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Western DigitalのPCゲーマーなどハイエンド志向なユーザーをターゲットにしたWD_BLACKシリーズから発売された、PCIE3.0x8接続の高速帯域によって読み出し速度が最大6.5GB/sに達するPCIE AICカード型NVMe SSD「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TB(型番:WDS400T1X0L-00AUJ0)」をレビューします。
製品公式ページ:https://shop.westerndigital.com/ja-jp/products/internal-drives/wd-black-an1500-nvme-ssd#WDS100T1X0L-00AUJ0
WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TB レビュー目次
1.WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Cardについて
2.WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TBの外観
・WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Cardを設置するPCIEスロットについて
3.WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TBの検証機材と基本仕様
4.WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TBのベンチマーク比較
5.WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TBの連続書き込みについて
6.WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TBの温度とサーマルスロットリングについて
7.WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TBの実用性能比較
8.WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TBのデータコピー・ゲームロード比較
9.WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TBのレビューまとめ
【機材協力:WD 国内正規代理店 株式会社ケミック】
WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Cardについて
「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card」シリーズは物理規格としては、HHHLサイズのPCIE拡張ボード型、PCIEx8サイズのNVMe(PCIE3.0x8)接続SSDです。メモリチップにWD/SanDisk製 TLC型3D NAND、メモリコントローラーには2基のWD独自コントローラーを搭載し、Marvell 88NR2241によりRAID0が構築されています。容量は1TBと2TBと4TBの3モデルがラインナップされています。「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card」シリーズのアクセススピードは容量によって若干異なりますが、PCIE3.0x8の高速帯域によって、シーケンシャル読出6500MB/s、シーケンシャル書込4100MB/s、ランダム(4KB, QD32, 1thread)読出780,000 IOPS、ランダム(4KB, QD32, 1thread)書込710,000 IOPSの超高速アクセススピードを実現しています。
「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card」シリーズのMTBF(平均故障時間)は175万時間、書き込み耐性は1TBが-TBW、2TBが-TBW、4TBが1TBWで、メーカーによる製品保証期間は5年間です。
「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card」シリーズはPCIE拡張ボード側面に、WD SSD Dashboardからのライティング制御に対応した13球のアドレッサブルLEDイルミネーションが搭載されています。
WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card スペック一覧 |
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容量 | 1TB (型番:WDS100T1X0L-00AUJ0) |
2TB (型番:WDS200T1X0L-00AUJ0) |
4TB (型番:WDS400T1X0L-00AUJ0) |
フォームファクタ | PCIE3.0x8 (HHHL AIC) 長さ176mm×高さ72mm×厚み13mm |
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インターフェース | PCIE3.0x8 NVMe | ||
コントローラー | WD in-house NVMe ×2 & Marvell 88NR2241 RAID0 | ||
メモリー | WD/SanDisk製 TLC型3D NAND |
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連続読み出し | 6500MB/s | ||
連続書き込み | 4100MB/s | ||
ランダム読み出し (4KB, Q32T8) |
760,000 IOPS | 780,000 IOPS | 780,000 IOPS |
ランダム書き込み (4KB, Q32T8) |
690,000 IOPS | 700,000 IOPS | 710,000 IOPS |
消費電力 (アイドル/アクティブ) |
8.5W / 15.7W(リード)、12.8W(ライト) | ||
動作温度範囲 | 5°C~35°C | ||
MTBF | 175万時間 | ||
耐久性評価 | -TBW | -TBW | -TBW |
保証期間 | メーカー5年 |
WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TBの外観
