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メインストリーム向けのIntel第10世代Core-SとAMD第3世代Ryzen、エンスージアスト向けのIntel第10世代Core-XとAMD第3世代Ryzen Threadripperなど、2021年最新4大プラットフォーム+アルファな30種類以上のCPUによる各種ベンチマーク比較を参考にして、クリエイティブタスクやPCゲーミングなどの用途と予算に合わせた最適なCPUの選び方、自作PCやBTO PCでオススメのCPUを紹介します。
目次
【CPUの基礎知識】
1.2021年現在の主なプラットフォーム(CPU&M/B)は4種類2.3分で決まる各種用途に最適なプラットフォームの早見表
・iGPU(CPU統合グラフィックス)の有無に注意
3.2021年最新の主なCPUラインナップ一覧
【CPU性能を比較解説】
4.CPU性能は大別して3種類に分けられる5.『基本的なPC利用の性能』はデスクトップ向けCPUならどれも十分
6.『クリエイティブタスク性能』はCPUのマルチスレッド性能に比例する
7.『PCゲーミング性能』は60FPSターゲットとハイフレームレートの違いに注意
8.ゲーム実況のリアルタイムエンコード性能は?
【予算&用途別のオススメCPU】
9.予算1万円のエントリークラスCPU10.予算2万円の一般自作PCにオススメなCPU
11.iGPUが高性能で最大8コアなRyzen 4000Gシリーズ
12.予算4万円のゲーム実況にオススメなCPU
13.ハイフレームレートPCゲーミングにオススメなCPU
14.動画編集・3DレンダリングなどクリエイティブタスクにオススメなCPU
【執筆:2019年10月15日、最終更新:2021年1月1日】
News
・ZEN3採用のAMD Ryzen 5000シリーズが11月5日発売!!2021年現在の主なプラットフォーム(CPU&M/B)は4種類
2021年現在、一般コンシューマー向けに販売されているデスクトップPC用CPUは、メインストリーム向けの「Intel第10世代Comet Lake-S」シリーズと「AMD Ryzen 5000/3000」シリーズ、エンスージアスト向けの「Intel Core-X」シリーズと「AMD Ryzen Threadripper」シリーズの4種類です。各CPUシリーズには対応CPUソケットおよび対応チップセットがあり、CPUとチップセットの組み合わせはプラットフォームと呼ばれますが、システムメモリやCPUクーラーなどの互換性の表記において、CPUシリーズ、CPUソケット、チップセットのどれがプラットフォームを代表して記載されるかは製品やメーカーによって異なるので、円滑に自作PCパーツを選ぶためにも下のテーブルを押さえておいてください。
2021年最新の主なプラットフォームとその表記 | |||
CPU | CPUソケット | チップセット | OC |
Intel第10世代 Comet Lake-S Core i9 10900K, i7 10700K, Core i5 10400など |
LGA1200 (CPUクーラーはLGA115Xと互換) |
Intel 400シリーズ Z490, H470 B460, H410 |
K付きCPUとZ490のみ メモリOCはZ490なら可能 |
Intel 第10世代Core-X Intel Cascade Lake-X Core i9 10900X, 10920X Core i9 10980XEなど |
LGA2066 (CPUクーラーはLGA2011と互換) |
Intel X299 |
対応 |
AMD Ryzen 5000/3000 Ryzen 9 5900X, 7 5800X Ryzen 7 3700X, 5 3600, Ryzen 7 PRO 4750GGなど |
AM4 | AMD 500/400シリーズ X570, B550, B450 (X370など300系も互換) 詳細はこちら |
|
AMD Ryzen Threadripper Threadripper 3970Xなど |
TRX4 (TR4と互換) |
AMD TRX40 |
CPUの選択とプラットフォームの選択は表裏一体、つまりCPUを選んだ瞬間にマザーボードが大枠で決まってしまいます。エンスージアスト向けCPUについては対応チップセットが1種類しかないので特に問題ありませんが、メインストリーム向けCPUには対応チップセットが複数存在し、チップセットによってPCIE増設カード、ストレージ、USB機器の拡張性が変わります。
この記事を読み終わってからで構わないので、マザーボード(チップセット)について解説した下の記事も目を通してみてください。
