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Radeon RX 6700 XTグラフィックボードとしてPowerColorからリリースされた、3スロット占有3連ファンGPUクーラーを搭載し、ファクトリーOCが施されたハイエンドモデル「PowerColor Red Devil AMD Radeon RX 6700XT 12GB GDDR6(型番:AXRX 6700XT 12GBD6-3DHE/OC)」をレビューします。
待望のAMD製次世代アッパーミドルGPU「Radeon RX 6700 XT」が、前世代同ナンバリングのRX 6700 XTをどの程度上回り、競合NVIDIAの最新GPUであるRTX 3070やRTX 3060 Tiに対してどれくらいの性能を発揮するのか、ゲームベンチマークでグラフィック性能を徹底比較します。
代理店公式ページ:https://www.aiuto-jp.co.jp/products/product_3381.php
製品公式ページ:https://www.powercolor.com/jp/product?id=1612497663
PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT レビュー目次
1.PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XTの外観
2.PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XTの分解
3.PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XTの検証機材・GPU概要
4.PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XTのゲーム性能
5.PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XTの温度・消費電力・ファンノイズ
6.PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XTのレビューまとめ
PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XTの外観
早速、PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XTを開封していきます。「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」のグラフィックボード本体を見ていきます。
「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」は黒一色のデザインですが、ファン中央のRed Devilロゴの赤色がアクセントになっています。GPUクーラー外装のうち、中央の大部分はプラスチック製ですが、外周フレームが艶のあるヘアライン仕上げアルミニウムで、一体感のある造形なので安っぽさは全く感じません。
グラフィックボード側面はオリファンモデルにおいてしばしば装飾が施される部分ですが、「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」では放熱ヒートシンクの排気が抜けるようにフィンが全面に出ています。
グラフィックボード右端の白色半透明なフレームにはLEDイルミネーションが内蔵されています。
LEDイルミネーションは標準で赤色に発光しますが、グラフィックボード基板上のLEDヘッダーを付属ケーブルを使用してマザーボードなどARGB対応VD-G型汎用3PIN LEDコントローラーに接続することで外部からの制御にも対応します。
Radeon RX 6700 XTのリファレンスモデルは従来のフルサイズグラフィックボード同様に全長267mmでしたが、「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」の全長320mmと非常に巨大です。
「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」は全長も大きいですが、PCIEブラケットからはみ出す高さ方向も+30mmとかなり大きいので、PCIE補助電源とPCケースサイドパネルとの干渉についても注意が必要です。
「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」の3連ファンGPUクーラーには左右に100mm径ファンを2基、中央に90mm径ファンを1基で異なるサイズのファンを搭載しています。冷却ファンの軸受けにはダブルボールベアリングが採用されており、一般的なファンと比較して4倍の長寿命を実現しているとのこと。
「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」はTGP230W超の発熱に対応するため、大型放熱フィンを採用したヒートシンクが搭載されており、PCIEスロットを3スロット占有します。
「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」は大幅なファクトリーOCが施されたモデルということもあり、補助電源数はRX 6700 XTリファレンスモデルよりも多いPCIE 8PIN×2に増強されています。
「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」のビデオ出力はHDMI2.1×1、DisplayPort1.4×3の4基が実装されています。RX 6800/6900 XTシリーズのリファレンスモデルや一部オリファンモデルと違って、USB Type-Cポート搭載されていません。
「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」にはGPUクーラー外装と同様にヘアライン仕上げアルミニウムな金属製バックプレートが装着されています。
基板の反りや破損を防止する保護プレートとしての役割を果たしますが、VRM電源回路やVRAMチップとの間にはサーマルパッドが貼られていないので冷却補助の機能はありません。ただ、バックプレート上にスリットを多く設けることによって、バックプレートと基板の間に熱がこもるのを防止しているとのこと。
「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」のバックプレート右端にはエアスリットが設けられており、ファンからヒートシンクを通って背面に直接風が抜けるフロースルー構造が採用されています。
「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」は複数のBIOSを搭載したデュアルBIOSに対応し、PCIEブラケットの手前部分にはBIOS切り替え用のスライドスイッチが設置されています。
「OCモード(標準設定)」と「Silentモード」の2つのモードを簡単に切り替えることができます。スライドスイッチを切り替えてPCを起動後、BIOSが変更されていない場合はOSを再起動すると切り替わります。
グラフィックボードの重量はAMD Radeon RX 6700 XTが885g、MSI Radeon RX 6700 XT GAMING X 12Gが1172gに対して、PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XTは1254gでした。
バックプレート等で基板の反りは防止されていますが、重量は1kgを軽く超過しているのでPCIEスロットへの負荷を考えるとVGAサポートステイなどで垂れ下がりを防止したほうがいいかもしれません。
PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XTの分解