まず最初にWD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TBの外観や付属品について簡単にチェックしておきます。製品パッケージを開くとプラスチック製スペーサーに収められたSSD本体が現れます。付属品は仕様書やクイックマニュアルのみです。
WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-CardシリーズのSSD本体デザインについては、見ての通りですがNVMe SSDで一般的なM.2 SSDではなく、グラフィックボード等と同様にPCIEスロットに増設するPCIE AIC
カード型です。長さは176mm(グラボで言えばITX対応ショートサイズ)、1スロット占有です。
WD_BLACKシリーズ製品として今年発売されたUSB3.2 Gen2x2対応外付けストレージ「WD_BLACK P50」と共通で、白字のロゴを除けば製品名の通り黒一色のカラーリング、機械装甲のような無骨でミリタリー感のある頑丈そうな形状です。外装はアルミニウム製で放熱ヒートシンクの役割も果たしています。
「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card」は専用基板にメモリコントローラーやメモリチップが直接実装されたタイプのAICカード型SSDではなく、x8サイズPCIEスロットを2基のM.2スロットに変換する拡張ボード上にNVMe M.2 SSDを2枚搭載する形で構成されています。
当サイトでレビュー記事を公開している「HighPoint SSD7103」のM.2スロット2基版を想像してもらうと分かりやすいと思います。
・NVMe M.2スロット4基増設拡張ボード「HighPoint SSD7103」をレビュー
WD SSD Dashboardの情報によると、「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card」の4TBモデルは、すでに国内でも発売済みのWD_BLACK SN750 NVMe SSD 2TBを2枚組み合わせています。またRAIDコントローラーはMarvell 88NR2241を使用しているとのこと。
背面は基板剥き出しではなく、シンプルな形状の金属製バックプレートが装着されています。
PCIEブラケットもマットブラックで塗装されており、ファンレスなパッシブヒートシンクですが、PCケース内外で放熱できるようにエアスリットも設けられています。
「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card」の側面には白色半透明なディフューザーが搭載されており、中には13球のアドレッサブルLEDイルミネーションが内蔵されています。
「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card」はx8サイズPCIE端子が実装されたPCIE拡張ボードなので、x16サイズを含めたx8サイズ以上のPCIEスロットか、x4サイズなどサイズが小さい場合は右端に切り込みのあるPCIEスロットにしか設置できないので注意してください。
WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Cardを設置するPCIEスロットについて
「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card」を設置するPCIEスロットのリンク帯域やスロットサイズについて簡単に説明しておきます。「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card」は概要で説明した通り、PCIE3.0x8の接続帯域によって最大6.5GB/sのアクセススピードを実現するPCIE AICカード型NVMe SSDとなっており、この最大性能を発揮する要件は”PCIE3.0以上かつリンク幅がx8以上の帯域であること”です。
必然、PCIEスロットの物理サイズはx8サイズもしくはx16サイズになりますが、PCIE3.0x8に対応するx8サイズスロットというのは稀なので、「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card」のフルポテンシャルを発揮できる環境については内部帯域としてPCIE3.0x8を使用できるx16サイズスロットを搭載したマザーボードを探すことになると思います。
CPU&マザーボードのプラットフォームにおいて、PCIEレーンはCPU直結もしくはPCH(チップセット)経由で接続されますが、2020年現在、チップセットからx8帯域のPCIEレーンが伸びていることはまずないので、「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card」をPCIE3.0x8で接続するにはCPU直結のPCIE3.0x8レーンが伸びたPCIEスロットを使用する必要があります。
2020年最新プラットフォーム(CPU&MB)は、メインストリーム向けのIntel第10世代Core-SとAMD第3世代Ryzen、エンスージアスト向けのIntel第10世代Core-XとAMD第3世代Ryzen Threadripperの4種類です。
メインストリーム向けプラットフォームはCPU直結PCIEレーンが16しかなく、基本的にグラフィックボードの接続で全て使用されてしまいます。(RyzenはNVMe SSD用に+4レーンありますが)
マルチGPUに対応したマザーボードを組み合わせればプライマリとセカンダリのx16サイズスロットでそれぞれ8レーンずつという構成も可能なので、そういったマザーボードなら「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card」をPCIE3.0x8で使用できます。
現状では最速グラフィックボードのGeForce RTX 3080/3090でもPCIE3.0x16とPCIE3.0x8の違いは、数%の性能差があるかどうかという誤差レベルの違いなので、この方法で「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card」を使用しても問題はないと思います。
CPU直結PCIEレーンのうち本来グラフィックボードで使用される半分をSSDに回すことでメインストリーム向けプラットフォームでも「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card」をPCIE3.0x8接続で使用することは可能ですが、一般的にはCPU直結PCIEレーンに余裕のあるエンスージアスト向けプラットフォームで使用するというのが「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card」の使用方法として正道だと思います。
