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Ryzen Threadripperの超巨大なCPUヒートスプレッダ全体をカバーする面積68mm×53mmのニッケルメッキ処理済み大型銅製ベースプレートと左右16本の銅製6mm径ヒートパイプで構成されたツインタワー大型ヒートシンクを採用する、AMD Ryzen ThreadripperのTR4プラットフォーム専用CPUクーラー「be quiet! Dark Rock Pro TR4」をレビューしていきます。
Techace販売ページ:https://techace.jp/product_info.php/products_id/3350
製品公式ページ:https://www.bequiet.com/en/cpucooler/1525
マニュアル:DLリンク
レビュー目次
1.be quiet! Dark Rock Pro TR4の梱包・付属品
2.be quiet! Dark Rock Pro TR4のヒートシンク
3.be quiet! Dark Rock Pro TR4の冷却ファン
4.be quiet! Dark Rock Pro TR4の外観
5.be quiet! Dark Rock Pro TR4の検証機材・セットアップ
6.be quiet! Dark Rock Pro TR4の各種クリアランス
7.be quiet! Dark Rock Pro TR4の冷却性能
8.be quiet! Dark Rock Pro TR4のレビューまとめ
補足.空冷クーラーと水冷クーラーの違いについて
【機材協力:Techace】
be quiet! Dark Rock Pro TR4の梱包・付属品
まずは「be quiet! Dark Rock Pro TR4」の外観や付属品をチェックしていきます。「be quiet! Dark Rock Pro TR4」は黒色を基調にして製品イラストやテキストがプリントされたシンプルなデザインで、ハイエンド空冷CPUクーラーらしい大きいパッケージです。CPUクーラー本体は白色スポンジ製スペーサーで保護されています。
付属品やマニュアルは茶色の小分けパッケージに封入されています。
「be quiet! Dark Rock Pro TR4」の付属品は、ファンクリップ、PWM対応4PINファン端子2分岐ケーブル、各種マウントパーツ、ドライバー、熱伝導グリス、マニュアルとなっています。
CPUクーラーの設置に関連した部品は、マウンティングブラケット長短2本、プレート固定ネジ×4、プラスチックスペーサー×4、そして最後にCPUクーラーを固定する時に使うマウンティングブリッジの4種類です。
「be quiet! Dark Rock Pro TR4」ではサイドフローCPUクーラーとしては一般的な形式で、針金のファンクリップを使用して冷却ファンのヒートシンクへ固定します。付属ファンで使用する前後の柄が短いファンクリップ*4、増設オプションとして120mm角互換ネジ穴かつ25mm厚で使用できるファンクリップ*2、以上の6本が付属します。
詳しくは後ほど紹介しますが、CPUクーラー本体を簡単にチェックしておきます。
be quiet! Dark Rock Pro TR4はいかにも空冷CPUクーラーらしい外観で、大型アルミニウム製ヒートシンクはマットなブラック塗装が施され、重厚かつ落ち着きのあるデザインです。ベースプレートの前後からヒートパイプが伸びて2つの放熱ヒートシンクを構成する所謂ツインタワー型空冷CPUクーラーですが、前方と中央に2基のファンが標準で搭載されています。
ヒートシンクに冷却ファン等を装着した状態で重量を比較してみたところ、Thermalright Silver Arrow TR4が1072g、Noctua NH-U14S TR4-SP3が1285gに対して、be quiet! Dark Rock Pro TR4の重量は1176gでした。
be quiet! Dark Rock Pro TR4のヒートシンク
続いてbe quiet! Dark Rock Pro TR4のヒートシンクをチェックしていきます。be quiet! Dark Rock Pro TR4のヒートシンク放熱フィンはベースコア前後から分岐するツインタワー型で、ヒートシンク放熱フィンは一般的なアルミニウム製ですが黒色塗装が施されています。空冷CPUクーラーといと安価な製品はアルミニウムの素地が剥き出し、高級品は光沢のあるニッケルメッキというのが定番ですが、「be quiet! Dark Rock Pro TR4」は落ち着きのあるマットブラックです。
