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Core Ultra 9 285KなどIntel Core Ultra 200シリーズCPUに対応するZ890チップセット搭載マザーボードとしてASUSからリリースされた、80A対応Dr. MOSで構成される16フェーズの堅牢VRM電源を搭載し、PCIEスロットのロック解除スイッチ PCIe Slot Q-Releaseにも対応する高コストパフォーマンスモデル「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」をレビューします。
「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」はサイコム製ゲーミングBTO PCのG-Master Spear Z890において標準価格のまま、上位MBがデフォルト設定のG-Master Hydro Z890 Extremeなら逆に値下げでカスタマイズから選択可能なマザーボードです。
高コストパフォーマンスを重視したZ890マザーボードでも、Intel Core Ultra 9 285Kなど高性能な反面、消費電力も大きくなる上位モデルを安定して運用でき、拡張性も十分なのか徹底検証していきます。
ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W レビュー目次
1.ASUS Z890 AYW GAMING WIFI Wの外観・付属品
2.ASUS Z890 AYW GAMING WIFI Wの基板上コンポーネント詳細
3.ASUS Z890 AYW GAMING WIFI Wの検証機材
4.ASUS Z890 AYW GAMING WIFI WのBIOSについて
5.ASUS Z890 AYW GAMING WIFI WのOC設定について
・By Core Usage倍率によるOCについて
・VFカーブOC電圧設定や電力制限について
・メモリのオーバークロックについて
・その他のOC設定やTipsについて
6.ASUS Z890 AYW GAMING WIFI Wの動作検証・OC耐性
7.ASUS Z890 AYW GAMING WIFI Wのレビューまとめ
【2024年12月05日:初稿】
レビュー記事初稿を公開、BIOS:1005で検証
製品公式ページ:https://www.asus.com/jp/motherboards-components/motherboards/others/z890-ayw-gaming-wifi-w/
【機材協力:サイコム】
ASUS Z890 AYW GAMING WIFI Wの外観・付属品
まず最初にASUS Z890 AYW GAMING WIFI Wの外観と付属品をチェックしていきます。「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」のパッケージは一般的なN式箱で、蓋を開くと上段にはマザーボード本体が収められており、下段には各種付属品が収められた小分けパッケージが入っていました。
ASUS製のマザーボードなので定評のある詳細日本語マニュアルが付属している印象ですが、近年のSDGs的にマニュアル冊子類が削減されており、簡易マニュアルのみ、詳細マニュアルは公式サポートページからPDFファイルをダウンロードする形です。ドライバメディアもないので、ドライバ類も公式サポートページから。
組み立て関連の付属品として、SATAケーブル2本、M.2 SSD用スペーサーラバーパッド、WiFiアンテナが付属します。
マザーボード全体像は次のようになっています。
「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」はATXフォームファクタのマザーボードです。
「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」は同社エントリークラス PRIMEシリーズのようなホワイトを基調としたカラーリングですが、マザーボード基板自体もホワイトカラーなのが見た目において非常に特徴的です。
最近はPCケースから内部パーツまでホワイトで統一するゲーミングPCも流行っているので、そういうビルドにも最適です。
「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」のリアI/Oカバーは大型VRM電源ヒートシンクとプラスチック製カバーが半々という見慣れない構造です。
CPUソケットの左側と上側はいずれも巨大かつフィンカットが施されたヒートシンクが採用されており、特に左側はリアI/Oに覆い被さる部分も含めて全てアルミニウム製ヒートシンクです。
ヒートパイプはありませんが、2つのヒートシンクはサーマルパッドを介して接することで、熱をヒートシンク全体に分散し、VRM電源回路を均等に冷却できます。
マザーボード上側も下側同様にホワイトやシルバーを基調としたカラーリングです。プラスチック部分には中央に透明窓があって下の基板が覗いて見えるところがユニークです。
「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」はライティング制御機能 ASUS AURA Syncに対応しています。
マザーボード備えつけのLEDイルミネーションはありませんが、マザーボード上にはライティング制御に対応したARGB対応VD-G型3PIN LEDヘッダーが3基実装されています。
「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」はメインストリーム向けかつ、どちらかというとコストパフォーマンスを重視したエントリークラスのゲーミングマザーボードながら、16(12+1+2+1)フェーズの堅牢なVRM電源が実装されています。
ハイサイド/ローサイドMOS-FETとドライバICをワンパッケージし、低発熱で定評のあるDr. MOSをVRM電源回路に採用するのは高性能マザーボードでは定番ですが、「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」には16フェーズ全てに80A対応Dr.MOSが使用されています。
「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」のVRM電源回路に使用されている80A対応Dr.MOSはAlpha and Omega Semiconductor (AOS、AOSMDなど)製のAOZ53071QI(チップ上の刻印はBFN0)です。
PWMコントローラーは低発熱かつ安定した電力供給ができるようにASUSが独自にチューニングし、OCでは挙動をユーザーが細かく設定できるDIGI+ VRMに対応するASP2442GQWです。
MOSFETについて少し補足すると、紛らわしいのですが”BFN0”というチップ刻印のDr. MOSはAOSから60A対応のAOZ5317NQIもあり、ASUSのIntel 600/700マザーボードでも採用されていました。
60A対応品もピーク値で80Aに対応するのでスペック詐欺では?と一部で話題になったようですが、「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」に採用されているのはちゃんと80A対応品であるAOZ53071QIのはずです。
最大で24コアとなるIntel Core Ultra 200SシリーズCPUを組み合わせても安定した大電力の供給が行えるように、「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」にはEPS電源端子として8PIN×2が設置されています。700W以下のメインストリーム電源ユニットではEPS端子が1つしかないものもあるので組み合わせて使用する電源ユニットには注意が必要です。
またProCoolと呼ばれる設計のEPS電源コネクタは、低インピーダンスなソリッドピンによってホットスポットの発生を抑制します。
「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」には一体型リアI/Oバックパネルも採用されています。PCケースにパネルを装着する作業は固くて装着し難かったり、忘れてしまうこともあるのでマザーボードに統合されているのは嬉しい機能です。
以下USB規格に関する説明がありますが『USB3.2 Gen2 = USB3.1 Gen2』、『USB3.2 Gen1 = USB3.1 Gen1 = USB3.0』と考えて基本的に問題ありません。
リアI/Oには最新のUSB3.2 Gen2規格に対応した3基のUSB Type-A端子と1基のType-C端子が設置されています。Type-Cポートについては20Gbpsの高速通信が可能なUSB3.2Gen2x2にも対応しています。その他に4基のUSB2.0端子も実装されています。
有線LANには近年ではWi-Fi 6E/7の無線LANルーターにも搭載が増えている2.5Gb LAN(Realtek RTL8125D)が搭載されています。
さらに現在主流なWi-Fi 6に対応したMediaTek MT902コントローラーによる無線LANも搭載しています。
接続規格としてはWi-Fi 802.11 a/b/g/n/ac/ax、2.4/5GHz/6GHzトライバンド、最大通信速度2.4Gbps、Bluetooth 5.3に対応しています。リアI/Oには無線モジュールのアンテナ端子が設置されているので付属のアンテナを接続できます。
「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」に搭載されているネットワーク機器のうち、有線LAN(Realtek RTL8125D)はWindows 11 24H2の標準ドライバで動作しますが、無線LAN(MediaTek MT902)は動作しません。
条件次第では問題になることもあるので詳しくはこちらの記事を参照してください。
「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」はUSB BIOS FlashBackに対応しています。
所定のUSB端子にBIOSファイルの入ったUSBメモリを接続して、オンボードボタンを押すとUSB BIOS FlashBack機能によってCPUやメモリなしの状態でもBIOSの修復・アップデートが可能です。
ASUS Z890 AYW GAMING WIFI Wの基板上コンポーネント詳細
