen 9 3900Xと同じく豪華な化粧箱に梱包されています。
歴代製品パッケージを振り返ってみると、第1世代の特殊形状から第2世代の直方体で保管しやすくなり、第3世代ではさらにコンパクトになりました。保管がし易い、所有欲を満たすという2点において丁度いい塩梅だと思います。
化粧箱の蓋を取り外すと、専用のプラスチック製パッケージに収められたCPU本体が現れます。
プラスチック製パッケージと化粧箱の台座部分の間には付属品が収納されており、「AMD Ryzen Threadripper 3970X」では、トルクスドライバー、ロゴシール、Asetek OEM水冷クーラー互換リテンションブラケットが付属します。
「AMD Ryzen Threadripper 3970X」にはCPUをマザーボードソケットに固定する際に使用するトルクスドライバーが標準で付属していますが、付属品はあまり使い勝手が良くないので、Amazon等でも購入できる”T20”規格の星形(トルクス)ドライバーを各自で用意するのがオススメです。
「AMD Ryzen Threadripper 3970X」のCPU本体は茶色いスモークのかかったプラスチック製パッケージに安置されています。
なお第2世代Ryzen Threadripperで使用されていたCPU本体の収納ケースがサイズ的にコンパクトでちょうど良かったので、プラスチック製パッケージが変に大きくなったところは地味な不満点でした。
正面下にあるロゴシールの点線をカットすると蓋を上に取り外せるようになります。
後は台座の左側面にあるロックピンを外せば、CPU本体を引き出せます。
「AMD Ryzen Threadripper 3970X」など第3世代Ryzen Threadripperでは、第1/2世代のsTR4ソケットから、sTRX4ソケットにCPUソケットが変わりましたが、CPU本体については製品名など刻印が若干違うことを除けば外形やオレンジ色のプラスチック製ガイドなどほぼ同じ仕様です。
「AMD Ryzen Threadripper 3970X」をマザーボードに固定する手順については、従来のRyzen Threadripperと同じで変わりはありません。
第1/2世代Ryzen Threadripperと同じく、第3世代Ryzen Threadripperの「AMD Ryzen Threadripper 3970X」でもCPUソケット上のCPUの微妙な位置のズレで一部のメモリを正常に認識できない症状が発生することがあります。
下写真でIHSの右端にツメを引っかけて左に押し付けズレないように注意しながらネジ止めをすると比較的上の症状が発症し難いというのが管理人の経験則です。この症状は発症すると面倒なので、しっかりと自作PCを完成させる前にバラック状態で一度BIOSを起動してメモリが全て認識されているかチェックしておくのがオススメです。
AMD公式によって発表されている基本スペックを確認すると、「Ryzen Threadripper 3970X」は32コア64スレッドでベースクロック3.7GHz、単コア最大ブーストクロック4.5GHz、キャッシュ容量144MB、TDP280Wです。単コア最大ブーストクロックに注目すると、メインストリーム向けRyzenの上位モデルであるRyzen 9 3950Xは4.7GHz、Ryzen 9 3900Xは4.6GHzなので、使用されているCPUダイの選別は比較的緩めのようです。
24コア48スレッドの下位モデル「AMD Ryzen Threadripper 3960X」についても詳細レビューを公開しています。
・「AMD Ryzen Threadripper 3960X」をレビュー
AMD Ryzen Threadripper 3970Xに加えて、同社製メインストリーム向け最上位モデルAMD Ryzen 9 3950X、競合製品のIntel Xeon W-3175XとIntel Core i9 10980XEのスペックを早見表にまとめて比較すると次のようになっています。
AMD Ryzen Threadripper 3970X スペック簡易比較 | ||||
AMD Ryzen Threadripper 3970X |
Ryzen 9 3950X | Xeon W-3175X |
Core i9 10980XE | |
コアスレッド | 32コア64スレッド | 16コア32スレッド | 28コア56スレッド | 18コア36スレッド |
ベースクロック | 3.7GHz | 3.5GHz | 3.1GHz | 3.0GHz |
最大ブースト | 4.5GHz | 4.7GHz | 4.3GHz | 4.8GHz |
オーバークロック |
O | |||
L3キャッシュ | 144MB | 64MB | 38.5MB | 24.75MB |
TDP | 280W | 105W | 255W | 165W |
CPUクーラー | X | |||
iGPU |
X | |||
メモリ ch / pcs |
4 / 8 | 2 / 4 | 6 / 12 |
4 / 8 |
CPU直結PCIEレーン |
56 | 16 + 4 | 48 | |
おおよその国内価格 (北米希望小売価格) |
25万円 (1999ドル) |
9.8万円 (749ドル) |
38万円 (2999ドル) |
13.8万円 (979ドル) |
「AMD Ryzen Threadripper 3970X」のコアスレッド数は32コア64スレッドとなっており、エンスージアスト向けプラットフォームというくくりで見ると競合Intel Core-Xの最上位モデルCore i9 10980XEを2倍近く上回ります。サーバー・ワークステーション向けで半エンタープライズCPUなXeon W-3175Xと比較しても4コア多いにもかかわらず、価格は1/3も安いという圧倒的なコストパフォーマンスです。
「AMD Ryzen Threadripper 3970X」の拡張性についてはCPU直結のPCIEレーンはPCIE4.0で56レーン(PCHとの接続で+8レーン)、さらに第3世代Ryzen Threadripperに対応する新チップセットTRX40から同じくPCIE4.0で16レーンが伸びており、プラットフォーム単位では計72レーン分の拡張が可能です。
Intel第10世代Core-Xとプラットフォームの帯域を比較すると、CPU直結PCIEレーンはIntel第10世代Core-XがPCIE3.0x48レーン48GB/sに対してAMD第3世代Ryzen ThreadripperはPCIE4.0x56レーンで112GB/s、またチップセットとの接続帯域でもIntel第10世代Core-XがPCIE3.0x4レーン4GB/sに対してAMD第3世代Ryzen ThreadripperはPCIE4.0x8レーンで16GB/sとなっています。さらにAMD第3世代Ryzen ThreadripperはCPUのIOダイにUSBコントローラーが内蔵されているのでUSB用に5GB/sの帯域があります。
注意点として「AMD Ryzen Threadripper 3970X」は対応CPUソケットがTRX4に変わり、TR4ソケットのX399マザーボードとは非互換なので注意してください。
ASRock、ASUS、GIGABYTE、MSIの主要4社からは500ドル程度のエントリーユーザー向けモデルから、700ドル~1000ドルと高価なプレミアムモデルまで様々なTRX40マザーボードがラインナップされています。
・AMD TRX40マザーボードのレビュー記事一覧へ
「AMD Ryzen Threadripper 3970X」にはCPUクーラーは付属しませんが、代わりにAsetek OEMの簡易水冷CPUクーラーをsTR4ソケットに互換させるリテンションブラケットが付属するので、NZXT KRAKEN Z3/X3シリーズ、ASUS ROG RYUJIN、Fractal Design Celsius S24/S36などが使用できます。Asetek OEMの簡易水冷CPUクーラー以外のThreadripper専用CPUクーラーや専用水冷ブロックについてはAMDの公式サイトで一覧が公表されています。
公式互換製品:https://www.amd.com/en/thermal-solutions-threadripper
「AMD Ryzen Threadripper 3970X」にはAsetek OEMの簡易水冷CPUクーラーをsTR4ソケットに互換させるリテンションブラケットが付属しますが、Asetek OEMの簡易水冷CPUクーラーはThreadripperの非常に大きいIHSに対してベースプレートが小さいという問題があります。