「be quiet! Dark Rock Pro TR4」のPCケースサイドパネルから見える天面には、ヘアライン仕上げで艶のあるブラック塗装、中央にメーカー名be quiet!のテキストロゴが刻印されたアルミニウム製プレートが装着されています。
「be quiet! Dark Rock Pro TR4」のヒートシンクはベースコアを中心に前後左右に対象的なサイズになっています。
ただし放熱フィンの形状は前後で異なります。フロントファンを設置する前方は端が細かく波打ち、中央に向かって奥へ引っ込むという形状の放熱フィンになっています。一方で排気側の後方は3層毎に凹凸形状が変わる放熱フィンが2セットで順繰りになっています。
ニッケルメッキの施された銅製ベースコアからは同じくニッケルメッキ銅製の6mm径ヒートパイプが片側7本で計14本も伸びるという非常に豪華な構成です。
ベースコア自体もIHS接触面と逆側が放熱フィン形状になっているところが特徴的です。
be quiet! Dark Rock Pro TR4のベースコアプレートはニッケルメッキの銅製です。鏡面というほどではありませんが、滑らかに平滑化されています。
「be quiet! Dark Rock Pro TR4」には既存のCPUと比較して超大型なRyzen Threadripperの68mm×51mmのCPUヒートスプレッダを完全にカバーすることが可能な68mm×53mmのニッケルメッキ処理済み大型銅製ベースプレートが採用されています。
be quiet! Dark Rock Pro TR4の冷却ファン
be quiet! Dark Rock Pro TR4には「Silent Wings 3 120mm PWM(型番:SW3-12025-LF-PWM)」と「Silent Wings 135mm PWM(型番:SW3-13525-LF-PWM)」の2基の冷却ファンが付属します。「Silent Wings 3 120mm PWM」は120mm角25mm厚の汎用サイズ、「Silent Wings 135mm PWM」は135mm径20mm厚のラウンドフレームとなっています。定格ファン回転数は「Silent Wings 3 120mm PWM」が1500RPM、「Silent Wings 135mm PWM」が1200RPMで、いずれもPWM速度制御に対応しています。
冷却ファンの軸を支えるフレームはファンブレードの回転と直交する向きに軸から伸びてファン回転とは逆方向に弧を描いて気流の直進性を増し、静音性も確保できる形状です。安定した回転で低騒音な6軸モーター、長寿命・高静音性な流体動圧軸受(Fluid Dynamic Bearing)が採用されています。
「Silent Wings 3 120mm PWM」は吸気・排気面を広くとるため、ファンフレームの前後はすり鉢形状になっています。
一方で「Silent Wings 135mm PWM」は綺麗な円筒状フレームに120互換のネジ穴があります。
冷却ファンのヒートシンクへの固定方法はサイドフローCPUクーラーとしては一般的な針金のファンクリップを使用する方式です。付属ファンで使用する前後の柄が短いファンクリップ*4、増設オプションとして120mm角互換ネジ穴かつ25mm厚で使用できるファンクリップ*2、以上の2種類6本が付属します。
増設オプションとして25mm厚120mm角の汎用ファンに使用できるファンクリップが付属するのでヒートシンク前方のファンは交換が可能です。ヒートシンク後方については放熱フィンに防振ゴムが装着されていないのでトリプルファン構成は非推奨のようです。
冷却ファンのネジ穴にファンクリップを引っ掛けるのですが、中央用のクリップはファンに対して脱落を防止出来る形状になっておらず(ひっかかる部分はあるが抜けやすい)、すぐに外れてしまうので、慣れるまで固定が難しく感じました。
「be quiet! Dark Rock Pro TR4」のファンクリップはヒートシンク側面ピッタリの凹凸の内形状となっておりクリアランス的には理想的ですが、ヒートシンクに固定するまでファンから脱落しやすい形状や、指を引っ掛けるための凸状の折り曲げがないなど、装着し易さという観点では微妙です。
