スポンサードリンク
国内ハードディスク販売専業商社 フィールド・レイクから発売中の、高速書き込みと信頼性に定評のあるCMR記録方式、12TB以上の⼤容量製品ではヘリウム充填も採用するエンタープライズグレードな筐体設計をベースにしたNAS向けHDD「TOSHIBA N300 NAS HDD 12TB(型番:N300A12-HDWG51CUZSVA)」をレビューします。
レビュー目次
1.TOSHIBA N300 NAS HDDを開封&実機チェック
2.TOSHIBA N300 NAS HDDの特長について
・販売元による充実したサポート体制
3.TOSHIBA N300 NAS HDDの基本仕様とベンチ
4.12TB x2 RAID0で8TB SATA SSDと比較してみる
5.TOSHIBA N300 NAS HDD 12TBのレビューまとめ
製品公式ページ:https://www.fieldlake.com/products/toshiba/n300-series-jp/
【機材協力:正規代理店 株式会社ケミック】
TOSHIBA N300 NAS HDDを開封&実機チェック
まずは「TOSHIBA N300 NAS HDD」の製品本体やスペックについて紹介します。「TOSHIBA N300 NAS HDD」は製品イラストや特長がカラープリントされた厚紙パッケージで梱包されていて、中のHDD本体は透明プラスチック製スペーサーに収められ、さらにエアパッキンの袋で保護されていました。
製品パッケージを見ての通り、今回入手したサンプル機は12TBモデルです。
続いて「TOSHIBA N300 NAS HDD」の本体をチェックしていきます。
3.5インチサイズのHDDなので外形寸法や基本的な見た目は普通にHDDです。側面と底面のネジ穴位置も規格通りです。
「TOSHIBA N300 NAS HDD 12TB」の天面は平らな金属板1枚でカバーされており、見た目にもエンタープライズグレードHDDと遜色ない堅牢さや高級さを感じます。
筆者もHDDに触ったのは以前、SSDとHDDのゲームロード速度比較記事を作成した5年前くらいに遡るので、当時のHDDと比べると、「TOSHIBA N300 NAS HDD」は見た目も筐体設計もスマートで洗練されてる感じです。
今回レビューするのは「TOSHIBA N300 NAS HDD」の12TBモデルですが、重量は過去にレビューしたWD製4TB HDDとほぼ同じで640g程度でした。
TOSHIBA N300 NAS HDDの特長について
「TOSHIBA N300 NAS HDD」はその名前の通り、NAS向けに設計されたHDDです。一般コンシューマー向けの多くのHDD製品は24時間365日のようなハードな稼働状態は想定されていませんが、同製品はそういったワークロードに対応し、なおかつ3年間の製品保証も付いています。
「TOSHIBA N300 NAS HDD」は全容量で512MBのキャッシュを搭載し、ディスク回転速度 7200RPM、SATA HDD製品最速クラス性能となる281MB/sの最大読み書きデータ転送速度を実現しています。
その他にも信頼性や長寿命に影響するものとして、『RVセンサー搭載』、『CMR記録方式採用』、『ヘリウム充填技術採用など』、同製品の特長が製品パッケージ背面には列挙されています。
「TOSHIBA N300 NAS HDD」は共振等で誤作動が起きないようにRVセンサー(回転振動抑制センサー)を搭載することで、最大8台までの同時稼働が可能です。NASのように横並びの狭い空間に多数のHDDを設置する機器では信頼性確保において必須とも言える機能です。
またHDDの記録方式にはCMRとSMRがありますが、「TOSHIBA N300 NAS HDD」には書き込み性能が高く、データ保存の信頼性も高いCMR方式が採用されています。
SMRは面積当たりの記憶容量を大きくして、容量単価を下げることを目指したのですが、書き込み速度の低下や書き込みの繰り返しに伴うデータ保存の信頼性があって微妙とユーザーから評価されています。
後発のSSDで例えるのは変な感じですが、エンドユーザーレベルでは『HDDにおいてCMRはTLC型SSD、SMRはQLC型SSD』のような認識でOKです。
さらに12TB以上の容量モデルにはHDD筐体内にヘリウム充填技術が採用されており、一般的な空気充填よりも抵抗が低く抑えられるので、動作安定性が増すだけでなく、低消費電力にもなっています。
こういったエンタープライズ向けHDDと遜色ない筐体設計によって、年間ワークロード 180TBの耐久性と、MTTF 100~120万時間の信頼性を備え、24時間365日の連続稼働に対応するHDDになっています。
販売元による充実したサポート体制
これら高信頼性な製品設計だけでなく、販売元による製品サポートも充実しています。仮に故障が発生したとしても、同製品は販売元のフィールドレイクが提供する『東芝ハードディスク同時交換サービス』に対応しています。
