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可変リフレッシュレート同期機能FreeSyncに対応する、WQHD解像度で144Hzリフレッシュレートの27インチIPS液晶ゲーミングモニタ「HP X27i Gaming Monitor」をレビューします。GeForce RTX 2060 SUPERやRadeon RX 5700などミドルハイクラスGPUとの組み合わせは予算的なバランスが良いので、WQHD/144Hz/IPS液晶の「HP X27i」は高画質なPCゲーミングとハイリフレッシュレートなPCゲーミングを使い分けたいPCゲーマー中級者にオススメなゲーミングモニタです。
管理人が購入した2020年4月24日には、WQHD/144Hz/IPS液晶というスペックで圧倒的最安値となる3.5万円だった「HP X27i」ですが、応答速度や発色などモニタとしての性能はどうなのか徹底検証していきます。
製品公式ページ:https://jp.ext.hp.com/gaming/personal/hp_x27i_display/
HP X27i レビュー目次
1.HP X27iの概要
2.HP X27iの開封・付属品
3.HP X27iの液晶モニタ本体
4.HP X27iのOSD操作・設定
5.HP X27iの発色・輝度・視野角
6.HP X27iの144Hzリフレッシュレートについて
7.HP X27iの応答速度・表示遅延
8.HP X27iのFreeSync/G-Sync CPについて
9.HP X27iのHDR表示やHDCP対応について
10.HP X27iのレビューまとめ
HP X27iの概要
「HP X27i」は解像度が2560×1440のWQHD解像度で、画面サイズが27インチの液晶モニタです。液晶パネルタイプはノングレア(非光沢)で発色や視野角に優れたIPS液晶パネルが採用され、99% sRGBの広色域を実現しています。コントラスト比は通常1,000:1、応答速度は4ms (GTG)、輝度は標準350nit(cd/m^2)です。「HP X27i」のリフレッシュレートはネイティブ144Hzです。144Hzの高リフレッシュレートによって応答速度が高速になるのでブレや残像がなくなってクッキリとした滑らかな表示です。60FPSでは識別の難しいゲーム内遠方で動くエネミーやオブジェクトの発見などが容易になるので、オンライン対戦FPSゲームなど競技性の高いPCゲームにおいて対戦相手よりも優位に立つことができます。
「HP X27i」はAMD/NVIDIA製グラフィックボードやXbox One Xを組み合わせることで利用可能な可変リフレッシュレート同期機能「AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync)」にも対応しており、ティアリングがなくスタッタリングを抑えた快適で鮮明なゲーミング環境を実現できます。AMD FreeSyncに対応したビデオ出力はDisplayPortとHDMIの2系統で、いずれも対応フレームレートは48Hz~144Hzと広範囲です。
「HP X27i」に搭載されたビデオ入力はHDMI2.0とDisplayPort1.2の2系統です。全てのビデオ入力がWQHD/144Hzに対応しています。
「HP X27i」の寸法はモニタスタンド込みで幅611mm x 高さ401mm~511mm x 奥行216mm(モニタ単体では58mm)となっています。付属モニタスタンドは上下チルト、昇降高さ調整、ピボットに対応しています。チルト角は上24度から下10度、高さ調整は最大110mmの範囲で調節可能です。本体重量はモニタスタンドありで7.35kg、モニタスタンドなしの液晶パネル本体のみは5.0kgとなります。VESA100x100マウントにも対応しておりモニタアームも使用可能です。
HP X27iの開封・付属品
まずは「HP X27i」を開封していきます。「HP X27i」のパッケージサイズは幅650mm×厚さ200mm×高さ559mmとなっており、27インチモニタが入っている箱としてはかなり大きく、重量も8kg程度です。持ち手になる部分がありませんが、成人男性なら問題なく持ち運べると思います。
パッケージを開くとまず、ビデオケーブルやACケーブルが収められた発砲スチロールの蓋があるので、それを取り出します。付属品の収められた発泡スチロールの蓋を取り出すと、その下にはモニタ本体とモニタスタンドが収められていました。
「HP X27i」の付属品は、HDMIケーブル、ACケーブル、マニュアル冊子類のみで非常にシンプルです。
「HP X27i」のビデオ入力はDisplayPort1.2とHDMI2.0の2つがありますが、付属するケーブルはHDMIケーブルの1本のみです。
各種ケーブルを個別に購入するのであれば、4K/120Hz対応のDisplayPort1.4ケーブルなら「サンワサプライ KC-DP14シリーズ」、HDMI2.0ケーブルなら「エレコム Premium HDMIケーブル スリムタイプ DH-HDP14ESBKシリーズ」がおすすめです。いずれも標準で付属するケーブルよりもケーブル径が細くて取り回しが良いので管理人も個人的に使用しており、おすすめのケーブルです。
エレコム PREMIUM HDMIケーブル スリムタイプ 1.0m
エレコム PREMIUM HDMIケーブル スリムタイプ 1.5m
エレコム PREMIUM HDMIケーブル スリムタイプ 2.0m
エレコム
「HP X27i」に付属するモニタスタンドはフレームとフットプレートの2つの部品で構成されていますがフレームは最初からモニタ本体に装着済みです。
フットプレートをフレームに差し込んで底面のネジを締めるだけで簡単にモニタスタンドを組み立てられます。ネジにはレバーが付いているのでドライバー不要で組み立てが可能です。
HP X27iの液晶モニタ本体
続いて「HP X27i」の液晶モニタ本体をチェックしていきます。「HP X27i」の上と左右はフレームレス構造ですが、フレーム内パネル上には非表示領域があり、上左右の非表示領域の幅は7mm程度、フレームのある下は25mm程度です。
「HP X27i」の下フレームにはアクセントカラーとなるグリーンのラインがあり、中央にはHPロゴが刻印されています。
下側フレーム中央のHPロゴの下にある緑色ライン部分にはLEDイルミネーションが内蔵されており、モニタ電源が入ると発光します。OSDメニューから発光の明るさや明滅の設定が可能で、完全に消灯させることもできます。
