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Intelの最新エンスー向けCPUである第10世代Core-Xから18コア36スレッドの最上位モデル「Intel Core i9 10980XE(型番:BX8069510980XE)」をレビューしていきます。
Core i9 10980XEが、Intelの仕様値通りTDP165Wで運用できるのか、同製品が後継にあたる前世代18コア36スレッドCPUのCore i9 9980XEや競合AMDのメインストリーム向け16コア32スレッドRyzen 9 3950Xと比較してクリエイティブタスクやPCゲーミングにおいてどれくらい性能を発揮しているのか各種ベンチマーク比較によって徹底検証します。

製品公式ページ:https://ark.intel.com/content/www/jp/ja/ark/products/198017/intel-core-i9-10980xe-extreme-edition-processor-24-75m-cache-3-00-ghz.html

Intel Core i9 10980XE レビュー目次
1.Intel Core i9 10980XEの外観・付属品・概要
2.Intel Core i9 10980XEの検証機材・動作設定
3.Intel Core i9 10980XEの動作クロック・消費電力・温度
4.Intel Core i9 10980XEの基礎ベンチマーク
5.Intel Core i9 10980XEのクリエイティブ性能
・3Dレンダリング性能
・動画エンコード性能
・RAW現像性能
・PCゲーム/スマホアプリのビルド性能
6.Intel Core i9 10980XEのゲーミング性能
・4K解像度/60FPSターゲット
・フルHD解像度/ハイフレームレート
7.CPUエンコーダとリアルタイム配信について
8.Intel Core i9 10980XEのレビューまとめ
・温度・消費電力について 【OC耐性について】
・クリエイティブ性能について
・ゲーム性能について
・総評 - 最大の欠点は”買えない”こと
Intel Core i9 10980XEの外観・付属品・概要
「Intel Core i9 10980XE」の外観や付属品について簡単にチェックしておきます。またこの章では「Intel Core i9 10980XE」の仕様等について簡単に触れておきたい概要もあれば紹介します。
Core i9 10980XEのパッケージは、12面体でサッカーボールなどと呼ばれて話題になったCore i9 9900Kや前世代Core i9 9980XEと同様に、黒色のきんちゃく袋で保護されています。

Core i9 7980XEのパッケージと比較するとパッケージ外装の質感やデザインは同じですが、Core i9 10980XEや前世代Core i9 9980XEのほうが一回り大きくなっています。梱包の形態も変わっていました。



Core i9 10980XEはLGA2066ソケット対応CPUなので外観は旧世代とほぼ同じです。

(以下CPU本体の外観については特に差異がないのでCore i9 9900XとCore i9 7900Xの写真を流用します。7900Xは1年以上検証で着脱を繰り返してきたのでヒートスプレッダが大分くたびれています。)


ヒートスプレッダの右上を見ると「Intel Core i9 10980XE」はCPUダイ-ヒートスプレッダ間のTIMがソルダリング風なSTIMに変わったのでCore i9 7980XEなど初代Core-Xにはなかった穴がIHSの右上に開いています。

「Intel Core i9 10980XE」の動作倍率について、仕様値はベースクロック3.0GHz、TB2.0ブーストクロック4.6GHz(2コアまで)、TBM3.0ブーストクロック4.8GHz(2コアまで)となっており、さらに従来モデルでは非公表だった全コア最大動作倍率も公表され、全コア最大動作倍率は3.8GHzです。
実際に組み込んで確認したところ、「Intel Core i9 10980XE」の1コアから全18コアまで負荷がかかった時のコア数に対する動作倍率は『最大動作コア数 / 最大動作倍率』を1セットとして、[2/48, 4/47, 12/43, 16/39, 18/38]となっていました。

Core i9 10980XEと前世代Core i9 9980XE、競合AMDのメインストリーム向け最上位CPUであるRyzen 9 3950Xとエンスー向けCPUのRyzen Threadripper 3960Xを比較すると次の簡易比較表のようになっています。
Core i9 10980XE スペック簡易比較 | ||||
Core i9 10980XE |
Core i9 9980XE |
Ryzen TR 3960X |
Ryzen 9 3950X |
|
コアスレッド | 18コア36スレッド | 24コア48スレッド | 16コア32スレッド | |
ベースクロック | 3.0GHz | 3.0GHz | 3.8GHz | 3.5GHz |
全コア最大動作倍率 |
3.8GHz | 3.8GHz(非公表) | - |
- |
TB2.0 | 4.6GHz | 4.4GHz | - |
- |
TB3.0(1/2コア最大) |
4.8GHz | 4.5GHz | 4.5GHz | 4.7GHz |
L3キャッシュ | 24.75MB | 140MB | 64MB | |
TDP | 165W | 180W | 180W | |
CPU直結PCIEレーン | 48 | 44 | 56 | 16 + 4 |
おおよその国内価格 (北米希望小売価格) |
14万円 (979ドル) |
24万円 (1979ドル) |
18万円 (1399ドル) |
9.8万円 (749ドル) |
Core i9 10980XEと前世代のCore i9 9980XEやCore i9 7980XEを比較すると、標準の動作倍率設定は次のようになっています。Core i9 9980XEからCore i9 10980XEでの変化は少コア負荷時の動作倍率引き上げのみとなっており全18コア負荷時の最大動作倍率は3.8GHzのまま、またベースクロックも3.0GHzで変わりありません。
Core i9 10980XE: [2/48, 4/46, 12/43, 16/39, 18/38]
Core i9 9980XE: [2/45, 4/42, 12/41, 16/39, 18/38]
Core i9 7980XE: [2/44, 4/40, 12/39, 16/35, 18/34]

「Intel Core i9 10980XE」については、TDP165Wに対してベースクロック3.0GHzというスペックはCore i9 9980XEから据え置きなので、第10世代でも第9世代から電力効率および単純な性能に大きな差はなさそうです。一方で北米希望小売価格は979ドルと半額に引き下げられています。
Intel第10世代Core-Xはいずれも第9世代Core-Xの同コア数モデルに対して半額近くまで価格が下がり、1.74~2.09倍というコストパフォーマンスの上昇を裏付けています。

またIntel第10世代Core-Xの新たな特徴として、CPU直結PCIEレーン数が44レーンから48レーンに4レーン分だけ増え、メモリ周波数は2933MHzをネイティブサポート、32GBメモリを正式サポートし最大256GBのシステムメモリに対応となっています。

Core i9 10980XEやCore i9 9980XEなど第10/9世代Core-Xと、Core i9 7980XEなど初代Core-Xの大きな違いとして、Core i9 7980XEな初代Core-XではCPUダイ-ヒートスプレッダ間のTIM(Thermal Interface Material)にはシリコングリスが使用されており冷え具合に難があると批判されていましたが、今回レビューするCore i9 10980XEなど第10世代Core-XのTIMは質の高いソルダリングに近い熱伝導効率を発揮できる「STIM」が採用されています。