・おすすめの自作PCマザーボードを徹底解説
3分で決まる各種用途に最適なプラットフォームの早見表
基本的にはメインストリーム向けCPUのIntel第10世代Core-SかAMD第3世代Ryzenから選ぶことになりますが、2021年における4大プラットフォームについて各種用途に最適なものはどれなのか、ざっくりと早見表にまとめると下のようになります。各種用途に最適なプラットフォームの早見表 |
|||||
用途 / CPU | Intel | AMD | |||
Core-S | Core-X | Ryzen |
Threadripper |
||
最多コア数 | 10 | 18 | 16 |
64 |
|
メモリ チャンネル数 / 枚数 最大容量 |
2 / 4 128GB |
4 / 8 256GB |
2 / 4 128GB |
4 / 8 256GB |
|
マルチスレッド性能 | 基本的にコアスレッド数×コアクロックに比例 (8コア以下でIntel vs AMDのコスパはほぼ同じ) |
||||
PCゲーム | FHD~4K/60FPS | 〇(6コア12スレッド以上なら大差なし) | |||
120~240FPS | 〇〇 | 〇 | 〇 |
〇 | |
クリエイティブ | 基本 |
マルチスレッド性能に比例 | |||
エンコード | 〇 | ||||
CPU直結PCIEレーン数 (増設機器の拡張性) |
16 | 48 | 16 +4 (SSD用) |
56 | |
CPU統合グラフィクスの有無 | 末尾にF付き は非搭載 |
非搭載 | 末尾にG付き のみ搭載 |
非搭載 |
基本的にはメインストリーム向けCPUのIntel第10世代Core-SかAMD第3世代Ryzenから選ぶことになりますが、それぞれのメリットを簡単にまとめると次のようになります。
【Intel製CPUのメリット】
・ハイフレームレートなPCゲーミングで若干高性能 (Ryzen 3000と比較して)
・長年主流なのでマイナーなアプリでも性能の最適化が期待できる
【AMD製CPUのメリット】
・10コア以上でマルチスレッド性能のコストパフォーマンスが高い
・メインストリーム向けで最大16コアまでラインナップされている
・特にB450チップセット搭載製品などマザーボードが安価
・Ryzen 5000シリーズはコアクロック当たりの性能が最速
Intel第10世代Core-SとAMD第3世代Ryzenは同コアスレッド数のモデル同士で比較すると性能は僅差であり、また第3世代Ryzenでは第2世代以前で見られたハイフレームレートなPCゲーミングにおける明確なIntel製CPUとの壁もなくなっています。
メインストリーム向けCPU同士であえて差をつけるとすれば、Intel製CPUは長年主流だっただけあってなんだかんだでどのアプリケーションでも最適な性能を発揮できる安定感がある、AMD製CPUは最多16コアまでラインナップされていて10コア以上でのマルチスレッド性能のコストパフォーマンスが高い、と評価できますが最終的には予算と各自の好みで選ぶことになると思います。
・Intel第10世代Comet Lake-Sのレビュー記事一覧へ
・AMD第3世代Ryzen CPUのレビュー記事一覧へ
iGPU(CPU統合グラフィックス)の有無に注意
PCの画面をモニタに映すためには、『CPUに内蔵されたGPU(iGPU)を使用してマザーボードのリアI/Oに実装されたビデオ出力端子にモニタを接続する』、もしくは『PCIE拡張ボードのグラフィックボードを増設してそのビデオ出力とモニタを接続する』のどちらかを行う必要があります。グラフィックボードを使用しない場合はiGPUが必要になりますが、Intel製CPUの場合はCore i5 10400Fのように末尾に”F”の添え字があるCPUはiGPUを非搭載、AMD製CPUの場合はRyzen 5 PRO 4650Gのように末尾に”G”の添え字があるCPU(APUと呼ばれている)以外はiGPUを非搭載です。グラフィックボードを使用せずに自作PCを組む予定の人は注意してください。
2021年最新CPUのiGPUは4K/60FPSのビデオ出力に対応していますが、4K/60FPSの表示を行うにはマザーボードのリアI/O実装されたビデオ出力も4K/60FPSに対応している必要があります。
DisplayPortビデオ出力についてはver1.2以降で4K/60FPSに対応しているので基本的に問題ありませんが、HDMIについては4K/30FPSが上限のver1.4と、4K/60FPSに対応するver2.0以降が、まだ市場では混在しているので、組み合わせて使用するマザーボードには特に注意してください。
2021年最新の主なCPUラインナップ一覧