「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」を分解してGPUクーラーやグラフィックボード基板についてチェックしていきます。なお今回は自己責任で(もしくはレビュー用サンプル貸出先の協力のもと特別に許可を頂いて)分解を行っています。GPUクーラーの取り外し(分解行為)は、EVGAやZOTACを除く多くのメーカーではグラフィックボードの正規保証の対象外になる行為です。今回はレビューのために分解していますが、繰り返しますが保証対象外になるので基本的には非推奨の行為なのでご注意下さい。
「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」のGPUクーラーは、基板裏面のコア周辺4カ所、バックプレート上4カ所の計8カ所のネジで固定されていました。
8カ所のネジを外すとGPUクーラーは容易に取り外しが可能です。さらにネジを外していくと、PCB基板から補強プレートや各種ヒートシンク、バックプレートも取り外しが可能です。
バックプレートは金属製ですが、グラフィックボード基板背面との間にサーマルパッドはないので、放熱板としては機能しません。
「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」にはPowerColorが独自に設計したオリジナル基板が採用されています。
Radeon RX 6700 XTのGPUコアにはNavi 22と呼ばれる336mm^2のGPUダイが使用されています。(NVIDIA製GPUと違ってGPUコア天面に刻印がない)
Radeon RX 6700 XTのVRAMはGDDR6となっており、GDDR6メモリチップはMicron、Samsung、SK Hynixが製造していますが、今回入手した「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」にはSamsung製の16GbのGDDR6メモリチップが6枚搭載されています。
「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」のVRM電源回路はGPUコアの左側に6フェーズおよび右側に8フェーズで、計14フェーズが実装されています。このうち12フェーズがGPUコア向け、残り2フェーズがVRAM向けです。VRM電源回路の中でも特に発熱の気になるMOS-FETには、低発熱な55A対応Dr. MOS(OnSemi NCP302155)が採用されています。
「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」」のGPUクーラー本体をチェックすると、GPUコアと接する部分は銅製ベースプレートが採用され、ベースコアからは6本の銅製ヒートパイプが伸び、アルミニウム製放熱フィンが3スロットスペース内いっぱいに展開されています。
GPUコアと接する部分には冷却性能の高さで定評のある銅製ベースプレートが採用されて、ニッケルメッキ処理も施されています。またGPUコア周辺のVRAMチップはGPUコアと共通の銅製ベースプレートに、VRM電源回路はヒートシンクにろう付けされた金属製プレートに、それぞれサーマルパッドを介して接し、ヒートシンク本体で直接冷却するという理想的な構造です。
GPUコアと接するベースプレートからは6本の6mm径極太ヒートパイプが左右へ抜ける構造で、GPUクーラーヒートシンクの放熱フィン全体へ効率的に熱を拡散します。
「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」はベースプレートから伸びる6本の銅製ヒートパイプによって3スロットを占有する大型GPUクーラー内部いっぱいに展開された極厚なアルミ製放熱フィンの迫力も圧巻です。
PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XTの検証機材・GPU概要
外観やハードのチェックはこのあたりにして早速、「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」を検証用の機材に組み込みました。テストベンチ機の構成は次のようになっています。テストベンチ機の構成 | ||
ベンチ機1(温度・消費電力) |
ベンチ機2(ゲーム性能) |
|
OS | Windows10 Home 64bit (1909) |
|
CPU |
Intel Core i9 9900K (レビュー) Core/Cache:5.1/4.7GHz |
Intel Core i9 10900K (レビュー) Core/Cache:5.2/4.7GHz |
M/B | ASUS WS Z390 PRO (レビュー) |
ASUS ROG MAXIMUS XII EXTREME (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z Black F4-4400C19D-16GTZKK DDR4 8GB*2=16GB (レビュー) 4000MHz, 17-17-17-37-CR2 |
G.Skill Ripjaws V F4-4000C15Q-32GVK DDR4 8GB*4=32GB (レビュー) 4000MHz, 15-16-16-36-CR2 |
システム ストレージ |
Samsung 860 EVO M.2 1TB (レビュー) |
Samsung 860 PRO 256GB (レビュー) |
データ ストレージ |
Samsung 860 QVO 4TB (レビュー) | |
CPUクーラー |
Fractal Design Celsius S36(レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM (レビュー) |
|
電源 ユニット |
Corsair HX1200i (レビュー) |
|
PCケース/ ベンチ板 |
STREACOM BC1 (レビュー) |
「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」のグラフィックボード右端にはLEDイルミネーションが内蔵されています。
公式ページで配布されているLEDイルミネーション制御用アプリケーション「PowerColor Devil Zone」を使用することで発光カラーや発光パターンを変更できます。
PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XTのGPU概要
PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XTに搭載されているGPU「Radeon RX 6700 XT」のスペックについて簡単に確認しておきます。「AMD Radeon RX 6700 XT」のスペックは、コンピュートユニット数が40、シェーダー数が2560、コアクロックはゲームクロック2424MHz、最大ブーストクロック2581MHzです。
VRAMには速度16Gbpsで容量12GBのGDDR6メモリが採用され、RDNA2アーキテクチャの特長である超高速キャッシュInfinity Cacheを96MB搭載しています。消費電力の指標となるTBP(Typical Board Power)は230Wです。
「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」のコアクロックはベースクロック2418MHz、ゲームクロック2514MHz、最大ブーストクロック2622MHzへファクトリーOCが施されています。
またGPU-ZからはRadeon RX 6000シリーズの電力制限値そのものは確認できないのですが、PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XTにおいて電力制限の基準値の調整可能幅は-6%~+10%でした。
ちなみに海外ユーザーによって作成されたAMD製GPU向けチューニングソフト(vBIOS編集ソフト)から「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」の仕様を探ってみました。