「HP X27i」の背面外装は黒色プラスチック製でシンプルな形状です。モニタスタンドのフレーム上側にHPロゴがあることを除けば装飾もありません。
「HP X27i」のモニタ本体の厚さは最薄部で22mm、最厚部で55mmほどでした。近年では最厚部50mmを切る液晶モニタもあるので、「HP X27i」は厚くはないものの薄くもない標準的な製品です。モニタ本体重量は5.1kg程度です。
液晶モニタ本体背面は下を向く方向で右側に各種I/Oポート、左側にAC端子が設置されています。
「HP X27i」にはI/Oポートとして左から順に、マイク出力3.5mmジャック、HDMI2.0、DisplayPort1.2が設置されています。
「HP X27i」の付属モニタスタンドの上下チルトの可動域は仕様通り下に10度、上に24度です。
モニターの高さはモニター本体とスタンドの付け根部分が上下に動く構造になっており、全高で401mm~511mmの範囲内で調整できます。
付属のスタンドはピボットに対応しており、縦向きにして使用できます。
「HP X27i」はVESA100x100規格のVESAマウントに対応しておりサードパーティ製のモニターアームを使用できます。モニタ単体の重量も5.4kgほどなのでモニターアームを問題なく利用可能です。
モニターアームについては管理人は「Lumen MA-GS102BK」、もしくは色違いでほぼ同機能な「サンワダイレクト 100-LA018」という製品をおすすめしています。モニターアームというとエルゴトロン製が一番の売れ筋ですが、クランプのネジが下に伸びているタイプのモニターアームは机に干渉して使えないという問題があり、MA-GS102BKはクランプを上側から六角レンチで締めるタイプでテーブル下の隙間が狭いデスクでも使用できるので管理人も使っています。
「Lumen MA-GS102BK」はモニタとアームを接続する部分がクイックリリースのブラケット式になっていてモニタアームからモニタ本体の着脱が非常に簡単です。ピボット機能もあるので設置後にモニタを縦・横で向きを切り替えることもできます。ただ関節の滑りに若干難があるので潤滑剤を塗布するのがおすすめです。
HP X27iのOSD操作・設定
「HP X27i」のOSD操作はモニタ正面右下に設置されている5つのボタンのうち中央寄りの4つのボタンを使用します。一番外側のボタンはモニタの電源ボタンです。4つのOSDボタンのいずれかを押下すると画面右下にスタートメニューが表示されます。各ボタンの上には画面上にアイコンや矢印でその時のボタンの機能が表示されるので直感的に操作できます。
スタートメニューにおいて詳細メニューアイコンの右側に表示される3つのアイコンはその下にあるボタンに割り当てられたショートカットキーとなっており、標準設定では左から「ディスプレイ情報」「表示モード」「次の入力」にアクセスできます。ショートカットキーに割り当てる機能はOSDメニューから変更が可能です。
「HP X27i」は初めて起動した時にOSD言語として英語が適用されていますが、詳細設定メニューを開いてから下の手順で日本語UIに切り替えが可能です。
スタートメニューで一番左、リストアイコンが表示されているボタンを選択すると詳細設定メニューが表示されます。「HP X27i」の詳細設定メニューは液晶モニタの25分の1くらいの領域に表示され、文字も小さくいので視認性はあまり良くありません。
「HP X27i」のOSD詳細設定メニューには上から順に、「輝度」「コントラスト」「カラーコントロール」「入力コントロール」「イメージコントロール」「電力コントロール」「メニューコントロール」「マネージメント」「言語」「情報」の10項目があります。
「HP X27i」の画質モードは「低ブルーライト」「夜間」「読書」「HP Enhance+」「ゲーム」「動画」「写真」「カスタム」の8つのプロファイルがあります。
一般にオーバードライブと呼ばれる応答速度を調整する機能は、「HP X27i」では「応答時間」の名前で設置されており、レベル1~レベル5の5段階で補正の強さを設定できます。画質モードによって設定値は変わりますがゲームモードではレベル2に設定されています。
可変リフレッシュレート同期機能「AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync)」はそのままの名前で設定項目が配置されています。標準でONになっています。
暗所を明るく(白く)表示して視認性を改善する機能「黒色ストレッチ」も用意されており、オフ/低/中/高の4段階で設定が可能です。レベルを上げるほど明るく(白く)なります。
最近のゲーミングモニタに便利機能として採用の多い定番のOSDクロスヘア表示や、可変リフレッシュレート同期機能の動作確認に便利なリアルタイムリフレッシュレートをOSD表示する機能は、「HP X27i」に搭載されていないのは少し残念です。
HP X27iの発色・輝度・視野角
HP X27iの発色・輝度・視野角など画質についてチェックしていきます。直接的な画質ではありませんがHP X27iの液晶パネルは光沢のあるグレアではなくアンチグレアタイプなので暗転時に自分の顔などが映り込みません。
液晶パネルには大きく分けてIPS液晶パネルとVA液晶パネルとTN液晶パネルの3種類があり、各社個別の製品によって個体差はあるものの、この3つの液晶パネルの特性を簡単にまとめると次のテーブルのようになります。
「HP X27i」に採用されているIPS液晶パネルはTN液晶パネルやVA液晶パネルと比べると色再現性や視野角など一般に画質に直結する性能が優れている反面、価格が高価になりがちな液晶パネルです。TN液晶パネルに比べて応答速度が遅めなので、60Hzオーバーのリフレッシュレートを実現しているIPS液晶パネル採用ゲーミングモニタは少ないため、輪をかけて高価です。とはいえ画質とリフレッシュレートを両立できるので、予算に糸目をつかないエンスーゲーマー勢に好まれています。
液晶パネルの簡易比較表 | |||
IPS | VA | TN | |
色再現性 | ◎ | 〇 | △ |
コントラスト | 〇 | ◎ | △ |
視野角 | 〇 | 〇 | △ |
応答速度 | 〇 | △ | ◎ |
価格 (高RR) |
△ (×) |
△ | 〇 |
液晶パネルの種類による性能の違いについてはこちらの記事も参照してみてください。
・IPS/VA/TN液晶パネルを比較解説 - ゲーミングモニタの選び方[4]
「HP X27i」は144Hzの高速リフレッシュレートながら、IPS液晶パネルが採用されているので視野角も良好です。