上で紹介した4大プラットフォーム+αから、2021年現在新規に購入するCPUとして選択肢に挙がる製品をコアスレッド数の順に並べてまとめると次の表のようになります。Intel製CPUとAMD製CPUでは実用コアクロックに差があるので若干誤差もあるのですが、コアスレッド数からマルチスレッド性能を単純に考えると、8コア以下ではIntel製CPUとAMD製の価格はほぼ同等であり、10コア以上になるとAMD製CPUのほうがIntel製CPUよりもコアスレッド数に対して安価なので、マルチスレッド性能のコストパフォーマンスが高いということがわかります。
自作PC用CPUは下の表で太字にした各社3~5クラスから予算や用途に合わせて選ぶのがオススメとなっており、基本的にはメインストリーム向けCPUのIntel Core i5 10400(F)かAMD Ryzen 5 3600を選んでおけば間違いがありません。
PCゲーミングやクリエイティブタスクなど用途に合わせてさらに性能が必要なら、Core i7 10700、Core i9 10900K、Ryzen 7 3700X、Ryzen 9 3900Xなど予算とも相談しつつ上位のCPUを選択していく感じです。
コアスレッド別CPUラインナップとおおよその価格 | ||||
メインストリーム/ エンスージアスト |
Intel | AMD | ||
2コア4スレッド | Pentium Gold 5620G Pentium Gold 6400G |
8000円~ |
Athlon 240GE Athlon 220GE |
6000円~ |
4コア4スレッド | Core i3 10100F |
11000円 | Ryzen 3 3200G | 13000円~ |
4コア8スレッド | Core i3 10100 Core i3 10300 |
17500円 | Ryzen 3 3300X Ryzen 3 PRO 4350G |
17500円 20000円 |
6コア6スレッド | - | - |
Ryzen 5 3500 (Ryzen 5 3500X) |
16000円 |
6コア12スレッド | Core i5 10400(F) Core i5 10600K |
20000円~ 36000円 |
Ryzen 5 3600 Ryzen 5 3600X(T) Ryzen 5 PRO 4650G Ryzen 5 5600X |
26000円~ 39000円 |
8コア8スレッド | - |
- |
- | - |
8コア16スレッド | Core i7 10700(F) Core i7 10700K(F) |
40000円~ 47000円~ |
Ryzen 7 3700X Ryzen 7 3800X(T) Ryzen 7 PRO 4750G Ryzen 7 5800X |
40000円 59000円 |
10コア20スレッド | Core i9 10900(F) Core i9 10850K Core i9 10900K |
5.6万円~ 7.2万円 |
- | - |
12コア24スレッド | Core i9 10920X |
9.9万円 |
Ryzen 9 3900X(T) Ryzen 9 5900X |
6.0万円 7.2万円 |
14コア28スレッド | Core i9 10940X |
11万円 |
- | - |
16コア32スレッド | - |
- |
Ryzen 9 3950X Ryzen 9 5950X |
7.4万円 10.2万円 |
18コア36スレッド | Core i9 10980XE |
14万円 | - | - |
24コア48スレッド | - | - | Ryzen TR 3960X | 18万円 |
28コア56スレッド | Xeon W-3175X |
38万円 | - | - |
32コア64スレッド | - | - | Ryzen TR 3970X | 25万円 |
64コア128スレッド | - | - | Ryzen TR 3990X | 50万円 |
CPU性能は大別して3種類に分けられる
CPUの性能は「コアスレッド数×コアクロック」に比例するというのが大原則ですが、ここからはもう少し細分化してCPU性能について解説していきます。『用途別でCPUを選ぶ』時にはCPU性能を次の3つで評価すればOKです。
1.プライベート、オフィスワーク、アカデミックなど基本的なPC利用
2.動画編集や3Dレンダリングなどクリエイティブタスク
3.60FPSターゲットもしくはハイフレームレートなPCゲーミング
次の章から上の3項目について順番に概要を紹介していきますが、2021年最新CPUを一挙に比較したCPU性能データベース的な記事も公開中です。詳細なデータが気になる人は読んでみてください。
・2020年最新「CPU」 38種類の性能を比較 【Intel第10世代Core-S対応】