続いて「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」のマザーボード基板上の各種コンポーネントをチェックしていきます。「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」はIntel Core Ultra 200SシリーズCPUに対応するマザーボードなのでCPUソケットは当然、Intel LGA1851です。
CPUソケットが異なるので第12~14世代Coreの旧CPUは使用できませんが、LGA1851とLGA1700のCPUクーラーマウントは共通なので、LGA1700対応CPUクーラーなら問題なく使用できます。
LGA1700登場から3年も経っているので、新しいCPUクーラーを購入する分には互換性が問題になることはないはずです。
なお、ASUSのIntel 600/700マザーボードではIntel LGA1700標準のCPUクーラーマウントホールに加えて、旧世代LGA1200/115X互換のマウントホールも併設されており、LGA1700対応マウント部品がないCPUクーラーも使用できましたが、最新のIntel 800シリーズマザーボードにはその機能はありません。
同互換機能を利用してASUS製Intel 600/700マザーボードで第12~14世代Coreにアップグレードした人は、今回はCPUクーラーも新たに用意する必要があるので注意してください。
LGA1851と同時にCPU固定用金具には”RL-ILM (Reduced Load-Independent Loading Mechanism)”、その名の通り、リテンション圧を軽減した新たなリテンションブラケットが導入されており、「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」にもRL-ILMが採用されています。
所謂、”CPU反り問題”については実害が存在するかというとエビデンスは怪しいです。せいぜい、ヒートスプレッダと接するコールドプレートが中央凸形状でないCPUクーラーで5度程度の差で冷却性能が下がるくらい、というのが筆者の私見です。Asetek OEMのAIO水冷などここ5年くらいの製品でちゃんと設計されたCPUクーラーなら中央凸なコールドプレートになっているはずです。
とはいえCPU形状が縦長になったことで従来よりも第12~14世代Core CPUに反りが生じやすいこと自体は事実なので、ワッシャーMODとかコンタクトフレームなどによるMBの保証が失効するような処置(逆に接触不良による動作不安定、メモリOCエラーといった悪影響も)をユーザーが自己責任でとる必要がなくなったのは素直に喜んでいいと思います。
「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」はシステムメモリの最新規格DDR5に対応しています。従来規格のDDR4と下方互換はなく使用できないので注意してください。
システムメモリ用のDDR5メモリスロットはCPUソケット右側に4基のスロットが設置されています。固定時のツメはマザーボード下側の片側ラッチとなっています。グラフィックカードを設置するPCIEスロットとは十分な距離があるのでメモリの着脱時に干渉の心配はありません。
Intel Core Ultra 200SシリーズCPUとIntel Z890などIntel 800シリーズマザーボードの環境は、従来のUDIMM(Unbuffered DIMM)規格のDDR5メモリに加えて、新規格 CUDIMM(Clocked Unbuffered)にも対応しています。
当然、今回レビューする「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」もCUDIMM対応です。
CUDIMMはクロック信号を補正するClocked Driverが追加されており、高速動作の安定性を向上させた新規格です。1.100Vの低電圧でも6400MHzの高速メモリ周波数が安定し、JEDEC準拠のスペックを満たすだけでなく、8000~9000MHz以上のメモリOCで従来のUDIMMよりも安定性を増しています。
グラフィックボードなどを設置するPCIEスロットは上から[N/A、x16、x16、N/A、x16、N/A、x16]サイズのスロットが設置されています。上段のプライマリグラフィックボードを2段目のスロットに配置することで、大型ハイエンド空冷CPUクーラーとグラフィックボードの干渉を回避しています。
3段目のx16サイズPCIEスロットはチップセット経由のPCIE4.0x1接続に接続されています。
5段目と7段目のx16サイズPCIEスロットはチップセット経由のPCIE4.0x4接続に接続されています。いずれも排他利用はありません。
ASUS Z890 AYW GAMING WIFI Wにも最近のトレンドとして2段目のx16サイズスロットには1kgを超える重量級グラボの重さに耐えるように、従来のプラスチックスロットよりも垂直方向の力に対して1.6倍、水平方向の力に対して1.8倍も強靭になった補強用メタルアーマー搭載スロットが採用されています。
大型空冷CPUクーラーを組み合わせた場合など、グラフィックボードを取り外す際にPCIEスロットの固定ラッチを解除するのが難しい、という場面に遭遇したことのある自作erは多いと思います
「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」はPCIEスロット固定ラッチの解除を簡単にする新機能 PCIe Slot Q-Releaseに対応しています。
グラフィックボードを装着するときはそのままPCIEスロットに差し込めばロックされ、取り外す時は横L字で上に伸びているレバーを押し込むとロックが解除状態になります。
レバーを押している間だけロックが解除されるのではなく、一度ロックを解除すれば、グラフィックボードを差し直すまでそのままです。内部の固定ツメが引っかかってロックは解除状態のままになるので、1kgを超えるような大型グラフィックボードでも両手で安全にを取り外しできます。
SATAストレージ用の端子はマザーボード右下に4基搭載されています。下写真で右と中央にあるSATA6G_1~4の4基はIntel Z890チップセットのコントローラーによる接続で、RAID0/1/5/10のハードウェアRAID構築にも対応しています。
「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」には高速NVMe接続規格に対応したM.2スロットが、CPUソケット下やPCIEスロットと並んで計4基設置されています。
M.2_1はCPU直結PCIE5.0x4レーンに接続されており、PCIE5.0x4接続のNVMe接続M.2 SSDに対応しています。
M.2_2とCPU直結PCIE5.0x4レーンに接続されており、PCIE4.0x4接続のNVMe接続M.2 SSDに対応しています。
M.2_3とM.2_4はチップセット経由PCIEレーンに接続されており、NVMe(PCIE4.0x4)接続のM.2 SSDに対応しています。M.2_4はSATA接続のM.2 SSDにも対応しています。排他利用はありません。
Intel Core Ultra 200SシリーズCPUではグラフィックボード等に使用するx16帯域に加えて、CPU直結のPCIEレーンとして、主にNVMe SSD用に使用されるPCIE5.0x4とPCIE4.0x4の2つが使用できます。
第12~14世代Coreでは追加のCPU直結PCIEレーンはPCIE4.0x4の1つだけだったので地味に嬉しいアップグレードです。SSD用の片方はPCIE4.0のままですが、競合AMDのRyzen 9000/7000シリーズCPUとほぼ同等の拡張性になりました。
・PCIE4.0/5.0対応NVMe M.2 SSDのレビュー記事一覧へ
「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」のM.2スロットにはM.2 SSD自体の固定にはネジを使用しない、最新版のM.2 Q-LATCHという独自の構造が採用されています。
従来版ではM.2 SSDが跳ね上がらないように抑えながらクリップを90度回す必要がありましたが、最新版のM.2 Q-LATCHでは上からSSDを押さえつけるだけで自動的にSSDがロックされます。外す時もラッチが開くように外に押すだけなので非常に簡単です。
「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」に実装された4基のM.2スロットには、M.2 SSDヒートシンクが設置されています。同ヒートシンクを使用することで、グラフィックボードなど発熱から保護し、M.2 SSDがむき出しの状態よりもサーマルスロットリングを抑制する効果が期待できます。
「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」のマザーボード右側には内部USB Type-Cヘッダー(正式名称はFront USB Type-E)が実装されており、帯域20GbpsのUSB3.2 Gen2x2に対応しています。
内部USB3.0ヘッダーもマザーボード右端と下端に2基実装されています。
マザーボード下側には2基の内部USB2.0ヘッダーが設置されています。
Corsair iCUEやNZXT CAM対応製品などUSB2.0内部ヘッダーを使用する機器も増えていますが、ASUS Z890 AYW GAMING WIFI Wであればそれらの機器も問題なく使用可能です。内部USB2.0が2基でも不足する場合はUSB2.0ヘッダー増設ハブの「NZXT INTERNAL USB HUB (Gen3)」や「Thermaltake H200 PLUS」がおすすめです。
「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」はコストパフォーマンス重視なマザーボードなので、オンボードサウンドのコーデックはRealtek ALC897です。
ROG STRIXなど上位ゲーミングマザーボードだとALC1220やALC4080などより上位のコーデックやディスクリートDACを搭載していたりしますが、Realtek ALC897でも実用的には十分な性能です。
最近ではUSB DACの選択肢も広いので、サウンド周りに不足を感じたら、USB DACを買い足す方向で検討すればいいと思います。
「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」はオーディオ出力として光デジタル(S/PDIF)を標準では搭載していません。