「HP X27i」の発色について、色温度の標準設定である”無彩色”で、白色が極端に黄色や青色がかって見えることもなく、特に違和感はありませんでした。色温度設定には寒色/無彩色/暖色の3種類のプリセットがありますが、これらを切り替えても発色に違和感がある場合は、ユーザー設定でRGBのバランスを好みに合わせて整えてください。
ここからはカラーキャリブレータを使用して、色域・色再現性・輝度・コントラスト・均一性など画質に直結するモニタの性能について詳細な検証結果を見ていきます。なおこれらのモニタ性能(特に輝度の均一性)については同じ製品であっても個体差が大きいのでご注意ください。検証にはカラーフィルター式(色差式)のX-Rite i1 Display Pro PlusとDatacolor SpyderX、そして分光式(スペクトロメーター)のX-Rite i1 Basic Pro 2を使用しています。
余談ですが、分光式のi1 Basic Pro 2は20万円程と非常に高価ですが(2020年4月現在は後継のProが発売済みでPro2は終売)、一般的な用途であれば測定精度は十分なので、イラスト製作や写真編集でカラーキャリブレーションを行う場合、カラーフィルター式のX-Rite i1 Display ProかDatacolor SpyderX Proで十分です。ユーザー数の多さで面倒が少ないのはX-Rite i1 Displayだと思います。
「HP X27i」のディスプレイ輝度について白色点の輝度をOSD設定別で測定しました。OSD上の輝度設定10%刻みで0%~100%の輝度変化は次のようになっています。
「HP X27i」において、一般に見やすい明るさと言われる120cd/m^2は輝度20%前後、室内照明に依りますが個人的に見やすいと感じる明るさの180~200cd/m^2は輝度40~50%です。
「HP X27i」のディスプレイ輝度の均一性(Uniformity)を検証しました。画面中央の輝度が約120cd/m^2になるOSD設定において、画面を横7×縦5の35分割として各位置の白色点の輝度を測定し、120cd/m^2を基準にしたパーセンテージで等高線マップにしています。
液晶モニタにおいて輝度の低下が特に大きい四隅&四辺は、上のような領域分割測定では見落とされてしまうので、同様に中央120cd/m^2を基準にして個別に測定したところ次のようになりました。
「HP X27i」については全体を白表示にしても、四隅&四辺にほとんど暗さを感じません。WQHD/144Hz/IPS液晶というスペックの中で最安値クラスの製品にも関わらず、この均一性は圧巻です。
画面中央の白色点が約120cd/m2になるOSD設定において「HP X27i」のブラックレベルを測定したところ次のようになりました。ブラックレベルの測定にはX-Rite i1 Display Pro Plusを使用しています。
またこの時のコントラスト比も算出したところ次のようになっています。なおコントラスト比に大きく影響するブラックレベルはコンマ2桁での測定になるため測定精度が若干怪しく、ブラックレベル0.01の差でコントラスト比が大きく変わるので参考程度と考えてください。
続いて「HP X27i」の色域と色の正確性を検証してみました。
まずはモニタのOSD設定を標準モード、ディスプレイ輝度のみ120cd/m^2になるように調整し、任意のカラープロファイルを適用しない場合、次のようになりました。
「HP X27i」は標準モードでそのまま使用しても98% sRGBをカバーしています。
色の正確性は平均ΔEが1.15となっており、なかなか優秀です。X-Riteによると『ΔE=1程度で2つの色を横にくっつけて見比べた時に違いが判別できるレベル』とのこと。
次にX-Rite i1 Basic Pro 2を使用してカラーキャリブレーションを行いました。キャリブレーション設定は下のスクリーンショットの通りですが、i1 Profilerの標準設定をそのまま採用しています。
「HP X27i」では色温度を標準設定にするとRGBの強さに差が大きいとアラートが出たので、手動で調整できるユーザー設定モードでR(赤)=233, G(緑)=228, B(青)=255としてキャリブレーションを行いました。
X-Rite i1 Basic Pro 2によるカラーキャリブレーションで作成したICCファイルを適用し、上と同様に色域と色の正確性を測定したところ次のようになりました。
「HP X27i」はモニタの標準OSD設定とWindows PCの標準カラー設定でも精度が高い(モニタ性能の限界に近い)ようで、キャリブレーションによってΔEの平均値が0.93に下がり、色の正確性が僅かに高くなりましたが、あまり大きな差はありませんでした。
参考までにX-Rite i1 Basic Pro 2で行った品質検証(色の正確性の検証)の結果は次のようになっています。X-Rite i1 Basic Pro 2は分光式(スペクトロメーター)のカラーキャリブレータなので、測定精度はこちらの方が高いはずです。
上の測定結果ではカラーキャリブレーション後も色の正確性はΔE 0.93でしたが、X-Rite i1 Basic Pro 2で測定した色の正確性はΔE 0.6でした。
また分光型測色計(スペクトロメーター)で測定した輝度120cd/m^2における白色点のカラースペクトラムが次のようになっています。
カラースペクトラムから発色の良いモニタを見分けるざっくりとしたポイントは『RGB各色のピークが鋭く立ち上がり、かつ高さが同程度であること』です。一般的な液晶モニタは白色LEDバックライト(青色LEDを光源として赤緑(≒黄)蛍光体を組み合わせて白色を生成する)を採用しているので青色のピークが高くかつ鋭くなります。白色を基準として測定した場合、緑と赤のピークの高さは色温度のOSD設定で若干上下します。以上から簡単化すると『緑と赤のピークが鋭くなっているかどうか』をチェックすればカラースペクトラムの良し悪しがざっくりと判定できます。
「HP X27i」については青色ピークの立ち上がりは鋭いものの、緑と赤の分離が弱く、また青に比べてピークも低いという一般的な液晶モニタの特長です。
HP X27iの144Hzリフレッシュレートについて
「HP X27i」の最大の特徴の1つである144Hzリフレッシュレートについてチェックしていきます。まずは「HP X27i」の特徴の1つである”144Hzリフレッシュレート”について、その意味自体は特に説明せずとも読者はご存知だと思いますが、一般的な60Hzリフレッシュレートの液晶モニタが1秒間に60回の画面更新を行うのに対して、144Hzリフレッシュレートであれば標準的な60Hzの2.4倍となる1秒間に144回の画面更新を行います。さらに最近では競技ゲーマー向け製品で240Hzの超高速リフレッシュレートなゲーミングモニタも販売されています。
