えくすとりーむぐりす 4G あるてぃめいと


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非導電性シリコングリスながら特殊なカーボン素材を配合することで20W/m・K以上の熱伝導性能を実現し、ほぼ劣化しない高耐久性も兼ね備えたOC対応サーマルグリス「えくすとりーむぐりす 4G あるてぃめいと(型番:CWTP-EG4GUL)」をレビューします。


製品公式ページ:https://cwtp.official.ec/items/80585243





レビュー目次


1.えくすとりーむぐりす 4G あるてぃめいと について

2.検証機材について

3.冷却性能を比較検証 【長期的なCPU負荷】
4.冷却性能を比較検証 【瞬間:短期的なCPU負荷】


5.レビューまとめ



【機材協力:CWTP 国内正規取扱店 タイムリー】



えくすとりーむぐりす 4G あるてぃめいと について

まずは「えくすとりーむぐりす 4G あるてぃめいと」の外観や付属品をチェックしていきます。
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「えくすとりーむぐりす 4G あるてぃめいと」は空気に触れて多少でもグリスが劣化し難いように、ビニール製ジップパックで梱包されています。使用後の保管も楽です。
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今回入手したのは初回1000本限定の初回限定版となっており、グリス本体は通常ロットと同じ仕様ですが、限定特典としてグリスを塗り広げるのにも使える(もったいない?)プラスチック製カードが付属していました。
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1000枚の中にもさらにレインボーの当たりカードがあるそうな。



「えくすとりーむぐりす 4G あるてぃめいと」は非導電性シリコングリスで一般的なシリコンと酸化金属類に加えて(同製品独自に極めて微粒子化)、特殊加工されたカーボンを配合することで20W/m・K以上の高い熱伝導率を実現しています。 加えて一般的なグリス同様に構成する素材はいずれも非導電性です。

また構成素材は気化率は0.001%で温度や空気による劣化に強く、長期運用時でもほとんど性能は劣化しません。一度塗布した後は、期待値で5年以上の連続運用が可能とのこと。
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グリス自体はよく見る注射器状(針はない)のシリンジに封入されていて、数mm幅で出せるようになっています。
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「えくすとりーむぐりす 4G あるてぃめいと」粘度は100CPSと、一般的な高性能グリスやハンドクリームなどに似た硬さとのことで、確かに柔らかく、広げやすくはあるのですが、若干パサパサしていて金属製ヒートスプレッダの上で伸ばそうとすると表面で滑って剥がれる感じです。標準モデル えくすとりーむぐりす 4Gと比べるとヘラで伸ばす塗り方は若干難易度が高い気がします。


グリス自体は柔らかいので、中央水滴盛り、縦長盛り、米字盛りなどで適当にヒートスプレッダ上に乗せて後はCPUクーラーベースプレートの圧力で広げてしまう塗り方がオススメです。
Thermal Grizzly Kryonaut_apprication



検証機材について

「えくすとりーむぐりす 4G あるてぃめいと」の検証に使用するベンチ機について簡単に紹介しておきます。検証を行うベンチ機のシステム構成は次のようになっています。
テストベンチ機の構成
CPU
Intel Core i9 13900K
レビュー
AMD Ryzen 9 7950X
レビュー
M/B ASUS ROG MAXIMUS Z790 HERO
レビュー
ASUS ROG CROSSHAIR X670E HERO
レビュー
メインメモリ G.Skill Trident Z5 RGB
F5-7200J3445G16GX2-TZ5RK
DDR5 16GB*2=32GB (レビュー
7200MHz, 34-45-45-115
G.Skill Trident Z5 Neo
F5-6000J3038F16GX2-TZ5N
DDR5 16GB*2=32GB (レビュー
6000MHz, CL30-38-38-96
CPUクーラー Fractal Design Celsius S36
レビュー
Noctua NF-A12x25 PWM
レビュー
グラフィックボード
MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC
ファンレス (レビュー
システム
ストレージ
Samsung SSD 990 PRO 1TB (レビュー
OS Windows 11 Home 64bit
電源ユニット
Corsair HX1500i 2022 (レビュー
PCケース/
ベンチ板
STREACOM BC1 (レビュー


ベンチ機のシステムストレージには「Samsung SSD 990 PRO 1TB」を使用しています。
Samsung SSD 990 PROは、PCIE4.0対応SSDで最速クラスの性能を発揮し、なおかつ電力効率は前モデル980 PRO比で最大50%も向上しており、7GB/s超の高速アクセスでも低発熱なところも魅力な高性能SSDです。 これからPCIE4.0対応プラットフォームの自作PCを組むなら、システム/データ用ストレージとして非常にオススメな製品です。
「Samsung SSD 990 PRO 1TB」をレビュー。性能も電力効率もトップクラス!
Samsung SSD 990 PRO 1TB



