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1152分割で部分駆動する直下型Mini-LEDバックライトを搭載し、最大輝度1000nits超のHDR表示やVRR同期機能に対応、4K解像度かつ144Hzリフレッシュレートの32インチ量子ドットIPS液晶ゲーミングモニタ「Titan Army P32A6V」をレビューします。
Titan Army P32A6V レビュー目次
1.Titan Army P32A6Vの概要2.Titan Army P32A6Vの開封・付属品
3.Titan Army P32A6Vの液晶モニタ本体
4.Titan Army P32A6VのOSD操作・設定
5.Titan Army P32A6Vの発色・輝度・視野角
6.Titan Army P32A6Vのリフレッシュレートについて
7.Titan Army P32A6Vの応答速度・表示遅延
8.Titan Army P32A6Vの可変リフレッシュレート同期について
9.Titan Army P32A6VのHDR表示やCSゲーム機対応について
10.Titan Army P32A6VのHDR性能やローカルディミングについて
11.Titan Army P32A6Vのレビューまとめ
【機材協力:Titan Army国内正規代理店 リンクスインターナショナル】
Titan Army P32A6Vの概要
「Titan Army P32A6V」は解像度が3840x2160の4K解像度で、画面サイズが32インチの液晶モニタです。液晶パネルタイプはノングレア(非光沢)で発色や視野角に優れたIPS液晶パネル、さらに発色を向上させる量子ドット技術(Quantum Dot Technology)も採用されており、99% DCI-P3、99% AdobeRGBという非常に優れた色域を実現しています。「Titan Army P32A6V」はHDR表示に対応しています。標準輝度は600nits(cd/m^2)、HDR表示における最大輝度は1000nits(cd/m^2)です。
従来比で半分となる200~300マイクロメートルサイズのMini-LEDを2304個も詰めた直下型LEDバックライトが採用され、1152分割のフルアレイ型ローカルディミングに対応します。
「Titan Army P32A6V」のリフレッシュレートはネイティブ144Hzです。
144Hzの高リフレッシュレートによって応答速度が高速になるのでブレや残像がなくなってクッキリとした滑らかな表示です。60FPSでは識別の難しいゲーム内遠方で動くエネミーやオブジェクトの発見などが容易になるので、オンライン対戦FPSゲームなど競技性の高いPCゲームにおいて対戦相手よりも優位に立つことができます。
「Titan Army P32A6V」はゲーミングPCやコンソールゲーム機のPlayStation 5やXbox Series X/Sを組み合わせることで利用可能な可変リフレッシュレート同期機能「AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync、HDMI Variable Refresh Rate)」にも対応しています。
VRR同期機能によってティアリングがなくスタッタリングを抑えた快適で鮮明なゲーミング環境を実現できます。NVIDIA製GPUとの互換性を証明するG-Sync Compatible認証の取得は未定です。
「Titan Army P32A6V」のビデオ入力はDisplayPort1.4×1、HDMI2.1×2、USB Type-C×1の4系統です。(USB Type-Cの映像データ帯域はDisplayPort1.2相当)
またUSBハブとして周辺機器を接続するためのダウンストリームUSB3.2 Gen1 Type-A端子が2基搭載されており、USBアップストリームケーブルの接続先だけでなく、USB Type-Cでビデオ出力を行っている機器のUSBハブとして使用できます。USB Type-CポートはUSB Power Delivery規格による最大90Wの給電にも対応します。
「Titan Army P32A6V」のHDMIビデオ入力はver2.1なのでPlayStation 5やXbox Series X/Sを接続すると4K/120Hz表示に対応します。
「Titan Army P32A6V」はDisplayPort1.4で策定されている映像データの非可逆圧縮伝送機能「Display stream compression (DSC)」に対応しています。DSCは映像データを非可逆圧縮しますが視覚的に画質を損なうことがなく、DisplayPortケーブル1本で4K解像度/144FPS/フルRGBの映像データの伝送が可能です。可変リフレッシュレート同期機能やHDR表示とも互換性があります。
「Titan Army P32A6V」の寸法はモニタスタンド込みで幅727mm x 高さ471〜553mm x 奥行264mm(モニタ本体の奥行は68mm)です。
付属モニタスタンドの機能は『上下チルト:上20度から下5度、左右首振りスイーベル:左右25度(計50度)、昇降高さ調整:82mm、90度回転ピボット:非対応』となっています。
モニタスタンドを含めた本体重量は8.3kg、モニタ単体重量は6.5kg前後です。100mm x 100mmのVESAマウントにも対応しており重量的にもモニタアームが使用可能です。
Titan Army P32A6Vの開封・付属品
まずは「Titan Army P32A6V」を開封していきます。「Titan Army P32A6V」はパッケージサイズが幅70cm×高さ46cm×厚み23cmで、32インチモニタが入っている箱としては横幅がかなり大きめです。重量は10kg程度ありますが天面に持ち手があるので、成人男性なら問題なく持ち運べると思います。
各種付属品はスペーサーに蓋もなく収められているので、保護スペーサーをパッケージから取り出す際は、付属品が脱落しないように、付属品のある面が上になるように確認してから引き出してください。
「Titan Army P32A6V」は99% DCI-P3、99% AdobeRGBの非常に広い色域がアピールポイントの1つということもありΔE<1の色精度を証明する、メーカーによるカラーキャリブレーションレポートが同封されていました。
「Titan Army P32A6V」の付属品を簡単にチェックしておくと、DisplayPortケーブル、HDMIケーブル、ACアダプタ&ACケーブル、VESAマウント用スタンドオフが付属します。
「Titan Army P32A6V」のHDMIビデオ入力は4K120FPSの映像伝送が可能なHDMI2.1に対応しおり、付属ケーブルにはHDMI2.1の記載はありますが、HDMI協会がHDMI2.1互換を証明するUltra High Speed HDMIケーブル認証を取得していないようです。
各種ケーブルを個別に購入する場合のオススメ製品も紹介しておきます。
視覚損失のない非可逆圧縮機能DSCによって4K/144Hz/HDR 10bit RGBに対応するDisplayPort1.4ケーブルなら「サンワサプライ KC-DP14シリーズ」を推奨しています。標準で付属するケーブルよりもケーブル径が細くて取り回しが良いので管理人も個人的に使用しており、おすすめのケーブルです。
HDMI2.1ケーブルについては「エレコム ウルトラハイスピードHDMIケーブル スリム CAC-HD21ESシリーズ」がおすすめです。標準で付属するケーブルよりもケーブル径が細くて取り回しが良いので管理人も個人的に使用しており、おすすめのケーブルです。
同製品は4.5mm径のスリムケーブルながら、HDMI2.1の正常動作を証明するUltra High Speed HDMIケーブル認証を取得しており、安心して使用できます。
当サイトでもGeForce RTX 30搭載PC、PlayStation 5、Xbox Series X/Sで正常動作を確認しています。
その他にもケーブル径5.0mm以下でスリムな48Gbps対応HDMI2.1ケーブルについてまとめた記事も公開しているので、こちらも参考にしてみてください。
長さ5m以上でも安定した動作が期待できる光ファイバー式HDMI2.1ケーブルでイチオシは、「Cable Matters Active 8K HDMI Fiber Optic Cable」です。
「Cable Matters Active 8K HDMI Fiber Optic Cable」は、HDMI協会の公式認証であるUltra High Speed HDMI認証を取得、さらにXbox Series X/S互換製品認証も取得しており、ケーブル性能の保証としては隙の無いカンペキな製品です。
5mが7000円、10mが10000円で光ファイバー式HDMIケーブルとしては標準的なお値段で、 信頼性の高さも考慮したらかなりリーズナブルだと思います。
当サイトでもGeForce RTX 30搭載PC、PlayStation 5、Xbox Series X/Sで正常動作を確認しています。
「Titan Army P32A6V」に付属するACアダプタのコンセントケーブル側端子はミッキー型と呼ばれることの多い3PIN端子です。240W(24V・10A)とかなり電源容量が大きいACアダプタが付属しており、ACアダプタ自体も巨大です。
