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DELLのゲーミングブランド”Alienware”からリリースされた、4K解像度120Hzリフレッシュレートの超大型54.6インチ有機ELディスプレイパネルを採用したゲーミングモニタ「Alienware 55 AW5520QF」をレビューしていきます。有機EL/4K解像度/120Hzという世界初の圧倒的スペックに加えて、可変リフレッシュレート同期機能「AMD FreeSync」やHDR表示にも対応する、ラグジュアリーの粋を極めた2019年至高のゲーミングモニタを徹底検証していきます。
製品公式ページ:https://www.dell.com/ja-jp/shop/accessories/apd/210-atxt
サポート:https://www.dell.com/support/home/jp/ja/jpdhs1/product-support/product/dell-aw5520qf-monitor/drivers
マニュアル:https://downloads.dell.com/manuals/all-products/esuprt_electronics_accessories/esuprt_electronics_accessories_monitors/dell-aw5520qf-monitor_user%27s-guide_ja-jp.pdf
Alienware 55 AW5520QF レビュー目次
1.Alienware 55 AW5520QFの概要
2.Alienware 55 AW5520QFの開封・付属品
3.Alienware 55 AW5520QFのモニタ本体
4.Alienware 55 AW5520QFのOSD操作・設定
5.Alienware 55 AW5520QFの画質・応答速度・遅延について
6.Alienware 55 AW5520QFで120Hz&FreeSyncを試す
7.Alienware 55 AW5520QFのHDR表示について
8.Alienware 55 AW5520QFのレビューまとめ
Alienware 55 AW5520QFの概要
「Alienware 55 AW5520QF」は、画面サイズ54.6インチ、4K解像度で120Hzリフレッシュレートの有機EL(OLED)パネルが採用されています。画素が自発光の有機ELパネルなので、通常130,000:1という液晶パネルとは2桁違いの圧倒的なコントラスト比を実現しています。98.5% DCI-P3をカバーする高色域で色再現性にも優れています。応答速度も0.5ms(GTG)と非常に高速です。HDR輝度認証はありませんが、最大輝度400nits(cd/m^2)でHDR表示にも対応しています。「Alienware 55 AW5520QF」はAMD/NVIDIA製グラフィックボードやXbox One Xを組み合わせることで利用可能な可変リフレッシュレート同期機能「AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync)」にも対応しており、ティアリングがなくスタッタリングを抑えた快適で鮮明なゲーミング環境を実現できます。AMD FreeSyncに対応したビデオ出力はDisplayPortとHDMIの2系統で、いずれも対応フレームレートは40Hz~120Hzと広範囲です。
また2019年12月に公開された「GeForce 441.66 Driver」以降の最新ドライバでは、NVIDIA製GPUとの互換性を証明するG-Sync Compatible認証も取得しています。
「Alienware 55 AW5520QF」に搭載されたビデオ入力はHDMI2.0*3、DisplayPort1.4*1の4系統です。4K/120HzにはDisplayPort1.4のみが対応し、HDMI2.0は4K/60Hzが最大ビデオ入力となります。4基のUSB3.0端子を備えハブポートとして使用できます。SPDIF音声出力も搭載しており、HDMIやDisplayPortからの音声データを分離して劣化なく外部アンプ等へ送ることができます。
「DELL Alienware 55 AW5520QF」の寸法はモニタスタンド込みで幅1223mm x 高さ771mm x 奥行264mm(モニタ単体では80mm)となっています。付属モニタスタンドには調整機能はありません。本体重量はモニタスタンドありで27.5kg、モニタスタンドなしのモニタ本体のみは25.5kgとなります。200x200と200x300のVESAマウントにも対応しており、壁掛けにも対応します。
Alienware 55 AW5520QFの開封・付属品
まずは「Alienware 55 AW5520QF」を開封していきます。「Alienware 55 AW5520QF」のパッケージサイズは幅1300mm×厚さ310mm×高さ1000mmとなっており、54.6インチモニタが入っているだけあって非常に巨大です。パッケージサイズが大きいのはもちろんのこと、梱包重量は40kgを超えているので、屈強な成人男性でも1人で運ぶのは困難です。
「Alienware 55 AW5520QF」は帯を巻くような形でパッケージ外装が装着されており、外装を外すとスポンジスペーサーで保護されたモニタ本体や、個別の段ポール箱に収められた各種付属品が現れます。
非常に巨大で重量も大きく、なおかつパネル部分が薄いので、破損防止のためディスプレイパネルは段ボールの箱でさらに保護されています。
モニタ本体をパッケージから取り出したら、30cmくらいの高さがあり、表面が平らで柔らかい場所に置きモニタスタンドを装着します。モニタスタンドはスタンドベースとブラケットの2つで構成されており、この2つをネジで固定してからモニタ本体に装着します。パーツを見ての通りですが、「Alienware 55 AW5520QF」のスタンドには調整機能は一切ありません。
スタンドを装着したらモニタを立てて、ラックなり、床なり、使用場所に置いたら組み立てと設置は完了です。正直言って、非常に重いし、どこにどれくらいなら力を入れていいのか塩梅がわからないので、この作業が一番大変(気疲れ)でした。