下は第1世代のRyzen Threadripper 1950Xを全コア4.0GHzにOCした時(CPU消費電力は300W超)の例ですが、各種CPUクーラーの性能を比較すると、Asetek OEMの簡易水冷CPUクーラーはNoctua NH-U14S TR4-SP3のようにThreadripperに最適化された空冷CPUクーラーに及びません。
AMD AM4など一般的な環境では最強クラスの冷え具合を発揮するAsetek製簡易水冷CPUクーラーも、Threadripper環境ではベースプレートのサイズが足を引っ張ります。なのでThreadripper環境ではThreadripper専用CPUクーラーを使用するのが当サイトとしてはオススメです。
・第3世代Ryzen Threadripper&TRX40対応CPUクーラーのレビュー記事一覧へ
”インターコネクタ「Infinity Fabric」(CCX内部における各種コンポーネントの接続にも使用されている)によって複数のCPUダイを接続し、単一のCPUとする”というのはRyzen Threadripperの最も基本的な構造ですが、第2世代Ryzen Threadripperの24コア/32コアモデルではCPUダイ毎に各種I/Oが実装されている構造が冗長になる(別のCPUダイを跨いでメモリアクセスを行うと遅延が大きくなりボトルネックとなる)という問題がありました。
「AMD Ryzen Threadripper 3970X」など第3世代Ryzen ThreadripperではDRAMやPCIEとの接続を仲介するIOダイを中心にして8コアCPUダイ(CCD)を4基搭載するというトポロジー設計によって、第2世代の24コア/32コアモデルで問題だった『CPUダイを跨ぐメモリアクセス』というボトルネックが解消されています。
Ryzen Threadripper CPUはメインストリーム向けRyzen CPUと同様に、『Infinity FabricというCPU内外のコンポーネントを相互接続するインターコネクトの動作周波数がメモリ周波数に同期する』という構造上、メモリ周波数がエンコードや3Dゲームを含めた総合的なパフォーマンスに大きく影響することが知られています。Ryzen Threadripper CPUでハイパフォーマンスな環境を構築する上ではメモリ周波数3200MHzでの安定動作が1つの指標になっています。
その反面、第1世代Ryzenではメモリ相性問題が話題に上ることも多く、発売初期には定格の2666MHzも難しいケースがしばしば見受けられましたが、第2世代Ryzen以降はメモリ互換性も大幅に改善されています。Intel環境向けでメモリ周波数3200MHz~3600MHzのOCメモリに採用されることの多いHynix製メモリチップは、第1世代Ryzenのころはあまり相性が良くないと言われていましたが、第2世代Ryzenの時点ですでにXMP3200MHzに対応していればメモリ周波数3200MHzの安定動作も難しくないくらいに互換性が改善されていました。
さらに第2世代Ryzen ThreadripperでAMD公式仕様としてサポートされるのは、メモリ周波数2933MHzまででしたが、第3世代Ryzen Threadripperではメモリ周波数3200MHzまでが公式にサポートされています。(メモリ4枚搭載時は3200MHz、メモリ8枚搭載時はSingle Rankで2933MHzもしくはDual rankで2667MHzのサポートとなります。3300MHz以上はオーバークロック扱いで保証対象外)
またOCプロファイルや手動設定によるメモリOCを行う場合、第3世代Ryzenではメモリ周波数3600MHz、メモリタイミングCL16が性能とコストのスイートスポットになるとAMD公式から発表されています。
第3世代Ryzenや第3世代Ryzen ThreadripperでオススメなDDR4メモリやメモリの基礎知識等についてはこちらの記事で詳しく解説しているので気になる人は参照してみてください。
・第3世代Ryzen自作PCにオススメなDDR4メモリの容量や速度を解説
「AMD Ryzen Threadripper 3970X」のCPUダイとヒートスプレッダ間のTIMには第1/2世代Ryzen Threadripperと同様にソルダリングが採用されています。Intel第9世代CPUのSTIMと違って、液体金属グリス「Thermal Grizzly Conductonaut」と同等に冷える良質なソルダリングであることが著名なOCerから報告されています。
AMD Ryzen Threadripper 3970Xの検証機材・動作設定
以下、「AMD Ryzen Threadripper 3970X」の各種検証を行うベンチ機、および比較対象となる各CPUのベンチ機の詳細となります。AMD TRX40環境 テストベンチ機の構成 | |
CPU | AMD Ryzen Threadripper 3970X(レビュー) |
マザーボード | ASRock TRX40 Taichi (レビュー) |
CPUクーラー | ENERMAX LIQTECH TR4 II 360 360サイズ簡易水冷 (レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM x3 (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z RGB F4-3200C14Q-32GTZRX (+F4-3600C14D-16GTZN×2セット) DDR4 8GB*8=64GB (レビュー) 3600MHz, CL16-16-16-36-CR1 |
ビデオカード(共通) | ZOTAC RTX 2080Ti AMP Extreme Core (レビュー) |
システムストレージ(共通) | Samsung 860 PRO 256GB (レビュー) |
OS(共通) | Windows10 Home 64bit |
電源ユニット(共通) | Corsair HX1200i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
AMD AM4(X570)環境のRyzen CPUと同様に、AMD TRX40環境の第3世代Ryzen Threadripperも冷却性能依存の自動OC機能「XFR (Extended Frequency Range)」には対応していますが、3970Xは仕様値としていずれもPPTが280Wで、TDPと同じ値が設定されており、XFRによってTDPを超過する動作になることはないため、測定に当たって特に個別の設定を行いません。
第3世代Ryzen Threadripper検証環境のシステムメモリには、第3世代Ryzenプラットフォームに最適化されたハイパフォーマンスOCメモリの最速モデル「G.Skill Trident Z Neo F4-3600C14Q-32GTZN」を使用しています。3600MHz/CL14の最速モデル、3200MHz/CL14や3600MHz/CL16といった定番スペックがラインナップされ、高級感のあるヒートシンクや8分割ARGB LEDを搭載してデザイン面でも優れる「G.Skill Trident Z Neo」シリーズは、第3世代Ryzenや第3世代Ryzen Threadripperの自作PCで性能を追求するなら間違いのないオススメなOCメモリです。
・「G.Skill Trident Z Neo F4-3600C14Q-32GTZN」をレビュー
第3世代Ryzen Threadripper関連の検証機材としてTRX40マザーボードには「ASRock TRX40 Taichi」を使用しています。「ASRock TRX40 Taichi」は自作PCマザーボード向けとしては初となる90A対応Dr. MOSで構成される16フェーズの超堅牢なVRM電源回路、そして全高54mmの超大型かつアクティブ冷却ファン搭載のVRM電源クーラーを搭載しており、PBOによる全コア4GHzクロックアップを施したRyzen Threadripper 3970Xが運用可能な抜群のパフォーマンスを発揮します。各社がハイエンドモデルでE-ATXなど大型サイズを採用する中、標準のATXサイズで使い勝手の良いマザーボードとなっており、TRX40マザーボードの中でも特にオススメの1枚です。
・「ASRock TRX40 Taichi」をレビュー。ATXサイズで32コアスリッパに完全対応!
