スポンサードリンク
NVMe M.2 SSDを4台搭載可能で2基の2.5Gb LANによる高速通信ネットワークストレージが構築可能なコンパクトNASブック「QNAP TBS-464」をレビューしていきます。
製品公式ページ:https://www.qnap.com/ja-jp/product/tbs-464
QNAP TBS-464 レビュー目次
1.QNAP TBS-464の外観・付属品
2.QNAP TBS-464の内部構造
3.QNAP TBS-464の検証機材と基本仕様
4.QNAP TBS-464の初期設定
5.QNAP TBS-464でネットワークストレージを作る方法
・ボリュームやRAIDを作る
・ボリュームに共有フォルダを作る
・共有フォルダにドライブパスを通す
5.HDIMIビデオ出力とHybridDesk Stationについて
6.QNAP TBS-464の性能
7.QNAP TBS-464のレビューまとめ
【機材協力:QNAP】
QNAP TBS-464の外観・付属品
まず最初に「QNAP TBS-464」の外観や付属品について簡単にチェックしておきます。「QNAP TBS-464」は黒字で簡単にメーカーロゴが刻印され、製品シールが貼り付けられた茶箱パッケージによって梱包されており、製品本体や付属品は同じく茶色の段ボール紙でできたスペーサーに収められています。
「QNAP TBS-464」の付属品は、LANケーブル1本、ACアダプタ&ACケーブル、M.2 SSDヒートシンク4個セット&サーマルパッドセット、マニュアルとなっています。
続いて「QNAP TBS-464」の本体をチェックしていきます。
「QNAP TBS-464」は黒色の側面に、黒よりなブラウンの天板という外装カラーが採用されています。前モデルQNAP TBS-453DXはシャンパンゴールドの側面とホワイトの天板だったので印象がガラッと変わりました。
「QNAP TBS-464」の天板中央にはゴールドでQNAPのロゴが描かれています。
「QNAP TBS-464」はNAS Bookと呼ばれるだけあって、寸法は横幅230mm×奥行165mm×厚み30mmと非常にコンパクトで、コミックの単行本よりも若干大きい程度です。3.5インチHDDを搭載する一般的なNASと比較すると数分の1サイズとなっています。
コンパクトなだけあってACアダプタを含めても重量は1kg程度なので、「QNAP TBS-464」は持ち運んで、共同作業を行うようなシーンにも適したNASです。
底面には四隅にゴム足が設置されています。吸排気用の点スリットも開いています。
「QNAP TBS-464」には冷却ファンが内蔵されており、側面と底面のエアスリットから吸排気を行う構造です。
「QNAP TBS-464」の前面を見ると、右端に電源スイッチ、中央にはM.2 SSD 1~4のアクセスLED、左端には2基のUSB3.0 Type-A端子、USBワンタッチコピーボタンが設置されています。
「QNAP TBS-464」の背面には右から順に、DC端子、HDMI2.0ビデオ出力×2、2.5Gb LAN端子×2、USB2.0 Type-A端子×2、リセットスイッチが設置されています。
「QNAP TBS-464」はネットワーク接続用のLANポートとして、一般的な1Gb LANの2.5倍高速な通信に対応した2.5Gb LANを2基搭載しています。
2.5Gb LANのコントローラーには、ここ数年の自作PC向けマザーボードでも実績のある、Realtek RTL8156Bが採用されていました。
前機種TBS-453DXが10Gb LAN搭載だったので、「QNAP TBS-464」はSoCも高性能化し、何より折角NVMe SSDに対応したのに、LANポートについてはスペックダウン感は否めず、少々残念です。
「QNAP TBS-464」には背面左端に2基、電源ボタンの右側に1基で、計3基のUSB2.0 Type-A端子が搭載されています。「QNAP TBS-464」はメディアプレイヤー的な使い方も想定された機器なので、これらはどちらかというとマウス・キーボードの接続用USBポートです。
「QNAP TBS-464」の正面左側のUSB端子は5GbpsのUSB3.0に対応しており、USBストレージを接続しておくと、隣に実装されたUSBワンタッチコピーボタンによって簡単に同期やバックアップができます。
なおUSBワンタッチコピーボタンの利用には、QTS上で「Hybrid Backup Sync」というアプリのインストールが必要になります。
