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水冷パーツメーカーAlphacoolから発売されたAIO水冷キット「Alphacool Eiswolf 2 AIO - 360mm RTX 3090/3080 with Backplate (Reference)」を使用して、NVIDIA GeForce RTX 30シリーズのハイエンドモデルGeForce RTX 3080を水冷化する手順や、水冷化による冷却性能・静音性の向上についてレビューしていきます。
代理店製品ページ:https://techace.jp/4250197119313-JP
製品公式ページ:https://www.aquatuning.jp/detail/index/sArticle/27824
レビュー目次
1.Alphacool Eiswolf 2 AIO RTX 3090/3080の梱包・付属品
2.Alphacool Eiswolf 2 AIO RTX 3090/3080のAIO水冷キット本体
3.Alphacool Eiswolf 2 AIO RTX 3090/3080の対応グラフィックボード
4.Alphacool Eiswolf 2 AIO RTX 3090/3080の組み立て手順
5.AIO水冷化GeForce RTX 3080の検証システムについて
6.AIO水冷化GeForce RTX 3080の冷却性能や静音性を検証
7.Alphacool Eiswolf 2 AIO RTX 3090/3080のレビューまとめ
【機材協力:Alphacool 国内正規代理店 Techace】
Alphacool Eiswolf 2 AIO 360mm RTX 3090/3080 Referenceの梱包・付属品
まずは「Alphacool Eiswolf 2 AIO - 360mm RTX 3090/3080 with Backplate (Reference)」の梱包や付属品をチェックしていきます。「Alphacool Eiswolf 2 AIO 360mm RTX 3090/3080 Reference」にはGPU水冷ブロックや360サイズラジエーターなど水冷化するためのAIO水冷キットが丸ごと入っているのでパッケージサイズはかなり巨大です。
「Alphacool Eiswolf 2 AIO 360mm RTX 3090/3080 Reference」のAIO水冷キット本体や各種付属品はパルプモールド製スペーサーでびっしりと収められています。
「Alphacool Eiswolf 2 AIO 360mm RTX 3090/3080 Reference」にはAIO水冷キット本体に加えて、各種付属品は透明ビニールパックに封入され、マニュアル冊子が付属しています。
製品マニュアルは英語やドイツ語になっており、日本語には非対応ですが、図解がしっかりしており構造も簡単なので組み立て手順に迷うことはないと思います。
「Alphacool Eiswolf 2 AIO 360mm RTX 3090/3080 Reference」の細かい付属品をチェックしていくと、まず小分けのビニール袋(左側)に水冷ブロック&バックプレートを固定するためのネジセットが封入されています。
水冷化するオリファンモデルによっては標準クーラーなしでPCIEブラケットを基板に固定できないので、もう1つのビニール袋はPCIEブラケットを単独でグラフィックボード基板に固定できるようにネジ&ナットが封入されています。
AIO水冷キットの水冷ブロックやバックプレートを、グラフィックボード基板上のVRAMチップやVRM電源回路と接触させるためサーマルパッドも必要サイズが標準で付属します。厚みに応じて小分けにされ、色分けシールも貼られています。青色は厚さ1.0mm、茶色は厚さ2.0mm、黄色は厚さ3.0mmです。
ラジエーターのポートプラグを着脱するためのプラグツール、熱伝導グリスが付属します。
ラジエーターに冷却ファンを固定するためのネジとして、30mmの長ネジが4本×3セット、ラジエーターをPCケースに固定するための8mmの短ネジが4本×3セット、以上が付属します。ネジの規格は国内のホームセンター等で入手可能なM3ネジです。
「Alphacool Eiswolf 2 AIO - 360mm RTX 3090/3080 with Backplate (Reference)」は360サイズラジエーターを搭載したAIO水冷キットなので120mm角ファン「Alphacool Rise Aurora 120 mm fan」が標準で3基付属します。
「Alphacool Rise Aurora 120 mm fan」の定格(最大)回転数は2500RPM、PWM速度調整に対応し、0~2500RPMの範囲内で制御可能です。PWM速度調整で350RPM以下になるデューティ比に設定すると、ファンを完全に停止させることができます。