Intel Core i9 10980XEの検証機材・動作設定
以下、「Intel Core i9 10980XE」の各種検証を行うベンチ機、および比較対象となる各CPUのベンチ機の詳細となります。Intel LGA2066(X299)環境 テストベンチ機の構成 | |
CPU | Intel Core i9-10980XE(レビュー) Intel Core i9-9980XE(レビュー) Intel Core i9-7980XE(レビュー) Intel Core i9-7900X(レビュー) |
マザーボード | ASRock X299 OC Formula (レビュー) |
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36 (レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM x3 (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z Black F4-4200C19Q2-64GTZKK DDR4 8GB*4=32GB (レビュー) 3600MHz, CL16-16-16-36-CR2 |
ビデオカード(共通) | ZOTAC RTX 2080Ti AMP Extreme Core (レビュー) |
システムストレージ(共通) | Samsung 860 PRO 256GB (レビュー) |
OS(共通) | Windows10 Home 64bit |
電源ユニット(共通) | Corsair HX1200i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |

Intel LGA2066(X299)環境では検証機材マザーボードとして「ASRock X299 OC Formula」を使用しています。「ASRock X299 OC Formula」でCPU動作設定を標準設定のAutoとした場合、同環境で検証する各CPUのPerCore最大動作倍率は仕様のままですが、PL1/PL2が無効化されて仕様と異なった電力制御で動作してしまいます。
Intel Core-X CPU各種はAuto設定のままでは消費電力が大幅にTDPから超過し、また一部ソフトウェアでは逆に十分にPackage Powerが上がらない現象も発生するため、下のようなBIOS設定(7900Xの例)によってIntelの仕様に合わせたPerCore最大動作倍率および電力制限を適用し、これを”定格動作”として各種測定を行っています。
Core-Xについては電力制限に関するIntel公式の仕様が公表されていないので第9世代Core-Sの設定を参考にしてPL1=TDP、PL2=TDP*1.25、Tau=8とします。


上の設定はASRock製マザーボードのBIOSメニューから設定した例ですが、ASRock、GIGABYTE、MSIなど主要4社のマザーボードであれば同種の設定項目が用意されているはずなので、同じように電力制限を課すことができます。再起動等で初期化されることもあるので、確実性の高いBIOSからの設定が推奨なのですが、「Intel Extreme Tuning Utility」からも設定が可能です。
ベンチ機のシステムストレージにはSamsung製MLCタイプ64層V-NANDのメモリチップを採用する2019年最速のプロフェッショナル向け2.5インチSATA SSD「Samsung SSD 860 PRO 256GB」を使用しています。Samsung SSD 860 PROシリーズは容量単価が高価ではあるものの、システムストレージに最適な256GBや512GBモデルは製品価格としては手を伸ばしやすい範囲に収まっており、Intel Core-XやAMD Ryzen TRのようなハイエンドデスクトップ環境はもちろん、メインストリーム向けでもハイパフォーマンスな環境を目指すのであれば、システムストレージ用に一押しのSSDです。
・「Samsung SSD 860 PRO 256GB」をレビュー

第10世代Core-Xは手動OCすると発熱がかなり大きくなるので大型簡易水冷CPUクーラーが推奨されますが、360サイズや240サイズなど120mmファンを複数搭載できるマルチファンラジエーター採用の簡易水冷CPUクーラーを使用するのであれば、超硬質かつ軽量な新素材「Sterrox LCP」の採用によってフレーム-ブレード間0.5mmの限界を実現させた次世代汎用120mm口径ファン「Noctua NF-A12x25 PWM」への換装もおすすめです。1基あたり4000円ほどと高価ですが、標準ファンよりも静音性と冷却性能を向上させることができます。
・「Noctua NF-A12x25 PWM」を360サイズ簡易水冷に組み込む

CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。

グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。Thermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスで適量が塗布されていれば、CPUクーラー固定時の圧着でヒートスプレッダ全体へ自然に伸びるので塗り方を気にする必要もありません。

サーマルグリスの代用品として、数年スパンの長期使用においても性能低下が基本的になく再利用も可能、グリスが零れてマザーボードが汚れたり壊れる心配もないので、炭素繊維サーマルシート「Thermal Grizzly Carbonaut」もオススメです。
・「Thermal Grizzly Carbonaut」はCore i9 7980XEを冷やせるか!?

Intel Core i9 10980XEの動作クロック・消費電力・温度
「Intel Core i9 10980XE」に関する検証のはじめに、「Intel Core i9 10980XE」の動作クロック、消費電力、温度など同CPUの基本的な動作についてチェックしていきます。「Intel Core i9 10980XE」は18コア36スレッドのCPUで、Intel公式の仕様ではベースクロック3.0GHz、単コア最大ブーストクロック4.8GHzとなっています。

「Intel Core i9 9980XE」は18コア36スレッドのCPUであり、定格動作において1コアから全18コアまで負荷がかかった時のコア数に対する動作倍率は『最大動作コア数 / 最大動作倍率』を1セットとして、[2/48, 4/46, 12/43, 16/39, 18/38]となっていました。

HWiNFOから「Intel Core i9 10980XE」のコアクロックの挙動を確認したところ、確かに負荷の軽い場面では最大4.8GHz程度で動作するコアがありました。

また「Turbo Boost Power Max(長期間電力制限/Power Limit 1)」と「Turbo Boost Short Power Max(短期間電力制限/Power Limit 2)」は検証機材マザーボードASRock X299 OC FormulaのBIOS標準設定ではいずれも無制限に変更されていました。
そのため検証に当たって手動で定格動作の電力制限を課しますが、Core-Xについては電力制限に関するIntel公式の仕様が公表されていないので第9世代Core-Sの設定を参考にしてPL1=TDP、PL2=TDP*1.25、Tau=8とします。

「Intel Core i9 10980XE」をX299マザーボード「ASRock X299 OC Formula」と組み合わせTDP:165W動作の電力制限を課してCinebenchやAviult&x264エンコードを実行したところ、開始直後はCPU Package PowerがTDP*1.25を上限としてTDP以上に上昇しますが、短期間電力制限時間の8秒を超過するとTDP(長時間電力制限)と同じ165Wに抑制されます。

全18コアへ長期的に大きな負荷がかかった時の動作クロックは平均3.0GHz程度でした。この時のCPU Package Powerは165W前後で推移しています。

続いてCPU消費電力の検証結果をチェックしていきますが、当サイトのCPUレビューでは主として”CPU温度への影響要因”という意味においてCPU消費電力を評価しているので、動画のエンコードによって長期間電力制限が効いている状態の平均的な消費電力をCPU消費電力として比較します。
個人的な意見としては短期間電力制限は短期間かつCPU温度によっても制御されるのでCPU温度への影響要因として比重は小さく、また瞬間ピーク電力はせいぜいがTDP+100W程度なので、マザーボードVRM電源の破損を心配するほどではなく、その程度の電力超過は電源ユニットで十分吸収できるので、評価対象としてあまり意味がないと思っています。
またCPU製品仕様のTDPについては、定義がIntel/AMDで厳密には異なり、各社の具体的な測定・算出方法も不明なので、CPU動作クロックを含めて総合的に判断する必要があるものの、基本的には長期間電力制限時の消費電力がTDP仕様値とほぼ一致、もしくはTDP仕様値を下回れば正常であると評価します。
当レビュー記事では簡単のため割愛しますが、CPUの消費電力に関する評価基準の補足として下記の記事も参考にしてください。
・2019年最新CPUの消費電力・発熱・TDP・温度について - 爆熱評価のウソほんと

