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Intel第12世代Alder Lake-Sの16コア24スレッド倍率アンロックモデルIntel Core i9 12900Kを殻割りし、CPUダイとヒートスプレッダの間にクマメタルを塗り直して、冷却性能を比較検証します。
Intel第12世代CPUを殻割りクマメタル化する方法
Core i9 12900KなどIntel第12世代CPUを殻割りクマメタル化の手順について、基本的な内容は10900Kや9900Kで行った内容と同じです。Intel第12世代CPUを殻割りする上で特異な点や、上の記事では紹介していない殻割りクマメタル化に便利なグッズなどアップデートがある部分だけ簡単に紹介しておきます。
まずはCore i9 12900KなどIntel第12世代CPUを殻割りする方法です。
基本的には当サイトがコンセプトを伝え汐見板金によって作成された純国産殻割りツール「Delid Master」を使用した所謂、万力法で割ることになるのですが、下準備として薄刃のカッターでシーリングを部分的に除去します。

Intel第12世代CPUのヒートスプレッダ(IHS)はPCB基板から0.2~0.3mm程度浮いており、「オルファ 0.2mm 超極薄刃」を使うと割と簡単に刃が入ります。万力法でズラしやすくするのが目的なので、シーリングを全て除去する必要はなく、基板上の素子から距離があるシーリングだけ刃を入れればOKです。

続いて万力法でズラします。Delid Masterは専用設計のツールに比べて調整の手間はあるものの、LGA1200とLGA1700との違い程度なら問題なく対応できる汎用性があります。(シリコングリス&シーリング時代の設計なので、STIMで強度が増したCPUに対して酷使したため歪みが…)

Intel第12世代CPUで万力法を使う場合、最大の注意点として、IHSをズラす作業を往復させる必要があります。
【注意】 第13世代CPUはCPUダイが第12世代よりも長くなっているせいか、往復させてもSTIMにダイをもっていかれることがあるようです。Rockit Cool等から発売されている専用の殻割りツールを使用するのを推奨します。
ズラす距離にもよるのですが、IHSとPCB基板の上端が一致する程度の距離ではSTIMの剥離が不十分でIHSを開いた時にCPUダイを持っていかれるという悲しいことになる可能性が…。万力法を使う場合はIHSをズラす、元の位置に戻す、という作業を2,3往復は繰り返して下さい。

万力法でズラしたら、0.5mm厚程度の一般的なカッター刃を上端へ平行に挿しこんで、テコでパカッとIHSを開きます。

以上の手順で1つ殻割りするのにかかる時間は7分程度(大半は万力ズラしの往復)です。初回で不慣れでも10分から15分くらいでできると思います。
続いてこれまで紹介していなかった、新しい殻割りクマメタル化のお供をいくつか紹介しておきます。
まずは「SK11 カーボンスクレーパー」です。厚みのあるSTIMの除去に役立ちます。

最終的にはROCKIT COOL Quick Silverや液体金属でSTIMの除去も行うのですが、事前にカーボンスクレーパーでSTIMの表面を削っておくと綿棒でゴシゴシする作業が非常に楽になります。
カーボン製なのでCPUダイの上を擦ってもダイ本体を損傷させる心配はありません。先にIHS側を削って具合を確かめておけばなお安全。

シーリングの除去についてはこれまでツメでゴリゴリ削っていたのですが、新たに「オルファ GスクレーパーSlim」を導入しました。大根の桂剥きみたいに厚みのある部分がスルスルとそぎ落とせます。刃幅が小さいので「オルファ 鉄の爪スクレーパー T-25」の方が良いかも。

表面をオルファのスクレーパーで削ったら、薄っすらと残ったシーリングは「KURE エレクトロニッククリーナー」を吹きかけて爪で削ります。このクリーナーがあるのとないのとではシーリングの削りやすさが段違いです。

Intel第12世代CPUを殻割りクマメタル化する方法
さてここからは本題となる、殻割りクマメタル化したCore i9 12900Kの冷え具合についてチェックしていきます。テストベンチ機の詳細構成については下記テーブルの通りです。
テストベンチ機の構成 | |
CPU | Intel Core i9 12900K (レビュー) |
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36 (レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM x3 (レビュー) |
メインメモリ | Kingston FURY Beast DDR5 DDR5 16GB*2=32GB (レビュー) |
マザーボード |
MSI MEG Z690 UNIFY (レビュー) |
ビデオカード | MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC ファンレス (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung SSD 980 PRO 500GB(レビュー) |
OS | Windows 11 Home 64bit |
電源ユニット | Corsair HX1200i (レビュー) |
ベンチ板 |
STREACOM BC1 (レビュー) |
Core i9 12900Kは手動OCすると発熱がかなり大きくなるので大型簡易水冷CPUクーラーが推奨されますが、360サイズや240サイズなど120mmファンを複数搭載できるマルチファンラジエーターの簡易水冷CPUクーラーを使用するのであれば、「Noctua NF-A12x25 PWM」への換装もおすすめです。
「Noctua NF-A12x25 PWM」は、超硬質かつ軽量な新素材「Sterrox LCP」の採用によってフレーム-ブレード間0.5mmの限界を実現させた次世代汎用120mm口径ファンとなっており、1基あたり3500円ほどと高価ですが、標準ファンよりも静音性と冷却性能を向上させることができます。
・「Noctua NF-A12x25 PWM」を360サイズ簡易水冷に組み込む

