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水冷パーツメーカーAlphacoolから発売されたAIO水冷キット「Alphacool Eiswolf 2 AIO - 360mm Radeon RX 6800/6800XT/6900 Reference Design with Backplate」を使用して、AMD Radeon RX 6000シリーズのハイエンドモデルRadeon RX 6800 XTを水冷化する手順や、水冷化による冷却性能・静音性の向上についてレビューしていきます。
代理店製品ページ:https://techace.jp/4250197144230-JP
製品公式ページ:https://www.aquatuning.jp/detail/index/sArticle/28501
レビュー目次
1.Alphacool Eiswolf 2 AIO RX 6800/6900 XTの梱包・付属品
2.Alphacool Eiswolf 2 AIO RX 6800/6900 XTのAIO水冷キット本体
3.Alphacool Eiswolf 2 AIO RX 6800/6900 XTの対応グラフィックボード
4.Alphacool Eiswolf 2 AIO RX 6800/6900 XTの組み立て手順
5.AIO水冷化Radeon RX 6800 XTの検証システムについて
6.AIO水冷化Radeon RX 6800 XTの冷却性能や静音性を検証
7.Alphacool Eiswolf 2 AIO RX 6800/6900 XTのレビューまとめ
【機材協力:Alphacool 国内正規代理店 Techace】
Alphacool Eiswolf 2 AIO 360mm RX 6800/6900 XT Referenceの梱包・付属品
まずは「Alphacool Eiswolf 2 AIO - 360mm Radeon RX 6800/6800XT/6900 Reference Design with Backplate」の梱包や付属品をチェックしていきます。「Alphacool Eiswolf 2 AIO 360mm RX 6800/6900 XT Reference」にはGPU水冷ブロックや360サイズラジエーターなど水冷化するためのAIO水冷キットが丸ごと入っているのでパッケージサイズはかなり巨大です。
「Alphacool Eiswolf 2 AIO 360mm RX 6800/6900 XT Reference」のAIO水冷キット本体や各種付属品はパルプモールド製スペーサーでびっしりと収められています。
「Alphacool Eiswolf 2 AIO 360mm RX 6800/6900 XT Reference」にはAIO水冷キット本体に加えて、各種付属品は透明ビニールパックに封入され、マニュアル冊子が付属しています。
製品マニュアルは英語やドイツ語になっており、日本語には非対応ですが、図解がしっかりしており構造も簡単なので組み立て手順に迷うことはないと思います。
「Alphacool Eiswolf 2 AIO 360mm RX 6800/6900 XT Reference」の細かい付属品をチェックしていくと、まず小分けのビニール袋(左側)に水冷ブロック&バックプレートを固定するためのネジセットが封入されています。もう1つのビニール袋はPCIEブラケットを単独でグラフィックボード基板に固定できるようにネジ&ナットが封入されています。
AIO水冷キットの水冷ブロックやバックプレートを、グラフィックボード基板上のVRAMチップやVRM電源回路と接触させるためサーマルパッドも必要サイズが標準で付属します。厚みに応じて小分けにされ、色分けシールも貼られています。青色は厚さ1.0mm、黄色は厚さ3.0mmです。
ラジエーターのポートプラグを着脱するためのプラグツール、熱伝導グリスが付属します。
ラジエーターに冷却ファンを固定するためのネジとして、30mmの長ネジが4本×3セット、ラジエーターをPCケースに固定するための8mmの短ネジが4本×3セット、以上が付属します。ネジの規格は国内のホームセンター等で入手可能なM3ネジです。
「Alphacool Eiswolf 2 AIO - 360mm Radeon RX 6800/6800XT/6900 Reference Design with Backplate」は360サイズラジエーターを搭載したAIO水冷キットなので120mm角ファン「Alphacool Rise Aurora 120 mm fan」が標準で3基付属します。
「Alphacool Rise Aurora 120 mm fan」の定格(最大)回転数は2500RPM、PWM速度調整に対応し、0~2500RPMの範囲内で制御可能です。PWM速度調整で350RPM以下になるデューティ比に設定すると、ファンを完全に停止させることができます。