『基本的なPC利用』におけるCPU性能はデスクトップ向けCPUならどれも十分以上
上でCPUの性能評価は3項目に大別できると紹介しましたが、まずは『基本的なPC利用』について解説していきます。『基本的なPC利用』とざっくりまとめましたが具体的には、OS/アプリケーションの起動、ウェブブラウジング、動画(ファイル/ストリーミング)の視聴、ワープロソフト(マイクロソフトWordなど)、表計算ソフト(マイクロソフトExcelなど)など家庭、オフィスワーク、学習といったシーンのことです。
動画再生能力、DirectX11のグラフィック性能、Webブラウジング、ビデオチャットなど一般ユース(若干クリエイティブタスクやPCゲーミングも含む)におけるPCの総合的な性能を測定するためのベンチマークソフト「PCMark 10」には4つのテストグループがあるのですが、そのうち『基本的なPC利用』に該当する「Essentials」と「Productivity」の2つのテストグループについて各種CPUでベンチマークスコアを比較してみました。
PCの基本性能を測る「Essentials」は、アプリケーションの起動に要する時間を測る「App Start-up」、 ウェブブラウジングの性能を測る「Web Browsing」、1対1または多対多のビデオ会議をシミュレートする「Video Conferencing」の3つのワークロードで構成されています。
モバイル版Core i7(2コア4スレッド)を搭載するSurface Pro(2017)を基準にするとわかりやすいですが、一般的なPC利用において大半のデスクトップ向けCPUはいずれも十分な性能を備えています。加えてこういった基本的なタスクにおいてはCPUのコアスレッド数やコアクロックはあまり影響しません。
ビジネスアプリケーション性能を測る「Productivity」は、ワープロソフト(マイクロソフトWordなど)の処理性能をシミュレートする「Writing」、表計算ソフト(マイクロソフトExcelなど)の処理性能をシミュレートする「Spreadsheets」の2つのワークロードで構成されています。
モバイル版Core i7(2コア4スレッド)を搭載するSurface Pro(2017)を基準にするとわかりやすいですが、一般的なPC利用において大半のデスクトップ向けCPUはいずれも十分な性能を備えています。加えてこういった基本的なタスクにおいてはCPUのコアスレッド数やコアクロックはあまり影響しません。
基本的なPC利用におけるCPU性能のまとめ
以上のように『基本的なPC利用』においてはコアスレッド数が2コア4スレッドもあればCPU性能としては十分であり、2021年現在、1万円から購入できるCPUは4コア4スレッド以上、2万円から購入できるCPUは6コア6スレッド以上なので、デスクトップ向けCPUが『基本的なPC利用』において性能が不足するということはありません。ウェブブラウジング、オフィスアプリ、動画視聴がメインの用途であれば、Intel Core i3 9100やAMD Ryzen 3 3200Gのような1万円前後で購入できる4コア4スレッドのCPUで十分です。
価格が1万円台半ばからになりますが、2020年5月以降は最新CPUとして4コア8スレッドのIntel Core i3 10100やAMD Ryzen 3 3300X(iGPU非搭載)がエントリークラスCPUとして降りてきています。
『クリエイティブタスク』におけるCPU性能は基本的にCPUのマルチスレッド性能に比例する
続いて3つに大別したCPU性能評価の2つ目、『クリエイティブタスク』におけるCPU性能について解説していきます。ここで言うクリエイティブタスクとは、動画編集におけるエンコード作業、3Dレンダリング、RAW現像、3DゲームのビルドなどCPUのマルチスレッド性能を100%使用するタスクのことです。『CPUのマルチスレッド性能を100%使用する』と言ったように、クリエイティブタスクにおける性能は基本的にCPUのマルチスレッド性能、つまり「コアスレッド数×コアクロック」に比例します。
クリエイティブタスクにおける性能比較の例として、
・3Dレンダリング:オープンソース3DCGソフト「Blender」の公式ベンチマークソフト
・動画:エンコード:「Aviutl」のx264エンコーダによる4K動画のエンコード
・RAW現像:DxO PhotoLab(PRIMEあり、5472×3648解像度のRAW画像ファイル 100枚)
・3Dゲームビルド:「Unreal Engine 4」でデモプロジェクト「Infiltrator」を使用したビルド
以上の4種類について、各種CPUの性能比較の結果をチェックしていきます。
