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8基のストレージ増設を可能にするQNAP製JBODストレージエンクロージャーのTL SATA JBODシリーズから、汎用性の高いUSB3.1 Gen2 Type-C接続に対応する「QNAP TL-D800C」と、32Gbpsの高速かつ高信頼性なMini SAS&PCIE3.0x4接続に対応する「QNAP TL-D800S」をレビューします。

製品公式ページ
TL-D800C:https://www.qnap.com/ja-jp/product/tl-d800c
TL-D800S:https://www.qnap.com/ja-jp/product/tl-d800s
QNAP TL-D800C / TL-D800S レビュー目次
1.QNAP TL-D800C / TL-D800Sの概要と機能の違い
2.QNAP TL-D800C / TL-D800Sの梱包・付属品
3.QNAP TL-D800C / TL-D800Sの外観と内部構造
4.QNAP TL-D800C / TL-D800Sのストレージ設置方法
5.QNAP TL-D800C / TL-D800Sの検証機材
6.QNAP TL-D800C / TL-D800Sの基本的な使い方
7.QNAP TL-D800C / TL-D800Sでボリュームを作る方法
・QNAP TL-D800C / TL-D800SをQNAP製NASで使う
8.QNAP TL-D800C / TL-D800Sの転送速度
9.QNAP TL-D800C / TL-D800Sのレビューまとめ
【機材協力:QNAP Japan】
QNAP TL-D800C / TL-D800Sの概要と機能の違い
まず最初に「QNAP TL-D800C」と「QNAP TL-D800S」の概要と機能の違いについて簡単に紹介しておきます。「QNAP TL-D800C」と「QNAP TL-D800S」の共通点と相違点を簡単に早見表にまとめると次のようになっています。ざっくりまとめると接続が簡単な「QNAP TL-D800C」、高速な「QNAP TL-D800S」という感じです。
TL-D800C / TL-D800Sの機能 共通点と相違点 | ||
TL-D800C | TL-D800S | |
ドライブベイの数 | 8基 (3.5インチ/2.5インチに対応) |
|
PC・NAS側の 接続要件 |
USB3.1 Gen2 |
PCIE3.0x4スロット |
個々のストレージ の最大アクセス |
6Gbps ~560MB/s |
|
合計の最大アクセス | 10Gbps ~1100MB/s |
32Gbps ~3500MB/s |
特長 | 汎用性が高い |
高速でクリエイターに最適 |
QNAP製品において「QNAP TL-D800C」と「QNAP TL-D800S」はJBODストレージエンクロージャー、TL SATA JBODシリーズとしてジャンル分けされています。
JBOD(ジェイボド)は"Just a Bunch Of Disks(ただのディスクの束)"で、ボリューム機能的にはRAID0のように複数ストレージを単一とみなす一方、並列アクセスで速度向上は行わず、順番に使っていく構造のことです。
”JBODストレージエンクロージャー”と呼ぶ時のJBODについては、”複数ストレージによる大容量な外付けストレージが作れる機器”くらいの軽い意味に抑えておけばOKです。JBODと名前は付いていますが、RAID0やRAID1等にも当然対応しています。
そんなJBODストレージエンクロージャーの「QNAP TL-D800C」と「QNAP TL-D800S」は、いずれも8基の3.5インチ/2.5インチストレージ(HDDもしくはSSD)に対応したドライブベイが搭載されており、8基のストレージによって単一の大容量な外付けストレージを構築できます。

”8基のストレージによって単一の大容量な外付けストレージを構築できる”という基本的な機能は共通している、「QNAP TL-D800C」と「QNAP TL-D800S」の違いは何か、というとPCもしくはQNAP製NASとの接続方法です。

*以下、USB規格に関する説明がありますが『USB3.2 Gen2 = USB3.1 Gen2』、『USB3.2 Gen1 = USB3.1 Gen1 = USB3.0』と考えて基本的に問題ありません。
「QNAP TL-D800C」は汎用性の高いUSB3.2 Gen2 Type-CによってPCやQNAP製NASと接続します。汎用性が高いと書いたように、PCに関してはWindowsやUbuntuだけでなく、Apple Macにも対応するのが特徴です。