ググればQNAP公式に出てきますが地味に案内不足な部分でマニュアルにも明記しておいてほしいところ。
QNAP TBS-464の内部構造
続いて「QNAP TBS-464」の内部構造についてチェックしていきます。「QNAP TBS-464」の内部にアクセスするには底板を外します。底板はゴム足の裏にあるネジで固定されています。ネジ頭が太めのマイナスになっており、ドライバーがなくても何とかなる反面、プラスドライバーが使えないのが少々扱いづらく感じました。
「QNAP TBS-464」の底板を外すとすぐに内部にアクセスできます。
「QNAP TBS-464」の前方を奥(上)に向けて、左側にSSDを設置する4基のM.2スロット×4が設置されています。
QNAP TBS-464にはNASの処理性能に直結するSoC(CPU&iGPU)として、Intelの省電力CPUである「Celeron N5105 (N5095)」が採用されています。
Celeron N5105は前モデルTBS-453DXに搭載されていたCeleron J4105と同じく4コア4スレッドですが、動作クロックはブースト2.5GHzからブースト2.9GHzに高速化を果たしています。さらにiGPUについても実行ユニット数が12から24に倍増し、動作クロックも750MHzから800MHzへと高速化しています。(N5095は実行ユニット数16で750MHz)
QNAP TBS-464のSoCとして「Celeron N5105」と「Celeron N5095」の2種類の名前が挙がっていますが、今回入手したサンプル機は「Celeron N5105」を搭載していました。
前モデルTBS-453DXではSODIMM規格のLPDDR3メモリでメモリの増設も可能でしたが、「QNAP TBS-464」は8GB容量のメモリをBGA実装済みとなっており、システムメモリの増設には非対応です。
「QNAP TBS-464」にはSoCやSSDの冷却のため小径のブロアー型冷却ファンが搭載されています。
今回検証した限りにおいては、近寄ると小径ファンのモスキート音的な高周波が鳴っているのに気付くくらいで、50cm以上も離れるとファンノイズはほぼ聞こえることもなく、うるさく感じることはありませんでした。ファン制御についてはQTSコントロールパネルから設定が可能です。
「QNAP TBS-464」はNVMe接続のM.2 SSDを4枚内蔵できます。
NASと言えば3.5インチHDDを使用するものが一般的ですが、「QNAP TBS-464」には内蔵ストレージ用にM.2 2280フォームファクタのNVMe接続SSDに対応したM.2スロットが4基設置されています。
各M.2スロットのPCIE帯域はPCIE3.0x2なので、アクセススピードはこの帯域を上限としますが、PCIE3.0x4接続の一般的なNVMe M.2 SSDや、最新のPCIE4.0対応SSDも「QNAP TBS-464」で使用可能です。
M.2 SSDの固定についてはネジ止めではなく、プラスチックのピンを使用する構造が採用されています。狭い空間でネジを落とすと面倒なので、ツールレス固定なのは嬉しい仕様です。
M.2 SSDはコンパクトな反面、高速なNVMe接続に対応したM.2 SSDは高温になりやすいので、「QNAP TBS-464」には標準でM.2 SSDヒートシンクとサーマルパッドが付属します。片面実装のM.2 SSDでは背面に2枚のサーマルパッドを使用するので同じ厚みのサーマルパッドが3枚×4セットで計12枚付属しています。
「QNAP TBS-464」に付属するM.2 SSDヒートシンクはアルミニウム製で、細かい放熱フィンが林立しています。
QNAP TBS-464のSSDインストール手順
「QNAP TBS-464」へのストレージのインストール手順について説明します。まずはサーマルパッドをM.2スロットの前の基板上に貼り付けます。
使用するM.2 SSDが背面にも素子やチップが実装されている両面実装の場合はサーマルパッドを1枚だけ貼り、背面に実装のない片面実装の場合は2枚のサーマルパッドを重ねて貼ります。
「QNAP TBS-464」のメイン基板上にサーマルパッドを貼ったら、その上からSSDを装着し、ピンクリップで固定します。
さらにその上からサーマルパッドを貼り付けます。
最後にSSDの上にサーマルパッドを貼って、その上からM.2 SSDヒートシンクを乗せたら、ストレージのインストールは完了です。
なお「QNAP TBS-464」の底面のM.2 SSD部分にはスポンジスペーサーが貼り付けられており、ヒートシンクをM.2 SSD側に押し付けてくれるので、蓋を締めた後にヒートシンクが脱落する心配はありません。