CPU消費電力の測定には電源ユニット「Corsair HX1200i」のCorsair Linkによる電力ログ機能を用いてコンセントからの出力ではなく変換ロスを差し引いた入力電力をチェックしています。
また電力測定の際は上記の主電源ユニットに加えて、CPUへの電力供給を行うEPS端子を除いた、各種電源端子へ接続するために別の副電源ユニットを使用しています。そのため測定値にはEPS電源端子を経由して供給されるCPU消費電力以外の消費電力は含まれません。なお電源ユニットに対する実際の最大瞬間負荷は測定値より50~100W上回る場合があるので電源ユニットの電源容量選択の参考にする場合は注意してください。


CPUの消費電力や温度の測定を行う負荷テストについては、FF14ベンチマークの動画(再生時間6分40秒、4K解像度、60FPS、容量5.7GB)を変換ソースとして、Aviutl&x264を使って動画のエンコードを行います。動画エンコードの同時実行数については4~6コアは並列なし、8~14コアは2並列実行、16コア以上は3並列実行としています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTやPrimeなど専用負荷ソフトを使用しているレビューもありますが、管理人の私見としてはCPU負荷が非現実的なので、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースを想定した場合、ほぼ最大のCPU負荷となるx264による動画エンコードとストレステストに採用しています。

「Intel Core i9 10980XE」と比較対象の各CPUについて、上記負荷テスト中の”平均値を消費電力”、”最大値を瞬間的な最大電源負荷”と表記した場合、消費電力測定結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
今回はIntel仕様値のTDP165Wとなるように電力制限を課しているので当然ですが、「Intel Core i9 10980XE」のCPU消費電力は186Wとなりました。他CPUと消費電力のスケーリングをみてもIntel仕様を満たす消費電力であり、問題ないことが確認できます。ピーク電力負荷は244Wをマークしていますが、これは短期間電力制限によるターボブーストが効くテスト序盤での電力負荷を示しています。

なおAMD Ryzen Threadripper環境については単純にEPS電源経由の消費電力のみではCPU消費電力を評価できないので注意が必要です。
同じストレステストにおいて、システム消費電力(EPS電源消費電力と同じくCorsair HX1200iの出力電力ログを参照)と、CPU Package Power(HWiNFOによってソフトウェアモニタリング)の2種類についても測定し、各CPUで違いを分かりやすくするため、システム消費電力とEPS電源消費電力、システム消費電力とCPU Package Powerの2種類の差分を取ってグラフ化しました。
システム消費電力とEPS電源消費電力の差分を見ると、AMD Ryzen 9 3950XとIntel Core i9 10980XEは40~50W程度に対して、Ryzen Threadripper各種は100W以上の差があります。またシステム消費電力とCPU Package Powerの差分を比較すると、2990WXと3970Xが20W程度大きいですが、60W前後で差が小さくなりました。
Ryzen Threadripper環境ではATX24PIN経由でCPU消費電力のうち一部が供給されています。そういった事情もありCPU消費電力の正確な評価が難しいのですが、システム消費電力の相対的な関係を見る限り、Ryzen Threadripper各種はCPU消費電力=TDPと考えて問題ないと思います。

続いて「Intel Core i9 10980XE」が一般的な120サイズ冷却ファン搭載のサイドフロー型空冷CPUクーラーで運用できるかどうかについて解説していきます。(なおCPUの仕様上、結果に大きな差は出ないので以下ではCore i9 9980XEでの検証結果を引用します)
検証負荷には消費電力測定と同様に動画のエンコードを実行しています。空冷CPUクーラー使用時のCPU温度検証の検証機材CPUクーラーには、Noctua製サイドフロー型CPUクーラーのスタンダードモデル「Noctua NH-U12S」を使用しており、冷却ファンは次世代120mmファン「Noctua NF-A12x25 PWM」に交換しています。また120サイズ簡易水冷CPUクーラーの環境を想定して、ラジエーターは360サイズですが120mmファンを1基だけ動作させた状態についても同様に測定を行いました。

「Intel Core i9 9980XE」を空冷CPUクーラーや120サイズ簡易水冷CPUクーラーで冷やしてみた場合、Intel公式の仕様値であるTDP165Wの定格動作の通りに電力制限を行うとCPU温度は60度前後に収まっており、一般的な120サイズ冷却ファンの空冷/簡易水冷CPUクーラーでも問題なく運用できることがわかります。
グラフのようにCPU消費電力165W前後であればCPU温度的にかなり余裕があるのでCPU温度80度以下を目標値として、200~250W程度のCPU消費電力になる電力解除orOC設定であれば一般的な120サイズ冷却ファンの空冷/簡易水冷CPUクーラーで運用することができそうです。

また参考までに下のグラフは8コア16スレッドのメインストリーム向けCPUであるCore i9 9900Kを上と同じ空冷CPUクーラーで冷やした時の様子です。Core i9 9900Kを全コア4.7GHzで動作させるとCPU消費電力150W程度となり、Core i9 9980XEの定格消費電力180Wより低いにもかかわらず、空冷CPUクーラーの冷却が追いつかず、CPU温度が80度を軽くオーバーしています。

Core i9 9980XEなどCore-X CPUのほうがCPUダイが倍以上大きく、またヒートスプレッダも大きいので、上のように長時間負荷時の消費電力とCPU温度の逆転が発生しています。
Core-Xシリーズは消費電力だけを見て冷やすのが難しいと評価されることがありますが、接触面積の大きさ(熱交換効率の高さ)で有利なので、消費電力150WのCore i9 9900Kに比べて消費電力180WのCore i9 9980XEのほうが大きな消費電力(発熱)でも冷やしやすくなっています。

国内外の多くのレビューにおいては、検証機材として使用されているマザーボードの標準設定がTDP165Wを満たす定格動作を無視したものになっているので、Intel Core i9 9980XEはしばしば消費電力(発熱)が非常に大きく、CPU温度が高温になるためハイエンド空冷や簡易水冷のCPUクーラーが必要である、と評価されることが多いですが、仕様値通りにTDP165Wの動作設定であれば当然ながら消費電力は抑制され、120サイズ冷却ファンの一般的な空冷/簡易水冷CPUクーラーによって問題なく運用できます。
当サイトでは1年以上前のCore i9 7900Xのレビューから指摘していたことですが、『IntelはES品等の検証において定格動作設定を使用するガイドラインを示す』、『マザーボードベンダーはBIOS標準設定に定格動作を満たす設定を採用する』の2点を徹底してもらいたいというのが管理人の意見です。
Intel Core i9 10980XEの基礎ベンチマーク
Intel Core i9 10980XEの基本的なCPU性能を専用ベンチマークソフトで検証しました。この章ではPCMark 8とPCMark 10という総合ベンチマークソフトを使用していますが、デスクトップ向けの高性能CPUの性能比較ベンチマークとしては頭打ちな傾向があります。レビュー項目の1つとして参考までにスコア比較していますが、実用的なCPU性能については後半の個別性能比較を参考にしてください。
また同ベンチマークはシングルスレッド性能(動作クロックの高さ)が重要になる傾向も強く、近年のCPUを見ると、Intel第8/9世代Coreに比べて第2世代以前のAMD Ryzen CPUでは低めのスコアが出ていましたが、AMD第3世代RyzenはIntel第8/9世代Coreとそん色ないパフォーマンスを発揮できるようになっています。
まずは「PCMark 8 Creative Test (Run Accelerated)」のベンチマーク結果をチェックしていきます。「PCMark 8」は動画再生能力、DirectX9のグラフィック性能、Webブラウジング、ビデオチャットなど一般ユースにおけるPCの総合的な性能を測定するためのベンチマークソフトです。