Intel第10世代Core-Xなら48レーン、AMD第3世代Ryzen Threadripperなら56レーンを使用できるので、グラフィックボードを2枚搭載して32レーン使って、さらに「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card」を搭載したとしてもレーン数的にはお釣りがきます。
「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card」で最大6.5GB/sのフルポテンシャルを発揮するにはPCIE3.0x8で接続する必要がありますが、実はあえてPCIE3.0x4で使用するという手もあります。
「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TB」は最大速度を出すにはPCIE3.0x8が必要ですが、PCIE帯域が最大速度の天井になるという制限さえ除けば、極端な話、下写真のような右端に切り込みのあるx1サイズPCIEスロット(PCIE3.0x1帯域)なら、設置もできますし、SSDとしても問題なく使用できます。
PCIE3.0x4となるとメインストリーム向けプラットフォームではPCHからレーンが伸びているのでマザーボードの選択肢もグッと広がりますし、CPU直結PCIEレーンを16レーン全てグラフィックボードに専念させることができます。
「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TB」をPCH経由のPCIE3.0x4帯域で使用する時のマザーボード選びについてですが、比較的見つけやすいのは、セカンダリ以降のx16サイズPCIEスロット(グラフィックボード用の最上段のx16サイズスロット以外に1つ、2つのx1サイズPCIEスロット)が搭載されたマザーボードです。
簡単に見分ける方法については、一例として、ASRock Z490 PG Velocitaにはサンプルイメージを見てわかる通り、2つ目のx16サイズPCIEスロットがあります。製品写真で2つ目のx16サイズスロットを見つけたら製品仕様ページをチェックして、PCIEスロットや拡張スロットの項目でPCIE3.0x4やx4の表記があればOK、という感じに探していきます。
自分が使っているマザーボードがどうなのかについても基本的にこの方法でわかります。Intel Z490/H470、AMD X570/B550などメインストリーム向けプラットフォームのマザーボードならこの方法でOKです。ただし念のため最終確認としてマニュアルでPCIE帯域も確認してください。
「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card」をCPU直結のPCIE3.0x8で接続した時と、PCH経由のPCIE3.0x4に接続した時について、CrystalDiskMarkで比較すると連続性能はPCIE接続帯域に応じて大きく下がるのですが、ランダム性能については実のところあまり大きな影響がありません。(実用的にはPCIE3.0x4帯域があれば現状のNVMe SSDには十分という事情も)
一方で、最大4TB容量の大容量であったり、大型ヒートシンクによる十分な冷却能力といった「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card」ならではの魅力は活用できます。またSLCキャッシュの動作についてもPCIE接続帯域によって制限されることはありません。
詳しくは後ほど説明しますが、「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TB」なら50~60GB容量のSLCキャッシュをフルに使いきった後も、PCIE3.0x4帯域の範囲内なので、3GB/s近い超高速な書き込み速度をキープできます。
WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TBの検証機材と基本仕様
「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TB」の各種検証を行う環境としては、Intel Core i9 9900K&ASUS WS Z390 PROなどで構成されているベンチ機を使用しました。構成の詳細は下記テーブルの通りです。テストベンチ機の構成 | |
CPU | Intel Core i9 9900K(レビュー) Core/Cache:5.1/4.7GHz, 1.300V 殻割り&クマメタル化(レビュー) |
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36(レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z Black F4-4400C19D-16GTZKK DDR4 8GB*2=16GB (レビュー) 4000MHz, CL17-17-17-37-CR2 |
マザーボード |
ASUS WS Z390 PRO (レビュー) |
ビデオカード | 【基礎性能検証用】 MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC (レビュー) 【PCゲームロード時間検証用】 ZOTAC RTX 2080Ti AMP Extreme Core (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB MZ-N6E1T0B/IT (レビュー) |
OS | Windows10 Home 64bit |
電源ユニット | Corsair HX1200i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
ベンチ機のシステムストレージにはSamsung製3bit-MLC型64層V-NANDのメモリチップを採用するメインストリーム向け最新SATA接続M.2 SSD「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB」を使用しています。「Samsung SSD 860 EVO M.2」は2.5インチSATA SSDと同等のパフォーマンスをケーブルレスで発揮できる手軽さが魅力です。Samsung SSD 860 EVOの容量1TB以上のモデルは大容量データの連続書き込みにおける書き込み速度の低下というTLC型SSDの欠点も解消されているので、大容量ファイルをまとめて入れても余裕のあるメインストレージとしてお勧めのSSDです。