1秒間に144回の画面更新を行う144Hzリフレッシュレートの物理的なメリットとしては、単純に秒間コマ数が増えるので映像がより滑らかになります。上の章で詳しく検証したようにリフレッシュレートが上がると応答速度も上がって細部がクッキリとしたシャープな映像に見えやすくなり、加えて画面更新間隔が短くなるので表示遅延が小さくなり、一般的な60Hz環境よりもスピーディーなプレイで他者を圧倒しやすくなります。
「HP X27i」ではNVIDIA GeForce RTX20/GTX16シリーズやAMD Radeon VII/RX Vega/5XXシリーズなど最新グラフィックボードのDisplayPort1.2もしくはHDMI2.0のビデオ出力に接続することによって、モニタリフレッシュレートを144Hzなどに自由に設定できます。
モニタリフレッシュレートの設定は、NVIDIA製GPUの場合は上のスクリーンショットのようにNVIDIAコントロールパネルから、AMD製GPUの場合はWindowsのディスプレイ設定から行います。
オンライン対戦FPSなど競技性の高いゲームにおいて144Hzや240Hzといった高リフレッシュレートのモニタを使用した時の実用的なアドバンテージとして、ゲーム内視線を左右に振った時の視認性が上がるという例は直感的にもわかりやすいメリットですが、その他にもゲーム内遠方に存在して動いているエネミーやオブジェクトの視認性が上がるというメリットも存在します。
下の比較動画では4分割して映像を並べていますが、右下以外の3つは右下画面の緑枠部分を拡大するよう接写して、「SONY DSC-RX100M5」の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影したものになっています。リフレッシュレート別で左上は60Hz、右上は120Hz、左下は240Hzとなっていますが、赤枠で囲った建物の出入り口付近で左方向に移動する敵の動きはリフレッシュレートが上がるほど視認しやすくなるのがわかると思います。
NVIDIA公式からもハイリフレッシュレートなゲーミングモニタとハイフレームレートに対応可能な高性能グラフィックボードを使用するメリットについて紹介する「動画が公開されています。
なお「HP X27i」でWQHD解像度/144FPSを狙うには、元から軽めのPCゲームや画質設定を下げた最新PCゲームであってもグラフィックボードのGPU性能がそれなりに要求されます。液晶モニタに「HP X27i」を使用するのであれば2020年最新のミドルハイクラスGPUであるNVIDIA GeForce RTX 2070 SUPERやAMD Radeon RX 5700 XTがおすすめです。
・GeForce RTX 20XX/GTX 16XX SUPERシリーズのレビュー記事一覧へ
・Radeon RX 5700/5600/5500シリーズのレビュー記事一覧へ
HP X27iの応答速度・表示遅延
次にゲーミングモニタのハードウェア性能として特に重要な、「HP X27i」の応答速度や表示遅延についてチェックしていきます。まずは「HP X27i」の応答速度について検証していきます。
なおゲーミングモニタを選ぶ、もしくはモニタの応答速度や残像を評価する上で重要な予備知識である『液晶モニタの応答速度とオーバードライブ機能』についてはこちらの記事で簡単に紹介しているので、よくわからないという人は先に確認してみてください。
・ゲーミングモニタの選び方[1] 応答速度とオーバードライブについて
「HP X27i」のOSDメニュー上ではオーバードライブ機能は「応答時間」の名前で設置されており、レベル1~レベル5の5段階で補正の強さを設定できます。画質モードによって設定値は変わりますがゲームモードではレベル2に設定されています。
「HP X27i」のオーバードライブ設定は144Hzにおいては”レベル5”が最適な設定です。また”レベル5”設定では60Hzなどにリフレッシュレートを下げるとオーバーシュートの逆像が発生するので、レベル4以下に下げるのを推奨します。
応答速度の確認には「UFO Test: Ghosting」を使用します。同テストではUFOが移動する背景カラーを選択できますが、今回の検証ではブラック/グレー/ホワイトの3色を選択しています。
背景カラーがブラックの場合は各液晶パネルにおいて応答速度は高速な数値を示すので、概ね理想的な応答を確認することになります。背景カラーがホワイトの場合の応答速度は、ドキュメントやウェブページでテキストをスクロールした時の文字の滲み度合いの参考になります。背景カラーがグレーの場合、中間色に移るまでの応答速度を比較することになるので、一般的なゲームプレイにおける物理的な残像の少なさの指標として参考になります。
「HP X27i」に採用されているIPS液晶パネルは傾向として応答速度が比較的遅いのですが、最大リフレッシュレートの144Hzで動作させた時に見える残像は1フレーム程度に収まりました。
「HP X27i」はベストな状態ではしっかりと現在のフレームが単独で表示されます。ハイリフレッシュレートなIPS液晶モニタの中でも、この応答速度を実現できる製品は希少ですが、WQHD解像度ながら3万円半ばで購入できる「HP X27i」もそうであるというのは本当に驚きました。
さらに「HP X27i」のリフレッシュレートを変えてみたり、他の液晶モニタを比較対象にしたりしながら、「UFO Test: Ghosting」の様子を「SONY DSC-RX100M5」の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影し、比較してみます。
「HP X27i」のリフレッシュレートを144Hzにした時、オーバードライブ設定を最大設定の”レベル5”に変更するとオーバーシュートも発生せず、最も優れた応答速度を発揮します。標準設定のレベル1やレベル2は当然として、1つ下のレベル4でも大幅に残像が出るので、100~144Hzの可変リフレッシュレート同期機能使用時も含めて、ハイリフレッシュレート動作時の応答速度設定はレベル5がオススメです。
ハイリフレッシュレートで理想的な応答を見せるオーバードライブ設定は相対的に補正が強過ぎるため、リフレッシュレートを下げるとオーバーシュートが発生してしまうことが多いですが、「HP X27i」でも144Hzで最適な応答を見せる”レベル5”設定は60Hzでオーバーシュートが発生します。60Hzなど一般的なリフレッシュレートで使用する場合は応答速度設定はレベル4がオススメです。
