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NVIDIA GeForce RTX 20XXシリーズなど2019年最新GPUにも汎用的に対応が可能なGPUクーラー簡易水冷化キット「NZXT KRAKEN G12」をレビューしていきます。簡易水冷化に最適なハイエンドGPUのRTX 2080 SUPERやRTX 2080 TiへKRAKEN G12と簡易水冷クーラーを取り付ける手順を解説し、簡易水冷化による冷却性能・静音性の向上について空冷クーラーと徹底比較します。
製品紹介ページ:https://nzxt.jp/products/detail/krakeng12.html
製品公式ページ:https://www.nzxt.com/products/kraken-g12-black
マニュアル:https://sta3-nzxtcorporation.netdna-ssl.com/uploads/download/attachment/682/KrakenG12-manual.pdf
レビュー目次
1.NZXT KRAKEN G12の梱包・付属品
2.NZXT KRAKEN G12の対応グラフィックボード
・リファレンス基板のGeForce RTX 2080 SUPERグラフィックボード
・リファレンス基板のGeForce RTX 2080 Tiグラフィックボード
3.NZXT KRAKEN G12の対応AIO水冷Cクーラー
4.NZXT KRAKEN G12のGPU簡易水冷化手順
5.NZXT KRAKEN G12の冷却性能
6.NZXT KRAKEN G12のレビューまとめ
NZXT KRAKEN G12の梱包・付属品
まずは「NZXT KRAKEN G12」の梱包や付属品をチェックしていきます。「NZXT KRAKEN G12」にはブラックとホワイトの2色がありますが製品パッケージ自体は上の写真のようにホワイトがプリントされたもので統一されています。製品カラーの見分けは通常、パッケージ右上に貼られた国内正規代理店の認証シールを確認する必要があるので、店頭で購入する時は間違えないように注意してください。
N式箱のパッケージを開くと黒色スポンジスペーサーで保護された、「NZXT KRAKEN G12」のGPUブラケットと冷却ファン、および各種付属品が現れます。
「NZXT KRAKEN G12」の主な内容品は、GPUブラケットと92mm角冷却ファンです。
「NZXT KRAKEN G12」の細かい付属品をチェックしていくと、NVIDIA製GPU用リテンションブラケット、AMD製GPU用リテンションブラケット、水冷ヘッド固定用スプリング付きハンドスクリュー、リテンションブラケット固定用ネジ、ファン固定用テーパーネジ、スポンジクッション(両面テープ付き)、保護用ワッシャーです。
水冷ヘッドとGPUブラケットをグラフィックボード基板に固定するための、リテンションブラケットはNVIDIA製グラフィックボード用とAMD製グラフィックボード用の2種類が付属しますが、それぞれリテンションブラケットの中央にNとAの頭文字が記載されています。なおRTX 20XXシリーズのようにAリテンションブラケットを使用するケースもあります。
「NZXT KRAKEN G12」のGPUブラケットはスチールの金属製カバーとなっており、塗装はH710iやH510 EliteなどNZXT製PCケースNew Hシリーズの外装に溶け込むマットで高品位な質感です。
「NZXT KRAKEN G12」には上で紹介したブラックカラー以外にもGPUブラケットがホワイトカラーに塗装されたモデルもラインナップされています。
「NZXT KRAKEN G12」の付属ファンは92mm角25mm厚の汎用サイズ冷却ファンです。定格1500RPMの3PIN DCファンとなっておりPWM速度調整には非対応なので、ファン速度を制御したい場合は、DC速度調整に対応したコントローラーに接続する必要があります。どうしてもPWM速度調整をしたい人は「92mm ファン PWM」で検索してAmazon等で購入してください。
NZXT KRAKEN G12の対応グラフィックボード
「NZXT KRAKEN G12」を使用して水冷化が可能なグラフィックボードについて紹介していきます。「NZXT KRAKEN G12」は公式サイトではRTX 2080 Ti、RTX 2080、RX 590など最新グラフィックボードがリストアップされています。ただし一部のGPUではGPUコアの全高が低く、銅製スペーサーなどで隙間を埋める必要があるようです。