QNAP TBS-464の検証機材
「QNAP TBS-464」の各種検証を行う環境としては、Intel Core i9 10900K&ASUS ROG MAXIMUS XII EXTREMEなどで構成されているベンチ機を使用しました。構成の詳細は下記テーブルの通りです。テストベンチ機の構成 | |
CPU | Intel Core i9 10900K (レビュー) Core/Cache:5.2/4.7GHz 殻割り&クマメタル化(レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Ripjaws V F4-4000C15Q-32GVK DDR4 8GB*4=32GB (レビュー) 4000MHz, 15-16-16-36-CR2 |
マザーボード |
ASUS ROG MAXIMUS XII EXTREME (レビュー) |
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36(レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM (レビュー) |
ビデオカード | MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung SSD 980 PRO 500GB(レビュー) |
OS | Windows10 Home 64bit |
電源ユニット | Corsair HX1200i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
QNAP TBS-464はNVMe M.2 SSDに対応した4ストレージベイ搭載NASなので、今回、NASに組み込む検証機材用SSDとして、Western Digitalから発売中のNAS向けNVMe M.2 SSD「WD Red SN700 NVMe SSD 1TB」を使用しています。
WD Red SN700 NVMe SSDシリーズのうち、容量1TB以上のモデルは連続読み出しと連続書き込みが3GB/s以上、さらにSLCキャッシュ超過後の書き込み速度も1500MB/s以上をキープするので、10Gb LAN接続ならSSD性能がボトルネックになることはありません。
Western Digitalからは1TB~4TBの大容量がラインナップされる自作PC向けSSDとしてゲーマー向けモデルのWD_BLACK SN750 NVMe SSDが発売されていますが、「WD Red SN700 NVMe SSD」は常時稼働となるNASシステムに要求される信頼性に応えられるよう、24時間365日稼働の使用向けに設計・テストされています。
「WD Red SN700 NVMe SSD 1TB」は読み書き速度といった基本仕様はゲーマー向けモデルWD_BLACK SN750とほぼ同等である一方、書き込み耐性のスペック値がWD_BLACKより2倍も優れています。
NASによるバックアップではバックアップ対象の更新を全て記録するような機能もあり(QNAP製NASならスナップショット)、通常のPCよりも頻繁に書き込みアクセスが発生します。SSD内蔵の高速NASを構築するなら書き込み耐性に優れた「WD Red SN700 NVMe SSD」は特にオススメのSSDです。
QNAP TBS-464の初期設定
「QNAP TBS-464」を導入する時に最初に必ず行う初期設定の手順について紹介します。QNAP製NASの多くでは”QTS”と呼ばれるNAS専用のOSを最初にインストールします。QTSはNASのストレージではなく、NASに標準で内蔵されているフラッシュメモリにインストールされます。「QNAP TBS-464」の場合は4GBのフラッシュメモリが内蔵されており、そこへQTSがインストールされます。
QNAP製NASの基本システムであるQTSについては、NASに接続したPCのウェブブラウザ上で操作します。ウェブブラウザの画面上に別のWindows PCが動いているような感覚で各種設定が行えます。
何はともあれ、各自の環境に合わせて「QNAP TBS-464」を接続します。最低限、ACケーブルを「QNAP TBS-464」に繋ぎ、ルーター経由もしくは直結でLANケーブルをPCの有線LANに接続します。