ベンチ機のシステムストレージにはSamsung製MLCタイプ64層V-NANDのメモリチップを採用する2019年最速のプロフェッショナル向け2.5インチSATA SSD「Samsung SSD 860 PRO 256GB」を使用しています。Samsung SSD 860 PROシリーズは容量単価が高価ではあるものの、システムストレージに最適な256GBや512GBモデルは製品価格としては手を伸ばしやすい範囲に収まっており、Intel Core-XやAMD Ryzen TRのようなハイエンドデスクトップ環境はもちろん、メインストリーム向けでもハイパフォーマンスな環境を目指すのであれば、システムストレージ用に一押しのSSDです。
・「Samsung SSD 860 PRO 256GB」をレビュー
CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。Thermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスで適量が塗布されていれば、CPUクーラー固定時の圧着でヒートスプレッダ全体へ自然に伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
普段は熱伝導グリスを上のようにてきとうに塗っているのですが、Ryzen Threadripperはヒートスプレッダが大きいため、『最初に等間隔に9カ所小さめに熱伝導グリスを落として、さらにその間の4か所に少し大きめに熱伝導グリスを塗る』というNoctua式の塗り方が良い感じだったので今回はNoctua式を採用しました。
この塗り方をするとRyzen Threadripperの大型ヒートスプレッダでもCPUクーラーの圧着でヒートスプレッダ全体へ熱伝導グリスが綺麗に伸びます。ただしグリスをかなり大量に使うので注意。
サーマルグリスの代用品として、数年スパンの長期使用においても性能低下が基本的になく再利用も可能、グリスが零れてマザーボードが汚れたり壊れる心配もないので、炭素繊維サーマルシート「Thermal Grizzly Carbonaut」もオススメです。
・「Thermal Grizzly Carbonaut」はRyzen TR 3970Xを冷やせるか!?
AMD Ryzen Threadripper 3970Xの動作クロック・消費電力・温度
「AMD Ryzen Threadripper 3970X」に関する検証のはじめに、「AMD Ryzen Threadripper 3970X」の動作クロック、消費電力、温度など同CPUの基本的な動作についてチェックしていきます。「AMD Ryzen Threadripper 3970X」は32コア64スレッドのCPUで、AMD公式の仕様ではベースクロック3.7GHz、単コア最大ブーストクロック4.5GHzとなっています。
HWiNFOから「AMD Ryzen Threadripper 3970X」のコアクロックの挙動を確認したところ、確かに負荷の軽い場面では最大4.5GHz程度で動作するコアがありました。
「AMD Ryzen Threadripper 3970X」をTRX40マザーボード「ASRock TRX40 Taichi(BIOS:1.20)」と組み合わせてCPU動作をBIOS標準設定とし、CinebenchやAviult&x264エンコードを実行したところ、いずれのケースにおいても全32コアへ同時に大きな負荷がかかった時の動作クロックは平均3.8~3.9GHz程度でした。この時のCPU Package Powerは280W~290W前後で推移しています。
メインストリーム向けRyzen CPUでは実際の電力に関する内部設定であるPPTがTDPより高い値に設定されていますが、前世代と同じく「AMD Ryzen Threadripper 3970X」は仕様値TDPと同じくPPT280Wに設定されているのでTDPを大きく上回るCPU消費電力が発生することはなく、上述のようにPPT280W前後で動作時にCPUコアクロックはベースクロック3.7GHz以上で安定しました。
続いてCPU消費電力の検証結果をチェックしていきますが、当サイトのCPUレビューでは主として”CPU温度への影響要因”という意味においてCPU消費電力を評価しているので、動画のエンコードによって長期間電力制限が効いている状態の平均的な消費電力をCPU消費電力として比較します。
個人的な意見としては短期間電力制限は短期間かつCPU温度によっても制御されるのでCPU温度への影響要因として比重は小さく、また瞬間ピーク電力はせいぜいがTDP+100W程度なので、マザーボードVRM電源の破損を心配するほどではなく、その程度の電力超過は電源ユニットで十分吸収できるので、評価対象としてあまり意味がないと思っています。
またCPU製品仕様のTDPについては、定義がIntel/AMDで厳密には異なり、各社の具体的な測定・算出方法も不明なので、CPU動作クロックを含めて総合的に判断する必要があるものの、基本的には長期間電力制限時の消費電力がTDP仕様値とほぼ一致、もしくはTDP仕様値を下回れば正常であると評価します。
当レビュー記事では簡単のため割愛しますが、CPUの消費電力に関する評価基準の補足として下記の記事も参考にしてください。
・2019年最新CPUの消費電力・発熱・TDP・温度について - 爆熱評価のウソほんと
CPU消費電力の測定には電源ユニット「Corsair HX1200i」のCorsair Linkによる電力ログ機能を用いてコンセントからの出力ではなく変換ロスを差し引いた入力電力をチェックしています。
また電力測定の際は上記の主電源ユニットに加えて、CPUへの電力供給を行うEPS端子を除いた、各種電源端子へ接続するために別の副電源ユニットを使用しています。そのため測定値にはEPS電源端子を経由して供給されるCPU消費電力以外の消費電力は含まれません。なお電源ユニットに対する実際の最大瞬間負荷は測定値より50~100W上回る場合があるので電源ユニットの電源容量選択の参考にする場合は注意してください。
CPUの消費電力や温度の測定を行う負荷テストについては、FF14ベンチマークの動画(再生時間6分40秒、4K解像度、60FPS、容量5.7GB)を変換ソースとして、Aviutl&x264を使って動画のエンコードを行います。動画エンコードの同時実行数については4~6コアは並列なし、8~14コアは2並列実行、16コア以上は3並列実行としています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTやPrimeなど専用負荷ソフトを使用しているレビューもありますが、管理人の私見としてはCPU負荷が非現実的なので、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースを想定した場合、ほぼ最大のCPU負荷となるx264による動画エンコードとストレステストに採用しています。
「AMD Ryzen Threadripper 3970X」と比較対象の各CPUについて、上記負荷テスト中の”平均値を消費電力”、”最大値を瞬間的な最大電源負荷”と表記した場合、消費電力測定結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
「AMD Ryzen Threadripper 3970X」はCPUクーラーによる冷却が十分な環境で運用する場合、全コア3.8~3.9GHz程度で動作して、EPS電源経由のCPU消費電力は228.3Wに達しました。
これまで見落としていたのですが、TDP180Wの2950X、TDP250Wの2990WX、そして今回レビューしているTDP280Wの3970Xなど、Ryzen ThreadripperではEPS電源端子経由で測定した消費電力が同社メインストリーム向けを含めてその他のプラットフォームに比べて低めの数値が出ていました。
そこで確認のため同じストレステストにおいて、システム消費電力(EPS電源消費電力と同じくCorsair HX1200iの出力電力ログを参照)と、CPU Package Power(HWiNFOによってソフトウェアモニタリング)の2種類について測定してみました。
なおCPU Package Powerは一部のマザーボードやBIOS設定によっては正常に検出できていない可能性があるので比較には注意が必要です。
各CPUで違いを分かりやすくするため、システム消費電力とEPS電源消費電力、システム消費電力とCPU Package Powerの2種類の差分を取ってグラフ化しました。システム消費電力とEPS電源消費電力の差分を見ると、AMD Ryzen 9 3950XとIntel Core i9 9980XEは40~50W程度に対して、Ryzen Threadripper各種は100W以上の差があります。またシステム消費電力とCPU Package Powerの差分を比較すると、2990WXと3970Xが20W程度大きいですが、60W前後で差が小さくなりました。
Ryzen Threadripper環境ではATX24PIN経由でCPU消費電力のうち一部が供給されており、「AMD Ryzen Threadripper 3970X」は特にその傾向が強い(ATX24PIN経由のCPU消費電力が大きい)ようです。そういった事情もあり正確な評価が難しいのですが、システム消費電力の相対的な関係を見る限り、「AMD Ryzen Threadripper 3970X」は実際のCPU消費電力も280W程度と考えて問題ないと思います。