「Alienware 55 AW5520QF」の組み立て手順については記事内ではざっくりと済ませましたが、DELL Alienware公式から詳細な解説動画が公開されているのでこちらを参照してください。
製品公式ページや動画内でも注記されていますが、「Alienware 55 AW5520QF」の組み立ては大人2人以上で行ってください。正直なところ成人男性が2人いても組み立ては相当大変なので、有償サービスでもいいので組み立て&設置もして欲しかったです。 (1人で組み立てたなんて危険なこと、大きな声では言えない)
「Alienware 55 AW5520QF」の付属品を簡単にチェックしておくと、HDMIケーブル、DisplayPortケーブル、USBアップストリームケーブル、ACケーブル、マニュアル類、リモコン(電池付き)が付属します。
「Alienware 55 AW5520QF」のビデオ入力は1基のDisplayPort1.4と3基のHDMI2.0の4つがありますが、付属するケーブルはHDMIケーブルとDisplayPortケーブルが1本ずつです。
各種ケーブルを個別に購入するのであれば、4K/120Hz対応のDisplayPort1.4ケーブルなら「サンワサプライ KC-DP14シリーズ」、HDMI2.0ケーブルなら「エレコム Premium HDMIケーブル スリムタイプ DH-HDP14ESBKシリーズ」がおすすめです。いずれも標準で付属するケーブルよりもケーブル径が細くて取り回しが良いので管理人も個人的に使用しており、おすすめのケーブルです。
エレコム PREMIUM HDMIケーブル スリムタイプ 1.0m
エレコム PREMIUM HDMIケーブル スリムタイプ 1.5m
エレコム PREMIUM HDMIケーブル スリムタイプ 2.0m
エレコム
「Alienware 55 AW5520QF」には、200x200と200x300のVESAマウントに対応する変換ブラケットが付属します。変換ブラケットを使用すれば大型TVのような壁掛けも可能です。
Alienware 55 AW5520QFのモニタ本体
続いて「Alienware 55 AW5520QF」のモニタ本体をチェックしていきます。「Alienware 55 AW5520QF」の上と左右はフレームレス構造ですが、フレーム内パネル上には非表示領域があり、上左右の非表示領域の幅は7~8mm程度、フレームのある下は30mm程度です。下フレームの中央には銀色文字でさりげなくALIENWAREのテキストロゴが刻印されています。
「Alienware 55 AW5520QF」は斜めから見ると特に凄いですが、数mmの1枚板のような薄さです。
「Alienware 55 AW5520QF」のモニタ背面については、サンプルイメージではシルバーかメタリックグレイのように見えましたが、実機ではサラッとしたホワイトでした。パネルが剥き出しになっている上側は黒色面にガラスパネルが貼られて写真のように鏡面です。
背面のケーブルガイドとカバーを使用すれば、電源ケーブルやディスプレイケーブルをまとめて、後ろから見てもすっきりした印象になります。
「Alienware 55 AW5520QF」のモニタ背面の黒色ライン部分外周とALIENWAREのアイコンロゴには「AlienFX」と呼ばれるRGB LEDイルミネーションが内蔵されています。モニタ背面なので基本的には直接見えないところですが、壁際にモニタを設置すると反射した光によってモニタを中心にして後光のような演出のライトアップが可能です。
LEDイルミネーションの発光パターンはOSDメニューから、特定の発光カラーに固定するモードと、七色に変化しているスペクトラムモードの2種類から選択できます。
モニタ本体背面から見て右側の下向き方向には、I/Oポートとして左から順に、HDMI2.0×2、DisplayPort1.4、SPDIF音声出力、USB3.0アップストリーム、USB3.0ダウンストリーム×2が設置されています。
さらに正面から見て左側面にもI/Oポートがあり、上から順にUSB3.0ダウンストリーム×2、HDMI2.0×2、音声出力3.5mmジャックが設置されています。
「Alienware 55 AW5520QF」には内蔵スピーカー、3.5mmステレオ出力、SPDIF音声出力の3つの音声出力がありますが、音声出力に関するOSD上の設定内容は音量のみとなっています。
「Alienware 55 AW5520QF」に搭載された3つの音声出力のON/OFFについて、まず内蔵スピーカーと3.5mmステレオ出力が排他利用となっており、一方を使用するともう一方はOFFになります。3.5mmステレオ出力にヘッドホン・イヤホンを装着しなければ、通常はスピーカーから音が鳴ります。SPDIF音声出力は前の2つに関わりなく、常に対応機器へ音声信号が出力される仕様です。
Alienware 55 AW5520QFのOSD操作・設定
「Alienware 55 AW5520QF」のOSD操作はモニタ底面に配置された各種ボタンや付属リモコンを使用します。「Alienware 55 AW5520QF」の正面から見て右下の底面には、電源スイッチと、OSDを操作するためのショートカットキー1~4、メニューキー、終了キーの6つのボタンがあります。電源スイッチ上の光沢のある面はリモコンのIRセンサー受信部となります。
「Alienware 55 AW5520QF」にはOSDの操作が可能なリモコンが付属します。モニタ電源のON/OFF、輝度調整、ビデオ入力選択など、モニタ本体のボタンを使用して行う操作は全てリモコンで行えます。
リモコンの底蓋はマグネットで固定されており、勝手に外れることはありませんが、簡単に開くことができるちょうどいい塩梅です。「Alienware 55 AW5520QF」のリモコンは2本の単4電池で動作し、電池も2本付属しています。
「Alienware 55 AW5520QF」は初めて起動した時にOSD言語の設定が表示される親切設計です。日本語UIにももちろん対応しています。
「Alienware 55 AW5520QF」のOSDメニューには大きく分けて、「ゲーム(ゲーム関連設定)」「入力信号(ビデオ入力設定)」「AlienFX照明」「ディスプレイ(輝度やカラーの設定)」「オーディオ」「メニュー」「カスタマイズ」「その他」の8つの項目が用意されています。