QNAP TBS-464の初期設定を行うため、まずはWindows PCへ「QNAP Qfinder Pro」をインストールします。「QNAP Qfinder Pro」のインストール自体は、サポートページからダウンロードしたインストーラーを起動し、ポチポチとクリックしていくだけです。
「QNAP Qfinder Pro」を起動すると、「QNAP TBS-464」がPCやネットワーク内に正常に接続されていれば、自動的に検出してくれて、「QTS スマートインストールシステム」という初期設定プロセスへガイドしてくれます。
「QTS スマートインストールシステム」を起動すると、ウェブブラウザ(Microsoft Edgeなど)で初期設定画面が表示されます。
「QTS スマートインストールシステム」のUI言語は設定を行うPCのシステム言語に合わせて自動的に日本語が適用されます。もしも別言語になってしまった場合は、右上の言語メニューから日本語を選択できます。
以降はガイドに従って、パスワード、ネットワーク、使用環境等の初期設定を行います。特に専門的な知識は必要ありません。
初期設定が完了したらログイン画面が表示されるので(もしくはQfinder Proで機器を選択してログイン画面を表示する)、先ほど設定したアカウント&パスワードでログインします。
なおQTS5.0からは、管理者名を”admin”以外に設定する必要があり、上記の初期設定の際も”admin”以外の名前でユーザー登録を行います。初期設定で指定した管理者ユーザー名は忘れないように注意してください。
ちなみに、「QNAP TBS-464」では初期設定時に登録したアカウントのみが有効になっており、標準管理者アカウント adminは無効化されていました。
QNAP TBS-464でネットワークストレージを作る方法
「QNAP TBS-464」でWindows PCから閲覧・編集が可能なネットワークストレージを作る手順を紹介します。ネットワークストレージを作るまでは、「ボリュームを作成する」、「作成したボリューム内に共有フォルダを作る」、「作成した共有フォルダにドライブパスを通す」の3つの手順となります。1.ボリュームやRAIDを作る
まずは初期設定でも紹介したQNAP Qfinder Proから「QNAP TBS-464」の右クリックメニューを表示し、NASの管理メニューQTSを表示します。QTSが表示できたらメインメニューから「ストレージ&スナップショット」を選択します。
「ストレージ&スナップショット」のウィンドウが表示されたら、左側メニューから「ストレージ」を選択し、中央下にある『ストレージのアイコンと+マーク』の部分を選択します。
アイコンを選択すると「ボリューム作成ウィザード」が表示されます。初期設定ではボリュームタイプがシックボリュームですが、『タイプを変更』のアイコンからボリュームタイプを変更できます。
Windowsユーザーが馴染みやすい「静的ボリューム」以外に、「シックボリューム」や「シンボリューム」など、スナップショットというバックアップ機能が使用できるボリュームも作成できます。
今回は3種類のうちシンプルに静的ボリュームを選択しました。
作成するボリュームの種類を選択すると、ボリュームを構成するストレージとRAIDの有無が選択できます。RAIDについてはJBOD、RAID0、RAID1、RAID5、RAID6、RAID10が選択できます。
ボリュームの名前や、アイノード別バイト数を選択し、最終確認をしてボリューム作成を完了します。
ボリュームのフォーマットとデフォルトフォルダの作成を待って、ボリュームの作成は完了です。
2.ボリュームに共有フォルダを作る
上で作成したボリュームに共有フォルダを作成する方法について紹介していきます。Windows PCでは一番上の階層にボリューム(ドライブ)が見えているので若干慣れませんが、とりあえずQNAP製NASではボリュームに作成された共有フォルダがエクスプローラー上では一番上の階層になります。
「QNAP TBS-464」でボリュームを作成すると、HomesやPublicと言った基本的な共有フォルダが作成されますが、もちろん任意の共有フォルダを作成することもできます。共有フォルダの作成方法はいくつかありますが、代表的なものとしては以下の3つです
- QTSのコントロールパネルの共有フォルダの項目から作る
- QTS標準アプリFile Station(QTS上のエクスプローラー的アプリ)から作る
- QNAP Qfinder ProのStorage Plus & Connectから作る