白色ブレードは軸受け部分に内蔵されたLEDイルミネーションの光を拡散し、ブレード全体やフレーム状リングに鮮やかな色が行き渡らせる特殊素材です。
軸受けを固定する支柱は緩やかに弧を描きながらファンブレードに対して垂直になっており、ファンブレードが支柱付近を通過するときに発生するノイズを抑制しています。軸受けにはスリーブベアリングが採用されており、MTBF 5万時間の長寿命です。
ファンフレームのネジ穴周辺部分には、高回転時に発生しやすい振動やノイズを抑制し、静音性を高める防振ラバーパッドを搭載しています。
「Alphacool Rise Aurora 120 mm fan」からはPWM対応4PINファンケーブルに加えて、ファンに内蔵されたLEDイルミネーションに給電およびライティング制御するためのARGB対応3PIN LEDケーブルが伸びています。
「Alphacool Eiswolf 2 AIO - 360mm RTX 3090/3080 with Backplate (Reference)」は360サイズラジエーターを搭載したAIO水冷キットなので、3基の冷却ファンを一括で制御できるように3分岐ケーブルも付属しています。
「Alphacool Rise Aurora 120 mm fan」のARGB対応LEDケーブルは独自のミニコネクタなので、マザーボードなどに採用されているVD-G型汎用3PINに変換するケーブルが付属します。
「Alphacool Rise Aurora 120 mm fan」はあくまで水冷キット付属品ということで、ファンブレードの風切り音や軸音の静音性等はそこまで優秀なわけではありません。AIO水冷キット自体の冷却性能が高いので冷却ファンはそこそこの性能があれば十分というとそうなのですが。
静音性を重視するのであれば、超硬質かつ軽量な新素材「Sterrox LCP」の採用によってフレーム-ブレード間0.5mmの限界を実現させた次世代汎用120mm口径ファン「Noctua NF-A12x25 PWM」への換装もおすすめです。1基あたり4000円ほどと高価ですが、標準ファンよりも静音性と冷却性能を向上させることができます。
・「Noctua NF-A12x25 PWM」を360サイズ簡易水冷に組み込む
またベージュ&ブラウンの独特なカラーリングが苦手という人には、NF-A12x25とほぼ同等品で黒一色なカラーリングの「Thermaltake TOUGHFAN 12」がオススメです。
・「Thermaltake TOUGHFAN 12」をレビュー。あの大人気ファンが黒く!?
Alphacool Eiswolf 2 AIO 360mm RTX 3090/3080 ReferenceのAIO水冷キット本体
続いて「Alphacool Eiswolf 2 AIO - 360mm RTX 3090/3080 with Backplate (Reference)」のAIO水冷キット本体をチェックしていきます。自作PCで『グラフィックボードの水冷化』というと以前レビューしたようなフルカバー水冷ブロックを使用したDIY水冷をイメージする人が多いと思います。
グラフィックボードから標準GPUクーラーを取り外してクーラーを換装するところまでは同じですが、水路の構築などで若干専門的な知識も必要になるので導入のハードルは高めであることは否めません。
AIO水冷キットの「Alphacool Eiswolf 2 AIO - 360mm RTX 3090/3080 with Backplate (Reference)」はというと、上で紹介したようなDIY水冷向けパーツが使用されてはいるのですが、水冷ブロック→ポンプ→ラジエーターという一連の水路が完成し、クーラントも充填された状態でユーザーの手元に送られてきます。
「Alphacool Eiswolf 2 AIO - 360mm RTX 3090/3080 with Backplate (Reference)」は導入に当たってGPUクーラーを取り換えるだけと非常に手軽なところが魅力であり、空冷GPUクーラーよりも抜群に冷えるというメリットを簡単に享受できます。
「Alphacool Eiswolf 2 AIO 360mm RTX 3090/3080 Reference」の水冷ブロック部分は、同社から発売されているフルカバー水冷ブロック Eisblock Aurora Acryl GPX-N RTX 3080/3090をベースにしています。
表面のカバーは透明アクリルプレートで内部のクーラントが透けて見え、マザーボード側にはARGB LEDストリップが内蔵されているので、アクリルとクーラントを綺麗にライトアップできます。
