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Intel第13世代Raptor Lake-Sシリーズから最多24コア32スレッドのTDP65Wモデル「Intel Core i9 13900」をレビューします。
前世代最上位モデルのCore i9 12900Kや、競合製品のRyzen 9 7900X/7950Xと比較して、クリエイティブタスクやPCゲーミングにおいてどれくらい性能を発揮するのか、各種ベンチマーク比較によって徹底検証していきます。
製品公式ページ:https://ark.intel.com/content/www/jp/ja/ark/products/134599/intel-core-i912900k-processor-30m-cache-up-to-5-20-ghz.html
Intel Core i9 13900 レビュー目次
1.Intel Core i9 13900の外観・付属品・概要
2.Intel Core i9 13900の検証機材・動作設定
3.Intel Core i9 13900の動作クロック・消費電力・温度
4.Intel Core i9 13900の基礎ベンチマーク
5.Intel Core i9 13900のクリエイティブ性能
・3Dレンダリング性能
・動画編集・エンコード性能
・RAW現像・写真リタッチ性能
・PCゲーム/スマホアプリのビルド性能
・AIアップスケール・自動分類性能
6.Intel Core i9 13900のゲーミング性能
・4K解像度/60FPSターゲット
・フルHD解像度/ハイフレームレート
7.CPUエンコーダとリアルタイム配信について
8.Intel Core i9 13900のレビューまとめ
・温度・消費電力について
・クリエイティブ性能について
・ゲーム性能について
・総評
*記事執筆当時、1月下旬の販売価格で評価しています。(Amazon、TSUKUMO、ドスパラ、PCショップアーク、パソコン工房、ソフマップ、ビックカメラを参照)
2022年12月から2023年1月にかけてAMD Ryzen 7000はIntel第13世代K付きモデルの価格に合わせて大きく値下げが行われており、Intelのほうも値下がり傾向です。かと思いきやIntel第13世代の65W版は発売済みのK付きモデルよりも高かったりして(Core i9/i7は即座にK付きに合わせた価格になったものの)、CPUの価格はかなり流動的です。
記事を読む時期によっては、価格評価が現在の市場価格と一致しないこともあるのでご注意ください。
【機材協力:Intel】
Intel Core i9 13900の外観・付属品・概要
「Intel Core i9 13900」の外観や付属品について簡単にチェックしておきます。またこの章では「Intel Core i9 13900」の仕様等について簡単に触れておきたい概要もあれば紹介します。倍率アンロックの最上位モデルCore i9 13900Kはオシャレな化粧箱に加え内部にIntel第13世代CPUダイをプリント後のシリコンウェーハを模した銀色の円盤が内蔵されているという豪華なパッケージでしたが、今回レビューするTDP65W版の「Intel Core i9 13900」は下位モデルと同じく紙製パッケージです。
全高69mmのCPU付属品としては大きめのCPUクーラーも一緒に入っているので、Core i7 13700やCore i5 13400と比べるとパッケージはかなり巨大です。
パッケージのチェックはこの辺りにして、肝心の「Intel Core i9 13900」のCPU本体を見ていきます。
「Intel Core i9 13900」など第13世代CPUは第12世代CPUと同じくLGA1700ソケットのCPUなので、LGA1200/115X以前の正方形から、CPU形状は縦長の長方形に変わっています。
Intel第13世代CPUのTDP65W以下のモデルについては、Intel純正CPUクーラーが標準で付属します。
Core i9シリーズにはコントロール可能なARGB LEDイルミネーションを搭載し、巨大な銅柱を内蔵した高冷却性能モデル「Laminar RH1 Cooler」、Core i7~Core i3には標準サイズの「Laminar RM1 Cooler」、Pentium/Celeronにはロープロファイルな「Laminar RS1 Cooler」が付属します。
「Intel Core i9 13900」に付属するCPUクーラーは、より優れた静音性でTDP65Wに対応するLaminar RH1 Coolerです。
Laminar RH1 Coolerの全高は69mm、トップフロー型で天面に90mm径の冷却ファンが設置されています。冷却ファンは定格(最大)3000RPM、PWM速度調整に対応しており1000~3000RPMの範囲内で制御が可能です。
中央には銅製ヒートカラムコアが埋め込まれており、CPUヒートスプレッダと接するベース部分も当然、銅製です。サーマルグリスは標準で塗布されているので、初回使用時は各自でサーマルグリスを用意する必要はありません。
放射状に延びる外周部は、下位モデルのLaminar RM1/RS1 Coolerではプラスチック製でただの装飾となっていますが、Laminar RH1 Coolerでは銅柱からそのまま伸びるアルミニウム製の放熱フィンです。
下位モデルのLaminar RM1/RS1 Coolerはプッシュピン式のCPUクーラー固定構造ですが、Laminar RH1 CoolerはバックプレートとCPUクーラー備え付けのリテンションネジによって固定します。
CPUクーラーからはPWM対応4PINファン端子ケーブルと、ARGB対応VD-G型汎用3PIN LEDケーブルの2種類が伸びています。LEDケーブルの途中には1ボタンのLEDコントーラーが実装されています。
Laminar RH1 Coolerの軸受け部分にはARGB LEDイルミネーションが内蔵されており、上記のLEDケーブルをマザーボード等の外部コントローラーに接続することで自由にライティングを制御できます。
LEDケーブルを外部コントローラーに接続しない場合は、LEDケーブルの途中にあるスイッチによってLEDのオン/オフを切り替えできます。接続しない場合の発光パターンは水色の静的発光で固定です。
パッケージや外観の話はこの辺りにして、続いて「Intel Core i9 13900」のスペックについて見ていきます。
最上位モデルの「Intel Core i9 13900」は、8コア16スレッドの高性能P-Coreと16コア16スレッドの高効率E-Coreを組み合わせた24コア32スレッド(8C/16T+16C16T)のCPUです。
P-Coreの単コア最大ブーストクロックは5.8GHz(TBM3.0有効時)、全コア最大ブーストクロックは5.5GHzとなっています。CPU消費電力の指標となるProcessor Base Powerは125W、Maximum Turbo Powerは253Wです。
「Intel Core i9 13900」は13700K/13900Kと同じく、Raptor CoveアーキテクチャのP-Core、改良型GracemontアーキテクチャのE-Coreなどで構成された最新のCPUダイです。
定格メモリ速度やキャッシュ容量といったスペックを見比べて分かるように、第13世代のTDP65WモデルでもCore i5以下は型番こそ第13世代となっているものの、実際は第12世代K付きモデルと同じCPUダイを使用し、コアスレッド構成や定格コアクロックを調整した第12世代リフレッシュなCPUとなっています。
第13世代ネイティブなCore i7/i9と第12世代リフレッシュなCore i5/i3ではコアクロックの数字以上に、シングルスレッド性能やゲーム性能に差があるので注意してください。
「Intel Core i9 13900」を、前世代最上位のIntel Core i9 12900Kや、競合AMDのメインストリーム向け上位モデルであるRyzen 9 7950Xと比較すると次のようになっています。
Intel Core i9 13900 スペック簡易比較 | ||||
Core i9 13900 |
Core i9 13900K | Core i9 12900K | Ryzen 9 7950X | |
コアスレッド | 24コア 32スレッド |
24コア 32スレッド |
16コア 24スレッド |
16コア 32スレッド |
P-Core |
8C16T (Raptor Cove) |
8C16T (Raptor Cove) |
8C16T (Golden Cove) |
16C32T |
E-Core | 16C16T (Gracemont v2) |
16C16T (Gracemont v2) |
8C8T (Gracemont v1) |
- |
ベースクロック P-Core (E-Core) |
2.0GHz (1.5GHz) |
3.0GHz (2.2GHz) |
3.2GHz (2.4GHz) |
4.5GHz |
全コア最大 P-Core (E-Core) |
5.3GHz (4.2GHz) |
5.5GHz (4.3GHz) |
4.9GHz (3.7GHz) |
5.3~5.5GHz |
単コア最大 P-Core (E-Core) |
5.6GHz (4.2GHz) |
5.8GHz (4.3GHz) |
5.2GHz (3.9GHz) |
5.7GHz |
オーバークロック |
メモリのみ対応 | O | ||
L2/L3 キャッシュ | 32MB / 36MB |
32MB / 36MB | 14MB / 30MB | 16MB / 64MB |
PBP (TDP) | 65W | 125W | 170W | |
MTP (max PPT) | 219W | 253W | 241W | 230W |
CPUクーラー | O | X | O | |
iGPU |
O | |||
対応メモリ |
DDR5 DDR4 (MBに依存) |
DDR5 | ||
メモリ ch / pcs |
2 / 4 | |||
CPU直結PCIEレーン |
PCIE5.0x16 + PCIE4.0x4 |
PCIE5.0x16 + PCIE5.0x4×2 |
||
おおよその国内価格 2023年1月 (北米希望小売価格) |
8.8万円 (549ドル) |
8.8万円 (589ドル) |
7.9万円 (589ドル) |
9.7万円 (699ドル) |
iGPU非搭載モデル の価格 |
8.6万円 (524ドル) |
8.7万円 (564ドル) |
7.7万円 (564ドル) |
Raptor Lake(ラプターレイク)のコードネームで呼ばれるIntel第13世代Core-S CPUでも第12世代CPUと同じく、高性能コア「P-Core」と高効率コア「E-Core」の2種類の混成でCPUを構成するIntel Hybrid Computing Architectureが採用されています。
Intel第13世代Raptor Lake-Sでは、P-Core/E-Coreのコアスレッド数が変更(E-Coreの増加)、P-Coreのコアクロックの上昇、第12世代と比較してコア当たりのL2/L3キャッシュ容量の増量という大きく3つの変化があります。
P-Coreの数は第13世代CPUと第12世代CPUで共通ですが、アーキテクチャの改良により省電力性能が向上し、単コア最大ブーストクロックが上昇しています。
またE-Coreの最大数量が第13世代CPUでは8コアから16コアに増えており、物量的にもマルチスレッド性能が大きく向上しています。
さらにP-Core 1コアあたりのL2キャッシュは1.25MBから2.00MBに、E-Core 4コアで共有されるL2キャッシュは2.00MBから4.00MBに、L3キャッシュは最大30MBから最大36MBへと増量しています。
電力制限の最大値であるMTPは絶対性能を重視して定格値が設定されており、ワットパフォーマンス的なスイートスポットから大きく外れているため、Core i9 13900Kを始めとしてIntel第13世代CPUの一部モデルはCPU温度と消費電力が非常に高いと評価される傾向にあります。
第13世代CPUの優れた電力効率の一例として、Core i9 13900Kのマルチスレッド性能は電力制限PL(=PL1=PL2)を250W程度から125W程度まで下げても性能低下は20%程度に収まり、また241W動作のCore i9 12900Kと比較して、Core i9 13900は電力制限を65Wまで下げても同等のマルチスレッド性能を発揮できるとのこと。(検証ソフトウェアはSPECint_rate_base2017 n-copy)
Intel第13世代Raptor Lake-Sプラットフォームの特長として、前世代とおなじく従来のDDR4メモリを引き続きサポートしています。
DDR5メモリも入手性が上がっているので性能的にはDDR5メモリで組むのがオススメですが、競合のRyzen 7000はAM5マザーボードでDDR4をサポートしないので、既存のメモリを使ってCPU&MBだけ更新したい人には魅力です。
Intel第13世代Core-Sでは組み合わせて使用するマザーボードによってサポートされるメモリ規格が変わるので注意が必要です。
ASRock、ASUS、GIGABYTE、MSIの主要4社の製品を見たところ、ハイエンドからアッパーミドルまでの上位製品は基本的にDDR5対応となっています。ミドルクラス以下ではDDR5対応とDDR4が混在し、メーカー毎にラインナップ展開が異なります。