RTX 2060が非対応になっているのはおそらく、準リファレンスモデルのFounders Editionで互換性が確認されているためだと思います。RX VegaやRadeon VIIなどHBMメモリ採用でGPUコアとVRAMメモリが隣接しているタイプのGPUも非対応となっています。
「NZXT KRAKEN G12」は汎用的な簡易水冷化キットなので、対応GPUとしてリストアップされているものは多いですが、実際に利用できるかどうかは、自作PCにある程度精通していないと判断が難しいというのが実情です。そこで今回は簡易水冷化のメリットが大きい、高TDPなハイエンドグラフィックボードのGeForce RTX 2080 SUPERとGeForce RTX 2080 Tiの2つに的を絞って、具体的に製品を紹介していきます。
リファレンス基板のGeForce RTX 2080 SUPERグラフィックボード
ひとくちにGeForce RTX 2080 SUPERグラフィックボードと言っても、ASUSやMSIなどのAIBパートナー各社から様々なモデルがリリースされており同AIOキットが対応するグラフィックボードが何なのかわからない人も多いと思いますが、大きなくくりとしてはNVIDIA純正モデルFounders Editionと同じく、一般にリファレンス基板と呼ばれるグラフィックボード基板を採用したGeForce RTX 2080 SUPERグラフィックボードは「NZXT KRAKEN G12」を使用して水冷化が可能です。GeForce RTX 2080 SUPERはGeForce RTX 2080の後継モデルとしてリリースされた新製品ですが、リファレンス基板は使いまわされているので、基本的に下の写真で共通レイアウトとなっています。
「NZXT KRAKEN G12」にはVRAMやVRM電源の放熱を補助するヒートシンクは付属しませんが、リファレンス基板を採用するグラフィックボードなら基板上の素子実装レイアウトは基本的に統一されているので、各自で採寸しなくても下記のとおりに事前にヒートシンクを用意することができるところもメリットです。
GeForce RTX 2080 SUPERのリファレンス基板採用モデルに各自で放熱ヒートシンクを装着する場合、GDDR6メモリ用のヒートシンクは『メモリチップ1つあたり9mm×12mm×高さ5mm以下』となります。GDDR6メモリの長さは14mmですが、簡易水冷クーラーにNZXT KRAKEN X2シリーズを使用する場合、GPUコア寄りの5mmスペースは干渉する可能性があるので、外側9mmスペースのみに貼り付けます。
VRM電源のMOSFET用ヒートシンクとしては『8mm×88mm(MOSFET2つあたり16mm)×高さ10mm以下』となります。
リファレンス基板を採用したGeForce RTX 2080 SUPERグラフィックボードとしては「ASUS DUAL-RTX2080S-O8G-EVO」、「MSI GeForce RTX 2080 SUPER VENTUS OC」、「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 SUPER Twin Fan」の3モデル辺りが国内で流通数も多く入手が容易なのでオススメです。
国内で販売されているRTX 2080 TiグラフィックボードはGPUクーラーを取り外す(分解行為)と正規保証が切れてしまいますが、北米Amazonやebay公式通販から個人輸入が可能なEVGA製グラフィックボードはGPUクーラーを一度取り外してもGPUクーラーを元に戻せば正規に保証が受けられます。
多少の英語力が必要にはなりますが、価格も国内で購入するのと大差ないので「EVGA GeForce RTX 2080 SUPER Black GAMING (型番:08G-P4-3081-KR)」や「EVGA GeForce RTX 2080 SUPER XC GAMING (型番:08G-P4-3182-KR)」もオススメです。
EVGA製グラフィックボードについて気になる方は、詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
・【できる!個人輸入】米尼でおすすめなEVGA製グラボのまとめ
リファレンス基板のGeForce RTX 2080 Tiグラフィックボード