・「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB」をレビュー
「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card」は拡張ボードの側面に13球のアドレッサブルLEDイルミネーションが内蔵されています。
「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card」に搭載されたアドレッサブルLEDイルミネーションは、WD製SSDの管理用ソフト「WD SSD Dashboard」から発光パターン・発光カラーの変更などライティング制御を行うことができます。LED系の光物が苦手なユーザーはウィンドウ右上のスイッチからLEDを消灯させることができます。
また「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card」に搭載されたアドレッサブルLEDイルミネーションは、ASUS AURA Sync、GIGABYTE RGB Fusion、MSI Mystic Light Syncなどマザーボード機能と連動させてライティングを制御することも可能です。
「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TB」のボリュームをWindows10上で作成したところ、空きスペースは3.63TBでした。
WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TBのベンチマーク比較
「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TB」の性能を測るためストレージに関する基本的なベンチマークソフトを使用して測定を行います。比較対象として同じくNVMe M.2 SSDの「Samsung SSD 970 PRO 1TB(レビュー)」、「Samsung SSD 970 EVO Plus 1TB(レビュー)」、「Crucial P5 1TB(レビュー)」、「WD_BLACK SN750 NVMe SSD 1TB(レビュー)」、およびSATA SSDの「Samsung SSD 860 PRO 1TB(レビュー)」、「Samsung SSD 860 EVO 1TB(レビュー)」等でも同様の測定を行いました。まずはCrystalDiskMark7.0.0f (8GiB)について、「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TB」やその他の比較対象ストレージのベンチマーク結果は次のようになっています。
「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TB」のベンチマークススコアは連続読み出し6500MB/s、連続書き込み4400MB/sとなりました。製品仕様の通りのPCIE3.0x8帯域を活かした超高速な連続アクセススピードです。
ATTO Disk Benchmark 4.00.0f2(512B-64MB, 8GB, QD1/QD4)について、「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TB」やその他の比較対象ストレージのベンチマーク結果は次のようになっています。
ATTO Disk Benchmarkはブロックサイズ別のシーケンシャル性能を主にチェックするベンチマークなので4KB~1MBを抜粋してリード/ライト性能をグラフにして比較しました。
AS SSD Benchmark v2.0.6821.41776(5GB)について、「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TB」やその他の比較対象ストレージのベンチマーク結果は次のようになっています。
PCMark8 ストレージテストについて、「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TB」やその他の比較対象ストレージのベンチマーク結果は次のようになっています。
WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TBの連続書き込みについて
「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TB」に連続書き込みを行った場合の動作についてチェックします。TLC型やQLC型と呼ばれる3bit以上のマルチレベルセルで動作するNANDが採用されているSSDでは、マルチレベルセル化によって遅くなる書き込み速度の底上げのため、NANDメモリの一部を高速キャッシュ領域とする機能が実装されています。
2020年現在、TLCやQLCの記憶領域を動的にSLC化する製品が多いので、この高速キャッシュ領域のことをSLCキャッシュと呼ぶことにします。(可能性としてTLC型SSDやQLC型SSDがMLCで高速キャッシュを構築することもありうる)
このようなSLCキャッシュを有するSSDにおいては、連続した大容量の書き込みによって書き込み総量がSLCキャッシュを超過した場合、書き込み速度がステップ状にガクッと下がります。
例えば600MB/sが理論的な上限速度となるSATA SSDの場合は、動画ファイルなど数十GB以上の単一ファイルの連続書き込みが発生すると、SLCキャッシュ超過後はCrystalDiskMarkなどベンチマークソフトで表示される500MB/s程度の連続書き込み速度を維持できず、100~200MB/sまで書き込み速度が低下する可能性があります。
TLC型96層3D NANDをメモリチップに採用する「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TB」はどのような挙動を見せるのか確認してみたところ、開始直後は4000MB/sを上回る書き込みスピードを維持していますが、書き込み総量が50~60GB程度に達するとSLCキャッシュを超過するため書き込み速度は3000MB/s前後まで減少しました。
「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TB」の正体は、NVMe M.2 SSDのWD_BLACK SN750 2TBを2枚組み合わせたRAID0ボリュームなので、SLCキャッシュ容量および速度低下後の書き込み速度も2倍になっていると考えれば妥当な数字です。