また「AMD Ryzen Threadripper 3970X」はCPU消費電力が非常に高いのでマザーボードVRM電源回路への負荷も気になるところですが、主要4社のハイエンドモデルはもちろんのこと、ASRock TRX40 CreatorやASUS Prime TRX40-Proのような5万円台でTRX40の中で最安値クラスの製品であっても、簡易水冷CPUクーラーを組み合わせた環境に置いてVRM電源回路は標準装備のみで問題ありませんでした。X399マザーボードでTDP250WのWXシリーズを使用する時のようにVRM電源の冷却に気を使う必要はないので、その点で導入のハードルは下がっています。
AMD Ryzen Threadripper 3970Xの基礎ベンチマーク
AMD Ryzen Threadripper 3970Xの基本的なCPU性能を専用ベンチマークソフトで検証しました。この章ではPCMark 8とPCMark 10という総合ベンチマークソフトを使用していますが、デスクトップ向けの高性能CPUの性能比較ベンチマークとしては頭打ちな傾向があります。レビュー項目の1つとして参考までにスコア比較していますが、実用的なCPU性能については後半の個別性能比較を参考にしてください。
また同ベンチマークはシングルスレッド性能(動作クロックの高さ)が重要になる傾向も強く、近年のCPUを見ると、Intel第8/9世代Coreに比べて第2世代以前のAMD Ryzen CPUでは低めのスコアが出ていましたが、AMD第3世代RyzenはIntel第8/9世代Coreとそん色ないパフォーマンスを発揮できるようになっています。
まずは「PCMark 8 Creative Test (Run Accelerated)」のベンチマーク結果をチェックしていきます。「PCMark 8」は動画再生能力、DirectX9のグラフィック性能、Webブラウジング、ビデオチャットなど一般ユースにおけるPCの総合的な性能を測定するためのベンチマークソフトです。
「AMD Ryzen Threadripper 3970X」を含めた各CPU環境のPCMark 8ベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
「PCMark 10 Extended」のベンチマーク結果をチェックしていきます。「PCMark 10」はPCMark 8と同様にPCの総合的な性能を測定するためのベンチマークソフトですが、DirectX11に対応するなどPCMark 8よりも最近のPCの性能測定に最適化されています。
「AMD Ryzen Threadripper 3970X」を含めた各CPU環境について、PCMark 10ベンチマークの総合スコアを比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
「PCMark 10 Extended」にはPCの基本性能を測る「Essentials」、ビジネスアプリケーション性能を測る「Productivity」、クリエイティブ性能を測る Digital Content Creation」、ゲーム性能を測る「Gaming」の大きく分けて4つのテストグループがあるので、個別にベンチマークスコアを比較してみました。
PCの基本性能を測る「Essentials」は、アプリケーションの起動に要する時間を測る「App Start-up」、 ウェブブラウジングの性能を測る「Web Browsing」、1対1または多対多のビデオ会議をシミュレートする「Video Conferencing」の3つのワークロードで構成されています。
モバイル版Core i7 1065G7を搭載するSurface Pro 7との比較でわかりますが、一般的なPC利用において大半のデスクトップ向けCPUは十分な性能を備えています。
「Essentials」について「AMD Ryzen Threadripper 3970X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
ビジネスアプリケーション性能を測る「Productivity」は、ワープロソフト(マイクロソフトWordなど)の処理性能をシミュレートする「Writing」、表計算ソフト(マイクロソフトExcelなど)の処理性能をシミュレートする「Spreadsheets」の2つのワークロードで構成されています。
モバイル版Core i7 1065G7を搭載するSurface Pro 7との比較でわかりますが、一般的なオフィスワークにおいて大半のデスクトップ向けCPUは十分な性能を備えています。
「Productivity」について「AMD Ryzen Threadripper 3970X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
クリエイティブ性能を測る「Digital Content Creation」は、写真に対するフィルタリング処理の性能をシミュレートする「Photo Editing」、動画編集の性能をシミュレートするワークロード「Video Editing」、レイトレーシングによる3Dグラフィクス制作(3Dレンダリング)をシミュレーションする「Rendering and Visualization」の3つのワークロードで構成されています。
「Digital Content Creation」について「AMD Ryzen Threadripper 3970X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
ゲーム性能を測る「Gaming」は、グラフィックボードの性能測定で幅広く活用されているベンチマークソフト「3DMark」に収録された「Fire Strike」と同じベンチマークテストを実行するワークロードです。
「Gaming」について「AMD Ryzen Threadripper 3970X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
AMD Ryzen Threadripper 3970Xのクリエイティブ性能
AMD Ryzen Threadripper 3970Xについて3Dレンダリング、動画エンコード、RAW現像、PCゲーム/スマホアプリのビルドなどクリエイティブ作業に関する性能を各種ベンチマークソフトや実際のアプリケーションで検証しました。AMD Ryzen Threadripper 3970Xの3Dレンダリング性能
CPUのマルチスレッド性能を比較するベンチマークソフトとして国内外で最も知られている「Cinebench R15」をはじめとして、Cinebenchの2019年最新バージョン「Cinebench R20」、オープンソース3DCGソフト「Blender」の公式ベンチマークソフト、3Dレンダラー「Corona Renderer」の公式ベンチマークソフト、3Dレンダラー「V-Ray」の公式ベンチマークソフトの4種類を使用して、CPUの3Dレンダリング性能についてベンチマーク測定を行いました。Cinebench R15は3Dレンダリング性能を測定するベンチマークソフトになっており、マルチスレッド性能を測定するテストとシングルスレッド性能を測定するテストの2種類を実行しています。また2019年最新バージョンのCinebench R20についてはマルチスレッド性能を測定するテストのみを実行しました。
Cinebench R15 マルチスレッド性能テストについて「AMD Ryzen Threadripper 3970X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Cinebench R15 シングルスレッド性能テストについて「AMD Ryzen Threadripper 3970X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Cinebench R20 マルチスレッド性能テストについて「AMD Ryzen Threadripper 3970X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
3DCGソフト「Blender」の公式ベンチマークソフトについて「AMD Ryzen Threadripper 3970X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
「Blender」の公式ベンチマークソフトのレンダリング時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i9 9900Kを基準にして(全CPU比較データではCore i5 9400Fが基準)、「AMD Ryzen Threadripper 3970X」を含めた各種CPUのレンダリング速度を性能比としてグラフ化しました。 【全CPU比較データ】
3Dレンダラー「Corona Renderer」の公式ベンチマークソフトについて「AMD Ryzen Threadripper 3970X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
3Dレンダラー「Corona Renderer」の公式ベンチマークソフトのレンダリング時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i9 9900Kを基準にして(全CPU比較データではCore i5 9400Fが基準)、「AMD Ryzen Threadripper 3970X」を含めた各種CPUのレンダリング速度を性能比としてグラフ化しました。 【全CPU比較データ】