もう広帯域なオーディオコンテンツに対応できず、テレビ向けだとHDMI ARC/eARCに取って代わられつつあるものの、意外とユーザーの多い接続方法なので一応注意してください。
標準では対応する音声出力は非搭載ですがS/PDIF増設用の内部ヘッダーがマザーボード上に実装されています。PCIEスロットにS/PDIF端子を増設するブラケット(1スロットスペースのみ占有で、PCIEスロット自体は一切使用しない)をAmazon等で購入すれば増設できます。
冷却ファンや簡易水冷クーラーのポンプの接続用の端子はマザーボード上の各場所に計8か所設置されています。
これだけあれば360サイズなどの大型ラジエーターを複数基積んだハイエンド水冷構成を組んでもマザーボードのファン端子だけで余裕で運用可能です。
「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」にはCMOSクリアのためのオンボードボタンは実装されておらず、内部USB2.0端子の左上にあるジャンパーピンを使用してCMOSクリアを行います。
ケーブルの長い2PINスイッチをあらかじめ装着しておくのがオススメです。
「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」のリアI/Oに設置されたUSB Type-C端子はThunderbolt4やUSB4には非対応ですが、マザーボード下側にTB Header(ASUS独自の13PIN)が実装されており、同社製拡張カードを使用することで対応ポートを増設可能です。
ASUS Z890 AYW GAMING WIFI Wの検証機材
ASUS Z890 AYW GAMING WIFI Wを使用して検証機材と組み合わせてベンチ機を構築しました。ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W以外の検証機材は次のようになっています。
テストベンチ機の構成 | |
CPU | Intel Core Ultra 9 285K (レビュー) |
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36 (レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM x3 (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z5 CK F5-8400C4052G24GX2-TZ5CK (レビュー) DDR5 CUDIMM 24GB×2=48GB 8400MHz, CL40-52-52-134 G.Skill Trident Z5 RGB F5-7200J3646F24GX2-TZ5RK (レビュー) DDR5 UDIMM 24GB×2=48GB 7200MHz, CL36-46-46-115 |
ビデオカード | MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC ファンレス (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung SSD 990 PRO 1TB (レビュー) |
OS | Windows 11 Home 64bit |
電源ユニット | Corsair HX1500i 2022 (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
360サイズや240サイズなど120mmファンを複数搭載できるマルチファンラジエーターの簡易水冷CPUクーラーを使用するのであれば、「Noctua NF-A12x25 PWM」への換装もおすすめです。
「Noctua NF-A12x25 PWM」は、超硬質かつ軽量な新素材 Sterrox LCPの採用によってフレーム-ブレード間0.5mmの限界を実現させた次世代汎用120mm口径ファンとなっており、1基あたり3500円ほどと高価ですが、標準ファンよりも静音性と冷却性能を向上させることができます。
・Noctua NF-A12x25シリーズのレビュー記事一覧へ
ベンチ機のシステムストレージには「Samsung SSD 990 PRO 1TB」を使用しています。
Samsung SSD 990 PROは、PCIE4.0対応SSDで最速クラスの性能を発揮し、なおかつ電力効率は前モデル980 PRO比で最大50%も向上しており、7GB/s超の高速アクセスでも低発熱なところも魅力な高性能SSDです。 これからPCIE4.0対応プラットフォームの自作PCを組むなら、システム/データ用ストレージとして非常にオススメな製品です。
・「Samsung SSD 990 PRO 1TB」をレビュー。性能も電力効率もトップクラス!
CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で筆者も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
グリスを塗る量はてきとうでOKです。筆者はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
以上で検証機材のセットアップが完了となります。
ASUS Z890 AYW GAMING WIFI WのBIOSについて
ASUS Z890 AYW GAMING WIFI Wを使用した検証機の構築も完了したので動作検証とOC耐性のチェックの前にBIOSの紹介をします。(OSから日付調整する前にスクショを取っている場合、日付がおかしいですが無視してください。また内容的に差異のないものは過去の同社製マザーボードのBIOSスクリーンショットを流用しています。)
BIOSに最初にアクセスするとEZモードというグラフィカルな画面が表示されます。パッと見の見栄えは良いのですが詳細モードでないと詳細設定ができないので「F7」キーを押してサクッと「アドバンスドモード(Advanced Mode)」へ移るのがおすすめです。
F7キーを押すとアドバンスドモードという従来通りの文字ベースのBIOSメニューが表示されます。
Mainタブの「System language - English」と表記された項目のプルダウンメニューから言語設定が可能で日本語UIを選択できます。ASUSマザーボードは競合他社と比較してもBIOSメニューの日本語ローカライズの充実と正確さが魅力です。
BIOSメニュー起動時にEZモードか詳細モードのどちらを開くかは、起動タブのブート設定に配置されている「BIOS起動時のモード」の設定から選択可能です。
あと「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」のBIOSメニューは従来製品で一般的だった1024x768解像度に加えて、フルHDの高解像度UIにも対応しています。フルHDにすると文字がクッキリするので、各自のお好みで選んでください。
設定の保存とBIOSからの退出はトップメニュータブ最右端の「終了」から行います。その他のタブメニュー内で設定を行っていても左右カーソルキーですぐにタブを切り替えて退出可能です。
特定のブートデバイスを指定してBIOSから退出するBoot Override機能は「起動」タブメニューの最下段「起動デバイス選択」に配置されています。
BIOSのアップデート方法は、まず下から最新のBIOSファイルをダウンロード、解凍してUSBメモリのルートに解凍フォルダを置きます。
サポート:https://www.asus.com/jp/motherboards-components/motherboards/others/z890-ayw-gaming-wifi-w/helpdesk_bios
USBメモリを挿入したままBIOSを起動し、アドバンスドモードの「ツール-ASUS EZ Flash 3 Utility」でストレージデバイスからのアップデートでBIOSファイルを選択します。あとはガイドに従ってクリックしていけばOKです。
ブートとOSインストール周りについて紹介します。とはいってもASUS Z890 AYW GAMING WIFI Wのブート回りは下画像のように非常に簡潔にまとめられており初心者でも迷うことはないと思います。
OSのインストールも「Boot Option #1」に「UEFI:〇〇」というOSインストールメディアを設定して保存&退出でOKです。
「Boot Option #1」の下にスクロールしていくとブートデバイスを個別に指定して再起動できる「Boot override」もあるのでこちらから、同様に「UEFI:〇〇」というOSインストールメディアを選択してもOKです。
BIOSのアップデートやWindows OSのインストール方法を紹介したところで、ASUS Z890 AYW GAMING WIFI WのBIOS機能で筆者が気になったものをいくつかチェックしていきます。
Intel Core Ultra 200SシリーズCPUはThread Directorと呼ばれるスケジューラーによってCPUコアに適切なタスク分けを行いますが、一部のゲームに対しては適切にスケジューリングができないことがあります。
それによる性能低下をWindows上ソフトウェアによって解決するため、第14世代CPUと同時に導入された「Intel APO(Application Optimization)」があり、通常、Intel Core Ultra 200SシリーズCPU環境では標準で有効化されています。
このIntel APOを利用する前提条件として、BIOS設定においてDTT(Dynamic Tuning Technology)と呼ばれる機能を有効にしておく必要があります。
「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」などASUS製Intel 800シリーズ マザーボードでは、詳細タブ内のThermal Configuration - Intel Innovation Platform Framework Configurationに”Intel Innovation Platform Framework”という設定項目として配置されています。
Intel APOの使用要件としては”DTT”のほうが呼称として有名ですが、ASUS製マザーボード内ではIPF(Intel Innovation Platform Framework)の名前で配置されています。
よく使うBIOS設定をお気に入りリストに登録する機能もあります。他設定同様に左右カーソルキーでお気に入りタブに切り替えます。