白色ブレードは軸受け部分に内蔵されたLEDイルミネーションの光を拡散し、ブレード全体やフレーム状リングに鮮やかな色が行き渡らせる特殊素材です。
軸受けを固定する支柱は緩やかに弧を描きながらファンブレードに対して垂直になっており、ファンブレードが支柱付近を通過するときに発生するノイズを抑制しています。軸受けにはスリーブベアリングが採用されており、MTBF 5万時間の長寿命です。
ファンフレームのネジ穴周辺部分には、高回転時に発生しやすい振動やノイズを抑制し、静音性を高める防振ラバーパッドを搭載しています。
「Alphacool Rise Aurora 120 mm fan」からはPWM対応4PINファンケーブルに加えて、ファンに内蔵されたLEDイルミネーションに給電およびライティング制御するためのARGB対応3PIN LEDケーブルが伸びています。
「Alphacool Eiswolf 2 AIO - 360mm Radeon RX 6800/6800XT/6900 Reference Design with Backplate」は360サイズラジエーターを搭載したAIO水冷キットなので、3基の冷却ファンを一括で制御できるように3分岐ケーブルも付属しています。
「Alphacool Rise Aurora 120 mm fan」のARGB対応LEDケーブルは独自のミニコネクタなので、マザーボードなどに採用されているVD-G型汎用3PINに変換するケーブルが付属します。
「Alphacool Rise Aurora 120 mm fan」はあくまで水冷キット付属品ということで、ファンブレードの風切り音や軸音の静音性等はそこまで優秀なわけではありません。AIO水冷キット自体の冷却性能が高いので冷却ファンはそこそこの性能があれば十分というとそうなのですが。
静音性を重視するのであれば、超硬質かつ軽量な新素材「Sterrox LCP」の採用によってフレーム-ブレード間0.5mmの限界を実現させた次世代汎用120mm口径ファン「Noctua NF-A12x25 PWM」への換装もおすすめです。1基あたり4000円ほどと高価ですが、標準ファンよりも静音性と冷却性能を向上させることができます。
・「Noctua NF-A12x25 PWM」を360サイズ簡易水冷に組み込む
またベージュ&ブラウンの独特なカラーリングが苦手という人には、NF-A12x25とほぼ同等品で黒一色なカラーリングの「Thermaltake TOUGHFAN 12」がオススメです。
・「Thermaltake TOUGHFAN 12」をレビュー。あの大人気ファンが黒く!?
Alphacool Eiswolf 2 AIO 360mm RX 6800/6900 XT ReferenceのAIO水冷キット本体
続いて「Alphacool Eiswolf 2 AIO - 360mm Radeon RX 6800/6800XT/6900 Reference Design with Backplate」のAIO水冷キット本体をチェックしていきます。自作PCで『グラフィックボードの水冷化』というと以前レビューしたようなフルカバー水冷ブロックを使用したDIY水冷をイメージする人が多いと思います。
グラフィックボードから標準GPUクーラーを取り外してクーラーを換装するところまでは同じですが、水路の構築などで若干専門的な知識も必要になるので導入のハードルは高めであることは否めません。
AIO水冷キットの「Alphacool Eiswolf 2 AIO - 360mm Radeon RX 6800/6800XT/6900 Reference Design with Backplate」はというと、上で紹介したようなDIY水冷向けパーツが使用されてはいるのですが、水冷ブロック→ポンプ→ラジエーターという一連の水路が完成し、クーラントも充填された状態でユーザーの手元に送られてきます。
「Alphacool Eiswolf 2 AIO - 360mm Radeon RX 6800/6800XT/6900 Reference Design with Backplate」は導入に当たってGPUクーラーを取り換えるだけと非常に手軽なところが魅力であり、空冷GPUクーラーよりも抜群に冷えるというメリットを簡単に享受できます。
「Alphacool Eiswolf 2 AIO 360mm RX 6800/6900 XT Reference」の水冷ブロック部分は、同社から発売されているフルカバー水冷ブロック Eisblock Aurora Acryl GPX-A Radeon RX 6800/6800XT/6900XT Referenceをベースにしています。