グラフィックボード基板と接する裏面部分には、GPUコア&VRAMと左右のVRM電源回路(MOS-FET)の3ブロックに分かれて、ニッケルメッキが施された銅製水冷ブロックが装着されています。
GPUコアと接する部分は綺麗な鏡面に磨き上げられています。今回は通常のシリコンサーマルグリスを使用しますが、ニッケルメッキが施された銅製なので、液体金属も使用できます。
銅製ベースプレートのGPUコアと接する部分の反対側(水路側)には、クーラントに対して効率的な熱交換が可能になるよう、フィン構造を形成しており、さらに流入口を絞って流速を高めるジェットプレートも採用されています。
また「Alphacool Eiswolf 2 AIO 360mm RTX 3090/3080 Reference」にはVRAMチップやVRM電源回路の放熱板も兼ねたアルミニウム製バックプレートも標準で付属します。
通常のフルカバー水冷ブロックでは各種フィッティングを装着するためのポートが設けられているターミナル部分には黒色カバーで覆われた水冷ポンプ部が実装されています。
ターミナル部分の黒色カバー内部には定格ポンプ速度2600RPMの高性能水冷ポンプDC-LT 2が統合されており、PWM対応4PINファン端子ケーブルによって電力供給と速度調整を行います。
「Alphacool Eiswolf 2 AIO 360mm RTX 3090/3080 Reference」は、AIO水冷キット全体にクーラントがプリフィルされリザーバーが不要であり、水冷ポンプが水冷ブロックのターミナルに統合されているので、最小限のスペースでグラフィックボードの水冷化を実現できます。
水冷チューブはターミナルの銅製プレート側(通常のATXレイアウトで上側)から90度アングルのL字エルボーフィッティングを介して接続されており、根本は360度回転可能なロータリー式になっています。
「Alphacool Eiswolf 2 AIO 360mm RTX 3090/3080 Reference」の水冷チューブは黒色で不透明なEPDMゴム製です。
ラジエーター側は通常のストレートフィッティングで接続されており、ロータリーはありません。チューブの取り回しを考えると、L字エルボーの根本だけではなく、チューブ方向へのロータリーも欲しかったところ。
また、DIY水冷のソフトチューブでは内径3/8外径1/2(10mm/13mm)もしくは内径3/8外径5/8(10mm/16mm)を使用しているユーザーが多いと思いますが、「Alphacool Eiswolf 2 AIO 360mm RTX 3090/3080 Reference」の水冷チューブは内径5/16外径1/2(8mm/13mm)です。
水冷チューブの長さはクイックリリースフィッティングを含め500mm程です。
「Alphacool Eiswolf 2 AIO 360mm RTX 3090/3080 Reference」は両側の水冷チューブの中間にそれぞれ、最小限の水漏れで水路を分断・接続できるクイックリリースフィッティングが挿入されています。
Alphacool Eiswolf 2 AIOシリーズは同じクイックリリースフィッティングを使ってCPU水冷ブロックやラジエーターを増設できるところも特徴です。(クイックリリースフィッティング付きチューブを装着済みかつクーラントも充填済みのパーツがAlphacoolから発売されている)
クーラントの再充填手段がない状態での増設は個人的にはあまりお勧めしたくないということもあり、今回はGPUの水冷化に焦点を絞ってレビューするので、クイックリリースフィッティングによる機器増設については割愛します。
「Alphacool Eiswolf 2 AIO 360mm RTX 3090/3080 Reference」の水冷ラジエーター部分には、管理人が一押しする本格水冷ラジエーター NexXxoS Full Copperシリーズの360mmサイズ30mm厚モデルが採用されています。
ラジエーターの厚みはスリムな30mmなので、付属品を含め25mm厚の標準的な120mm冷却ファンを搭載した時の合計の厚さは55mm程度です。360サイズラジエーターに対応したPCケースであれば問題なく設置できるはずです。
Full Copperの名前の通り、NexXxoS Full Copperシリーズは放熱フィンも銅製になっています。勘違いする人も少なくないそうですが、黒色塗装の隙間から見える放熱フィンの茶色はサビではなく銅の茶褐色です。
NexXxoS Full Copperシリーズは静音性重視な低速(低静圧)ファンでも十分に放熱できるように、若干広めのフィンピッチが採用されているのも特徴です。
Alphacool Eiswolf 2 AIO 360mm RTX 3090/3080 Referenceの対応グラフィックボード