ひとくちにGeForce RTX 2080 Tiグラフィックボードと言っても、ASUSやMSIなどのAIBパートナー各社から様々なモデルがリリースされており同AIOキットが対応するグラフィックボードが何なのかわからない人も多いと思いますが、大きなくくりとしてはNVIDIA純正モデルFounders Editionと同じく、一般にリファレンス基板と呼ばれるグラフィックボード基板を採用したGeForce RTX 2080 Tiグラフィックボードは「NZXT KRAKEN G12」を使用して水冷化が可能です。なおGeForce RTX 2080 Tiグラフィックボードについては、リファレンス基板だけでなく、オリファンモデルのオリジナル基板も含めて多くの製品で、GPUの左側にVRM電源回路が実装されています。VRM電源回路はグラフィックボード上でVRAMメモリと並んで発熱の大きい素子です。GeForce RTX 2080 TiグラフィックボードでGPUコアの右側に実装されたVRM電源回路は「NZXT KRAKEN G12」の付属ファンで直接冷却できますが、左側は冷やすことができません。この部分の冷却が不十分だとグラフィックボードの破損に繋がる可能性が高いので注意してください。
リファレンス基板を採用したGeForce RTX 2080 SUPERグラフィックボードとしては当サイトでもレビュー記事を公開している「Palit GeForce RTX 2080 Ti GAMINGPro OC」が安価かつ入手性が高いのでオススメです。
・「Palit GeForce RTX 2080 Ti GAMINGPro OC」をレビュー
また国内で販売されているRTX 2080 TiグラフィックボードはGPUクーラーを取り外す(分解行為)と正規保証が切れてしまいますが、北米Amazonやebay公式通販から個人輸入が可能なEVGA製グラフィックボードはGPUクーラーを一度取り外してもGPUクーラーを元に戻せば正規に保証が受けられます。
多少の英語力が必要にはなりますが、価格も国内で購入するのと大差ないので「EVGA GeForce RTX 2080 Ti XC (型番:11G-P4-2382-KR)」や「EVGA GeForce RTX 2080 Ti XC ULTRA GAMING (型番:11G-P4-2383-KR)」もオススメです。
EVGA製グラフィックボードについて気になる方は、詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
・【できる!個人輸入】米尼でおすすめなEVGA製グラボのまとめ
NZXT KRAKEN G12の対応AIO水冷クーラー
「NZXT KRAKEN G12」を使用してグラフィックボードを簡易水冷化するにあたって、当然必要になるのは対応した簡易水冷(AIO水冷)CPUクーラーです。ただしこれについてはNZXT KRAKEN X2シリーズという同社製の簡易水冷CPUクーラーがあるので、特に悩むことはないと思います。NZXT KRAKEN X2シリーズには、140mmファンを1基使用する140サイズの「NZXT KRAKEN X42」、120mmファンを2基使用する240サイズの「NZXT KRAKEN X52」、140mmファンを2基使用する280サイズの「NZXT KRAKEN X62」、120mmファンを3基使用する360サイズの「NZXT KRAKEN X72」の4モデルがラインナップされています。
NZXT KRAKEN X2シリーズについては当サイトで各種サイズモデルについて詳細レビューを公開中です。世界一美しいと当サイトでも絶賛している外見はもちろん、冷却性能も非常に優れた製品となっており、「NZXT KRAKEN G12」によるGPUの簡易水冷化のお供としてだけでなく、CPUクーラーとしても一押しの製品です。
・NZXT KRAKEN Z3/X3/X2シリーズのレビュー記事一覧へ
NZXT KRAKEN X2シリーズには、PCケースリアに設置できて省スペースな140サイズから、汎用性の高い240/280サイズ、最強冷却性能な360サイズまで幅広いラジエーターサイズが容易されているので、各自の環境(PCケース)に合わせて最適なものを選択してください。
なお今回の検証では「NZXT KRAKEN G12」による簡易水冷化に当たって、同社製のNZXT KRAKEN X2シリーズを使用しますが、「NZXT KRAKEN G12」の公式ページでは他社製簡易水冷CPUクーラーとの互換性についてもリストが掲載されています。(若干リストの内容が古いですが)
特にNZXT KRAKEN X2と同じく歯車型のリテンションブラケット固定構造から一目でわかるAsetek OEMの簡易水冷CPUクーラーも基本的に「NZXT KRAKEN G12」で使用可能です。
NZXT KRAKEN G12のGPU簡易水冷化手順
GPU簡易水冷化汎用キット「NZXT KRAKEN G12」を使用して対応するグラフィックボードに簡易水冷クーラーを取り付ける手順について、リファレンス基板のRTX 2080グラフィックボードを例にして紹介していきます。グラフィックボードの分解・水冷化の際はネジ等小さいパーツが多いので分解や組立中はもちろん分解後の保管中にも失くさないように、小さい蓋つきプラスチックパックやチャック付きポリ袋を用意しておくと便利です。