3Dレンダラー「V-Ray」の公式ベンチマークソフトについて「AMD Ryzen Threadripper 3970X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
3Dレンダラー「V-Ray」の公式ベンチマークソフトのレンダリング時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i9 9900Kを基準にして(全CPU比較データではCore i5 9400Fが基準)、「AMD Ryzen Threadripper 3970X」を含めた各種CPUのレンダリング速度を性能比としてグラフ化しました。 【全CPU比較データ】
AMD Ryzen Threadripper 3970Xの動画エンコード性能
続いて無料で利用できる動画編集ソフトとして国内外で多数のユーザーがいる「Aviutl」と、商用動画編集ソフト「TMPGEnc Video Mastering Works 7」と「Adobe Premiere Pro(Media Encoder)」を使用して、「AMD Ryzen Threadripper 3970X」を含めた各種CPUの動画エンコード性能を比較していきます。AviutlとTMPGEnc Video Mastering Works 7はいずれも、現在主流なH.264 (MPEG-4 AVC) ビデオストリームへエンコードを行う「x264」エンコーダ、そしてH.264より高圧縮・高画質で次世代規格として期待されているH.265(HEVC) ビデオストリームへエンコードを行う「x265」エンコーダが使用できるので、CPUをリソースとして各エンコーダで共通の動画ファイルのエンコードを行いました。
エンコードを行う動画ファイルについては、Tom Clancy's Ghost Recon Wildlandsのゲーム内ベンチマーク(60秒ほど)をNVIDIA ShadowPlayで録画したものを使用しています。1920×1080/60FPS/50Mbpsと3840×2160/60FPS/120Mbpsの2種類の動画ファイルを作成し、「1920×1080 to 1920×1080」、「3840×2160 to 1920×1080」、「3840×2160 to 3840×2160」の3種類のエンコードを行っています。
Aviutlのx264/x265のエンコード設定は次のスクリーンショットのようになっています。TMPGEnc Video Mastering Works 7については固定ビットレートで1920×1080へエンコードする場合は25Mbps、3840×2160へエンコードする場合は60Mbpsに設定しています。
なおエンコーダと解像度設定が同じであればaviutlとTMPGEncのCPU別エンコード速度の傾向は概ね一致するので、aviutlのケースを抜粋してグラフを掲載します。厳密にはソフトウェアによって若干CPUメーカー別で得意不得意もあるので、aviutlとTMPGEncの全CPU比較データはリンクから各自で参照してください。x2/x3/x4のバーについては同じエンコードを添え字の数だけ並列実行した時の合計変換フレームレートを示しています。
なおフルHD解像度では8コア16スレッド程度、4K解像度では16コア32スレッド程度でマルチスレッド分散がボトルネックになり始め、1つのエンコードだけではCPUが遊び始めます。20コアオーバーのウルトラメニーコアCPUでマルチスレッド性能をフル活用しようと思うと、8K解像度のような超高解像度のエンコード、もしくは4K動画の複数並列エンコードを行う必要があるので注意してください。
x264エンコーダによって1920×1080解像度の動画をH.264 (MPEG-4 AVC)の1920×1080解像度へエンコードした時のエンコード速度について「AMD Ryzen Threadripper 3970X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)】
x264エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.264 (MPEG-4 AVC)の1920×1080解像度へエンコードした時のエンコード速度について「AMD Ryzen Threadripper 3970X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)】
x264エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.264 (MPEG-4 AVC)の3840×2160解像度へエンコードした時のエンコード速度について「AMD Ryzen Threadripper 3970X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)】
x265エンコーダによって1920×1080解像度の動画をH.265(HEVC)の1920×1080解像度へエンコードした時のエンコード速度について「AMD Ryzen Threadripper 3970X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)】
x265エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.265(HEVC)の1920×1080解像度へエンコードした時のエンコード速度について「AMD Ryzen Threadripper 3970X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)】
x265エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.265(HEVC)の3840×2160解像度へエンコードした時のエンコード速度について「AMD Ryzen Threadripper 3970X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)】
加えてAdobe Premiere Pro(Media Encoder)による動画エンコードについても、「AMD Ryzen Threadripper 3970X」を含めた各種CPUの動画エンコード性能を比較しました。
Adobe Premiere Proのエンコード設定はCPUリソースのx264エンコードで、1920×1080へエンコードする場合は25Mbps、3840×2160へエンコードする場合は60Mbpsの固定ビットレートです。Media Encoderでは1つのプロジェクトを複数の設定で同時にエンコードできますが、複数のプロジェクトを同時にエンコードすることができないので単一エンコードのみを比較しています。
Adobe Premiere Proによる動画エンコードについてはAMD Ryzen CPUは苦手である評価されていることが多いですが、2019年現在では最適化も進んでおり、コアスレッド数とコアクロックに比例した性能が発揮できるようになっています。
【Adobe Premiere Pro 全CPU比較データ:1920to1920 / 3840to1920 / 3840to3840】
AMD Ryzen Threadripper 3970XのRAW現像性能
続いてDxO PhotoLabによるRAW現像を行って「AMD Ryzen Threadripper 3970X」を含めた各種CPUの性能を比較していきます。「SONY DSC-RX100M5」で撮影した5472×3648解像度のRAW画像ファイル 100枚に対して、DxO PhotoLabの画質プリセット「DxO 標準」をベースにノイズ除去を「PRIME」に変更したプリセットを適用し、RAW現像を行いました。なおDxO PhotoLabによるRAW現像は並列処理数を設定できますが、CPUコア数の半分もしくはそれより一つ少ないくらいの並列処理で最速になるようです。DxO PhotoLabによるRAW現像速度について「AMD Ryzen Threadripper 3970X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
AMD Ryzen Threadripper 3970XのPCゲーム/スマホアプリのビルド性能
最後に「Unreal Engine 4」や「Unity」などフリーウェアながら高画質なPCゲームやスマホゲームを製作可能なゲームエンジンを使用したゲーム制作におけるCPU性能の検証として、「Unreal Engine 4」で「AMD Ryzen Threadripper 3970X」を含めた各種CPUの性能を比較していきます。検証にはEpic Games Storeで無料配布されているデモプロジェクト「Infiltrator」を使用したビルド時間の比較を行います。検証設定としてリアルタイム表示はオフ、ライティングの品質をプロダクションとしています。Unreal Engine 4のバージョンは4.22.3、Windows10のバージョンは1903で統一しています。