「QNAP TL-D800C」のダイアグラムは次のようになっています。PCと接続する最上流のUSB3.2 Gen2(10Gbps)から、2分岐さらに4分岐でそれぞれUSB3.2 Gen2が分岐していき最終的にUSB3.2 Gen2 to SATA3.0(6Gbps)変換を介してSATAストレージが接続されます。
「QNAP TL-D800C」において、個々のストレージからPCまでを辿ると6Gbps以上の帯域が確保されているので、同時アクセスが最上流のUSB3.2 Gen2の10Gbps帯域の範囲内であれば、SATA3.0として理想的な性能を発揮でき、2~3台以上のSATA SSDでRAID0を構成すれば、1GB/s超の高速アクセススピードも実現できます。

一方で、「QNAP TL-D800S」は最大32Gbpsの高速かつ高信頼性なMini SAS&PCIE3.0x4によってPCやQNAP製NASと接続します。(TL-D800SはApple Macを非サポート)

具体的な接続方法としては、「QNAP TL-D800S」の背面にはPCIE3.0x2帯域に対応したMini SASポートが2つあるので、Mini SASケーブルを介してPCやNASと接続します。
エンタープライズやビジネスユーザー向けの規格なのでMini SAS(SFF-8088)という名前に馴染みのある読者は少ないでしょうし、市販品で一から用意するとなると対応する拡張ボードやケーブルの入手が面倒だったりもするのですが、「QNAP TL-D800S」にはホスト側に増設する拡張ボードや接続ケーブルが全て付属しているので、ホスト側の要件は ”x4サイズ以上かつPCIE3.0x4帯域以上のPCIE拡張スロットがあること” だけです。

「QNAP TL-D800S」のダイアグラムは次のようになっています。QXPホストバスアダプター「QXP-800eS-A1164」はPCIEスイッチASMedia ASM2812を介してPCIE3.0x4帯域でPCと接続しますが、そこからさらにPCIE3.0x2接続に対応するASMedia ASM1164×2に分岐します。
ASM1164はPCIE3.0x2帯域で4基のSATA3.0ストレージを接続できる変換コントローラーとなっており、Mini SAS(SFF-8088)ケーブルを介して、ストレージエンクロージャー上のSATAストレージ4基と接続されます。
ASM1164にぶら下がっている4基のSATAストレージはいずれも6GbpsのSATA3.0で接続されているので、合計のアクセスがPCIE3.0x2(16Gbps)未満であれば、個々には6Gbpsの理想的なアクセススピードを発揮できます。

「QNAP TL-D800S」の最上流にはPCIE3.0x4帯域のASMedia ASM2812があるので、SATA SSD×8等の構成で十分なストレージ性能が確保できていれば、x8 RAID0構成などで3.5GB/s程度のNVMe SSD級な高速アクセススピードも実現できます。
環境構築に自作PCの知識が要求されるので導入のハードルは上がりますが、USB接続のTL-D800Cと比較して最大アクセススピードはTL-D800Sのほうが3倍も高速です。

QNAP TL-D800C / TL-D800Sの梱包・付属品
「QNAP TL-D800C / TL-D800S」の梱包や付属品について簡単にチェックします。
「QNAP TL-D800C / TL-D800S」のパッケージサイズはキューブ型PCが入っているような大型段ボール箱となっており、天面を開くと、スポンジスペーサーで保護されたエンクロージャー本体が現れます。

製品パッケージ左側に収められた小分けの段ボール箱には各種付属品が入っています。

まず「QNAP TL-D800C」の付属品を確認すると、マニュアル等の冊子類、ACケーブル、USB Type-C to Type-Aケーブル(1m)、ストレージ固定用インチネジセット、ストレージ固定用ミリネジセット、ケーブルクリップ、ドライブトレイキーとなっています。

「QNAP TL-D800S」ではUSBケーブルとケーブルクリップの代わりに、QXPホストバスアダプター「QXP-800eS-A1164」(PCIE拡張ボード)と、Mini-SAS(SFF-8088)ケーブル×2本が付属します。

QXPホストバスアダプター「QXP-800eS-A1164」はQNAP TL-D800Sと接続するPC側に装着するためのPCIE拡張ボードです。PCIE端子はx4サイズで、接続帯域はPCIE3.0x4となっています。