「Alienware 55 AW5520QF」では、「標準」「FPS」「RPG」「MOBA/RTS」「スポーツ」「ゲーム1/ゲーム2/ゲーム3」「ComfortView(ブルーライトカット)」「暖色」「寒色」「ユーザーカラー」の12個の画質プリセットが用意されています。「ゲーム1/ゲーム2/ゲーム3」や「ユーザーカラー」は各自の好みの画質設定を行えるモードです。
ゲーム向上モードという設定項目からは、リアルタイムの画面リフレッシュレートを表示する「フレームレート」(可変リフレッシュレートが有効な場合、OSD表示がリアルタイムで変化する)、カウントダウンを表示する「タイマー」があります。OSDで照準を表示する機能がないのは残念です。
可変リフレッシュレート同期機能AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync)は「FreeSync」の名前で設定項目が配置されています。標準ではオンになっています。
黒の強弱を調節して暗がりの視認性を高める機能「暗さスタビライザー」も用意されており、補正強度はレベル0~3の4段階で設定が可能です。標準設定ではレベル0(機能OFFの状態)が設定されており、レベルを上げるほど明るく(白く)なります。
「Alienware 55 AW5520QF」はHDR表示に対応していますが、HDR表示を行うためのOSD設定である「Smart HDR」は標準ではオフになっています。設定としては「参照(おそらくリファレンスの誤訳、標準とか仕様値とかの意)」「ゲーム HDR」「ムービーHDR」「デスクトップ」の4種類の輝度設定が選択できます。
OLEDパネルのメンテナンス設定もあります。OLEDパネル特有の焼き付きを解消する機能のようです。
【以下、マニュアルより抜粋】
・ピクセルを最新の状態に更新:
一時的な残像を低減するには、モニターを長時間使用した後にこの機能を手動で有効にする方法があります。または、モニターを数時間使用するとこの機能が自動的にアクティベートされます。
この処理には約 5 分かかります。
注: 電源 LED インジケータは、リフレッシュ中緑色に点滅します。
・パネルを最新の状態に更新:
モニターを長時間使用した結果、コンテンツが固まってしまう残像を防止するには、この機能を手動で有効にしてピクセルの情報を更新することができます。または、累計使用時間が工場出荷時の設定を超えた場合にはこの機能が自動的にアクティベートされます。この処理には約 1 時間かかります。
注: 電源 LED インジケータがまず緑色に点滅し、リフレッシュ中は赤く点滅します。
モニタがスリープ状態(ビデオ入力がない状態)でもUSBダウンストリーム端子に接続されたUSB機器に電力供給を行う設定も用意されています。偶にスリープ時はUSBが電力供給できなくなるモニタもあるので地味に要チェックなポイントです。
Alienware 55 AW5520QFの画質・応答速度・遅延について
Alienware 55 AW5520QFの画質についてチェックしていきます。直接的な画質ではありませんがAlienware 55 AW5520QFのパネル表面は、製品仕様では反射防止が謳われていますが、ゲーミングモニタでは定番のアンチグレアではなく、明らかに鏡面な光沢仕上げでした。発色においてメリットのある光沢面ですが、暗転時の映り込みが気になるので個人的にはアンチグレアが好みです。
「Alienware 55 AW5520QF」はディスプレイパネルに有機ELパネルを採用していますが、PCモニタで一般的な液晶パネルには大きく分けてIPS液晶パネルとVA液晶パネルとTN液晶パネルの3種類があります。各社個別の製品によって個体差はあるものの、これらのパネルの特性を簡単にまとめると次のテーブルのようになります。
「Alienware 55 AW5520QF」に採用されている有機ELパネルは、色再現性、コントラスト、応答速度など一般に画質に影響するほぼ全ての要素で液晶パネルを上回ります。コントラストや応答速度については特に”桁違い”な性能です。反面、液晶パネルの中でも高価とされるIPS液晶パネルよりも輪をかけてさらに高価であり、また同じ表示が続いた時に、パネルがその残像を永続的に残してしまう”焼き付き”と呼ばれる症状があったりと独自のデメリットもあります。
ディスプレイパネルの簡易比較表 | ||||
有機EL | IPS液晶 | VA液晶 | TN液晶 | |
色再現性 | ◎ | ◎ | 〇 | △ |
コントラスト | ◎ | 〇 | ◎ | △ |
視野角 | 〇 | 〇 | 〇 | △ |
応答速度 | ◎ | 〇 | △ | ◎ |
価格 (高RR) |
×× |
△ (×) |
△ | 〇 |
液晶パネルの種類による性能の違いについてはこちらの記事も参照してみてください。
・ゲーミングモニタの選び方[4] IPS/VA/TN液晶パネルを比較解説
「Alienware 55 AW5520QF」(画質設定は標準のまま)で確認してみたところ、色再現性とコントラストに優れた有機ELディスプレイパネルなので、光沢表面処理も相まってゲーミング液晶モニタを圧倒する綺麗さでした。上下左右どこから見ても色の破綻はなく視野角も良好です。
「Alienware 55 AW5520QF」の自発光画素の特性、桁違いのコントラスト比による液晶パネルとの差を端的に表しているのが次の写真です。バックライトの影響で黒色が完全に黒にならない液晶パネルに対して、画素1つ1つが自発光する有機ELでは黒背景の中で白色が煌々と浮かび上がります。
次に「Alienware 55 AW5520QF」の応答速度や残像についてチェックしていきます。
「Alienware 55 AW5520QF」では関係しませんが、液晶パネルのゲーミングモニタを選ぶ、もしくはモニタの応答速度や残像を評価する上で重要な予備知識である『液晶モニタの応答速度とオーバードライブ機能』についてはこちらの記事で簡単に紹介しているので、よくわからないという人は先に確認してみてください。
・ゲーミングモニタの選び方[1] 応答速度とオーバードライブについて