「Titan Army P32A6V」に付属するモニタスタンドはフレームとフットプレートの2つの部品で構成されています。
メインフレーム端にフットプレートを挿入して、底面のネジを締めるだけで簡単にモニタスタンドを組み立てられます。ネジにはレバーが付いているのでドライバー不要で組み立てが可能です。
モニタスタンドを組み立てたら、モニタ本体背面の溝に斜め下の方向からモニタスタンドを差し込めば取り付け完了です。
モニタ側の根本にあるスイッチを押下するとモニタスタンドのロックが解除されます。モニタスタンドを装着した時と逆に手前方向に斜め上へ引き上げればモニタスタンドが取り外し可能です。
Titan Army P32A6Vの液晶モニタ本体
続いて「Titan Army P32A6V」の液晶モニタ本体をチェックしていきます。「Titan Army P32A6V」はフレームレス構造で、2mm程度の外枠を含めて上左右の非表示領域の幅は9mm程度、下は23mm程度です。上左右は完全にフレームレスですが、下側フレームは数mm程度手前に出っ張ったフレームがあります。
「Titan Army P32A6V」はディスプレイサイズが32インチなので、一般的な27インチの4Kモニタよりも大迫力な映像を楽しめます。(下写真は31.5インチと27インチのモニタをPS5と並べた時の比較です)
「Titan Army P32A6V」の背面はシルバーカラーのプラスチック製外装です。安っぽいというほどでもありませんが、プラモデルのシルバー塗装スプレー的な色味と質感なので、高級感はありません。可もなく不可もなくという感じです。
大量に敷き詰められたMini LEDバックライトは発熱も大きいので外周のギザギザ部分は放熱用のエアスリットになっています。
正面から見て右上には自動輝度調整を行うための測光センサーがあります。自動輝度調整を使用する時はこの部分を塞いだり、机の天板で隠れたりしないよう注意してください。
OSD設定から光センサーによる自動輝度調整はオン/オフを任意に切り替えが可能です。
「Titan Army P32A6V」はモニタ背面の四隅(テーマライト)にLEDイルミネーションを搭載しています。
LEDイルミネーションの発光カラーや発光パターンはOSD設定メニューから設定が可能です。オフを選べば完全に消灯させることも可能です。
モニタスタンドにはケーブルホルダーも付いているので、各種ケーブルを綺麗にまとめて配線できます。
「Titan Army P32A6V」のモニタ本体の厚さは最厚部で60mmほどと最近の液晶モニタとして標準的です。モニタ本体重量は6.4kg程度と比較的に大きいのでモニタアームを使用する場合は耐荷重に注意が必要です。
「Titan Army P32A6V」の背面、下端寄りには下向きに各種I/Oポートが実装されています。
右から順番に、ダウンストリームUSB3.0端子×2、アップストリームUSB3.0端子、1基のUSB Type-C(DP1.2相当のDisplayPort Alternate Mode)、1基のDisplayPort1.4、2基のHDMI2.1、3.5mmヘッドホンジャック、DC端子、電源スイッチが設置されています。
OSD操作スイッチに並んで電源ボタンがありますが、外付けACアダプタの構造でロッカー型の電源スイッチも実装されているのは少々特殊です。
「Titan Army P32A6V」のIOポートは底面から40mm程度とかなり浅い場所にあるので、付属のACアダプタを含めコネクタが大きいケーブルでは、コネクタそのものやケーブルがモニタの下端からはみ出してしまいます。IOポートの実装位置についてはもう少し配慮して欲しかったところです。
DisplayPortケーブルではコネクタサイズが最小サイズのサンワサプライ KC-DP14シリーズでも下写真のようにコネクタ末端とケーブルははみ出してしまいます。
「Titan Army P32A6V」のUSB Type-Cビデオ入力はUSB Power Delivery規格による最大90Wの給電にも対応しています。
90Wなど大電力による充電に対応した機器を所有していないので、Surface Pro 7+での検証となりますが、USB Type-Cケーブルで4K/60Hzのビデオ出力を行いつつ、20V電圧で20~30Wの充電が行えることも確認できました。
モニタに実装された2基のUSB3.0ポートの接続先はUSBアップストリームケーブルとUSB Type-Cビデオ入力から選択でき、OSD設定メニューで指定できます。
またモニタがスリープ状態の時にもUSBハブ端子へ常にモニタから電力供給を行うかどうかも指定できます。
「Titan Army P32A6V」の付属モニタスタンドの左右スイーベルの可動域は左右25度(50度)に対応していま
「Titan Army P32A6V」の付属モニタスタンドの上下チルトの可動域は仕様通り下に5度、上に20度となっています。
モニタの高さはモニタ本体とスタンドの付け根部分が上下に動く構造になっており、全高で471mm〜553mmの範囲内で調整できます。
付属モニタスタンドは90度回転ピボットには非対応ですが、画面が水平になるように数度ですが左右に回転できます。
「Titan Army P32A6V」はVESA100x100規格のVESAマウントに対応しておりサードパーティ製のモニターアームを使用できます。モニタ単体の重量も6.5kgほどなのでモニターアームを問題なく利用可能です。
「Titan Army P32A6V」のVESAネジ穴は背面外装から窪んだ場所にありますが、スタンドオフが付属するので、クイックリリースでスライドさせるタイプのモニターアームも問題なく使用できます。
オススメのモニターアームや調整機能が豊富なVESA汎用モニタースタンド、VESAマウントの干渉を避ける方法についてはこちらの記事で詳細に解説しているので、導入を検討している人は参考にしてください。
Titan Army P32A6VのOSD操作・設定
「Titan Army P32A6V」のOSD操作はモニタ底面の右下に設置されている4つのボタン(+電源ボタン)を使用します。各ボタンに割り当てられた機能は、OSDメニュー下部に記載されていますが、表示位置を調整して限界まで寄せても(初期位置は画面中央)、表示とボタン位置にはズレがあります。
OSDの操作感については、ボタンが小さいので押下し難い、形状が同じなので間違いやすい(電源ボタンが並んでいて誤押下しやすい)、などの不満点があり、ユーザーフレンドリーとは言い難い仕様でした。OSD操作についてはハード面も含めてもう少し工夫して欲しかったところ。
左端にあるボタンを押下するとOSD詳細設定メニューが画面中央に表示されます。OSD表示領域は32インチ画面の1/10程度となっており、文字はやや小さめですが操作し難いというほどではありません。
OSD設定メニューの表示位置は詳細設定から画面上を縦横それぞれ100分割で自由に変更できます。(PIP/PBP機能のON/OFFを切り替えるとOSD設定の表示位置は初期化されてしまいます)
「Titan Army P32A6V」のOSDメニューは日本語UIに対応しています。
OSDリセットをかけても言語設定は最後の設定値が引き継がれる仕様だったので、市販製品のアウトボックス時点での初期言語設定が不明ですが、仮に初期言語が英語か中国語でも、下写真の通りにメニューに合わせてボタンを操作すれば詳細設定メニューから日本語に切り替えが可能です。
中央の3つのボタンはショートカットキー(ホットキー)となっており、OSD詳細設定が非表示の状態で押下すると、各ボタンに割り当てられたショートカット設定画面が表示されます。
OSD詳細設定メニューの表示位置を変更している場合、ショートカット設定が表示される位置も移動します。
3つのホットキーに割り当てるショートカット設定はOSD設定メニューから変更が可能です。
「Titan Army P32A6V」のOSDメニューには大きく分けて、「ゲーム設定」「ピクチャー設定」「色設定」「PIP/PBP」「OSD設定」「その他の設定」の6つの項目が用意されています。
「Titan Army P32A6V」には、ゲーム設定の項目内に初期設定の「標準」に加えて「RTG/RPG」「FPS」「MOBA」のゲーム種類に特化した3種類、さらにピクチャー設定のピクチャーモードに「ムービー」「リーディング」「ナイト」「sRGB」「Adobe RGB」「DCI-P3」の6種類で、計10個の画質モードが用意されています。
「Titan Army P32A6V」のOSD設定はカレント設定(現在の設定)の1つしかありません。
上記10種類の画質モードはカレント設定を上書きするだけで、各画質モードの設定内容を調整して、呼び出すような使い方はできません。
例えば標準モードの初期設定の輝度は70ですが、これを50に下げてからsRGBモードなど別のモード適用し、再び標準モードに切り替えると輝度は70に戻ってしまいます。
sRGBモードの色空間制限など各モード固有の機能もありますが、輝度/色温度/ローカルディミングなど共通する設定値は画質モードの切り替えによって各画質モードの初期設定に戻ってしまう仕様でした。