QNAP製NAS向け拡張ボードでもあるので、標準ではQNAP製NAS用ブラケットが装着されていますが、自作PCで一般的なフルおよびロープロファイルのPCIEブラケットも付属しています。

QXPホストバスアダプター「QXP-800eS-A1164」にはMini SAS(SFF-8088)端子が2コネクタ並んで実装されています。

「QNAP TL-D800S」にはストレージエンクロージャーとPCを接続するためのMini SAS(SFF-8088)ケーブルもコネクタ数に合わせて2本付属しています。ケーブルのMini SAS(SFF-8088)コネクタは金属製でガッシリしており、抜き取り用の指掛けも付いていたりと、エンタープライズ向けを感じさせます。

QNAP TL-D800C / TL-D800Sの外観・内部構造
「QNAP TL-D800C / TL-D800S」の外観や内部構造について簡単にチェックします。「QNAP TL-D800C / TL-D800S」は”NAS”と言われて思い浮かべる奥行長めなコンパクトキューブPCを2つ横に並べたような形状で、サイズは幅329mm×奥行281mm×高さ184mmです。



「QNAP TL-D800C / TL-D800S」は見ての通り、8基の3.5(2.5)インチストレージが搭載可能なNASです。内部に高速キャッシュ用のM.2スロット等はないので、シンプルに8ドライブのストレージエンクロージャーです。

前面上部のアクリルプレート部分の左端にはドライブLED、ファンエラーLED、リンクLED、ステータスLEDの4つのインジケーターが内蔵されています。

TL-D800Cは上記のLEDインジケーターのみですが、「QNAP TL-D800S」にはステータス情報を表示可能なLCDパネルと操作スイッチも搭載されています。同LCDパネル&スイッチを搭載したQNAP TVS-472XTなど一部NAS製品と違って、電源OFFなどのシステム操作機能はありません。

「QNAP TL-D800C / TL-D800S」の背面には各種I/Oポート、電源ユニット&AC端子、120mm角の排気ファン×2などがあります。


I/OポートはAC端子を除いて、後ろから見て左側にまとめられており、ホスト側との接続ポートとして、「QNAP TL-D800C」はUSB Type-C端子、「QNAP TL-D800S」はMini SAS端子×2が実装されています。

加えて「QNAP TL-D800C / TL-D800S」で共通する部分では、ファン制御スライドスイッチ、ブザー音のON/OFFスライドスイッチ、主電源ロッカー型スイッチがあります。

「QNAP TL-D800C」では、不意にケーブルを引っ張られた時などにUSB Type-C端子が破損しないよう、ケーブルクリップを装着できます。ケーブルクリップを取り外す時はエンクロージャー外装を取り外して、内部からツメを解除します。

「QNAP TL-D800C / TL-D800S」は背面3か所のネジ止めを外し、外装パネルを後ろにスライドさせると、筐体内部にアクセスできます。ただし中には大したものはないので、上で説明したケーブルクリップの取り外しか、冷却ファンのメンテナンス・交換くらいでしか開くことはないと思います。

8ドライブNASと汎用筐体が使用されている影響か、「QNAP TL-D800C / TL-D800S」の背面には2基の拡張スロットがありますが、いずれのモデルも基板上の拡張スロットはなく、増設等はできません。

「QNAP TL-D800C / TL-D800S」の背面に内蔵された2基の冷却ファンは汎用的な120mm角ケースファンとなっており、電源取得のコネクタも自作PCで一般的なPWM対応4PINファン端子なので、ファンの交換自体は各自で簡単に行うことができます。

QNAP TL-D800C / TL-D800Sのストレージ設置方法
「QNAP TL-D800C / TL-D800S」のドライブベイにストレージを設置する方法を簡単に紹介していきます。「QNAP TL-D800C / TL-D800S」は見ての通り、8基の3.5(2.5)インチストレージが搭載可能なNASです。内部に高速キャッシュ用のM.2スロット等はないので、シンプルに8ドライブのストレージエンクロージャーです。