Radeon RX 6700 XTのグラフィックボード全体の消費電力の指標値であるTBP(NVIDIA仕様でいうTGPのこと)は230Wに対して、GPUコア単体の電力制限はRX 6700 XTリファレンスモデルでは186Wに設定されていましたが、「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」では203Wへと引き上げられていました。
「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」は上記のOCモードに加えて、グラフィックボード上のハードウェアBIOSスイッチによって切り替えが可能なSilentモードがあります。 Silentモードではゲームクロック2433MHz、最大ブーストクロック2615MHzで、RX 6700 XTリファレンスモデルと同じコアクロックになります。
MorePowerToolから電力制限等の情報をチェックしてみると、GPUコア単体の電力制限もまたSilentモードでは、RX 6700 XTのリファレンスモデルと同じ値である186Wに設定されていました。
また「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」のOCモードとSilentモードではGPUコアクロックや電力制限に加えて、ファン制御プロファイルも若干異なり、静音性重視のSilentモードではファン速度の下限値が引き下げられています。
今回の検証ではResizable BARを使用していませんが、Radeon RX 6700 XT搭載グラフィックボードの「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」は、出荷時のvBIOSで最初からResize-BARに対応しています。 対応するプラットフォーム(CPU&MB)において、マザーボードBIOS設定からResize-BARを有効にし、最新ドライバをインストールすれば機能を有効化できます。
AMD Radeon RX 6700 XT スペック一覧 | ||||
RX 6700 XT |
RX 6800 |
RX 5700 XT | RX 5700 |
|
GPUコア | Navi 22 |
Navi 22 |
Navi | Navi |
製造プロセス | 7nm FinFET | 7nm FinFET | 7nm FinFET | 7nm FinFET |
Compute Unit数 |
40 |
60 |
40 | 36 |
シェーダー数 | 2560 |
3840 |
2560 | 2304 |
ベースクロック | 2321 MHz | - MHz | 1605 MHz | 1465 MHz |
ゲームクロック | 2424 MHz | 1815 MHz | 1755 MHz | 1625 MHz |
ブーストクロック | 2581 MHz | 2105 MHz | 1905 MHz | 1725 MHz |
単精度性能 | 13.21 TFLOPs | 16.17 TFLOPs | 9.75 TFLOPs | 7.95 TFLOPs |
Infinity Cache | 96 MB | 128 MB | - | - |
VRAM | 12 GB GDDR6 | 16 GB GDDR6 | 8 GB GDDR6 | 8 GB GDDR6 |
バス幅 | 192-bit | 256-bit | 256-bit | 256-bit |
メモリクロック | 16.0 GHz | 16.0 GHz | 14.0 GHz | 14.0 GHz |
メモリ帯域 | 384 GB/s | 512 GB/s | 448 GB/s | 448 GB/s |
補助電源 | 8PIN+6PIN~ | 8PINx2~ | 8PIN+6PIN~ | 8PIN+6PIN~ |
TBP | 230W |
250W | 225W | 180W |
発売日 | 2021年3月18日 | 2020年11月 | 2019年7月 | 2019年7月 |
希望小売価格 | 479ドル~ | 579ドル~ | 399ドル~ | 349ドル~ |
Radeon設定によるRX 6700 XTのチューニングについて
Radeon RX 6000シリーズでも、デスクトップ右クリックメニューからアクセスできるRadeon設定の「パフォーマンスタブ - チューニング」の順にアクセスすると、前世代同様にコアクロック・メモリクロックやファン制御に関する設定が表示されます。チューニングを開くとまず、GPU動作プロファイルの選択が表示されます。なお6800XT/6900XTの上位モデルと違い、「Radeon RX 6700 XT」では自動OCによって性能が向上するレイジモードは用意されていません。
チューニングコントロールで「手動」を選択すると、大別してGPUコアクロック、VRAMコアクロック、ファン制御、電力制限の4種類の設定が表示されます。
GPUチューニングの横にあるスライドスイッチをON(赤色バー表示)に切り替えると最小周波数、最大周波数、GPUコア電圧(Voltage)の3種類の設定スライダーが表示されます。
高度な制御のスライドスイッチをONにすると設定値が%単位からMHzやmVといった実際の物理単位に変わります。「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」では最大周波数を2950MHzまで引き上げることが可能です。
Radeon VIIやRX 5000シリーズでは低電圧化耐性の指標になったもののRX 6000シリーズではどうなのかわかりませんが、とりあえず今回管理人が入手した個体については標準の最大周波数が2619MHz、GPUコア電圧が1200mVでした。
VRAMチューニングの横にあるスライドスイッチをON(赤色バー表示)に切り替えるとVRAM周波数(最大周波数)の設定スライダーが表示されます。
高度な制御のスライドスイッチをONにすると設定値が%単位からMHzの物理単位に変わります。「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」では定格の2000MHzから最大周波数を2150MHzまで引き上げることが可能です。
電源チューニングの横にあるスライドスイッチをON(赤色バー表示)に切り替えると電力制限の設定スライダーが表示されます。
電力制限の設定は各GPUの標準GPUコア電力制限に対するパーセンテージのオフセットですが、「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」では203Wを基準にして最大で+9%まで電力制限の引き上げが可能です。
ファンチューニングの横にあるスライドスイッチをON(赤色バー表示)に切り替えると、ゼロRPM(セミファンレス機能)の切り替えスイッチ、最大ファン速度の設定スライダーが表示されます。
また高度な制御のスライドスイッチをONにするとファン制御カーブの手動設定が表示されます。Radeon RX 6000シリーズにはGPU温度とジャンクション温度(複数あるGPUダイ上の温度センサーの最大値)の2種類の温度があり、ファン制御カーブはジャンクション温度を参照するようです。
温度とファン速度について5つの頂点を任意に指定してファン速度を制御できます。上述のセミファンレス機能との併用や、セミファンレス機能の無効化も可能です。
新アーキテクチャRDNA2で特に重要な2つの特長
AMD Radeon RX 6000に採用されている新アーキテクチャ「RDNA2」について、様々な特長が公式に発表されていますが、エンドユーザーが特に押さえておくべきポイントはVRAMフルアクセス機能「AMD Smart Access Memory」と、レイトレーシング表現対応(ハードウェアアクセラレーター搭載)の2点です。Infinity Cacheを始め、レビューや解説記事としてRadeon RX 6000シリーズやそのアーキテクチャであるRDNA2について掘り下げられるポイントは非常に多いのですが、実性能と価格に加えて消費者目線で最低限抑えておくべきポイントを挙げるとすればこの2つになると思います。