ベンチ機のシステムストレージには「Samsung SSD 980 PRO 500GB」を使用しています。Samsung SSD 980 PROは、PCIE4.0対応によって連続アクセススピードを最大で2倍に飛躍させただけでなく、ランダム性能の向上によってSSD実用性能においても前世代970 PROから大幅な向上を果たし、PCIE4.0アーリーアダプターなPhison PS5016-E16採用リファレンスSSDよりも高速なので、これからPCIE4.0対応プラットフォームの自作PCを組むなら、システム/データ用ストレージとして非常にオススメな製品です。
・「Samsung SSD 980 PRO 1TB」をレビュー。堂々の最速更新

CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。

今回、Core i9 12900Kの殻割りクマメタル化の冷却性能を検証するために、同じCPU個体について「標準IHS&標準TIM」と「標準IHS&クマメタル」の2種類で負荷テストを行いCPU温度を比較しました。
CPU温度は環境温度にも影響されるため測定時は室温(ベンチ機付近の温度)が同じになるよう温度計を見て注意しました。CPUクーラーには「Fractal Design Celsius S36」&「Noctua NF-A12x25 PWM x3」を使用していますがファン回転数は1500RPMに固定しています。
検証方法については、FF14ベンチマークの動画(再生時間7分、4K解像度、60FPS、容量5.7GB)をソースとしてAviutl+x264を使ってエンコードを行いました。Core i9 12900Kは16コア24スレッドのCPUなので、同じ動画のエンコードを3つ並列して実行し、30分程度負荷をかけ続けます。ストレステスト中のファン回転数は一定値に固定しています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から管理人の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。

まず、Core i9 12900KのOC設定は、「P-Core:5.2GHz」「E-Core:4.0GHz」「CPUコア電圧:1.320V(固定モード)」「L2キャッシュ電圧:1.100V(固定モード)」としています。
メモリのOC設定は検証機材に使用しているKingston FURY Beast DDR5(型番:KF552C40BBK2-32)のXMPプロファイルを適用し、「メモリ周波数:5200MHz」「メモリ電圧:1.250V」「メモリタイミング:40-40-40-80-CR2」としています。
Core i9 12900Kの「純正IHS&純正STIM」と「純正IHS&クマメタル」について負荷テスト中のCPU温度の推移を比較したグラフは次のようになっています。
Core i9 12900KのCPUダイとヒートスプレッダの間はSTIMなのでシリコングリスが採用されていた旧世代CPUほどではないものの、標準のSTIMから殻割りによってクマメタルに塗り替えることによって、標準のSTIMと比較して、E-Core All:5.1GHzにOCしたCore i9 12900Kにおいて最大温度で5度、平均温度で6.6度の温度低下が確認できました。

ちなみにiGPU無効化版のCore i9 12900KFについても同様に検証したところ、最大温度で8度、平均温度で8.5度の温度低下が確認できました。
Core i9 12900Kの時よりも温度低下が大きいですが、Core i9 12900Kのクマメタル化に失敗したわけではないと思います。固定倍率かつ固定電圧で同じ設定に対して殻割り後の温度が12900Kと12900KFでほぼ一致しているので、標準STIMの冷え具合に若干差があったのではないか、というのが私見です。実際にいくつか12世代CPUを割ってみてもSTIMの断面には個体差がかなりありましたし。

クマメタルよりも冷えないため酷評される傾向があるものの、Intel第12世代CPUに採用されているSTIMはシリコングリスと比べれば良質なソルダリングに近い熱交換性能を実現しているので、TIMとしてシリコングリスが使用されていた第8世代以前のように20度前後の大幅な温度低下は見込めないものの、P-Core All 5.2GHzにOCしたCore i9 12900Kにおいては殻割りクマメタル化で5~8度程度の温度低下が確認できました。
殻割りクマメタル化に最適化された銅製IHSがROCKIT COOLなどから発売されれば、総合で10度以上の温度低下も期待できそうです。
STIM除去の手間を考えると若干、二の足を踏む感はあるものの、温度低下の効果自体は確実に期待できるので、ROCKIT COOLなどから簡単かつ安全に殻割りできるツールが発売されるようであれば、殻割りを検討してみてもいいと思います。(万力法でも往復でズラすという手順さえ踏めばダイ破損の心配はないはずですが)
以上、『Core i9 12900Kの殻割りクマメタル化で冷却性能を検証』でした。

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Intel第12世代Alder Lake-Sの16コア24スレッド Intel Core i9 12900Kを殻割りし、CPUダイとヒートスプレッダの間にクマメタルを塗り直して、冷却性能を比較検証!https://t.co/emMmdHdnnb pic.twitter.com/R86lbYdIqO
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) November 21, 2021
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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