F3キーのショートカットで開くことができる設定ツリーマップからお気に入りリストに登録する設定を選択したり、登録した設定を削除できます。
最近、各社マザーボードに搭載されているOS起動後のドライバ自動ダウンロード機能についてはASUS製マザーボードではこれまでArmoury Crateという名前で設定が配置されていましたが、「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」ではより直感的に分かる”DriverHub”という名前に変わっています。
従来のASUS製マザーボードでは「モニタ(Monitor)」のタブページを開くと、温度・電圧モニタリングやファン制御設定が一気に列挙されていたのですが、「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」を含め最新のIntel 500シリーズマザーボードでは、温度モニター、ファン回転数モニター、電圧・電流モニター、Q-Fan設定の4つの小項目に分けられ、より扱いやすくなっています。
マザーボード上のコンポーネント詳細でも紹介した外部温度センサーについてはBIOS上からも温度をモニタリングできます。簡易水冷(AIO水冷)ポンプ専用の項目も用意されており、ASUS Z890 AYW GAMING WIFI Wであれば冷却機能周りは空冷・水冷ともにほぼ全てBIOS上でコントロール可能です。
モニタ - Q-Fan設定の順にアクセスするとファン制御設定ページが表示されます。
BIOS上のファンコントロール機能についてですが、CPUファン端子とCPU OPT端子はCPU温度依存のファンコントロールしかできませんが、その他のケースファン端子については、VRM電源温度などの各種温度ソースからファンコントロールが可能です。
ファン制御プロファイルを手動にするとファンカーブの制御ポイントを複数しているすることが可能です。
下限温度以下で冷却ファンを停止させる所謂セミファンレス機能を実現する「ファンの停止許可」の設定も用意されています。
ASUSマザーボードにもグラフィカルUIによるファンコントールの設定機能「Q-Fan Control」があります。
機能的には上で紹介したコンソールのファンコンと同じですが、グラフィカルUIでわかりやすく設定できるよという機能になっています。
2024年後半に発売されたAMD 800シリーズやIntel 800シリーズの最新マザーボードでは、温度・ファン速度デューティ比の一覧ボックスや、制御ソース温度も一緒に表示されるようになり、かなり使い易くアップデートされています。
「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」など最新のASUS製マザーボードには”BIOS Q-Dashboard”というマザーボード上に実装された各種ポートの名前と位置を確認できる機能もあります。
ファン端子の添え字の数字を見てもマザーボード上の位置が分からず、マニュアルと見比べることも多いので、マザーボード内で完結できるのは地味に嬉しいです。
ASUS Z890 AYW GAMING WIFI WのOC設定について
ASUS Z890 AYW GAMING WIFI Wを使用した場合のオーバークロックの方法を紹介します。なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。
「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」のオーバークロック設定は「Ai Tweaker」というトップメニューのタブページにCPUコアクロック、メモリ、電圧など各種設定項目が集約されています。
「Ai Tweaker」ページをスクロールしていくとCPUコアクロック、メモリ、電圧などの各種設定項目が表示されるので設定しやすいUIです。設定値を直接入力する項目でデフォルトの「Auto」に戻す場合は「a」キーを入力すればOKです。
ASUS製のIntel 800シリーズ マザーボードでは「Performance Preferrences」、「Intel Default Settings」からIntel公式仕様通りの動作プロファイル(電力制限、電流制限)を適用するかどうか設定できます。
Intel第13/14世代CPUで話題になった”Baseline”プロファイルとかに関連する設定です。
当サイトではCore-X登場当時、かれこれ7年ほど前からMBの初期設定は公式仕様通りにすべきと主張していたので、やっと時代が追いついた気がして感慨深く、そうなったのは嬉しい変化です。
旧世代のマザーボードにおいて、MB自動のOCを無効化し、Intel公式仕様通りの電力制限を適用するのに使用していたASUS Multicore Enhancementについても設定が残っています。(単コア最大動作倍率を全コア最大動作倍率に適用、というのが元々の機能)
Performance PreferrencesやIntel Default Settingsの設定が優先されるので、ASUS Multicore Enhancementは”Auto - Lets BIOS Optimaize”のままでもOKです。
また従来製品と同じく、Ai Overclock Tunerのプルダウンメニューから「Auto(自動)/Default」「Manual(手動)」「XMP (D.O.C.P)」の3つの設定モードが選択できます。
Autoモードは基本的な設定項目に関する自動or手動設定が可能な一般ユーザー向けの設定モードとなっています。
ManualモードはBCLK等の詳細なOC設定項目が解放される上級者向けの設定モードです。
XMP(D.O.C.P.)モードはManualモードベースですが、OCメモリに収録されたXMPプロファイルを適用できる設定モードになっています。
Intel Core Ultra 200SシリーズCPUはFoverosと呼ばれる3Dパッケージング技術を応用し、ベースダイ上にCompute Tile、SoC Tileなど複数のシリコンタイルを積層する構造が採用されています。
iGPUが実装されているGraphic Tileだけでなく、SoCタイルのD2DやNGUといったインターコネクト(fabric)類もOCの対象になっていて、設定できることも増えてやや複雑になっていますが、とはいえ、メインはやはりCompute Tileです。
Intel Core Ultra 200SシリーズCPUでもOCや電力制限の主な対象となるCompute Tileには前世代同様に高性能コアP-Coreと高効率コアE-Coreがあり、2種類の混成でCPUが構成されています。
またIntel Core Ultra 200SシリーズCPUには省電力性能を高める新機能としてDLVR(Digital Linear Voltage Regulator; デジタルリニア電圧レギュレータ)呼ばれるCPU内蔵VRが搭載されています。
P-CoreとE-Coreには個別に動作倍率を設定するところは従来同様ですが、DLVRが追加されたIntel Core Ultra 200SシリーズCPUでは各P-Coreや各E-Core Clusterに対して個別に電圧、V-Fカーブを設定できるようになっており、より柔軟に低電圧化や、昇圧による単コアブースト引き上げなどOCが可能です。
By Core Usage倍率によるOCについて
By Core Usage倍率によるオーバークロック、V-Fカーブによる低電圧化といった近年のIntel Core CPUのチューニングにオススメな設定について紹介します。近年のIntel製CPUはアクティブコア数(大きい負荷のかかっているコア数)に応じて最大動作倍率が変化するBy Core Usage倍率により、例えばCore Ultra 9 285Kなら最大5.7GHzのような単コア最大動作倍率で動作が可能になっており、高いシングルスレッド性能を発揮します。
優良コアが電圧を盛れば6GHzに迫るような高コアクロックで動作できる一方、同じコアクロックで全コアを稼働させることは相対的な不良コアの電圧特性的にも、CPUパッケージ全体での発熱的にも難しいので、シングルスレッド性能を損なう全コア一律のコアクロックを適用するマニュアルOCはベンチマークスコアを重視したOC競技的な設定となっており、現在の常用OCにおける主流はBy Core Usage倍率とV-Fカーブを組み合わせた手法です。
まずはBy Core Usage倍率によるコアクロックの設定について説明します。
By Core Usage倍率関連の基本的な話は共通なので、旧世代のCore i9 13900Kを例にしますが、13900KのPコアは1~8コアのアクティブコア数に応じて[58, 58, 55, 55, 55, 55, 55, 55]というBy Core Usage倍率が適用されています。(コアクロックはベースクロックBCLK、通常100MHzに対する倍率で決まる)
アクティブコア数が2コアまでであれば、そのアクティブコアは最大5.8GHzで動作します。所謂、単コア最大ブーストクロックのことです。(1コアではなく2コアまでなどの時もありますが、便宜上、単コアと呼びます)
一方、Cinebench R23のマルチスレッドテストやx264動画エンコードのように全コアへ大きな負荷がかかるシーンでは全コアが最大5.5GHzで動作できます。
なぜ”最大”と注釈つくかというと、特にCPU全体の発熱が大きくなる全コア負荷時については、長期間電力制限(Long Duration Package Power Limit; PL1)や臨界温度(Tj Max)、Thermal Velocity Boostによるコアクロック制限が適用されることがあるからです。
ゲーム性能に対しては全コア最大動作倍率が重要であり、逆に電力や温度といったCPU負荷自体は軽いという特長があります。
ゲームシーンで高い性能を実現しつつ、CPU負荷の大きいクリエイティブタスクではCPU Package PowerやCPU温度を制御ソースとして各自冷却環境(CPUクーラー)で冷やせる範囲内で最大の性能を発揮できるようにする、というパフォーマンスデザインです。
By Core Usage倍率とV-Fカーブ、Thermal Velocity Boost等のOC機能を組み合わせると、Cinebench R23のような高負荷なマルチスレッド性能はそのままに低電圧化で消費電力やCPU温度は大幅に下げ、同時にP-Coreの単コア最大ブーストクロックをOCしてシングルスレッド性能を伸ばすことができます。