またビデオ入力毎に設定することもできないので、ビデオ入力を切り替えてもカレント設定が引き継がれます。
「Titan Army P32A6V」はOSD設定を決め打ちで固定してしまうような使い方でないと、現状、かなり扱い難いというのが正直な感想です。『各画質モードの設定値自体を上書きできるようにする』と『ビデオ入力毎に異なるOSD設定を適用できる』の2点は今後のFWアップデート等で対応してもらいたいです。
ゲーム関連の表示設定はトップメニューで上から1つ目の「ゲーム設定」に配置されています。
一般にオーバードライブと呼ばれる応答速度を調整する機能は、Titan Army P32A6Vでは「応答速度」の名前で配置されています。オーバードライブ補正の強度をオフ、標準、高速、超高速の4段階で設定ができて、標準設定は高速になっています。
可変リフレッシュレート同期機能は「Adaptive-Sync」の名前で設定項目が配置されています。
黒の強弱を調節して暗がりの視認性を高める機能として「シャドウバランス」も搭載しています。
補正強度は0~100の数値で設定できます、標準設定では50(おそらく機能OFFの状態)が設定されており、設定値を下げるほど暗く、設定値を上げるほど明るくなります。
ゲーム設定にはその他にも、リアルタイムリフレッシュレートの表示や照準点の表示などゲームのプレイに便利な機能の設定が行えます。
PIP/PBP機能について
「Titan Army P32A6V」は2つのビデオ入力を画面上に同時に表示する「PIP/PBP」にも対応しています。注意点としてPIP/PBPをオンにすると、DisplayPortビデオ入力のDisplayPort1.2、HDMIビデオ入力はHDMI2.0の動作となり、4K/144Hzなどの解像度&リフレッシュレートには非対応となります。PIPの場合、主画面は4K/120Hzに対応ですが、カラーフォーマットはYUV422に圧縮されます。
通常のビデオ入力選択を主画面として、副画面はPIP設定内の項目から選びます。副画面は残り3つのビデオ入力から自由に選択できます。ウィンドウスワップを選択すると主副が入れ替わります。
PIPでは副画面の表示位置を右上/右下/左上/左下の4ヶ所から選択できます。
副画面のサイズには小/中/大の3サイズの選択肢があり、32インチモニタ上でそれぞれ1/9、1/6、1/4程度の小窓として表示されます。
副画面は表示サイズにモニタ側でリサイズされますが、出力機器としては最大で4K解像度で表示できます。画面リフレッシュレートは主画面に依存します。
PBPには”PBP 2Win11”と”PBP Phone 21/21”の3つの動作モードが用意されています。
PBP 2Win11では4K画面が1920×2160で左右に2等分されます。左側が主入力、右側が副入力となります。主画面と副画面は4つのビデオ入力から任意に選択でき、PCを接続している場合、デスクトップ解像度として1920×2160を選択できました。
一方で、PBP 2Win12/21は4K画面を2632×2160と1016×2160で不均等に分割します。
2632×2160解像度の方が主画面、1016×2160解像度の方が副画面となり、PBP 2Win12では主画面が左側、PBP 2Win21では主画面が右側に表示されます。
主画面のビデオ入力は通常時のビデオ入力として任意に選択できますが、1208×2160解像度で縦長の副画面はスマートフォンを想定したものなので、USB Type-C入力で固定されています。
主画面にPCを接続した場合、2632×2160はネイティブ解像度としてPCに表示されますが、副画面はスマートフォンを想定したものなので、PCからはネイティブ解像度が表示されません。
注意点としてPBPモードにはアスペクト比の保持機能がないので、PS5など16:9アスペクト比画面のゲーム機を接続すると縦横に延び縮みしてしまいます。
Titan Army P32A6Vの発色・輝度・視野角
Titan Army P32A6Vの発色・輝度・視野角など画質についてチェックしていきます。直接的な画質ではありませんがTitan Army P32A6Vの液晶パネルは光沢のあるグレアではなくアンチグレアタイプなので暗転時に自分の顔などが映り込みません。
液晶パネルには大きく分けてIPS液晶パネルとVA液晶パネルとTN液晶パネルの3種類があり、各社個別の製品によって個体差はあるものの、この3つの液晶パネルの特性を簡単にまとめると次のテーブルのようになります。
「Titan Army P32A6V」に採用されているIPS液晶パネルはTN液晶パネルやVA液晶パネルと比べると色再現性や視野角など一般に画質に直結する性能が優れている反面、価格が高価になりがちな液晶パネルです。TN液晶パネルに比べて応答速度が遅めなので、60Hzオーバーのリフレッシュレートを実現しているIPS液晶パネル採用ゲーミングモニタは少ないため、輪をかけて高価です。とはいえ画質とリフレッシュレートを両立できるので、予算に糸目をつかないエンスーゲーマー勢に好まれています。
液晶パネルの簡易比較表 | |||
IPS | VA | TN | |
色再現性 | ◎ | 〇 | △ |
コントラスト | 〇 | ◎ | △ |
視野角 | 〇 | 〇 | △ |
応答速度 | 〇 | △ | ◎ |
価格 (高RR) |
△ (×) |
△ | 〇 |
液晶パネルの種類による性能の違いについてはこちらの記事も参照してみてください。
・IPS/VA/TN液晶パネルを比較解説 - ゲーミングモニタの選び方[4]
「Titan Army P32A6V」は144Hzの高速リフレッシュレートながら、IPS液晶パネルが採用されているので視野角も良好です。
「Titan Army P32A6V」の発色について、色温度の標準設定である”ウォーム(暖色)”で、白色が極端に黄色や青色がかって見えることはないものの、少し黄色寄りな色味です。”ナチュラル”のほうが日本人好みの少し青色がかった白色になると思います。
色温度設定には”クール/ナチュラル/ウォーム”の3種類のプリセットがありますが、これらを切り替えても発色に違和感がある場合は、ユーザー設定でRGBのバランスを好みに合わせて整えてください。
「Titan Army P32A6V」はガンマの設定にも対応しており、標準の2.2に加えて、1.8/2.0/2.4/2.6の5段階で調整できます。単純な下に凸なガンマカーブではなくS曲線も用意されているようです。
6軸色合いや6軸彩度(飽和)の色調整機能があり、ゲーマーだけでなくイラスト関係の作業にも最適なモニタです。
「Titan Army P32A6V」は1152分割のローカルディミングに対応していますが、HDR表示だけでなくSDR表示でもローカルディミングを有効化(無効化も)できます。
SDR表示でローカルディミングを有効化した場合は、HaloContrastという設定によって、輝点に対するバックライトの点灯強度を調整できます。
設定値を上げるほど輝点の輝度が高くなりますが、バックライトがその周辺も含めて強く点灯するのでハローが大きくなり、逆に設定値を下げると輝点に対してハローを抑えることができます。
高輝度領域に対して、バックライトが点灯する範囲が0~100の設定値に応じて広くなります。
設定値を大きくすると輝点そのものが小さくても高輝度を発揮できるようになりますが、輝点に対するカバー範囲が広くなるのでハローも広く生じます。各自お好みで調整してください。(下の動画は過去にレビューした別製品ですが、設定値に応じてこんな感じで変化します。)
加えて、ゲーム設定内に「バックライト輝度」、ピクチャー設定内に「DCR(ダイナミックコントラスト)」という設定があります。
名前からは似たような機能を類推しますが、「バックライト輝度」は高画質テレビで言うところのコントラストエンハンサー(コントラスト強調)的な機能で、一部設定値ではバックライトも調整するようですが、彩度やコントラストといった映像データそのものを調整する機能です。
低(Standard)/中(Expert)/高(Elaboration)の3段階で設定値があり、素の映像(オフ)よりも明暗や鮮やかさが強調されるので、初期設定のオフのままでもいいですし、お好みで設定値を選ぶ感じです。
一方で後者、「DCR(ダイナミックコントラスト)」は所謂、グローバルディミングの機能となっており、表示内容に合わせて画面全体のバックライト輝度を一律で可変調整します。こちらは基本的にオフ設定でOKです。
ここからはカラーキャリブレータを使用して、色域・色再現性・輝度・コントラスト・均一性など画質に直結するモニタの性能について詳細な検証結果を見ていきます。なおこれらのモニタ性能(特に輝度の均一性)については同じ製品であっても個体差が大きいのでご注意ください。
検証にはカラーフィルター式(色差式)のCalibrite Display Plus HLとDatacolor Spyder X2 Ultra、そして分光式(スペクトロメーター)のX-Rite i1 Basic Pro 3を使用しています。
「Titan Army P32A6V」のディスプレイ輝度について白色点の輝度をOSD設定別で測定しました。OSD上の輝度設定10%刻みで0%~100%の輝度変化は次のようになっています。