応答速度の確認には「UFO Test: Ghosting」を使用します。同テストではUFOが移動する背景カラーを選択できますが、今回の検証ではブラック/グレー/ホワイトの3色を選択しています。
背景カラーがブラックの場合は各液晶パネルにおいて応答速度は高速な数値を示すので、概ね理想的な応答を確認することになります。背景カラーがホワイトの場合の応答速度は、ドキュメントやウェブページでテキストをスクロールした時の文字の滲み度合いの参考になります。背景カラーがグレーの場合、中間色に移るまでの応答速度を比較することになるので、一般的なゲームプレイにおける物理的な残像の少なさの指標として参考になります。
有機EL液晶パネルが採用されている「Alienware 55 AW5520QF」を最大リフレッシュレートの120Hzで動作させ、十分に早いシャッタースピードで撮影しましたが、応答速度の遅さによって複数のフレームが写し込むことはほぼありませんでした。10回以上撮影して1回だけ遷移途中で2つの像が確認できるというくらいのレベルとなっており、液晶パネルでは考えられないレベルの高速さです。
さらに「Alienware 55 AW5520QF」のリフレッシュレートを変えてみたり、他の液晶モニタを比較対象にしたりしながら、「UFO Test: Ghosting」の様子を「SONY DSC-RX100M5」の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影し、比較してみます。
まずは「Alienware 55 AW5520QF」のリフレッシュレートを60Hzと120Hzに変えて「UFO Test: Ghosting」の様子を比較してみました。リフレッシュレートによらず残像感は全く感じません。
有機ELパネルの「Alienware 55 AW5520QF」とIPS液晶パネルの「Acer Predator X27」について4K解像度/120Hzリフレッシュレートで応答速度を比較してみました。「Acer Predator X27」も非常に高価なだけあって応答速度を苦手とするIPS液晶パネルながらかなり高速なのですが、有機ELの「Alienware 55 AW5520QF」と比較すると残像感があるのがハッキリわかります。
続いて「Alienware 55 AW5520QF」に加えて、IPS液晶パネルを採用するゲーミングモニタとして、4K解像度で120Hzリフレッシュレートに対応する「Acer Predator X27(レビュー)」、ウルトラワイドQHD解像度で120Hzリフレッシュレートに対応する「LG 34GK950G-B(レビュー)」、WQHD解像度で144Hzリフレッシュレートに対応する「AORUS AD27QD(レビュー)」等を比較対象として「UFO Test: Ghosting」の様子を比較していきます。
リフレッシュレート60Hzに揃えて比較してみても、やはり有機ELの「Alienware 55 AW5520QF」が圧倒的に高速です。
参考までに、TN液晶パネルの「ZOWIE XL2546」やVA液晶パネルの「BenQ EW3270U」を比較対象に加えてパネルタイプ別で比べてみると、「ZOWIE XL2546」はグレー背景ではオーバードライブの逆像がかなり強く出るものの3種の背景全てで最も高速な応答速度を見せており、「BenQ EW3270U」はグレー/ホワイトの背景で応答が遅く、「Acer Predator X27」などIPS液晶パネルはそれらの中間的な性能という、TN/VA/IPSの液晶パネルタイプ別に一般的に語られる性質に則した結果になっています。
最後に各製品を最大リフレッシュレート動作とした時の「UFO Test: Ghosting」の様子は次のようになっています。Acer Predator X27などIPS液晶パネルの高級ゲーミングモニタは製品ごとに程度の差こそあれリフレッシュレートの変化に遅れて残像感があるのに対し、有機ELの「Alienware 55 AW5520QF」は120Hzのリフレッシュレートへ残像感なく完全に追従しています。
また「UFO Test: Ghosting」において下の写真のようにUFOが微かに表示された瞬間を始点に、その地点のUFOが完全に消えた時点を終点にして、その間隔のフレーム数を応答速度として算出し比較してみました。なおオーバードライブ機能によって発生するオーバーシュート/アンダーシュートによる逆像が発生してから消えるまでの時間は別に計算しています。
評価の目安として、”1000msをリフレッシュレートで割って2倍した数値”よりも測定値が小さければ、画面更新に応答速度が追いついています。60Hzの場合は33.3ms、120Hzの場合は16.6ms、144Hzの場合は13.9ms、240Hzの場合は8.3msを下回っていればOKです。
まずは背景カラーがブラックの時の「Alienware 55 AW5520QF」やその他の比較対象モニタの応答速度の計測結果となります。背景カラーがブラックの場合は各液晶パネルにおいて応答速度は高速な数値を示すので、概ね理想的な応答を確認することになります。
続いて背景カラーがホワイトの時の「Alienware 55 AW5520QF」やその他の比較対象モニタの応答速度の計測結果となります。背景カラーがホワイトの場合の応答速度は、ドキュメントやウェブページでテキストをスクロールした時の文字の滲み度合いの参考になります。
最後に背景カラーがグレーの時の「Alienware 55 AW5520QF」やその他の比較対象モニタの応答速度の計測結果となります。背景カラーがグレーの場合、中間色に移るまでの応答速度を比較することになるので、一般的なゲームプレイにおける物理的な残像の少なさの指標として参考になります。
「Alienware 55 AW5520QF」についてはブラック/ホワイト/グレーの背景カラー全てで一貫して優れたパフォーマンスを発揮しています。
最後に「Alienware 55 AW5520QF」の表示遅延(内部遅延)について測定を行いました。