3DCGソフト「Blender」の公式ベンチマークソフトで測定する3Dレンダリング性能についてはレンダリング時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、6コア6スレッドCPUのCore i5 9400Fを基準にして、各種CPUのレンダリング速度を性能比としてグラフ化しました。
x264エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.264 (MPEG-4 AVC)の3840×2160解像度へエンコードした時のエンコード速度について、各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。
DxO PhotoLabによるRAW現像速度について、各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。
「Unreal Engine 4 - Infiltrator」を使用した3Dゲームのビルド性能については、ビルド時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、6コア6スレッドCPUのCore i5 9400Fを基準にして、各種CPUのビルド速度を性能比としてグラフ化しました。
クリエイティブタスク別のオススメCPUまとめ記事
動画のエンコードについては、動画編集ソフトウェアの種類や、エンコーダの種類(現在主流なx264と高圧縮率で今後普及が期待されるx265/HEVC)によって、CPU別で得手不得手があったりもするので、動画編集やエンコードがメインの人はこちらの記事を参考にしてください。・動画エンコードにオススメなCPUは?最新20種のCPUで徹底比較
クリエイティブタスクにおけるCPU性能のまとめ
以上のようにCPUリソースを100%使用するクリエイティブタスクにおいて、CPU性能は基本的にCPUのマルチスレッド性能(コアスレッド数×コアクロック)に直接比例します。コアスレッド数が増える(クリエイティブタスクにおけるCPU性能が上がる)ほど、CPU価格も比例して高価になるので、クリエイティブタスクをメインに行うユーザーは各自の予算に合わせて可能な限りコアスレッド数の多いものを選択する形になります。
AMD製CPUの方がIntel製CPUよりもコアスレッド数に対して安価なので、マルチスレッド性能におけるコストパフォーマンスが高い傾向にあります。ソフトウェア最適化においてIntel製CPUのほうが有利との意見もありましたが、第3世代Ryzenでは基本的に最適化の面で後れを取ることはないと思います。
クリエイティブタスクのプライオリティが高い場合、コストパフォーマンスの観点からするとAMD第3世代RyzenではなくIntel第10世代Core-Sを選ぶ理由はあまりなく、基本的には8コア16スレッドの「AMD Ryzen 7 3700X」が一押しで、予算に余裕があるのであれば上位モデルで12コア24スレッドの「AMD Ryzen 9 3900X」を検討してみてください。
『PCゲーミング』におけるCPU性能は60FPSターゲットとハイフレームレートの違いに注意
最後に3つに大別したCPU性能評価の3つ目、『PCゲーミング』におけるCPU性能について解説していきます。PCゲーミングにおけるCPU性能は大きく2点、誤解されることが多いポイントがあります。
AMD製CPUはIntel製CPUよりもゲーミング性能が低い?
まず、『Intel製CPUに比べてAMD製CPUはPCゲーミング性能が低い』と評価されることが多いのですが、この表現には若干語弊があり、正確を期すと『フルHD~4K解像度における60FPSターゲットの一般的なPCゲーミングではIntel製CPUとAMD製CPUに大差はないが、144FPS~240FPSなどのハイフレームレートなPCゲーミングではIntel製CPUの方がAMD製CPUよりも高性能である』となります。CPUのゲーム性能とは基本的に後者を指し、60FPSターゲットであれば6コア6スレッド以上の最新CPUにおいてCPUがボトルネックになることは基本的にありません。
さらに付け加えると、2020年に発売されたAMD製CPUである第3世代Ryzenでは、このハイフレームレートなPCゲーミングにおけるCPUボトルネックが大幅に改善されています。
最新CPUの中ではCore i9 10900Kを頂点としてIntel第10世代Core i9/i7は頭一つ飛びぬけた性能を発揮しますが、それを除けば、『AMD第3世代Ryzen CPU各種はIntelのCore i5(6C12T)以下とは伯仲する性能を発揮できる』ようになっています。
メニーコアなエンスー向けCPUはゲーミング性能が低い?