まず1つ目の大きな特徴は「AMD Smart Access Memory」です。Radeon RX 6000シリーズを同社の次世代CPUであるRyzen 5000シリーズと組み合わせることで使用可能な(AMD公式にサポートされる)ビデオメモリアクセスを改善し性能を向上させる機能です。
Radeon RX 6000シリーズの登場当初はSmart Access Memoryの対応プラットフォームはRyzen 5000シリーズ&500シリーズチップセットの組み合わせに限定されていましたが、RX 6700 XTの登場と同時にRyzen 3000シリーズCPUの正式サポートも公表されたので、性能的には十分でRyzen 5000シリーズよりもコスパに優れるRyzen 3000シリーズとRX 6700 XTの組み合わせは非常にオススメです。
従来のプラットフォームでは32bit命令の名残でCPUとグラフィックボードVRAM間では最大でも256MB単位でしかデータのやり取りができませんでした。
AMD Smart Access Memoryでは10GBを超える大容量VRAMに対してCPUからサイズ制限なく一度にフルアクセスが可能になり、なおかつ第3世代Ryzen&X570でAMDがいち早くサポートを始めたPCIE4.0の従来比2倍な高速帯域を用いることで、VRAMアクセスによって生じるボトルネックが解消されます。
ハイエンドGPUではVRAM容量が10GBを超えるのが当たり前になったので、CPU-VRAM間でフルアクセス機能を実現するためにはより高速な帯域(PCIE4.0対応)が必要になります。1年前、第3世代Ryzen&X570など早期にPCIE4.0の普及を目指したのは、 同機能でCPU・MB・GPUのプラットフォーム単位で優位性を示すための布石だった、と考えるといろいろと納得がいきます。(そうでないとPCIE4.0アーリーアダプターな某SSDはIOベンチ以外に魅力がなく、微妙過ぎました…)
AMD公式のベンチマークによると「AMD Smart Access Memory」を使用することで最大10%程度もパフォーマンスが改善するとのこと。
AMD Smart Access Memoryの名前の方が有名ですが、実のところ、これはPCIE規格で策定されている「Re-Size BAR (Base Address Register)」と同等の機能です。【参考資料】
すでに一部のIntel Z490マザーボードにおいてベータBIOSという形ですが、Re-Size BARを有効にできるBIOSが一部メーカーから配信されており、またIntelの次世代CPUである第11世代Rocket Lake-SではRe-Size BARの正式サポートが公表されています。
またAMDと競合するGPUメーカーのNVIDIAも2021年発売のRTX 3060を皮切りに、同社最新GPUであるGeForce RTX 30シリーズ(Ampere世代)においてRe-Size BARのサポートを順次開始していくことが正式に発表されています。
CPUとGPUをコンシューマー向けに展開しているAMDだからこそいち早く、Re-Size BARの土壌としてPCIE4.0を普及させ、次世代GPUのRadeon RX 6000シリーズでサポートさせることができた、こと自体は評価に値すると言って間違いありません。
一方でAMD Smart Access Memory = Re-Size BARなので、「VRAMフルアクセス機能Re-Size BARによる性能向上は”将来的には”AMDオンリープラットフォームに限定されるユニークなアドバンテージではない」、その点は留意しておいてください。
次に2つ目の大きな特徴がレイトレーシング表現への対応です。Radeon RX 6000シリーズが採用するRDNA2アーキテクチャでは一般的にコア数としてカウントされるシェーダーコアをひとまとめにしたCU(Compute Unite)に対して1基のレイトレーシング処理支援ハードウェア「Ray Accelerator」を搭載しています。Ray Acceleratorはレイトレーシング処理においてCPUによる演算よりも10倍も高速とのこと。
余談ですが、以下のような事情もあって当サイトでは”レイトレーシング表現”と呼んでいます。
レイトレーシングというのはそもそもレンダリング手法の1つであって、現在主流なレンダリング手法のラスタライゼーション(ラスタライズ)と、ある種の対になる言葉です。
PCゲームにおいては負荷的な問題で全てをレイトレーシングでレンダリングするのではなく、「ラスタライゼーションをベースにレイトレーシングはアクセント」という形で併用するのが主流です。
またPCゲームにおいてレイトレーシングというとDirectX12がサポートするDXR(DirectX Raytracing)が有名、というか現状でレイトレーシングをサポートするPCゲームはほぼコレですが、Vulkanなどその他のAPIもレイトレーシングを続々とサポートし始めています。
下はNVIDIAによるデモですが、レイトレーシング表現では、照明(エリアライト)や太陽光(グローバルイルミネーション)の影響を厳密に再現し、光の反射やガラス面の透過なども現実に即して忠実に描写されます。レイトレーシングを採用したわかりやすい例としては鏡に映る反射など、視覚(視点から見た)の外にある物体もリアルに描画することができます。
またRadeon RX 6800 XTなどのハイエンドモデルでは「FidelityFX Super Resolution」と呼ばれる超解像機能を併用することでレイトレーシング表現と4K解像度の組み合わせにも対応します。
PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XTのゲーム性能
「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」の性能を測るべく各種ベンチマークを実行しました。性能比較には「GeForce RTX 3070」、「GeForce RTX 3060 Ti」、「GeForce RTX 2080 SUPER」、「GeForce RTX 2070 SUPER」、「GeForce RTX 3060」、「Radeon RX 5700 XT」を使用しています。(特定のモデルや型番を指名していない場合、各GPUメーカーのリファレンスモデルもしくはリファレンス仕様のオリファンモデルです)
「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」」にはBIOSスイッチで2種類のモードを切り替えられますが、今回の検証ではOCモードで測定しました。またRadeon Settingから選択可能なソフトウェア上の動作モードについては標準モードのまま変更していません。
「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」を含めた各グラフィックボードについて、3DMarkで現在主流なDirectX11のベンチマーク「FireStrike」による比較になります。
FireStrike | Extreme | Ultra | |
RX 6700 XT PowerColor Red Devil |
35339 | 17117 | 8406 |
RTX 3070 | 33680 | 16625 | 8470 |
RTX 3060 Ti | 29369 | 14298 | 7200 |
RTX 2080 SUPER FE |
29145 | 13866 | 6800 |
RTX 2070 SUPER FE |
26161 | 12475 | 6097 |
RTX 3060 |
21970 | 10337 | 5054 |
RX 5700 XT | 27300 | 12947 | 6553 |