読み書きエラーの発生など製品故障が明示的であり、納品書等で国内正規品を購入したことをちゃんと証明できるなど条件はありますが、製品販売元のフィールドレイクからの先出しで交換品が届くので(受け取りの際に同時に故障品を引き渡し)、一般的な故障品を返送してから交換品を送付という手順よりも、正常動作する交換品が届くまでの待機時間を最小限にできます。
RAID5のような冗長性を確保するストレージ方式を採用している場合、複数台あるHDDのうち1台だけが故障してもデータの復元が可能ですが、そこからさらに他のHDDが破損するとデータを復元できなくなります。そういった緊急性が求められるシーンで『東芝ハードディスク同時交換サービス』は非常に助かるサービスです。
加えて、「製品交換時クラウドスペース無償提供サービス」も提供されており、HDDに不具合が生じた場合、ドライブ交換期間中にデータバックアップ用として1TBのクラウドスペースが最大40日間使用できます。
最近のHDDは10TBを超えるものも多いので、1TB程度のクラウドスペースでは足りない、というのは確かにそうで、さらに大容量なクラウドスペースの提供も検討したようですが、そもそも一般的な1Gbpsの光回線の場合、1TBのデータ転送でもほぼ丸一日かかってしまうので、絶対に確保する必要があるデータに限定してバックアップを行うためのサービスとして1TBという容量を設定したとのこと。
TOSHIBA N300 NAS HDDの基本仕様とベンチ
メインの検証である8TB SATA SSDとの比較の前に、「TOSHIBA N300 NAS HDD 12TB」の基本仕様や性能についてPCに接続した状態で確認しておきます。Windows PCで「TOSHIBA N300 NAS HDD 12TB」のシングルボリュームを作成すると使用可能な容量は10.9TBでした。
CrystalDiskMark8.0.4(アクセス設定:NVMe)の結果は次のようになっています。
「TOSHIBA N300 NAS HDD」は今回検証している12TBモデル含め、全容量モデルにおいて512MBの大容量キャッシュを搭載しているので、ベンチマークデータサイズが1GiBの場合、連続読み出しと連続書き込みが300MB/s前後になりますが、8GiBや16GiBにすると280MB/s程度なので公式仕様通りの性能です。
参考までに比較に使用する8TB SSD(Samsung SSD 870 QVO)で同じベンチマークを行うと次のようになります。
連続読み出しと連続書き込みの性能差は2倍程度ですが、やはり4Kランダムの読み書きには100倍近い差があります。
この4Kアクセス速度の違いがPCのシステムストレージにした時のOSやアプリ起動や、ゲームのインストール用データストレージに使用した時のロード時間に大きく差が出る理由です。
一方で1つ当たりがGB単位の動画ファイルや、10~20MBになるミラーレス一眼カメラの写真ファイルのバックアップといった用途の場合、データ転送時間に対しては4Kランダムではなく連続読み出し・書き込みの速度が重要になります。
HDDとSSDでは連続読み出し・書き込みもストレージ1つで2倍程度の性能差がありますが、連続読み出し・書き込みはRAID0の構築によって容易に速度をスケーリングできるので、HDDは容量単価の差で複数台によるRAIDを構築すればSSDと同等以上の転送速度を実現でき、またパリティ分散による耐障害性も確保できます。
ちなみに、2024年11月現在、「TOSHIBA N300 NAS HDD」の12TBモデルは1台あたり税込み3.7万円で購入できます。
現在購入できる一般的な大容量SATA SSDはSamsung SSD 870 QVOくらいしかなく、同SSDの8TBモデルは11~12万円です。
8TB SSDを1台購入する予算で「TOSHIBA N300 NAS HDD」の12TBモデルが3台購入できます。容量に対するコストパフォーマンスは4.5倍です。
耐障害性も重視するなら実用的にはRAID10やRAID50を構築すると思いますが、今回はテスト機材確保の都合と、検証作業の簡略化のため、「TOSHIBA N300 NAS HDD」の12TBモデル 2台を使用してRAID0を構築しました。なおRAIDボリュームはWindows OSの機能(ストライプボリューム)を使用しています。
上に書いた通り、HDDでも連続読み出しと連続書き込みはRAID0(RAID10やRAID50も)によって容易にスケーリングさせることが可能です。
「TOSHIBA N300 NAS HDD」の12TBモデルを2台使用してRAID0ボリュームを作成し、CrystalDiskMarkを実行すると、連続読み出しと連続書き込みは単独ボリュームのほぼ2倍となる550~570MB/sに達します。
12TB x2 RAID0で8TB SATA SSDと比較してみる