次に『10コア以上のメニーコアなエンスージアスト向けCPUはメインストリーム向けCPUに比べてPCゲーミング性能が低い』と評価されていることがあります。これについては数年前までは概ね正しかったのですが、公式スペックにおけるCPU最大動作倍率とTDPの関係に変化があって最新のCPUでは概ね当てはまりません。Core i9 7900Xの登場(2017年中頃)以前、第6世代より前のIntelエンスー向けCPUでは多コア多スレッドゆえに全コア最大動作倍率がTDP(全コア負荷時の動作倍率)に合わせて引き下げられていたため、手動OCをしないとメインストリーム向けCPUよりもゲーム性能で大きく劣るというのが通説でした。
しかしながら最新のCPUでは全コア負荷時にTDP範囲内で動作可能な動作倍率とは関係なく、全コアの最大動作倍率が設定されており、TDPの範囲内で動作できるのであれば全コアを高い動作クロックで維持できるようになっています。
ゲームタイトルにもよりますがPCゲームにおけるCPU負荷は基本的にTDP内に収まることが多く、CPUコアクロックは全コア最大動作倍率に張り付きます。フレームレートに対するCPUボトルネックの緩和においては、この全コア最大動作倍率の高さが重要になり、クリエイティブタスクと違って電力制限は支配的ではなくなります。(PCゲームではIntel製CPUのPL1、AMD製CPUのPPTは影響をほとんど及ぼさなくなる)
これによってPCゲームのように全コアが稼働するものの負荷的には余裕でTDP範囲内に収まるワークロードにおいて、Core i9 9920XやCore i9 9980XEなど10コア以上のメニーコアなエンスー向けCPUであっても定格のままでメインストリーム向けCPUと同等の高いパフォーマンスを発揮できるようになっています。
PCゲーミングにおけるCPU性能のまとめ
Intel第8/9/10世代Core-SやAMD第2/3世代Ryzenなどここ数年で発売された4コア4スレッド以上のCPUであれば、フルHD~4K解像度の60FPSターゲットにおいてCPUボトルネックが発生するケースはほとんどありません。ただし最新の超高画質で重いゲームの場合、ゲームプレイの裏で次のシーンのロード作業が動くとロードが遅くなったりスタッター(カクツキ)が発生することがあるので、60FPSターゲットであってもゲーミングPCに搭載するCPUとして6コア12スレッド以上を個人的に推奨しています。2021年最新CPUではIntel Core i5 10400やAMD Ryzen 5 3600が該当します。
ゲーム実況のリアルタイムエンコード性能は?
Youtube LiveやTwitchなどリアルタイム配信(ライブストリーミング)サービスで、PS4/Xbox/Switch等のコンシューマーゲーム機やPCゲームのプレイ動画・ゲーム実況を快適に配信するのに必要なCPU性能については、現在、連載を続けている【快適配信】シリーズで詳細に解説しています。一口にゲーム実況と言っても、『1.ビデオキャプチャを使用してPCは録画配信作業のみを行う』、『2.PC1台で同時にゲームプレイと録画配信を行う』の2つのケースに大別され、どちらで使用するのかで要求されるCPU性能やCPUメーカー毎の得手不得手など事情が変わってくるので注意してください。
・【快適配信】シリーズの記事一覧へ
ざっくりと現状だけ述べておくと、『ビデオキャプチャを使用した配信の最低水準は6コア12スレッドのCPU』、『ゲームをプレイしながら配信の最低水準は8コア16スレッドのCPU』です。
予算1万円のエントリークラスCPU
1万円程度で購入可能なエントリークラスCPUとしては「Intel Core i3 9100(F)」もしくは「AMD Ryzen 3 3200G」がオススメです。1万円程度のエントリークラスCPUですが、4コア4スレッドCPUと高性能なVegaグラフィックスを搭載しているので、10万円を超える高性能なモバイルPC(ディスクリートGPU非搭載)は余裕で上回る性能があり、ウェブブラウジング、動画ストリーミング視聴、オフィスアプリ、2Dイラストレーションくらいのタスクは軽々とこなせます。
「AMD Ryzen 3 3200G」は統合グラフィックス(iGPU)がIntel製CPUよりも高性能なので、グラフィックボードを使用しないなら「AMD Ryzen 3 3200G」で良いと思います。
AMD Ryzen 3 3200GやAMD Ryzen 5 3400GでホームユースのPCを組むのであれば、STXベアボーン「ASRock DeskMini X300 / A300」が非常にオススメです。
・「ASRock DeskMini X300」をレビュー。Ryzen 4000Gに完全対応!