「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」を含めた各グラフィックボードについて、3DMarkのDirectX12ベンチマーク「TimeSpy」、およびレイトレーシング対応ベンチマーク「Port Royal」による性能比較となります。
TimeSpy | Extreme | Port Royal |
|
RX 6700 XT PowerColor Red Devil |
12095 | 5503 | 5816 |
RTX 3070 | 13644 | 6746 | 8141 |
RTX 3060 Ti | 11668 | 5679 | 6861 |
RTX 2080 SUPER FE |
11696 | 5412 | 7032 |
RTX 2070 SUPER FE | 10232 | 4788 | 6095 |
RTX 3060 | 8755 | 4126 | 5105 |
RX 5700 XT | 9362 | 4189 | - |
「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」を含めた各グラフィックボードについて、近年普及しつつあるHTC VIVEやOculus RiftなどVR HMDを使用したVRゲームに関する性能を測定する最新ベンチマーク「VRMark」による性能比較となります。
Orange Room |
Cyan Room |
Blue Room |
|
RX 6700 XT PowerColor Red Devil |
14485 | 12879 | 3374 |
RTX 3070 | 16335 | 13002 | 4086 |
RTX 3060 Ti | 15668 | 10955 | 3508 |
RTX 2080 SUPER FE |
15532 | 11080 | 3755 |
RTX 2070 SUPER FE | 15010 | 9861 | 3316 |
RTX 3060 | 11861 | 9190 | 2604 |
RX 5700 XT |
13796 | 9289 | 2546 |
続いて近年の最新PCゲームを実際に用いたベンチマークになります。同一のグラフィック設定で同一のシーンについてフルHD(1920×1080)とWQHD(2560×1440)の2種類の解像度で平均FPSを比較しました。
ベンチマーク測定を行ったゲームタイトルは、Anthem(ウルトラ設定プリセット)、Assassin's Creed Odyssey(最高設定プリセット)、Battlefield V(最高設定プリセット, DirectX12)、CONTROL(高設定プリセット, DirectX12, AMD製GPUはDirectX11)、DEATH STRANDING(最高設定プリセット, TAA)、The Division 2(ウルトラ設定プリセット, DirectX11)、Final Fantasy XV(最高設定プリセット, NVIDIA GameWorksはVXAOを除き有効)、Gears 5(最高設定プリセット)、Ghost Recon Breakpoint(ウルトラ設定プリセット)、Horizon Zero Dawn(最高画質設定プリセット)、Marvel's Avengers(最高設定プリセット, TAA)、Metro Exodus(エクストリーム設定プリセット, DirectX12)、MONSTER HUNTER: WORLD(最高設定プリセット, DirectX12)、Shadow of the Tomb Raider(最高設定プリセット, TAA, DirectX12)、Middle-Earth: Shadow of War(ウルトラ設定プリセット)以上の15タイトルです。
Anthem(ウルトラ設定プリセット)に関する「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Assassin's Creed Odyssey(最高設定プリセット)に関する「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Battlefield V(最高設定プリセット, DirectX12)に関する「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
CONTROL(高設定プリセット, DirectX12, AMD製GPUはDirectX11)に関する「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
DEATH STRANDING(最高設定プリセット, TAA)に関する「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
The Division 2(ウルトラ設定プリセット, DirectX11)に関する「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Final Fantasy XV(最高設定プリセット、NVIDIA GameWorksはVXAOを除き有効)に関する「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Gears 5(最高設定プリセット)に関する「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Ghost Recon Breakpoint(ウルトラ設定プリセット)に関する「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Horizon Zero Dawn(最高設定プリセット)に関する「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Marvel's Avengers(最高画質設定プリセット, TAA)に関する「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Metro Exodus(エクストリーム設定プリセット, DirectX12)に関する「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
MONSTER HUNTER: WORLD(最高設定プリセット, DirectX12)に関する「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Shadow of the Tomb Raider(最高設定プリセット, TAA, DirectX12)に関する「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Middle-Earth: Shadow of War(ウルトラ設定プリセット)に関する「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XTなど7種類のGPUについて実ゲーム性能の比率の平均を出してみたところ、PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XTは、初代RDNAアーキテクチャを採用する最上位モデルにして、同ナンバリングのRadeon RX 5700 XTと比較して30%程度の性能向上を遂げています。前世代でRTX 2070 SUPER以下を使用していたNVIDIA製GPUユーザーが選ぶアップグレード対象の1つとして通用する性能です。
『WQHD解像度PCゲーミングのスイートスポットなGPU』とAMDが訴求する通り、最新高画質タイトルのWQHD解像度/最高グラフィック設定なPCゲーミングや、e-SprotsタイトルのWQHD/144Hz+のPCゲーミングに最適なグラフィックボードです。
なお、1つ上のモデルであるRadeon RX 6800と比較するとCU数は40:60なので性能差は大きいかと思いきや、CU規模に対するTDPが高く、実動コアクロックは2.5:2.2で性能比は単純計算で30%程度、実際のベンチマーク比較の結果を見てもWQHD解像度において平均性能の差は20%程度と、「Radeon RX 6700 XT」が善戦したのは、良い意味で少々予想外でした。