表面のカバーは透明アクリルプレートで内部のクーラントが透けて見え、マザーボード側にはARGB LEDストリップが内蔵されているので、アクリルとクーラントを綺麗にライトアップできます。
グラフィックボード基板と接する裏面部分には、GPUコア&VRAMと左右のVRM電源回路(MOS-FET)の3ブロックに分かれて、ニッケルメッキが施された銅製水冷ブロックが装着されています。
GPUコアと接する部分は綺麗な鏡面に磨き上げられています。今回は通常のシリコンサーマルグリスを使用しますが、ニッケルメッキが施された銅製なので、液体金属も使用できます。
銅製ベースプレートのGPUコアと接する部分の反対側(水路側)には、クーラントに対して効率的な熱交換が可能になるよう、フィン構造を形成しており、さらに流入口を絞って流速を高めるジェットプレートも採用されています。
また「Alphacool Eiswolf 2 AIO 360mm RX 6800/6900 XT Reference」にはVRAMチップやVRM電源回路の放熱板も兼ねたアルミニウム製バックプレートも標準で付属します。
通常のフルカバー水冷ブロックでは各種フィッティングを装着するためのポートが設けられているターミナル部分には黒色カバーで覆われた水冷ポンプ部が実装されています。
ターミナル部分の黒色カバー内部には定格ポンプ速度2600RPMの高性能水冷ポンプDC-LT 2が統合されており、PWM対応4PINファン端子ケーブルによって電力供給と速度調整を行います。
「Alphacool Eiswolf 2 AIO 360mm RX 6800/6900 XT Reference」は、AIO水冷キット全体にクーラントがプリフィルされリザーバーが不要であり、水冷ポンプが水冷ブロックのターミナルに統合されているので、最小限のスペースでグラフィックボードの水冷化を実現できます。
水冷チューブはターミナルの銅製プレート側(通常のATXレイアウトで上側)から90度アングルのL字エルボーフィッティングを介して接続されており、根本は360度回転可能なロータリー式になっています。
「Alphacool Eiswolf 2 AIO 360mm RX 6800/6900 XT Reference」の水冷チューブは黒色で不透明なEPDMゴム製です。
ラジエーター側は通常のストレートフィッティングで接続されており、ロータリーはありません。チューブの取り回しを考えると、L字エルボーの根本だけではなく、チューブ方向へのロータリーも欲しかったところ。
また、DIY水冷のソフトチューブでは内径3/8外径1/2(10mm/13mm)もしくは内径3/8外径5/8(10mm/16mm)を使用しているユーザーが多いと思いますが、「Alphacool Eiswolf 2 AIO 360mm RX 6800/6900 XT Reference」の水冷チューブは内径5/16外径1/2(8mm/13mm)です。
水冷チューブの長さはクイックリリースフィッティングを含め500mm程です。
「Alphacool Eiswolf 2 AIO 360mm RX 6800/6900 XT Reference」は両側の水冷チューブの中間にそれぞれ、最小限の水漏れで水路を分断・接続できるクイックリリースフィッティングが挿入されています。
Alphacool Eiswolf 2 AIOシリーズは同じクイックリリースフィッティングを使ってCPU水冷ブロックやラジエーターを増設できるところも特徴です。(クイックリリースフィッティング付きチューブを装着済みかつクーラントも充填済みのパーツがAlphacoolから発売されている)
クーラントの再充填手段がない状態での増設は個人的にはあまりお勧めしたくないということもあり、今回はGPUの水冷化に焦点を絞ってレビューするので、クイックリリースフィッティングによる機器増設については割愛します。
「Alphacool Eiswolf 2 AIO 360mm RX 6800/6900 XT Reference」の水冷ラジエーター部分には、管理人が一押しする本格水冷ラジエーター NexXxoS Full Copperシリーズの360mmサイズ30mm厚モデルが採用されています。
ラジエーターの厚みはスリムな30mmなので、付属品を含め25mm厚の標準的な120mm冷却ファンを搭載した時の合計の厚さは55mm程度です。360サイズラジエーターに対応したPCケースであれば問題なく設置できるはずです。
Full Copperの名前の通り、NexXxoS Full Copperシリーズは放熱フィンも銅製になっています。勘違いする人も少なくないそうですが、黒色塗装の隙間から見える放熱フィンの茶色はサビではなく銅の茶褐色です。
NexXxoS Full Copperシリーズは静音性重視な低速(低静圧)ファンでも十分に放熱できるように、若干広めのフィンピッチが採用されているのも特徴です。