「Titan Army P32A6V」において、一般に見やすい明るさと言われる120cd/m^2は輝度20%前後、室内照明に依りますが個人的に見やすいと感じる明るさの180~200cd/m^2は輝度30~40%前後です。
「Titan Army P32A6V」はSDR表示でも最大輝度が400cd/m^2以上なので比較的に明るいモニタです。
「Titan Army P32A6V」のディスプレイ輝度の均一性(Uniformity)を検証しました。画面中央の輝度が約120cd/m^2になるOSD設定において、画面を横7×縦5の35分割として各位置の白色点の輝度を測定し、中央輝度を基準にしたパーセンテージで等高線マップにしています。
「Titan Army P32A6V」は35カ所の測定点のうち、差分10%を超えるポイントがなく、上下の最大差分でも10%程度という非常に優秀な均一性を発揮しました。
液晶モニタにおいて輝度の低下が特に大きい四隅&四辺は、上のような領域分割測定では見落とされてしまうので、同様に中央120cd/m^2を基準にして個別に測定したところ次のようになりました。
「Titan Army P32A6V」は外周付近に注目してみても輝度低下の大きいところで20%以内なので、やはり輝度の均一性は優秀です。
相対的に目立つという意味では、白色の単色表示などで左右端の1cmくらいが若干暗くなっているのに気づく程度です。
参考までに輝度と色温度による色差の分布です。「Titan Army P32A6V」については、今回入手した個体の場合、中央を白色基準として、左下が若干暖色寄りでオレンジがかっており、逆に、上端や右上が少し寒色寄りでした。ただ上のように撮影した写真で注視して気づく程度の色差なので、実機の目視ではほとんど気になりません。
あと直下型Mini LEDバックライトを採用する一部の製品では、ローカルディミング無効化のSDR表示でもバックライト配列による縞模様が浮かぶことがありますが、「Titan Army P32A6V」にはそういった症状はなく、単色でも均一に表示されました。
画面中央の白色点が約120cd/m2になるOSD設定において「Titan Army P32A6V」のブラックレベルを測定したところ次のようになりました。ブラックレベルの測定にはX-Rite i1 Display Pro Plusを使用しています。
またこの時のコントラスト比も算出したところ次のようになっています。なおコントラスト比に大きく影響するブラックレベルはコンマ2桁での測定になるため測定精度が若干怪しく、ブラックレベル0.01の差でコントラスト比が大きく変わるので参考程度と考えてください。
続いて「Titan Army P32A6V」の色域と色の正確性を検証してみました。
まずはモニタのOSD設定を標準設定にして(ディスプレイ輝度のみ120cd/m^2になるように調整)、任意のカラープロファイルを適用しない場合、次のようになりました。
「Titan Army P32A6V」はsRGBだけでなく、Adobe RGBとDCI-P3の全てを100%カバーするという極めて広い色域を実現しています。
HDR表示の色域のスタンダードであるRec2020もカバー率が87%となっており、2023年の液晶ディスプレイとしては最高峰の性能です。
一方で色の正確性も平均ΔEが0.76となっており、標準設定のままでも非常に優秀です。X-Riteによると『ΔE=1程度で2つの色を横にくっつけて見比べた時に違いが判別できるレベル』とのこと。
「Titan Army P32A6V」は標準モードだと液晶パネルの性能を最大限に発揮し、上のような非常に広い色域で動作しますが、ピクチャーモードでsRGB/Adobe RGB/DCI-P3の各色域モードを選択することで、各色域に一致するエミュレート動作も可能です。
次にX-Rite i1 Basic Pro 3を使用してカラーキャリブレーションを行いました。キャリブレーション設定は下のスクリーンショットの通りですが、i1 Profilerの標準設定をそのまま採用しています。
「Titan Army P32A6V」では標準モードかつ、色温度を標準設定(ウォーム)にするとRGBの強さに差が大きいとアラートが出たので、手動で調整できるユーザー設定モードでRゲイン(赤)=48, Gゲイン(緑)=50, Bゲイン(青)=50としてキャリブレーションを行いました。
X-Rite i1 Basic Pro 3によってカラーキャリブレーションで作成したICCファイルを適用し、同じくX-Rite i1 Basic Pro 3で行った品質検証(色の正確性の検証)の結果は次のようになっています。X-Rite i1 Basic Pro 3は分光式(スペクトロメーター)のカラーキャリブレータなので、測定精度はこちらの方が高いはずです。
上の測定結果ではカラーキャリブレーション前の色の正確性はΔE 0.76でしたが、カラーキャリブレーション後にX-Rite i1 Basic Pro 3で測定した色の正確性はΔE 0.4とさらに優秀な数値です。
また分光型測色計(スペクトロメーター)で測定した輝度120cd/m^2における白色点のカラースペクトラムが次のようになっています。
カラースペクトラムから発色の良いモニタを見分けるざっくりとしたポイントは『RGB各色のピークが鋭く立ち上がり、かつ高さが同程度であること』です。一般的な液晶モニタは白色LEDバックライト(青色LEDを光源として赤緑(≒黄)蛍光体を組み合わせて白色を生成する)を採用しているので青色のピークが高くかつ鋭くなります。白色を基準として測定した場合、緑と赤のピークの高さは色温度のOSD設定で若干上下します。以上から簡単化すると『緑と赤のピークが鋭くなっているかどうか』をチェックすればカラースペクトラムの良し悪しがざっくりと判定できます。
一般的な液晶パネル(IPS/VA/TNに依らず)であれば下画像の左側のように青のピークだけが強く、残りの分離が弱い波形になりますが、LG製Nano-IPSで有名なKSF蛍光体や、Quantum Dot(量子ドット)といった最新技術が採用された液晶パネルは各色の分離が良く、ピークも急峻になります。
「Titan Army P32A6V」液晶パネルには量子ドット技術(Quantum Dot Technology)が採用されており、赤緑青の分離は良好かつ、それぞれのピークも鋭く尖っています。
量子ドット技術採用パネルはIPSでもVAでも非常に高価になる傾向ですが、発色や色再現性では頭1つ飛び抜けた性能です。
Titan Army P32A6Vの144Hzリフレッシュレートについて
「Titan Army P32A6V」の最大の特徴の1つである144Hzリフレッシュレートについてチェックしていきます。まずは「Titan Army P32A6V」の特徴の1つである”144Hzリフレッシュレート”について、その意味自体は特に説明せずとも読者はご存知だと思いますが、一般的な60Hzリフレッシュレートの液晶モニタが1秒間に60回の画面更新を行うのに対して、144Hzリフレッシュレートであれば標準的な60Hzの2.4倍となる1秒間に144回の画面更新を行います。
最近では競技ゲーマー向け製品で240Hzの超高速リフレッシュレートなゲーミングモニタも普及しつつあり、さらには、それを1.5倍に上回る360Hzの超々高速なリフレッシュレート対応製品も各社から販売されています。
1秒間に144回の画面更新を行う144Hzリフレッシュレートの物理的なメリットとしては、単純に秒間コマ数が増えるので映像がより滑らかになります。上の章で詳しく検証したようにリフレッシュレートが上がると応答速度も上がって細部がクッキリとしたシャープな映像に見えやすくなり、加えて画面更新間隔が短くなるので表示遅延が小さくなり、一般的な60Hz環境よりもスピーディーなプレイで他者を圧倒しやすくなります。
「Titan Army P32A6V」ではNVIDIA GeForce RTX 40/30シリーズやAMD Radeon RX 7000/6000シリーズなど最新グラフィックボードのDisplayPort1.4のビデオ出力に接続することによって、モニタリフレッシュレートを144Hzなどに自由に設定できます。
「Titan Army P32A6V」のUSB Type-Cビデオ入力はDisplayPort1.2相当の帯域となっており、4K解像度において120HzはカラーフォーマットがYUV422 8bitとなります。RGB 8bitに対応するのは60Hzまでです。
ゲーミングモニタに搭載されているUSB Type-Cビデオ入力は標準DisplayPortビデオ入力と同じバージョン(帯域)でDisplayPort Alternate Modeによって映像データを伝送することが多いので、勘違いのないよう注意してください。
ゲーミングPCとゲーミングモニタの接続にはDisplayPortを使用するのが現在の主流ですが、「Titan Army P32A6V」に搭載された2基のHDMIビデオ入力は最新規格HDMI2.1に対応しており、4K/120FPSの映像伝送が可能です。
NVIDIA GeForce RTX 30シリーズやAMD Radeon RX 6000シリーズなど最新グラフィックボードのHDMI2.1ビデオ出力と接続した場合、「Titan Army P32A6V」はフルRGBで4K/144Hzの表示に対応します。