小さいパックは作業時にネジ類を放り込んでおくと紛失し難くなります。ポリ袋は分解したグラボの元々のネジを保管するのに使用できます。
分解前の用意についてはこの辺りにして早速、GeForce RTX 2080を分解していきます。
GeForce GTX 1080 Founders EditionやGeForce GTX 1080 Ti Founders EditionなどPascal世代において、水冷化で主流なリファレンスモデルは分解する際にバックプレートに埋まった非常に小さいネジと、基板とクーラーを固定しているナットネジに注意する必要がありました。
しかしながらRTX 2080 TiやRTX 2080 SUPERについては準リファレンスモデルと言えるFounders Editionは、ASUS、GIGABYTE、MSI、Palit、ZOTACなどAIBパートナーによる箱詰め品の販売がなくなってNVIDIA直販でしか取り扱いがなくなったので国内では基本的に流通していません。
そのためAIO水冷化汎用キット「NZXT KRAKEN G12」による水冷化には、AIBパートナーのオリファンモデルを使用することになりますが、これらは普通のプラスドライバーがあれば簡単に分解できます。
なお今回は水冷化のため自己責任でGPUクーラーを取り外していますが、GPUクーラーの取り外し(分解行為)はグラフィックボードの正規保証の対象外になる行為です。今回はレビューのために分解しておりますが、繰り返しますが保証対象外になるので基本的には非推奨の行為なのでご注意下さい。
GPUクーラー取り外し手順の一例として「Palit GeForce RTX 2080 GamingPro OC」の場合、GPUクーラーは基板裏面のコア周辺4カ所とバックプレート上のVRM電源付近3か所のネジ7個で固定されていました。ネジは普通のプラスネジです。
上のようにGPUクーラーを固定しているネジを外すと、GPUクーラーは容易に取り外しができます。
なおオリファンモデルの多くではバックプレートやGPUクーラーと挟む形で基板にPCIEブラケットが固定されています。そういった機種を同AIOキットで水冷化すると、PCIブラケットを基板にしっかりと固定できません。水冷化に当たってはM2.5ネジ、ナット、PVCワッシャーを2セット各自で用意するのがオススメです。
グラフィックボード基板と取り出せたら、リテンションブラケットを装着します。今回検証に使用するGeForce RTX 2080など、NVIDIAの2019年最新GPUであるRTX 20XXシリーズではAMD用のAリテンションブラケットを使用するので間違えないよう注意してください。また任意でVRAMやVRM電源にヒートシンクを装着します。
任意でヒートシンクを増設する場合、GPUコア周辺は水冷ヘッドと干渉する可能性があります。NZXT KRAKEN X2シリーズを使用してRTX 2080/SUPERのリファレンス基板を簡易水冷化する場合、VRAMのGPUコア寄り5mmスペースはヒートシンクを装着せずに開けておいてください。
続いてGPUブラケットのサポーターになるスポンジを、両面テープ面を上に向けた状態でグラフィックボード基板の平らなところに乗せます。リテンションブラケットのネジ穴とGPUブラケットのネジ穴の位置が合うようにブラケットを乗せ、サポーターのスポンジをGPUブラケットに貼り付けます。
GPUブラケットに簡易水冷クーラーの水冷ヘッドを固定します。歯車がかみ合うように挿入し、時計回りに回せば水冷ヘッドとGPUブラケットが固定できます。
以上でグラフィックボード基板に簡易水冷クーラーを取り付ける下準備は完了です。
今回、「NZXT KRAKEN G12」によるグラフィックボードの簡易水冷化に使用する簡易水冷クーラーのNZXT KRAKEN X2シリーズは標準で水冷ヘッドのベースプレートに熱伝導グリスが塗布されているので、新品のクーラーであれば、熱伝導グリスを各自で塗布する必要はありません。
NZXT KRAKEN X2シリーズであれば必須ではありませんが、今回、GPUコア-水冷ベースプレート間の熱伝導グリスには毎度おなじみ管理人愛用のクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。熱伝導効率も高く、柔らかいグリスで塗布しやすいのでおすすめです。
最終的にネジ止めで圧着されるのでグリスの塗り方は割とてきとうでOKです。管理人は一応、米の字に伸ばして塗っています。
熱伝導グリスを塗ったら、グラフィックボード基板に装着したリテンションブラケットのネジ穴に合わせて、KRAKEN G12と水冷ヘッドを取り付け、スプリング付きハンドスクリューで固定します。