AIO水冷キット「Alphacool Eiswolf 2 AIO - 360mm RTX 3090/3080 with Backplate (Reference)」を使用して水冷化が可能なグラフィックボードについて紹介していきます。「Alphacool Eiswolf 2 AIO - 360mm RTX 3090/3080 with Backplate (Reference)」は、その名前の通り、GeForce RTX 30シリーズのうち、RTX 3080、RTX 3080 Ti、RTX 3090を搭載したグラフィックボードに対応しています。
ひとくちにRTX 3080/3080Ti/3090グラフィックボードと言ってもAIBパートナー各社から様々なモデルがリリースされており同AIOキットが対応するグラフィックボードが何なのかわからない人も多いと思いますが、大きなくくりとして、一般にリファレンス基板と呼ばれるグラフィックボード基板を採用した基板を採用するRTX 3080/3090グラフィックボードを水冷化できます。また後発のRTX 3080 TiもRTX 3080/3090と共通の基盤を採用したモデルが発売されており、それも水冷化できます。
Alphacoolのフルカバー水冷ブロックはグラフィックボード基板と干渉し難いように余裕を持たせ、横幅も少し長めな設計なので、リファレンス基板をベースに若干カスタムされたZOTAC GAMING Trinityシリーズの基板にも対応します。
Alphacool公式から発表されている「Alphacool Eiswolf 2 AIO - 360mm RTX 3090/3080 with Backplate (Reference)」の対応機種は以下の通りです。
Eiswolf 2 AIO RTX 3090/3080 Reference 対応モデル一覧 | |
RTX 3080 (LHR版も対応) |
Palit GeForce RTX 3080 GamingPro / OC |
Gainward RTX 3080 Phoenix / GS | |
玄人志向 GALAKURO GG-RTX3080-E10GB/TP | |
ZOTAC GAMING GeForce RTX 3080 Trinity / OC | |
ZOTAC GAMING GeForce RTX 3080 AMP Holo | |
Inno3D GeForce RTX 3080 iChill X3 / X4 | |
GALAX GeForce RTX 3080 SG | |
PNY GeForce RTX 3080 XLR8 Gaming | |
RTX 3080 Ti | Palit GeForce RTX 3080 Ti GamingPro |
Gainward GeForce RTX 3080 Ti Phoenix | |
ZOTAC GAMING GeForce RTX 3080 Ti Trinity / OC | |
ZOTAC GAMING GeForce RTX 3080 Ti AMP Holo | |
Inno3D GeForce RTX 3080 Ti iChill X3 / X4 | |
RTX 3090 | Palit GeForce RTX 3090 GamingPro / OC |
Gainward RTX 3090 Phoenix / GS | |
玄人志向 GALAKURO GG-RTX3090-E24GB/TP | |
ZOTAC GAMING GeForce RTX 3090 Trinity / OC | |
Inno3D GeForce RTX 3090 iChill X3 /X4 | |
GALAX GeForce RTX 3090 SG |
Alphacool Eiswolf 2 AIO - 360mm RTX 3090/3080 with Backplate (Reference)に対応する製品から、国内での入手性が高いモデルを抜粋すると「Palit GeForce RTX 3080 GamingPro (LHR)」、「玄人志向 GALAKURO GG-RTX3080-E10GB/TP/LHR」、「ZOTAC GAMING GeForce RTX 3080 Trinity LHR」は安価かつ入手性が高いのでオススメです。RTX 3080を紹介しましたがGPUをRTX 3080 TiやRTX 3090に変えた各モデルも対応しています。
また今回レビューするのは上述の通りRTX 3080/3090のリファレンス基板に対応したAIO水冷キットですが、Alphacool Eiswolf 2 AIOからは、ASUS ROG STRIXやMSI VENTUSやGIGABYTE Gaming/Eagle/Visionのオリジナル基板に対応したモデルも発売されています。