モニタにはGPUのビデオ出力が送られてきてから実際にモニタに表示されるまで遅延が存在し、この遅延が大きいと例えば、FPSゲームでゲームパッドのトリガーやマウスのクリックによる操作からワンテンポ遅れて、マズルフラッシュが表示される、といった現象が発生します。人間は当然目で見てから操作するので、格闘ゲームやFPSゲームなど1,2フレームを争うような競技性の高いゲームにおいてはモニタの表示遅延が可能な限り小さいことが望まれます。
モニタの表示遅延測定においてはモニタ以外の要因で表示遅延に差が出ると問題があるので、検証モニタへビデオ出力を行うPCはCore i9 9900KとGeForce RTX 2080 Tiを搭載した次のベンチ機で統一しています。
テストベンチ機の構成 | |
CPU | Intel Core i9 9900K(レビュー) Core/Cache:5.1/4.7GHz, 1.300V 殻割り&クマメタル化(レビュー) |
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36(レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z Black F4-4400C19D-16GTZKK DDR4 8GB*2=16GB (レビュー) 4000MHz, CL17-17-17-37-CR2 |
マザーボード |
ASUS WS Z390 PRO (レビュー) |
ビデオカード | ZOTAC RTX 2080Ti AMP Extreme Core (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB MZ-N6E1T0B/IT (レビュー) |
OS | Windows10 Home 64bit |
電源ユニット | Corsair HX1200i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
キーボード | HyperX Alloy FPS メカニカルゲーミングキーボード (レビュー) |
モニタの表示遅延を測定する具体的な方法としては、キー押下時にそのキーのLEDが点灯するキーボードを使用して、LEDの点灯から画面表示への反映までの間隔を遅延時間として測定します。画面表示の確認については簡単にメモ帳を使用しています。この様子を「SONY DSC-RX100M5」の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影し、遅延フレーム数を数えて遅延時間を算出します。同計測を各モニタ(と各リフレッシュレート)ごとに10回ずつ行って、その平均値を表示遅延とします。
なお今回は諸事情により「Alienware 55 AW5520QF」を上で紹介したシステムで検証することができず、キーボードは共通ですが、Core i9 9900KとGeForce RTX 2070のシステムで測定しました。
「Alienware 55 AW5520QF」やその他の比較モニタの表示遅延の測定結果は次のようになりました。
「Alienware 55 AW5520QF」については、60Hzや120Hzのリフレッシュレート別で比較して、一般的なゲーミングモニタよりも10ms程度表示遅延が大きいという結果になりました。とはいえ10ms程度の差なら、一般的な体感はもちろんのこと、FPSゲームや格闘ゲームでも問題にはならない程度の表示遅延だと思います。
またグラフの通りリフレッシュレートを上げると応答速度だけでなく表示遅延も改善するのでゲーマーにとってハイリフレッシュレート液晶モニタを選択するメリットは大きいです。
有機ELパネルを採用するような高級TVでは一般に倍速補完や先鋭化などを行う高画質化エンジンが搭載されている影響で表示遅延が発生するため(映像エンジンを無効化するスルーモード搭載製品もある)、映画などでは問題ないものの、ユーザーの操作と視認の応答が求められるゲーミング用途には向きません。しかし「Alienware 55 AW5520QF」は有機EL採用ながら、一般的なゲーミングモニタと同様にゲームプレイに支障の出ない表示速度が得られます。
なお「Alienware 55 AW5520QF」において表示遅延が若干大きい理由については、実際にモニタ内部で10ms程度余分に遅延が発生している可能性があります。LG製有機ELパネルは焼き付き防止機能によって10ms弱の遅延が発生するとの解説されています。
また、表示遅延はグラフィックボードの性能にも依存するとのデータが公表されており、「Alienware 55 AW5520QF」だけRTX 2080 TiではなくRTX 2070で測定をおこなったので、これが影響している可能性もありそうです。今回は共通のシステムで測定できなかったのですが、後日、再検証を予定しています。
Alienware 55 AW5520QFで120Hzリフレッシュレート&FreeSyncを試す
「Alienware 55 AW5520QF」の最大の特徴の1つである120Hzリフレッシュレートと可変リフレッシュレート同期機能「AMD FreeSync(VESA Adaptive-Sync)」について試していきます。まずは「Alienware 55 AW5520QF」の特徴の1つである”120Hzリフレッシュレート”について、その意味自体は特に説明せずとも読者はご存知だと思いますが、一般的な60Hzリフレッシュレートのモニタが1秒間に60回の画面更新を行うのに対して、120Hzリフレッシュレートであれば標準的な60Hzの2倍となる1秒間に120回の画面更新を行います。最近の競技ゲーマー向けTN液晶モニタでは240Hzの超高速リフレッシュレートなゲーミングモニタも販売されています。
1秒間に120回の画面更新を行う120Hzリフレッシュレートの物理的なメリットとしては、単純に秒間コマ数が増えるので映像がより滑らかになります。上の章で詳しく検証したようにリフレッシュレートが上がると応答速度も上がって細部がクッキリとしたシャープな映像に見えやすくなり、加えて画面更新間隔が短くなるので表示遅延が小さくなり、一般的な60Hz環境よりもスピーディーなプレイで他者を圧倒しやすくなります。