「Titan Army P32A6V」のHDMIビデオ入力は上述の通り標準ではver2.1に対応していますが、出力機器に対する下方互換性を確保する設定が用意されています。
OSD詳細設定でHDMI Versionの項目をHDMI2.0にするとver2.0での動作となり、4K/60FPSが最大解像度になります。
モニタリフレッシュレートの設定は、NVIDIA製GPUの場合は上のスクリーンショットのようにNVIDIAコントロールパネルから、AMD製GPUの場合はWindowsのディスプレイ設定から行います。
オンライン対戦FPSなど競技性の高いゲームにおいて144Hzや240Hzなど高リフレッシュレートのモニタを使用した時の実用的なアドバンテージとして、ゲーム内視線を左右に振った時の視認性が上がるという例は直感的にもわかりやすいメリットですが、その他にもゲーム内遠方に存在して動いているエネミーやオブジェクトの視認性が上がるというメリットも存在します。
下の比較動画では4分割して映像を並べていますが、右下以外の3つは右下画面の緑枠部分を拡大するよう接写して、「SONY DSC-RX100M5」の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影したものになっています。リフレッシュレート別で左上は60Hz、右上は120Hz、左下は240Hzとなっていますが、赤枠で囲った建物の出入り口付近で左方向に移動する敵の動きはリフレッシュレートが上がるほど視認しやすくなるのがわかると思います。
またハイリフレッシュレートなゲーミングモニタでは表示遅延も小さくなります。
表示遅延が小さいメリットとしては、視認と操作の繰り返し応答が良くなることに加えて、例えば下の動画のように壁に隠れたターゲットが壁から出てきた時、画面に表示されるのが実際に速くなります。
240~360Hz・FPSでシステム遅延が小さい環境の攻撃側に敵(守備側)が見えているのに対して、一般的な60Hz・FPSでシステム遅延が大きい環境の守備側は敵(攻撃側)が見えていない様子がハッキリと映っています。
主観の画面表示を基準にしてみると、クロスヘア中央にターゲットをエイムしてから撃ち始めた場合、240Hzのほうが60Hzより先に着弾します。ターゲットが逃げる場合は50ms程度の差で撃ち漏らす場合もあります。
技術云々ではなく、単純に、クロスヘア中央にエイムするという同じタイミングで撃ちあっていたら、リフレッシュレートが高いモニタを使っている方が勝ちます。加えて操作と画面表示の繰り返し応答も早いので、当然、リフレッシュレートが高い方がエイムもスムーズになります。
高性能なゲーミングモニタには高性能なGPUが必要
なお、ゲーミングモニタのリフレッシュレート(と解像度/フレームレート)と対になって重要なのが、PCのグラフィック性能を左右するGPU、グラフィックボードです。ハイフレームレートはヌルヌル、サクサクと表現できるような快適なゲーミングを実現するだけでなく、上で説明したように競技系ゲームを有利に運ぶ意味でも重要ですが、ゲーミングモニタがハイリフレッシュレートに対応していても、PCのグラフィック性能が不足していて大元の映像データが60FPS前後しか出ていなければ宝の持ち腐れになってしまいます。
当サイトでは240Hz+の競技ゲーマー向けモニタや4K/120Hz+のラグジュアリーな画質重視モニタを検証するにあたりモニタ性能を最大限に発揮できるよう、2023年最新にして最速のウルトラハイエンドGPUを搭載したグラフィックボード「PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8 Gaming VERTO EPIC-X RGB OC 3FAN」を使用しています。
PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8は、ベイパーチャンバー構造のベースコアや、厚みのあるファンブレードをバリヤーリングで結合した重厚な冷却ファンを採用する4スロット占有大型GPUクーラーにより、各社AIBモデルの中でもトップクラスの静音性を実現しています。
メーカーのPNYは2022年に株式会社アスクが販売代理店契約を結んだばかりの新参なので国内での知名度は高くありませんが、北米など海外市場では30年以上に渡りコンシューマーならびにビジネス向けで電子機器の製造・販売を行う大手メーカーです。
国内正規品なら代理店を介してPNY公式のグローバル保証と同じ3年間の長期保証が受けられるところも魅力です。
・「PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8」をレビュー
「Titan Army P32A6V」のポテンシャルを最大限に引き出すには、元から軽めのPCゲームや画質設定を下げた最新PCゲームであってもグラフィックボードのGPU性能はかなり高い水準で要求されます。
ゲーミングモニタとして「Titan Army P32A6V」を使用するのであれば2023年最新GPUであるNVIDIA GeForce RTX 4080/4090やAMD Radeon RX 7900 XT/XTXがおすすめです。
・GeForce RTX 40シリーズのレビュー記事一覧へ
・GeForce RTX 30シリーズのレビュー記事一覧へ
・Radeon RX 7000シリーズのレビュー記事一覧へ
非可逆圧縮伝送機能「Display stream compression (DSC)」について
視覚損失のない非可逆圧縮伝送機能「Display stream compression (DSC)」について説明しておきます。Titan Army P32A6Vの応答速度・表示遅延
次にゲーミングモニタのハードウェア性能として特に重要な、「Titan Army P32A6V」の応答速度や表示遅延についてチェックしていきます。まずは「Titan Army P32A6V」の応答速度について検証していきます。
なおゲーミングモニタを選ぶ、もしくはモニタの応答速度や残像を評価する上で重要な予備知識である『液晶モニタの応答速度とオーバードライブ機能』についてはこちらの記事で簡単に紹介しているので、よくわからないという人は先に確認してみてください。
・ゲーミングモニタの選び方[1] 応答速度とオーバードライブについて
「Titan Army P32A6V」のOSDメニュー上ではオーバードライブ機能は「応答速度」の名前で配置されています。オーバードライブ補正の強度をオフ、標準、高速、超高速の4段階で設定ができて、標準設定は高速になっています。
応答速度の確認には「UFO Test: Ghosting」を使用します。同テストではUFOが移動する背景カラーを選択できますが、今回の検証ではブラック/グレー/ホワイトの3色を選択しています。
背景カラーがブラックの場合は各液晶パネルにおいて応答速度は高速な数値を示すので、概ね理想的な応答を確認することになります。背景カラーがホワイトの場合の応答速度は、ドキュメントやウェブページでテキストをスクロールした時の文字の滲み度合いの参考になります。背景カラーがグレーの場合、中間色に移るまでの応答速度を比較することになるので、一般的なゲームプレイにおける物理的な残像の少なさの指標として参考になります。
まずは簡単にシャッタースピードを十分に速くして「UFO Test: Ghosting」の様子を写真撮影してみたところ、「Titan Army P32A6V」を144Hzリフレッシュレート、オーバードライブ設定”高速”で動作させると、ベストタイミグ前後でも1つ前の残像が見え、2つ前も薄っすらと残る感じでした。
さらに「Titan Army P32A6V」のリフレッシュレートを変えてみたり、他の液晶モニタを比較対象にしたりしながら、UFO Test: Ghostingの様子をSONY DSC-RX100M5の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影し、比較してみます。
「Titan Army P32A6V」の144Hzや120Hzにおいて最適なオーバードライブ設定は”高速”です。オフ/ノーマル/高速の順に補正が強くなり、応答はシンプルに綺麗になっていきます。”超高速”は過渡応答は高速になるもののオーバーシュートの逆像が非常に強く生じるので非推奨です。
CSゲーム機で一般的な60Hzについては120~144Hzで最適な”高速”にすると比較的に強くオーバーシュートの逆像が非常に強く生じてしまいます。
オーバーシュートの色滲みが気にならなければ、高速リフレッシュレートで最適応答を見せる”高速”に決め打ちでいいですし、気になるようなら60Hzの時は”ノーマル”に下げて下さい。
ここからはSONY DSC-RX100M5の960FPS(16倍速)よりもさらに高速な5760FPS(96倍速)のスーパースローモーションカメラを使用して「Titan Army P32A6V」の応答速度を比較検証していきます。