ストレージトレイはQNAP製NASではお馴染みの構造ですが、2分目の短い方のプレートを下に下げてロックを解除し、手前に引っ張り出します。

ちなみに「QNAP TL-D800C / TL-D800S」はストレージトレイのキーロック機能にも対応しています。付属のキーによってロックをかけることで、ストレージが勝手に着脱できなくする防犯機能です。
細かいところですが、鍵というと個人的には左回しで解除の印象があるのですが(ネジ止めの影響もあるかも)、「QNAP TL-D800C / TL-D800S」のキーロックは右回しで解除、左回しで施錠でした。少々違和感が。

「QNAP TL-D800C / TL-D800S」のストレージトレイは下写真左側のような黒色プラスチック製の部品です。最大で3.5インチHDDを搭載でき、2.5インチサイズのHDDやSSDにも対応します。なおQNAP製NASと共通の汎用品なので破損しても保守部品として単品で入手できます。

ストレージトレイの内側にはHDDの振動を低減できるよう、青色のラバーパッドも装着されています。

3.5インチHDDの装着手順として、ますストレージトレイ左右の固定パネルを取り外します。ストレージトレイ後方に”PULL”と書かれた部分があるので、それを外側に引っ張ると外れます。

3.5インチストレージをストレージトレイに正しい向きで乗せたら、先ほど外した固定パネルを左右から装着し直します。

固定パネルの内側には3.5インチストレージの側面ネジ穴に合わせた位置に、ピンがあるので、このピンによってツールレスでストレージトレイに3.5インチストレージを固定できます。

通常使用時は固定パネルによる固定だけでも十分ですが、長距離の持ち運び等で強い振動や衝撃が加わる可能性がある場合は、ストレージトレイの背面からネジを使用したセキュアな固定も可能です。

また「QNAP TL-D800C / TL-D800S」のストレージトレイは2.5インチストレージ、主にSSDにも対応しており、ピンが干渉するので寄せる側の固定パネルを取り外し、背面から2.5インチとチェックの入っている3か所のネジ止めで固定できます。

QNAP TL-D800C / TL-D800Sの検証機材
「QNAP TL-D800C / TL-D800S」の各種検証を行う環境としては、Intel Core i9 9900K&ASUS WS Z390 PROなどで構成されているベンチ機を使用しました。構成の詳細は下記テーブルの通りです。テストベンチ機の構成 | |
CPU | Intel Core i9 9900K(レビュー) Core/Cache:5.1/4.7GHz, 1.300V 殻割り&クマメタル化(レビュー) |
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36(レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z Black F4-4400C19D-16GTZKK DDR4 8GB*2=16GB (レビュー) 4000MHz, CL17-17-17-37-CR2 |
マザーボード |
ASUS WS Z390 PRO (レビュー) |
ビデオカード | 【基礎性能検証用】 MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC (レビュー) 【PCゲームロード時間検証用】 ZOTAC RTX 2080Ti AMP Extreme Core (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB MZ-N6E1T0B/IT (レビュー) |
OS | Windows10 Home 64bit |
電源ユニット | Corsair HX1200i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
また「QNAP TL-D800C / TL-D800S」の検証に当たってストレージエンクロージャーに搭載する3.5インチHDDについては、同製品の貸出元であるQNAP Japan様からSeagate製HDDで、容量6TBの「Exos 7E8 ST6000NM002A」を6台、容量16TBの「IronWolf ST16000VN001」を2台、計8台をお借りしました。

QNAP TL-D800C / TL-D800Sの基本的な使い方
「QNAP TL-D800C / TL-D800S」の基本的な使い方について紹介していきます。ここからはPCでの使用を例にして、使い方を紹介してきます。
「QNAP TL-D800C」については付属のUSBケーブルをPCに挿して接続するだけなのでPC側に物理的な下準備は必要ありませんが、「QNAP TL-D800S」はQXPホストバスアダプターQXP-800eS-A1164をマザーボード上PCIEスロットに装着します。

QXP-800eS-A1164についてはWindows10 1909以降であれば(1903以前については未確認)、OS標準収録のドライバで動作するので、各自でドライバをインストールする必要はありません。

続いてPCを起動します。PC起動後、QNAP公式ページ(各製品のサポートページ)から「QNAP JBOD Manager」という専用アプリケーションをダウンロードし、インストールを行います。ダウンロードしたインストーラーをポチポチとクリックしていくだけです。日本語にも対応しているので難しいところはありません。