「Unreal Engine 4 - Infiltrator」のビルド時間について「AMD Ryzen Threadripper 3970X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
「Unreal Engine 4 - Infiltrator」のビルド時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i9 9900Kを基準にして(全CPU比較データではCore i5 9400Fが基準)、「AMD Ryzen Threadripper 3970X」を含めた各種CPUのビルド速度を性能比としてグラフ化しました。 【全CPU比較データ】
AMD Ryzen Threadripper 3970Xのゲーミング性能
AMD Ryzen Threadripper 3970XのPCゲームに関する性能を実ゲームを用いたベンチマーク測定で検証しました。なお章タイトルではゲーミング性能と表記してはいますが、Intel第7/8/9世代Core-SやAMD第2/3世代Ryzenなどここ数年で発売された4コア4スレッド以上のCPUであればフルHD~4K解像度の60FPSターゲットにおいてCPUボトルネックが発生するケースは多くありません。そのためCPUゲーム性能比較の具体的な内容は”高フレームレートにおけるCPUボトルネック比較”と表現するのが実状に即しています。
ただし最新の超高画質で重いゲームの場合、ゲームプレイの裏で次のシーンのロード作業が動くとロードが遅くなったりスタッター(カクツキ)が発生することがあるので、ゲーミングPCに搭載するCPUとして6コア6スレッド以上を個人的に推奨しています。
ゲームタイトルにもよりますがPCゲームにおけるCPU負荷は基本的にTDP内に収まることが多く、CPUコアクロックは全コア最大動作倍率に張り付きます。フレームレートに対するCPUボトルネックの緩和においては、この全コア最大動作倍率の高さが重要になり、クリエイティブタスクと違って電力制限は支配的ではなくなります。(PCゲームではIntel製CPUのPL1、AMD製CPUのPPTは影響をほとんど及ぼさなくなる)
Core i9 9900KやRyzen 7 3700XのようにTDPに対して全コア動作倍率の高いCPUでは、PCゲームにおいてもCPU使用率が高くなるハイフレームレートでCPU消費電力がTDPを超過するタイミングもありますが、TDP内に制限した場合と比較して大きな差は出ません。
そのためクリエイティブタスクなどここまでの検証において複数の電力制限で測定していたCPUも、PCゲームでは簡単のため電力制限が緩い方だけを使用して性能を測定します。
「AMD Ryzen Threadripper 3970X」の場合はコア数が非常に多いのでバラつきがありますが、4.1~4.2GHzの高速で動作するコアが多数あります。
各CPUのゲーミング性能を測定するため統一検証機材として、2019年最新にして最速のGPUである「NVIDIA GeForce RTX 2080 Ti」を搭載したグラフィックボード「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme Core」を使用しています。
ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme Coreは、RTX 2080 TiのAIBパートナーの中でも屈指のOCチューニング力を誇るZOTACによって良質なGPUコアが選別され、リファレンスよりも200MHz以上も高いブーストクロック、さらにGDDR6メモリのメモリクロックまで引き上げるという、RTX 2080 Tiグラフィックボードで最速を狙えるファクトリーOCが施されています。加えて、ZOTACを高品質メーカーとして一躍ブランド力を押し上げたAMP Extremeシリーズの代名詞とも言える3スロットを占有する超弩級な大型GPUクーラーが採用され、静音性も非常に優れたモデルです。
・「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme」をレビュー
CPU別ゲーミング性能の比較には2019年最新PCゲームから、Assassin's Creed Odyssey、Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands、Shadow of the Tomb Raider、Middle-Earth: Shadow of Warの4種類を使用しています。60FPSの標準フレームレートをターゲットとした4K(3840×2160)解像度/高画質設定と、100FPS以上のハイフレームレートをターゲットとしたフルHD(1920×1080)解像度/中画質設定の2種類について、各ゲームで平均フレームレートと最小フレームレートを測定しました。
なおCPUボトルネック比較の性質上、平均FPSと最小FPSをある程度の精度で測定する必要があるため、検証ではほぼ同一シーンで測定が可能なゲーム内ベンチマークを使用しています。
AMD Ryzen Threadripper 3970Xのゲーム性能 - 4K解像度/60FPSターゲット
まずは60FPSの標準フレームレートをターゲットとした4K(3840×2160)解像度/高画質設定のゲーミング性能について「AMD Ryzen Threadripper 3970X」や比較対象CPUのベンチマーク結果をチェックしていきます。なお上述の通り60FPSターゲットでは基本的にCPUボトルネックは発生しないので、グラフの掲載順は性能(平均フレームレート)による昇順ではなく、当サイト既定のCPU分類順としています。
Assassin's Creed Odyssey(4K解像度、超高-画質プリセット)に関する「AMD Ryzen Threadripper 3970X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands(4K解像度、非常に高い-画質プリセット)に関する「AMD Ryzen Threadripper 3970X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Shadow of the Tomb Raider(4K解像度、DirectX12、最高-画質プリセット)に関する「AMD Ryzen Threadripper 3970X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Middle-Earth: Shadow of War(4K解像度、ウルトラ-画質プリセット)に関する「AMD Ryzen Threadripper 3970X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
AMD Ryzen Threadripper 3970Xのゲーム性能 - フルHD解像度/ハイフレームレート
続いて100FPS以上のハイフレームレートをターゲットとしたフルHD(1920×1080)解像度/中画質設定のゲーミング性能について「AMD Ryzen Threadripper 3970X」や比較対象CPUのベンチマーク結果をチェックしていきます。Assassin's Creed Odyssey(フルHD解像度、中-画質プリセット)に関する「AMD Ryzen Threadripper 3970X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands(フルHD解像度、中-画質プリセット)に関する「AMD Ryzen Threadripper 3970X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Shadow of the Tomb Raider(フルHD解像度、DirectX12、中-画質プリセット)に関する「AMD Ryzen Threadripper 3970X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Middle-Earth: Shadow of War(フルHD解像度、中-画質プリセット)に関する「AMD Ryzen Threadripper 3970X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
CPUエンコーダとリアルタイム配信について
ゲーム実況やライブ配信と呼ばれるPCゲームのリアルタイム配信について、現在ではNVIDIA GeForce GTX 1660やAMD Radeon RX 580などミドルクラスGPUをエンコーダとすることでフルHD解像度で必要十分な画質とフレームレートが得られます。GPUエンコーダは動作自体も軽いので、これらGPUエンコーダの登場によってリアルタイム配信やプレイ動画の録画におけるCPUエンコーダの役目は終わったというのが一時期の私見でしたが、メインストリーム向けCPUのコアスレッド数の増加に伴い、x264 Mediumのような高画質プリセットのプレイ&録画が一般ユーザー的にも現実的になってきています。
Youtube LiveやTwitchなどリアルタイム配信(ライブストリーミング)サービスで、PS4/Xbox/Switch等のコンシューマーゲーム機やPCゲームのプレイ動画・ゲーム実況を快適に配信するのに必要なCPU性能については、現在、連載を続けている【快適配信】シリーズで詳細に解説しています