「Alienware 55 AW5520QF」ではNVIDIA GeForce RTX20/GTX16シリーズやAMD Radeon VII/RX Vega/5XXシリーズなど最新グラフィックボードのDisplayPort1.4もしくはHDMI2.0のビデオ出力に接続することによって、モニタリフレッシュレートを120Hzなどに自由に設定できます。なおHDMI2.0で接続している場合は4K解像度/60Hzが最大となります。
モニタリフレッシュレートの設定は、AMD製GPUの場合はWindowsのディスプレイ設定から、NVIDIA製GPUの場合はNVIDIAコントロールパネルから行います。
オンライン対戦FPSなど競技性の高いゲームにおいて120Hzリフレッシュレートのモニタを使用した時の実用的なアドバンテージとして、ゲーム内視線を左右に振った時の視認性が上がるという例は直感的にもわかりやすいメリットですが、その他にもゲーム内遠方に存在して動いているエネミーやオブジェクトの視認性が上がるというメリットも存在します。
下の比較動画では4分割して映像を並べていますが、右下以外の3つは右下画面の緑枠部分を拡大するよう接写して、「SONY DSC-RX100M5」の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影したものになっています。リフレッシュレート別で左上は60Hz、右上は120Hz、左下は240Hzとなっていますが、赤枠で囲った建物の出入り口付近で左方向に移動する敵の動きはリフレッシュレートが上がるほど視認しやすくなるのがわかると思います。
さらに下の動画は解像度&リフレッシュレート別で、右上はフルHD/60Hz、左下は4K/60Hz、右下は4K/120Hzとなっていますが、赤枠で囲った建物の出入り口付近で左方向に移動する敵について、リフレッシュレートが上がると動作のコマ割りが細かくなり、また解像度が上がることによって遠方でもドットで潰れずにクッキリと表示されるので、遠方の敵の視認性が上がります。4K/60FPSと4K/120FPSを比較すると地面や建物など静止物の解像感は同じですが、応答速度が上がる120Hzのほうが動きのある敵の輪郭が若干クッキリします。
フルHDに対する超高解像度な4K解像度の恩恵についてはハイスピード動画は高速な反面、画質が悪くなるのでわかりにくいかもしれませんが、同じ構図で4K解像度(左)とフルHD解像度(右)を比べてみると、遠景に小さく映る敵の鮮明さには大きな差があることがわかります。
なお「Alienware 55 AW5520QF」でWQHD解像度/144FPSを狙うには、元から軽めのPCゲームや画質設定を下げた最新PCゲームであってもグラフィックボードのGPU性能がそれなりに要求されます。ゲーミングモニタとして「Alienware 55 AW5520QF」を使用するのであれば2019年最新のハイエンドGPUであるNVIDIA GeForce RTX 2080 SUPERやNVIDIA GeForce RTX 2080 Tiがおすすめです。
・GeForce RTX 20XX/GTX 16XXシリーズのレビュー記事一覧へ
続いて「Alienware 55 AW5520QF」の大きな特徴の2つ目となる可変リフレッシュレート同期機能「AMD FreeSync / NVIDIA G-Sync Compatible(VESA Adaptive-Sync)」についてチェックしていきます。
モニタの画面更新(リフレッシュ)に関する基本的な予備知識や、「AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync)」と「NVIDIA G-Sync Compatible」の関係についてはこちらの記事を参考にしてください。
・ゲーミングモニタの選び方[3] FreeSyncとG-Sync Compatibleについて
「AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync) / NVIDIA G-Sync Compatible」には対応可能なフレームレート(リフレッシュレート)の上限と下限が製品ごとに設定されており、「Alienware 55 AW5520QF」は40Hz~120Hzの範囲内で可変リフレッシュレート同期に対応しています。また「AMD FreeSync」に対応するビデオ入力はHDMIとDisplayPortの両方です。
AMD Radeon環境においてFreeSyncの使い方は次のようになっています。
FreeSync対応機器を接続したら、最初に「Alienware 55 AW5520QF」のOSDメニューのゲーム設定の小項目にあるFreeSyncがオンになっていることを確認します。
OSDメニューからモニタのFreeSyncを有効にしたら、AMD製GPU搭載PCの場合はRadeon Settingsのディスプレイ設定からAMD FreeSyncを有効にします。以上でAMD FreeSync自体は有効化が完了します。
また上で解説したようにAMD FreeSyncではテアリング解消とマウス遅延低減のどちらを優先するかで垂直同期の有無を各自で選択する必要があります。垂直同期は通常ゲーム内設定でON/OFFの切り替えが可能ですが、ドライバ側が上書きしてゲーム内からは切り替えられない場合があるのでその時はRadeon Settingsのゲームプロファイルもチェックしてください。
FreeSyncが正常に動作してリフレッシュレートが可変になると、「Alienware 55 AW5520QF」のOSDメニューから選択できるリフレッシュレート表示機能において、リフレッシュレートがフレームレートに合わせて変動するようになるので、FreeSyncが正しく動作しているかはここを見て確認してください。
2019年1月15日以降の最新ドライバによってNVIDIA GeForce環境でもAdaptive-Syncが利用可能になったので、G-Sync Compatible認証が付与されていない「Alienware 55 AW5520QF」でも問題なく可変リフレッシュレート同期機能が利用できるのか確認してみました。
417.71以降の最新ドライバをインストールして、DisplayPortビデオ出力にAdaptive-Sync対応モニタを接続すると、G-Sync対応モニタを接続した時と同様にAdaptive-Syncを有効化するための設定が、NVIDIAコントロールパネル上の「G-Syncの設定」に表示されます。