さらにPCゲームのような軽い負荷であれば、P-Core Allの動作倍率を引き上げることでゲーム性能も向上も狙えます。
例えばBy Core Usage倍率による全コア最大動作倍率を57倍に引き上げ、Thermal Velocity Boostによって8コア負荷時にCPU温度 80度以上でコア倍率 -2倍の制限をかけるとCinebench R23のような高負荷ではP-Core All 5.5GHz動作となりますが、ゲーム中はP-Core All 5.7GHzにするような運用が可能です。
なぜBy Core Usage倍率を使用するのか前置きの説明が長くなりましたが、Core Ultra 200SシリーズCPUとZ890マザーボードにおけるOC設定に話を戻します。
「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」の場合は、Performance Core Ratioという項目のプルダウンメニューから、P-Core動作倍率の設定としてBy Core Usageを選択できます。
By Core Usage倍率の設定値は[58, 58, 57, 56, 56, 56, 55, 55]のようにバラけさせることも可能ですが後ほど電圧設定が面倒になります。
[58, 58, 56, 56, 56, 56, 56, 56]のように後述のTBM3.0で優先可能な2コアだけ単コア最大ブーストクロックを引き上げ、残りは同じ倍率に揃えるのがオススメです。
Intel Core Ultra 200Sシリーズのうち、Core Ultra 9/7のP-Coreは「Intel Turbo Boost Max 3.0 Technology (TBM3.0)」に対応しています。
TBM3.0は、CPUダイ上で最も電圧特性の良いコア(CPU個体ごとに異なる)を自動で選別し、非常に高い単コア最大ブーストクロックで動作させ、アクティブタスクへ優先的に割り当ててくれる機能です。
電圧特性が優良なコアは、Windows上で使用できるIntel公式のOCツール Extreme Tuning Utility (XTU)から確認が可能です。優良コアには星マーク(☆)が付いています。
P-Core別の最大動作倍率(Performance Core Specific Ratio Limit)は定格では上のXTUのスクリーンショットのように優良コアとその他で分けて設定されています。
TBM3.0によるタスク割り当てに非対応の場合、1~2コアを使用する少アクティブコアなタスクが最大5.8GHzの優良コアに割り当てられるか、最大5.5GHzのその他に割り当てられるかは完全にランダムとなり、性能にブレが生じます。
Intel Core Ultra 200SシリーズのうちCore Ultra 9/7はTBM3.0により少アクティブコアなタスクは優良コアが優先されるので、非優良コアの最大動作倍率(電圧特性)に引っ張られることなく、優良コアへより高い単コア最大ブーストクロックが適用することで、安定して性能を向上させることができます。
また、手動OCによってBy Core Usage倍率で設定する単コア最大ブーストクロックを定格よりも引き上げると、一般的にマザーボードBIOSの多くは全てのP-Coreの最大動作倍率をその値へ一律に引き上げます。
当然、優良コアとその他では安定動作できる最大動作倍率は異なるので、By Core Usage倍率を定格よりも引き上げる場合は、P-Core別の最大動作倍率も適切に設定する必要があります。
P-Core別の最大動作倍率を設定するには、Performance Core Ratioの下にあるSpecific Performance Coreの項目を開きます。
優良コアの最大動作倍率(Performance Core〇 Specific Ratio Limit)だけ単コア最大ブーストクロックに一致させます。
優良コアはWindows OS上のアプリケーション XTUを使用すれば確実に確認できますし、マザーボードメーカーにも依りますが、ASUS製の場合は”*”マークが付いているコアが優良コアです
その他のコアはBy Core Usage倍率のAll Core倍率に一致させればOKです。面倒でなければ、CPU個別のOC耐性に合わせて各自で個別に設定してください。
実のところ、By Core Usage倍率やSpecific Ratio Limitに関する設定は第13/14世代CPUと同じですが、Intel Core Ultra 200Sシリーズで新たに導入された機能「Granular Ratio」があります。
従来のIntel製CPUはベースクロック 100MHzに対して整数倍で、つまり100MHz単位で動作クロックが制御されていましたが、Intel Core Ultra 200Sシリーズでは16.67MHz単位というより細かな制御に対応しています。
16.67MHz単位でコアクロックを制御するGranular Ratioはそれだけ細かい制御を可能とする電力制御による省電力性能の向上だけでなく、性能面やOCにおいてもCPU電圧特性の限界まで高クロックを追求し、CPUのポテンシャルを最大限に発揮できるというメリットがあります。
By Core Usage倍率は従来通り、ベースクロックに対する整数倍率を設定しますが、実はSpecific Ratio LimitはGranular Ratioの16.67MHz単位で設定できます。
1つ注意点として、Granular Ratioによる端数を含む(100MHz単位でない)最大動作倍率を設定すると、Specific Ratio Limit自体は端数切り上げの設定値になります。
例えば、Granular Ratioで58.17GHzに最大動作倍率を設定した場合、Specific Ratio Limit自体は端数切り上げの59倍となり、コアクロック制限で最大58.17GHz動作になります。
Granular Ratioの端数込みで最大動作倍率を設定する場合、実際に58.17GHzで動作させるにはBy Core Usage倍率も端数切り上げ数値の59倍に設定する必要があります。また後述のAdditional Turbo Mode Voltageの参照値となる最大動作倍率も端数切り上げ数値になるので注意してください。
以上が高性能P-Coreの動作倍率設定ですが、高効率E-Coreも動作倍率の設定フォーマット自体は同じです。
Windows OSと協調するIntel Thread Directorで優先すべきタスクはP-Coreに割り当てられ、E-Coreの主な役割は、マルチスレッド性能を引き上げる補助コア、もしくは優先度の低いタスクのバックグラウンド処理用コアです。
E-Coreもアクティブコア数に応じたBy Core Usage倍率は設定が可能ですが、少ないアクティブコア数の時にブーストさせる意味があまりないので、OC設定を簡略化させる意味で、E-CoreはSync All Coreで一律に動作倍率を設定してしまうのがオススメです。
前述の通り、Sync All Coreで一律に設定するのがオススメですが、E-Coreは4コア1組のクラスターとして個別に動作倍率や動作電圧を設定することも可能です。P-Core同様に16.67MHz単位のGranular Ratioにも対応しています。
VFカーブOC電圧設定や電力制限について
続いて電圧設定について説明していきます。CPUには個体差がありますが、電圧特性に応じたCPUコア電圧とコアクロック(周波数)の比例関係を指定するV-Fカーブがそれぞれ収録されています。
CPUコア電圧モードを分類すると、まず定格モードがあり、定格のV-Fカーブに対して、周波数に依らず一定の昇圧or降圧を行うオフセットモード、さらに周波数に依らず一定の電圧を適用するオーバーライド(マニュアル)モードがあります。
Intel Core Ultra 200SシリーズCPUをBy Core Usage倍率でオーバークロックする時に使用するのがアダプティブモードです。
一例としてCore Ultra 9 285Kでは最小動作倍率800MHzから最大動作倍率5700MHz(a頂点)までのV-Fカーブが定格モードとして収録されています。
最大動作倍率を6000MHzにOCした時にV-Fカーブがどうなるかというと、5700MHz~6000MHzの間にはV-Fカーブがないので、Additional Turbo Mode Voltage(Adaptive Voltage Override)という電圧値を設定することで、OC最大倍率に対するb頂点が決まります。a頂点とb頂点の間は自動的に補間されます。
Intel第13/14世代CPUにおいてCPUコア(P-CoreとE-Coreの両方)とキャッシュ(Ring、L3キャッシュ)は全てGlobal Core SVID Voltageによって電力供給され、単一のV-Fカーブで動作していました。
Intel第13/14世代CPUにもSpecific Performance/Efficient Coreの項目から個別に電圧を設定できたので紛らわしかったのですが、この個別コア電圧設定で動作するのは、そのコアだけがアクティブな状態の時に限定されます。
第13/14世代CPUと大きく異なる点として、Intel Core Ultra 200SシリーズCPUにはDLVR(Digital Linear Voltage Regulator; デジタルリニア電圧レギュレータ)呼ばれるCPU内蔵VRが搭載されています。個別P-Core 、個別E-Core Cluster、iGPU、SoCにはそれぞれ専用のDLVRがあります。
Core i9 Ultra 285Kの場合、8個のP-Coreと4個のE-Core Clusterにはそれぞれ専用のDLVRがあり、マザーボードVRMから供給されるVccIA電圧を共通のソースとして、SVIDプロトコルによってリクエストされた電圧を各DLVRが対応するコアへ供給します。
Intel Core Ultra 200SシリーズCPUと800シリーズ マザーボード環境では、DLVR介して各コンポーネントに電圧を供給するRegulation Modeが既定設定です。
DLVRを素通ししてMB VRMから直接電圧供給するPower Gate Modeもありますが、LN2極冷OCのような特殊なOC用なので無視してOKです。
ASUS製マザーボードにおいてActual VRM Core Inpute VoltageはMB VRMからDLVRに供給される電圧なので、基本的にここも触る必要はありません。