一方で「Radeon RX 6700 XT」のグラフィック性能を最新NVIDIA製GPUのRTX 30シリーズと比較すると、当サイトで行ったベンチマーク測定による平均性能ではRTX 3070とRTX 3060 Tiの中間、RTX 3060 Ti寄りという具合でした。
AMD正式発表時の性能比較スライドでは、RTX 3060 Tiを上回り、RTX 3070に競合する性能とアピールされていましたが、やはりRadeon RX 6000シリーズに優位なタイトルを集めていたようです。(得手不得手があるので抜粋タイトル次第という言い方もできますが)
個別に見ていくとAMDが訴求する通りRTX 3070と同等以上の性能を発揮するタイトルもあれば、平均性能的に近いRTX 3060 Tiを下回るケースもあり、RTX 30シリーズに対するRX 6700 XTの性能スケーリングはやや複雑、ゲームタイトルに依るところが大きいというのが実状です。
各サイトレビューにおいてベンチマーク比較で抜粋されるタイトルによってRX 6700 XTの性能に対する印象は大きく変わるので注意が必要なところですが、『RX 6700 XTはRTX 3060 Tiよりも概ね5%程度高性能』というのがざっくりとした管理人の感想です。
性能スケーリングが複雑になる原因について、ゲームタイトルがAMD製GPUとNVIDIA製GPUに対してどれくらい最適化されているかというのも影響しているのですが、加えて、RDNA2アーキテクチャの高性能を支える大容量キャッシュInfinity Cacheという構造が大きく影響しているように思います。上位モデルでは128MBを超えるキャッシュの必要性が感じられたように、WQHDがスイートスポットなRX 6700 XTの場合は128MBのキャッシュが必要だったように思います。
シンプルに高速なVRAM帯域を実現するNVIDIAのアプローチに対して、キャッシュを組み合わせるAMDのアプローチはまだ万能というわけではなさそうです。
PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XTの温度・消費電力・ファンノイズ
「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」の負荷時のGPU温度やファンノイズや消費電力についてチェックしていきます。「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」にはRadeon設定から選択が可能なコアクロックや電力制限が変化する複数のモードが用意されていますが、標準モードで測定しました。
「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」のGPU温度とファンノイズの検証負荷としては約20分間に渡たり連続してGPUに100%近い負荷をかける3DMark TimeSpy Stress Testを使用しています。
「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」のテスト終盤におけるGPU温度は最大61度、ファン回転数もファン制御の設計上、一時的に高くなりますが最終的には1000RPM程度に収まっています。TGP230WのアッパーミドルGPUとはいえ、GPU温度とファン速度は共に低く、抜群の冷え具合です。
静音性重視のSilentモードに切り替えるとGPU温度は最大67度に上がりますが(それでも十分に低い)、ファン速度は800RPM程度に収まります。
GPUに搭載された複数の温度センサーのうち、最大温度を示すジャンクション温度の推移は下のようになりました。Radeon RX 6000シリーズはジャンクション温度をファン制御のソース温度とし、負荷がかかるといったん上限速度まで上昇、徐々に収束していく方式が採用されていることが多いですが、「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」でも一度、1200RPM程度に達してから収束していきます。ジャンクション温度が十分に低いので、その後波打つような変動もなく、OCモードなら1000RPM前後、Silentモードなら800RPM前後で安定します。
また「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」はアイドル時にファンが停止するセミファンレス機能に対応しており、ジャンクション温度を制御ソースとして始動閾値は60度前後、停止閾値は50度前後でヒステリシスも採用されています。製品によっては回転数が上下してふらつくことの多い始動や停止の直前も、閾値を跨いだ瞬間にピタッと切り替わります。
「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」ではGDDR6メモリもモニタリングが可能であり、ストレステスト中の推移は下のようになりました。ファン速度が低速になるSilentモードでもVRAMはしっかり冷えています。
「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」とRX 6700 XTリファレンスモデルを比較してみると、「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」の冷却ファンは大幅に低速ですが、GPU温度は20度程度、VRAM温度は30度と、リファレンスモデルよりも圧倒的に冷えています。
GPUコアクロックについて、「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」はゲームクロック2514MHz、最大ブーストクロック2622MHzへファクトリーOCが施されていますが、負荷テスト中の実動平均は2601MHzでした。
スペック上はファクトリーOCが施されていますが、実動コアクロックがリファレンスモデルと同等、公式仕様が近いMSI Radeon RX 6700 XT GAMING X 12Gよりも100MHz以上低い、というのは意外でした。
実際のゲーム性能的には大差ないのですが、やはり同社ハイエンドRed Devilの製品なので、OCモードでは2600MHz前後の実動コアクロックを実現して欲しかったところです。
【備考】AMD、NVIDIAともに最新GPUでは実動コアクロックはGPUコア個体毎に異なる内部設定のV-Fカーブが支配的になっており、加えて負荷中のGPU温度も大きく影響します。ファクトリーOCが施されたオリファンモデルの公式仕様値として公表されているブーストクロックはOC耐性選別の1つの指標にはなると思いますが、実動コアクロックの優劣においてあまりあてになりません。
また実用条件に近い冷却性能の検証として、実際にPCケースへ「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」を組み込み、Time Spy Extreme グラフィックテスト1を1時間に渡ってループさせてGPU温度やファン回転数がどうなるかを確認してみました。
検証機材のPCケースには「Cooler Master MASTERCASE MAKER 5t」を使用しています。CPUクーラーは120サイズ簡易水冷でラジエーターを天面前方に設置、またPCケースのフロントに吸気ファンとして3基とリアに排気ファンとして1基の140mm角ケースファンをそれぞれ設置し、ファン回転数は1000RPMに固定しています。
PCケースのエアフローファンには空冷ヒートシンク、水冷ラジエーター、PCケースエアフローの全ての用途で一般的な140mmサイズファンを上回る性能を発揮する「Thermaltake TOUGHFAN 14」を使用しています。140mmサイズファン選びに迷ったらこれを買っておけば問題ない、高性能かつ高静音性なファンです。
・「Thermaltake TOUGHFAN 14」をレビュー。最強140mmファンの登場か!?