「HP X27i」と同じくWQHD解像度/144HzリフレッシュレートでIPS液晶パネルの「LG 27GL850-B」および「AORUS AD27QD」と、144Hz動作時の応答速度を比較してみました。
WQHD/144Hz/IPS液晶のパネルは主にLG、AUO、Innoluxの3社が製造しており、特に純正モデルのLG 27GL850-Bを始めとしてNano IPSと1ms GTGを冠するLG製パネル採用製品は頭一つ抜きん出た高速な応答速度を実現していることで知られています。
「HP X27i」はグレー背景においてInnolux製パネルを採用するAORUS AD27QDよりもはっきりと高速であり、僅かながらLG 27GL850-Bよりも高速です。3万円半ばで購入できるというWQHD/144Hz/IPS液晶の最安値製品とは思えない性能です。
黒背景と白背景も加えてチェックしてみると、グレー背景では「HP X27i」が僅かながら高速でしたが、黒背景ではLG 27GL850-Bよりも遅く、また白背景ではUFOが消えるまではほぼ同じですが、UFOの表示(白からの立ち下り)が遅くいのが見て取れます。「HP X27i」は液晶パネルの特性なのか、オーバードライブのチューニングなのか、黒へ近づく方向の大きい変化が若干遅いようです。そのため平均GTGや最小GTGを算出すれば応答速度はLG 27GL850-Bのほうがやはり上回る結果になりそうです。
また「UFO Test: Ghosting」において下の写真のようにUFOが微かに表示された瞬間を始点に、その地点のUFOが完全に消えた時点を終点にして、その間隔のフレーム数を応答速度として算出し比較してみました。なおオーバードライブ機能によって発生するオーバーシュート/アンダーシュートによる逆像が発生してから消えるまでの時間は別に計算しています。
評価の目安として、”1000msをリフレッシュレートで割って2倍した数値”よりも測定値が小さければ、画面更新に応答速度が追いついています。60Hzの場合は33.3ms、120Hzの場合は16.6ms、144Hzの場合は13.9ms、240Hzの場合は8.3msを下回っていればOKです。
まずは背景カラーがブラックの時の「HP X27i」やその他の比較対象モニタの応答速度の計測結果となります。背景カラーがブラックの場合は各液晶パネルにおいて応答速度は高速な数値を示すので、概ね理想的な応答を確認することになります。
続いて背景カラーがホワイトの時の「HP X27i」やその他の比較対象モニタの応答速度の計測結果となります。背景カラーがホワイトの場合の応答速度は、ドキュメントやウェブページでテキストをスクロールした時の文字の滲み度合いの参考になります。
最後に背景カラーがグレーの時の「HP X27i」やその他の比較対象モニタの応答速度の計測結果となります。背景カラーがグレーの場合、中間色に移るまでの応答速度を比較することになるので、一般的なゲームプレイにおける物理的な残像の少なさの指標として参考になります。
最後に「HP X27i」の表示遅延(内部遅延)について測定を行いました。
モニタにはGPUのビデオ出力が送られてきてから実際にモニタに表示されるまで遅延が存在し、この遅延が大きいと例えば、FPSゲームでゲームパッドのトリガーやマウスのクリックによる操作からワンテンポ遅れて、マズルフラッシュが表示される、といった現象が発生します。人間は当然目で見てから操作するので、格闘ゲームやFPSゲームなど1,2フレームを争うような競技性の高いゲームにおいてはモニタの表示遅延が可能な限り小さいことが望まれます。
モニタの表示遅延測定においてはモニタ以外の要因で表示遅延に差が出ると問題があるので、検証モニタへビデオ出力を行うPCはCore i9 9900KとGeForce RTX 2080 Tiを搭載した次のベンチ機で統一しています。
テストベンチ機の構成 | |
CPU | Intel Core i9 9900K(レビュー) Core/Cache:5.1/4.7GHz, 1.300V 殻割り&クマメタル化(レビュー) |
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36(レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z Black F4-4400C19D-16GTZKK DDR4 8GB*2=16GB (レビュー) 4000MHz, CL17-17-17-37-CR2 |
マザーボード |
ASUS WS Z390 PRO (レビュー) |
ビデオカード | ZOTAC RTX 2080Ti AMP Extreme Core (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB MZ-N6E1T0B/IT (レビュー) |
OS | Windows10 Home 64bit |
電源ユニット | Corsair HX1200i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
キーボード | HyperX Alloy FPS メカニカルゲーミングキーボード (レビュー) |
モニタの表示遅延を測定する具体的な方法としては、キー押下時にそのキーのLEDが点灯するキーボードを使用して、LEDの点灯から画面表示への反映までの間隔を遅延時間として測定します。画面表示の確認については簡単にメモ帳を使用しています。この様子を「SONY DSC-RX100M5」の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影し、遅延フレーム数を数えて遅延時間を算出します。同計測を各モニタ(と各リフレッシュレート)ごとに10回ずつ行って、その平均値を表示遅延とします。
「HP X27i」やその他の比較モニタの表示遅延の測定結果は次のようになりました。グラフの通りリフレッシュレートを上げると応答速度だけでなく表示遅延も改善するのでゲーマーにとってハイリフレッシュレート液晶モニタを選択するメリットは大きいです。
また上のグラフからはリフレッシュレートが上がると表示遅延が小さくなるという関係がわかります。
表示遅延が小さいメリットとしては、視認と操作の繰り返し応答が良くなることに加えて、例えば下の動画のように壁に隠れたターゲットが壁から出てきた時、画面に表示されるのが実際に速くなります。
HP X27iのFreeSync/G-Sync CPについて