「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」ではPeformance Core DLVR VoltageからAdaptive Modeを選択することで、P-CoreのAdditional Turbo Mode Voltageを設定できます。
Efficient Core、Ringなど各コンポーネントに対してDLVR Voltageの設定項目があり、Intel Core Ultra 200SシリーズCPUでは全てを個別に設定できます。
上のようにPeformance Core DLVR Voltageの項目からAdditional Turbo Mode Voltageを設定すると、全てのP-Coreに対して一律で同じAdditional Turbo Mode Voltageが適用されますが、CPU動作倍率の設定で紹介したSpecific Performance Coreからであれば、各P-Coreに対して、異なるAdditional Turbo Mode Voltageを設定することも可能です。
以上で基準となるV-Fカーブが決まったので、続いてV-Fカーブによる低電圧化を行います。
Intel Core Ultra 200SシリーズCPUではV-Fカーブ(動作周波数と動作電圧の関係)を細かく調整できます。P-Coreだけでなく、E-CoreについてもVFカーブの設定が追加されています。
「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」ではV/F Point Offsetの名前で同設定が配置されています。
V/F Point Present ModeをAll Core Modeに切り替えると全てのP-Coreに対して一律で設定を適用します。
CPU個体毎に異なる各周波数のストック電圧に対して+/-のオフセット電圧を設定できます。
Core Ultra 9 285Kの場合は800MHz、2000MHz、3000MHz、4800MHz、5300MHz、5500MHz、5600MHz、5700MHzに対してmV単位でコア電圧オフセット値を指定できます。
8番と同じく5700MHzになっている9番のV-Fポイントについては標準では使用せず、Specific Performance Core Ratio Limitで既定最大値(58倍)より大きく設定した場合にOC最大倍率のV-Fポイントになります。
V/F Point Present ModeをPer Core Modeにすると結構面倒なことになりますが、個別P-Coreに対して、異なるV-Fカーブオフセットの設定も可能です。
ASUS製マザーボードでは電力制限や電流制限に関する設定はInternal CPU Power Mnagementの中に配置されています。
By Core Usage倍率でオーバークロックを行う場合は、IccMaxを定格設定値よりも引き上げてください。電力制限や臨界温度と同様、高負荷時にコアクロック低下の原因になります。
MB初期設定でIccMaxもCPU定格値を適用する理由にもなった第13/14世代CPUにおける動作不安定性問題はCPUマイクロコードバグによる過剰電圧が原因だったので、Intel Core Ultra 200SシリーズCPUでOCする場合はUnlimited ICCMAXの設定から無制限にしても特に問題ないと思います。
とはいえ無制限にするのが気になる人は、CPU Core/Cache Current Limit Maxで特定値を指定できるので、定格設定値と見比べてIccMaxがマルチスレッド負荷時のボトルネックにならない数値を設定してください。
By Core Usage倍率によるオーバークロックで全コア最大動作倍率も引き上げている場合は、電力制限や臨界温度を使用して、高負荷時のCPUコアクロックに制限をかけ、CPU温度や消費電力を下げます。
CPU電力詳細設定には「瞬間許容電力制限値(Short Duration Power Limit、PL2)」、「許容電力上限値(Long Duration Power Limit、PL1)」という2つの電力制限機能があり、電力制限がかかる閾値(単位はW)と電力制限がかかるまでの時間を設定できます。
電力制限がかかるとCPU Package Powerがその指定電力内に収まるようにコアクロックに制限がかかります。
CPU温度が一定以上(臨界温度, Tj Max)に達した時にCPUコアクロックを下げる、所謂、サーマルスロットリングが発生する閾値を指定するのがMaximum CPU Core Temperatureです。
Tj MaxはIntel Core Ultra 200SシリーズCPUでは一般的に105度に設定されています。基本的には上記のPL1/PL2の電力制限でCPUクーラーの性能に応じたコアクロック制限をかけ、Tj MaxはCPUクーラーに故障が発生した時のセーフティ的な使い方オススメです。
「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」はThermal Velocity Boostの設定に対応しています。
Thermal Velocity Boostはコアクロックを上昇させる機能のような名前ですが、実際には、By Core Usage倍率に対して、TVB Ratio Clippingという設定によってCPU温度が閾値以上の時に動作倍率を-1倍など設定値に応じて引き下げます。
一定温度以下であれば非常に高い単コア最大ブーストクロックが動作するコアがある、ゲーム(低温)とクリエイティブタスク(高温)で全コア最大動作倍率をそもそも切り替えたい、という時に使用する機能です。
Overclocking TVBをEnabledに変更することで、OC TVB Configuratiion Limitという項目が表示され、Thermal Velocity Boostの設定値を任意に変更できるようになります。
Thermal Velocity Boostによる動作倍率制御方法として、アクティブコア数に対して設定するPer P-Core Groupに加えて、Intel Core Ultra 200SシリーズCPUでは新たに、P-Core個別に設定するPer CPP Moduleが追加されています。Bothを選択すれば両方とも設定できます。
Per P-Core GroupとPer CPP ModuleのどちらのTVB制御モードもアクティブコア数/各P-Coreに対して閾値温度/ネガティブオフセット倍率のセットを2種類ずつ設定できます。
Intel Core Ultra 200SシリーズCPU特有の注意点として閾値温度は設定値よりも5度高い温度になるようです。55度で設定した場合、60度以上で設定したネガティブオフセット倍率が適用されます。
なお閾値温度が参照する温度はCPU Package全体の温度ではなく、Per P-Core GroupとPer CPP ModuleのどちらでもP-Core個別の温度とのこと。
Pコア毎、アクティブコア毎に個別に設定するのが面倒であれば、OC TVB Ratio Item ModeをAll Core Modeにすることで一律で同じ設定を適用できます。
Intel Core Ultra 200SシリーズCPUは高効率コアE-Coreがアーキテクチャ上、AVX-512に対応していないので、P-Coreも含めたCPU全体としてもAVX-512に非対応です。
元々は発熱が非常に大きいAVX-512に対応するために用意されていた設定ですが、「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」でもAVX2実行時の発熱を低減する方法として、従来の倍率動作オフセットに加えて、Voltage Guardband Scaleと呼ばれる電力制限に近い機能を使用できます。
Digi+ VRMという項目の中にロードラインキャリブレーションの設定も配置されています。
Intel Core Ultra 200SシリーズCPUはMB VRMとCPUコアの間にDLVRがありますし、最近のCPUはストック状態で限界近くまでチューニングされているので、LN2極冷等の極端なOCでもない限り、Auto設定のまま放置で良いと思います。
一応少し補足すると、ロードラインキャリブレーションはCPU負荷時の電圧降下を補正してOCを安定させる機能です。
補正の強度としてLevel 〇で何段階か用意されています。Levelの添え字の数字が大きくなるほど電圧降下の補正は強くなり、OCは安定しやすくなりますが発熱も大きくなります。また強い補正では瞬間的に電圧のスパイクも生じるのでCPUにダメージが蓄積しやすいです。手動で設定する場合は真ん中あたりから始めて安定する設定値を模索していくのがおすすめです。
メモリのオーバークロックについて
メモリのオーバークロックについても簡単に紹介しておきます。メモリの性能について簡単に言うと「動作クロックが高く」「タイミングが小さい」ほど性能は高くなります。
そのためメモリOCを手動で行う手順を簡単にすると「電圧を上げて動作可能なクロックを探し」、「そのクロックにおいて正常に動作する最小のタイミングを探る」という2つの手順を繰り返すことになります。
なお、 メモリOCではPOSTすらクリアできずBIOSに到達できないことも少なくありません。メモリ設定を初期化できるようにCMOSクリアの手順を事前に確認しておいてください。
Intel XMPやAMD EXPOのOCプロファイルによるメモリOCは上の手順によるOC選別をメーカー側がすでに行い動作確認をしているので、メーカーが動作確認を行ったOCプロファイルを適用するだけで簡単にメモリをオーバークロックできます。
「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」はIntel環境に最適化されたXMP対応メモリだけでなく、AMD EXPO対応メモリのどちらでもOCプロファイルによるメモリOCが可能です。
ASUS Z890 AYW GAMING WIFI WなどASUSマザーボードでは、メモリに収録されたAMD EXPOプロファイルからIntel製CPU環境でも使用可能なメモリOCプロファイルを自動生成する機能 D.O.C.Pがあります。
「Ai Overclock Tuner」から「XMP (D.O.C.P)」モードを選択することで、自動生成されたOCプロファイルによるメモリOC設定の適用が可能です。
「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」などASUS製Z890マザーボードではメモリOCプロファイルの適用に”XMP (D.O.C.P) 1”と”XMP (D.O.C.P) 2”の2つのモードがあります。