「Intel Core i9 10980XE」を含めた各CPU環境のPCMark 8ベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】

「PCMark 10 Extended」のベンチマーク結果をチェックしていきます。「PCMark 10」はPCMark 8と同様にPCの総合的な性能を測定するためのベンチマークソフトですが、DirectX11に対応するなどPCMark 8よりも最近のPCの性能測定に最適化されています。

「Intel Core i9 10980XE」を含めた各CPU環境について、PCMark 10ベンチマークの総合スコアを比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】

「PCMark 10 Extended」にはPCの基本性能を測る「Essentials」、ビジネスアプリケーション性能を測る「Productivity」、クリエイティブ性能を測る Digital Content Creation」、ゲーム性能を測る「Gaming」の大きく分けて4つのテストグループがあるので、個別にベンチマークスコアを比較してみました。
PCの基本性能を測る「Essentials」は、アプリケーションの起動に要する時間を測る「App Start-up」、 ウェブブラウジングの性能を測る「Web Browsing」、1対1または多対多のビデオ会議をシミュレートする「Video Conferencing」の3つのワークロードで構成されています。
モバイル版Core i7 1065G7を搭載するSurface Pro 7との比較でわかりますが、一般的なPC利用において大半のデスクトップ向けCPUは十分な性能を備えています。
「Essentials」について「Intel Core i9 10980XE」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】

ビジネスアプリケーション性能を測る「Productivity」は、ワープロソフト(マイクロソフトWordなど)の処理性能をシミュレートする「Writing」、表計算ソフト(マイクロソフトExcelなど)の処理性能をシミュレートする「Spreadsheets」の2つのワークロードで構成されています。
モバイル版Core i7 1065G7を搭載するSurface Pro 7との比較でわかりますが、一般的なオフィスワークにおいて大半のデスクトップ向けCPUは十分な性能を備えています。
「Productivity」について「Intel Core i9 10980XE」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】

クリエイティブ性能を測る「Digital Content Creation」は、写真に対するフィルタリング処理の性能をシミュレートする「Photo Editing」、動画編集の性能をシミュレートするワークロード「Video Editing」、レイトレーシングによる3Dグラフィクス制作(3Dレンダリング)をシミュレーションする「Rendering and Visualization」の3つのワークロードで構成されています。
「Digital Content Creation」について「Intel Core i9 10980XE」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】

ゲーム性能を測る「Gaming」は、グラフィックボードの性能測定で幅広く活用されているベンチマークソフト「3DMark」に収録された「Fire Strike」と同じベンチマークテストを実行するワークロードです。
「Gaming」について「Intel Core i9 10980XE」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】

Intel Core i9 10980XEのクリエイティブ性能
Intel Core i9 10980XEについて3Dレンダリング、動画エンコード、RAW現像、PCゲーム/スマホアプリのビルドなどクリエイティブ作業に関する性能を各種ベンチマークソフトや実際のアプリケーションで検証しました。Intel Core i9 10980XEの3Dレンダリング性能
CPUのマルチスレッド性能を比較するベンチマークソフトとして国内外で最も知られている「Cinebench R15」をはじめとして、Cinebenchの2019年最新バージョン「Cinebench R20」、オープンソース3DCGソフト「Blender」の公式ベンチマークソフト、3Dレンダラー「Corona Renderer」の公式ベンチマークソフト、3Dレンダラー「V-Ray」の公式ベンチマークソフトの4種類を使用して、CPUの3Dレンダリング性能についてベンチマーク測定を行いました。Cinebench R15は3Dレンダリング性能を測定するベンチマークソフトになっており、マルチスレッド性能を測定するテストとシングルスレッド性能を測定するテストの2種類を実行しています。また2019年最新バージョンのCinebench R20についてはマルチスレッド性能を測定するテストのみを実行しました。


Cinebench R15 マルチスレッド性能テストについて「Intel Core i9 10980XE」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】

Cinebench R15 シングルスレッド性能テストについて「Intel Core i9 10980XE」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】

Cinebench R20 マルチスレッド性能テストについて「Intel Core i9 10980XE」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】

3DCGソフト「Blender」の公式ベンチマークソフトについて「Intel Core i9 10980XE」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】

「Blender」の公式ベンチマークソフトのレンダリング時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i9 9900Kを基準にして(全CPU比較データではCore i5 9400Fが基準)、「Intel Core i9 10980XE」を含めた各種CPUのレンダリング速度を性能比としてグラフ化しました。 【全CPU比較データ】

3Dレンダラー「Corona Renderer」の公式ベンチマークソフトについて「Intel Core i9 10980XE」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】

3Dレンダラー「Corona Renderer」の公式ベンチマークソフトのレンダリング時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i9 9900Kを基準にして(全CPU比較データではCore i5 9400Fが基準)、「Intel Core i9 10980XE」を含めた各種CPUのレンダリング速度を性能比としてグラフ化しました。 【全CPU比較データ】

3Dレンダラー「V-Ray」の公式ベンチマークソフトについて「Intel Core i9 10980XE」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】

3Dレンダラー「V-Ray」の公式ベンチマークソフトのレンダリング時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i9 9900Kを基準にして(全CPU比較データではCore i5 9400Fが基準)、「Intel Core i9 10980XE」を含めた各種CPUのレンダリング速度を性能比としてグラフ化しました。 【全CPU比較データ】

Intel Core i9 10980XEの動画エンコード性能
続いて無料で利用できる動画編集ソフトとして国内外で多数のユーザーがいる「Aviutl」と、商用動画編集ソフト「TMPGEnc Video Mastering Works 7」と「Adobe Premiere Pro(Media Encoder)」を使用して、「Intel Core i9 10980XE」を含めた各種CPUの動画エンコード性能を比較していきます。AviutlとTMPGEnc Video Mastering Works 7はいずれも、現在主流なH.264 (MPEG-4 AVC) ビデオストリームへエンコードを行う「x264」エンコーダ、そしてH.264より高圧縮・高画質で次世代規格として期待されているH.265(HEVC) ビデオストリームへエンコードを行う「x265」エンコーダが使用できるので、CPUをリソースとして各エンコーダで共通の動画ファイルのエンコードを行いました。
エンコードを行う動画ファイルについては、Tom Clancy's Ghost Recon Wildlandsのゲーム内ベンチマーク(60秒ほど)をNVIDIA ShadowPlayで録画したものを使用しています。1920×1080/60FPS/50Mbpsと3840×2160/60FPS/120Mbpsの2種類の動画ファイルを作成し、「1920×1080 to 1920×1080」、「3840×2160 to 1920×1080」、「3840×2160 to 3840×2160」の3種類のエンコードを行っています。
Aviutlのx264/x265のエンコード設定は次のスクリーンショットのようになっています。TMPGEnc Video Mastering Works 7については固定ビットレートで1920×1080へエンコードする場合は25Mbps、3840×2160へエンコードする場合は60Mbpsに設定しています。