まずQTSのコントロールパネルの共有フォルダの項目から作る方法ですが、QTSメインメニューのショートカットアイコンからコントロールパネルを選択し、権限設定の項目にある「共有フォルダ」を開きます。共有フォルダの設定ページが表示されたら共有フォルダ一覧の左上にある「作成」を選択すると、新規の共有フォルダが作成できます。
次にQTS標準アプリFile Station(QTS上のエクスプローラー的アプリ)から作る共有フォルダを作る方法ですが、QTSメインメニューのショートカットアイコンからFile Stationを開き、フォルダに+が描かれたアイコンを選択、共有フォルダを作成します。File Stationの共有フォルダ作成では作成と同時に、そのフォルダにアクセスできるアカウントなど権限に関する設定がかなり細かく行えます。
最後にQNAP Qfinder ProのStorage Plus & Connectから共有フォルダを作る方法ですが、QNAP Qfinder Proに表示される「QNAP TBS-464」の右クリックメニューからStorage Plus & Connectを選択し、Storage Plus & Connectの管理画面上で共有フォルダを作成します。「QNAP TBS-464」上の共有フォルダにドライブパスを通す機能も統合されているので、権限関連の詳細設定を必要としないユーザーには一番使いやすい気がします。
3.共有フォルダにドライブパスを通す
ネットワークストレージ作成の最後の仕上げとして、上で作成した共有フォルダへWindows PCのエクスプローラーから直接アクセスできるようにするためドライブパスを通します。ドライブパスを通す作業はQNAP Qfinder Proから行います。直前の共有フォルダ作成で紹介したばかりなので、「Storage Plus & Connect」を使用した方法を紹介すると、パスを通したい共有フォルダに対して右クリックメニューを開き、「接続」を選択するだけです。
共有フォルダにドライブパスを通すもう1つの方法は、QNAP Qfinder Proに表示される「QNAP TBS-464」の右クリックメニューから「ネットワーク ドライブ」を選択し、エクスプローラーに共有フォルダを表示してから、ネットワークドライブの割り当てを行います。
以上の手順でWindows PCのエクスプローラーからアクセス可能なネットワークストレージが構築できます。
HDMIビデオ出力とHybridDesk Stationについて
「QNAP TBS-464」には4K/60FPSに対応したHDMI2.0ビデオ出力が2基搭載されており、NAS本体をTVやPCモニタへ直接に接続することでネットワークメディアプレイヤーや簡易のウェブブラウザとして使用したり、YouTubeなどの動画ストリーミング視聴が可能です。なおHybridDesk Stationの操作にはNASのUSB端子へ直接マウス&キーボードを接続する必要があるので注意してください。
HybridDesk Station上で使用できるリモートコントローラー「QNAP RM-IR004」もアクセサリとして販売されています。ただしリモコンの反応は若干モッサリしているため操作上はプラスアルファな存在で、基本的にUSB接続のマウス・キーボードが必要になると思います。
HDMIビデオ出力機能は「HybridDesk Station」と呼ばれており、初期設定時にインストールされるQNAP製NASのOSである「QTS」とは別に、QTS上のアプリケーションとしてインストールする必要があります。
QTSがNASに内蔵されたフラッシュメモリへインストールされるのに対して、HybridDesk Stationと付属アプリ類はNASのボリュームへ保存されるので、少なくとも1つはボリュームを作成しておく必要があります。
「HybridDesk Station」をインストールして「QNAP TBS-464」のHDMIビデオ出力にモニタを接続すると、スマホアプリメニュー風のトップ画面が表示されます。
「HybridDesk Station」は一応、日本語UIにも対応していますが、漢字が中国語風になっていてフォントが微妙です。数年前からこのままなので日本語UIに対応するならフォントも直して欲しいところ。
「QNAP TBS-464」に搭載された2基のビデオ出力はいずれもHDMI2.0なので、最大で4K/60FPSの解像度に対応します。
QNAP TBS-464の性能
さて本題となる「QNAP TBS-464」の性能についてチェックしていきます。NASを使用する場合、一般的な利用環境ではPCとNASの間にスイッチハブやルーターが挟まりますが、 今回の検証では、「QNAP TBS-464」と検証PCの間にスイッチハブやルーターは挟まず、LANケーブルで直接に接続しています。
