WD_BLACK SN850 2TB HS サーマルパッド交換「WD_BLACK SN850 NVMe SSD with Heatsink」のメモリコントローラーがサーマルパッドを介してヒートシンクと接していない、と話題なので、十分な厚みのサーマルパッドへ交換した場合に冷え具合が変わるのか検証してみました。



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サイズ・性能の要件を満たし、ヒートシンクも標準搭載なのでPS5の増設用SSDとしてイチオシ製品に挙げている「WD_BLACK SN850 NVMe SSD with Heatsink」ですが、主にメモリコントローラーがサーマルパッドを介してヒートシンクと接していない、と話題なので、十分な厚みのサーマルパッドへ交換した場合に冷え具合が変わるのか検証してみました。



SN850無印よりも高性能ながら低消費電力になった後継モデル「WD_BLACK SN850X NVMe SSD」のレビュー記事も公開中です。



WD_BLACK SN850 ヒートシンク搭載版のサーマルパッドを交換してみる

まずは「WD_BLACK SN850 ヒートシンク搭載版」に標準搭載されたヒートシンクを取り外し、サーマルパッドを交換してみます。

なお今回は自己責任で分解、ヒートシンクの取り外しを行っています。
「WD_BLACK SN850 ヒートシンク搭載版」のヒートシンクには封印シール等はありませんが、基本的にヒートシンク標準搭載のSSDにおいてヒートシンクの取り外し(分解行為)は、正規保証の対象外になる行為です。製品ロゴシールを剥がすだけでもアウトな場合が多いので。
今回は検証記事作成のために分解していますが、繰り返しますが保証対象外になるので基本的には非推奨の行為なのでご注意下さい。


まずは手元のサンプルをチェックしてみましたが、確かにメモリコントローラー部分でサーマルパッドとヒートシンクの間には隙間がありました。
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「WD_BLACK SN850 ヒートシンク搭載版」のヒートシンクはバックプレートから伸びている三角形のツメ4つで固定されています。
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バックプレートはアルミニウム製でそれほど硬くはないので、細いマイナスドライバーを隙間に突っ込んで、外に開くとツメの固定を緩めるのは比較的に簡単です。なお大きく外に曲げすぎると根本が折れて千切れる可能性もあるので加減には注意が必要です。
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バックプレートのツメを緩めるとヒートシンクは簡単に取り外すことができました。
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標準で貼り付けられているサーマルパッドの厚みは1.0mm程度でした。
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サーマルパッドの厚みを調整する方法として、付属サーマルパッドはそのまま流用し、バックプレートに厚みの大きいサーマルパッドを挿入して下駄を履かせるという方法も検討していたのですが、M.2 SSD基板とバックプレートは熱伝導両面テープでかなり強く接着されていたので断念しました。
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というわけでシンプルに厚みの大きいサーマルパッドに貼り替える方向で進めました。
貼り替え用のサーマルパッドには「Thermal Grizzly Minus Pad 8」の1.5mm厚を使用しています。
Thermal Grizzly Minus Pad 8はセラミック、シリコン、微粒子化された酸化アルミニウムで構成された熱伝導パッドとなっており熱伝導効率が8.0W/m・Kと高い効率を実現しています。当サイトではグラボの水冷化などにも使用しているお馴染みの高性能サーマルパッドです。
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標準サーマルパッドと同じように、M.2端子の隣にあるメモリコントローラーと、逆側半分にある2枚のメモリチップを覆うようにサーマルパッドをカットして貼り付けました。
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あとは分解した時と逆の手順、ヒートシンクを乗せてバックプレートのツメを閉じればヒートシンクの固定完了です。1.5mm厚のサーマルパッドに交換することでメモリコントローラーとヒートシンクの隙間はしっかりと埋まっています。
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WD_BLACK SN850 ヒートシンク搭載版をサーマルパッド交換前後で比較

続いて、WD_BLACK SN850 ヒートシンク搭載版の冷え具合やアクセススピードがサーマルパッドの交換前後で変わるのか比較検証してみました。

まずは単純に自作PCのマザーボードに組み込み、ベンチテーブル上、無風状況下で連続して負荷をかけて、センサーモニタリングの温度、サーマルスロットリング(メモリコントローラーやメモリチップの高温による性能低下)の発生の有無、サーモグラフィによる表面温度をチェックしました。
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測定時の検証負荷としてはCrystalDiskMark8.0.4 (NVMe SSD, 8GiB)を使用し、間を置かず複数回ベンチマークをループさせ、その間のSSD温度や読み出し・書き込み速度のモニタリング値はHWiNFOを使用してログを取得します。5回ループさせるので負荷をかけ続ける時間は25分程度です。
NVMe SSD_temp test
補足すると、PS5においては基本的にゲームロードによる読み出し負荷しか発生しないはずなので、このテスト方法で温度的、速度的に問題がなければ、PS5組み込み時も安定動作を期待できるはずです。さらに付け加えるならPC利用でもこれだけの負荷が発生することはそうそうありません。