XMP 1では30-38-38-90のような主要タイミングのみが適用され(その他は全てマザーボードによる自動設定を適用)、XMP 2ではその他のサブタイミングもOCプロファイルの通りに適用されます。
Intel製CPUとIntel XMP対応メモリのような組み合わせであればサブタイミングまで適用される”XMP 2”で問題ありませんが、異なる組み合わせの場合は”D.O.C.P 1”が安定しやすいようです。
メモリ周波数は「DRAM周波数(DRAM Frequency)」という項目のプルダウンメニューから動作クロック(倍率)を任意に設定可能です。メモリ周波数もBCLKに対する倍率で動作周波数が決まります。
XMP/EXPOを使用せず、「DRAM Frequency」の設定値が自動(Auto)になっている場合は、使用するメモリにSPD情報として収録されている動作クロック4800MHz、5600MHzなどのメモリ周波数およびタイミングによる定格動作となります。
Intel Core Ultra 200SシリーズCPUは動作周波数が高速なDDR5メモリだけをサポートするので、そのメモリコントローラー周波数(IMC周波数)は、メモリ周波数に対して1:2同期のGear2(メモリ周波数が6400MHzならメモコンは3200MHz)、1:4同期のGear4(メモコンが1600MHz)という2つの動作モードがあります。
Intel Core Ultra 200SシリーズCPUはIMCのOC耐性個体差にも依りますが、メモリ周波数 8400MHzくらいまでは1:2同期でも動作するようです。
メモリタイミングの個別打ち込み設定も可能です。
メモリタイミングを手動で設定する場合、基本的にはOCメモリ製品のスペックとして公表されることの多い、「CAS Latency (tCL)」、「RAS to CAS Read/Write (tRCD)」、「RAS Precharge (tRP)」、「RAS Active Time (tRAS)」の主要な4タイミングと、加えて「Command Rate:1 or 2」と「Refresh Cycle Time (tRFC)」の6つ以外はAutoのままでいいと思います。
高メモリクロックのOC時にWindowsの起動や軽い動作までは安定するものの、メモリストレステストでエラーが出る程度の状態であれば、「Write Recovery Time (tWR)」や「CAS Write Latency (tCWL)」をいくつか引き上げることで安定する可能性があります。
メモリの周波数OCを行う際は「DRAM電圧(DRAM VDD Voltage)」の項目を昇圧します。
DDR5メモリに対応したマザーボードでメモリ周波数を6000MHz以上にOCする場合はメモリ電圧を1.300~1.400Vに盛ってください。メモリをOCする場合は最初から1.350V以上にDRAM電圧を盛っておくのがおすすめです。
加えてメモリ周波数やIMC周波数をOCする時に調整した方がいい電圧設定として、DDR5メモリ対応マザーボードの場合は「VCCSA(CPU System Agent Voltage)」、「DRAM VDDQ(DRAM VDDQ Voltage)」、「CPU VDD2(Memory Controller Voltage)」の3つを調整すると良いようです。
DRAM VDDQとCPU VDD2は簡単にDRAM VDDと揃えればOKです。
その他のOC設定やTipsについて
Intel Core Ultra 200SシリーズCPUやZ890マザーボード環境における、その他のOC設定やTipsについていくつか紹介しておきます。Windows OS上でCPUのOC設定が正常に適用されているか確認する方法として、Intel純正アプリケーション Extreme Tuning Utility (XTU)を使用する人は多いと思います。
Intel Core Ultra 200SシリーズCPUとWindows 11 24H2など最新Windows環境ではVBS(Virtualization Based Security;仮想化ベースのセキュリティ)が標準で有効になるようで、特定の条件を満たさないとXTUがそもそも起動できません。
なおよく言及される設定として、Windows設定のデバイス セキュリティ内にある、コア分離、メモリの整合性をオフにしても、VBSそのものは無効にならず、下の状態ではXTUを起動できません。
『Windowsアップデートを最新にする』、『BIOSを最新バージョンにアップデートする』は分かり易いのですが、最後の『Undervolt Protectionを有効にする』が不慣れなユーザーには難しいと思います。
ASUS製マザーボードの場合、Ai Tweaker(もしくはExtreme Tweaker)タブ内のTweaker's Paradiseという項目内にUndervolt Protectionが配置されています。
「Performance Preferrences」、「Intel Default Settings」で定格動作プロファイルが適用されていれば、通常、Undervolt Protectionは有効になっていると思いますが、XMPのメモリOC等で勝手に無効化されることもあるので、XTUを使用する人はAutoから手動で有効に切り替えておいてください。
もしくは個人がゲーム用等でPCを使う分には仮想化ベースのセキュリティが必要かというと微妙です。
詳細タブのCPU設定に配置されている「Intel (VMX Virtualization Technology)」を無効に切り替えるとVBSそのものを無効化できるので、自己責任にはなりますが、XTU上で低電圧設定を行いたい場合(Undervolt Protectionを無効にする必要がある)には検討してみてください。
帯域ベンチ等で効果は確認できるものの、P-Core/E-CoreのOCに比べて実用性能への影響があるかというと微妙ですが、Intel Core Ultra 200SシリーズCPUではRing(キャッシュ)、SoCタイルのD2DやNGUといったインターコネクト(fabric)類もOCの対象になっています。
キャッシュ動作倍率は「CPUキャッシュ最大動作倍率(Max CPU Cache Ratio)」から変更可能です。CPUコアクロック同様にベースクロックに対する動作倍率でキャッシュの動作周波数を設定できます。
Intel Core Ultra 200SシリーズCPUではキャッシュ用のDLVRがあるので、Ring DLVR Voltageから個別に電圧を設定できます。
Intel第13/14世代CPUでは、CPUコアとキャッシュの電圧は共有されていたので、省電力化のため、Ring動作倍率がP-Core/E-Core動作倍率を上回らないようにRing Down Binという設定があり、Intel Core Ultra 200SシリーズCPUでも同設定は引き継がれています。
またOC時は同機能の無効化が推奨されており、Intel Core Ultra 200SシリーズCPUでも同じヘルプガイドがありますが、固有のDLVRがあるのでどちらでもいい気がします。
Intel Core Ultra 200SシリーズCPUではSoCタイルのD2DやNGUといったインターコネクト(fabric)類もOCが可能です。
OCするとAIDA64のメモリ・キャッシュベンチマークで帯域幅の向上、遅延の低減は確認されていますが、 やはりP-Core/E-CoreやメモリそのもののOCに比べると実用的な効果はよく分からないというのが正直なところです。
Intel Core Ultra 200SシリーズCPUではD2DとNGUにも専用のDLVRがあるので、VNNAON Voltageから個別に電圧を設定できます。
「Ai Overclock Tuner」から「Manual」モードもしくは「XMP (D.O.C.P)」モードを選択するとベースクロック(BCLK)の設定項目が表示されます。
デフォルトのAutoでは100MHzに固定されていますが、設定値を直打ちすることで任意に設定が可能です。CPUコアクロックはBCLKに対する動作倍率で設定されるのでBCLK110MHz、動作倍率45倍の場合はコアクロック4.95GHz動作となります。ただしBCLKを使用したOCはかなり上級者向けなので通常はAutoか100MHzが推奨です。
メモリ、NGU、D2Dには別にSOC BCLK Frequencyという設定項目があり、CPUやキャッシュとは独立して異なるベースクロックを設定できます。
ASUS Z890 AYW GAMING WIFI Wの動作検証・OC耐性
BIOS周りの筆者的に気になるところの紹介はこのあたりにしてASUS Z890 AYW GAMING WIFI Wを使用した検証機で具体的に動作検証とOC耐性をチェックしていきます。「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」にCore Ultra 9 285Kを組み込んだ場合のBIOS標準設定における動作についてですが、P-Coreは最大57倍、全8コアで54倍の動作倍率になっており、CPUコア動作倍率は仕様値通りです。
電力制限についても、「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」の初期設定でPL1/PL2:253W、短期間電力制限時間Tau:56s、IccMAX:357Aなので、Power Delivery Profile:Performanceの定格設定通りです。
電力制限以外にもCPU動作に大きく影響する項目についてまとめました。
Turbo Boost Max 3.0はアクティブなタスクに対して単コア最大動作倍率など最も高速に動作している(電圧特性に優れた)コアを割り当てる機能です。
Thermal Velocity Boostは閾値温度以下においてブーストクロックを引き上げる機能と説明されていますが、機能の実装としてはBy Core Usage倍率に対してTVB Ratio Clippingという設定によってCPU温度が閾値以上の時に動作倍率を-1倍に(正確にはCPU毎に設定された倍率に)引き下げるという形になっています。
AVX Voltage Guardband Scaleは該当するAVX命令実行時のコア電圧を調整する機能です。0.00~2.00の範囲内で設定し、定格設定は1.00です。1.00以下では低電圧化、1.00以上では高電圧化します。(マザーボードに依っては128を基準に0~255の整数値で設定)