なおマルチギガビットLANでPCとNASを接続する場合、そのままでは接続帯域のポテンシャルをフルに発揮できない可能性があるので、「Jumbo Frame(Jumbo Packet)」という項目を手動で設定する必要があります。
PC側ではデバイスマネージャーから接続に使用しているLANコントローラーを選択し、プロパティからJumbo Packetの値を9000程度に変更します。
NAS側はQTS上の「ネットワークと仮想スイッチ(Network & Virtual Switch)」というアプリから接続に使用しているLANの設定を開き、こちらも同じくJumbo Frameの値を9000程度に変更します。
ジャンボパケット(Jumbo Packet, Jumbo Frame, MCU等と表記)は、5~10Gb LAN対応NASで重要になる機能ですが、簡単に説明すると、ルーター側CPU(SoC)の性能が低い時にボトルネックを解消する効果があります。
Intelのデスクトップ向けCPUを搭載しているようなNASならジャンボパケット無効でも問題ありませんが、モバイル向けSoC等ではSoCの性能がボトルネックになるため、マルチギガビットLANの性能をフルに発揮しようとするとジャンボパケット対応が必要になります。
今回、「QNAP TBS-464」の検証に当たってNASへ内蔵するSSDには、検証機材の章でも紹介した通り、NAS向けNVMe M.2 SSD「WD Red SN700 NVMe SSD 1TB」を使用しています。
「WD Red SN700 NVMe SSD 1TB」は連続読み出しと連続書き込みが3GB/s以上、SLCキャッシュ超過後の書き込み速度も1500MB/s以上と、10Gb LAN接続でもSSD性能がボトルネックになることはありません、
なので「QNAP TBS-464」の検証に当たって、シンプルに単一の静的ボリュームをNAS上に作成しました。
まずは「QNAP TBS-464」の基本的な読み出し性能と書き込み性能を確認するためNAS環境の検証でもよく使用される定番ベンチマークCrystalDiskMark8のスコアを比較してみました。
なおNASのネットワークドライブに対してCrystalDiskMarkを実行すると、NASのシステムメモリのキャッシュ機能等の影響で、ストレージ性能を上回り、回線理論値に近いスコアを出す場合があります。厳密な速度性能については後述の実際のファイルコピーテストを参照してください。
「QNAP TBS-464」においてNVMe M.2 SSDのWD Red SN700 NVMe SSD 1TBで単一の静的ボリュームを作成し2.5Gb LANでPCと接続すると、製品公式ページでも言及されているように連続読み出しと連続書き込みにおいて2.5Gb LANの理想的な速度である300MB/sを発揮しました。
下は「QNAP TBS-464」を一般的な1Gb LANで接続した場合ですが、2.5Gb LANで接続すると連続性能が約2.5倍に高速化するだけでなく、1Gb LANの帯域よりも低速な4Kランダム性能も向上しているのが分かります。
マルチビットLANでは帯域性能をフルに発揮するため、NAS側に搭載されたCPUの性能が重要になるので、Intel製の一般デスクトップ向けCPUのような高性能CPUを搭載するNAS、価格が15万円以上のような高級NASが必要になります。
Core i7 8700Tを搭載したQNAP TVS-472XTのベンチマーク結果を見ての通り、「QNAP TBS-464」に搭載されたIntel Celeron N5105のCPU性能なら、ランダム性の高いデータ転送では差が付く可能性はありますが、概ね2.5Gb LANの帯域を活用できるようです。
なおCrystalDiskMarkにおいて4K性能がTVS-472XTよりもTBS-464の方が高いのは、キャッシュ等の影響か、NICの差だと思います。CrystalDiskMark検証の冒頭に書いたように厳密なところは次に行う実際のデータコピー検証で見ていきます。
CrystalDiskMarkを使用した基本的なストレージ性能のチェックも完了したので、続いて「QNAP TBS-464」のようなNASの性能評価で最重要項目となるファイルコピーにおける読み出し・書き込みについて性能比較をしてみました。