「be quiet! Dark Rock Pro TR4」については、『付属ファンのファン固定部分がフレームの中央にあるため、一般的なファンとファンクリップの互換性がない(フロント用は互換ファンが付属)』、『中央ファンは20mm厚の特殊形状なので、汎用ファンは使用できない』の2点からヒートシンクに汎用性がありません。付属ファンも単品では販売されていないので、長期使用でファンが故障した時の保守性は微妙です。
「be quiet! Dark Rock Pro TR4」にはPWM対応4PINファン2分岐ケーブルも標準で付属しているので、2基のファンの電源は1つの4PINファン端子から取得できます。
be quiet! Dark Rock Pro TR4の外観
ヒートシンクと冷却ファンの個別チェックも済んだところで、ヒートシンクへ冷却ファンを組み込んで「be quiet! Dark Rock Pro TR4」の完成状態の外観や寸法をチェックしていきます。be quiet! Dark Rock Pro TR4はいかにも空冷CPUクーラーらしい外観で、大型アルミニウム製ヒートシンクはマットなブラック塗装が施され、重厚かつ落ち着きのあるデザインです。
「be quiet! Dark Rock Pro TR4」はヒートシンクがファンよりも高い位置にあって全高は製品仕様通り163mm程度でした。ファンの位置はファンクリップで上下にオフセットできるので、メモリクリアランスについても製品仕様の通り40~47mmで間違いなさそうです。
be quiet! Dark Rock Pro TR4の検証機材・セットアップ
be quiet! Dark Rock Pro TR4を検証機材のベンチ機にセットアップします。ベンチ機のシステム構成は次のようになっています。テストベンチ機の構成 | ||
ベンチ機1 |
ベンチ機2 |
|
OS | Windows10 Home 64bit | |
CPU |
AMD Ryzen Threadripper 3970X 32コア64スレッド (レビュー) |
|
M/B | ASRock TRX40 Taichi (レビュー) |
|
メインメモリ | G.Skill Trident Z RGB F4-3200C14Q-32GTZRX (+F4-3600C14D-16GTZN×2セット) DDR4 8GB*8=64GB (レビュー) |
|
グラフィックボード |
MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC ファンレス (レビュー) |
ZOTAC RTX 2080Ti AMP Extreme Core (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung SSD 860 PRO 256GB (レビュー) |
|
電源ユニット |
Corsair HX1200i (レビュー) |
Thermaltake Toughpower iRGB PLUS 1250W Titanium (レビュー) |
PCケース/ ベンチ板 |
STREACOM BC1 (レビュー) |
Cooler Master MASTERCASE MAKER 5t (レビュー) NZXT Aer F 140 3基(レビュー) |
ベンチ機のシステムストレージにはSamsung製MLCタイプ64層V-NANDのメモリチップを採用する18年最速のプロフェッショナル向け2.5インチSATA SSD「Samsung SSD 860 PRO 256GB」を使用しています。Samsung SSD 860 PROシリーズは容量単価が高価ではあるものの、システムストレージに最適な256GBや512GBモデルは製品価格としては手を伸ばしやすい範囲に収まっており、Ryzen Threadripperのようなエンスー環境のシステムストレージ用に一押しのSSDです。
・「Samsung SSD 860 PRO 256GB」をレビュー
CPUクーラーの設置方法について、当サイトの評価基準となるチェックポイントは次の3つです。
- LGA115Xの場合、CPU固定バックプレートが単独でマザーボードに固定できるか
- マウントパーツ設置状態でCPUを交換できるか
- 空冷の場合、ネジ止めの場合はマザーボード側から固定できるか
簡易水冷or水冷ブロックの場合、ハンドスクリューなどツールレス固定ができるか
上の3項目を全て満たす例として本格水冷用のCPU水冷ブロックですが「EK-Supremacy EVO」のマウンタ構造は「バックプレートをM/Bに固定可能」「完全ツールレス」「マウンタ設置状態でCPUの交換が可能」なので本格水冷・簡易水冷クーラーの水冷ブロック固定方式としてはベストだと思っています。水冷クーラーメーカーにはどんどん真似してもらいたい理想的な構造です。