PCケースに入れた状態で長時間負荷をかけると「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」のGPU温度は最大66度、ジャンクション温度は最大82度に達してベンチ板測定時よりも上がりましたが、ファン回転数は1000RPM程度のままでした。
1000RPMという低速度を見ての通り、性能重視のOCモードであってもファンチューニングは超静音重視になっているので、PCケース組み込み時でもファンノイズは非常に静か、というかPCケースファンの音に隠れて聞き分けるのが難しいレベルです。
「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」のGPUクーラーは内排気ファンということもありPCケースの吸排気を最適化しないと冷却効率が下がるので、フロントx3/リアx1で140mmファンを設置して1000RPMで回していますが、さすがに200Wを超えるTGPなので、ベンチ板での比較的に理想な環境のままとはいきませんでした。実際にPCケースへ組み込むユーザーはPCケースの吸排気にも注意してみてください。
加えて1時間のストレステスト終盤にサーモグラフィカメラ搭載スマートフォン「CAT S62 PRO」を使用してゲーム負荷時のグラフィックボード上の各所の温度をチェックしました。
「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」は、バックプレート表面や、背面や側面の隙間から確認できるPCB基板上のVRM電源回路やPCIE補助電源コネクタの付近の温度がホットスポットの最大値でも70度以下に収まっていましたGPUコアだけでなく基板全体において十分に低温なので、安心して長期運用ができると思います。
「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」を含めていくつかのグラフィックボードについてサウンドレベルメーターを利用してゲーム負荷時のノイズレベルを測定・比較しました。
検証機材はベンチ台の上に平置きにしているので、サウンドレベルメーターをスタンドで垂直上方向に50cm程度離して騒音値を測定しています。
この測定方法において電源OFF時の騒音値は30dB未満です。目安として騒音値が35dBを超えたあたりからファンノイズがはっきりと聞こえるようになりますが、35~38dB以下であればPCケースに入れてしまえばファンノイズが気になることはそうそうないと思います。40dB前後になるとベンチ台上で煩く感じ始め、45dBを超えるとヘッドホンをしていてもはっきり聞き取れるくらいになります。
A特性で測定しているのである程度は騒音値にも反映されていますが、同じ騒音値でも周波数(ファン回転数)が高いほど体感としては大きな音に感じやすく、また不快に感じたり感じなかったりは音の性質(細かい乱高下の有無や軸ブレ)にもよるので注意してください。
ノイズレベルの測定結果は次のようになっています。
「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」のファンノイズは、性能重視のOCモードでPCケースに組み込んだ状態のファン速度であっても、ノイズレベルが32dB以下に収まり抜群の静音性を発揮しています。PCケースに組み込んでしまえばファンノイズを煩く感じることはないはずです。
PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XTの消費電力と瞬間的な最大電源負荷を測定しました。
測定負荷には上で行った温度検証と同様に3DMark TimeSpy ストレステストを使用しています。テスト全体から1秒間隔でモニタリングを行い、平均値を”消費電力”、最大値を”瞬間的な最大電源負荷”とします。なお電源ユニットに対する実際の最大瞬間負荷は測定値より50~100W上回る場合があるので、電源ユニットの電源容量選択の参考にする場合は注意してください。
消費電力の測定は電源ユニット「Corsair HX1200i」のCorsair Linkによる電力ログ機能を用いてコンセントからの入力ではなく変換ロスを差し引いたシステムへの出力電力をチェックしています。また電力測定の際は上記の主電源ユニットに加えて、CPUへの電力供給を行うEPS端子へ接続するために別の副電源ユニットを使用しています。
この方法であれば、CPU(後述のiGPUも)に負荷をかけても、CPUによる消費電力の変動はメイン電源ユニットCorsair HX 1200iの測定値には影響しません。しかしながら、測定値にはまだATX24PIN経由で供給されるマザーボードやDDR4メモリの電力が含まれるので、iGPUを使用した時の3DMark TimeSpy ストレステスト中の消費電力と最大電源負荷を同様に測定し、各種グラフィックボード使用時と差分を取る形でグラフィックボード単体の消費電力と最大電源負荷を算出します。
PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XTの消費電力は220W、最大瞬間負荷は255Wでした。
Radeon RX 6700 XTは公式仕様でグラフィックボード全体の消費電力の指標値が230Wと公表されており、GPU単体の電力制限は186Wに設定されています。
「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」のGPUコア単体の電力制限はファクトリーOCによって203Wへ引き上げられているので、TGP250W相当の設定でファクトリーOCされているものと思われますが、実際には消費電力はリファレンスモデル相当、一方でコアクロックを見ての通り性能もリファレンスモデル相当なので評価が複雑に。
「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」はファクトリーOCが施されたモデルなので、傾向が分かり難くなるため、RX 6700 XTのリファレンスモデルを参考に評価すると以下のようになります。
Radeon RX 6700 XTは、前世代同ナンバリングのRX 5700 XTと比較して30%も性能を向上させながら、GPU消費電力はほぼ同等、5%程度の増加に収まっており、新ゲーミングアーキテクチャRDNA2のワットパフォーマンスの高さを再確認できる結果です。
PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT レビューまとめ
最後に「PowerColor Red Devil AMD Radeon RX 6700XT 12GB GDDR6(型番:AXRX 6700XT 12GBD6-3DHE/OC)」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- フルHD/240HzからWQHD/144Hz+、さらに4K/60FPSまで幅広いPCゲーミングにマッチ