「QNAP JBOD Manager」をインストールしたら同アプリケーションを起動します。
初期設定画面が表示されるのでリージョン(製品を使っている地域)にグローバルを選択します。トップガイドが表示されるのでサクッと読んで進み、デバイスが見つかりませんと表示されたらソフトウェアの下準備も完了です。



物理的なセットアップについて、USB接続型の「QNAP TL-D800C」はACケーブルを接続して電源スイッチをオンにし、PCとUSBケーブルを接続するだけです。


「QNAP TL-D800S」も同じく、まずはACケーブルを挿して電源をONに、そしてMini SASケーブルで接続します。Mini SASケーブルは長さ1m程度でそれほど長くなく、固くて曲げ難いケーブルなので、「QNAP TL-D800S」はホスト機の傍に置く必要があります。

「QNAP TL-D800C / TL-D800S」をPCに接続すると、各エンクロージャーの情報が表示されます。

「QNAP JBOD Manager」は日本語UIで表示されるはずですが、別言語で表示されてしまった場合は、右上の点が連なったメニューアイコンから言語設定の変更が可能です。

「QNAP JBOD Manager」という名前から、エンクロージャーに搭載したストレージのボリューム作成、RAIDアレイ構築等の機能があるように思えますが、実はSSD向けに各社が配布しているダッシュボードアプリ的なソフトです。
エンクロージャーの基本情報、搭載されているSSD・HDDの情報を閲覧でき、またエンクロージャーのファームウェアアップデートが行えますが、特に使用上触る必要のある設定項目等はありません。
「QNAP TL-D800C」のメニュー画面は次のようになっています。




「QNAP TL-D800S」のメニュー画面は次のようになっています。




非常にあっさりとした内容ですが、以上で「QNAP TL-D800C / TL-D800S」を導入するための初期設定は完了です。面倒な設定は必要なく、「QNAP TL-D800C / TL-D800S」に設置したストレージはWindows PCから正常に認識されます。

なお「QNAP TL-D800S」においてストレージが設置されていない空きベイが存在する場合、空きベイは「ASMT109x - Config」としてPCに登録され、ディスク管理メニューでも容量100MB程度の未初期化ディスクとして表示されます。ディスク管理にアクセスするときに「ASMT109x - Config」を初期化するか確認がありますが、『初期化しない』を選択してください。

QNAP TL-D800C / TL-D800Sでボリュームを作る方法
「QNAP TL-D800C / TL-D800S」に搭載したストレージに対してWindows PCからボリュームを作成する方法について紹介していきます。Windows PCをある程度使い慣れた人なら詳しい説明の必要はないかもしれませんが、「QNAP TL-D800C / TL-D800S」に設置したストレージのボリューム作成はコントロールパネルの「システムとセキュリティ - ハードディスク パーティションの作成とフォーマット」を選択します。

まずは単純なシングルボリュームの作り方ですが、上で紹介したように「QNAP TL-D800C / TL-D800S」に搭載されたストレージは、内蔵ストレージかUSBメモリと同じように、特別な設定は必要なく、PCから普通に認識されます。
黒色バーで未割当てと表示されたストレージに対して、容量バー上で右クリックメニューを表示、「新しいシンプル ボリューム」を選択します。後は表示内容に従ってポチポチとクリックしていけばシングルボリュームが完成します。

「QNAP TL-D800C / TL-D800S」上のストレージに対して作成されたシングルボリュームは、リムーバブルデバイス扱いになります。
環境によって変わる可能性もありますが、今回の検証環境においては「QNAP TL-D800C」で作成したボリュームは取り外しポリシーが標準で「クイック取り外し」、「QNAP TL-D800S」で作成したボリュームは取り外しポリシーが「高パフォーマンス」になっていました。

この設定はデバイスマネージャーのディスクドライブに表示されるストレージ一覧から、個別にストレージに対して設定が可能です。
「高パフォーマンス」では書き込みキャッシュが有効になるので一部ケースで書き込み速度が改善されますが、ストレージを取り外す時に右下の通知アイコン「ハードウェアの安全な取り外し」からソフト的に通信解除を行う必要がでてきます。
取り外しポリシーについては頻繁に着脱するストレージは「クイック取り外し」、そうでなければ「高パフォーマンス」でいいと思います。