「be quiet! Dark Rock Pro TR4」ではCPUクーラーをマザーボードに固定するために、最初にマウントパーツを装着します。使用する部品はマウンティングブラケット長短2本、プレート固定ネジ×4、プラスチックスペーサー×4、そして最後にCPUクーラーを固定する時に使うマウンティングブリッジの4種類です。
プラスチックスペーサーの上にマウンティングブラケットを乗せて、プレート固定ネジでマウンティングブラケットを固定します。以上でマウントパーツの設置は完了です。見ての通りマウントパーツを設置するとそのままではCPUは交換できなくなります。
CPUクーラーをマザーボードに固定する準備はこれで完了したので熱伝導グリスをCPUのヒートスプレッダに塗布します。熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
Thermal Grizzly Kryonaut TG-K-001-RS(少量、1g)
Thermal Grizzly Kryonaut TG-K-015-RS(1.5ml)
Thermal Grizzly Kryonaut TG-K-030-RS(3.0ml)
親和産業
グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
Ryzen Threadripperのサーマルグリスについて一部メーカーでは下の画像のような塗り方が紹介されています。普段は熱伝導グリスを上のようにてきとうに塗っているのですが、Ryzen Threadripperはヒートスプレッダが大きいため、『最初に等間隔に9カ所小さめに熱伝導グリスを落として、さらにその間の4か所に少し大きめに熱伝導グリスを塗る』というNoctua式の塗り方が良い感じでヒートスプレッダ全体へグリスが伸びるということもあり、CPUクーラーなど冷却性能に関わる検証ではNoctua式を採用しています。
この塗り方をするとRyzen Threadripperの大型ヒートスプレッダでもCPUクーラーの圧着でヒートスプレッダ全体へ熱伝導グリスが綺麗に伸びます。ただしグリスをかなり大量に使うので注意。
サーマルグリスの代用品として、数年スパンの長期使用においても性能低下が基本的になく再利用も可能、グリスが零れてマザーボードが汚れたり壊れる心配もないので、炭素繊維サーマルシート「Thermal Grizzly Carbonaut」もオススメです。
・「Thermal Grizzly Carbonaut」はRyzen TR 3970Xを冷やせるか!?
銅製ベースプレートには透明の保護フィルムが貼られているので、CPUクーラーをマザーボードに設置する前に剥がし忘れないように注意してください。
熱伝導グリスを塗ったらCPUクーラーヒートシンクを乗せて、ベースプレート上の溝に合わせてマウンティングブリッジを乗せ、付属のプラスドライバーでネジ止めすればヒートシンクの装着は完了です。
ヒートシンクをマザーボードに固定したら最後にファンクリップでヒートシンクに冷却ファンを装着して、be quiet! Dark Rock Pro TR4の設置作業は完了です。
be quiet! Dark Rock Pro TR4の各種クリアランス
CPUクーラーの性能検証に入る前に、空冷CPUクーラーにはつきものである最上段PCI-EスロットやVRM電源ヒートシンクやヒートシンクを搭載したシステムメモリとのクリアランス問題についてbe quiet! Dark Rock Pro TR4の事情をチェックしていきます。クリアランスの検証マザーボードとしては「ASRock TRX40 Taichi」、「ASUS ROG Zenith II Extreme」、「GIGABYTE TRX40 AORUS XTREME」、「MSI Creator TRX40」のマザーボード5機種について確認しました。
まず最初にAMD Ryzen Threadripperに対応するTRX40マザーボードと直接的に関係のあるプライマリグラフィックボードを設置する最上段PCI-EスロットおよびVRM電源クーラーとのクリアランスについてチェックします。