最初に5760FPSスーパースローでも144Hz時のオーバードライブ設定について確認しておくと、960FPSスーパースローでも見た通り、”高速”が144Hzや120Hzにおける最適な設定値です。”オフ”は素の残像が見え、”ノーマル”、”高速”の順番に応答速度が改善していきます。”超高速”は過渡応答は高速になるもののオーバーシュートの逆像が非常に強く生じます。
「Titan Army P32A6V」との比較対象には、同じく4K解像度/144Hz対応の「SONY INZONE M9」と「BenQ MOBIUZ EX3210U」を使用し、144Hzリフレッシュレートで統一しています。加えて138Hzリフレッシュレートですが有機ELゲーミングモニタのASUS ROG Swift OLED PG42UQも比較しています。
「Titan Army P32A6V」の応答速度は、BenQ MOBIUZ EX3210UやASUS ROG Swift PG32UQのAUO製量子ドットIPS液晶パネル採用製品と似たような感じです。量子ドット採用の液晶パネルなので発色は飛び抜けて優秀な反面、応答速度では一歩劣ります。
GTG 1msスペックの4K液晶ゲーミングモニタを代表してSONY INZONE M9と比較してみましたが、やはり、残像感のなさには差があります。FPSゲームなどでクッキリ画質を求めるなら、LG/AUO/InnoluxのKSF蛍光体構造の液晶パネルが現状ではベストです。
続いてスーパースローモーション動画ではなく、オシロスコープ&光プローブのような光センサーを利用した定量的な測定で応答速度についてチェックしていきます。
ここで確認するのは製品スペックに置いて『〇〇s (GTG)』などと表記される性能そのものです。統計的な扱いや解析には差があるかもしれませんが。
「Titan Army P32A6V」の最大リフレッシュレートで最適OD設定を適用した時の応答速度とオーバーシュートエラーのヒートマップは次のようになっています。
ゲーム機や動画視聴において一般的な60Hzリフレッシュレートにおいて、「Titan Army P32A6V」に最適OD設定を適用した時の応答速度とオーバーシュートエラーのヒートマップは次のようになっています。
ゲーミングPCだけでなくPlayStation 5やXbox Series X/Sといった最新ゲーム機も対応する120Hzの高速リフレッシュレートにおいて、「Titan Army P32A6V」に最適OD設定を適用した時の応答速度とオーバーシュートエラーのヒートマップは次のようになっています。
最後に「Titan Army P32A6V」の表示遅延(内部遅延)について測定を行いました。
モニタにはGPUのビデオ出力が送られてきてから実際にモニタに表示されるまで遅延が存在し、この遅延が大きいと例えば、FPSゲームでゲームパッドのトリガーやマウスのクリックによる操作からワンテンポ遅れて、マズルフラッシュが表示される、といった現象が発生します。人間は当然目で見てから操作するので、格闘ゲームやFPSゲームなど1,2フレームを争うような競技性の高いゲームにおいてはモニタの表示遅延が可能な限り小さいことが望まれます。
システム表示遅延やディスプレイ表示遅延の測定には、フォトセンサーを使用した特殊な測定機器「PC Gaming Latency Tester」を使用しています。当サイトのレビュー用に特注した機器なので、詳細についてはこちらの記事を参照してください。
「Titan Army P32A6V」やその他の比較モニタのディスプレイ表示遅延の測定結果は次のようになりました。測定方法的に遅延が2ms以下であればディスプレイ内部の表示遅延は誤差の範囲内で十分に小さいと考えてOKです。
「Titan Army P32A6V」は60Hz~144Hzのリフレッシュレートで理想的なディスプレイ表示遅延を発揮しています。
「Titan Army P32A6V」やその他の比較モニタのシステム表示遅延の測定結果は次のようになりました。この測定値は一般的なPCゲームにおける操作から画面表示の変化までの遅延に一致します。
グラフの通りリフレッシュレートを上げると応答速度だけでなく表示遅延も改善するのでゲーマーにとってハイリフレッシュレートなゲーミングモニタを選択するメリットは大きいということが分かると思います。
Titan Army P32A6Vの可変リフレッシュレート同期について
続いて「Titan Army P32A6V」が対応する可変リフレッシュレート同期機能「AMD FreeSync / NVIDIA G-Sync Compatible(VESA Adaptive-Sync、HDMI Variable Refresh Rate)」についてチェックしていきます。モニタの画面更新(リフレッシュ)に関する基本的な予備知識や、「AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync、HDMI Variable Refresh Rate)」と「NVIDIA G-Sync Compatible」の関係についてはこちらの記事を参考にしてください。
・ゲーミングモニタの選び方[3] FreeSyncとG-Sync Compatibleについて
なお当サイトのレビューではNVIDIA環境について、G-Syncモジュールが搭載されたモニタにおける可変リフレッシュレート同期機能を単純にG-Syncと呼び、AMD FreeSync(VESA Adaptive-Sync)に対応したモニタにおける可変リフレッシュレート同期機能はG-Sync CompatibleもしくはAdaptive-Syncと呼びます。またドライバでそのモニタが正式にサポートされている場合はG-Sync Compatible認証取得済みと補足します。
「Titan Army P32A6V」は48Hz~144Hzの範囲内で「AMD FreeSync / NVIDIA G-Sync Compatible (VESA Adaptive-Sync、HDMI Variable Refresh Rate)」など可変リフレッシュレート同期に対応しています。2023年6月現在、GeForce Driver 536.23でG-Sync Compatible認証は未取得でした。
従来のNVIDIA製GPUではHDMI経由でG-Sync Compatibleは利用できないケースが多かったのですが、HDMI2.1では伝送技術の規格の一部としてVRR同期が内包されているので、「Titan Army P32A6V」ではHDMI経由でもG-Sync Compatibleを利用できます。
当然、AMD製GPU環境でもAMD FreeSyncを有効化できます。可変リフレッシュレート同期機能の対応フレームレートは48Hz~144Hzの範囲内です。
可変リフレッシュレート同期機能が正常に動作してリフレッシュレートが可変になると、「Titan Army P32A6V」のOSDメニューから確認できるリフレッシュレートがフレームレートに合わせて変動するようになるので、機能が正しく動作しているかどうかはここを見て確認してください。
以下、「Titan Army P32A6V」で可変リフレッシュレート同期機能を使用する手順について説明しますが、共通の確認事項として、OSD設定で「Adaptive-Sync」の項目をオンにしてください。
Titan Army P32A6VのHDR表示やCSゲーム機対応について
「Titan Army P32A6V」のHDR表示やCSゲーム機の対応(4Kエミュレートなど)についてチェックしていきます。HDR表示やCSゲーム機対応について | |
HDMI ver, ポート数 |
HDMI2.1(48Gbps, DSC1.2a非対応) ×2 |
HDR表示 | 対応 |
VRR同期 | 対応 |
カラーフォーマット DP1.4 |
4K/144Hz/10bit RGB |
カラーフォーマット HDMI2.1 |
4K/144Hz/10bit RGB 4K/120Hz/12bit RGB |
ピーク輝度(実測) | 1126cd/m^2 |
輝度認証 | - |
ローカルディミング | 対応、1152分割 |
4Kエミュレート | 4Kネイティブ対応 |
PlayStation 5 | 4K/120FPS対応, YUV422 |
Xbox Series X/S | 4K/120FPS対応 |
「Titan Army P32A6V」はVESAがPCモニタ向けに展開している輝度認証 VESA DisplayHDRの取得については記載がありませんが、HDR輝度として最大1000nitsを発揮することが製品仕様として記載されています。
さらに「Titan Army P32A6V」には2304個のMini LEDによる直下型LEDバックライトが採用されており、1152分割のフルアレイ型ローカルディミングに対応します。
VESAがMicrosoft Store上で無料アプリとして公開しているVESA DisplayHDR Compliance Testsから、「Titan Army P32A6V」のディスプレイ輝度の扱いが確認できました。(データの読み方については管理人も怪しいので参考までに)
HDR表示モードやOSD設定について
「Titan Army P32A6V」でHDR映像ソースを正常に表示するには、ゲーム設定の小項目として配置されている”HDR”をHDR標準に切り替える必要があります。初期設定ではオフになっており、この状態でHDR映像ソースが入力されても灰色っぽい画面になってしまうので注意してください。