今回は「TOSHIBA N300 NAS HDD」の12TBモデルを2台使用してRAID0ボリュームを構築し、8TB容量のSATA SSDであるSamsung SSD 870 QVO 8TBと大容量データをバックアップする時のデータ転送速度について比較してみます。検証に使用するデータとして、フルサイズミラーレス一眼カメラの写真・動画データを想定して、10GBの動画ファイルが100個入った約1TBの動画フォルダ、10MB~20MBの画像ファイル 58,000枚弱が入った約900GBの写真フォルダの2種類を使用しています。
データのコピーにおいては当然ですが、元データのあるストレージの読み出し性能とコピー先の書き込み性能の両方が重要になります。
検証ストレージのコピー相手、書き込み先/読み出し元となるストレージが必要なので、コピー相手にはPCIE4.0x4接続に対応した「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 8TB」を使用しています。
ファイルのコピーテストでも「TOSHIBA N300 NAS HDD」の12TBモデルを2台使用してRAID0ボリュームを構築していますが、アロケーションユニットサイズはWindows 11の既定値である8KBではなく1MBに設定しました。
動画ファイルの読み書きでは差は出ないのですが、1つ10~30MBの写真ファイルでも大量にあると読み出し速度のスケーリングに影響します。
「TOSHIBA N300 NAS HDD 12TB」で1TBの動画フォルダ、900GBの写真フォルダのコピーに要した時間の比較結果は次のようになりました。
まずは動画フォルダ(10GB x100)のコピーについてです。
動画ファイルは1つ1つのファイルがGB単位の大容量なので実際のコピーではCrystalDiskMarkベンチマークでいうと連続読み出し・連続書き込み性能が重要になってきます。
動画フォルダのコピー読み出しにおいて、「TOSHIBA N300 NAS HDD 12TB」のシングルボリュームによるコピー時間は63.5分ほど、読み出し速度は273MB/s程度です。
HDD 2台でRAID0ボリュームを構築すると、読み出し速度はほぼ2倍にスケーリングし、SATA接続のSSDと同等の速さで読み出しができるようになります。
動画フォルダのコピー書き込みにおいて、「TOSHIBA N300 NAS HDD 12TB」のシングルボリュームでは書き込み速度は264MB/sですが、RAID0によって2倍弱の1.8倍に高速化します。
比較に使用しているQLC型SSDはSLCキャッシュを超過すると書き込み速度が大きく低下してしまうので、100GBを超えるような大容量データの書き込みだと、x2 RAID0のHDDと比較してコピー書き込みの所要時間は3倍近くも差がでます。
続いて写真フォルダ(900GB Files:~58,000)のコピーについてです。
画像ファイル1つ1つは先の動画ファイル1つに比べると大幅に小さいですが、高解像度なミラーレス1眼カメラで撮影したJPEG撮って出し画像の場合、1枚が10~20MB程度なのでやはりCrystalDiskMarkベンチマークでいうと連続読み出し・連続書き込み性能が重要になってきます。
写真フォルダのコピー読み出しにおいて、「TOSHIBA N300 NAS HDD 12TB」のシングルボリュームによるコピー時間は58分ほど、読み出し速度は265MB/s程度です。
HDD 2台でRAID0ボリュームを構築すると、読み出し速度はほぼ2倍にスケーリングし、SATA接続のSSDと比較しても性能差は10%未満に収まる速さで読み出しができるようになります。
なお10~30MBサイズの写真ファイルを大量にバックアップして読み出す用途でRAIDボリュームを構築する場合は、アロケーションユニットサイズを1MB以上に設定してください。アロケーションユニットサイズが適度に大きくないとRAID0において読み出し速度のスケーリングが鈍くなります。(Windows 11でRAID0を構築した場合の既定値は8KB)
写真フォルダのコピー書き込みにおいて、「TOSHIBA N300 NAS HDD 12TB」によるコピー時間は81分ほど、書き込み速度は190MB/s程度です。
こちらもRAID0構築で書き込み速度は向上しますが、動画ファイルに比べてスケーリングは鈍く、40%弱程度の性能向上です。今回は比較対象がQLC型SSDなので優位な性能になっていますが、TLC型SSDが相手だとRAID0を構築しても書き込み速度は劣ります。
HDDでもRAID0を組めば読み出し速度はSSDと同等ですし、近年のNASはSSDをHDDのキャッシュにする機能もあるので、メインの保存領域はHDDにして、書き込みキャッシュとして1TB程度のSSDを用意するような使い方をすれば、大量な写真ファイルに対しても読み書き両方でSSDと同等の性能かつ、HDDの優れた容量単価を活かして大容量のNASを構築できます。
TOSHIBA N300 NAS HDD 12TBのレビューまとめ
最後に「TOSHIBA N300 NAS HDD 12TB(型番:N300A12-HDWG51CUZSVA)」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、レビュー後の所感となります。良いところ