またPCIEスロットに関する説明でも簡単に紹介したように、SLCキャッシュの動作はPCIE接続帯域によって制限されることはありません。「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TB」なら50~60GB容量のSLCキャッシュをフルに使いきった後も、PCIE3.0x4帯域の範囲内なので、3GB/s近い超高速な書き込み速度をキープできます。
「WD_BLACK AN1500 Add-in-Card」は内蔵SSDがWD_BLACK SN750なので、SLCキャッシュ超過後の書き込み速度は、2TBモデルは4TBモデルと同等の3GB/s程度、1TBモデルは2GB/s程度になるものと思われます。
WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TBの温度とサーマルスロットリングについて
NVMe M.2 SSDでは重要になる項目として「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TB」の温度とサーマルスロットリングについてチェックしていきます。アクセススピードが数GB/sに及ぶ非常に高速なNVMe接続に対応したM.2 SSDでは、そのコンパクトさゆえに放熱性能には表面積的な限界があり、連続したアクセスが発生するとメモリチップやメモリコントローラーが高温になって速度制限がかかるサーマルスロットリングが発生する可能性があることが知られています。
「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TB」について、連続した高速アクセス発生時の温度やサーマルスロットリング発生の有無をソフトウェアモニタリングとサーモグラフィーカメラを使用して検証します。
WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TBのSSD温度の測定やサーマルスロットリング発生の有無の確認については、ベンチ台に設置し、ファン等で特に風を当てたりせずに検証を行っています。
測定時の検証負荷としては上で行ったベンチマーク測定同様にCrystalDiskMark6.0.0(QD32, 8GiB)を使用して間を置かず複数回ベンチマークをループさせ、その間のSSD温度や読み出し・書き込み速度のモニタリング値はHWiNFOを使用してログを取得します。
「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TB」の検証結果を確認する前に比較参考のサンプルとして、2020年現在最速のNVMe M.2 SSDとして君臨している「Samsung SSD 970 PRO 1TB」において、上記の負荷テストを実行した結果を確認しておきます。
Samsung SSD 970 PRO 1TBのSSD温度とアクセススピードの推移は下のようになっています。Samsung SSD 970 PRO 1TBではメモリコントローラーとメモリチップの2種類の温度についてソフトウェアモニタリングが可能になっているようです。ベンチマークを複数回繰り返してもサーマルスロットリングによる大幅な速度低下は発生していませんが、2周目以降に連続書き込み速度の計測で若干速度低下が確認できます。1周目ですでにメモリコントローラーの温度は100度に達し、メモリチップも70度を超えておりかなり高温です。
負荷テスト終盤におけるSamsung SSD 970 PRO 1TBのサーモグラフィーは下のようになっています。サーモグラフィーでもソフトウェアモニタリング同様に、「Samsung SSD 970 PRO 1TB」の右端にあるメモリコントローラー温度は100度を上回り、左半分に実装されたメモリチップは70度半ばになっています。
さて本題のWD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TBの温度やサーマルスロットリングの有無についてチェックしていきます。
まずアイドル時の温度を確認しておくと、アイドル時でもソフトウェアモニタリング上の温度は50度台半ば、対してサーモグラフィーで確認したヒートシンクの表面温度は30~40度前後でした。アイドル時はSSD本体には負荷がかかっていないので、一定して発熱のあるRAIDコントローラー(製品仕様によるとアイドル8.5Wなのでその大半がここに)がある左側にホットスポットがあるのが分かります。
続いてWD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TBに負荷をかけた状態をチェックしていきます。
ソフトウェアモニタリングによるWD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TBのSSD温度とアクセススピードの推移は下のようになっています。WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TBに関してはソフトウェアモニタリングが可能な温度は、負荷テストに合わせて上昇しているものの低負荷で波打つ様子が見られないので、ヒートシンクか変換基板に実装された温度センサー、もしくは定常的に発熱のあるRAIDコントローラーを参照しているように思えます。
内蔵されているSSD自体の温度がわからないのですが、ベンチマークを複数回繰り返してもサーマルスロットリングによる速度低下は確認できず、安定した高速アクセスを発揮しています。
負荷テスト終盤におけるWD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TBのサーモグラフィーは下のようになっています。
アイドル時と比較してヒートシンク全体の温度が10度程度上昇しているのが分かります。また前面のホットスポットはRAIDコントローラーがある左側から、M.2 SSD、とりわけ発熱の大きいメモリコントローラーがある中央に移動しています。
パッシブ状態のアルミニウム製ヒートシンク、ヒートシンクのアルミニウム板自体も厚みはそれほど大きくなく、その表面温度が50度前半に収まっているので、内部のSSD温度も70~80度を上回っていることはまずないと思います。
表面ヒートシンクに合わせてバックプレートも50度近くまで温度が上昇しており、金属製バックプレートもただの飾りではなく、放熱ヒートシンクの役割を果たしているのが分かります。