Alphacool Eiswolf 2 AIO 360mm RX 6800/6900 XT Referenceの対応グラフィックボード
AIO水冷キット「Alphacool Eiswolf 2 AIO - 360mm Radeon RX 6800/6800XT/6900 Reference Design with Backplate」を使用して水冷化が可能なグラフィックボードについて紹介していきます。「Alphacool Eiswolf 2 AIO - 360mm Radeon RX 6800/6800XT/6900 Reference Design with Backplate」は、その名前の通りRadeon RX 6800、Radeon RX 6800 XT、Radeon RX 6900 XTのAMD純正リファレンス仕様グラフィックボードにのみ対応しています。
パートナー各社箱詰めのリファレンスモデルは2020年11月の発売当初に少数だけ出回った製品となっており、現在では新品を入手するのが困難で、中古を探せば何とかという感じです。
ベースになるフルカバー水冷ブロックに限れば、SAPPHIRE Nitro+やPowerColor Red Devilの対応製品も発売済みなので、後はAlphacoolの気持ち次第なのですが。
また今回レビューするのは上述の通りRX 6800/6900 XTのリファレンス基板に対応したAIO水冷キットですが、Alphacool Eiswolf 2 AIOからは、SAPPHIRE Nitro+のオリジナル基板に対応したモデルも発売されています。
Alphacool Eiswolf 2 AIO 360mm RX 6800/6900 XT Referenceの組み立て手順
RX 6800/6900 XT用AIO水冷キット「Alphacool Eiswolf 2 AIO 360mm RX 6800/6900 XT Reference」を使用して対応するRX 6800 XTグラフィックボードを水冷化する手順について紹介していきます。グラフィックボードの分解・水冷化の際はネジ等小さいパーツが多いので分解や組立中はもちろん分解後の保管中にも失くさないように、小さい蓋つきプラスチックパックやチャック付きポリ袋を用意しておくと便利です。
小さいパックは作業時にネジ類を放り込んでおくと紛失し難くなります。ポリ袋は分解したグラボの元々のネジを保管するのに使用できます。
分解前の用意についてはこの辺りにして早速、Radeon RX 6800 XT リファレンスモデルを分解していきます。
なお今回は水冷化のため自己責任でGPUクーラーを取り外していますが、GPUクーラーの取り外し(分解行為)はグラフィックボードの正規保証の対象外になる行為です。今回はレビューのために分解しておりますが、繰り返しますが保証対象外になるので基本的には非推奨の行為なのでご注意下さい。
今回水冷化に使用する、SAPPHIREやPowerColorが箱詰めした「Radeon RX 6800 XT リファレンスモデル」についてもバックプレートやGPUクーラーを固定するネジの一部に封印シールが貼られているため、分解にあたり、このシールが破けると高い確率で正規保証の対象外となります。
「Radeon RX 6800 XT リファレンスモデル」のGPUクーラーの分解手順として、まずはバックプレート上の2カ所の計8個のネジを外します。
バックプレート上の8カ所のネジを解除すると、グラフィックボード基板からバックプレートを取り外すことができます。「Radeon RX 6800 XT リファレンスモデル」のバックプレートは金属製ですが、基板とバックプレートの間にはサーマルパッドがないので、冷却補助の役割はありません。
バックプレートを外したらグラフィックボード基板背面から見えるネジ全て、およびPCIEブラケット側の3カ所のネジを取り外します。
基板背面から見えるネジ全てとPCIEブラケット上の3カ所のネジを解除すると、グラフィックボード基板からGPUクーラー本体を取り外すことができます。
「Radeon RX 6800 XT リファレンスモデル」ではCPUコアとベースプレート間のTIMにカーボン製サーマルパッドが使用されています。GPUクーラーを取り外すとカーボン製サーマルパッドは破れてしまうので、再利用は難しいと思います。ちなみにカーボン製サーマルパッドの厚みは0.1mm程度でした。
AMD純正リファレンスモデルなので差異はないはずですが、念のため下写真と基板レイアウトや実装された素子を比較して、水冷化に使用するRadeon RX 6800 XTが同じ基板かどうか、互換性のあるレイアウトかどうかを確認してください。