G-Sync Compatible認証を取得している製品と対応ドライバの場合、「G-SYNC、G-SYNCとの互換性を有効化(Enable G-SYNC, G-SYNC Compatible)」のチェックボックスをチェックして、下のモニタアイコンに使用するモニタの名前が表示・選択されていることを確認し、適用をクリックすればNVIDIA GeForce環境でAdaptive-Syncを有効化できます。
なお今回レビューする「Alienware 55 AW5520QF」を含めてG-SYNC Compatible認証を取得していない一般のAMD FreeSync/VESA Adaptive-Sync対応モニタでも、「Enable settings for the selected display model」にもチェックを入れることでNVIDIA製GPU環境においてAdaptive-Syncを利用できます。
可変リフレッシュレート同期機能「AMD FreeSync / NVIDIA G-Sync Compatible(VESA Adaptive-Sync)」の効用について、「Alienware 55 AW5520QF」で検証した結果については後日更新予定です。現時点で同機能について気になる人はこちらの記事を参照してください。
・G-Sync CP対応144Hz/WQHD/IPS液晶モニタ「AORUS AD27QD」をレビュー
Alienware 55 AW5520QFのHDR表示について
最後に「Alienware 55 AW5520QF」のHDR表示について簡単にチェックします。「Alienware 55 AW5520QF」はHDR表示に対応していますが、HDR表示を行うためにはOSD設定から「Smart HDR」を有効にする必要があります。
「Smart HDR」を有効にするとDisplayPort1.4で接続したWindows PCでもHDR表示が可能でした。
なおHDCPについては対応バージョンは不明ですが、NVIDIAグラフィックボード環境PCとのDisplayPort1.4接続でもHDCP対応と表示されました。少なくともHDCP1.4には対応しているものと思います。
「Alienware 55 AW5520QF」はHDRをオンにすると有機ELパネル特有の経年変化による焼き付き現象などをおさえるための機能、画面の輝度調整が動作します。
分かりやすい例としては下の動画のように、青色バックで一部が白色の時(一部に高輝度の領域がある時)は高輝度で綺麗に白色になるのですが、 全体が白表示の時は輝度が下がってグレーっぽい表示になります。また同時にバックの青色も暗くなります。PCゲームや動画の視聴では特に問題がない(好みは分かれるかもしれませんが)のですが、デスクトップ作業では違和感が大きいので無効化したい機能です。
本来、OSD上でHDRをオフにしてSDRモードで使用する場合は上で説明した輝度調整は動作しないはずなのですが、特定の条件化においてSDRモードでも輝度調整が動作してしまう不具合があります。具体的には、一度、輝度調整が有効になるとモニタの主電源をON/OFFしないと輝度調整が無効になりません。
例えば、HDMI1に接続したPS4でHDR表示を行った後、 DisplayPortに切り替えてPCでSDR表示を行っても(OSD機能でHDRはオフにしている)、輝度調整が機能してしまいます。DisplayPortのPCでHDR表示を行い、OSDのHDRをオフ、かつPCをSDRにしても、やはり一度、輝度調整が有効になると、主電源をON/OFFしないと輝度調整が無効になりません。
「Alienware 55 AW5520QF」のサブ入力として設置されている3基のHDMI端子はいずれもver2.0に対応しており、PS4 ProやXbox One Xに接続した場合、4K/60FPS対応モニタとして認識され4K解像度のビデオ出力が可能です。またPS4 ProやXbox One Xのビデオ出力設定を4K解像度にすると、最新のデジタル著作権保護HDCP2.2に対応し、Ultra HD Blu-rayなど著作権保護のあるコンテンツも再生が可能になります。
HDRについて簡単に説明すると、HDR(ハイダイナミックレンジ)というのは、RGBの光の三原色の映像情報に加えて、輝度(明るさ)の情報が備わった映像ソースのことです。従来の表示機器や映像ソースでは10^3程度のダイナミックレンジしかありませんでしたが、HDRに対応することでダイナミックレンジが10^5程度と100倍近く拡張され、従来よりも細かい階調で明るさや暗さを表現できるようになり、「明るい場所は明るく、暗い場所は暗く」なるように画面の明るさを操作することで、白飛びや黒潰れをなくして高画質を実現しています。
HDRに関する説明は色々とあると思いますが、管理人は『明るい場所はより明るく、暗い場所はより暗く』と大雑把に理解しています。「明るい場所は明るく、暗い場所は暗く」するということは必ずしも”見えやすく”なるわけではありません。というか暗い場所は暗くなるので必然、暗い部分は見えにくいですし、明るい場所が明るくなったら太陽を覗き込んだ時のようにその周辺は光で潰れて見えにくくなります。もちろん明暗が分かれることで境界線がクッキリして見えやすくなる場合もあります。一部のゲーミングモニタに暗所を明るく(白く)して見えやすくする機能があるように、HDR表示は見やすさには直結しないので、見やすさという意味で画質が良くなるのかというと、その点はケースバイケースで、暗い部分が強調されることを考えると見えにくさの方が体感しやすい気がします。
HDRは原理的にはモニタから見える映像を”リアル”に近づける機能です。ただし実際のところはモニタ個別の色調設定などの都合で鮮やかになり過ぎたり色味が変わったりするので、「実際の視覚と同じ」という意味でリアルかというと疑問符が付くのですが。「明るい場所は明るく、暗い場所は暗く」なるので立体感は増して、平面表示の中に奥行を感じやすくなるという点ではリアルな表示に近づきます。個人的にはHDR表示の効果はSDRに比べて、鮮やかになって、立体感が増すと感じています。