なおエンコーダと解像度設定が同じであればaviutlとTMPGEncのCPU別エンコード速度の傾向は概ね一致するので、aviutlのケースを抜粋してグラフを掲載します。厳密にはソフトウェアによって若干CPUメーカー別で得意不得意もあるので、aviutlとTMPGEncの全CPU比較データはリンクから各自で参照してください。x2/x3/x4のバーについては同じエンコードを添え字の数だけ並列実行した時の合計変換フレームレートを示しています。
なおフルHD解像度では8コア16スレッド程度、4K解像度では16コア32スレッド程度でマルチスレッド分散がボトルネックになり始め、1つのエンコードだけではCPUが遊び始めます。20コアオーバーのウルトラメニーコアCPUでマルチスレッド性能をフル活用しようと思うと、8K解像度のような超高解像度のエンコード、もしくは4K動画の複数並列エンコードを行う必要があるので注意してください。
x264エンコーダによって1920×1080解像度の動画をH.264 (MPEG-4 AVC)の1920×1080解像度へエンコードした時のエンコード速度について「Intel Core i9 10980XE」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)】

x264エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.264 (MPEG-4 AVC)の1920×1080解像度へエンコードした時のエンコード速度について「Intel Core i9 10980XE」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)】

x264エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.264 (MPEG-4 AVC)の3840×2160解像度へエンコードした時のエンコード速度について「Intel Core i9 10980XE」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)】

x265エンコーダによって1920×1080解像度の動画をH.265(HEVC)の1920×1080解像度へエンコードした時のエンコード速度について「Intel Core i9 10980XE」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)】

x265エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.265(HEVC)の1920×1080解像度へエンコードした時のエンコード速度について「Intel Core i9 10980XE」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)】

x265エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.265(HEVC)の3840×2160解像度へエンコードした時のエンコード速度について「Intel Core i9 10980XE」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)】

加えてAdobe Premiere Pro(Media Encoder)による動画エンコードについても、「Intel Core i9 10980XE」を含めた各種CPUの動画エンコード性能を比較しました。
Adobe Premiere Proのエンコード設定はCPUリソースのx264エンコードで、1920×1080へエンコードする場合は25Mbps、3840×2160へエンコードする場合は60Mbpsの固定ビットレートです。Media Encoderでは1つのプロジェクトを複数の設定で同時にエンコードできますが、複数のプロジェクトを同時にエンコードすることができないので単一エンコードのみを比較しています。
Adobe Premiere Proによる動画エンコードについてはAMD Ryzen CPUは苦手である評価されていることが多いですが、2019年現在では最適化も進んでおり、コアスレッド数とコアクロックに比例した性能が発揮できるようになっています。
【Adobe Premiere Pro 全CPU比較データ:1920to1920 / 3840to1920 / 3840to3840】

Intel Core i9 10980XEのRAW現像性能
続いてDxO PhotoLabによるRAW現像を行って「Intel Core i9 10980XE」を含めた各種CPUの性能を比較していきます。「SONY DSC-RX100M5」で撮影した5472×3648解像度のRAW画像ファイル 100枚に対して、DxO PhotoLabの画質プリセット「DxO 標準」をベースにノイズ除去を「PRIME」に変更したプリセットを適用し、RAW現像を行いました。なおDxO PhotoLabによるRAW現像は並列処理数を設定できますが、CPUコア数の半分もしくはそれより一つ少ないくらいの並列処理で最速になるようです。
DxO PhotoLabによるRAW現像速度について「Intel Core i9 10980XE」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】

Intel Core i9 10980XEのPCゲーム/スマホアプリのビルド性能
最後に「Unreal Engine 4」や「Unity」などフリーウェアながら高画質なPCゲームやスマホゲームを製作可能なゲームエンジンを使用したゲーム制作におけるCPU性能の検証として、「Unreal Engine 4」で「Intel Core i9 10980XE」を含めた各種CPUの性能を比較していきます。検証にはEpic Games Storeで無料配布されているデモプロジェクト「Infiltrator」を使用したビルド時間の比較を行います。検証設定としてリアルタイム表示はオフ、ライティングの品質をプロダクションとしています。Unreal Engine 4のバージョンは4.22.3、Windows10のバージョンは1903で統一しています。

「Unreal Engine 4 - Infiltrator」のビルド時間について「Intel Core i9 10980XE」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】

「Unreal Engine 4 - Infiltrator」のビルド時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i9 9900Kを基準にして(全CPU比較データではCore i5 9400Fが基準)、「Intel Core i9 10980XE」を含めた各種CPUのビルド速度を性能比としてグラフ化しました。 【全CPU比較データ】

Intel Core i9 10980XEのゲーミング性能
Intel Core i9 10980XEのPCゲームに関する性能を実ゲームを用いたベンチマーク測定で検証しました。なお章タイトルではゲーミング性能と表記してはいますが、Intel第7/8/9世代Core-SやAMD第2/3世代Ryzenなどここ数年で発売された4コア4スレッド以上のCPUであればフルHD~4K解像度の60FPSターゲットにおいてCPUボトルネックが発生するケースは多くありません。そのためCPUゲーム性能比較の具体的な内容は”高フレームレートにおけるCPUボトルネック比較”と表現するのが実状に即しています。
ただし最新の超高画質で重いゲームの場合、ゲームプレイの裏で次のシーンのロード作業が動くとロードが遅くなったりスタッター(カクツキ)が発生することがあるので、ゲーミングPCに搭載するCPUとして6コア6スレッド以上を個人的に推奨しています。
ゲームタイトルにもよりますがPCゲームにおけるCPU負荷は基本的にTDP内に収まることが多く、CPUコアクロックは全コア最大動作倍率に張り付きます。フレームレートに対するCPUボトルネックの緩和においては、この全コア最大動作倍率の高さが重要になり、クリエイティブタスクと違って電力制限は支配的ではなくなります。(PCゲームではIntel製CPUのPL1、AMD製CPUのPPTは影響をほとんど及ぼさなくなる)

Core i9 9900KやRyzen 7 3700XのようにTDPに対して全コア動作倍率の高いCPUでは、PCゲームにおいてもCPU使用率が高くなるハイフレームレートでCPU消費電力がTDPを超過するタイミングもありますが、TDP内に制限した場合と比較して大きな差は出ません。
そのためクリエイティブタスクなどここまでの検証において複数の電力制限で測定していたCPUも、PCゲームでは簡単のため電力制限が緩い方だけを使用して性能を測定します。