さてここからはAIO水冷キット「Alphacool Eiswolf 2 AIO 360mm RX 6800/6900 XT Reference」を先ほど分解したRadeon RX 6800 XTのグラフィックボード基板に装着します。
「Alphacool Eiswolf 2 AIO 360mm RX 6800/6900 XT Reference」では水冷ブロック側でPCIEブラケットを固定できません。
GPUクーラーを取り外したら最初に付属のネジ&ナットを使用して、PCIEブラケットをグラフィックボード基板に固定していください。
次はサーマルパッドの貼り付けです。AIO水冷キットの水冷ブロックやバックプレートを、グラフィックボード基板上のVRAMチップやVRM電源回路と接触させるために使用するサーマルパッドは必要サイズが標準で付属します。付属品については厚みに応じてビニール袋で小分けにされ、判別用の色分けシールも貼られています。青色は厚さ1.0mm、黄色は厚さ3.0mmです。
Alphacool Eiswolf 2 AIOにはサーマルパッドが標準で付属しますが、過去に行った水冷化レビューに続き、Thermal Grizzly製品の国内正規代理店 親和産業からクマさんパッドこと「Thermal Grizzly Minus Pad 8」をご提供いただいたので、今回もこちらの高性能サーマルパッドを組み合わせて水冷化していきます。
「Thermal Grizzly Minus Pad 8」はセラミック、シリコン、微粒子化された酸化アルミニウムで構成された熱伝導パッドとなっており熱伝導効率が8.0W/m・Kと高い効率を実現しています。非電導性なのでグラフィックボードと水冷ブロックの接触にも安心して使用できます。
Alphacool Eiswolf 2 AIOで水冷化する場合、必要なサーマルパッドのサイズと枚数は以下の通りでした。
・1.0mm厚、120mm x 16mm *2枚 (TG-MP8-120-20-10-1R)
・3.0mm厚、120mm x 16mm *2枚 (TG-MP8-120-20-30-1R)
まずは表面です。貼り付けるサーマルパッドのサイズや厚みもマニュアルに記載があるので特に迷うこともないと思います。水冷ブロック側は厚みが1mmだけなので特に簡単です。
Thermal Grizzly minus Pad 8は汎用サイズで販売されているので当然ですが、水冷ブロックに合わせて各自でカットする必要があります。とはいえハサミでカットするだけなので簡単です。
マニュアルでは分かりやすく水冷ブロック側にサーマルパッドの貼り付け位置が描かれていますが、グラフィックボード基板の該当位置にそのまま貼っても問題ありません。
サーマルパッドを貼ったらGPUコアに熱伝導グリスを塗り直し、GPUクーラーを取り付けます。熱伝導グリスには毎度おなじみ管理人愛用のクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。熱伝導効率も高く、柔らかいグリスで塗布しやすいのでおすすめです。
最終的にネジ止めで圧着されるのでグリスの塗り方は割とてきとうでOKです。管理人は一応米の字に伸ばして塗っています。
今回は上記の通り、一般的なシリコングリス(非電導性)を使用していますが、Thermal Grizzlyからはグラフィックボードにも使用できる絶縁保護剤 TG SHIELDと液体金属 Conductonautが発売されています。
Alphacool Eiswolf 2 AIOの水冷ブロックはニッケルメッキが施された銅製なので液体金属を使用でき、GPUダイ-水冷ブロック間を液体金属にすることでさらに冷却性能の向上を狙えます。気になる人はこちらの記事もチェックしてみてください。
熱伝導グリスを塗ったら上から水冷ブロックを被せて、背面からネジ止めを行います。
続いてAIO水冷キット付属のアルミニウム製バックプレートを装着するので、下準備としてグラフィックボード背面にサーマルパッドを貼り付けます。
基板背面へマニュアルの表記に合わせてThermal Grizzly minus Pad 8をカットして貼り付けました。
あとはバックプレートもネジ止めすれば、AIO水冷キット「Alphacool Eiswolf 2 AIO 360mm RX 6800/6900 XT Reference」によるGeForce RX 6800 XTの水冷化が完了です。
AIO水冷CPUクーラーと同じく、「Alphacool Eiswolf 2 AIO 360mm RX 6800/6900 XT Reference」はラジエーターやポンプなどが組み込み済みなので、水冷ブロックへの換装さえ完了してしまえば、あとは空冷同様にPCIEスロットにグラフィックボード本体を装着し、PCケースに水冷ラジエーターを設置するだけです。
AIO水冷化Radeon RX 6800 XTの検証システムについて