今回検証を行った「ASRock TRX40 Taichi」、「ASUS ROG Zenith II Extreme」、「GIGABYTE TRX40 AORUS XTREME」、「MSI Creator TRX40」の4機種については、be quiet! Dark Rock Pro TR4はVRMヒートシンクやプライマリグラフィックボードを設置する最上段のPCI-Eスロットと干渉することなく正常に設置することができました。
ASRock TRX40 Taichi
ASRock TRX40 TaichiはCPUソケット上のVRM電源ヒートシンクが非常に大きく、空冷CPUクーラーと干渉しやすい形状ですが、「be quiet! Dark Rock Pro TR4」とは数mmのスペースがあり接触することはありません。
ASRock TRX40 Creator
ASRock TRX40 CreatorはCPUソケット上のVRM電源ヒートシンクが非常に大きく、空冷CPUクーラーと干渉しやすい形状ですが、「be quiet! Dark Rock Pro TR4」とは数mmのスペースがあり接触することはありません。
ASUS ROG Zenith II Extreme
ASUS Prime TRX40-Pro
GIGABYTE TRX40 AORUS XTREME
MSI Creator TRX40
比較的大型な空冷CPUクーラーの多くに言えることですが、CPUクーラーとグラフィックボードの隙間が狭いので、CPUクーラーの設置自体は問題ないのですが取り外しの際には少し困るかもしれません。取り外しのためには定規などを使用してPCI-Eスロットのグラフィックボード固定爪を解除する必要があります。
取り付けよりも取り外しで困るというのは大型空冷CPUクーラーのあるあるネタなので注意してください。取り外しの際はグラフィックボード固定爪の解除のためにプラスチックの定規など細くて固いものを事前に用意しておくことをお勧めします。
続いて空冷CPUクーラーではヒートシンク付きDDR4メモリとの干渉が起きやすいのでリファレンス機材としてKingstonから提供いただいた「Kingston HyperX Fury DDR4」などを使用してCPUクーラーとメモリの干渉の有無をチェックしていきます。
その他のメモリのクリアランス検証の機材として「Samsung B-Die バルクメモリ(レビュー)」「Kingston HyperX Savage(レビュー)」「Kingston HyperX Predator RGB(レビュー)」「Corsair VENGEANCE LPX(レビュー)」「G.Skill Flare X(レビュー)」「G.Skill Trident Z Red/Black/RGB/Royal/Neo(レビュー)」「Corsair VENGEANCE RGB PRO(レビュー)」「Corsair Dominator Platinum RGB(レビュー)」も使用します。
AMD Ryzen Threadripperに対応するTRX40環境はクアッドチャンネルで最大8枚のメモリ装着に対応しており、使用するメモリ数に対して通常は次のようなレイアウトが推奨されています。CPUクーラーとメモリの干渉が発生する可能性が高いのは4枚刺し、もしくは8枚刺しを行う場合のCPUソケットに最も近い位置にある左右2つずつの4スロットとなります。
まずは「be quiet! Dark Rock Pro TR4」のヒートシンク中央にのみ冷却ファンを装着する標準構成とした場合のメモリクリアランスを確認します。
「ASRock TRX40 Taichi」、「ASUS ROG Zenith II Extreme」、「GIGABYTE TRX40 AORUS XTREME」、「MSI Creator TRX40」の5機種について、メモリクリアランスをチェックしていきます。
これらのマザーボードにおける「be quiet! Dark Rock Pro TR4」のメモリクリアランスについては4枚刺し、および8枚刺しのどちらであってもCPUソケットに最も近い左右2スロットにヒートシンクが被さります。
ASRock TRX40 Taichi
ASRock TRX40 Creator
ASUS ROG Zenith II Extreme
ASUS Prime TRX40-Pro
GIGABYTE TRX40 AORUS XTREME
MSI Creator TRX40
メモリの高さに関するクリアランスを確認してみると、ヒートシンク本体のクリアランスは製品仕様では47mm程度が確保されていますが、前方の冷却ファンはそれよりも低いので全高44mm程度が限界になります。全高43mmのG.Skill Trident Zシリーズについては干渉せずに設置できました。