「Intel Core i9 10980XE」の場合はコア数が非常に多いのでバラつきがありますが、3.8~4.3GHzの高速で動作するコアが多数あります。

各CPUのゲーミング性能を測定するため統一検証機材として、2019年最新にして最速のGPUである「NVIDIA GeForce RTX 2080 Ti」を搭載したグラフィックボード「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme Core」を使用しています。

ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme Coreは、RTX 2080 TiのAIBパートナーの中でも屈指のOCチューニング力を誇るZOTACによって良質なGPUコアが選別され、リファレンスよりも200MHz以上も高いブーストクロック、さらにGDDR6メモリのメモリクロックまで引き上げるという、RTX 2080 Tiグラフィックボードで最速を狙えるファクトリーOCが施されています。加えて、ZOTACを高品質メーカーとして一躍ブランド力を押し上げたAMP Extremeシリーズの代名詞とも言える3スロットを占有する超弩級な大型GPUクーラーが採用され、静音性も非常に優れたモデルです。
・「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme」をレビュー

CPU別ゲーミング性能の比較には2019年最新PCゲームから、Assassin's Creed Odyssey、Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands、Shadow of the Tomb Raider、Middle-Earth: Shadow of Warの4種類を使用しています。60FPSの標準フレームレートをターゲットとした4K(3840×2160)解像度/高画質設定と、100FPS以上のハイフレームレートをターゲットとしたフルHD(1920×1080)解像度/中画質設定の2種類について、各ゲームで平均フレームレートと最小フレームレートを測定しました。

なおCPUボトルネック比較の性質上、平均FPSと最小FPSをある程度の精度で測定する必要があるため、検証ではほぼ同一シーンで測定が可能なゲーム内ベンチマークを使用しています。
Intel Core i9 10980XEのゲーム性能 - 4K解像度/60FPSターゲット
まずは60FPSの標準フレームレートをターゲットとした4K(3840×2160)解像度/高画質設定のゲーミング性能について「Intel Core i9 10980XE」や比較対象CPUのベンチマーク結果をチェックしていきます。なお上述の通り60FPSターゲットでは基本的にCPUボトルネックは発生しないので、グラフの掲載順は性能(平均フレームレート)による昇順ではなく、当サイト既定のCPU分類順としています。
Assassin's Creed Odyssey(4K解像度、超高-画質プリセット)に関する「Intel Core i9 10980XE」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】

Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands(4K解像度、非常に高い-画質プリセット)に関する「Intel Core i9 10980XE」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】

Shadow of the Tomb Raider(4K解像度、DirectX12、最高-画質プリセット)に関する「Intel Core i9 10980XE」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】

Middle-Earth: Shadow of War(4K解像度、ウルトラ-画質プリセット)に関する「Intel Core i9 10980XE」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】

Intel Core i9 10980XEのゲーム性能 - フルHD解像度/ハイフレームレート
続いて100FPS以上のハイフレームレートをターゲットとしたフルHD(1920×1080)解像度/中画質設定のゲーミング性能について「Intel Core i9 10980XE」や比較対象CPUのベンチマーク結果をチェックしていきます。Assassin's Creed Odyssey(フルHD解像度、中-画質プリセット)に関する「Intel Core i9 10980XE」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】

Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands(フルHD解像度、中-画質プリセット)に関する「Intel Core i9 10980XE」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】

Shadow of the Tomb Raider(フルHD解像度、DirectX12、中-画質プリセット)に関する「Intel Core i9 10980XE」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】

Middle-Earth: Shadow of War(フルHD解像度、中-画質プリセット)に関する「Intel Core i9 10980XE」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】

CPUエンコーダとリアルタイム配信について
ゲーム実況やライブ配信と呼ばれるPCゲームのリアルタイム配信について、現在ではNVIDIA GeForce GTX 1660やAMD Radeon RX 5600 XTなどミドルクラスGPUをエンコーダとすることでフルHD解像度で必要十分な画質とフレームレートが得られます。GPUエンコーダは動作自体も軽いので、これらGPUエンコーダの登場によってリアルタイム配信やプレイ動画の録画におけるCPUエンコーダの役目は終わったというのが一時期の私見でしたが、メインストリーム向けCPUのコアスレッド数の増加に伴い、x264 Mediumのような高画質プリセットのプレイ&録画が一般ユーザー的にも現実的になってきています。
Youtube LiveやTwitchなどリアルタイム配信(ライブストリーミング)サービスで、PS4/Xbox/Switch等のコンシューマーゲーム機やPCゲームのプレイ動画・ゲーム実況を快適に配信するのに必要なCPU性能については、現在、連載を続けている【快適配信】シリーズで詳細に解説しています
一口にゲーム実況と言っても、『1.ビデオキャプチャを使用してPCは録画配信作業のみを行う』、『2.PC1台で同時にゲームプレイと録画配信を行う』の2つのケースに大別され、どちらで使用するのかで要求されるCPU性能やCPUメーカー毎の得手不得手など事情が変わってくるので注意してください。
ざっくりと現状でCPUを使用したリアルタイム配信・ゲーム実況に要求されるCPU性能だけ述べておくと、『ビデオキャプチャを使用した配信の最低水準は6コア12スレッドのCPU』、『ゲームをプレイしながら配信の最低水準は8コア16スレッドのCPU』です。
・【快適配信】シリーズの記事一覧へ

画質と快適性を求めるなら録画・配信専用マシンもオススメ
ビデオキャプチャ業界の進歩も目覚ましく、2018年に発売された「AVerMedia Live Gamer Ultra」は4K/60FPS/HDRやフルHD/240FPSの映像ソースを無遅延なパススルー表示しつつ、フルHD/60FPSのプレイ動画として録画・配信できるUSB接続外付け機器型ビデオキャプチャとなっており、プレイ動画の録画・配信に関する多様なニーズを網羅し得る名機です。・4K/HDRや240FPSのパススルー対応「AVerMedia Live Gamer Ultra」をレビュー

前述の通りフルHD/60FPSの録画・配信であればGTX 1060程度の性能のGPUをエンコーダとすることで必要十分な画質が得られて動作も軽いので、録画配信のために高性能な反面、非常に高額なCPUに投資するよりも、多少コストがかかっても「AVerMedia Live Gamer Ultra」などのビデオキャプチャと組み合わせて録画・配信用サブ機を構築するほうが、録画・配信の手法としてはわかりやすくてハードルが低いと思います。

・AVerMedia製ビデオキャプチャの最新おすすめ機種を機能比較

「AVerMedia Live Gamer Ultra」などUSB接続外付け機器型ビデオキャプチャと組み合わせて録画・配信用サブ機を構築するのであれば、ASRock Deskmini GTX 1060ベアボーン採用BTO PCの「G-GEAR alpha」や「GALLERIA Mini 1060」がおすすめです。
PCサイズはコンパクトなのでサブ機としてもあまり余分にスペースを占有せず、GPUにはGTX 1060を搭載しておりフルHD/60FPSのGPUエンコードにも余裕で対応できて、CPUには最大で「G-GEAR alpha」ならCore i7 8700、「GALLERIA Mini 1060」ならCore i7 7700を選択可能、2基の2.5インチSATA SSDと3基のM.2 SSDを搭載可能なのでストレージ拡張性も十分です。ASRock Deskmini GTXシリーズについてはレビューも公開しているので参考にしてみてください。
・GTX 1060搭載で容積2.7LのスーパーコンパクトPC「GALLERIA Mini 1060」をレビュー