AIO水冷キット「Alphacool Eiswolf 2 AIO - 360mm Radeon RX 6800/6800XT/6900 Reference Design with Backplate」で水冷化したRadeon RX 6800 XTを検証用PCに組み込んでいきます。今回はテストシステムのPCケースに、180mmサイズケースファンに対応する高エアフローと魅せるデザインを追求した新型ミドルタワーPCケース 「Fractal Design Torrent Black RGB TG Light Tint」を使用しています。
「Fractal Design Torrent」は標準でフロントに2基の180mm角ケースファンを搭載していますが、今回の検証ではこのフロントスペースにAlphacool Eiswolf 2 AIOの360mmサイズラジエーターを設置するので、比較対象となる換装前の空冷クーラーの検証段階で、フロントファンは3基の120mm角ケースファン「Thermaltake TOUGHFAN 12」に置き換えました。
以降の検証に当たって、CPUクーラー冷却ファンは800RPM、PCケースボトムの140mmファン×3は800RPM、空冷グラフィックボード検証時にPCケースフロントのThermaltake TOUGHFAN 12は1200RPMでファン速度を固定しています。
なお「Fractal Design Torrent」はケース内エアフローに非常に優れたPCケースで、グラフィックボードと向かい合って底面に3基の140mmケースファンが設置されており、TGP300W超クラスのグラフィックボードでもベンチ板測定に近い冷却性能を発揮します。一般的なミドルタワーPCケースに組み込んだ場合、空冷グラフィックボードの冷却性能は下がる、ファン速度やGPU温度は上昇する可能性が高いので注意してください。
前置きが長くなりましたが、「Alphacool Eiswolf 2 AIO - 360mm Radeon RX 6800/6800XT/6900 Reference Design with Backplate」で水冷化したRadeon RX 6800 XTを搭載したサンプルビルドがこちら。
「Alphacool Eiswolf 2 AIO - 360mm Radeon RX 6800/6800XT/6900 Reference Design with Backplate」は透明アクリルのトップカバーで、ARGB LEDイルミネーションも標準で内蔵しているので、グラフィックボードの垂直配置をしても非常に映えると思います。
AIO水冷化Radeon RX 6800 XTの冷却性能や静音性を検証
上で紹介した検証システムを使用して、AIO水冷キット「Alphacool Eiswolf 2 AIO - 360mm Radeon RX 6800/6800XT/6900 Reference Design with Backplate」で水冷化したRadeon RX 6800 XTの冷え具合や静音性をチェックしていきます。AIO水冷化RX 6800 XTのGPU温度とVRAM温度、ファンノイズの検証負荷としてはGPUに100%近い負荷をかける3DMark TimeSpy Extreme Stress Test、もしくはTimeSpy Extreme グラフィックテスト1のループ再生を使用しています。
一般的な3スロット占有空冷GPUクーラーを搭載したRX 6800 XTグラフィックボードの代表として、今回のAIO水冷化の素体にもなったRadeon RX 6800 XT リファレンスモデルを参考にすると、TimeSpy Stress Test中のGPU温度は80度、ファン速度は1200~1300RPMに達しています。
Radeon RX 6800 XT リファレンスモデルはGPUクーラーのチューニングがかなり静音性重視なので、TGP300W超のグラフィックボードとしてはファン速度は低めですが、その代わりにGPU温度が高い数値を示しています。
一方で、Alphacool Eiswolf 2 AIOによって簡易水冷化したRX 6800 XTはというと、GPU温度は最大でも56度以下に収まっています。空冷グラフィックボードの検証時にも搭載している、PCケースフロントの3基の120mmファンをそのままラジエーター冷却ファンにしているので、1200~1300RPMで動作する空冷GPUクーラーがそのままなくなって静音化し、GPUは20度以上も冷えるという結果です。
GPUに搭載された複数の温度センサーのうち、最大温度を示すジャンクション温度についても空冷クーラーでは最大98度に達していますが、Alphacool Eiswolf 2 AIO搭載RX 6800 XTなら最大73度に収まります。