Alphacool Eiswolf 2 AIO 360mm RTX 3090/3080 Referenceの組み立て手順
RTX 3080/3090用AIO水冷キット「Alphacool Eiswolf 2 AIO 360mm RTX 3090/3080 Reference」を使用して対応するRTX 3080グラフィックボードを水冷化する手順について紹介していきます。グラフィックボードの分解・水冷化の際はネジ等小さいパーツが多いので分解や組立中はもちろん分解後の保管中にも失くさないように、小さい蓋つきプラスチックパックやチャック付きポリ袋を用意しておくと便利です。
小さいパックは作業時にネジ類を放り込んでおくと紛失し難くなります。ポリ袋は分解したグラボの元々のネジを保管するのに使用できます。
分解前の用意についてはこの辺りにして早速、GeForce RTX 3080を分解していきます。
AIO水冷キット「Alphacool Eiswolf 2 AIO - 360mm RTX 3090/3080 with Backplate (Reference)」は上の章で解説した通り複数メーカー、複数モデルのRTX 3080/3080Ti/3090グラフィックボードに対応していますが、今回の水冷化では、安価かつ入手性の高い「Palit GeForce RTX 3080 GamingPro(型番:NED3080019IA-132AA)」を使用しています。
「Palit GeForce RTX 3080 GamingPro」はメーカー独自にアレンジもなくしっかり?とRTX 3080リファレンス基板が採用されており、またPCIEブラケットが基板左端の上下2か所に加えてさらにビデオ出力側にもベースプレートとは別に3か所ネジ止めポイントがあり、水冷化に最適なモデルです。
なお今回は水冷化のため自己責任でGPUクーラーを取り外していますが、GPUクーラーの取り外し(分解行為)はグラフィックボードの正規保証の対象外になる行為です。今回はレビューのために分解しておりますが、繰り返しますが保証対象外になるので基本的には非推奨の行為なのでご注意下さい。
今回水冷化に使用する「Palit GeForce RTX 3080 GamingPro」についても(下写真はRTX 3090)、バックプレートやGPUクーラーを固定するネジの一部に封印シールが貼られているため、分解にあたり、このシールが破けると高い確率で正規保証の対象外となります。
「Palit GeForce RTX 3080 GamingPro」は金属製バックプレートを搭載していますが、バックプレートは10カ所のネジで固定されています。
10か所のネジを外すとバックプレートは簡単に取り外しが可能です。VRAMチップや基板にサーマルパッドが残ってしまった場合、サーマルパッドによってはパサついていて綺麗には取れないことがあります。そういう時は再利用はできないので諦めてVRAMチップ上に残らないように綺麗に剥がしてしまってください。
GPUクーラー本体は基板裏面のコア周辺4カ所とPCIEブラケット側2か所のネジ6個で固定されています。
上の6カ所のネジを外すとGPUクーラーの固定はなくなるのですが、ファンケーブルとLEDケーブルが短く、ここが地味に取り外しが難しいポイントになります。最初に右端のLEDケーブルを外すと、ファンケーブルを外しやすくなるはずです。
以上でグラフィックボード基板を取り出すことができました。基板に残ったサーマルパッドやグリスを拭き取ったら水冷化の下準備は完了です。
念のため下写真と基板レイアウトや実装された素子を比較確認して、水冷化に使用するGeForce RTX 3080が同じ基板かどうか、互換性のあるレイアウトかどうかを確認してください。(水冷ブロック側のレイアウトには遊びがあるので、LEDヘッダーのサイズなど多少の違いなら問題ありません)
さてここからはAIO水冷キット「Alphacool Eiswolf 2 AIO 360mm RTX 3090/3080 Reference」を先ほど分解したGeForce RTX 3080のグラフィックボード基板に装着します。
まずはサーマルパッドの貼り付けです。AIO水冷キットの水冷ブロックやバックプレートを、グラフィックボード基板上のVRAMチップやVRM電源回路と接触させるために使用するサーマルパッドは必要サイズが標準で付属します。付属品については厚みに応じてビニール袋で小分けにされ、判別用の色分けシールも貼られています。青色は厚さ1.0mm、茶色は厚さ2.0mm、黄色は厚さ3.0mmです。
Alphacool Eiswolf 2 AIOにはサーマルパッドが標準で付属しますが、過去に行った水冷化レビューに続き、Thermal Grizzly製品の国内正規代理店 親和産業からクマさんパッドこと「Thermal Grizzly Minus Pad 8」をご提供いただいたので、今回もこちらの高性能サーマルパッドを組み合わせて水冷化していきます。