ASUS製Z690マザーボードを例に挙げるとDDR5対応の「ASUS PRIME Z790-P」とDDR4対応の「ASUS PRIME Z790-P D4」のようにほぼ似た名前、対応メモリ以外の仕様もほぼ同じ、といった製品もあるので使用するメモリに合わせて購入するマザーボードには注意してください。(各社表記なしはDDR5対応、DDR4対応の場合は”DDR4”や”D4”の表記が末尾に付くことが多いようです)
チップセットについてはZ690/B660などIntel 600シリーズチップセットが引き続きIntel第13世代Raptor Lake-SシリーズCPUをサポートしますが(対応BIOSにアップデートが必要)、新たにZ790/B760などIntel 700シリーズチップセットが登場しています。
Z790はZ690と比較して、チップセット経由のPCIEレーン総数は28レーンで共通ですが、PCIE4.0対応PCEIレーン数が12レーンから20レーンに増えています。(代わりにPCIE3.0対応は16から8へ削減)
またマザーボードに実装可能なUSB3.2 Gen2x2(20Gbps)の総数が4基から5基へ増えています。
またIntel 700シリーズチップセット搭載マザーボードのうち、コアクロックのOCに対応しているのは最上位のZ790だけです。
下位チップセットでは定格のBy Core Usage倍率を上回るような動作倍率設定(OC設定)を行うことはできません。
一方で、動作倍率の引き下げによる省電力化は可能ですし、定格動作倍率の中でも動作電圧のマイナスオフセットによる省電力化、一定電力制限内での性能向上を狙うことは可能です。
省電力運用ならH770やB760の下位チップセット搭載マザーボードでも十分と言えばあながち間違いでもありませんが、V-Fカーブ調整に対応するのはZ790/Z690だけ(K付きCPUと組み合わせで)なので実のところ省電力運用においても上位互換です。
Mini-ITX環境はI/O数的に下位チップセットで十分かと思いきや、省電力運用や冷却リソースが限られた中での性能追求ならZ790かZ690がベストな選択肢になり得ます。
なお「Intel Core i9 13900」など非K付きのTDP65Wモデルは、各種700/600シリーズマザーボードと組み合わせてメモリOCに対応しているものの、メモリOCの安定性に影響のあるVCCSA電圧(CPU System Agent)は調整できません。
マザーボードBIOSによってはK付きCPU使用時と同様に設定値そのものは表示されますが、オーバーライドやオフセットで調整しても設定値は反映されません。
下はCore i9 13900で検証した結果です。マザーボードにASUS ROG MAXIMUS Z790 HEROを組み合わせた場合、やはりVCCSAは調整できませんでしたが、G.Skill Trident Z5 Neo(型番:F5-6000J3038F16GX2-TZ5N)の6000MHz/CL30、Kingston FURY Renegade DDR5 RGB(型番:KF564C32RSAK2-32)の6000MHz/CL32といったOCプロファイル適用によるメモリOCは安定動作しました。
VCCSA電圧が調整できなくても、現在、ハイパフォーマンスDDR5メモリとして定番の6000MHz/CL30~CL36のメモリOCは動作すると思いますが、一部のマザーボードではVCCSAを昇圧できないと6000MHz以上のメモリOCが安定しない可能性もあります。
ハイフレームレートなPCゲーミングでは性能への影響も大きいので、メモリOCで万全を期すならK付きモデルを選んだ方がいいかもしれません。
Intel Core i9 13900の検証機材・動作設定
以下、「Intel Core i9 13900」の各種検証を行うベンチ機、および比較対象となる各CPUのベンチ機の詳細となります。Intel LGA1700(Z790)環境 テストベンチ機の構成 | |
CPU | 【Intel第13世代CPU】 Intel Core i9-13900K (レビュー) Intel Core i9-13900 (レビュー) Intel Core i7-13700K (レビュー) Intel Core i7-13700 (レビュー) Intel Core i5-13600K (レビュー) Intel Core i5-13500 (レビュー) Intel Core i5-13400 (レビュー) |
マザーボード | ASUS ROG MAXIMUS Z790 HERO (レビュー) |
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36 (レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM x3 (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z5 Neo F5-6000J3038F16GX2-TZ5N (レビュー) DDR5 16GB*2=32GB 6000MHz, CL30-38-38-96 |
メインメモリ ゲーム性能の追加検証 |
G.Skill Trident Z5 RGB F5-7200J3445G16GX2-TZ5RK (レビュー) DDR5 16GB*2=32GB 7200MHz, CL34-45-45-115 |
ビデオカード(共通) | PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8 Gaming VERTO EPIC-X RGB OC 3FAN (レビュー) |
システムストレージ(共通) | Samsung SSD 980 PRO 500GB (レビュー) |
OS(共通) | Windows 11 Home 64bit |
電源ユニット(共通) | Corsair HX1500i 2022 (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
比較に使用しているその他のテストシステムについてはこちらを参照してください。
Intel Core i9 13900KなどIntel第13/12世代CPUを検証するIntel LGA1700(Z790)環境では、検証機材マザーボードとして「ASUS ROG MAXIMUS Z790 HERO」を使用しています。
ASUS製マザーボードの場合、BIOS設定のASUS Multicore Enhancementを”Disabled - Enforce All limits”にすれば、Intel公式仕様通りの電力制限が適用されます。
なおIntel第13世代Raptor Lake-Sシリーズについて、長時間電力制限PL1、短時間電力制限PL2、短期間電力制限時間TauのIntel公式仕様は下のテーブルの通りです。
通常はPL1=PBP(Processor Base Power)ですが、倍率アンロックのK付きCPUについては、PL1=PL2=MTP(Maximum Turbo Power)が公式仕様となります。
Intel第13世代CPUの電力制限仕様値 | ||||
PBP | PL1 | PL2 | Tau | |
Core i9 (8C16T+16C16T) |
125W | 253W | 253W | (56s) |
65W | 65W | 219W | 28s |
|
35W | 35W | 106W | 28s | |
Core i7 (8C16T+8C8T) |
125W | 253W | 253W | (56s) |
65W | 65W | 219W |
28s | |
35W | 35W | 106W | 28s | |
Core i5 (6C12T+8C8T) (6C12T) |
125W | 181W | 181W | (56s) |
65W |
65W | 148~154W | 28s | |
35W |
35W | 82~92W | 28s | |
Core i3 (4C8T) |
65W | 58~60W | 89W | 28s |
35W |
35W | 69W | 28s |
電力制限以外にもCPU動作に大きく影響する項目についてまとめました。
Turbo Boost Max 3.0はアクティブなタスクに対して単コア最大動作倍率など最も高速に動作している(電圧特性に優れた)コアを割り当てる機能です。
Thermal Velocity Boostは閾値温度70度以下においてブーストクロックを引き上げる機能と説明されていますが、機能の実装としてはBy Core Usage倍率に対してTVB Ratio Clippingという設定によってCPU温度が閾値(一般に70度)以上の時に動作倍率を-1倍に、正確にはCPU毎に設定された倍率に引き下げるという形になっています。
AVX Voltage Guardband ScaleはAVX2やAVX512を実行時のコア電圧を調整する機能です。0~255の整数値で設定し、定格設定は128です。128以下では低電圧化、128以上では高電圧化します。(マザーボードに依っては1.00を基準に0.01~1.99で設定)
低電圧化というよりもAVX実行時の電力制限(AVX限定のPL1)に近い動作なので、Scale=1でもクラッシュすることはありませんが、性能は低下するものと思われます。
Turbo Boost Max 3.0は多くの600シリーズマザーボードで基本的に有効になっています。Thermal Velocity Boostは600シリーズマザーボードでも機能強化版が実装されていますが標準ではオフになっています。マザーボードによっては電力保護や省電力化の一環で同機能を使用した電力制限が設けられていることがあります。
さらに備考として、Z690マザーボードの中にはCPU個体毎のV-Fカーブ(Adaptive Mode)にマイナスオフセットを適用する低電圧化や、CPU Package Powerのモニタリング値にマイナスオフセットを適用してブーストを引き上げるチューニングが標準が施されているものがあります。
検証機材として採用しているASUS ROG MAXIMUS Z790 HEROに関しては、ASUS Multicore Enhancementを”Disabled - Enforce All limits”にすれば、おおむねIntel公式仕様通りの電力制限が適用されます。
Thermal Velocity BoostのみMCE:Disabledでも無効のままでしたが、Boostの名前に反して、実際はBy Core Usage倍率に対して温度制限をかける機能なので、あまり検証には影響しません。
ASUS ROG MAXIMUS Z790 HERO(BIOS:0703) Core i9 13900K 動作設定(MCE:Disabled) |
||
標準設定 | 定格 | |
単コア最大倍率 P/E |
58/ 43 |
58/ 43 |
全コア最大倍率 P/E |
55/ 43 |
55/ 43 |
Turbo Boost Max 3.0 | On | On |
TVB Ratio Clipping | Off | On |
PL1, PL2, Tau | 253W, 253W, 56s |
253W, 253W, 56s |
AVX2 Offset | 0 | 0 |
AVX2 Voltage Guardband | 128 (1.00) |
128 (1.00) |
備考 |
- |
ディスクリートGPU、グラフィックボードがゲーミング性能において重要なのは言うまでもありませんが、近年ではクリエイティブタスクでもGPU支援による性能向上が主流になっているので、CPU性能比較の統一検証機材として、2022年最新のウルトラハイエンドGPUを搭載したグラフィックボード「PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8 Gaming VERTO EPIC-X RGB OC 3FAN」を使用しています。
PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8は、ベイパーチャンバー構造のベースコアや、厚みのあるファンブレードをバリヤーリングで結合した重厚な冷却ファンを採用する4スロット占有大型GPUクーラーにより、各社AIBモデルの中でもトップクラスの静音性を実現しています。
メーカーのPNYは2022年に株式会社アスクが販売代理店契約を結んだばかりの新参なので国内での知名度は高くありませんが、北米など海外市場では30年以上に渡りコンシューマーならびにビジネス向けで電子機器の製造・販売を行う大手メーカーです。
国内正規品なら代理店を介してPNY公式のグローバル保証と同じ3年間の長期保証が受けられるところも魅力です。
・「PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8」をレビュー
Intel第13世代CPUの検証機ではシステムメモリとして、高級感のあるヒートシンクでデザイン面でも優れ、16GB×2枚組み32GBの大容量でメモリ周波数6000MHz/CL30の低レイテンシなメモリOCに対応した「G.Skill Trident Z5 Neo(型番:F5-6000J3038F16GX2-TZ5N)」を使用しています。
G.Skill Trident Z5 NeoはAMD EXPO対応メモリですが、Intel製CPUでも正常動作が期待できます。ARGB LEDイルミネーションを搭載したバリエーションモデル G.Skill Trident Z5 Neo RGBもラインナップされています。
・「G.Skill Trident Z5 Neo」をレビュー。EXPOで6000MHz/CL30のOCを試す!