一口にゲーム実況と言っても、『1.ビデオキャプチャを使用してPCは録画配信作業のみを行う』、『2.PC1台で同時にゲームプレイと録画配信を行う』の2つのケースに大別され、どちらで使用するのかで要求されるCPU性能やCPUメーカー毎の得手不得手など事情が変わってくるので注意してください。
ざっくりと現状でCPUを使用したリアルタイム配信・ゲーム実況に要求されるCPU性能だけ述べておくと、『ビデオキャプチャを使用した配信の最低水準は6コア12スレッドのCPU』、『ゲームをプレイしながら配信の最低水準は8コア16スレッドのCPU』です。
・【快適配信】シリーズの記事一覧へ
画質と快適性を求めるなら録画・配信専用マシンもオススメ
ビデオキャプチャ業界の進歩も目覚ましく、2018年に発売された「AVerMedia Live Gamer Ultra」は4K/60FPS/HDRやフルHD/240FPSの映像ソースを無遅延なパススルー表示しつつ、フルHD/60FPSのプレイ動画として録画・配信できるUSB接続外付け機器型ビデオキャプチャとなっており、プレイ動画の録画・配信に関する多様なニーズを網羅し得る名機です。・4K/HDRや240FPSのパススルー対応「AVerMedia Live Gamer Ultra」をレビュー
前述の通りフルHD/60FPSの録画・配信であればGTX 1060程度の性能のGPUをエンコーダとすることで必要十分な画質が得られて動作も軽いので、録画配信のために高性能な反面、非常に高額なCPUに投資するよりも、多少コストがかかっても「AVerMedia Live Gamer Ultra」などのビデオキャプチャと組み合わせて録画・配信用サブ機を構築するほうが、録画・配信の手法としてはわかりやすくてハードルが低いと思います。
・AVerMedia製ビデオキャプチャの最新おすすめ機種を機能比較
「AVerMedia Live Gamer Ultra」などUSB接続外付け機器型ビデオキャプチャと組み合わせて録画・配信用サブ機を構築するのであれば、ASRock Deskmini GTX 1060ベアボーン採用BTO PCの「G-GEAR alpha」や「GALLERIA Mini 1060」がおすすめです。
PCサイズはコンパクトなのでサブ機としてもあまり余分にスペースを占有せず、GPUにはGTX 1060を搭載しておりフルHD/60FPSのGPUエンコードにも余裕で対応できて、CPUには最大で「G-GEAR alpha」ならCore i7 8700、「GALLERIA Mini 1060」ならCore i7 7700を選択可能、2基の2.5インチSATA SSDと3基のM.2 SSDを搭載可能なのでストレージ拡張性も十分です。ASRock Deskmini GTXシリーズについてはレビューも公開しているので参考にしてみてください。
・GTX 1060搭載で容積2.7LのスーパーコンパクトPC「GALLERIA Mini 1060」をレビュー
・G-GEAR alphaシリーズの販売ページへ
AMD Ryzen Threadripper 3970Xのレビューまとめ
「AMD Ryzen Threadripper 3970X」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ or 概要
- ハイエンドデスクトップ向け32コア64スレッドCPU
- 定格でメモリ周波数3200MHzに対応
- TDP280Wとして全コアが実動平均で3.8~3.9GHz程度
- 前32コアの2990WXで問題だった、CCDを跨ぐメモリアクセスというボトルネックを解消
- Intel Xeon W-3175X(28C56T)を20~35%も上回るクリエイティブタスク性能
- 144FPS~240FPSのハイフレームレートなPCゲーミングにも対応可能
- 32コア64スレッドCPUながら25万円程度
- IHSが非常に大きいのでThreadripper専用CPUクーラーを推奨
- マザーボードが5万円からと、メインストリーム向けAM4に比べて高価
温度・消費電力について
AMD Ryzen Threadripper 3970Xはメインストリーム向けRyzen CPUと同様に、CPUクーラーの性能が十分(CPU温度が閾値以下)であればXFR等による自動OCが機能しますが、Ryzen CPUと違う部分で(PPTが仕様値TDPよりも高く設定されている)、標準動作ではCPU Package Powerの上限値となるPPTが仕様値TDPと同じ280Wに設定されているので、シンプルにCPU消費電力280WのCPUとして運用できます。メインストリーム向けCPUと比較すると消費電力は非常に大きく見えますが、同社メインストリーム向け最上位で16コア32スレッドのRyzen 9 3950Xと比較するとCPU負荷の大きいクリエイティブタスクにおいて、2倍の消費電力で2倍のパフォーマンスが発揮できるのでワットパフォーマンスは決して悪くないと思います。
CPU消費電力が大きいので高性能なCPUクーラーが要求されるものの、デフォルト設定で95度の閾値温度に達した時点でCPUクーラーの対応可能なCPU消費電力へ漸近していき、その範囲内で最大のパフォーマンスが発揮できるように調停する「Precision Boost 2 / Pure Power 2」が機能として組み込まれているので、CPU温度的にも安心かつ手軽に運用できます。
AMD Ryzen Threadripper 3970Xに最適なCPUクーラーは?と聞かれると、概要でも簡単に解説したように互換ブラケットがCPUに付属するAsetek OEMの簡易水冷CPUクーラーはベースプレートが小さいので、大型ベースプレートを採用したThreadripper専用CPUクーラーを推奨します。(定格で使う分にはAsetek OEMでも問題ないと思いますが)
中でも空冷CPUクーラーであればコンパクトで扱いやすい「Noctua NH-U12S TR4-SP3」か「be quiet! Dark Rock Pro TR4」、冷却性能を重視なら簡易水冷CPUクーラーのENERMAX LIQTECH TR4 IIシリーズがオススメです。
CPUの消費電力は4つのCCD+αに分散されるので、消費電力の大きさの割に意外とCPU温度は低くなるのは前世代2990WXの通りです。TDP280Wの定格運用であればCPU全体の消費電力は大きいですが、「Noctua NH-U12S TR4-SP3」のように120サイズ空冷の製品でも問題ないはずです。
各社から発売されている主要なThreadripper専用CPUクーラーについては、今回レビューした32コア64スレッドのRyzen Threadripper 3970Xを対象にして、各製品でどれくらい冷やすことができるのか検証記事を色々と公開しているのでこちらを参考にしてください。
・Ryzen Threadripper対応CPUクーラーのレビュー記事一覧へ
クリエイティブ性能について
AMD Ryzen Threadripper 3970Xのクリエイティブ性能については、32コア64スレッドが全コア3.8~3.9GHz程度で動作するので、コアスレッド数×コアクロックというマルチスレッド性能の指標通りに、8コア16スレッドCore i9 9900Kの3.5~4.0倍、16コア32スレッドのRyzen 9 3950Xの1.8~2.0倍に迫るパフォーマンスを発揮します。現在市場に出回っているCPUとしてはエンタープライズ向け製品も含め、比類ないマルチスレッド性能です。「AMD Ryzen Threadripper 3970X」は先行して発売されたメインストリーム向け第3世代Ryzenと同じCCDが採用されているので、当然ながら、AVX2(AVX256)をネイティブ実行できるようになっており、第2世代以前のRyzen Threadripperが苦手とし、コアスレッド数に対してIntel製CPUよりも低速だったx265によるエンコードでもコアスレッド数に比例した抜群の性能を発揮します。
なお動画エンコードについては、フルHD解像度では8コア16スレッド程度、4K解像度では16コア32スレッド程度でマルチスレッド分散がボトルネックになり始め、1つのエンコードだけではCPUが遊び始めます。「AMD Ryzen Threadripper 3970X」のような20コアオーバーのウルトラメニーコアCPUでマルチスレッド性能をフル活用しようと思うと、8K解像度のような超高解像度のエンコード、もしくは4K動画の複数並列エンコードを行う必要があるので注意してください。
また過去にXeon W-3175Xのレビューにおいて当時コアスレッド数で競合していたRyzen Threadripper 2990WXと比較して、
Xeon W-3175Xはある1つのクリエイティブタスクに28コア全てのパワーを集約してパフォーマンスを向上させることができるのに対して、Ryzen Threadripper 2990WXは3Dレンダリングなど一部の分野を除くとそういったマルチスレッド性能の集約ができません。4K動画エンコードの性能比較がこの意味を如実に表していると思います。という具合に評価していましたが、概要で解説したように、CCDとIODを組み合わせるトポロジー設計を採用したことによって”3Dレンダリングなど一部の分野を除くとマルチスレッド性能の集約できない”という2990WXの欠点が「AMD Ryzen Threadripper 3970X」ではしっかりと解消されています。