スパンボリュームやストライプボリューム(RAID0)の作り方
続いてスパンボリュームやストライプボリューム(RAID0)の作り方を紹介していきます。作業自体は簡単なのですが、スパンボリュームやストライプボリューム(RAID0)を作成する上で注意点として、作成に使用するストレージは上で紹介した取り外しポリシーを「高パフォーマンス」に切り替えておいてください。
取り外しポリシーが「クイック取り外し」になっているとボリューム作成で最後にエラーが表示されます。またスパンボリュームやストライプボリューム(RAID0)に使用したストレージはPC電源がONの状態で着脱ができなくなります。

上の注意点さえ守れば、こちらもコントロールパネルの「システムとセキュリティ - ハードディスク パーティションの作成とフォーマット」から行うので作業自体は特に難しいことはありません。使用するストレージの内の1つを選択して、ポチポチとクリックしていくだけです。


なお大容量HDD等でスパンボリュームやストライプボリューム(RAID0)を作成する場合、フォーマットが標準で「通常フォーマット」になっています。エラーセクタ等の心配がないと分かっている、動作確認のためとりあえず、などの条件であれば、クイックフォーマットを選択してください。TB単位のHDDで通常フォーマットを行うと1,2時間単位で時間がかかります。

以上のように、「QNAP TL-D800C / TL-D800S」に搭載されたストレージを使用してWindows PC上からスパンボリュームやストライプボリューム(RAID0)を作成することができます。
正直なところRAIDを組むのはあまり使い勝手が良くありませんが(着脱ができない、1ストレージ破損でデータが飛ぶなど)、1ストレージでは足りない大容量データを取り扱う場合、急ぎでデータをコピーしたい場合に使用するテンポラリスペース的な使い方はできると思います。


ミラーリングやパリティ対応のボリュームの作り方
この章の最後に、ミラーリング(RAID1)やパリティ(RAID5)に対応した、Windows上で記憶域プールと呼ばれるボリュームの作成手順について紹介していきます。QNAP JBOD Managerに表示される通り、データ保護性を重視したRAIDグループを作成するにはコントロールパネルの「システムとセキュリティ - 記憶域」にアクセスします。

作業自体は右クリックメニューを表示することもなく、フローが明快で簡単なのですが、今回、記憶域プールを作成しようとしたところ、エラーが表示されました。
『プールが作成できません』等のエラーメッセージが表示される場合、Windows PowerShellを開いて、
Get-PhysicalDisk | Format-Table FriendlyName,MediaType,Size,CanPool,CannotPoolReason
この太字コマンドを実行すると、記憶域プールが作成できない理由が表示されます。

今回、記憶域プールが作成できなかった理由は「Insufficient Capacity」と表示されています。この表示で記憶域プールが作成できない時の対処法としてQNAP社に確認したところ、Seagate製HDDを使用している場合は「SeaTools For Windows」と呼ばれるSeagate製ツールで、「ベーシックテスト - 全てを修復 - ロング修理」を実行することで解消されるとのことで試してみました。

なおSeaTools For Windowsの「ロング修理」はSecure Eraseや完全フォーマットに近い作業となっており、実行したストレージ上のデータは全て消えてしまうので、誤って別のストレージで実行してしまわないよう、十分に注意してください。
また上述のとおりやっていることは完全フォーマットのようなものなので、6TBサイズHDDの場合、完了まで7時間ほどかかりました。寝る前に実行して放置しておくのがオススメです。

SeaTools For Windowsのロング修理を実行したストレージを選択したところ、エラーが発生せずに、記憶域プールの詳細構成設定画面に移行できました。

双方向ミラー、3方向ミラー、パリティなど作成したい記憶域プールの種類と、ボリュームサイズを選択したら、記憶域の作成をクリックして記憶域プールのボリューム作成は完了です。

「QNAP TL-D800C / TL-D800S」をQNAP製NASで使う
「QNAP TL-D800C / TL-D800S」をQNAP製NASで使う場合について、簡単に紹介しておきます。QNAP製NASは機能が非常に多いため詳しく説明していると際限がなく、また管理人もまだQNAP製NASの扱いを熟知しているわけではないので、触りの部分だけを簡単に簡単に紹介します。