またG.SkillからはIntel XMP3.0対応DDR5メモリとしてG.Skill Trident Z5無印やARGB LEDイルミネーションを搭載したG.Skill Trident Z5 RGBも発売されており、互換性をより重視するなら、こちらもオススメです。
Core i9 13900Kなど一部の第13世代CPUについてはメモリ周波数7200MHz/CL34の高メモリクロックかつ低レイテンシなメモリOCに対応した「G.Skill Trident Z5 RGB(型番:F5-7200J3445G16GX2-TZ5RK)」を使用したゲーム性能も検証しています。
・「G.Skill Trident Z5 RGB」をレビュー。XMPで7200MHz OCに対応!
ベンチ機のシステムストレージには「Samsung SSD 980 PRO 500GB」を使用しています。
Samsung SSD 980 PROは、PCIE4.0対応によって連続アクセススピードを最大で2倍に飛躍させただけでなく、ランダム性能の向上によってSSD実用性能においても前世代970 PROから大幅な向上を果たし、PCIE4.0アーリーアダプターなPhison PS5016-E16採用リファレンスSSDよりも高速なので、これからPCIE4.0対応プラットフォームの自作PCを組むなら、システム/データ用ストレージとして非常にオススメな製品です。
・「Samsung SSD 980 PRO 1TB」をレビュー。堂々の最速更新
360サイズや240サイズなど120mmファンを複数搭載できるマルチファンラジエーターの簡易水冷CPUクーラーを使用するのであれば、「Noctua NF-A12x25 PWM」への換装もおすすめです。
「Noctua NF-A12x25 PWM」は、超硬質かつ軽量な新素材「Sterrox LCP」の採用によってフレーム-ブレード間0.5mmの限界を実現させた次世代汎用120mm口径ファンとなっており、1基あたり3500円ほどと高価ですが、標準ファンよりも静音性と冷却性能を向上させることができます。
・Noctua NF-A12x25シリーズのレビュー記事一覧へ
CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
サーマルグリスの代用品として、数年スパンの長期使用においても性能低下が基本的になく再利用も可能、グリスが零れてマザーボードが汚れたり壊れる心配もないので、炭素繊維サーマルシート「Thermal Grizzly Carbonaut」もオススメです。
Intel Core i9 13900の動作クロック・消費電力・温度
「Intel Core i9 13900」に関する検証のはじめに、「Intel Core i9 13900」の動作クロック、消費電力、温度など同CPUの基本的な動作についてチェックしていきます。「Intel Core i9 13900」は、上位モデルCore i9 13900Kと同じく、8コア16スレッドの高性能P-Coreと16コア16スレッドの高効率E-Coreで構成された24コア32スレッドのCPUです。
「Intel Core i9 13900」の高性能P-Coreは8コア16スレッドのCPUであり、定格動作において1コア~8コアまで同時に負荷がかかった時の最大動作倍率は最大コア数から順番に[56, 56, 53, 53, 53, 53, 53, 53]です。P-Coreでは全8コアへ同時に負荷がかかっても最大で5.1GHz動作が可能となっています。
一方、高効率E-Coreは16コア16スレッドのCPUであり、定格動作において1コア~16コアまで同時に負荷がかかった時の最大動作倍率は一律に42倍です。E-Coreでは全16コアへ同時に負荷がかかっても最大で4.2GHz動作が可能となっています。
参考までに、「Intel Core i9 13900」のコアtoコア遅延は次のようになっています。
第12世代では『P-Core同士<P-Core/E-Core間<E-Core同士』のように遅延が小さかったのですが、第13世代ではP-Core同士とP-Core/E-Core間が25~35ms程度でほぼ同じ、E-Core同士は40~50ns程度という感じに傾向が少し変わっています。
とはいえやはり、P-CoreとE-Coreの別種コア間で大きく遅延が増す傾向はなく、単純にコアの速さで遅延が決まっていると見ていいと思います。
HWiNFOから「Intel Core i9 13900」のコアクロックの挙動を確認したところ、確かに負荷の軽い場面では最大5.6GHz程度で動作するコアがありました。
また全コア最大動作倍率は特にゲーム性能で重要になりますが、今回レビューしている「Intel Core i9 13900」はBy Core Usage最大動作倍率の通り、ゲームのような負荷の軽いシーンであればP-Core All:5.3GHz、E-Core All:4.2GHzで動作可能でした。
ただし「Intel Core i9 13900」は定格設定の長期的な電力制限がPL1:65Wとなっており、この設定のままで運用すると、ゲーム負荷においても基本的に電力制限がボトルネックになります。
「Intel Core i9 13900」はメニーコアかつ、定格の最大動作倍率が非常に高いので、ゲーム用CPUとしてポテンシャルを最大限に引き出すなら電力制限の解除は必須です。
一例として、P-Core All:5.3GHz、E-Core All:4.2GHzでCPU Package Powerが140~150Wに達するゲームの場合、PL1による電力制限がボトルネックになるとコアクロックの実動値はP-Core All:4.0~4.1GHz、E-Core All:3.3~3.4GHz程度に下がりました。
当然、全コア最大動作倍率に張り付く状態と比較してCPUボトルネックの影響は大きくなり、フレームレートも低下してしまいます。
Intel第13世代Core-S CPUの製品仕様では、Processor Base Power(従来で言うところのTDP)が長期間電力制限/Power Limit 1(PL1)に、Maximum Turbo Powerが短期間電力制限/Power Limit 2(PL2)に一致します。ただし、倍率アンロックのK付きCPUは特例的に”PL1=PL2=MTP”です。
「Intel Core i9 13900」の場合は、PL1が65W、PL2が219W、Turbo Boost Power Time Window(短期間電力制限時間/Tau)は28sです。
「Intel Core i9 13900」をASUS製マザーボードと組み合わせる場合、BIOS設定においてASUS Multicore Enhancementを”Disabled - Enforce All limits”にすればIntel公式仕様と概ね一致する電力制限で動作します。
「Intel Core i9 13900」の定格仕様である『PL1:65W、PL2:219W、Tau:28s』で動作させるとCinebenchのような短時間のベンチマークや、x264エンコードの最初の数十秒などTauの範囲内であれば、動作クロックの実動平均はP-Core All:4.8~4.9GHz前後、E-Core All:3.8GHz前後となりました。CPU Package Powerは短期間電力制限PL2の219Wに張り付いています。
「Intel Core i9 13900」の場合、クリエイティブタスク系のマルチスレッド負荷だとPL2の電力制限が先に天井になるので、By Core Usageの全コア最大動作倍率よりも低い実動クロックとなります。
負荷開始からTauで指定される短期間電力制限の期間内ではPBPを大きく上回る消費電力が発生しますが、Tau経過後はPBP(PL1:長時間電力制限)と同じ65WへCPU Package Powerが抑制されます。
「Intel Core i9 13900」はPL1:65Wの電力制限下において、コアクロックの実動値はP-Core All:2.9~3.0GHz、E-Core All:2.5~2.6GHz程度となります。
なお全コア最大動作倍率におけるCPU Package Powerや、電力制限下での実動コアクロックは、タスクがAVX命令をどれくらい使用するか、CPUクーラーの冷却性能(CPU温度でコア電圧が変化するため)によっても多少変動します。
参考までに今回入手した「Intel Core i9 13900」の電力制限を完全に無効化し、Cinebench R23でBy Core Usageの全コア最大動作倍率に張り付かせると、CPU Package Powerは300W超に達しました。
AIO水冷クーラーで冷却しており、10秒弱の負荷でも瞬間的にCPU温度は90度後半に達するので、電力制限を完全に無効化するのは非推奨です。
「Intel Core i9 13900」の電力制限を解除する場合は、上位モデルCore i9 13900Kの定格設定値である253Wを上限として、各自のCPUクーラーで冷やせる範囲内で引き上げるようなチューニングがオススメです。
続いてCPU消費電力やCPU温度の検証結果をチェックしていきます。
当サイトのCPUレビューでは主として”CPU温度への影響要因”という意味においてCPU消費電力を評価しているので、動画のエンコードによって長期間電力制限が効いている状態の平均的な消費電力をCPU消費電力として比較します。
個人的な意見としては短期間電力制限は短期間かつCPU温度によっても制御されるのでCPU温度への影響要因として比重は小さく、また瞬間ピーク電力はせいぜいがTDP+100W程度なので、マザーボードVRM電源の破損を心配するほどではなく、その程度の電力超過は電源ユニットで十分吸収できるので、評価対象としてあまり意味がないと思っています。
またCPU製品仕様のTDPについては、定義がIntel/AMDで厳密には異なり、各社の具体的な測定・算出方法も不明なので、CPU動作クロックを含めて総合的に判断する必要があるものの、基本的には長期間電力制限時の消費電力がTDP仕様値とほぼ一致、もしくはTDP仕様値を下回れば正常であると評価します。
当レビュー記事では簡単のため割愛しますが、CPUの消費電力に関する評価基準の補足として下記の記事も参考にしてください。
CPUの消費電力測定には、当サイトの検証に使用するためワンオフで特注した測定ツール「CPU Power Tester」を使用しています。
CPU Power TesterはEPS電源端子、ATX24PIN電源、PCIEスロット経由の各消費電力を直接測定できるツールです。5分間程度の負荷に対して、1ms間隔でモニタリングを行い、平均値を”消費電力”、最大値を”瞬間的な最大電源負荷”とします。
消費電力の測定にあたってCPU負荷には、FF14ベンチマークの動画(再生時間6分40秒、4K解像度、60FPS、容量5.7GB)を変換ソースとして、HandBrakeによるx264動画エンコードを使用しています。
メニーコアになるほど単独のエンコードではCPUが遊ぶので、CPU使用率が100%前後に張り付くように、動画エンコードの同時実行数については4~6コアは並列なし、8~14コアは2並列、16コア以上は3並列のように適宜調整しています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTやPrimeなど専用負荷ソフトを使用しているレビューもありますが、管理人の私見としてはCPU負荷が非現実的なので、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースを想定した場合、ほぼ最大のCPU負荷となるx264による動画エンコードとストレステストに採用しています。
定格仕様や検証用設定で指定する電力制限を適用した状態で動画エンコードによるフル負荷をかけると、「Intel Core i9 13900」など各CPUについてCPU Package Powerは次のようになりました。 【全CPU比較データ】
CPU Package PowerはIntelのPL1/PL2、AMDのPPTといったパラメーターによる電力制限の制御ソースとなる数値です。メーカー純正ソフトウェアのIntel Extreme Tuning Utility (XTU)やAMD Ryzen Master、サードパーティー製ソフトHWiNFOなどでソフトウェアモニタリングが可能です。