参考までに、WD_BLACK SN750 1TBのヒートシンク搭載版に同様の負荷テストを行うと、ヒートシンク表面温度58度程度に対して(サーモグラフィーは上限100度でレンジが違います)、メモリチップ付近の温度センサーは60度未満を示していました。相対的に考えてヒートシンクが巨大な「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TB」はSSDを2枚搭載しているとはいえ、これよりも高温ということはないのではないかと思います。少なくとも大きく外れて高温になることはないはずです。
WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TBの実用性能比較
「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TB」の実用性能をPCMark10 Storage Testを使用してチェックしていきます。PCMark10 Storage TestはWindows10 OSの起動速度、PhotoshopやPremiere ProといったAdobeアプリの起動速度、PCゲームの起動速度、AdobeアプリやMicrosoft Officeの素材領域としての読み出し・書き込み速度など、SSDの実用性能について測定できるベンチマークソフトです。PCMark10 Storage Testは、NVMe SSDなど最新の高速ストレージについて、Windows10 OSの起動、OfficeやAdobe系ソフトなどアプリケーションの起動、PCゲームの起動、OfficeやAdobe系ソフトで使用する素材データ領域としての読み出し・書き込み性能といった、実用的なストレージ性能を測定するベンチマークソフトとなっており、”Trace”と呼ばれる23種類のテストで構成されています。
当サイトでは同ベンチマークを使用した評価に当たって、ストレージの用途を、Windowsや各種アプリケーションをインストールする『システムストレージ』、PCゲームをインストールする『ゲームストレージ』、各種アプリケーションで使用する素材を保存しておく『データストレージ』の3種類に大別し、23種類のうち17種類のテストを下記のように振り分けました。
ベンチマーク測定に使用するPCMark10 Storage Testには上の概要で紹介したように23種類のテストがあるので、その中からシステム/ゲーム/データの3種類に大別された17種類のテストの結果を抜粋し、各テストにおいてSamsung SSD 970 PRO 1TBを基準として性能比率を算出、それらの平均値を取って、総合的なSSD実用性能としてパフォーマンスサマリーの比較グラフを作成しました。
システムストレージとしての性能に大別された7種類のテスト結果を使用して、各テストにおいてSamsung SSD 970 PRO 1TBを基準として性能比率を算出、それらの平均値を取って、システムストレージとしてのSSD実用性能としてパフォーマンスサマリーの比較グラフを作成しました。
ゲームストレージとしての性能に大別された3種類のテスト結果を使用して、各テストにおいてSamsung SSD 970 PRO 1TBを基準として性能比率を算出、それらの平均値を取って、ゲームストレージとしてのSSD実用性能としてパフォーマンスサマリーの比較グラフを作成しました。
データストレージとしての性能に大別された7種類のテスト結果を使用して、各テストにおいてSamsung SSD 970 PRO 1TBを基準として性能比率を算出、それらの平均値を取って、データストレージとしてのSSD実用性能としてパフォーマンスサマリーの比較グラフを作成しました。
当レビュー記事中では簡単に、総合、システム、ゲーム、データの4種類のサマリーのみを取り挙げていますが、PCMark10 Storage Testの測定データの取り扱いに関する注意、リアルタイムでの最新データ(当レビュー記事のデータは執筆当時のものなので、新製品の比較データは掲載されていない)、個別のTraceの比較データについては下の記事で解説しているので、詳細についてはこちらを参照してください。
・本当に速いSSDはどれか?SSDの実用性能を比較
WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TBのデータコピー・ゲームロード性能比較
続いて「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TB」で大容量・多数データのコピーやPCゲームのロード時間など実際の使用について性能比較をしてみました。比較対象として同じくNVMe M.2 SSDの「Samsung SSD 970 PRO 1TB(レビュー)」、「Samsung 970 EVO Plus 1TB(レビュー)」、「Kingston KC2000 1TB(レビュー)」、「WD_BLACK SN750 NVMe SSD 1TB(レビュー)」、およびSATA SSDの「Samsung SSD 860 EVO 1TB(レビュー)」等でも同様の測定を行いました。
まずはファイルのコピーに関する実性能比較となります。検証に使用するデータとしては総容量が約80GBで多数のファイルが入ったPCゲームフォルダ(The Witcher 3とRise of the tomb Raiderなど)、および容量50GBの単一動画ファイルの2種類を使用しています。
データのコピーにおいては当然ですが、元データのあるストレージの読み出し性能とコピー先の書き込み性能の両方が重要になります。測定においては書き込み先/読み出し元の対象となるストレージが必要になるため、各ストレージのコピー相手にはM.2-PCIE変換アダプタ「Aquacomputer kryoM.2」に設置したSamsung SSD 970 PRO 1TBを使用しています。
コピーテストにおいて検証ストレージがコピー相手の「Samsung SSD 970 PRO 1TB」と同じくNVMe SSDの場合は、ASUS WS Z390 PROの1段目PCIEスロットにグラフィックボード、3段目PCIEスロットにコピー相手ストレージの「Samsung SSD 970 PRO 1TB」、5段目PCIEスロットに検証ストレージを設置しています。
Z390プラットフォームでは通常、複数のNVMe SSDへ同時にアクセスが発生すると、CPU-チップセット間のDMI 3.0の帯域がボトルネックになってトータルのアクセススピードが4GB/s程度に制限されますが、ASUS WS Z390 PROではPLXスイッチチップを介するものの、コピーテストで使用する2つのNVMe SSDはそれぞれCPU直結PCIEレーンに接続されているので、この問題は発生しません。
「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TB」など各種検証ストレージとSamsung SSD 970 PRO 1TBとの間で50GBの動画ファイルおよび80GBのゲームフォルダをコピーした時間の比較結果は次のようになりました。