・「ASRock DeskMini A300」をレビュー
「AMD Ryzen 3 3200G」は統合グラフィックスはiGPUとしては高性能とはいえ、エントリークラスのグラフィックボードとは比較にならないので、GeForce GTX 1650やRadeon RX 560などのグラフィックボードと組み合わせるのであれば、グラフィックボード用PCIEスロットがPCIE3.0x16に対応する「Intel Core i3 9100(F)」を選択するのがオススメです。
予算2万円の一般自作PCにオススメなCPU
CPUの予算が2万円程度であれば、一般的なPC利用からミドルクラスGPUと組み合わせたフルHD/60FPSのPCゲーミングに対応できる4コア8スレッドCPUの「AMD Ryzen 3 3300X」がオススメです。2021年現在のおおよその販売価格が1.5~1.8万円程度と2万円を切っており、基本的にこれを買っておけば間違いありません。・「AMD Ryzen 3 3300X」をレビュー。ベストオブエントリークラスCPU
4コア8スレッドのCore i3 10100やRyzen 3 3300Xよりは割高になってしまうのですが、6コア12スレッドでクリエイティブタスクにおいて50%程度高い性能が発揮できる「Intel Core i5 10400(F)」や「AMD Ryzen 5 3600」も検討してみる価値があります。PCゲーミングを主用途とするのであれば、当サイトではこのラインを特に推奨しています。2021年現在のおおよその販売価格は、「Intel Core i5 10400F」が2.0万円程と安価なので特にオススメです。
・「Intel Core i5 10400」をレビュー。8700Kに迫るが本命は10400F
動画エンコードやゲーム配信などマルチスレッド性能が重要になる用途でも使用するのであれば「AMD Ryzen 5 3600」は非常にコストパフォーマンスの優れたCPUです。
・「AMD Ryzen 5 3600」をレビュー
iGPUが高性能で最大8コアなRyzen 4000Gシリーズ
第3世代Ryzenと同じZen2 CPUコアと、7nmプロセスで改良・製造されるRadeon Graphicsを組み合わせた、RenoirことAMD第4世代Ryzen APUは、Intel製CPUと比較してCPU内蔵グラフィックス(iGPU)の性能が2倍以上高いので、『グラフィックボードが必要なくてグラフィック性能はそこそこあればいいけど高いCPU性能は欲しい』というユーザーにオススメな製品です。8コア16スレッドの「Ryzen 7 PRO 4750G」を最上位として、下位モデルには6コア12スレッドの「Ryzen 5 PRO 4650G」、4コア8スレッドの「Ryzen 3 PRO 4350G」がラインナップされています。
・「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」をレビュー。Core i7 10700と徹底比較
・「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」をレビュー。3400Gや10400と徹底比較
・「AMD Ryzen 3 PRO 4350G」をレビュー。TDP35W相当の省電力性能!
Ryzen 4000Gシリーズは気になるけど、自作PCの知識がなくて不安という人には、Ryzen 4000Gシリーズを搭載可能なベアボーン「ASRock DeskMini X300」をベースにしたBTO PCがオススメです。メモリやSSDの互換性についてもBTO PCメーカーでシステムが動作確認済みなので買って届けばすぐに使用できます。
・サイコム Radiant SPX2800X300Aの販売ページへ
・PCショップアーク CROYDON DeskMini X300の販売ページへ
「ASRock DeskMini X300」については詳細レビューを公開中なので、Ryzen 4000Gと組み合わせて自作PCを検討している人は参考にしてください。
・「ASRock DeskMini X300」をレビュー。Ryzen 4000Gに完全対応!