続いてCPU Power Testerを使用して実際の消費電力をチェックしていきますが、注意点として、マザーボード独自のコア電圧調整によってCPU消費電力は変化します。Intel/AMDともに現状ではCPU動作のリファレンスになるようなマザーボードがないので、あくまで今回のレビューに使用している検証機材マザーボードを組み合わせた場合の数値となります。
また組み合わせるマザーボードによってはCPU Package Powerにマイナスオフセットをかけて事実上の電力制限解除が行われる場合があります。管理人の判断で定格っぽい動作のものを選んでいますが、こういった事情も念頭に置いて検証結果をご確認ください。
定格仕様や検証用設定で指定する電力制限を適用した状態で動画エンコードによるフル負荷をかけると、「Intel Core i9 13900」など各CPUについてEPS 8PIN電源の消費電力は次のようになりました。 【全CPU比較データ】
定格仕様や検証用設定で指定する電力制限を適用した状態で動画エンコードによるフル負荷をかけると、「Intel Core i9 13900」など各CPUについてEPS 8PIN電源&ATX 24PIN電源の消費電力は次のようになりました。 【全CPU比較データ】
絶対性能を重視した電力設定が定格となっており、ワットパフォーマンス的なスイートスポットから大きく外れているため、Intel第13世代CPUの一部モデルはCPU温度と消費電力が非常に高いとレビューで評価される傾向にあります。
しかしながらCinebench R23とEPS消費電力の関係からワットパフォーマンスを確認してみると、「Intel Core i9 13900」の電力効率は決して悪くありません。
ちなみに上位モデルのCore i9 13900Kと比較すると個体差もありますが、やはりハイクロックで動作する電圧特性の良いCPUダイが選別されているからか、同じ電力でも、特に185W以上において「Intel Core i9 13900」のほうがスコアが低めになります。
競合AMDの最新CPUであるRyzen 7000シリーズと比較すると、CPU Package Powerが125W以上ならRyzen 9 7900X/7900を上回るワットパフォーマンスになるのですが、65~95Wの区間では同程度の性能になってしまうので、省電力なCPUとして考えるとコストパフォーマンスで不利になります。
Ryzen 9 7950Xに対しては、最大性能を発揮できる185W以上だと電力効率には大差なく、多少劣る程度ですが、65~125Wの区間では20%以上の性能差があり、電力効率で後れを取っています。
加えて後述の通り、「Intel Core i9 13900」はゲーム用CPUとして理想的な性能を発揮するのに必要なCPPも高めなので、空冷CPUクーラーを組み合わせた低電力な運用を想定すると、Ryzen 9 7950XやRyzen 9 7900のほうが最適と言える結果です。
また下のグラフは電力制限を調整した時のCPU Package Powerに対するマルチスレッド性能の比率です。
Cinebench R23 マルチスレッドスコアから各CPUの定格設定を基準に、電力制限解除で定格の全コア最大動作倍率に張り付いた状態を上限として性能比率を算出しています。
加えて3つの縦線は、Tom Clancy's Rainbow Six Extraction (フルHD/360FPS)、Cyberpunk 2077 (4K/60FPS)、Marvel’s Spider-Man Remastered (4K DLSS&RayTracing)のPCゲームをプレイした時のCPU Package Powerの平均値です。
ゲームシーンで理想的な性能を発揮できるように、電力制限を解除してコアクロックが全コア最大動作倍率に張り付くために必要なCPU Package Powerを見ています。
「Intel Core i9 13900」は定格でPL1:65Wの電力制限が適用されており、電力制限解除によって最大で50%以上も性能向上が可能な余力を残しています。
加えて「Intel Core i9 13900」はメニーコアかつ最大動作倍率が高いCPUなので、ゲームシーンであってもCPU Package PowerがPL1:65Wの上限に張り付く可能性が非常に高く、その場合、ゲーム性能にも制限がかかります。
PCゲームプレイ中に「Intel Core i9 13900」のコアクロックが全コア最大動作倍率に張り付くのに必要な電力制限の下限は150~160W程度です。
「Intel Core i9 13900」はPL1:65Wの定格設定でも同電力のCore i5など下位モデルを上回る性能を発揮できますが、ポテンシャルからすれば非常にもったいない使い方です。
当サイト的には、マルチスレッド性能が50%以上も向上し、理想的なゲーム性能を発揮でき、なおかつ温度的にも運用しやすいので(別売りAIO水冷クーラーは必要ですが)、PL1:180~200W程度に電力制限を解除して運用するのがオススメです。
ちなみに上位モデルCore i9 13900Kのほうが電圧特性が良いので、全コア最大動作倍率が高いにもかかわらず、「Intel Core i9 13900」よりも理想的なゲーム性能を発揮するのに必要なCPU Package Powerが低かったりします。大は小を兼ねるのパターンです。
この章の最後に、「Intel Core i9 13900」を空冷CPUクーラーやAIO水冷CPUクーラーで運用する時のCPU温度についてです。
「Intel Core i9 13900」の付属CPUクーラーであるLaminar RH1 Coolerを使用し、電力制限も変えながら何パターンか試してみました。
Laminar RH1 Coolerの冷却ファンは定格(最大)回転数が3000RPMですが、PCケース組み込み時に煩く感じるか感じないかの境目がファン速度2400RPM程度なので、今回の検証ではファン速度2400RPMに固定しています。
まずは「Intel Core i9 13900」を定格設定、付属CPUクーラーのLaminar RH1 Coolerで冷やした時のCPU温度やコアクロックの推移です。
短期間電力制限の219Wでターボブーストがかかる十数秒間はCPU温度が高くなりますが、長期的にはCPU温度が60度半ばに収まっています。
電力制限時のコアクロックはCPU温度も影響するので市販の高性能CPUクーラーを使用した時と比較すると多少性能が下がるものの、「Intel Core i9 13900」は付属CPUクーラーでも定格設定なら静音性を維持しつつ運用が可能です。
長期的にはPL1:65Wの電力制限がかかるのでCPU Package Powerは65W前後に張り付いており、実動コアクロックはP-Core All:2.8~3.0GHz、E-Core All:2.5~2.6GHz程度です。
最大動作倍率に近いコアクロックで動作する短期間電力制限PL2:219Wの時と比較して、65W制限時に性能差が50%程度になるというのも納得の結果です。
続いて、「Intel Core i9 13900」の長期間電力制限PL1を125Wへ電力制限を解除してみました。
CPUクーラーの冷却性能的にギリギリで、CPU温度が臨界温度100度に達するため、負荷テストの半ばからCPU Package Powerが125Wに完全には張り付かなくなっています。
CPU温度が臨界温度付近なので温度の影響で十分に冷えている状態と比較して多少コアクロックは低くなりますが、CPU Package Powerが125W前後の場合、コアクロックの実動値はP-Core All:3.6~3.8GHz、E-Core All:3.1~3.2GHzとなります。
付属CPUクーラー Laminar RH1 Coolerの冷却ファンは定格(最大)回転数が3000RPMなので、まだ多少の余力はありますが、静音性を維持しつつという条件になるとPL1:125W未満が冷やせる限界だと思います。
以上のように、「Intel Core i9 13900」は65Wの定格、125W未満の電力制限解除なら付属CPUクーラー Laminar RH1 Coolerでも静音性を維持しつつ運用は可能です。
ただし、電力制限時はCPU温度が低い方がコアクロックが高くなるので数%程度ではあるものの性能が上がりますし、PCケースの吸排気次第では電力制限解除においてサーマルスロットリングが生じる可能性もあります。
全コア最大動作倍率に張り付いて理想的なゲーム性能を発揮するのに必要なCPU Package Powerは150~160W、これもRTX 4090の場合とはいえ、「Intel Core i9 13900」と組み合わせるであろうハイエンドクラスGPUなら、やはりPL1:130W以上は必要になると思います。
流石にゲーム用CPUと用途を限定するにしても付属CPUクーラーでは性能を発揮しきるのが難しく、最低限、120~140サイズの空冷CPUクーラーは必要です。
「Intel Core i9 13900」のポテンシャルを最大限引き出すなら、マルチスレッド性能が50%以上も向上し、理想的なゲーム性能を発揮でき、なおかつ温度的にも運用しやすいので、PL1:180~200W以上に電力制限を解除して運用するというのが、当サイト的にはオススメです。
「Intel Core i9 13900」でPL1:180W以上に電力制限を解除するとなると付属CPUクーラーはもちろん、一般的な空冷CPUクーラーでは冷却性能が不足するので、240サイズ以上のAIO水冷CPUクーラーを別途用意してください。
AIO水冷CPUクーラーは様々なメーカーから発売されていますが、水冷ヘッド(銅製コールドプレートやポンプ)の性能が良くないと、ハイエンド空冷よりも冷えないということもあり、価格も冷却性能もピンキリです。
”AIO水冷CPUクーラーでどれを選べばいいか分からない”という人は当サイト的にはAsetek製水冷ヘッドを採用するOEM製品がオススメです。冷却性能的にハズレがないのでAsetek OEM製品は鉄板です。
有名どころではNZXT KRAKEN X3/Z3、Fractal Design Celsiusなどが該当し、付加価値機能が多数搭載されている高級製品ですがMSI MEG CORELIQUID S360/S280やASUS ROG RYUJIN II 360/240もAsetek OEMです。
Asetek OEMのAIO水冷CPUクーラーのうち240サイズで、手を伸ばしやすい1万円台半ばから購入できるモデルとしては、玄人志向 KURO-AIOWC240やXPG LEVANTE 240 ARGBが挙げられます。
「Intel Core i9 13900」と組み合わせるAIO水冷CPUクーラーに悩んだらこの辺りを選べば間違いありません。
Intel Core i9 13900の基礎ベンチマーク
Intel Core i9 13900の基本的なCPU性能を専用ベンチマークソフトで検証しました。この章ではULMarkからリリースされているPCMark 10という総合ベンチマークソフトを使用していますが、デスクトップ向けの高性能CPUの性能比較ベンチマークとしては頭打ちな傾向があります。最新世代ではEssentialsとProductivityが高いとシングルスレッド性能の向上を確認できる、くらいの扱いです。
レビュー項目の1つとして参考までにスコア比較していますが、より実用的なCPU性能、クリエイティブタスク性能やPCゲーミング性能については後半の個別性能比較を参考にしてください。
*Ryzen 7000の一部モデルと高性能GPUを組み合わせた場合にVideo Editing, Sharpening OpenCLのスコアが0になる不具合があり、総合スコアとDigital Content Creationが空欄になっています。
「PCMark 10 Extended」のベンチマーク結果をチェックしていきます。
「PCMark 10」は動画再生能力、DirectX11のグラフィック性能、Webブラウジング、ビデオチャットなど一般ユースにおけるPCの総合的な性能を測定するためのベンチマークソフトです。
「Intel Core i9 13900」を含めた各CPU環境について、PCMark 10ベンチマークの総合スコアを比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