・ G-GEAR alphaシリーズの販売ページへ

Intel Core i9 10980XEのレビューまとめ
「Intel Core i9 10980XE(型番:BX8069510980XE)」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ or 概要
- Intelの18コア36スレッドCPU (Intelのメインストリーム向けは最大8コア16スレッドまで)
- TDP165W制限下で全コア同時2.9~3.0GHz動作が可能
- TDP165Wに制限すれば120mmファンの空冷/簡易水冷CPUクーラーでも運用可能
- エンスー向けメニーコアCPUながらハイフレームレートPCゲーミングにも強い
- 前世代9980XEと比較して価格が半額に
- 19年2月現在、発売から2か月経っても供給が安定せずに買えない
- 競合するAMD製CPUと比較すると省電力性能が悪い
- MB標準設定では消費電力が非常に高くなる可能性あり
温度・消費電力について
Intel Core i9 7900Xの登場以降、Intel製CPUは検証機材に使用するマザーボードに依るとはいえ基本的にIntelの仕様を満たす電力制限が無効化されているため、Core i9 7980XEや9980XEと同じく、Core i9 10980XEもまたCPU温度と消費電力が非常に高いと多くのレビューでは評価されています。しかしながら電力制限をIntelの仕様に合わせて設定すれば当然、Core i9 10980XEは問題なくTDP165WのCPUとして運用することができ、TDP165Wの電力制限を課していれば120サイズの一般的な空冷CPUクーラーや簡易水冷CPUクーラーでも適切な温度で運用できます。
ただしマザーボードが電力制限を無視している設定を標準設定に採用しているケースが多いので、電力制限自体は簡単な設定ではあるものの、一般ユーザーがそのまま使用するとほぼ確実にTDPを大きく超過した動作になることが予想されます。
各マザーボードがどんな設定になっているのかはレビューを漁るか蓋を開けるかしないとわからないので、「Intel Core i9 10980XE」で静音性を確保した自作PCを組むのであれば、240サイズ以上の簡易水冷CPUクーラーを使用するのが無難です。
またCore i9 7980XEなど初代Core-XではCPUダイとヒートスプレッダ間のTIMにシリコングリスが採用されていたため、倍率アンロックモデルながら定格を超える消費電力にOCするとTIMの熱移動効率がボトルネックになる可能性が高かったですが、Core i9 10980XEなど第10世代Core-Xでは良質なソルダリングに近い性能のSTIMが採用されているのでユーザーによるOCのハードルが下がっています。
「Intel Core i9 10980XE」のOC耐性についてですが、以前行ったCore i9 9980XEのOCレビュー同様に全コア4.4GHzのOCで検証してみたところ、Core i9 10980XEもCore i9 9980XEと似たような結果になりました。
管理人の入手した個体については、全コア4.4GHz(キャッシュ3.0GHz、メモリ3600MHz、詳細は9980XEの記事で)で安定動作させるのに必要なコア電圧は1.120V程度でした。単コア4.6~4.8GHzに対応可能なV-fカーブが追加されただけで、OC耐性というか電圧特性(また選別具合も)は9980XEと10980XEには大差がなく、一般的に常用可能な全コア最大コアクロックが4.4~4.6GHz程度という傾向は変わりないという感触でした。
・Intel Core i9 9980XEを4.4GHz OCで7980XEと比較レビュー

クリエイティブ性能について
2020年2月現在、Intelのメインストリーム向けCPUのコアスレッド数はCore i9 9900Kの8コア16スレッドが最大数で、今回レビューしている「Intel Core i9 10980XE」はそれを2倍以上も上回る18コア36スレッドのCPUなので、コアスレッド数(とコアクロックの積)に比例して、メインストリーム向けCPUよりも遥かに高いマルチスレッド性能を実現しており、それはクリエイティブタスクにおける性能に反映されています。28コアのXeon W-3175Xは半エンタープライズCPU的なポジションになってしまうので、18コア36スレッドの「Intel Core i9 10980XE」はマルチスレッド性能において最速の”Intel製”CPUです。
一方で競合のAMD製CPUとクリエイティブタスクで比較するとなると、「Intel Core i9 10980XE」は大半のシーンで分の悪い戦いを強いられることになります。
まずコアスレッド数が近いCPUについて、比較対象はAMDのメインストリーム向け最上位モデルで16コア32スレッドのRyzen 9 3950Xになります。Core i9 10980XEが前世代9980XEと比較して半額近くプライスカットされたとはいえ、それでも3950XのほうがCPU本体価格は30~40%も安価なのでコスト面でCore i9 10980XEを圧倒します。加えて”メインストリーム向け”と書いたようにRyzen 9 3950Xは、Intel製メインストリーム向けCPUのCore i9 9900Kと競合するRyzen 7 3700XやRyzen 9 3900Xと同じAM4プラットフォームのCPUなので、最安では1万円台のマザーボードでも運用できるというメリットもあります。
また性能面においてもCore i9 10980XEは18コアでコア数は上回りますが、Intel Core-Xは省電力性能が低いため、TDP165Wの電力制限を課した状態ではRyzen 9 3950Xのほうが20%程度上回るパフォーマンスを発揮します。
ただしRyzen 9 3950XがPB2/XFR2によってユーザーが特に設定しなくても自動で常用限界に近いパフォーマンスをそのまま発揮できるのに対して、Core i9 10980XEは手動OCによる伸びしろが非常に大きく、市販のCPUクーラー(360サイズ簡易水冷CPUクーラーなど高性能な、と条件付きにはなりますが)で運用可能な範囲内でOCするとRyzen 9 3950Xを上回る性能を発揮します。