予算4万円のゲーム実況にオススメなCPU
ゲーム実況やライブタイム配信を行いたいということであれば、PCゲームをプレイしながらx264 Mediumでリアルタイムエンコードが可能なマルチスレッド性能があり、かつ4万円で購入できてコストパフォーマンスに優れる、8コア16スレッドCPUの「AMD Ryzen 7 3700X」がオススメです。・「AMD Ryzen 7 3700X」をレビュー
マザーボードを含めたプラットフォーム単位でのコストパフォーマンスは若干下がりますが、ハイフレームレートなPCゲーミングの性能で上回る「Intel Core i7 10700F」もオススメです。
・「Intel Core i7 10700F」をレビュー。4万円の8コア16スレッドCPUがIntelから!
ハイフレームレートPCゲーミングにオススメなCPU
GeForce RTX 2080 SUPERやGeForce RTX 2080 TiのようなハイエンドGPUと組み合わせ、144FPS~240FPSのハイフレームレートで最新PCゲームや近年流行りのバトルロイヤル系PCゲームをプレイするのであれば、「Core i7 10700K」や「Core i7 10700(F)」などIntel第10世代Core-Sの8コア16スレッドモデルがオススメです。・「Intel Core i7 10700K」をレビュー。ベストオブゲーミングCPUの素質はあるが
バトルロイヤル系PCゲームなどハイフレームレートが有利になるオンライン対戦PCゲームにおいて、現状最速のCPUが欲しい、ということであれば「Core i9 10900K」や「Core i9 10850K」を検討してみてください。2021年の最新CPUの中でも、この分野においては頭一つ飛びぬけた最速のCPUになっています。
・「Intel Core i9 10900K」をレビュー。ゲーマー向け最速は偽りなし
・「Intel Core i9 10850K」をレビュー。安くて速い完全体10コアCore i9!
動画編集・3DレンダリングなどクリエイティブタスクにオススメなCPU
動画編集や3DレンダリングなどCPUのマルチスレッド性能が物を言う用途がメインになる人には、メインストリーム向けCPUながら世界初となる12コア24スレッド「Ryzen 9 3900X」や16コア32スレッド「Ryzen 9 3950X」がオススメです。「Ryzen 9 3900X」はクリエイティブタスクにおいて同価格帯のCore i9 9900Kを40~50%も上回り、「Ryzen 9 3950X」はさらに30%高い性能を発揮します。また同コアスレッド数のIntel第10世代Core-Xをワットパフォーマンスで大きく上回るので(コストパフォーマンスでも非常に優秀)、自作PCにあまり詳しくない人でもCPUの冷却面で簡単に運用できるところも魅力です。
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12コア24スレッドのRyzen 9 3900XなどAMD第3世代Ryzenの同コアスレッド数モデルと比較して割高になりますが、クリエイティブタスク向いたCPUにはIntelのエンスー向け製品である第10世代Core-Xシリーズもあります。
ワットパフォーマンスが悪く定格電力制限下では第3世代Ryzenに及ばないため、Intel第10世代Core-Xで十分な性能を発揮するにはユーザーによる手動OCが必要になり(設定自体はそれほど難しくはない)、運用面においても若干ハードルが高いですが、CPU直結PCIEレーンの多さやメモリ帯域の高速さなど替えの効かない要素もあります。この分野ではコスパ度外視なユーザーも多いと思うので検討してみる価値はあると思います。
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組み合わせて使用するマザーボードが5万円からとなり、CPU単体も24コアが18万円、32コアが25万円と非常に高額になりますが、クリエイティブタスクでとにかくマルチスレッド性能を追求するのであれば、AMD第3世代Ryzen Threadripperを検討してみてください。32コアのRyzen Threadripper 3970Xは半エンタープライズなXeon W-3175Xを蹴散らし、HEDT向けCPUとしては独壇場な圧倒的性能を発揮します。
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