「PCMark 10 Extended」にはPCの基本性能を測る「Essentials」、ビジネスアプリケーション性能を測る「Productivity」、クリエイティブ性能を測る Digital Content Creation」、ゲーム性能を測る「Gaming」の大きく分けて4つのテストグループがあるので、個別にベンチマークスコアを比較してみました。
PCの基本性能を測る「Essentials」は、アプリケーションの起動に要する時間を測る「App Start-up」、 ウェブブラウジングの性能を測る「Web Browsing」、1対1または多対多のビデオ会議をシミュレートする「Video Conferencing」の3つのワークロードで構成されています。
モバイル版向けCPUのCore i7 1165G7を搭載するSurface Pro 7+との比較でわかりますが、一般的なPC利用において大半のデスクトップ向けCPUは十分な性能を備えています。
「Essentials」について「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
ビジネスアプリケーション性能を測る「Productivity」は、ワープロソフト(マイクロソフトWordなど)の処理性能をシミュレートする「Writing」、表計算ソフト(マイクロソフトExcelなど)の処理性能をシミュレートする「Spreadsheets」の2つのワークロードで構成されています。
モバイル版向けCPUのCore i7 1165G7を搭載するSurface Pro 7+との比較でわかりますが、一般的なオフィスワークにおいて大半のデスクトップ向けCPUは十分な性能を備えています。
「Productivity」について「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
クリエイティブ性能を測る「Digital Content Creation」は、写真に対するフィルタリング処理の性能をシミュレートする「Photo Editing」、動画編集の性能をシミュレートするワークロード「Video Editing」、レイトレーシングによる3Dグラフィクス制作(3Dレンダリング)をシミュレーションする「Rendering and Visualization」の3つのワークロードで構成されています。
「Digital Content Creation」について「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
ゲーム性能を測る「Gaming」は、グラフィックボードの性能測定で幅広く活用されているベンチマークソフト「3DMark」に収録された「Fire Strike」と同じベンチマークテストを実行するワークロードです。
「Gaming」について「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Intel Core i9 13900のクリエイティブ性能
Intel Core i9 13900について3Dレンダリング、動画編集・エンコード、RAW現像・写真リタッチ、PCゲーム/スマホアプリのビルド、AI機能による超解像・写真分類などクリエイティブ作業に関する性能を各種ベンチマークソフトや実際のアプリケーションで検証しました。Intel Core i9 13900の3Dレンダリング性能
まずは「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUの3Dレンダリング性能を比較していきます。CPUのマルチスレッド性能を比較するベンチマークソフトとして国内外で最も知られているCinebenchの2021年リリース最新バージョン「Cinebench R23」、オープンソース3DCGソフト「Blender」の公式ベンチマークソフト、3Dレンダラー「V-Ray」の公式ベンチマークソフトの4種類を使用してベンチマーク測定を行いました。
Cinebench R23は3Dレンダリング性能を測定するベンチマークソフトになっており、マルチスレッド性能を測定するテストとシングルスレッド性能を測定するテストの2種類を実行しています。
Cinebench R23 マルチスレッド性能テストについて「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Cinebench R23 シングルスレッド性能テストについて「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
3DCGソフト「Blender」の公式ベンチマークソフト(ver3.4.0)について「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Blender Benchmark 3.0ではmonster/junkshop/classroomの3つのレンダリングが実行され、それぞれ分間サンプル数がベンチマークスコアとして表示されます。Core i5 12400Fを基準にして(全CPU比較データではCore i5 12400Fが基準)、3つのスコアについて性能比率を算出し、その平均値をグラフ化しています。
3Dレンダラー「V-Ray」の公式ベンチマークソフト(ver5.2.0)について「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
V-Rayのベンチマークソフトのレンダリングサンプル数が結果として表示されますが、性能差が直感的にわかりにくいので、Core i5 12400Fを基準にして(全CPU比較データではCore i5 12400Fが基準)、各種CPUのレンダリング速度を性能比としてグラフ化しています、
Intel Core i9 13900の動画エンコード・動画編集性能
続いて「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUの動画編集や動画エンコードの性能を比較していきます。検証には、無料で利用できる動画編集ソフトとして国内外で多数のユーザーがいる「Aviutl」、大量の動画ファイルを一括エンコードする時に便利なフリーソフト「HandBrake」を使用しています。
またアマチュアからプロまで動画編集ソフトとして幅広く使用されている「Adobe Premiere Pro」の実用性能を検証するベンチマークとしてULMarkのUL Procyon Video Editing Benchmarkも測定しています。
まずは単純に動画ファイルをそのまま圧縮するエンコード作業の性能比較として、HandBrakeを使用したエンコード性能をチェックします。
HandBrakeは、現在主流なH.264 (MPEG-4 AVC) ビデオストリームへエンコードを行う「x264」エンコーダ、そしてH.264より高圧縮・高画質で次世代規格として期待されているH.265(HEVC) ビデオストリームへエンコードを行う「x265」エンコーダが使用できるので、CPUをリソースとして各エンコーダで共通の動画ファイルのエンコードを行いました。
エンコードを行う動画ファイルについては、Tom Clancy's Ghost Recon Wildlandsのゲーム内ベンチマーク(60秒ほど)をNVIDIA ShadowPlayで録画したものを使用しています。1920×1080/60FPS/50Mbpsと3840×2160/60FPS/120Mbpsの2種類の動画ファイルを作成し、それぞれ解像度はそのままにCRF値指定でエンコードを行っています。
比較グラフのx2/x3/x4のバーについては同じエンコードを添え字の数だけ並列実行した時の合計変換フレームレートを示しています。
ソースファイルやエンコード設定にも依りますが、フルHD解像度では8コア16スレッド程度、4K解像度では16コア32スレッド程度でマルチスレッド分散がボトルネックになり始め、単独エンコードではCPUが遊び始めます。
20コアオーバーのウルトラメニーコアCPUでマルチスレッド性能をフルに活用しようと思うと、8K解像度のような超高解像度のエンコード、もしくは複数並列エンコードを行う必要があるので注意してください。
x264エンコーダによって1920×1080解像度の動画をH.264 (MPEG-4 AVC)の1920×1080解像度へエンコードした時のエンコード速度について、「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
x264エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.264 (MPEG-4 AVC)の3840×2160解像度へエンコードした時のエンコード速度について、「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
x265エンコーダによって1920×1080解像度の動画をH.265(HEVC)の1920×1080解像度へエンコードした時のエンコード速度について、「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
x265エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.265(HEVC)の3840×2160解像度へエンコードした時のエンコード速度について、「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
続いてAviutlで編集した動画プロジェクトのエンコード速度について、「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUの性能を比較していきます
編集プロジェクト自体は単純で、4K解像度とフルHD解像度(4K解像度に拡大)の2つの動画ファイルを使用し、それぞれの動画を左右にフェードイン/アウト、後は画面上にテキストをオーバーレイさせているだけです。YouTubeにアップしている下の動画が完成物となっており、冒頭1分間部分のエンコード速度を測定しています。
Aviutlで作成した3840×2160解像度の4K動画プロジェクトをH.264 (MPEG-4 AVC)の3840×2160解像度へエンコードした時のエンコード速度について、「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
動画編集ソフトにも依りますが、Aviutlの場合、動画開始直後のように単独の4K映像に文字をオーバーレイするだけでもエンコード出力のCPU使用効率が下がります。
カット編集だけならAviutlもHandBrakeも大差ありませんが、編集したプロジェクト1つをエンコード出力した場合、上で見たHandBrakeによる単純エンコードと比較してマルチスレッド性能に比例したスケーリングは鈍り、シングルスレッド性能で差が出る傾向が強まります。
続いてAdobe Premiere Proの実用性能を検証するベンチマークソフト、UL Procyon Video Editing Benchmarkのベンチマーク結果から、「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUの動画編集性能を比較していきます
Adobe Premiere Proはver23.0を使用しています。UL Procyon Video Editing BenchmarkにはフルHD解像度と4K解像度の2種類のプロジェクトがあり、それぞれにおいてCPUのみを使用するテストとGPU支援を有効にするテストを行い、トータルのベンチマークスコアを算出しています。
Adobe Premiere Proの実用性能を検証するベンチマークソフト、UL Procyon Video Editing Benchmarkについて、「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ:Total Score / FHD(CPU) / FHD(CPU&GPU) / 4K(CPU) / 4K(CPU&GPU)】
この章の最後に、映画/ポストプロダクション/放送業界に向けて世界最高品質の製品を開発しているBlackmagic Design社製の動画編集ソフト DaVinci Resolveの実用性能について、Puget Systemsから配布されているベンチマークソフト PugetBench for DaVinci Resolveを使用して、「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUの動画編集性能を比較していきます。