QNAP TL-D800CはUSBケーブルを接続するだけなので、基本的にほとんどのQNAP製NASが対応しています。(正確にはQTS 4.4.2(またはそれ以降)またはQuTS heroで実行しているQNAP製NASに対応)
一方で「QNAP TL-D800S」は付属の拡張ボードを使用する必要があるので、当サイトでレビューしている「QNAP TVS-472XT」のようにx4サイズ以上でPCIE拡張スロットの空きスロットがあるという条件になり、やや導入のハードルが上がります。

「QNAP TL-D800C / TL-D800S」をQNAP製NASで使う方法については上で紹介したように物理的な接続さえクリアできれば、NASからの認識という点では特に難しいことはなく、自動的に「QNAP TL-D800C / TL-D800S」自体、そして搭載されているストレージを表示してくれます。

ストレージ&スナップショット、FileStation5といったQTSアプリ上からボリューム作成やフォルダ作成、データ管理といった一通りの操作が、NAS自体に搭載したストレージと同様に行え、またQfinder Proを介してPCからネットワークドライブとしてアクセスすることもできます。




QNAP TL-D800C / TL-D800Sの転送速度
さて最後に「QNAP TL-D800C / TL-D800S」の転送速度について簡単にチェックしていきます。転送速度ではありませんが最初に簡単に紹介しておくと、
8ドライブベイのJBODエンクロージャー「QNAP TL-D800C / TL-D800S」を使用すれば、上で紹介したように非常に簡単に数TB~十数TBの超大容量HDDを8台も増設できます。ホットスワップもしくはUSBメモリのようにPC起動中も気軽に着脱できるので、大容量データを取り扱っていてストレージ容量が不足しているユーザーには非常に役立つ製品だと思います。

基本的な読み出し性能と書き込み性能を確認するためNAS環境の検証でもよく使用される定番ベンチマークCrystalDiskMark 6.0.2 (QD32, 4GiB)を行ってみました。
「QNAP TL-D800S」においてSSDのシングルボリュームに対してCrystalDiskMarkを実行すると、連続読み出し560MB/s、連続書き込み500MB/sで、SATA接続SSDとして理想的なアクセススピードを発揮しました。4Kランダム性能も読み出し40MB/s以上なので、内蔵SATA SSDと遜色ないパフォーマンスです。

一方でUSB接続の「QNAP TL-D800C」において同様に、SSDのシングルボリュームに対してCrystalDiskMarkを実行したところ、連続アクセスについてはTL-D800S同様に高速なスコアを出すのですが、ランダム性能は大きく下がりました。結局のところUSB外付けストレージなので妥当な結果です。
なお取り外しポリシーを「クイック取り外し」と「高パフォーマンス」で切り替えて見ましたが、CrystalDiskMarkでは特に性能差はありませんでした。実用的には「高パフォーマンス」では書き込みキャッシュが使用できるので、一定容量以下のデータコピーは一瞬で完了したり、という恩恵があります。

以上のようにランダム性能については差があったものの、USB3.1 Gen2変換の「QNAP TL-D800C」と、PCIEレーン変換の「QNAP TL-D800S」は、シングルボリュームだけであればSATAストレージの理想に近い性能を発揮できます。
次に「QNAP TL-D800C」と「QNAP TL-D800S」に搭載された複数のストレージに対して同時にアクセスが発生した場合の最大アクセススピードがどれくらいなのか、iometerで各ボリュームへ4GB/ブロックサイズ1MBのシーケンシャルリードで検証してみました。
まずはUSB3.1 Gen2接続の「QNAP TL-D800C」について上で説明したようにiometerで2つのSSDに対して同時にアクセスを行ってみたところ、理論的には、というかNVMe SSD変換のUSB3.1 Gen2ストレージでは1100MB/s程度の速度が出るのですが、「QNAP TL-D800C」のトータルアクセススピードは600~700MB/s程度に留まりました。