冷却性能を比較検証 【長期的なCPU負荷】

本題となる「えくすとりーむぐりす 4G あるてぃめいと」の冷却性能についてチェックしていきます。
「えくすとりーむぐりす 4G あるてぃめいと」に加えて、同社標準モデルの「えくすとりーむぐりす 4G」、当サイトで推奨グリスとして紹介している「Thermal Grizzly Kryonaut」と比較してみました。
DSC01735_DxO

予め明言しておくと、Thermal Grizzly Kryonautについては各種検証で使用するため国内正規代理店から定期的にサンプル提供いただいています。言うまでもないことですが、今回の比較検証に当たっては条件を統一し、忖度なしに性能を比較しています。


Intel第13世代Raptor Lake-S最上位モデル、24コア32スレッドCPUのIntel Core i9 13900Kを使用して、「えくすとりーむぐりす 4G あるてぃめいと」の冷却性能を検証していきます。
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Core i9 13900Kの動作設定はPL1/PL2:253Wの定格動作とし、メモリOC設定については検証機材メモリ「G.Skill Trident Z5 Neo F5-6000J3038F16GX2-TZ5N」に収録されたOCプロファイルを適用し、メモリ周波数6000MHz、メモリタイミング30-38-38-96、メモリ電圧1.350Vです。

Core i9 13900Kを定格設定のPL1/PL2:253Wで動作させると、フル負荷時にP-Core All 5.2GHz、E-Core All 4.1GHz程度となり、Cinebench R23のスコアは39000前後になります。またこの動作設定において上で紹介したx264エンコードによるストレステストを実行すると、EPS電源経由の消費電力は300W前後に達します。
Intel Core i9 13900K_def_Cinebench R23
Intel Core i9 13900K_def_Power

冷却性能を検証するためのストレステストについては、FF14ベンチマークの動画(再生時間7分、4K解像度、60FPS、容量5.7GB)をソースとしてHandBrakeによるx264動画エンコードを使用しています。
4~6コアは並列なし、8~14コアは2並列実行、16コア以上は3並列実行のようにメニーコアでもCPUに遊びが生じないよう動画エンコードの並列実行数は適宜調整しています。なおテスト中の冷却ファンや水冷ポンプの回転数は一定値に固定します。
Intel Core i9 13900K_Stress
注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から管理人の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。

定格動作であるPL:253WのCore i9 13900Kの定格動作であるPL:253Wに対する冷却性能を検証してみたところ、CPU温度は「えくすとりーむぐりす 4G あるてぃめいと」とThermal Grizzly Kryonautが同程度、えくすとりーむぐりす 4Gは1~2度くらい温度が高い、というような傾向でした。
えくすとりーむぐりす 4G あるてぃめいと_13900K_253W_Stress_temp

続いて、Core i9 13900Kの動作設定として電力制限をPL1/PL2:300Wに引き上げて同様にストレステストを実行しました。なお、ここからはCPU温度制限(サーマルスロットリングのトリガーになるジャンクション温度)も115度に引き上げています。
Core i9 13900K_BIOS_Temp-Limit-disabled

「えくすとりーむぐりす 4G あるてぃめいと」とThermal Grizzly Kryonautの差を見たかったので、ここは2種類に絞って検証を行いました。
Core i9 13900KをCPU Package Powerで300Wまで許容した状態でも「えくすとりーむぐりす 4G あるてぃめいと」とThermal Grizzly Kryonautの差は室温調整のほうに限界を感じる程度の違いです。
えくすとりーむぐりす 4G あるてぃめいと_13900K_300W_Stress_temp

実用シーンも想定した長期的負荷に対する冷却性能という意味では、『「えくすとりーむぐりす 4G あるてぃめいと」とThermal Grizzly Kryonautが同程度、えくすとりーむぐりす 4Gは1~2度くらい温度が高い』というのが当サイトの評価です。

”CPU消費電力が一定”という条件だとCinebench R23を1回実行するだけの短期的な負荷であっても「えくすとりーむぐりす 4G あるてぃめいと」とえくすとりーむぐりす 4Gの温度差はせいぜい3~4度くらいです。

また「えくすとりーむぐりす 4G あるてぃめいと」とThermal Grizzly Kryonautの比較については、室温調整の方に限界を感じます。一応、今回の検証環境だと次章の検証も含め、Thermal Grizzly Kryonautのほうが僅かに冷えるというのが当サイトの検証結果でした。



冷却性能を比較検証 【瞬間・短期的なCPU負荷】

先の章の検証においてCPU消費電力(CPU Package Power)は電力制限の設定値が上限となり、下記グラフのように設定値に張り付いて概ね一定の消費電力で動作することになります。
室温25度程度、360サイズAIO水冷クーラーでファン速度1500RPM、PCが電源ONの状態で十分に温まっていて、そこからCPUに一定のフル負荷をかけた場合、Core i9 13900KのCPU Package Powerで250~300Wの負荷に対して、5分足らずでCPU温度は概ね収束します。
13900K_PL-300W_Stress_えくすとりーむぐりす 4G あるてぃめいと