- RX 5700 XTを実ゲームで30%程度も上回るグラフィック性能
- 競合NVIDIAの上位モデルRTX 2080 SUPERよりも高速
- NVIDIAの最新GPUでは、RTX 3060 Tiよりも5%程度高速
- AMD優位なタイトルならRTX 3070と同等以上の性能も発揮できる
- 499ドルからなので奮発すれば手を出せるアッパーミドルGPU
- RX 6700 XTを騒音値32dB以下で冷やす非常に優秀な静音性
- RX 6700 XTオリファンモデルの中でも入手性が高い
- ハイエンドモデルRed Devilながら税込み8.7万円で安価なRX 6700 XT(2021年7月)
- 全長320mmと非常に長いのでPCケースとの干渉に注意
- 補助電源も含めてPCIEブラケットよりも25mm背が高いのでサイドパネルとの干渉に注意
- 実動コアクロックがリファレンス相当で、ファクトリーOCの効果が微妙
- レイトレーシング表現を支援する専用ハードウェアの性能ではRTX 30シリーズに劣る
AMD Radeon RX 6700 XTは、初代RDNAアーキテクチャを採用する最上位モデルにして、同ナンバリングのRadeon RX 5700 XTと比較して30%以上の性能向上を遂げています。
競合NVIDIAの前世代GPUでは上位モデルRTX 2080 SUPERをも上回る性能を発揮しており、RTX 2070 SUPER以下の旧世代GPUを使用しているNVIDIA製GPUユーザーが選ぶアップグレード対象の1つとして通用する性能です。
『WQHD解像度PCゲーミングのスイートスポットなGPU』とAMDが訴求する通り、最新高画質タイトルのWQHD解像度/最高グラフィック設定なPCゲーミングや、e-SprotsタイトルのWQHD/144Hz+のPCゲーミングに最適なグラフィックボードです。GPU性能に対するスイートスポットはWQHD解像度PCゲーミングですが、フルHD/240FPSのスーパーハイフレームレート、比較的軽いゲームなら4K/60FPSのラグジュアリーな超高画質など幅広いPCゲーマー層にマッチします。
最新世代同士で比較した場合、AMDの公式発表ではRTX 3060 Ti以上、RTX 3070が競合とのことでしたが、比較用に抜粋するゲームタイトル次第ではあるものの、当サイトを含め一般レビューサイトではRTX 3070とRTX 3060 Tiの中間で、RTX 3060 Ti寄りという評価が多いように思います。
「Radeon RX 6700 XT」の北米希望小売価格は479ドル~となっており、発売当時、RTX 3070が499ドル~、RTX 3060 Tiが399ドル~だったので、単純に考えるとコスパが悪く見えるのですが、2021年初頭のGPU枯渇状況を踏まえた値付けとも見られなくはないので、価格面の評価は難しいところです。
Radeon RX 6700 XTは2021年現在、手ごろな価格で普及しつつあるWQHD/144Hz+のIPS液晶ゲーミングモニタと組み合わせて高画質・ハイフレームレートなPCゲーミング入門に最適なグラフィックボードです。
WQHD/144HzのIPS液晶ゲーミングモニタは色々と販売されていますが、リモコン操作&USB Type-C対応でマルチメディアに最適な「BenQ EX2780Q」、ELMB Syncやスナイパーなど独自のゲーミング機能が豊富な「ASUS TUF Gaming VG27AQ」、同スペック製品の中でも特に高発色・高応答速度な「LG 27GL850-B」は当サイトでもレビューを公開していてオススメなモデルです。
・WQHD解像度/144Hz+ゲーミングモニタのレビュー記事一覧へ
その他にもバトルロイヤル系ゲームに最適な240Hzオーバーの超高速ゲーミングモニタと組み合わせてガチで勝利を狙うゲーマーにもフルHDで高FPSを稼げるRadeon RX 6700 XTはオススメです。
・240Hz+の超ハイリフレッシュレートなゲーミングモニタのレビュー記事一覧へ
「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」については当サイトの測定環境においてノイズレベル32dB以下という抜群の冷却性能と静音性を発揮しました。PCケースに組み込んでしまえば、GPUクーラーのファンノイズを聞き分けるのも難しいレベルの静かさです。
ただファン制御チューニングで無理やり低速にしているのではなく、800~1000RPMという非常に低いファン速度でも、GPU温度に加えてVRAMチップやVRM電源回路を含めたグラフィックボード全体の温度が非常に低いので安心して運用できます。全長320mmかつ3スロット占有で巨大なグラフィックボードですがPCケースに収まるなら買って間違いのないモデルです。
RX 6700 XTグラフィックボードは発売当初、実売価格も7万円台もあれば、10万円越えのモデルもあり、幅広いのですが、7~8万円のモデルはすぐに売り切れてしまい、市場在庫で見かけるのは10万円越えのモデルばかりという状態でした。
2021年7月現在は供給もそこそこ安定しており、中でも今回レビューした「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」は流通数も多く、一部のショップでは8.7万円程度というRX 6700 XTオリファンモデルの中でも最安値クラスの価格で販売されています。検証結果の通り静音性も抜群なので、かなりコストパフォーマンスに優れたモデルだと思います。
以上、「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT」のレビューでした。
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3スロット占有3連ファンGPUクーラーを搭載し、ファクトリーOCが施されたハイエンドモデル「PowerColor Red Devil Radeon RX 6700 XT 12GB GDDR6」をレビュー。
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) July 8, 2021
前世代RX 5700 XTや競合最新のRTX 3070やRTX 3060 Tiと実ゲーム性能をベンチマークで徹底比較https://t.co/IfvoPtN6Ih pic.twitter.com/TfpTxJnkb1
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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