続いて「HP X27i」が対応する可変リフレッシュレート同期機能「AMD FreeSync / NVIDIA G-Sync Compatible(VESA Adaptive-Sync)」についてチェックしていきます。モニタの画面更新(リフレッシュ)に関する基本的な予備知識や、「AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync)」と「NVIDIA G-Sync Compatible」の関係についてはこちらの記事を参考にしてください。
・ゲーミングモニタの選び方[3] FreeSyncとG-Sync Compatibleについて
なお当サイトのレビューではNVIDIA環境について、G-Syncモジュールが搭載されたモニタにおける可変リフレッシュレート同期機能を単純にG-Syncと呼び、AMD FreeSync(VESA Adaptive-Sync)に対応したモニタにおける可変リフレッシュレート同期機能はG-Sync CompatibleもしくはAdaptive-Syncと呼びます。またドライバでそのモニタが正式にサポートされている場合はG-Sync Compatible認証取得済みと補足します。
「AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync) / NVIDIA G-Sync Compatible」には対応可能なフレームレート(リフレッシュレート)の上限と下限が製品ごとに設定されており、「HP X27i」は48Hz~144Hzの範囲内で可変リフレッシュレート同期に対応しています。また「AMD FreeSync」に対応するビデオ入力はHDMI2.0とDisplayPort1.2の両方です。「NVIDIA G-Sync Compatible」に対応するビデオ入力は機能の仕様上、DisplayPortのみです。
「AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync) / NVIDIA G-Sync Compatible」が正常に動作してリフレッシュレートが可変になると、「HP X27i」のOSDメニューの情報パネルに表示されるリフレッシュレートがフレームレートに合わせて変動するようになるので(OSDメニューの開いたタイミングでのリフレッシュレートが表示される)、機能が正しく動作しているかはここを見て確認してください。
AMD FreeSyncの使い方
可変リフレッシュレート同期「AMD FreeSync」を有効化する手順について説明します。AMD製GPU搭載PCの場合はRadeon設定のウィンドウ右上にある歯車アイコンを選択、トップメニュータブからディスプレイを選択の手順で表示される「Radeon FreeSync」のスライドスイッチから機能を有効化します。
また上で紹介した参考記事中で解説しているように、AMD FreeSyncではテアリング解消とマウス遅延低減のどちらを優先するかで垂直同期の有無を各自で選択する必要があります。垂直同期は通常ゲーム内設定でON/OFFの切り替えが可能ですが、ドライバ側が上書きしてゲーム内からは切り替えられない場合があります。ゲーム内で設定して希望通りの動作にならない時はRadeon Settingsのゲームプロファイルもチェックしてください。
NVIDIA G-Sync Compatibleの使い方
可変リフレッシュレート同期「NVIDIA G-Sync Compatible」を有効化する手順について説明します。2019年1月15日以降の最新ドライバによってNVIDIA GeForce環境でもAdaptive-Syncが利用可能になりました。ドライバの更新に合わせてG-Sync Compatible認証を取得するモニタが増えています。
417.71以降の最新ドライバをインストールして、DisplayPortビデオ出力にAdaptive-Sync対応モニタを接続すると、G-Sync対応モニタを接続した時と同様にAdaptive-Syncを有効化するための設定が、NVIDIAコントロールパネル上の「G-Syncの設定」に表示されます。
「G-SYNC、G-SYNCとの互換性を有効化(Enable G-SYNC, G-SYNC Compatible)」のチェックボックスをチェックして、下のモニタアイコンに使用するモニタの名前が表示・選択されていることを確認し、適用をクリックすればNVIDIA GeForce環境でAdaptive-Syncを有効化できます。
なお今回レビューする「HP X27i」のようにG-SYNC Compatible認証を取得していない一般のAMD FreeSync/VESA Adaptive-Sync対応モニタでも、互換性が検証されていないと注記が表示されますが、NVIDIA製GPU環境においてAdaptive-Syncを利用できます。
AMD FreeSync/NVIDIA G-Sync Compatibleの効果
可変リフレッシュレート同期機能「AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync) / NVIDIA G-Sync Compatible」の効果やメリットについて説明していきます。機能的にはほぼ同じなので以下まとめてFreeSyncと呼ぶことがあります。AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync) / NVIDIA G-Sync Compatibleの検証に際してはリプレイ機能があって同一シーンで検証がしやすいので「Project Cars 2」を使用しています。またフレームレートやテアリングの発生の様子を確認しやすいように、画面左上にはGPUフレームレートOSD、画面左端にはGPUフレームバッファで色の変わるカラーバーが表示されるようにしています。加えてモニタが対応していればモニタOSDのリフレッシュレート表示機能も使用します。
画面右上のフレームレートはGPUフレームバッファから算出されているので必ずしもリフレッシュレートとは一致しません。画面左端のカラーバーは連続するフレーム間、つまりn番目とn+1番目のフレームではそれぞれ異なる色になっているため、同時に複数色のカラーバーが表示されている画面はテアリングが発生していることを意味します。
まずは同期なし、垂直同期、FreeSync、FreeSync+垂直同期の違いを分かりやすく体感してもらうため、モニタリフレッシュレート60HzにおいてGPU側出力フレームレートが30FPS~60FPSの間で変動するようにして、「SONY DSC-RX100M5」の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影して、画面表示の様子を比較してみました。