「Thermal Grizzly Minus Pad 8」はセラミック、シリコン、微粒子化された酸化アルミニウムで構成された熱伝導パッドとなっており熱伝導効率が8.0W/m・Kと高い効率を実現しています。非電導性なのでグラフィックボードと水冷ブロックの接触にも安心して使用できます。
RTX 3080のリファレンス基板モデルやZOTAC Trinityなどほぼ準拠な対応モデルをAlphacool Eiswolf 2 AIOで水冷化する場合、必要なサーマルパッドのサイズと枚数は以下の通りでした。RTX 3090の場合は3.0mm厚2枚の代わりに、2.0mm厚を2枚(計3枚)使用します。
・1.0mm厚、120mm x 16mm *2枚 (TG-MP8-120-20-10-1R)
・2.0mm厚、120mm x 16mm *1枚 (TG-MP8-120-20-20-1R)
・3.0mm厚、120mm x 16mm *2枚 (TG-MP8-120-20-30-1R)
まずは表面です。貼り付けるサーマルパッドのサイズや厚みもマニュアルに記載があるので特に迷うこともないと思います。水冷ブロック側は厚みが1mmだけなので特に簡単です。
Thermal Grizzly minus Pad 8は汎用サイズで販売されているので当然ですが、水冷ブロックに合わせて各自でカットする必要があります。とはいえハサミでカットするだけなので簡単です。
マニュアルでは分かりやすく水冷ブロック側にサーマルパッドの貼り付け位置が描かれていますが、グラフィックボード基板の該当位置にそのまま貼っても問題ありません。
Thermal Grizzly minus Pad 8を使用する時のポイントとして、2枚ある1.0mm厚のうち1枚からGPUコア上側のVRAMチップに貼り付けるサーマルパッドを切り出し、残りを短冊状に3つに分けて、VRM電源のMOS-FETに貼り付けます。
サーマルパッドを貼ったらGPUコアに熱伝導グリスを塗り直し、GPUクーラーを取り付けます。熱伝導グリスには毎度おなじみ管理人愛用のクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。熱伝導効率も高く、柔らかいグリスで塗布しやすいのでおすすめです。
最終的にネジ止めで圧着されるのでグリスの塗り方は割とてきとうでOKです。管理人は一応米の字に伸ばして塗っています。
今回は上記の通り、一般的なシリコングリス(非電導性)を使用していますが、Thermal Grizzlyからはグラフィックボードにも使用できる絶縁保護剤 TG SHIELDと液体金属 Conductonautが発売されています。
Alphacool Eiswolf 2 AIOの水冷ブロックはニッケルメッキが施された銅製なので液体金属を使用でき、GPUダイ-水冷ブロック間を液体金属にすることでさらに冷却性能の向上を狙えます。気になる人はこちらの記事もチェックしてみてください。
熱伝導グリスを塗ったら上から水冷ブロックを被せて、背面からネジ止めを行います。
続いてAIO水冷キット付属のアルミニウム製バックプレートを装着するので、下準備としてグラフィックボード背面にサーマルパッドを貼り付けます。
RTX 3080やRTX 3080 Tiなど背面にVRAMチップがないモデルはGPUコア背面だけ2.0mm(茶色)で、その他は3.0mm(黄色)を使用します。RTX 3090の場合はVRAMチップの部分が2.0mm(茶色)に変わります。
基板背面へマニュアルの表記に合わせてThermal Grizzly minus Pad 8をカットして貼り付けました。
Thermal Grizzly minus Pad 8を使用する時のポイントとして、2枚ある3.0mm厚(RTX 3090の場合は2.0mm厚)のうち1枚からGPUコア上側のVRAMチップに貼り付けるサーマルパッドを切り出し、残りを短冊状に3つに分けて、VRM電源のMOS-FETに貼り付けます。
あとはバックプレートもネジ止めすれば、AIO水冷キット「Alphacool Eiswolf 2 AIO 360mm RTX 3090/3080 Reference」によるGeForce RTX 3080の水冷化が完了です。
AIO水冷CPUクーラーと同じく、「Alphacool Eiswolf 2 AIO 360mm RTX 3090/3080 Reference」はラジエーターやポンプなどが組み込み済みなので、水冷ブロックへの換装さえ完了してしまえば、あとは空冷同様にPCIEスロットにグラフィックボード本体を装着し、PCケースに水冷ラジエーターを設置するだけです。
AIO水冷化GeForce RTX 3080の検証システムについて