同時にアクセスするストレージの数を増やしたり、iometerではなくCrystalDiskMarkなども試したのですが結果は同じでした。500MB/sを超えているのでUSB3.0接続になっているということはないはずです。
一応QNAPの公式ホームページではWindows環境のRAID0で900MB/s以上は出るとのことですが、検証環境のPC側に「QNAP USB 3.2 Gen 2 PCIeアダプター」が使用されていると表記があります。ただIntel Z390チップセットのUSBポートに接続しているので(複数のポートを試してみましたが)、相性問題ではないと思う、というか純正USBカードじゃないと速度が出ないというのはどうなの、という別の疑問が生じます。
ともあれ、上で書いたように今回管理人が検証した限りでは、「QNAP TL-D800C」における最大トータルアクセススピードは600~700MB/s程度でした。

続いてPCIE3.0x4帯域を最上流とする「QNAP TL-D800S」について上で説明したようにiometerで複数ストレージにアクセスを行い、トータルアクセススピードを検証してみました。手持ちの機材ではSSDを十分に用意できなかったので、SSD×4&HDD×4の構成で8つのストレージ全てにアクセスを行ったところ、「QNAP TL-D800S」のトータルアクセススピードは2800MB/s程度をマークしました。SSD1つ当たり500MB/s、HDD1つ当たり200MB/sと考えれば妥当な数値です。
今回確認できた最大トータルアクセススピードだけでも、少なくとも5基のSSDに同時アクセスが発生しても、全てのSSDがフルスピードを発揮できます。
接続方法こそ面倒ですが、USB変換ではないのでシングルボリュームで見てもランダムで高速、トータルアクセスでは4倍近く高速なので、転送速度を重視するなら「QNAP TL-D800C」ではなく「QNAP TL-D800S」を検討する価値はあると思います。

QNAP TL-D800C / TL-D800Sのレビューまとめ
最後に最大8基の3.5インチHDDや2.5インチSSDを増設可能なJBODエンクロージャー「QNAP TL-D800C / TL-D800S」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- 8基のドライブベイを搭載、数TB以上のHDDで大容量ストレージを増築できる
- シングルボリュームへのアクセスならSATAストレージの理想的な性能を発揮できる
- 【TL-D800C】USB接続で汎用性が高い、Apple Macにも対応
- 【TL-D800C】PCIE3.0x4変換なので非常に高速
- Windows PCだけでなくQNAP製NASとも一緒に使用できる
- 【TL-D800C】接続方法が特殊なので導入がやや難しい
- エンクロージャー本体だけで製品価格7~8万円と高価
「QNAP TL-D800C / TL-D800S」は、非常に簡単に数TB~十数TBの超大容量HDDを8台も増設でき、ホットスワップもしくはUSBメモリのようにPC起動中も気軽に着脱できるので、大容量データを取り扱っていてストレージ容量が不足しているユーザーには非常に役立つ製品だと思います。
製品価格はエンクロージャー本体だけで7~8万円ですが、NASで定番のQNAP製ということもあって信頼性も高く、製品ターゲットもビジネスユーザーがメインだと思われるので、そういう意味では妥当な価格なのだと思います。
2つのモデルを個別に見ていくと、USB3.1 Gen2をベースにした「QNAP TL-D800C」はApple Macでも使用できるなど汎用性が高く、導入はそれこそUSB外付けHDDのごとく簡単です。
一方で「QNAP TL-D800S」は付属アダプタのPCIE拡張ボード増設が必要であり、ケーブルも一般的ではないMini SASを使用するので、必要ものは一通り揃っているとはいえ、TL-D800Cと比べると導入のハードルは上がります。とはいえ転送速度ではPCIE3.0x4変換の「QNAP TL-D800S」が圧倒的に上回り、トータルアクセススピードで最大3.5GB/s(今回の検証では少なくとも2.8GB/sまでは確認)、シングルボリュームで見ても内蔵SATA SSDと同等の4Kランダム性能を発揮できます。
汎用性か転送速度か、実際の用途に合わせて両製品を検討しているユーザーは選択してください。
以上、「QNAP TL-D800C / TL-D800S」のレビューでした。

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8基のストレージを増設可能なJBODストレージエンクロージャーから、USB3.1 Gen2接続の「QNAP TL-D800C」と、32Gbpsの高速かつ高信頼性なMini SAS&PCIE3.0x4接続に対応する「QNAP TL-D800S」をレビュー。機能や転送速度を比較解説!https://t.co/eBiBYzzRyU
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) October 27, 2020
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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