ここまでの検証では上で説明した通り、電源ONで放置してPC(MBやCPUクーラー)が十分に温まった状態をスタートに一定消費電力のCPU負荷をかけてテストしてきましたが、条件を大きく変えてみました。
電力制限を完全に無効化し(ジャンクション温度は115度)、電源オフの状態で2~3時間以上の長時間放置、そこから電源を入れてすぐにCinebench R23の10分間テストを実行した時のCPU温度やCPU消費電力(CPU Package Power)の推移が次のようになっています。
13900K_PL-No_Stress_えくすとりーむぐりす 4G あるてぃめいと
13900K_PL-No_Stress_えくすとりーむぐりす 4G

近年のCPUはCPU温度によって同じ周波数でもコア電圧が変わるため、結果としてCPU消費電力(CPU Package Power)も大きく変わり、相互に影響し合います。
固定電圧でCPU倍率を引き上げるOCが主流だった昔とは消費電力の傾向が変わるのでCPUクーラーやグリスを評価する際には注意が必要です。

簡単な例を挙げると、90度まで5GHzが1.300V(300W)なのに91度では1.350V(350W)になるCPUの場合、90度で冷やせるグリスAに対して、91度で冷やせるグリスBではCPU温度が100度になり、同じ消費電力に対して温度差は1度なのに、グリスAとグリスBの温度差が10度と認識されるということが起こり得ます。

実用シーン(長期負荷がかかった時)というよりも、一発芸OCでスコアを取る時にサーマルスロットリングが発生しないかどうかに重きを置いたような検証方法ではあるものの、そういう条件でストレステストを行うと「えくすとりーむぐりす 4G あるてぃめいと」や他2種のグリスを使用した時のCPU温度とCPU消費電力(CPU Package Power)の推移は次のようになります。
えくすとりーむぐりす 4G あるてぃめいと_13900K_PL-No_Stress_1_temp
えくすとりーむぐりす 4G あるてぃめいと_13900K_PL-No_Stress_2_CPP

上記グラフの1~4分経過後のように、電力制限無効化ではCPU温度と相互に影響し合い、そもそもCPU消費電力が異なるので使用するグリスによってCPU温度差が大きくなる場合があります。
今回の場合で言うと、「えくすとりーむぐりす 4G あるてぃめいと」とThermal Grizzly Kryonautが同程度に対して、えくすとりーむぐりす 4Gは過渡状態で5度~10度冷えない、のように。

「えくすとりーむぐりす 4G あるてぃめいと」については個人サイトやSNS等で検証データが挙げられていますが、CPU温度で5~10度のような比較的大きい差が出ているデータはそういう条件で出た数値だと思います。

当サイトでCPUクーラーやグリスの評価を行う場合は、電力制限でCPU Package Powerが頭打ち(一定値)になるか、無制限の場合はCPU Package Powerに差がないことを確認して温度比較を行っています。

グリスの性能を評価する上で『CPU消費電力の差も含めて(過渡状態における)冷却性能の差だ』という考え方も間違いではないと思いますが、最終的には先に掲載している電力制限を課した状態のようなCPU温度差に収束しますし、それが実用シーンにおけるCPU温度差である、というのが筆者の考えです。
”瞬間的・短期的な負荷に強い”と表現することはできるものの、それだけを取り上げて冷却性能に大きな差がある、冷却性能が非常に高い、というように評価するのは違うというのが率直な意見です。



レビューまとめ

「えくすとりーむぐりす 4G あるてぃめいと」は、当サイトで以前から推奨しているThermal Grizzly Kryonautと遜色ない性能を発揮しました。
Thermal Grizzly Kryonautは1gで1100円程度、1.5ml(5.55g)で3000~3400円に対して、「えくすとりーむぐりす 4G あるてぃめいと」は製品名の通り容量4gが税込み1780~1980円で販売されており、同等の冷却性能(シリコングリスとしてはトップクラス)と考えればコスパの高い製品だと思います。

なお、一発芸OCや短期的・瞬間的な負荷に強いものの、長期的な負荷に対しては同社の標準モデル えくすとりーむぐりす 4Gなど一般的なシリコングリスとの性能差はそれほど大きくありません。
シリコングリスとしてはトップクラスの製品であることは間違いありませんが、液体金属のように問答無用で冷える(一定電力かつ長期的な負荷でも5~10度の差が出る)という製品ではないようです。


以上、「えくすとりーむぐりす 4G あるてぃめいと」のレビューでした。
えくすとりーむぐりす 4G あるてぃめいと



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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)



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