以上で、「NZXT KRAKEN G12」を使用したグラフィックボードの簡易水冷化は完了です。
NZXT KRAKEN G12の冷却性能
「NZXT KRAKEN G12」を使用した簡易水冷化手順の解説が済んだので、本題となる「NZXT KRAKEN G12」によって簡易水冷化したグラフィックボードが、標準の空冷GPUクーラーと比較してどれくらい冷えるのか検証していきます。「NZXT KRAKEN G12」の検証環境として、NZXT H710iやNZXT H510 Eliteのように2019年現在主流なオープンスペースのPCケースへ実際にグラフィックボードを組み込みました。
ケースファンはPCケースのフロントに吸気ファンとして2基、リアに排気ファンとして1基を設置しています。なおこのケースファンには空冷と簡易水冷の比較が分かりやすくなるように、NZXT KRAKEN X2シリーズに付属する「NAXT Aer P 140」を使用しました。ファン回転数はいずれも800RPM固定とします。
CPUはCore i7 7700K、CPUクーラーには120サイズ簡易水冷CPUクーラーを使用しており、ラジエーター&ファンはトップ前方に排気レイアウトで設置しています。なお検証時は強化ガラスサイドパネルも装着します。
空冷グラフィックボード環境を基準にして、『NZXT KRAKEN G12と140サイズ簡易水冷のKRAKEN X42で簡易水冷化したグラフィックボードでラジエーターをリアに配置』、および『NZXT KRAKEN G12と280サイズ簡易水冷のKRAKEN X62で簡易水冷化したグラフィックボードでラジエーターをフロントに配置』の2つのケースでも検証を行いました。なお「NZXT KRAKEN G12」のGPUブラケットに搭載された90mm角冷却ファンは1100RPMでファン回転数を固定しています。
今回の検証で使用するグラフィックボードはGeForce RTX 2080 Founders Editionですが、GeForce RTX 2080は2019年末現在、RTX 20XX SUPERの登場と共に終売となっているので、コアクロック+50MHz(Founders Editionの実動コアクロックの差分だけOC)およびパワーリミット111%として、GeForce RTX 2080 SUPER相当の動作設定を適用しました。GeForce RTX 2080とGeForce RTX 2080 SUPERではCUDAコア数も数%違いますが、この設定でも「NZXT KRAKEN G12」による簡易水冷化がGeForce RTX 2080 SUPERに対応可能かどうかの判断は十分です。
「NZXT KRAKEN G12」による簡易水冷化と空冷GPUクーラーの冷却性能・静音性の比較にあたって、検証負荷には20分間に渡たり連続してGPUに100%近い負荷をかける3DMark TimeSpy Stress Testを使用しています。
負荷テスト時のGPU温度とファンノ回転数の推移を比較したグラフは次のようになっています。
2スロット占有空冷GPUクーラーを搭載したFounders Editionでは長時間の負荷に対してGPU温度は最大で76度まで上昇し、ファン回転数も2000RPMに達しますが、「NZXT KRAKEN G12」によって簡易水冷化を施すと、280サイズラジエーターを800RPMの140mmファン2基で冷やすことによって最大温度52度までGPU温度を下げることができます。140サイズラジエーターを同じく800RPMのファン1基だけで冷やしても最大温度は58度となっており、20度近い温度低下です。60度未満なのでTDP250WクラスのRTX 2080 SUPERであれば140サイズラジエーターのコンパクトな簡易水冷クーラーでも十分な性能です。
静音性についてもサウンドレベルメーター(騒音計)で比較してみると、GPUクーラー冷却ファンが最大2000RPMで動作する空冷環境が39.9dBに対して、「NZXT KRAKEN G12」による簡易水冷環境では37.5dBへと騒音値が下がっており、静音性が高いことが分かります。実際に耳で感じるファンノイズは回転数が高い(周波数が大きい)ほど耳障りになる傾向があるので、800~1100RPMでゆっくりと定速回転するファンしかない簡易水冷環境の快適さは数値以上のものがあります。
続いてストレステスト中のコアクロックをチェックしてみると、NZXT KRAKEN G12」によって簡易水冷化を施したケースではGPU温度が低いので当然ですが、空冷GPUクーラーのFounders Editionよりも高いコアクロックで安定していることが分かります。