同期なしでは盛大にテアリングが発生し、垂直同期ではスタッター(カクつき)が発生しているのがわかります。一方でFreeSyncと垂直同期の両方を有効にした場合はテアリングもスタッターも発生しません。ただし例外として動画で50秒以降のフレームレートが40FPSを下回るとAMD FreeSyncの対応フレームレート外となるためスタッターが発生しています。またFreeSyncのみを有効にして垂直同期は無効の場合、同期なしと比べて圧倒的にテアリングが減っているのがわかります。ただし対応フレームレート内であっても稀にテアリングが発生し、対応フレームレート外では同期なし同様にテアリングが発生します。
続いて144Hzリフレッシュレートにおいて、GPU側出力フレームレートが100FPS前後で変動するようにして、先ほど同様に同期なし、垂直同期、FreeSync、FreeSync+垂直同期の様子を16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影して比較してみました。
FreeSync有効であれば同期なしのテアリングや垂直同期のスタッターに悩まされることなく滑らかで綺麗な映像が表示できています。FreeSyncの60Hz/50FPS前後と144Hz/100FPS前後を比較すると当然ですが後者の方がコマ割りが増えるので16倍速スローモーションでもスムーズに見えます。
FreeSyncのみを有効した時に映像フレームレートが対応フレームレート範囲外になるとテアリングが発生しますが、リフレッシュレートを上回ってしまう場合については、Radeon設定のRadeon Chillの最大FPSに”リフレッシュレートから3,4FPSを引いた値”を指定してください。(グローバル設定だけでなくゲームタイトル別に設定が可能)
なおNVIDIA GeForce環境でAdaptive-Syncを利用する場合も、フレームレートがリフレッシュレートを超過するとテアリングが発生するので、テアリングを完全になくすには垂直同期を有効化する必要があります。もしくは垂直同期無効においてテアリングをなくすには、NVIDIAコントロールパネルの「Max Frame Rate」に”リフレッシュレートから3,4FPSを引いた値”を指定してください。(グローバル設定だけでなくゲームタイトル別に設定が可能)
これの設定以外にもRivaTunerやNvidia Profile Inspectorを使用してゲーム内フレームレートがモニタリフレッシュレートを上回らないように設定することも可能です。
下の比較はいずれもFreeSyncが有効になっているのでスタッターもなく滑らかですが、単純にFreeSyncだけを有効にすると対応フレームレートの上限となるリフレッシュレートを超えた時にテアリングが発生します。
リフレッシュレートが144Hz(フレームレートの上限が144FPS)の場合は120FPS~140FPSが上限になるようにフレームレートに制限をかければ、マウス操作を低遅延しつつ、テアリングの発生も最小限に抑えて快適なゲームプレイが可能です。
またPUBGやCS:GOのようなオンライン対戦FPSや格闘ゲームなど1,2フレームを争う競技性の高いPCゲームでは、表示遅延(入力遅延)が発生する垂直同期は嫌われる傾向にありますが、144Hzや240Hzといったハイリフレッシュレートモニタにおいて、同期機能を無効化した場合に発生するテアリングがどのように影響するのか検証してみました。
テアリングはモニタ表示更新中のフレームバッファの更新で発生しますが、目で見た時の違和感はn番目とn+1番目のフレームの絵の差に影響されます。コマ割りが細かくなる高フレームレートではn番目とn+1番目の絵の違いは当然、低フレームレートの場合よりも小さくなります。そのため50FPSでは画面の分断のように知覚できたテアリングは、200FPSのような高フレームレートでは細かいノイズのような形で知覚されます。
100FPSを超える高フレームレートでは大きな分断に見えるテアリングの代わりに、細かいノイズのように感じるテアリングが増えてきます。『細かいノイズの発生程度であれば高リフレッシュレートモニタのテアリングは実用上は大した問題ではなく、可変リフレッシュレート同期機能は不要である』という意見がありますが、高リフレッシュレートモニタのアドバンテージとして先に解説した「ゲーム内遠方に存在して動いているエネミーやオブジェクトの視認性」と合わせて考えると、このノイズの有無は遠方の細かいエネミーやオブジェクトの発見に影響します。なので高リフレッシュレートモニタを使用するのであれば可変リフレッシュレート同期機能はあったほうがいい、というのが管理人の意見です。
HP X27iのHDR表示やHDCP対応について
最後に「HP X27i」のHDR表示やHDCP対応について簡単にチェックします。「HP X27i」はHDR表示に対応していません。2019年以降に発売されているWQHD/144Hz/IPS液晶のゲーミングモニタはHDR表示に対応したものがほとんどなので注意してください。
また最近は4K未満の物理解像度でも仮想的に4K入力に対応し(実際の表示はモニタ側で物理解像度へスケーリング)、HDR10コンテンツやデジタル著作権保護HDCP2.2に対応するゲーミングモニタも少なくありませんが、「HP X27i」はそういった機能には対応しておらず、PS4 ProやXbox One Xを接続しても4K、HDR、HDCP2.2といったコンテンツは利用できません。
「HP X27i」にXbox One Xを接続すると、可変リフレッシュレート同期機能、フルHD/120Hz、WQHD/60Hzなどが使用できます。
HDRについて簡単に説明すると、HDR(ハイダイナミックレンジ)というのは、RGBの光の三原色の映像情報に加えて、輝度(明るさ)の情報が備わった映像ソースのことです。従来の表示機器や映像ソースでは10^3程度のダイナミックレンジしかありませんでしたが、HDRに対応することでダイナミックレンジが10^5程度と100倍近く拡張され、従来よりも細かい階調で明るさや暗さを表現できるようになり、「明るい場所は明るく、暗い場所は暗く」なるように画面の明るさを操作することで、白飛びや黒潰れをなくして高画質を実現しています。