Ryzen Threadripper 2990WXは16コアを3Dレンダリングに、残り16コアを動画エンコードにというようなマルチタスキングには対応できても、32コアを1つのタスクに集約できるかどうかはそのタスクに依存するという意味で使用する人を選びますが(次世代Zen2ではCPUダイとI/Oダイが分けられて、この原因であるComputeダイのスループットというボトルネックが解消されると言われています)、Xeon W-3175Xはその両者をそつなくこなせます。
「AMD Ryzen Threadripper 3970X」は定格運用が一番おいしいCPUであるのに対して、Core-X同様にIntel Xeon W-3175Xもワットパフォーマンスが大幅に下がるものの手動オーバークロックによってさらに高いマルチスレッド性能を追求できますが、現実的に運用が可能な全コア4.2GHz程度にOCしても、各種クリエイティブタスクにおいて「AMD Ryzen Threadripper 3970X」の定格動作に届きません。
前世代32コアの2990WXはAMD公式もHEDT向けではなくサーバー・ワークステーション向けと限定するように弱点も多いCPUだったので、コスパとワッパが悪くとも28コアCPUとして高い汎用性を実現するIntel Xeon W-3175Xに魅力を感じましたが、「AMD Ryzen Threadripper 3970X」が比較対象になると性能で及ばず、消費電力は2倍、マザーボードを含めると価格も2倍、とかなり分の悪い戦いになります。
クリエイティブタスクにおいて20~30コア超のハイエンドデスクトップCPUとしては性能、省電力性、安価さのどれをとってみても「AMD Ryzen Threadripper 3970X」や下位モデルの「AMD Ryzen Threadripper 3960X」のほうが圧倒的に魅力を感じるという評価で間違いないと思います。
第3世代Ryzen Threadripperでは稀だと思いますが、使用するソフトウェアが最適化の問題でAND製CPU環境では性能を発揮できないと分かっているというケースでもない限り、現状ではIntel製CPUがここに食いこむのはかなり難しいと思います。
ゲーム性能について
まずゲーム性能検証の冒頭でも述べたようにフルHD~4K解像度の60FPSターゲットであれば4コア4スレッド以上の最新CPUであればどれを使用しても大差はありません。ただし最新の超高画質で重いゲームの場合、ゲームプレイの裏で次のシーンのロード作業が動くとロードが遅くなったりスタッター(カクツキ)が発生することがあるので、ゲーミングPCに搭載するCPUとしては6コア6スレッド以上を個人的に推奨しています。また60FPSターゲットであってもAssassin's Creed OdysseyのようにCPUによって差が出るケースもあるので、PCゲームメーカーの最適化の優先順位まで考慮するとIntelのメインストリーム向け最新CPUのPCゲーミングにおける安定性にはやはり信頼がおけます。
GeForce RTX 2080 Tiを使用したハイフレームレート環境について、第2世代以前のRyzen Threadripper CPUはIntel製CPUと比較してこの分野では超えられない壁があり明確に劣っていましたが、第3世代Ryzen ThreadripperではIntel第10世代Core-XやIntel Xeon W-3175Xに対して僅かに劣る傾向はあるものの、各ゲームタイトル別に比較できるまでに性能が改善しています。
前世代32コアCPUのRyzen Threadripper 2990WXは後に実装されたDynamic Local Modeを使用してもプレイ中にスタッターが発生する頻度が高く、PCゲーミングにおける実用性は微妙という問題がありましたが、「AMD Ryzen Threadripper 3970X」はクリエイティブタスクでも言及した”CCDとIODを組み合わせるトポロジー設計”や、様々な設計改良によるシングルスレッド性能の向上によって、ハイフレームレートなPCゲーミングに対応できるようになったところは特に見逃せないポイントです。
PCゲームもできる(ただし60FPSターゲットなら)と注意書きの付いていた第2世代以前の面影はほぼなく、ハイフレームレートにおいてもIntel製CPUと伯仲するゲーミング性能を発揮できるようになっているので、これまでPCゲームがメインだからという理由でIntel製CPUを選んでいたユーザーを、マルチスレッド性能のコストパフォーマンスという目に見える魅力で奪い取れるポテンシャルを「AMD Ryzen Threadripper 3970X」は備えています。
PC1台でPCゲームのプレイとゲーム実況の配信というマルチタスクを行っても、「AMD Ryzen Threadripper 3970X」なら32コアによる圧倒的なマルチスレッド性能で余裕をもって処理できますし、ゲームプレイ中に録画した動画の編集も快適にこなせます。
総評 - HEDT向けCPUとしては独壇場
「AMD Ryzen Threadripper 3970X」を同社のメインストリーム向け最上位Ryzen 9 3950Xと比較すると、32コア VS 16コアというコア数に比例して、マルチスレッド性能が重要になるクリエイティブタスクにおいてはシンプルに1.8~2.0倍の性能を発揮します。競合Intel製CPUではエンスージアスト向け第10世代Core-Xの最上位Core i9 10980XEが18コアなので言うに及ばず、エンタープライズに片足を突っ込む28コアのXeon W-3175Xですら全コア4.2GHzに手動OCしても性能で下克上が難しいという圧倒的なパフォーマンスです。前世代32コアCPUのRyzen Threadripper 2990WXが理想的に性能を発揮できた3DレンダリングやRAW現像でも40~50%の性能向上を遂げ、動画のエンコードやゲームビルドでマルチスレッド性能を集約できないという欠点は解消され、ハイフレームレートなPCゲーミングでIntel第10世代Core-Xに迫る性能を発揮しており、各方面で「AMD Ryzen Threadripper 3970X」は隙がありません。
用途を選ぶためサーバー・ワークステーション向けと限定されWXシリーズとして別ジャンル扱いされた2990WXと違い、コア数が4倍になった3700X、コア数が2倍になった3950Xとシンプルに評価できる汎用性の高さを「AMD Ryzen Threadripper 3970X」は実現しています。
「AMD Ryzen Threadripper 3970X」の価格面についても簡単に言及しておくと、32コアCPUとしては1999ドルという値付けは安価(というかIntel製CPU比で破格)ですが、1000ドル以下で販売された1950Xや2950Xを考えると、Threadripperブランドの位置付けが変わったというか、”安価なウルトラメニーコアCPU”から”よりエンスージアスト志向なCPU”へと路線変更がされた感じはします。16コアが一足飛びにメインストリーム向けへ降りたので、単に過渡期と言えなくもありませんが。
「AMD Ryzen Threadripper 3970X」は、Intel製CPUではマルチスレッド性能においてまともに対抗できる製品がなく、HEDT市場では独壇場な存在と言っても過言ではありません。コスパを推す印象だった前世代以前から、第3世代でついにシンプルな性能名でも”Threadripper”という名前を冠するに相応しいCPUに昇華されたと感じました。
以上、「AMD Ryzen Threadripper 3970X」のレビューでした。
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AMD Ryzen Threadripper 3970Xをレビュー
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) February 2, 2020
良い
✅32コア64スレッドの
✅TDP280Wで全コア3.8~3.9GHz
✅CCDを跨ぐメモリアクセスという
2990WXで問題だったボトルネックを解消
✅Xeon W-3175Xを20~35%も上回る
悪いor注意
⛔25万円と高価(32コアとしては非常に安価)https://t.co/047BamfsVg
・TRX40マザーボードの販売ページ:
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Ryzen Threadripperは従来のCPUに比べて非常に大きいヒートスプレッダが採用されているので、大型ベースコアを採用するThreadripper専用CPUクーラーがおすすめです。
Noctua NF-A12x25 PWM 120mmファン 定格2000RPM PWM対応
Noctua NF-A12x25 ULN 120mmファン 定格1200RPM PWM対応
Noctua
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Noctua NH-U14S TRX4-SP3 - 140mm [Noctua正規代理店]
Noctua NH-U12S TRX4-SP3 - 120mm [Noctua正規代理店]
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Noctua
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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