- 全容量モデルで512MBキャッシュを搭載し、連続読み出し280MB/s
- 全容量モデルでCMR記録方式を採用
- 24時間365日の連続使用を前提としたEP級の設計
- 年間ワークロード180TBの耐久性と、MTTF 100万〜120万時間
- 12TBモデル以上はヘリウム充填採用で低温かつ低消費電力
- 先出交換やクラウドバックアップなどサポートが充実
- 保証期間は3年間
- SSDと比較して容量単価は4分の1以下 (2024年11月、8TB SSDと比較)
- HDD一般にランダム性のあるデータだとSSDより遅いので用途に合わせて選ぶ必要がある
HDDついてはヘリウム充填などで容量面ではまだ技術的に進化を続けていますが、読み書き速度といった性能面ではここ10年くらい上限がほぼ固まっており、NVMe SSDでGen4がGen5になってみたいな革新的な何かがあるわけではありませんが、そういう意味で「TOSHIBA N300 NAS HDD」はHDD製品トップクラスの読み書き性能です。
容量が12TB以上のモデルはヘリウム充填技術を採用することで、低温かつ低消費電力になり、製品動作の安定性も増しているので、12TB以上のモデルを選ぶのが特にオススメです。
データのランダム性が増すごとに読み書きにかかる時間はSSDに遅れを取るようになりますが、動画や高解像度写真といった連続性の大容量データを扱う分には、ランダム性能の低さはさほどネックにならず、HDDの優れた容量単価が活きてきます。自作PC用ストレージとしては採用はほぼ無くなっていますが、データバックアップ用NASなどの用途ではHDDもまだ余裕で現役です。
また単体では及ばずとも、容量単価の低さ(安さ)から複数台によってRAID0や耐障害性も重視したRAID50、RAID10を構築すれば連続読み書き性能はスケーリングさせることができます。
故障時にメーカー先出となる同時交換サポートや、障害発生時に最重要データに限って優先的にバックアップするためのクラウドスペースサービスなど同製品にはバックアップストレージとして運用する上で助かるサービスも無料で付帯するので、NAS用HDDを探しているなら「TOSHIBA N300 NAS HDD」を検討する価値はあると思います。
唯一、保証期間が5年ではなく3年になっているとことは気になるかもしれませんが、代わりに安価な製品価格へ反映されているので、価格を取るか、保証期間を取るかのトレードオフで各自検討してください。
同社からは5年保証のNAS向けHDDとしてMG-JPシリーズ(クラウドサービスには非対応)も販売されているので、5年保証を重視する人はこちらを検討してみてください。
以上、「TOSHIBA N300 NAS HDD 12TB」のレビューでした。
記事が参考になったと思ったら、ツイートの共有(リツイートやいいね)をお願いします。
CMR記録方式やヘリウム充填などエンタープライズ級の筐体設計でサポートも充実なNAS向けHDD「TOSHIBA N300 NAS HDD 12TB」をレビュー。
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) December 4, 2024
容量単価の安さを活かしたx2 RAID0で8TB SATA SSDとデータバックアップ性能を徹底比較https://t.co/K7XN4Isu8K pic.twitter.com/csqCrZa4iN
関連記事
・おすすめSSDまとめ。QLC/TLCやPCIE4.0/5.0など最新SSD事情を解説・SSDレビュー記事の一覧へ <NVMe SSD><M.2 SSD><SATA SSD>
・PS5増設にオススメなM.2 SSDを解説。ヒートシンク搭載モデルも!
・「WD Blue SN580 NVMe SSD 1TB / 2TB」をレビュー
・「Crucial T500 1TB / 2TB」をレビュー
・「WD_BLACK SN770 NVMe SSD 1TB」をレビュー
・「Crucial T705 2TB」をレビュー。PCIE5.0x4理想スペックなSSDを徹底検証
・「Solidigm P44 Pro 1TB」をレビュー。完全版SK Hynix Platinum P41か!?
・「Samsung SSD 990 PRO 1TB」をレビュー。性能も電力効率もトップクラス!
・「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 1TB / 2TB」をレビュー
・「Samsung SSD 980 1TB」をレビュー。堂々の最速更新
・【4TBで5万円台】 Crucial P3 PlusでPS5のロード時間を比較してみた
・「Nextorage NE1N 1TB」をレビュー
・「ASRock Blazing Quad M.2 Card」をレビュー。連続40GB/s越えなるか!?
(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
スポンサードリンク