検証に使用するデータとしては次のような50GB(10GB×5)の動画フォルダ、80GBで多数のファイルが入ったゲームのフォルダ(The Witcher 3とRise of the tomb Raiderなどのゲームフォルダ)、1KB~1MBの画像ファイル10,000枚が入った3GBの画像フォルダ、5MB~8MBの画像ファイル1,000枚が入った7GBの画像フォルダの4種類を使用しています。
データのコピーにおいては当然ですが、元データのあるストレージの読み出し性能とコピー先の書き込み性能の両方が重要になります。測定においては書き込み先/読み出し元の対象となるストレージが必要になるため、各ストレージのコピー相手にはM.2-PCIE変換アダプタ「Aquacomputer kryoM.2」に設置したSamsung SSD 970 PRO 1TBを使用しています。
「QNAP TBS-464」を含めた各種検証ストレージ(NAS)とSamsung SSD 970 PRO 1TBとの間で検証用データのコピーに要した時間と、その時の平均コピー速度の比較結果は以下のようになりました。
まずは50GBの動画フォルダのコピーについてですが、5つに分割しているものの1つ1つが10GBの大容量ファイルなので実際のコピーではベンチマークのシーケンシャルリード・ライト性能が重要になってきます。
動画フォルダのコピー読み出しに関しては、1Gb LANだと440秒以上かかるのですが、十分に高速なSSDを搭載した「QNAP TBS-464」を2.5Gb LANで接続すると所要時間は180秒程度、半分以下に短縮できます。
動画ファイルのコピー書き込みに関しても、それでも2.5Gb LANで接続することで1Gb LANと比較して2倍以上も高速になります。
続いてゲームフォルダのコピーについてですが、ゲームフォルダは大小様々なファイルを含むので、実際のコピーではベンチマークの連続性能だけでなく、ランダム性能も重要になってきます。
ゲームフォルダのコピー読み出しに関しては、動画フォルダのそれと似た傾向になっていますが、ランダム性のあるデータコピーの要素も含まれるので、平均速度は低下し、LAN帯域に対する性能スケーリングも若干鈍ります。とはいえ2.5Gb LANは1Gb LANの2倍以上も高速です。
ゲームフォルダのコピー書き込みに関しては、概ねコピー読み出しとほぼ同じ傾向です。ランダム性のある書き込みタスクはCPU性能が影響するので5~10Gb LANになると性能低下が出やすいのですが、2.5Gb LANくらいだと問題ないようです。
続いて1KB~1MBの画像ファイル10,000枚が入った3GBのフォルダのコピーについてですが、1つ1つのファイルサイズは1KB~1MBと比較的小さいのでゲームフォルダのコピーテストよりもベンチマークのランダム性能が重要になります。ただし合計サイズが3GBと小さいのでキャッシュ性能もコピー速度に効いてきます。
小容量画像ファイルを多数含むコピー読み出しに関して、1Gb LAN接続時の連続性能120MB/sよりも十分に低い平均速度ですが、2.5Gb LAN接続にすることでパフォーマンスが改善しています。マルチギガビットLANはランダム性の高いデータコピーにも強いのが分かる結果です。
小容量画像ファイルを多数含むコピー書き込みに関して、NAS側のCPU性能が十分に高ければやはり2.5Gb LANにすることで1Gb LANよりも高速になります。ただしランダム性の高い書き込みタスクはCPU性能を大きく要求することもあって「QNAP TBS-464」ではCPU性能がボトルネックになり、QNAP TVS-472XTと比較して同じ2.5Gb LAN接続でも低速です。
最後にデジタルカメラで撮影した原寸ファイルを想定した5MB~8MBの画像ファイル1,000枚が入った7GBのフォルダのコピーについてですが、1つ1つのファイルサイズは5MB以上で比較的大きいので、完全にシーケンシャル性能というわけではありませんが、シーケンシャルに近い形でアクセスが発生します。
大きい画像ファイルを多数含むフォルダのコピー読み出しに関しては、動画フォルダほどではないものの、2.5Gb LANが1Gb LANの2倍近いパフォーマンスを発揮しています。
大きい画像ファイルを多数含むフォルダのコピー書き込みに関しては、コピー読み出しよりもスケーリングは鈍りますが、それでも2.5Gb LAN接続にすることで1Gb LANよりも2倍程度も高速になります。
QNAP TBS-464のレビューまとめ