HDRの設定をHDR標準に切り替えてもSDR表示には何も影響がありません。一方でオフにしていても、出力機器からはHDR対応モニタとして認識されてしまうので、オフにしておく意味はありません。
なおHDRの設定値についてはPIP/PBPを切り替えるなど一部の設定変更後にオフに初期化されてしまいます。メーカーにはFW修正等で対策を依頼していますが、ひとまず現状での対策としてホットキーの1つにHDRを登録して簡単に切り替えできるようにしておくのがオススメです。
HDR設定を有効にした状態でHDR映像ソースが認識されると、自動的にHDR表示モードに切り替わります。
HDRモードでは画面表示に関わるほぼ全ての設定がグレーアウトします。HDR映像ソースが入力されると輝度も自動制御になります。
テレビであればHDR表示でもSDR表示の時とほとんど同じように設定が可能なので、好みの画質(明るさ、色温度、彩度など)に調整することができないという点はHDR対応PCモニタの弱点です。
PC接続時の解像度やカラーフォーマットについて
「Titan Army P32A6V」はDisplayPort1.4ビデオ入力でPCと接続した場合、4K/144HzのHDR表示において、RGB 10bitのカラーフォーマットに対応します。「Titan Army P32A6V」をDisplayPortでPCと接続し、4K解像度においてリフレッシュレートを120HzにするとNVIDIA環境(536.40)では出力ダイナミックレンジのデフォルト設定が”限定”になってしまいます。
手動設定をすれば”フル”に変更可能ですし、またPC接続時は基本的に144Hzリフレッシュレートを選択するので、問題になることはないかもしれませんが、一応注意してください。
また「Titan Army P32A6V」のHDMI2.1ビデオ入力は最大48Gbpsのデータレートで映像データの伝送が可能です。一方、視覚損失のない非可逆圧縮機能 Display Stream Compression (DSC) 1.2aにはHDMIビデオ入力では非対応でした。
NVIDIA GeForce RTX 40/30シリーズなど最新グラフィックボードと接続した場合、4K/144Hz/HDR表示においてRGB 10bit、4K/120Hz/HDR表示においてRGB 12bitのカラーフォーマットを選択できました。G-Sync Compatibleなど可変リフレッシュレート同期機能も併用が可能です。
CSゲーム機接続時の4KエミュレートやHDCP対応について
「Titan Army P32A6V」に搭載された2基のHDMIビデオ入力はHDMI2.1に対応しているので、PlayStation 5やXbox Series X/Sを組み合わせた場合、4K/120Hzの表示が可能です。PlayStation 5やXbox Series X/Sのようにゲーム機が対応していればVRR同期機能も利用できます。
Titan Army P32A6VのHDR性能やローカルディミングについて
最後に「Titan Army P32A6V」のHDR表示における輝度性能、ローカルディミング対応、色性能をチェックしていきます。HDR表示における輝度性能について
HDR対応モニタ/テレビのHDRモードにおけるディスプレイ輝度は、高輝度領域の広さ(APL:Average Picture Level)や高輝度表示の継続時間に依存するので、i1 Display Pro Plusを使用してHDR時の最大輝度を条件別で測定してみました。VESA DisplayHDR Compliance Tests以外の測定はHCFRを使用しています。HCFRの測定ではパネルタイプに応じて理想的な性能を確認できるように背景カラーを、液晶パネルの場合は20%グレー、有機ELパネルの場合は0%ブラックとしています。
「Titan Army P32A6V」はVESA DisplayHDR Compliance Testsで確認すると、画面全体で1100cd/m^2以上という非常に高い輝度を発揮できました。ただし高APL、特に全画面白における最大輝度を維持できるのは3秒程度となっており、そこからさらに3秒程度かけて輝度が下がり、長時間維持できるのは600cd/m^2程度になります。
高輝度領域が10%部分のように一定以下に狭ければ1000cd/m^2前後の高輝度を長時間(少なくとも30秒以上)は維持できます。認証は取得していないようですが、VESA DisplayHDR 1000の基準をクリアする性能です。
高輝度領域に対するHDR輝度(APL:Average Picture Level)をもう少し細かく見ていくと、「Titan Army P32A6V」はAPLが50%以下であれば長時間に渡って最大輝度を維持できますが、75%で760cd/m^2、100%で600cd/m^2のように50%以上ではAPLに応じて持続輝度は下がります。
液晶ディスプレイは有機ELディスプレイと違って、広い範囲で高輝度を出すのは得意ですが、分割数の多いFALDでもハロー抑制との兼ね合いもあり、10%以下のような小さい輝点の高輝度表示には若干の制限がかかります。とはいえ2%や5%の小さい領域でも700cd/m^2を超える高輝度を発揮しています。
ローカルディミング対応について
「Titan Army P32A6V」は2304個のMini LEDによる直下型LEDバックライトが採用され、1152分割のローカルディミングに対応しています。HDR表示モードにおけるローカルディミングの動作は強制オンかつ自動制御です。SDR表示ではローカルディミングのオン/オフや輝点に対するバックライトの点灯強度(HaloContrast)の設定が可能ですが、HDR表示モードに切り替わるとローカルディミングは強制的にオンになります。
SDR表示においてローカルディミングをオフにしているとHDR表示モードにおいてOSD設定メニューではオフのまま設定値がグレーアウトしますが、ローカルディミング自体は機能しています。
なおSDR表示においてローカルディミングをオンにしたままHDR表示モードに移行しても、HaloContrastの設定値はグレーアウトして設定できませんし、またSDR表示で行った設定も引き継がれません。
FALD対応モニタの中にはOSD設定を変更することで『バックライトの速さ(更新頻度)』や『輝点に対するカバー領域』といったローカルディミングの動作が変わるものもありますが、「Titan Army P32A6V」にはその他にローカルディミング関連の設定値もないので、HDR表示におけるローカルディミングの動作は標準設定のみの自動制御です。
まず分かりやすいところから、現在10万円程度で販売されている4K/144Hz対応ゲーミングモニタの多くは、ローカルディミングに対応していても短冊状の1D型かつ分割数が10~20程度なので、輝点に対してかなりの広範囲でバックライトが点灯してしまうのがかなり微妙でした。
下の比較動画の通り1152分割でローカルディミングに対応した「Titan Army P32A6V」の良さは一目瞭然です。
「Titan Army P32A6V」のローカルディミングでは黒色表示かつ近傍に輝点がなければ、その部分のバックライトは完全に消灯します。輝点付近のバックライトのみが点灯するので、黒の表現力が高まっています。
輝点の輪郭を超えてバックライトが点灯するハローがやはりあるものの、1152分割のFALDなので漏れ出す範囲は狭めです。
ただし、FALDに対応したゲーミングモニタ(当サイトで過去にレビューしたSONY INZONE M9やAcer Predator X32 FP)と比べて、「Titan Army P32A6V」はバックライトの追従が若干遅く、輝点が高速で移動すると、液晶パネルの表示とバックライトの点灯位置が1,2フレーム程度ズレるのが気になりました。
続いて96分割FALDのSONY INZONE M9と比較してみました。
分割数に比例して1152分割FALDの「Titan Army P32A6V」のほうがハローの影響が小さいのが一目で分かります。ただし、上で見た通り「Titan Army P32A6V」はバックライトの追従が高速で動く輝点に対しては遅れがちです。
ハローを確認しやすいように斜めから撮影しているので、基本的な実用シーンである正面から見た時よりもハローの効果が強調されているのですが、やはりピクセルレベルで調光が可能な有機ELと比べると、1152分割でも輝点に対する光漏れはあります。
ローカルディミング、液晶バックライトの部分駆動は、明部暗部の境界を超えて明るく/暗くなったり、マウスカーソルのような小さい輝点に反応したりして、デスクトップ作業のように明暗の領域が綺麗に分かれるシーンでは違和感を覚えることがあります。
「Titan Army P32A6V」ではローカルディミングは2次元型で1152分割なのでバックライト自体の解像度も高そうに思えますが、縦横で言うと分割数は44×26程度しかありません。
ただダークモード的な暗いグレーがノッペリと広がるUIだとウィンドウを左右に振ったり動かした時に、個々のバックライトの軽微な色ムラでできる縞模様のようなパターンが気になるかもしれません。