PBOを使用してもせいぜいCPU消費電力が200Wに収まるRyzen 9 3950Xに対して、Core i9 10980XEはRyzen 9 3950Xと同等の性能が発揮できる4.2~4.4GHz程度までコアクロックをOCするとCPU消費電力は400~450Wに達するので、ワットパフォーマンス的にはダブルからトリプルスコアになります。
ただしUnreal Engine 4によるゲームビルドのようなメモリ帯域が重要になるタスクにおいては、Ryzen 9 3950XではCPU性能に対して狭いメモリ帯域がボトルネックになるようで、メモリ帯域が4チャンネルのCore i9 10980XEが明確に優位になります。
ワットパフォーマンスの観点から比較するとRyzen 9 3950Xに対してCore i9 10980XEは劣悪であり、同価格帯の製品が14コアのCore i9 10940Xであると考えると前世代と比較して半額程度になったとはいえコストパフォーマンスについても劣る、と評価されても仕方のない結果です。しかしながら絶対的な性能は比較的手軽な手動OCでカバーでき、加えて4チャンネルのメモリ帯域やCPU直結PCIEレーンの拡張性、またなんだかんだでIntel製CPUは既存アプリとの互換性が高い、など替えの効かない要素もあるので、予算の問題がクリアできる場合、Ryzen 9 3950XとCore i9 10980XE(など第10世代Core-X)のどちらがベストなのかは難しい選択になり得ます。
ただし手動OCも含めればCore i9 10980XEも安泰かというとそうでもなく、AMD製CPUにはクリエイティブタスクに最適なCPUとして24コアや32コアの第3世代Ryzen Threadripperが存在するという問題があります。
32コアのRyzen Threadripper 3970Xはいうに及ばず、24コアのRyzen Threadripper 3960Xですら、常用限界に近い手動OCを施しても「Intel Core i9 10980XE」では対抗するのが難しいというのが実状です。代わりに14万円程度の10980XEに対して3970Xは25万円、3960Xは18万円と性能相応に高価なのはまだ救いですが、マルチスレッド性能でこれだけ差があると、”どうしてもIntel製CPUでないといけない”という決め打ちな条件でもない限り、コスパに優れるRyzen 9 3950Xか、単純な性能で圧倒するRyzen Threadripper 3970Xか3960Xに流れるというのが妥当な見方だと思います。

ゲーム性能について
まずゲーム性能検証の冒頭でも述べたようにフルHD~4K解像度の60FPSターゲットであれば4コア4スレッド以上の最新CPUであればどれを使用しても大差はありません。ただし最新の超高画質で重いゲームの場合、ゲームプレイの裏で次のシーンのロード作業が動くとロードが遅くなったりスタッター(カクツキ)が発生することがあるので、ゲーミングPCに搭載するCPUとしては6コア6スレッド以上を個人的に推奨しています。
また60FPSターゲットであってもAssassin's Creed OdysseyのようにCPUによって差が出るケースもあるので、PCゲームメーカーの最適化の優先順位まで考慮するとIntelのメインストリーム向け最新CPUのPCゲーミングにおける安定性にはやはり信頼がおけます。
第6世代以前のIntelエンスー向けCPUでは全コア負荷時の最大動作倍率がTDPに合わせて引き下げられていたため、手動OCをしないとメインストリーム向けCPUよりもゲーム性能で大きく劣るというのが通説でしたが、第10世代Core-Xには当てはまりません。
GeForce RTX 2080 Tiを使用したハイフレームレート環境において、最もCPUボトルネックの緩和が期待できるCPUはIntelのメインストリーム向けCPU最上位モデルのCore i9 9900KやCore i7 9700Kであることは間違いありませんが、長らくPCゲーミング界で鉄板モデルだった4コア8スレッドCPUの最後を飾ったCore i7 7700Kと比較して勝ったり負けたりという性能を発揮していることからも、「Intel Core i9 10980XE」がPCゲーミングにも余裕で通用することがわかると思います。
一方でAMD製CPUと比較すると、2950Xなど第2世代Ryzen Threadripperが比較対象だった前世代Core i9 9980XEはこの分野で競合を圧倒できたのですが、第3世代Ryzenおよび第3世代Ryzen ThreadripperはハイフレームレートなPCゲーミングという弱点を克服しており、第10世代Core-XがAMD製CPUを僅かに上回る傾向はあるものの、マルチスレッド性能のコストパフォーマンスをひっくり返せるだけの魅力はもはやないというのが率直な感想です。
総評 - 最大の欠点は買えないこと
Core i9 9980XEのレビュー当時『TIMがシリコングリスからSTIMに変わったCore i9 7980XE』と評価しましたが、「Intel Core i9 10980XE」は『CPU直結PCIEレーンが4つ増えて、価格が半額になったCore i9 9980XE』という評価で間違いないと思います。「Intel Core i9 10980XE」の単コアブーストクロックは4.5GHzから4.8GHzへ引き上げられていますが、7980XEや9980XEの時からBy Specific Core設定で特定コアを4.8~5.0GHzにOCする設定自体は珍しくありませんでしたし、電圧特性やコアクロックの伸びが改善されたわけではなく、4.6~4.8GHzに対応したV-fカーブが追加された程度の違いだと思います。また個体差はあると思いますがOC耐性もCore i9 9980XEと大差なく、CPUの物理的な違いはCPU直結PCIEレーンが4つ増えただけなので、それに拘らないのであれば7980XEや9980XEから買い替える必要はなさそうです。
タイトルで書いたように、「Intel Core i9 10980XE」について最大の欠点は”発売から2か月が経っても、そもそも市場在庫がまったくなく買えない”ことです。
生産の都合なのか、(Ryzen 9 3950XやRyzen Threadripper 3960Xに敵わないという)販売戦略上の都合なのかは分かりませんが、供給があまりにも少なく、性能以前に買えないCPUというイメージが強すぎて……。
コスパではRyzen 9 3950Xに圧倒され、単純なクリエイティブタスク性能でもRyzen Threadripper 3960Xに蹴散らされ、前世代では頼みの綱だったAVX拡張命令を使うアプリやハイフレームレートなPCゲーミングでもAMD製CPUに肉薄されてしまい、汎用性の高いスーパーメニーコアCPUという魅力も薄れてしまいました。特に24コアや32コアといったウルトラメニーコアなRyzen Threadripperで頭を抑えられてしまったのが辛いところです。
管理人も16コア以上のメニーコアCPUはどれが良い?と聞かれたら、コスパ重視ならRyzen 9 3950X、性能重視ならRyzen Threadripper 3960Xをオススメしますし、10980XEを選択するのはどうしてもIntel製CPUが必要だと自分で分かっている人に限られると思います。
一応、Intel製CPUでないと性能が出ないというアプリケーションもなくはないので(第3世代Ryzenの登場以降は珍しいケースですが)、それらのユーザー的にはIntel製CPUが決め打ちになるためマルチスレッド性能を求めると需要があることは否定できませんが、いざ需要があっても”在庫がどこにもなくて買えない”という如何ともしがたい壁が。10コア以上のメニーコアCPU市場におけるIntelの冬は長くなりそうです。
以上、「Intel Core i9 10980XE」のレビューでした。

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「Intel Core i9 10980XE」をレビュー
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) February 14, 2020
良い
✅Intel製18コア36スレッドCPU
✅CPU直結PCIEレーン数が44から48へ増
✅前世代9980XEと比較して価格が半額に
悪いor注意
⛔発売から2か月経っても供給が安定せずに買えない
⛔省電力性能が悪いhttps://t.co/cvtzcLYSaj
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Noctua NF-A12x25 PWM 120mmファン 定格2000RPM PWM対応
Noctua NF-A12x25 ULN 120mmファン 定格1200RPM PWM対応
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G.Skill Trident Z RGB DDR4メモリ
G.Skill Trident Z Black DDR4メモリ
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→18コア36スレッドのCPUで、INTEL公式の仕様ではベースクロック3.0GHz、単コア最大ブーストクロック4.8GHzでは
Intel製CPUでないと性能が出ないというアプリケーションもなくなないので
→アプリケーションもなくはないので では?