最後に最大4枚のNVMe M.2 SSDを搭載可能であり、2.5Gb有線LANによる高速なネットワークストレージが構築可能なコンパクトNASブック「QNAP TBS-464」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- NASとしては非常にコンパクトなブックサイズの製品
- 4枚のNVMe M.2 SSDを搭載可能
- M.2 SSD用の放熱ヒートシンクも標準で付属
- 2基の2.5Gb LANを搭載(Realtek RTL8156B)
- 2.5Gb LANで接続すると1Gb LANよりも最大で2.5倍も高速になる
- 2.5Gb LANは100MB/s未満のランダム性能も高速になる
- マウスキーボード、WiFi、フラッシュメモリを増設可能なUSB3.0端子×2、USB2.0端子×3
- 2基のHDMI2.0ビデオ出力を搭載し、メディアプレイヤーとしても使用できる
- 前モデルTBS-453DXが10Gb LAN搭載だったのでスペックダウン感がある
- システムメモリは8GBの基板実装で、増設には非対応
- 税込み9~10万円程度と4ストレージベイ、Celeron N5105、8GBのNASとしては高価
「QNAP TBS-464」は公式で”NAS Book”と呼称されるのも納得のいく、コミック2冊と同程度の容積に収まるコンパクトサイズが最大の魅力だと思います。
NASというと3.5インチHDDを4基程度搭載できるキューブ型のちょっとしたコンパクトPCサイズを想起させられる製品ですが、「QNAP TBS-464」であれば無線LANルーターのすぐ傍に置いても、そのコンパクトなサイズ感とモダンな外観から違和感なく溶け込みます。
「QNAP TBS-464」はNVMe M.2 SSDを最大で4基内蔵できるので、4TB容量のNVMe M.2 SSDを使用すれば16TBの大容量かつ高速、そしてコンパクトという3拍子そろったネットワークストレージが構築できます。
また標準で放熱ヒートシンクも付属するのでコンパクトな反面、発熱が気になるNVMe M.2 SSDでも安心して運用できます。
NVMe M.2 SSDの製品にも依りますが、今回検証に使用したWD Red SN700 NVMeのような高性能SSDであれば1枚でも「QNAP TBS-464」に搭載された2.5Gb LANのボトルネックにならないアクセススピードを発揮できるので、2枚から4枚で保守性重視のRAIDを構築しても性能を損なうことはありません。
ネットワークストレージとして最重要と言えるファイルコピー性能について、一番想定されるであろうスマートフォンやデジタルカメラで撮影した写真(1つ当たり数MB)や動画(1つ当たり数GB)のデータの共有・バックアップであれば、2.5Gb LANでネットワークに接続されていれば「QNAP TBS-464」は一般的な1Gb LANと比較して2倍以上の読み出し・書き込み速度が期待できます。
以上、「QNAP TBS-464」のレビューでした。
記事が参考になったと思ったら、ツイートの共有(リツイートやいいね)をお願いします。
NVMe M.2 SSDを4台搭載可能で2基の2.5Gb LANによる高速通信ネットワークストレージが構築可能なコンパクトNASブック「QNAP TBS-464」をレビュー。
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) December 24, 2021
基本的な使い方や2.5Gb LANのデータ転送速度を徹底検証。https://t.co/ZLUliPxM7a pic.twitter.com/1ZkkRCwcw7
関連記事
・10Gb Lan&高性能CPUの爆速NAS「QNAP TVS-472XT」をレビュー・4万円の10Gb対応NAS「TerraMaster F2-422」をレビュー
・M.2 SSDx4&10Gb LAN搭載NAS Book「QNAP TBS-453DX」をレビュー
・10Gb LAN対応NASに最適なWiFi6ルーター「QNAP QHora-301W」をレビュー
・オール10Gb対応ハブ「TP-Link TL-SX105 / TL-SX1008」をレビュー
・「Aterm WX6000HP」をレビュー。HGW越しにIPoE接続してみた
・「ASUS RT-AX89X」をレビュー。10Gb LAN対応NASに最適
・「エレコム WRH-300BK3-S」をレビュー。有線LANを無線化できるWiFi子機
(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
スポンサードリンク