まずは50GBの動画ファイルのコピーについてですが、動画ファイルは単一の大容量ファイルなので実際のコピーではベンチマークのシーケンシャルリード・ライト性能が重要になってきます。
WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TBは動画ファイルのコピー読み出しにおいて、Samsung 970 PRO 1TBやSamsung 970 EVO Plus 1TBには僅かに及ばないものの、Crucial P5など2020年最新製品と遜色ない性能を発揮し、WD_BLACK SN750よりも僅かながら高速化を果たしており、ハイエンドTLC型NVMe M.2 SSDとしては十分な性能です。
WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TBはNVMe接続に対応した高速SSDなので、SATA3.0接続のSSDと比較すると4倍近い高速な読み出し速度を実現しており、読み出し速度は2000MB/s程度となっています。
WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TBは動画ファイルのコピー書き込みにおいて、所要時間23秒程度で、Samsung 970 PRO 1TBには僅かに及ばないものの、SLCキャッシュ容量が十分に大きいSamsung 970 EVO Plus 1TBやCrucial P5 1TBよりも高速です。SLCキャッシュの小さいWD_BLACK SN750 NVMe SSD 1TBと比較して、同SSDのRAID0が正体な「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TB」は大幅に高速化しています。
続いてゲームフォルダのコピーについてですが、ゲームフォルダは大小様々なファイルを含むので、実際のコピーではベンチマークの連続性能だけでなく、ランダム性能も重要になってきます。
WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TBはゲームフォルダのコピー読み出しにおいて、Samsung 970 PRO 1TBやSamsung 970 EVO Plus 1TBにもう1歩及ばないものの、WD_BLACK SN750 NVMe SSD 1TBやCrucial P5 1TBと同等の性能を発揮しています。
RAIDコントローラーを使用したRAID0ボリュームはランダム性能がどうしても下がりやすい傾向があるのですが、WD_BLACK SN750 NVMe SSD 1TBとの性能差も誤差レベルなので、実用上、RAID0によるランダム性能の低下は気にする必要はなさそうです。
やはり動画ファイルのコピー読み出し同様にSATA3.0 SSDよりも3倍も高速な読み出し速度です。
WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TBBはゲームフォルダのコピー書き込みにおいて、Samsung SSD 970 PRO 1TBに迫る優れた性能を発揮しました。SLCキャッシュの超過による性能低下を実用上は無視でき、非常に高い性能を発揮するので、「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TB」は大容量データの取り扱いに強いSSDだと思います。
続いて実際にPCゲームのロード時間も比較してみました。
PCゲームのロード時間比較に関してはゲームインストールデータへのアクセスが最も大きくなる4K解像度/最高グラフィック設定を対象とするため、統一検証機材として、2019年最新にして最速のGPUである「NVIDIA GeForce RTX 2080 Ti」を搭載したグラフィックボード「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme Core」を使用しています。
ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme Coreは、RTX 2080 TiのAIBパートナーの中でも屈指のOCチューニング力を誇るZOTACによって良質なGPUコアが選別され、リファレンスよりも200MHz以上も高いブーストクロック、さらにGDDR6メモリのメモリクロックまで引き上げるという、RTX 2080 Tiグラフィックボードで最速を狙えるファクトリーOCが施されています。加えて、ZOTACを高品質メーカーとして一躍ブランド力を押し上げたAMP Extremeの代名詞とも言える3スロットを占有する超弩級な大型GPUクーラーが採用され、静音性も非常に優れたモデルです。
・「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme」をレビュー
The Witcher 3ではグラフィック設定をフル解像度/最高グラフィック設定として、『スタートメニューのロード画面からノヴィグラドの広場まで』のロード時間を比較しています。
Rise of the Tomb RaiderではフルHD解像度においてグラフィック設定をDirectX12で個別に最高グラフィック設定として、『スタートメニューのロード画面からシベリアの荒野まで』のロード時間を比較しています。
Final Fantasy XV PC版では4K以上の超高解像度向けに無料配布されている「FFXV WINDOWS EDITION 4K Resolution Pack」を使用して4K解像度/最高グラフィック設定で、『スタートメニューのロード画面からレスタルムまで』についてロード時間を比較しています。
以上の条件で「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TB」など各ストレージについてゲームのロード時間比較を行った結果は次のようになりました。
ゲームロード時間を測定して比較してみたところ、SSD対HDDで2~3倍の時間差が生まれるのに対して、SSDの中では、QLCよりもMLC、SATAよりもNVMe、NANDよりもOptaneのようにして高速になる傾向は見受けられますが、それでもせいぜい1,2割程度と、実用的にはランダム要因な誤差に吸収されるくらいの時間差です。
今後PCゲームがさらに高解像度・高画質化してテクスチャなどのゲームデータが大きくなっていけば、NVMe SSDがSATA SSDよりもゲームのロード時間で明確に優位に立つかもしれません。