「be quiet! Dark Rock Pro TR4」はファンクリップの構造上、冷却ファンをこれ以上は上方向にオフセットすることはできないので、全高44mm以下のメモリであれば干渉フリーで使用でき、それ以上の高さのメモリは使用できないと考えればOKです。
今回検証で使用した各DDR4メモリと「be quiet! Dark Rock Pro TR4」のクリアランスに関する互換性は次の表のようになりました。
Deepcool ASSASSIN IIIのメモリ互換性 | |||||
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高さ 全高 |
HS 厚み |
4枚刺し |
8枚刺し |
|
ヒートシンクなし | 31mm | - | 〇 | 〇 | |
HyperX Fury | 34mm +0mm |
2.9mm | 〇 | 〇 | |
HyperX Savage | 34mm +0mm |
3.1mm | 〇 | 〇 | |
Corsair VENGEANCE LPX | 34mm +0mm |
3.0mm | 〇 | 〇 | |
G.Skill Flare X |
39mm +0mm |
3.1mm | 〇 | 〇 | |
HyperX Predator RGB | 42mm +0mm |
3.4mm | 〇 | 〇 | |
G.Skill Trident Z RGB/Royal/Neo |
43mm +0mm |
3.6mm | 〇 | 〇 | |
Corsair Vengeance RGB PRO |
49mm +0mm |
2.9mm | × | × | |
Corsair Dominator Platinum RGB |
54mm +0mm |
3.4mm | × | × |
be quiet! Dark Rock Pro TR4のファンノイズと冷却性能
本題となる「be quiet! Dark Rock Pro TR4」の冷却性能や静穏性についてチェックしていきます。検証システムをベンチ板に置いた状態で測定を行っているためCPUクーラーが水冷・空冷によらず基本的にCPUクーラーの理想的な性能をチェックすることになります。
まずはサウンドレベルメーター(騒音計)を使用してファンノイズをCPUクーラー別で比較しました。騒音計の収音部分とノイズ発生部分との距離が15cm程度になる位置で測定を行っています。簡易水冷の場合はラジエーターとポンプ両方からの距離が15cm程度になるように設置しています。
電源OFF時の騒音値は33~35dBです。目安として40dBを超えたあたりからファンノイズがはっきりと聞こえるようになり、45dB前後で煩く感じます。50dBを超えてくるとヘッドホンをしていても煩く感じます。同じ騒音値でも周波数(ファン回転数)が高いほど体感としては大きな音に感じやすく、また不快に感じたり感じなかったりは音の性質にもよるので注意してください。
「be quiet! Dark Rock Pro TR4」の冷却ファンのファンノイズをファン回転数別に測定したところ次のようになりました。なお「be quiet! Dark Rock Pro TR4」の前方と中央のファンはPWMファン2分岐ケーブルによって同一のデューティ比で制御されていますが、定格回転数が異なるので定格1500RPMの前方のファン回転数を基準にグラフ化しています。
「be quiet! Dark Rock Pro TR4」は冷却ファンをデューティ比100%でフロント1500RPM/ミドル1200RPMの最大回転数にしても40dBに収まるのでフルレンジで静音性にすぐれた設計になっているので、CPU温度が高くなり過ぎない範囲内で自由にファン速度を調整すればOKです。120mm&135mmの2連ファンモデルながらNoctua NH-U12S TR4-SP3よりもノイズレベルが低いことからも(必ずしもファン速度=冷却性能ではありませんが)、「be quiet! Dark Rock Pro TR4」の静音性の高さが分かります。
続いて「be quiet! Dark Rock Pro TR4」の冷却性能をチェックしていきます。
CPUクーラーの冷却性能を検証するためのストレステストについては、FF14ベンチマークの動画(再生時間6分40秒、4K解像度、60FPS、容量5.7GB)を変換ソースとして、Aviutl&x264を使って動画のエンコードを行います。動画エンコードの同時実行数については4~6コアは並列なし、8~14コアは2並列実行、16コア以上は3~4並列実行としています。テスト中のファン回転数については一定値に固定します。