サーマルパッド交換前のWD_BLACK SN850 ヒートシンク搭載版について、無風状況下でCrystalDiskMark8のループ実行によるストレステストを行ったところ、だいたい5分くらいでサーマルスロットリングによる速度低下が発生しました。
WD_BLACK SN850でソフトウェアモニタリング可能なセンサー温度はメモリチップ付近なので、サーマルスロットリングが繰り返される10分以降に温度が下がっていることから、サーマルスロットリングの原因はメモリコントローラー温度であると推測できます。
WD_BLACK SN850 2TB HS_temp_no-air_original
続いて、同じく無風条件下で、サーマルパッド交換後のWD_BLACK SN850 ヒートシンク搭載版で検証した結果が次のようになっています。グラフを見ての通り、温度やアクセススピードの傾向はサーマルパッドの交換前後でほぼ同じでした。
前述の通り、おそらくメモリコントローラーの温度が原因でサーマルスロットリングが発生するので、メモリチップの熱の転写を受けやすいためか、サーマルパッドを交換後のほうが、サーマルスロットリングが出やすい印象ではあります。大きな差ではありませんが。
WD_BLACK SN850 2TB HS_temp_no-air_tp
負荷テスト終盤におけるそれぞれのサーモグラフィを見てみると、サーマルパッドの交換前は表面温度が平均78.9度、サーマルパッドの交換後は平均82.1度です。
WD_BLACK SN850 2TB HS_FLIR_no-air_original-horz

『どちらもサーマルスロットリングが出ませんでした』だけでは検証にならないと思い、厳しめの負荷をかけてサーマルスロットリングを発生させてみましたが、こういう結果だったので、続いて、M.2 SSDの直上にエアフローがある状態について検証しました。
下写真のようにファンはSSDに向けて直接に風を吹き付けるのではなく、SSD上の数cmを平行にファン1200RPMで風を通しています。

DSC09910_DxO


サーマルパッド交換前のWD_BLACK SN850 ヒートシンク搭載版について、エアフローがある状況下でCrystalDiskMark8のループ実行によるストレステストを行ったところ、サーマルスロットリングが発生することはありませんでした。
WD_BLACK SN850 2TB HS_temp_air_original
一方で、サーマルパッド交換後のWD_BLACK SN850 ヒートシンク搭載版はというと、やはりサーマルスロットリングは発生していません。グラフを見ての通り、エアフローがある状況でも温度やアクセススピードの傾向はサーマルパッドの交換前後でほぼ同じでした。
WD_BLACK SN850 2TB HS_temp_air_tp
負荷テスト終盤におけるそれぞれのサーモグラフィを見てみると、サーマルパッドの交換前は表面温度が平均53.7度、サーマルパッドの交換後は平均57.6度です。
WD_BLACK SN850 2TB HS_FLIR_air_original-horz

サーモグラフィによるヒートシンク表面温度を見ての通り、エアフローあり・なし共に、交換後のほうが交換前よりも平均温度で4度高い程度でした。
サーマルパッドの交換前、メモリコントローラーとヒートシンクが接していないことに冷却上の問題がある、つまりヒートシンクが放熱器としての役割を果たせていないのであれば、表面温度には大きな差が出るはずです。検証結果では交換前後で4度程度の差しかなかったので、交換前でもヒートシンク本体が放熱器として働いていると考えられます。
WD_BLACK SN850ヒートシンク搭載版については、
SSD基板が熱伝導両面テープでバックプレートとしっかり接しており、バックプレートを介してヒートシンク本体に熱が移動しているので、あまり差が出ないのだと思います。
(エアフローがある状態であれば、サーマルパッドでしっかりと接しているほうが放熱効率は良いと思いますが、ヒートシンクの規模的にやはり差は軽微かと)


以上、『WD_BLACK SN850 ヒートシンク搭載版のサーマルパッドを検証』でした。
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