なおゲームストレージとしての性能についてはPCMark10 Storage Testを使用した実用性能比較の章でも比較していますが、今回の検証結果とはストレージ種類別の性能差の傾向が異なります。理由については、PCMark10 Storage Testは『ゲームクライアントの起動からスタートメニューまで』のロード時間に対して、今回の比較では『スタートメニューから任意のセーブ状況まで』のロード時間となっているからではないかと思います。
WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TBのレビューまとめ
最後にNVMe M.2 SSD「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TB(型番:WDS400T1X0L-00AUJ0)」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- NVMe(PCIE3.0x8)接続による最大6.5GB/sの超高速アクセススピード
- 内蔵RAID0でもランダム性能は実用レベルをキープ
- 接続帯域には下位互換があるのでスロットに設置できれば、x1やx4でも運用可能
- 4TBモデルは50~60GBの大容量SLCキャッシュ(2TBモデルはおそらく25~30GB程度)
- SLCキャッシュ超過後も3000MB/s程度の超高速な書き込み速度を維持できる
- WD_BLACKシリーズデザインの無骨な外観
- ライティング制御に対応した豪華なアドレッサブルLEDイルミネーション
- AICカード型の巨大ヒートシンク搭載でSSD温度も十分に低い
- メーカー正規保証期間が5年間
- 4TBモデルが10万円程と容量単価で1.5倍程度も高価
- フルポテンシャルを発揮するにはPCIE3.0x8接続が必要
「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TB」を検証してみたところ、基礎的な各種ベンチマークや実際の性能検証の多くにおいて、競合製品でありハイエンドTLC型NVMe M.2 SSDとしては定番のSamsung SSD 970 EVO PlusやWD_BLACK SN750 NVMe SSDやCrucial P5 SSDと同等のパフォーマンスを発揮しました。
「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TB」は、RAIDコントローラーMarvell 88NR2241による2枚のWD_BLACK SN750 NVMe SSD 2TBのRAID0ボリュームが正体なので、RAIDコントローラーの特性上、ランダム性能が下がる恐れがあったのですが、SSD実用性能を測定するPCMark10ストレージテストでも、WD_BLACK SN750 NVMe SSDを順調に上回る性能を発揮し、なおかつSamsung SSD 970 PROの94%という比較的良好な性能を発揮しました。
「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TB」に内蔵されたSSDのWD_BLACK SN750 NVMe SSDはTLC型3D NANDメモリを採用しているので、多くのTLC型SSDと同様に大容量書き込み時にSLCキャッシュを超過すると書き込み速度が低下します。
WD_BLACK SN750 NVMe SSD 2TBの場合は25~30GB程度のSLCキャッシュ容量かつ超過後の書き込み速度は1500MB/s程度なので、同SSD 2枚でRAID0を構築する「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TB」はシンプルに2倍のスケーリングで50~60GB程度の大容量な高速SLCキャッシュを利用でき、なおかつ超過後の書き込み速度は3000MB/s程度をキープできます。大容量データを取り扱うクリエイターなどにとって強力なストレージだと思います。
PCIEスロットに関する章で解説したように、実用上はPCH経由のPCIE3.0x4対応PCIEスロットで使用しても問題はないので、4TBの大容量を活かしてPCゲーム用ストレージにするのもアリだと思います。
外観についてもWD_BLACKシリーズの機械装甲のようなミリタリー感のあるデザインが採用されており、側面には豪華なアドレッサブルLEDイルミネーションも内蔵されているので、SSDとしての性能だけでなく、魅せる自作PCの構成パーツとしても有望な存在だと思います。
またこの外観も見かけだけではなく、アルミニウム製の大型ヒートシンクは内蔵されたSSD&RAIDコントローラーをシッカリと冷やしてくれるので、M.2 SSDのように冷却を気にせず、PCIEスロットに挿すだけという運用上の手軽さもありがたいところ。
玉に瑕なのはやはり価格でしょうか。2TB容量のTLC型SSD、例えばWD_BLACK AN1500に内蔵されているWD_BLACK SN750なら35000円程度で購入できるので、約30%程度、容量単価でコスパが下がります。
RAID0で最大4TBの大容量ストレージ、RAID0のおかげでSLCキャッシュが大きく書き込み性能も高い、内蔵RAIDコントローラーでボリュームが作成されていて誤操作でデータを飛ばす心配がない、AICカード型のヒートシンクは無骨でカッコ良くLEDイルミネーションも豪華など、「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card」に魅力がないわけではないものの、プレミアムな価格を許容できるかどうかで評価が分かれそうです。
以上、「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TB」のレビューでした。
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PCIE3.0x8接続の高速帯域によって読み出し速度が最大6.5GB/sに達するPCIE AICカード型NVMe SSD「WD_BLACK AN1500 NVMe SSD Add-in-Card 4TB」をレビュー。SSD性能、豪華なLED、大型ヒートシンクの冷え具合を徹底検証。https://t.co/aNHmyvBTso
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) October 15, 2020
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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