DaVinci Resolveは有償版のDaVinci Resolve Studio(ver18.1.1)を使用し、PugetBench for DaVinci ResolveのExtended Testを実行しています。
PugetBench for DaVinci Resolve Extended Testには4K Media、8K Media、GPU Effect、Fusionの4つのテストが実行され、それぞれのサブスコアからトータルのベンチマークスコアが算出されます。
DaVinci Resolveの実用性能を検証するベンチマークソフト PugetBench for DaVinci Resolveについて、「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ:Total Score / 4K Media / 8K Media / GPU Effect / Fusion】
Intel Core i9 13900のRAW現像・写真リタッチ性能
続いて「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUのRAW現像や写真リタッチの性能を比較していきます。検証には、強力なノイズ除去機能PRIMEや最新版DeepPRIMEで評判の写真編集ソフトDxO PhotoLab 6によるRAW現像に加えて、アマチュアからプロまで動画編集ソフトとして幅広く使用されている「Adobe Lightroom Classic」と「Adobe Photoshop」の実用性能を検証するベンチマークとしてULMarkのUL Procyon Photo Editing Benchmarkも測定しています。
まずはDxO PhotoLab 6によるRAW現像について、「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUの性能を比較していきます
ミラーレス一眼カメラSONY α1で撮影した8640×5760解像度のRAW画像ファイル 100枚に対して、DxO PhotoLab 6の画質プリセット「DxO 標準」をベースにノイズ除去をPRIMEに変更したプリセットを適用し、RAW現像を行いました。
なおDxO PhotoLab 6によるRAW現像は並列処理数を設定できますが、CPUコア数の半分前後の並列処理で最速になるようです。
DxO PhotoLab 6によるRAW現像速度について、「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
続いてAdobe Lightroom ClassicとAdobe Photoshopの実用性能を検証するベンチマークソフト、UL Procyon Photo Editing Benchmarkのベンチマーク結果から、「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUのRAW現像と写真リタッチの性能を比較していきます
UL Procyon Photo Editing BenchmarkにはAdobe Lightroom Classic ver11.5を使用したバッチ処理テスト(Batch Processing test)に加えて、Adobe Lightroom Classicで簡易処理を施した写真セットをAdobe Photoshop ver23.5.3で編集するテスト(Image Retouching test)の2種類を行い、トータルスコアが算出されます。
Adobe Lightroom ClassicとAdobe Photoshopの実用性能を検証するベンチマークソフト、UL Procyon Photo Editing Benchmarkについて、「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ:Total Score / Retouch / Batch】
Intel Core i9 13900のPCゲーム/スマホアプリのビルド性能
最後に「Unreal Engine 4/5」や「Unity」などフリーウェアながら高画質なPCゲームやスマホゲームを製作可能なゲームエンジンを使用したゲーム制作におけるCPU性能の検証として、Unreal Engine 4で「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUの性能を比較していきます。Epic Games Storeで無料配布されているUnreal Engine 4のデモプロジェクト Infiltratorを使用したビルド時間の比較を行います。検証設定としてリアルタイム表示はオフ、ライティングの品質をプロダクションとしています。Unreal Engine 4のバージョンは4.27.2で統一しています。
「Unreal Engine 4 - Infiltrator」のビルド時間について、「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
「Unreal Engine 4 - Infiltrator」のビルド時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i5 12400Fを基準にして(全CPU比較データではCore i5 12400Fが基準)、各種CPUのビルド速度を性能比としてグラフ化しています、
Intel Core i9 13900のAI性能
ディープラーニングや人工知能(AI:Artificial Intelligence)の流行に合わせて、近年の最新CPUではAI支援機能の実装も目玉の1つになっているので、一般ユースに近い活用方法として、AIによる写真の超解像化や写真の自動分類で「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUの性能を比較していきます。まずはAIによって低解像度の写真を高精細な高解像度にアップスケールできる「Topaz Gigapixel AI」を使用して、「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUの性能を比較していきます。
500×500解像度前後の写真を50枚用意し、AIモデルStandardによって4倍の解像度にアップスケールするのにかかる時間を測定しました。
Topaz Gigapixel AIはOpenVINOツールキットにより、第10世代以降のIntel Core CPUで採用されているDL Boostと呼ばれるディープラーニングを支援する新しい命令に対応していますが、CPUのマルチスレッド性能でゴリ押しも効くアプリです。
Topaz Gigapixel AIのAIアップスケール速度について、「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
処理時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i5 12400Fを基準にして(全CPU比較データではCore i5 12400Fが基準)、各種CPUのAIアップスケール速度を性能比としてグラフ化しています、
続いてAIによって写真の被写体(人物、犬猫、自動車など)を自動で分類できる「Nero AI Photo Tagger」を使用して、「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUの性能を比較していきます。
500×500解像度前後の写真を計2800枚(犬、猫、自動車などの8種類のクラス)用意し、AI認識によって自動分類するのにかかる時間を測定しました。
Nero AI Photo TaggerはOpenVINOツールキットにより、第10世代以降のIntel Core CPUで採用されているDL Boostと呼ばれるディープラーニングを支援する新しい命令に対応しています。
CPUのAI支援機能が効果を発揮するのはもちろん、AVX512命令でも大幅に性能が向上する用途です。
Nero AI Photo TaggerのAI自動分類速度について、「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
処理時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i5 12400Fを基準にして(全CPU比較データではCore i5 12400Fが基準)、各種CPUのAI自動分類速度を性能比としてグラフ化しています、
Intel Core i9 13900のゲーミング性能
「Intel Core i9 13900」のPCゲームに関する性能を実ゲームを用いたベンチマーク測定で検証しました。なお章タイトルではゲーミング性能と表記してはいますが、近年発売された4コア4スレッド以上のCPUであればフルHD解像度~4K解像度の60FPSターゲットにおいてCPUボトルネックが発生するケースは多くありません。そのためCPUゲーム性能比較の具体的な内容は”高フレームレートにおけるCPUボトルネック比較”と表現するのが実状に即しています。
ゲーミングPCに搭載するなら、Intel Core i5 12400(F)やAMD Ryzen 5 5500など6コア12スレッド以上のCPUを当サイトでは推奨しています。
最新の超高画質で重いゲームの場合、ゲームプレイの裏で次のシーンのロード作業が動くとロードが遅くなったりスタッター(カクツキ)が発生することがあります。またベンチマーク結果からフレームレートの数値的に60FPS前後なら問題なさそうに見えても、2コア~4コアの場合、ゲームの起動やロードの時間が極端に長くなることがあり快適にプレイできない可能性もあります。
各CPUのゲーミング性能を測定するため統一検証機材として、2022年最新にして最速のウルトラハイエンドGPUを搭載したグラフィックボード「PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8 Gaming VERTO EPIC-X RGB OC 3FAN」を使用しています。
PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8は、ベイパーチャンバー構造のベースコアや、厚みのあるファンブレードをバリヤーリングで結合した重厚な冷却ファンを採用する4スロット占有大型GPUクーラーにより、各社AIBモデルの中でもトップクラスの静音性を実現しています。
メーカーのPNYは2022年に株式会社アスクが販売代理店契約を結んだばかりの新参なので国内での知名度は高くありませんが、北米など海外市場では30年以上に渡りコンシューマーならびにビジネス向けで電子機器の製造・販売を行う大手メーカーです。
国内正規品なら代理店を介してPNY公式のグローバル保証と同じ3年間の長期保証が受けられるところも魅力です。
・「PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8」をレビュー
CPU別ゲーミング性能の比較には近年の高画質PCゲームから、Assassin’s Creed Valhalla、Cyberpunk 2077、F1 2022、Far Cry 6、Marvel’s Guardians of the Galaxy、Shadow of the Tomb Raider、Tom Clancy's Rainbow Six Extraction、Forza Horizon 5、MONSTER HUNTER RISE : SUNBREAK、Marvel’s Spider-Man Remastered、Call of Duty: Modern Warfare II、The Witcher 3: Next Gen Update、Microsoft Flight Simulator(4Kのみ)の13タイトルを使用しています。
前述の通り、CPUがゲーム性能に与える影響の多くは100FPS以上の高フレームレートにおけるボトルネックの解消なので、フルHD(1920×1080)解像度/高画質設定について、各ゲームで平均フレームレートと1% Lowフレームレートを測定しました。