HDRに関する説明は色々とあると思いますが、管理人は『明るい場所はより明るく、暗い場所はより暗く』と大雑把に理解しています。「明るい場所は明るく、暗い場所は暗く」するということは必ずしも”見えやすく”なるわけではありません。というか暗い場所は暗くなるので必然、暗い部分は見えにくくなります。逆に明るい場所が明るくなったら見えやすくなるかというと、再現可能な輝度の領域が増すので、ディスプレイによる描画は現実に近づきますが、太陽を覗き込んだ時のように特に明るい場所の周辺は光で潰れて(目の調光機能的な問題で)見えにくくなります。もちろん明暗が分かれることで境界線がクッキリして見えやすくなる場合もあります。
一部のゲーミングモニタに暗所を明るく(白く)して見えやすくする機能があるように、HDR表示は見やすさには直結しないので、見やすさという意味で画質が良くなるのかというと、その点はケースバイケースです。SDRダイナミックレンジの範囲内で平滑化されていた時に比べて、暗い部分が強調されることを考えると見えにくさの方が体感しやすい気がします。
HDRは原理的にはモニタから見える映像を”リアル”に近づける機能です。ただし実際のところはモニタ個別の色調設定などの都合で鮮やかになり過ぎたり色味が変わったりするので、「実際の視覚と同じ」という意味でリアルかというと疑問符が付くのですが。「明るい場所は明るく、暗い場所は暗く」なるので立体感は増して、平面表示の中に奥行を感じやすくなるという点ではリアルな表示に近づきます。個人的にはHDR表示の効果はSDRに比べて、鮮やかになって、立体感が増すと感じています。
4Kモニタの広告をフルHDモニタで見る以上に、SDRモニタでHDRについて体感的に理解することは困難です。なのでHDRについては店頭など実機で体験して気に入れば購入するくらいが正直なところおすすめです。HDRについては正直に言って”百聞は一見に如かず”な機能です。SDRモニタ上で調べるよりもHDR表示の実機を見て気に入るかどうかが全てな機能だと思います。
HP X27iのレビューまとめ
最後に「HP X27i」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- 画面サイズ27インチでゲーミングモニタとしてはちょうどいいサイズ
- 発色や視野角など画質に優れたIPS液晶パネル
- 液晶パネルは反射防止のアンチグレア
- 輝度の均一性が非常に優秀
- ビデオ入力はDisplayPort1.2とHDMI2.0の計2系統
- 全てのビデオ入力においてWQHD解像度/144Hzリフレッシュレートに対応
- 可変リフレッシュレート同期機能AMD FreeSync(VESA Adaptive-Sync)に対応
(DisplayPortとHDMIで48FPS~144FPSの範囲内で対応) - モニタ本体重量5.1kgかつVESAマウント対応でモニターアームを使用可能
- WQHD/144Hz/IPS液晶というスペックで3.5万円の高コスパ(2020年4月)
- OSDクロスヘアやリアルタイムリフレッシュレートなど便利機能はなし
- HDR表示には非対応
「HP X27i」は2560×1440のWQHD解像度、ネイティブ144Hzの高速リフレッシュレート、IPS液晶パネルというハイスペックな液晶パネルを採用したゲーミングモニタです。
同スペックの製品は5年ほど前が初出となっており、真新しさこそありませんが登場当時の最速グラフィックボードはGeForce GTX 1660相当のGeForce GTX 980で、WQHD/144Hzのフルスペックを発揮しようとするとマルチGPUが要求されたのが、2019年現在の最新GPUであればGeForce RTX 2070 SUPERやRadeon RX 5700 XTなどミドルハイクラスGPU1台で対応できるので、高解像度かつハイリフレッシュレートなゲーミングモニタとしてはちょうどいい製品です。
WQHD/144Hz/IPS液晶というスペックはここ1,2年で各社から多数発売されており、液晶パネルの違いだけでなく、各社が独自機能を搭載して差別化を図っているのに対し、「HP X27i」はHDR表示やOSDクロスヘアといった追加機能を省略して、高品質な液晶パネルと最安値クラスの価格というコストパフォーマンスに特化したモデルです。特に液晶パネル品質は非常に優れており、バックライト輝度の均一性も高く、応答速度はLG製の1ms GTG製品に迫り、検証を始める前は価格相応かなと思っていたのでかなり驚きました。
付加価値的機能が必要なく、高品質なWQHD/144Hz/IPS液晶パネルと可変リフレッシュレート同期機能さえあればいいという人にとって「HP X27i」は最適なモデルです。
「HP X27i」は可変リフレッシュレート同期機能「AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync)」に対応しています。FreeSync対応フレームレートとして48FPS~144FPSの幅広いフレームレートをカバーしており、60FPS前後しか維持できない最新の高画質な重いゲームから、100FPS以上を維持できる競技性の高い軽めなゲームまで、テアリングやスタッターのないクリアで滑らかな表示を実現します。
これまではAMD製GPUを搭載した環境でしか使用できない機能でしたが、19年1月からはNVIDIA製GPUでも可変リフレッシュレート同期機能Adaptive-Syncが利用できるようになったので間口もかなり広くなったと思います。
以上、「HP X27i」のレビューでした。
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HP X27i レビュー
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) April 27, 2020
良い
✅WQHD/144HzのIPS液晶モニタ
✅1ms GTG製品並みの応答速度
✅FreeSync、G-Sync CP対応
✅3.5~3.8万円で高コスパ
悪いor注意
⛔HDR表示やOSDクロスヘアには非対応https://t.co/QT5bjTm2xx
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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海外の情報ですとpanelはM270DAN02.6らしいですがいかがでしょうか。
HPの液晶モニタのファクトリーモードの入り方は「電源を切り、左の第一キーと第三キーを長押しすると起動します。 ディスプレイの電源を入れた後、左の最初のボタンを押してください。」
だそうです。