このコアクロックの差が裏付けになりますが、実際にストレステスト中のフレームレートを比較してみると、簡易水冷環境のほうが僅かながらグラフィック性能が向上することが分かります。「NZXT KRAKEN G12」による簡易水冷化でGPU温度が下がり、高いGPUコアクロックで安定するようになり、結果としてフレームレートに差が出ます。
下の記事はマルチGPUの時には上段のプライマリGPUを簡易水冷にした方がグラフィック性能や静音性が大幅に上がることを解説したものです。下段に設置されているのがグラフィックボード以外の、NVMe SSDやサウンドボードやビデオキャプチャなどであっても空冷クーラーの場合はエアフローが阻害され、GPU温度やファン回転数に影響があります。その他のPCIE拡張ボードを使用するユーザーにとっても、グラフィックボードの簡易水冷化の恩恵は非常に大きいものです。
・RTX 2080 Ti NVLink SLIのプライマリGPUには簡易水冷グラボがおすすめ
最後にサーモグラフィーでストレステスト終盤にチェックしたグラフィックボード基板上の温度について確認します。
GeForce RTX 2080の簡易水冷化にあたって、「NZXT KRAKEN G12」には付属しないので、管理人が任意で用意したヒートシンクをGDDR6メモリとVRM電源のMOSFETに装着していましたが、それでもこれらの発熱が大きい部分は80~90度に達していました。やはり「NZXT KRAKEN G12」で簡易水冷化する場合はVRAMやVRM電源の放熱を補助するヒートシンクを装着したいところですし、可能であればグラフィックボード基板背面にもサーマルパッドを介してヒートシンクをさらに乗せたいところです。
NZXT KRAKEN G12 レビューまとめ
最後に「NZXT KRAKEN G12」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- TDP250WクラスのハイエンドGPUを60度未満の低温で運用できる
- TDP250Wクラスなら140mmファンを800RPM程度で回すだけでも十分冷え、静音性も抜群
- ラジエーターサイズは同社製クーラーだけでも140/240/280/360の幅広い選択肢がある
- 安価なオリファンモデルを+1~2万円の予算で簡易水冷化できる
- GPUクーラーの換装は基本的にグラフィックボードの保証がなくなる
- VRAMメモリやVRM電源回路の冷却補助に各自でヒートシンクの増設を推奨
- PCIEブラケットの固定用ネジ&ワッシャーを各自で用意する必要がある
NVIDIA GeForce RTX 20XXシリーズなどを含めた2019年最新GPUにも汎用的に対応が可能なGPUクーラー簡易水冷化キット「NZXT KRAKEN G12」によってRTX 2080を簡易水冷化することで、長時間の負荷でも熱ダレせずに標準の空冷GPUクーラーよりも遥かに高い冷却性能と静音性を実現することができました。
組み合わせて使用する簡易水冷CPUクーラーとしては特に同社製のNZXT KRAKEN X2シリーズがサポートされており、140~360サイズまで幅広いラジエーターサイズが用意されているので、「NZXT KRAKEN G12」は簡易水冷化の組み立て作業が比較的簡単なのに加えて、PCケースに対する互換性も高い簡易水冷化キットです。
一方でPCIEブラケットを固定するネジ&ワッシャーがなかったり、ハイエンドGPUを簡易水冷化する場合はVRAMやVRM電源の放熱を補助するヒートシンクを各自で用意するのが管理人的には推奨されるなど、割と自作PCのスキルが求められる製品でもあります。
国内ではあまり流通していませんが、特定のグラフィックボード基板をサポートしてAIO水冷化するキットは他社から販売されているものがいくつかあり、それらに比べると細かい部分で要求される知識やスキルが高いというのは難点だと思いました。
グラフィックボードの保証も考えると簡易水冷GPUクーラー標準搭載のグラボへの買い替えが正解なのかもしれませんが、「NZXT KRAKEN G12」によるGPUクーラー換装であれば費用が1~2万円程度に抑えることが可能というメリットもあり、BTO PCなどに標準搭載されていたグラフィックボードに対して、後々不満が出てきたけど、買い替えるほどの予算を掛けたくないという時に助かる選択肢だと思います。
以上、『「NZXT KRAKEN G12」でRTX 2080を水冷化レビュー』でした。
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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余ってるM.2SSD用のヒートシンクでも貼ってみようかな