AIO水冷キット「Alphacool Eiswolf 2 AIO - 360mm RTX 3090/3080 with Backplate (Reference)」で水冷化したGeForce RTX 3080を検証用PCに組み込んでいきます。今回はテストシステムのPCケースに、180mmサイズケースファンに対応する高エアフローと魅せるデザインを追求した新型ミドルタワーPCケース 「Fractal Design Torrent Black RGB TG Light Tint」を使用しています。
「Fractal Design Torrent」は標準でフロントに2基の180mm角ケースファンを搭載していますが、今回の検証ではこのフロントスペースにAlphacool Eiswolf 2 AIOの360mmサイズラジエーターを設置するので、比較対象となる換装前の空冷クーラーの検証段階で、フロントファンは3基の120mm角ケースファン「Thermaltake TOUGHFAN 12」に置き換えました。
以降の検証に当たって、CPUクーラー冷却ファンは800RPM、PCケースボトムの140mmファン×3は800RPM、空冷グラフィックボード検証時にPCケースフロントのThermaltake TOUGHFAN 12は1200RPMでファン速度を固定しています。
なお「Fractal Design Torrent」はケース内エアフローに非常に優れたPCケースで、グラフィックボードと向かい合って底面に3基の140mmケースファンが設置されており、TGP300W超クラスのグラフィックボードでもベンチ板測定に近い冷却性能を発揮します。一般的なミドルタワーPCケースに組み込んだ場合、空冷グラフィックボードの冷却性能は下がる、ファン速度やGPU温度は上昇する可能性が高いので注意してください。
前置きが長くなりましたが、「Alphacool Eiswolf 2 AIO - 360mm RTX 3090/3080 with Backplate (Reference)」で水冷化したGeForce RTX 3080を搭載したサンプルビルドがこちら。
「Alphacool Eiswolf 2 AIO - 360mm RTX 3090/3080 with Backplate (Reference)」は透明アクリルのトップカバーで、ARGB LEDイルミネーションも標準で内蔵しているので、グラフィックボードの垂直配置をしても非常に映えると思います。
AIO水冷化GeForce RTX 3080の冷却性能や静音性を検証
上で紹介した検証システムを使用して、AIO水冷キット「Alphacool Eiswolf 2 AIO - 360mm RTX 3090/3080 with Backplate (Reference)」で水冷化したGeForce RTX 3080の冷え具合や静音性をチェックしていきます。AIO水冷化RTX 3080のGPU温度とVRAM温度、ファンノイズの検証負荷としてはGPUに100%近い負荷をかける3DMark TimeSpy Extreme Stress Test、もしくはTimeSpy Extreme グラフィックテスト1のループ再生を使用しています。
一般的な3スロット占有空冷GPUクーラーを搭載したRTX 3080グラフィックボードの代表として、今回のAIO水冷化の素体にもなったPalit GeForce RTX 3080 GamingProを参考にすると、TimeSpy Stress Test中のGPU温度は72度、ファン速度は1900~2000RPMに達しています。TGP300W超のグラフィックボードのGPU温度やファン速度としては標準的な数値です。
一方で、Alphacool Eiswolf 2 AIOによって簡易水冷化したRTX 3080はというと、GPU温度は最大でも57度以下に収まっています。PCケースフロントの3基の120mmファンをそのままラジエーター冷却ファンにしているので、1900~2000RPMで動作する空冷GPUクーラーがそのままなくなって静音化し、GPUは15度も冷えるという結果です。
GPUホットスポット温度についても空冷クーラーでは最大86度に達していますが、Alphacool Eiswolf 2 AIO搭載RTX 3080なら最大69度に収まります。
空冷GPUクーラーと比較すると抜群の冷え具合ですが、DIY水冷用フルカバー水冷ブロックをベースにしていることを考えると40度台で運用できるくらいの冷え具合を予想していたので、そこは少し物足りない結果でした。
Alphacoolはフルカバー水冷ブロックのメーカーとしては後発なのでフルカバー水冷ブロックの冷却性能が低めなのか、もしくは組み込みポンプのDC-LT 2がDIY水冷パーツで構成される水路に対して非力なのが原因かもしれません。