ゲームシーンについて、PS5のメニューはグレー寄りの背景カラーに白色文字なので、フルアレイ型ローカルディミングではバックライト浮き、バックライト更新のチラつきが気になりやすいシーンです。
「Titan Army P32A6V」は1152分割で適度に分割数があるので文字の周りに薄っすらとモヤが見える傾向はあるものの、目立ったハローもなく違和感は薄いと思います。ただ項目を動かす時に正面から見ていても若干のバックライトのチラつき感はあります。
実際のゲームだと、FINAL FANTASY VII REMAKEの神羅本社ビル潜入直前のように暗くて細かい輝点のあるシーンでバックライトのチラつきが多少気になりました。スクリーンショットのように通路からスロープを下る辺りが分かり易いと思います。
ピクセルレベルで輝度を調整できる有機ELだけでなく、384分割FALDのAcer Predator X27でも違和感はない場面だったので、分割数を増やしたことで逆に気になりやすくなったのか、バックライト制御の上手さ(最適化)の問題だと思います。
ともあれ、バックライトをどこまで上手く制御できるかはFALD型液晶モニタの弱点というか課題の1つです。
HDR表示における輝度性能(EOTF)や色性能について
この章の最後に、「Titan Army P32A6V」のHDR表示における輝度性能(EOTF)や色性能についてもう少しだけ深堀りしていきます。性能の検証にはカラーキャリブレータとしてX-Rite i1Basic Pro 3やX-Rite i1 Display Pro Plusを、ソフトウェアはHCFR Colormeterを使用しています。
HCFRの測定ではパネルタイプに応じて理想的な性能を確認できるように、液晶パネルの場合は50%部分/背景カラー20%グレー、有機ELパネルの場合は10%部分/背景カラー0%ブラックとしています。
まずは輝度性能について、標準白100nits/最大白10000nitsのガンマ曲線(SMPTE 2084)に対して、実際のディスプレイ輝度(EOTF)は次のようになりました。
「Titan Army P32A6V」は最大で1100nitsの高輝度を発揮し、40~75% ホワイトの区間は65%辺りで少し浮いているもののリファレンスに近い輝度で動作します。
75~100% ホワイトの区間はHDRメタデータのMaxCLLに依存し、リファレンスからは外れるものの、MaxCLLまでの輝度で階調を維持するように比例曲線/直線を描きます。
なおモニタとPCの両方でVRRが有効になっていると、75~100% ホワイトの挙動が変化し、輝度性能の限界である1100nitsを超える75~100% ホワイトは一律で最大輝度にクロップされます。中間やブラック、後述の彩度マップについては同等です。
50cd/m^2未満の暗い階調に注目すると、40% ホワイト以下、特に20%以下ではリファレンスよりも実際の輝度がかなり下がっていました。
コンテンツ側で暗部の明るさを調整できない場合、コンテンツメーカーの想定よりも結構暗い表示になってしまいます。
HDR対応テレビであればHDR映像ソースでも画面の明るさや色みを好みに調整できますが、「Titan Army P32A6V」はHDR表示モードにおいて明るさや色みは基本的に自動制御となるので、注意してください。
続いてHDR表示における色性能(色域、色精度)をチェックするためCIE Diagramを作成しました。
「Titan Army P32A6V」はHDR標準モードにおいて、彩度の飽和は均等で変にバラつかず上手く表現できているのですが、全体的に少し青みあるマゼンタ色寄りにシフトするような彩度マップになっています。
彩度の飽和は均等なので色味が変に破綻するわけではありませんが、Rec2020やDCI-P3を想定して作成されてHDRコンテンツは少し寒色寄り、マゼンタ色がかった色味(緑の発色が弱め)になってしまいます。
広色域モニタの場合、カラーキャリブレーターの測定値から算出した色温度が実際に視覚で体感するものに一致しないので、正確に測色できる低色域モニタを6500K(D65)にキャリブレーションし、それを基準に目視で色温度を調整するという手法で色温度を確認してみました。測色はX-Rite i1 Display Pro Plusを使用しています。
基準モニタの色度(0.3133, 0.3292)に対して、「Titan Army P32A6V」はどのHDRモードでも色度は『0.3066, 0.3083』程度となり、目視調整後は『0.3099 x 0.3341』となりました。
目視調整なのでアバウトな評価ではあるものの、「Titan Army P32A6V」のHDR表示はy座標が特に小さく、緑色が大分弱いので、D65と横並びで見比べるとマゼンタ色がかって見えました。色温度的には7000~8000Kくらい、さらに薄っすらと赤紫色がかる方に色がズレている感じです。
目は色温度に順応するので「Titan Army P32A6V」を見て長時間作業してから、D65にキャリブレーションした画面をみると、かなり緑色がかって見えました。「Titan Army P32A6V」を含めて複数画面で作業する場合はカラーキャリブレーションは必須だと思います。
Titan Army P32A6Vのレビューまとめ
最後に「Titan Army P32A6V」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- 画面サイズ32インチで4Kゲーミングモニタとしてはちょうどいいサイズ
- 発色や視野角に優れたIPS液晶パネル
- 量子ドット技術採用により実測で100% DCI-P3、100% Adobe RGBの広色域
- 液晶パネルは反射防止のアンチグレア
- ビデオ入力はDisplayPort1.4×1、HDMI2.1×2、USB Type-C×1の計4系統
- DP1.4はDSC機能によって4K/144Hz/10bit RGB/HDR/VRRに完全対応
- HDMI2.1は4K/144Hz/10bit RGB/HDR/VRRに完全対応
- 可変リフレッシュレート同期機能に対応(48FPS~144FPS)
- HDR表示において、実測で最大1100cd/m^2
- 直下型Mini LEDバックライトで1152分割のローカルディミングに対応
- HDMI2.1搭載なのでPS5やXbox SXを接続時は4K/120FPSやVRR同期に対応
- モニタ本体重量6.5kgかつVESAマウント対応でモニターアームを使用可能
- 国内では発売未定
- USB Type-Cビデオ入力の帯域はDisplayPort1.2相当
- ビデオ入力毎にOSD設定を適用できない
- HDR対応テレビと異なり、HDR表示における画質設定はほぼできない(PCモニタ 一般の特長)
「Titan Army P32A6V」は3840×2160の4K解像度ながらネイティブ144Hzの高速リフレッシュレートで動作し、DP1.4 DSCやHDMI2.1によって4K/144HzをフルRGBで表示しながら、可変リフレッシュレート同期機能に加えて、1000ニットを超える超高輝度なHDRにも対応するというハイエンドゲーマー待望の欲張りスペックを実現した製品です。
「Titan Army P32A6V」はゲーミングモニタではまだ採用の少ない最新規格HDMI2.1対応ビデオ入力を搭載しており、PlayStation5やXbox Series X/Sを接続した場合、4K/120FPSの表示が可能、またゲーム機が対応していれば可変リフレッシュレート同期機能も使用できます。
HDR表示については、実測最大1100nitsの超高輝度と1152分割のバックライト部分駆動によって、黒が引き締まって立体感が出たり、太陽やフラッシュ・爆炎の眩しさが大迫力で感じられたりと、ゲーム体験のリアリティを向上させる意味で高い効果を感じられました。
分割数の多いFALDに対応した液晶テレビはサイズが55インチ以上になってしまいますが、そういった大型テレビを置けない私室で、PlayStation5やXbox Series X/Sを使いたい人には最適なモニタです。
ただし液晶テレビと比較してHDR表示における設定の自由度が低いといったPCモニタ的な弱点もあります。 一長一短な部分なので各自の用途や好みに合わせて、事前によく検討してみてください。
以上、「Titan Army P32A6V」のレビューでした。
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4K/144Hzの32インチ量子ドットIPS液晶ゲーミングモニタ「Titan Army P32A6V」をレビュー。
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) January 15, 2024
1152分割FALDの直下型Mini-LEDバックライトを搭載し、最大輝度1000nits超のHDR表示やVRR同期機能に対応。https://t.co/Um5BmKDqha
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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