4Kモニタの広告をフルHDモニタで見る以上に、SDRモニタでHDRについて体感的に理解することは困難です。なのでHDRについては店頭など実機で体験して気に入れば購入するくらいが正直なところおすすめです。HDRについては正直に言って”百聞は一見に如かず”な機能です。SDRモニタ上で調べるよりもHDR表示の実機を見て気に入るかどうかが全てな機能だと思います。
画質の章でも簡単に触れましたが、自発光画素により完全な黒を表現できる有機ELパネルの「Alienware 55 AW5520QF」はHDR表示と非常に相性の良いモニタです。
Alienware 55 AW5520QFのレビューまとめ
最後に「Alienware 55 AW5520QF」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- 画面サイズ54.6インチで非常に巨大なサイズ
- 発色、視野角、コントラスト、応答速度などオールラウンドで画質に優れた有機ELパネル
- 液晶パネルは発色に有利な光沢仕上げ
- ビデオ入力はDisplayPort1.4とHDMI2.0×3の計4系統
- DisplayPort1.4は4K解像度で120Hzリフレッシュレートの高速動作
- 可変リフレッシュレート同期機能AMD FreeSync(VESA Adaptive-Sync)に対応
(DisplayPortとHDMIで40FPS~120FPSの範囲内で対応) - HDR表示に対応(FreeSyncと併用可能)
- 3基のHDMI2.0ビデオ入力はHDCP2.2対応
- OSDのフルコントロールが可能なリモコンが付属
- VESAマウント対応で壁掛けも可能
- GeForce 441.66 Driver以降の最新ドライバでは、G-Sync Compatible認証も取得
- 2019年10月現在、税込み38万円と非常に高価
- サイズと重量が非常に大きいので組み立てと設置が難しい: 要大人2人以上
- モニタ表面の光沢仕上げは映り込みがあるので好みが分かれる(管理人はアンチグレアの方が好き)
- 有機ELパネル特有の焼き付きが心配なので経過観察が必要
NVIDIA G-Sync Compatible認証は未取得- HDRモードで有効になる輝度調整をSDRモードで無効化するには主電源を切る必要がある
4K解像度/120Hzリフレッシュレートの有機ELパネルを採用した「Alienware 55 AW5520QF」は、0.5msの応答速度と130,000:1というコントラストは文字通り桁違いな性能によって、高画質かつ高速なゲーミングモニタとして定番になりつつあるIPS液晶パネル搭載製品を軽々と上回ります。
55インチクラスの有機ELテレビや4K/120HzのIPS液晶ゲーミングモニタが20万円程度で買えることを考えると割高感は否めませんが、実際に視聴すれば価格を超える満足感が得られると思います。
サブ入力として実装されているHDMI2.0端子はHDCP2.2にも対応しているので、PS4 ProやXbox One Xなど4K/60FPS/HDRに対応したゲーム機や、Ultra HD Blu-rayに対応したプレーヤーを接続するなど、PCゲーミングだけでなくマルチメディアに対応できる、「Alienware 55 AW5520QF」は超ラグジュアリーなモニタです。
管理人的に「Alienware 55 AW5520QF」は価格よりも、組み立ての難しさが一番のマイナスポイントでした。組み立てと設置も含めた有償サービスも用意して欲しかったところです。
「Alienware 55 AW5520QF」は可変リフレッシュレート同期機能「AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync)」にも対応しています。FreeSync対応フレームレートとして40FPS~120FPSの幅広いフレームレートをカバーしており、60FPS前後しか維持できない最新の高画質な重いゲームから、100FPS以上を維持できる競技性の高い軽めなゲームまで、テアリングやスタッターのないクリアで滑らかな表示を実現します。
発売から2か月遅れましたが、2019年12月に配布されたGeForce 441.66 Driver以降の最新ドライバでは、G-Sync Compatible認証を取得し、NVIDIA製GPUとの互換性も確認されています。4K/120Hzというスペックから是非ともRTX 2080 SUPERやRTX 2080 Tiと組み合わせて使用したいところです。
以上、「Alienware 55 AW5520QF」のレビューでした。
有機ELモニタの代用としては、搭載するビデオ入力がHDMI2.1なので(HDMI2.0として使用できる)、現行最新のGeForce RTX 20XXやRadeon RX 5X00では4K/120Hzとしては利用できませんが、フルHD/120HzやWQHD/144HzとしてならG-Sync Compatibleも併用可能なLG製OLED TVも検討してみてもいいと思います。
なおGeForce RTX 3080などNVIDIAの次世代GPU GeForce RTX 30シリーズはHDMI2.1に対応しているので、4K/120Hzで表示が可能かつ、可変リフレッシュレート同期機能G-Sync Compatibleも利用できます。
2020年モデルの「LG OLED TV 48CXPJA」は48インチサイズなので、一般的なPCモニタとしてはかなり巨大ですが、部屋置きが難しくないサイズだと思います。
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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当方LGの有機EL 55C8Pを使用していますが、
ゲームでの白フェードの場面などでABLが働き、
白フェードが滑らかに見えません。
具体的には、画面が徐々に白くなる=輝度が上がり、一定の輝度でABLの制御が入り輝度が下がります。
すると、白フェードが途中でグレーに変わるような見え方になってしまいます。
有機ELの画質には満足していますが、ABLしかり、大面積での輝度性能には満足していません。