空冷GPUクーラーと比較すると抜群の冷え具合ですが、DIY水冷用フルカバー水冷ブロックをベースにしていることを考えると40度台で運用できるくらいの冷え具合を予想していたので、そこは少し物足りない結果でした。
Alphacoolはフルカバー水冷ブロックのメーカーとしては後発なのでフルカバー水冷ブロックの冷却性能が低めなのか、もしくは組み込みポンプのDC-LT 2がDIY水冷パーツで構成される水路に対して非力なのが原因かもしれません。
近年のGPUは運用上は十分に低いGPU温度である40~70度以下であっても、GPUが冷えるほど高コアクロックで動作するので、GPU温度が50度台に収まるAlphacool Eiswolf 2 AIO搭載RX 6800 XTは一般的な空冷GPUクーラーのオリファンモデル(同じコアクロック設定なら)よりも高いコアクロックで動作し、フレームレートも実際に高くなります。
またVRAM温度やVRM電源温度についても、Radeon RX 6800 XT リファレンスモデルはストレステスト中に80~90度の高温に達しますが、Alphacool Eiswolf 2 AIO搭載RX 6800 XTであれば20度以上も低下し、60度以下に余裕で収まります。
Alphacool Eiswolf 2 AIO RX 6800/6900 XT レビューまとめ
最後にAIO水冷キット「Alphacool Eiswolf 2 AIO - 360mm Radeon RX 6800/6800XT/6900 Reference Design with Backplate」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- RX 6800/6900 XT リファレンスモデルを水冷化できるAIO水冷キット
- 水路は組み立て済み、クーラントも充填済み
- GPUクーラーの換装だけでグラフィックボードを簡単にAIO水冷化できる
- TGP300W超のRX 6800 XTをGPU温度 50度台で運用可能
- VRAM温度は空冷GPUクーラーと比較して20度以上も冷える
- RX 6800/6900 XT リファレンスモデルは2021年10月現在、入手困難
- AIO水冷キットの国内価格は税込み3.7万円程と高価
- チューブの中間にあるクイックリリースフィッティングがかさばる
AIO水冷キット「Alphacool Eiswolf 2 AIO - 360mm Radeon RX 6800/6800XT/6900 Reference Design with Backplate」を使用すれば、RX 6800/6900 XT リファレンスモデルを簡単に水冷グラフィックボードへと換装できます。
TGP300W超のグラフィックボードはPCケースに組み込む実用環境ではどうしてもGPUクーラー冷却ファンが高速で動作し、ファンノイズも大きくなりがちですが、360mmラジエーターで放熱するAlphacool Eiswolf 2 AIOなら、3基の120mmファンを1200RPM以下のゆっくりなファン速度で回すだけで、空冷GPUクーラーよりも20度以上も冷やすことが可能です。
RX 6800 XTやRX 6900 XTのリファレンスモデルについて、国内では各GPUの解禁後に少量が市場に出回っただけなので、残念ながら今から入手するのは難しく、「Alphacool Eiswolf 2 AIO - 360mm Radeon RX 6800/6800XT/6900 Reference Design with Backplate」の恩恵に与れる人は少ないと思います。
Alphacoolからは同AIO水冷キットの素体となるフルカバー水冷ブロックに限れば、SAPPHIRE Nitro+やPowerColor Red Devilの対応製品も発売済みなので、オリファンモデル向けAIO水冷キットの発売にも期待したいところです。
以上、『Alphacool水冷キットでRX 6800 XTを水冷化』でした
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AIO水冷キット「Alphacool Eiswolf 2 AIO」を使用してRadeon RX 6800 XTを水冷化レビュー。
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) October 18, 2021
AIO水冷クーラーに換装する手順や、水冷化による冷却性能・静音性の向上について徹底解説。https://t.co/GCkpD5LTua pic.twitter.com/Qhk6EzArjZ
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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