また参考としてAssassin’s Creed Valhalla、Cyberpunk 2077、Shadow of the Tomb Raider、Marvel’s Spider-Man Remastered、Microsoft Flight Simulator、The Witcher 3: Next Gen Updateの6種類については4K解像度をターゲットとしたベンチマーク測定も行っています。
ゲームタイトルにもよりますがPCゲームにおけるCPU負荷であれば、CPU Package PowerはIntelのPBPやAMDのTDPよりも十分に低い数値に収まることが多く、CPUコアクロックは全コア最大動作倍率に張り付きます。
フレームレートに対するCPUボトルネックの緩和においては、この全コア最大動作倍率の高さが重要になり、クリエイティブタスクと違って電力制限は支配的ではなくなります。(PCゲームではIntel製CPUのPL1、AMD製CPUのPPTは影響をほとんど及ぼさなくなる)
Intel Core i9 12900やAMD Ryzen 7 5700Xのように定格の電力制限に対して全コア動作倍率の高いCPUの場合、PCゲームにおいてもCPU使用率が高くなるハイフレームレートでCPU消費電力がPBPやTDPを超過するタイミングもありますが、短期間電力制限PL2によるターボブーストやTDPよりも余裕をもって設定されたPPTによって高いコアクロックを維持し続けることができるので、影響は軽微です。
クリエイティブタスクの検証において複数の電力制限で測定していたCPUもPCゲームでは極端に大きい消費電力になることはないので、電力制限が緩い方を代表として測定しています。
Intel製CPUの場合は単純に電力制限を無効化しています。AMD製CPUはブーストクロックの動作が少々複雑でPPT/EDC/TDCを下げた方がFPSが上がる、逆にPBOで性能が下がる場合もあるため、基本的に定格のまま測定し、必要に応じて判断しています。
Intel Core i9 13900のゲーム性能 - 4K解像度/60FPSターゲット
まずは60FPSの標準フレームレートをターゲットとした4K(3840×2160)解像度のゲーミング性能について「Intel Core i9 13900」や比較対象CPUのベンチマーク結果をチェックしていきます。上述の通り4K高解像度の60FPSターゲットでは基本的にCPUボトルネックは発生しません。グラフの掲載順は平均フレームレートによる昇順ですが、4コア8スレッドや6コア6スレッドよりもコアスレッド数が多いCPUについては、ほぼ測定誤差の範囲内です。
Assassin's Creed Valhara(4K解像度、画質プリセット:高)に関する「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Cyberpunk 2077(4K解像度、画質プリセット:高、FSR:オフ)に関する「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Shadow of the Tomb Raider(4K解像度、DirectX12、画質プリセット:最高、レイトレーシング表現:最高、アンチエイリアス:TAA)に関する「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Marvel’s Spider-Man Remastered(4K解像度、DLSS:品質、画質プリセット:非常に高い、レイトレーシング:高/高/6)に関する「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Marvel’s Spider-Man Remasteredは非常にCPUボトルネックが強いタイトルです。4K解像度かつレイトレーシング表現有効でもCPU性能に応じてフレームレートが大きく変わります。
Microsoft Flight Simulator(4K解像度、画質プリセット:ウルトラ、アンチエイリアス:TAA、オンライン機能:オフ)に関する「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Microsoft Flight Simulatorは非常にCPUボトルネックが強いタイトルです。4K解像度の60~120FPSでもCPU性能に応じてフレームレートが大きく変わります。
The Witcher 3: Wild Hunt, Next Gen Update(4K解像度、DLSS:品質、画質プリセット:RTウルトラ、レイトレーシング:有効)に関する「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
The Witcher 3: Wild Huntは非常にCPUボトルネックが強いタイトルです。4K解像度の60~120FPSでもCPU性能に応じてフレームレートが大きく変わります。
2022年12月にレイトレーシングにも対応した次世代機向けアップデートが配信されており、それを適用して検証を行っていますが、ゲーム自体は2015年の発売と古く、Ryzen CPUの登場以前なので、当時主流というかほぼ一択な状態だったIntel製CPUに有利な傾向です。
Intel Core i9 13900のゲーム性能 - フルHD解像度/ハイフレームレート
続いて100FPS以上のハイフレームレートをターゲットとしたフルHD(1920×1080)解像度/高画質設定のゲーミング性能について「Intel Core i9 13900」や比較対象CPUのベンチマーク結果をチェックしていきます。Assassin's Creed Valhara(フルHD解像度、画質プリセット:高)に関する「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Cyberpunk 2077(フルHD解像度、画質プリセット:高、FSR:オフ)に関する「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
F1 2022(フルHD解像度、画質プリセット:高、異方性フィルタリング:x16、アンチエイリアス:TAA/FidelityFX)に関する「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Far Cry 6(フルHD解像度、画質プリセット:高)に関する「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Marvel's Guardians of the Galaxy(フルHD解像度、画質プリセット:高)に関する「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Shadow of the Tomb Raider(フルHD解像度、DirectX12、画質プリセット:高、アンチエイリアス:TAA)に関する「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Tom Clancy's Rainbow Six Extraction(フルHD解像度、画質プリセット:高、レンダースケール:固定100%)に関する「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Forza Horizon 5(フルHD解像度、画質プリセット:高)に関する「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
MONSTER HUNTER RISE(フルHD解像度、画質プリセット:高)に関する「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Marvel’s Spider-Man Remastered(フルHD解像度、アンチエイリアス:TAA、画質プリセット:高い、レイトレーシング表現:オフ)に関する「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Call of Duty: Modern Warfare II(フルHD解像度、画質プリセット:バランス、アンチエイリアス:オフ)に関する「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
The Witcher 3: Wild Hunt, Next Gen Update(フルHD解像度、画質プリセット:高)に関する「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
最後に、今回検証した10種類のゲームについて各タイトルについて平均FPSと1% Low FPSでそれぞれ、Core i5 12400Fを基準にした性能比率を算出し、さらに平均値としてグラフにまとめました。(全CPU比較データではCore i5 12400Fが基準)
フルHD解像度/ハイフレームレートの相対的なPCゲーミング性能に関する「Intel Core i9 13900」を含めた各種CPUの比較結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
CPUエンコーダとリアルタイム配信について
ゲーム実況やライブ配信と呼ばれるPCゲームのリアルタイム配信について、現在ではNVIDIA GeForce RTX 3050やAMD Radeon RX 6600などハードウェアエンコード機能を使用できるエントリー~ミドルクラスのGPUを使用することでフルHD解像度で必要十分な画質とフレームレートが得られます。GPUエンコーダは動作自体も軽いので、これらGPUエンコーダの登場によってリアルタイム配信やプレイ動画の録画におけるCPUエンコーダの役目は終わったというのが一時期の私見でしたが、メインストリーム向けCPUのコアスレッド数の増加に伴い、x264 Mediumのような高画質プリセットのプレイ&録画が一般ユーザー的にも現実的になってきています。
YouTube LiveやTwitchなどリアルタイム配信(ライブストリーミング)サービスで、PlayStation 5/Xbox Series X|S/Nintendo Switch等のコンシューマーゲーム機や、PCゲームのプレイ動画・ゲーム実況を快適に配信するのに必要なCPU性能については、現在、連載を続けている【快適配信】シリーズで詳細に解説しています
一口にゲーム実況と言っても、『1.ビデオキャプチャを使用してPCは録画配信作業のみを行う』、『2.PC1台で同時にゲームプレイと録画配信を行う』の2つのケースに大別され、どちらで使用するのかで要求されるCPU性能やCPUメーカー毎の得手不得手など事情が変わってくるので注意してください。
ざっくりと現状でCPUを使用したリアルタイム配信・ゲーム実況に要求されるCPU性能だけ述べておくと、『ビデオキャプチャを使用した配信の最低水準は6コア12スレッドのCPU』、『ゲームをプレイしながら配信の最低水準は8コア16スレッドのCPU』です。
・【快適配信】シリーズの記事一覧へ
画質と快適性を求めるなら録画・配信専用マシンもオススメ
ビデオキャプチャ業界の進歩も目覚ましく、2018年に発売された「AVerMedia Live Gamer Ultra」を皮切りに、各社から4K/60FPS/HDRやフルHD/240FPSの映像ソースを無遅延なパススルー表示しつつ、フルHD/60FPSのプレイ動画として録画・配信できるUSB接続外付け機器型ビデオキャプチャが各社から発売されています。前述の通りフルHD/60FPSの録画・配信であれば、GPUのハードウェアエンコーダを利用することで必要十分な画質が得られて動作も軽いので、録画配信のために高性能な反面、非常に高額なCPUに投資するよりも、多少コストがかかっても「AVerMedia Live Gamer Ultra」などのビデオキャプチャと組み合わせて録画・配信用サブ機を構築するほうが、録画・配信の手法としてはわかりやすくてハードルが低いと思います。
Intel Core i9 13900のレビューまとめ
「Intel Core i9 13900」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ or 概要
- 8コア P-Coreと16コア E-Coreによる24コア32スレッドCPU
- P-Coreの単コア最大ブーストクロックは5.6GHz
- 全コア最大動作倍率はP-Core All:5.3GHz、E-Core All:4.2GHz