近年のGPUは運用上は十分に低いGPU温度である40~70度以下であっても、GPUが冷えるほど高コアクロックで動作するので、GPU温度が50度台に収まるAlphacool Eiswolf 2 AIO搭載RTX 3080は一般的な空冷GPUクーラーのオリファンモデル(同じコアクロック設定なら)よりも高いコアクロックで動作し、フレームレートも実際に高くなります。
またグラフィックボードのAIO水冷化はVRAMなど周辺回路の冷却に対しても効果を発揮します。RTX 30シリーズの上位モデルに採用されているGDDR6Xメモリチップは高速な反面、発熱が大きいことでも知られており、一般的な空冷GPUクーラーだとGPUコアは70度以下で冷えていても、VRAMチップは90度台ということも少なくありません。
Palit GeForce RTX 3080 GamingProもやはりストレステスト中のVRAM温度は90度を上回るのですが、Alphacool Eiswolf 2 AIO搭載RTX 3080であればVRAM温度は20度以上も低下し、70度台に余裕で収まります。
Alphacool Eiswolf 2 AIO RTX 3090/3080 レビューまとめ
最後にAIO水冷キット「Alphacool Eiswolf 2 AIO - 360mm RTX 3090/3080 with Backplate (Reference)」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- RTX 3080やRTX 3090を水冷化できるAIO水冷キット
- 水路は組み立て済み、クーラントも充填済み
- GPUクーラーの換装だけでグラフィックボードを簡単にAIO水冷化できる
- リファレンス基板をベースにして幅広いRTX 3080/3080Ti/3090のAIBモデルに対応
- TGP300W超のRTX 3080をGPU温度 50度台で運用可能
- VRAM温度は空冷GPUクーラーと比較して20度以上も冷える
- AIO水冷キットの国内価格は税込み3.7万円程と高価
- チューブの中間にあるクイックリリースフィッティングがかさばる
AIO水冷キット「Alphacool Eiswolf 2 AIO - 360mm RTX 3090/3080 with Backplate (Reference)」を使用すれば、リファレンス基板ベースのRTX 3080/3090オリファンモデルを簡単に水冷グラフィックボードへと換装できます。
TGP300W超のグラフィックボードはPCケースに組み込む実用環境ではどうしてもGPUクーラー冷却ファンが高速で動作し、ファンノイズも大きくなりがちですが、360mmラジエーターで放熱するAlphacool Eiswolf 2 AIOなら、3基の120mmファンを1200RPM以下のゆっくりなファン速度で回すだけで、空冷GPUクーラーよりも10度以上も冷やすことが可能です。
またRTX 3080やRTX 3090に採用されているGDDR6Xメモリは発熱が非常に大きいのですが、AIO水冷GPUクーラーに換装すれば空冷GPUクーラーと比較して20度以上も温度を下げることができます。
AIO水冷GPUクーラーを標準で搭載したグラフィックボードは各社ハイエンド製品なので入手性が低いという難点がありますが、「Alphacool Eiswolf 2 AIO - 360mm RTX 3090/3080 with Backplate (Reference)」はZOTACやPalitといった国内でも安価かつ入手性の高いメーカーのベースラインモデルに対応しているところも魅力です。
以上、『Alphacool水冷キットでRTX 3080を水冷化』でした
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AIO水冷キット「Alphacool Eiswolf 2 AIO」を使用してGeForce RTX 3080を水冷化レビュー。
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) September 30, 2021
AIO水冷クーラーに換装する手順や、水冷化による冷却性能・静音性の向上について徹底解説。https://t.co/rJ3TJM6Z62 pic.twitter.com/dgq2Y0XMvV
・簡易水冷化GeForce RTX 30搭載G-Master Hydroシリーズの販売ページへ
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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再充填も考えられているのも好きです。
サーマルパッドが最初から切り分けられるようになったんですね。