注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から管理人の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。
まず最初に第3世代Ryzen Threadripperの32コア64スレッドモデル「AMD Ryzen Threadripper 3970X」を定格動作として、ストレステスト中のCPU温度をチェックしていきます。
Ryzen Threadripper 3970Xを定格で運用するとCinebench R20のスコアは16700ほどとなります。またこの動作設定において上で紹介したストレステストを実行すると、システムの消費電力(概ねマイナス80WでCPUの消費電力)は360W前後に達します。
「be quiet! Dark Rock Pro TR4」のファン回転数を1200RPM(フロントファン)に固定してストレステストを実行したところ、「be quiet! Dark Rock Pro TR4」はRyzen Threadripper 3970XのCPU温度を最大74.5度、平均72.1度に収め、定格における理想的なコアクロックである全コア3.8GHz前後をキープできました。「be quiet! Dark Rock Pro TR4」の付属ファンの定格回転数は1500RPMなのでまだ多少余力を残しています。
続いてAMD Ryzen Threadripper 3970Xを手動でオーバークロックした時の「be quiet! Dark Rock Pro TR4」の冷却性能について、ストレステスト中のCPU温度をチェックしていきます。
「AMD Ryzen Threadripper 3970X」のOC設定としては、Precision Boost Overdriveを有効化して『PPT = 1000W、TDC = 490A、EDC = 630A』、また「CPUコア電圧:-100mV オフセット」に設定しています。
Ryzen Threadripper 3970Xをこの設定でPrecision Boost Overdriveによってクロックアップすると、Cinebench R20のスコアは17800ほどとなります。またこの動作設定において上で紹介したストレステストを実行すると、システムの消費電力(概ねマイナス80WでCPUの消費電力)は500W前後に達します。
「be quiet! Dark Rock Pro TR4」のファン回転数を今回は最大の1500RPM(フロントファン)に引き上げました。Precision Boost Overdriveでは定格運用と同様に単コア最大ブーストクロックを有効にしつつ、電力制限を解除することで全コア負荷時の全コア最大動作クロックを引き上げることができますが、「be quiet! Dark Rock Pro TR4」で適切に冷やしてやることによって全コア4.0GHzへのクロックアップができました。
Ryzen ThreadripperのPBOによるクロックアップ(OC)では消費電力も400Wを超えてくるのでラジエーターやヒートシンクの放熱容量だけでなく、CPUヒートスプレッダと接するベースの熱交換性能のCPU温度に対する比重かなり大きくなってきます。
1kgを超えるハイエンド空冷の大型放熱ヒートシンクに、超大型ベースプレートによる優れた熱交換性能が組み合わさって、Ryzen Threadripper 39700XのPBOによる全コア4.0GHzにも「be quiet! Dark Rock Pro TR4」は対応可能な冷却性能を実現しています。
be quiet! Dark Rock Pro TR4のレビューまとめ
最後にRyzen Threadripper対応ハイエンド空冷CPUクーラー「be quiet! Dark Rock Pro TR4」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- 黒一色のクールなデザイン
- ThreadripperのIHSを完全にカバーする68mm×53mmの超大型ベースプレート
- 左右7本で計14本の6mm径銅製ヒートパイプ
- 定格回転数の低いファンを搭載しているので静音性が高い