- 定格のPL1:65WにおいてコアクロックはP-Core All:2.8~3.0GHz、E-Core All:2.6GHz程度
- PL1:125~160Wなら120サイズ空冷CPUクーラーでも問題なく運用可能
- Core i9 12900Kよりも高速なシングルスレッド性能
- 付属CPUクーラーでもCPPが65~95Wなら運用が可能
- 144FPS~500FPSのハイフレームレートなPCゲーミングで最速クラス
- 最新規格DDR5のシステムメモリに対応(対応マザーボードも必要)
- CPUクーラー Laminar RH1 Coolerが標準で付属
- 最大動作倍率に対して65W運用だと性能が50%以上下がるのでもったいない
- 240サイズ以上のAIO水冷CPUクーラーを別途用意するのが推奨
- メモリOCは可能だが、SA電圧(VCCSA)の調整には非対応
(MBにも依るが6000MHz/C30~C36のメモリOCなら問題ないはず) - 65~100WのCPUとして運用すると同電力のRyzen 9 7950Xより低性能
温度・消費電力について
温度検証で確認した通り、「Intel Core i9 13900」は65Wの定格、125W未満の電力制限解除なら付属CPUクーラー Laminar RH1 Coolerでも静音性を維持しつつ運用は可能です。ただし電力制限時はCPU温度が低い方がコアクロックが高くなるので数%程度ではあるものの性能が上がりますし、PCケースの吸排気次第では電力制限無効化だとサーマルスロットリングが生じる可能性もあります。
「Intel Core i9 13900」の定格By Core Usage倍率に対してゲーム用CPUとして要求されるCPU Package PowerはグラフィックボードがRTX 4090の場合、最大で150~160Wに達しました。同CPUと組み合わせるであろうハイエンドクラスGPUなら多少下がるとしても、130W以上は要求されます。
「Intel Core i9 13900」はマルチスレッド性能が50%程度も向上し、理想的なゲーム性能を発揮でき、なおかつ温度的にも運用しやすいので(別売りAIO水冷クーラーは必要ですが)、PL1:180~200W以上に電力制限を解除して運用するのがオススメです。
なお、価格帯や最大性能で競合するRyzen 9 7950Xと比較すると、最大性能を発揮するCPU Package Powerが185W以上なら同程度のワットパフォーマンスになるのですが、付属クーラーや空冷CPUクーラーでの運用が想定される65~100Wの区間では20%以上と大きく劣ります。
上述の通り、「Intel Core i9 13900」はゲーム用CPUとして理想的な性能を発揮するのに必要なCPPも高めなので、空冷CPUクーラーを組み合わせた低電力な運用を想定すると、より高性能を発揮するRyzen 9 7950Xやコストパフォーマンスが高くなるRyzen 9 7900X/7900のほうが最適です。
クリエイティブ性能について
「Intel Core i9 13900」のクリエイティブ性能、特にマルチスレッド性能が支配的になるシーンについては、定格の最大動作倍率的に電力制限解除による伸びしろが非常に大きく、13900Kの定格設定であるPL1=PL2=253Wに電力制限を解除すれば、定格比で50%以上も性能が向上し、上位モデルCore i9 13900Kとの性能差も一桁%程度となります。PL1:65Wでも第13世代Core i5や第12世代Core i7/i9のTDP65Wモデルと同電力で比較すれば当然上回る性能を発揮しますが、電力制限を適切な値に解除した状態や、上位モデルのCore i9 13900Kと比較して50%程度も下回るので、正直なところTDP65WのCPUとして運用するのは非常にもったいない使い方だと思います。
一方で競合AMDのメインストリーム向けCPUであるRyzen 7000と比較すると、マルチスレッド性能依存なシーンだとアプリにも依るものの、価格帯で競合するRyzen 9 7950Xのほうが13900Kや13900(電力制限解除)よりもやや優位な印象です。
Intel第12/13世代CPUは高電力効率なE-Coreを多数実装することによってマルチスレッド性能を伸ばしていますが、E-Coreを16基搭載する「Intel Core i9 13900」や上位モデル13900Kはソフト側の最適化の影響なのかUnreal Engine 4など12900Kと比較しても性能の伸びが鈍化しているケースもあります。
また空冷CPUクーラーで運用しやすい65W~125Wに限定すると、最大性能なら贔屓目で互角のRyzen 9 7950Xに対して「Intel Core i9 13900」のほうが20%以上も下回ってしまいます。
電力を絞ると「Intel Core i9 13900」はRyzen 9 7900X/7900と同程度の性能しか発揮できないので、製品価格から考えてシンプルにコスパで劣る形に。
「Intel Core i9 13900」は高速なP-CoreによりCinebench R23で確認したシングルスレッド性能は前世代や競合Ryzen 7000を上回っていました。
今回の検証でいうとAviutlで編集した動画プロジェクトのエンコード速度やUL ProcyonによるAdobe CCアプリの実用性能ベンチにその影響が表れやすいのですが、AMD Ryzen 7000が猛追していることもあって、Intel第12世代CPU vs AMD Ryzen 5000の時と比べると差は大きくありません。
「Intel Core i9 13900」は近年流行りのAIに最適化された命令セットIntel Deep Learning Boost(DL Boost)に対応しており、OpenVINOツールキットで開発されたアプリで高い性能を発揮できます。
ただし第11世代では対応していたAVX512については、高効率E-Coreが対応していないため第12世代CPU同様に第13世代CPUでもやはりCPU全体でサポートしておらず、256bit幅×2という非ネイティブ対応ではあるもののAVX512をサポートするRyzen 7000に対して、AI機能を活用するアプリでは大きく差をあけられてしまいました。
ゲーム性能について
ゲーム性能検証の冒頭でも述べたようにフルHD~4K解像度の60FPSターゲットであれば4コア4スレッド以上の最新CPUであればどれを使用しても大差はありません。Ryzen 2000/3000の頃だとゲーム側の最適化の問題で60FPSターゲットであってもCPUによって差が出るケースも散見され、ゲーム用ならどちらかというとIntelという感じでしたが、Ryzen 5000以降ではこの差もほぼ無視できるレベルだと思います。
ただし最新の超高画質で重いゲームの場合、ゲームプレイの裏で次のシーンのロード作業が動くとロードが遅くなったりスタッター(カクツキ)が発生することがあるので、ゲーミングPCに搭載するなら、2万円台半ばから購入できることもありIntel Core i5 12400(F)やAMD Ryzen 5 5500など6コア12スレッド以上のCPUを当サイトでは推奨しています。
「Intel Core i9 13900」は適切に電力制限を解除すれば、上位モデル13900Kにこそ及びませんが、前世代最上位Core i9 12900Kや競合Ryzen 7000を上回る性能を実現しており、PCゲームにおけるCPUボトルネックを最も緩和できるCPUの1つです。
GeForce RTX 4080やRadeon RX 7900 XTX/XTは優れたGPU性能から4K解像度でもCPUバウンドなシーンに遭遇する可能性がありますが、Core i9 13900はそういった次世代ハイエンドGPUの性能を遺憾なく発揮できるベストパートナーなCPUです。
また360Hz+の超ハイリフレッシュレートなゲーミングモニタの性能を最大限発揮できるので、オンライン対戦PCゲームをプレイし、勝つためのゲーミングPCに搭載するCPUとしてもオススメです。
ゲーム用CPUの当サイト的推奨が6コア12スレッド以上というのは上記の通りですが、ゲーム性能ベンチマークで見たように例えばMarvel’s Spider-Man Remasteredの4K解像度/最高画質&レイトレーシングは60~120HzでもCPUボトルネックが発生します。
競技系ではない、画質重視なPCゲームでもメニーコアCPUが力を発揮することはあるので、GPU優先が定石ではあるものの、「Intel Core i9 13900」はMarvel’s Spider-Man RemasteredやFINAL FANTASY VII REMAKEのような高画質アクション/RPGゲームを好むPCゲーマーにとっても魅力のある製品です。
またプレイ動画の配信についてはNVIDIA GeForceグラフィックボードで使用可能なハードウェアエンコーダNVEncの動作が軽快で、画質もRTX20/GTX16世代以降ではCPUによるx264の実用プリセットに迫る品質に改良されているので主流になりつつあります。
この分野ではCPUの存在感は薄まりつつありますが、プレイ動画の作成や編集においては依然として動画のエンコード性能しかりCPUの性能が重要であることは間違いないので、プレイ動画の作成という面もゲーム性能と捉えるなら、その意味でも「Intel Core i9 13900」は優れたゲーミングCPUです。
総評 - PL1解除は前提、ほぼ13900Kの性能で若干安価に
「Intel Core i9 13900」については検証結果を見ての通り、”PL1の電力制限を適切に解除”すれば、上位モデルCore i9 13900Kとほぼ同性能のCPUとして運用できます。ただ、為替レートの影響もあってTDP65WモデルとK付きモデルの価格差が大きくないので、現状ではあえてTDP65Wモデルを選ぶ意味はないという実状も。
あと全コア最大ブーストクロックが同じなので「Intel Core i9 13900」とCore i7 13700K(F)のゲーム性能はほぼ同じです。13900Kを選ばなかったということは、価格も重視している人だと思うので、20~30%程度のマルチスレッド性能差が必要ないなら、2万円ほどの価格差があるのでCore i7 13700K(F)を選んでもいいかなと。
PL1:180~200W以上に電力制限を解除して運用するのが当サイト的な推奨となっており、そのように運用するのであれば、「Intel Core i9 13900」の評価は先日公開した13900Kのレビュー総評とほぼ同じです。GeForce RTX 4080やRadeon RX 7900 XTX/XTのような次世代ハイエンドGPU搭載グラフィックボードで組む高性能ゲーミングPCのお供として当サイト的にオススメできるCPUです。
逆に言うと、定格設定であるPL1:65Wのままで運用すると、マルチスレッド性能の下げ幅が大きく、ゲームシーンでも電力制限がボトルネックになるので、第13世代Core i9をCPUに選ぶ魅力というか意義を大幅に損なってしまい非常にもったいない、というのが正直な感想です。
「Intel Core i9 13900」を使用するならPL1:180~200W以上の電力制限解除に対応可能な240サイズ以上のAIO水冷CPUクーラーを組み合わせるのがオススメです。
小型空冷CPUクーラーしか搭載できないSFFビルドや、どうしても120~140サイズの空冷CPUクーラーで組みたいということであれば、65W~125Wの区間で電力効率に優れているAMD Ryzen 9 7950X/7900X/7900を選ぶのが正解だと思います。
以上、「Intel Core i9 13900」のレビューでした。
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24コア32スレッドCPUのTDP65Wモデル「Intel Core i9 13900」をレビュー。
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) February 25, 2023
Core i9 12900KやRyzen 9 7950Xとゲーミング性能やクリエイティブタスク性能を各種ベンチマークで徹底比較https://t.co/NZxjS3gMyP pic.twitter.com/yoCWo9U0tf
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