- 32コアRyzen Threadripper 3970XのPBOによる全コア4.0GHzを運用可能な冷却性能
- VRM電源クーラーやPCIEスロットと干渉し難いファン&ヒートシンクのサイズ
- 全高44mmまでのメモリに干渉フリーで対応
- 冷却ファンの形状が特殊なので汎用品は基本的に使用できず、保守部品の入手も難しい
- 大型グラフィックボードと組み合わせた場合に取り付けは問題ないが取り外しが難しい
- 中央ファンのファンクリップが固定しにくい
「be quiet! Dark Rock Pro TR4」はRyzen Threadripperの超巨大なCPUヒートスプレッダ全体をカバーする面積68mm×53mmのニッケルメッキ処理済み大型銅製ベースプレートと、左右14本のヒートパイプで構成されたツインタワー大型ヒートシンクを採用してRyzen Threadripper専用に最適化されたCPUクーラーだけあって、32コア64スレッドでTDP280WのRyzen Threadripper 3970Xを静音性を保ったままで十分に冷却できる性能があります。
また「be quiet! Dark Rock Pro TR4」は空冷CPUクーラーながら400W超の発熱が生じるPrecision Boost OverdriveによるRyzen Threadripper 3970Xの全コア4.0GHzクロックアップにも対応できました。今回の検証はベンチ板上で行ったのでヒートシンク前後でループバックの発生しない理想的な条件ですが、PCケースに組み込んだとしてもケース内外の吸排気が適切なら同等のパフォーマンスが期待できるはずです。
「be quiet! Dark Rock Pro TR4」はハイエンド空冷CPUクーラーらしい重厚な形状と、黒一色の落ち着いたカラーリングも大きな魅力です。Ryzen Threadripperに対応した空冷CPUクーラーは種類が限られるので、黒一色のクールなデザインが気に入ったのであれば、冷却性能や静音性も申し分ないのでオススメできます。
また136mm幅というサイズ感もマザーボードのPCIEスロットやVRM電源と干渉が発生し難いちょうどいい塩梅になっており、上にオフセットしない標準のファンポジションにおいて、G.Skill Trident Zのような全高44mm以下のメモリでメモリの8枚刺しにも対応可能と、クリアランスに優れているところも見逃せないポイントです。
なおbe quiet! Dark Rock Pro TR4に限った話ではありませんが比較的大型な空冷CPUクーラーでは取り付けは比較的簡単ですが大型グラフィックボードと組み合わせた場合に取り外しに難儀するのでその点は事前に押さえておいてください。取り外しの際はグラフィックボード固定爪の解除のために定規など細くて固いものが必要になります。
以上、「be quiet! Dark Rock Pro TR4」のレビューでした。
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「be quiet! Dark Rock Pro TR4」をレビュー
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) March 3, 2020
良い
✅スリッパ完全対応な68×53mmの超大型ベースプレート
✅全高44mmまでのメモリに干渉フリーで対応
✅3970XのPBOによる全コア4.0GHzを運用可能な冷却性能
悪いor注意
⛔冷却ファンの保守部品の入手が難しいhttps://t.co/883wEy8Nuq
補足:空冷クーラーと水冷クーラーの違いについて
「空冷クーラー」と「水冷クーラー」の2種類ついて同じところと違うところ、また原理的に考えた冷却性能の比較を簡単に補足しておきます。関連記事
・AMD第3世代Ryzen Threadripperのレビュー記事一覧へ・Ryzen Threadripper対応CPUクーラーのレビュー記事一覧へ
・「Noctua NF-A12x25 PWM」を360サイズ簡易水冷に組み込む
・「G.Skill Trident Z Neo F4-3600C14Q-32GTZN」をレビュー
・Ryzen Threadripper 3970X/3960X搭載のオススメBTO PCを解説
(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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