低電圧化というよりもAVX実行時の電力制限(AVX限定のPL1)に近い動作なので、Scale=0.01など極端な設定でもクラッシュすることはありませんが、性能は低下するものと思われます。
ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W (BIOS:1005) Core Ultra 9 285Kの標準動作設定 |
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標準設定 | 定格 | |
Power Delivery Profile |
Performance | Performance |
単コア最大倍率 | 57 | 57 |
全コア最大倍率 | 54 | 54 |
Turbo Boost Max 3.0 | On | On |
TVB Ratio Clipping | 1C: NA 2C~8C: 70℃ -1x |
1C: NA 2C~8C: 70℃ -1x |
PL1, PL2, Tau | 250, 250, 56s |
250, 250, 56s |
IccMAX | 347A |
347A |
AVX Offset | 0 | 0 |
AVX Voltage Guardband | 1.00 |
1.00 |
備考 |
特になし |
続いてASUS Z890 AYW GAMING WIFI Wを使用した場合のCPUとメモリのオーバークロック耐性をチェックしてみました。
なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。
まずは「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」に24コア32スレッドCPUのCore Ultra 9 285Kを組み合わせて長時間負荷をかけ続けた時に、VRM電源周辺温度はどれくらいなのか、サーモグラフィーカメラ搭載スマートフォン CAT S62 PROを使用してチェックします。
CPUを定格で運用もしくはOC設定を適用した際のCPU温度やVRM電源温度を検証するストレステストについては、下記の動画エンコードを使用しています。
4K動画ファイル(4K解像度、60FPS、5.7GB)をソースとしてHandBrake(x264)を使ってエンコードを行います。
Core Ultra 9 285Kは24コア24スレッドのCPUなので、同じ動画のエンコードを4つ並列して実行し、30分程度負荷をかけ続けます。ストレステスト中のファン回転数は一定値に固定しています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から筆者の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。
まずは単純に「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」でIntel Default SettingsをPerformanceとして、Core Ultra 9 285Kを定格で動作させてみました。
メモリOC設定については検証機材メモリ「G.Skill Trident Z5 CK F5-8400C4052G24GX2-TZ5CK」に収録されたOCプロファイルを適用し、メモリ周波数 8400MHz、メモリタイミング 40-52-52-134、メモリ電圧1.350Vです。
上記の動作設定においてストレステスト中のCPU温度やCPU使用率のログは次のようになりました。
CPUクーラーにはFractal Design Celsius S36を使用し、冷却ファンNoctua NF-A12x25 PWのファン回転数は1500RPMで固定しています。
Core Ultra 9 285KはPower Delivery Profile:PerformanceでIntel公式仕様の通りに動作させた場合、電力制限はPL1/PL2:250Wですが、IccMAX:347Aの電力制限も効いてくるので、動画エンコードやCinebenchのような非常に重いマルチスレッド負荷に対してはPL1を少し下回るCPU消費電力で変化しながら推移していきます。
360サイズAIO水冷CPUクーラーのように十分に冷却性能の高いCPUクーラーを組み合わせれば、CPU定格の
電力/電流制限の範囲内なら臨界温度 105度以下で運用可能です。
電力/電流制限が効くので動画エンコードなどのフル負荷においてCPUコアクロックが全コア最大動作倍率に張り付くことはありませんが、「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」のVRM電源温度などマザーボード原因でスロットリングが発生することはなく、Core Ultra 9 285KをP-Core All 5.0GHz、E-Core All 4.4GHz程度の実動値で安定して動作させることができました。
上記の動作設定で動画エンコードを行った時のEPS電源経由のCPU消費電力は250~280W程度です。
Core Ultra 9 285Kの定格動作で負荷をかけるとEPS電源経由のCPU消費電力は250W以上に達しますが、「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」のVRM電源周りの温度をサーモグラフィーで確認したところ、70度以下に収まりました。
Intel Z890マザーボードの中では最安値クラスの4万円台でこの冷え具合には筆者も非常に驚きました。最上位CPUのCore Ultra 9 285Kであっても定格運用ならVRM電源周りがパッシブ空冷になるAIO水冷CPUクーラーとの組み合わせでも「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」は余裕です。
最後に「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」のメモリOC性能についてもチェックしておきます。
ASUS Z890 AYW GAMING WIFI Wの環境(BIOS:1005)のOC検証では検証機材メモリとして24GB×2枚組み48GB容量のCUDIMM DDR5メモリキット「G.Skill Trident Z5 CK (型番:F5-8400C4052G24GX2-TZ5CK)」を使用しています。
同メモリに収録されたOCプロファイルを適用するだけで、メモリ周波数 8400MHz、メモリタイミング 36-46-46-115が安定動作しました。メモリコントローラー周波数UCLKも1:2同期です。
Intel Core Ultra 200SシリーズCPUと一般的なx4メモリスロットのZ890マザーボードにおいて、CUDIMM DDR5メモリでは常用最速クラスのOC設定です。
上は新たにサポートされたCUDIMMのメモリOCですが、「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」はDDR5メモリで一般的なUDIMMにも対応しているので、UDIMMのメモリOC結果についてもいくつかチェックしていきます。
24GB×2枚組み48GB容量のDDR5メモリキット「G.Skill Trident Z5 RGB(型番:F5-7200J3646F24GX2-TZ5RK)」に収録されたOCプロファイルによって、メモリ周波数 7200MHz、メモリタイミング 36-46-46-115が安定動作しました。
x4メモリスロットの一般的なマザーボードかつ常用可能という条件においてUDIMM DDR5が達成可能な最速クラスのOC設定です。
Crucial DDR5 Pro Overclocking UDIMMシリーズの16GB×2枚組みで6400MHz OC対応モデル(型番:CP16G64C38U5B)についても検証してみました。
高性能OCメモリというとG.Skillがやはり有名で、筆者も自分のPCや各種検証機材として愛用していますが、Crucial DDR5 Pro Overclocking UDIMMシリーズはMicron純正メモリモジュール確定で高信頼性、入手性も高く、安価なので検討する人も多い製品だと思います。
16GB×2枚組み48GB容量のDDR5メモリキット「Crucial DDR5 Pro Overclocking(型番:CP16G64C38U5B)」に収録されたOCプロファイルによって、メモリ周波数 6400MHz、メモリタイミング 38-40-40-81が安定動作しました。
ASUS Z890 AYW GAMING WIFI Wのレビューまとめ
最後に「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、レビュー後の所感となります。良いところ
- ホワイト&シルバーのスマートなデザイン
- 80A対応Dr. MOSで構成された堅牢な16フェーズVRM電源
- 285K定格の200W超のCPU消費電力でもVRM電源温度は70度以下に収まる
- 24GB×2枚組みDDR5 CUDIMMでメモリ周波数8400MHz/CL40が安定動作
- 24GB×2枚組みDDR5 UDIMMでメモリ周波数7200MHz/CL36が安定動作
- 重量級グラボにも耐えるメタルアーマー採用PCIEスロット「SAFESLOT」
- PCIEスロット固定ラッチの解除を簡単にする新機能「PCIe Slot Q-Release」
- NVMe接続M.2スロットをマザーボード上に4基設置 (うち1基はPCIE5.0x4対応)
- 全てのM.2スロットに大型SSDヒートシンクを装備
- 2.5Gb有線LAを標準搭載(Realtek RTL8125D)
- Wi-Fi 6&Bluetooth5.3対応無線LAN(MediaTek MT902)を標準搭載
- USB BIOS FlashBackに対応
- 税込み4.8万円とZ890マザーボードでは最安値クラス(2024年12月現在)
- 無線LANはWindows 11 24H2の標準ドライバで動作しない
- CMOSクリアのハードウェアスイッチを非搭載
「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」はZ890マザーボード最安値クラスの安価製品ですが、80A対応Dr. MOSで構成された16フェーズVRM電源回路を搭載し、Core Ultra 200Sシリーズ最上位モデル Core Ultra 9 285Kの性能を定格運用で余すことなく引き出します。
ヒートシンク搭載かつPCIE4.0x4対応のNVMe SSD用M.2スロットを4基搭載し、2.5Gb有線LANやWi-Fi 6対応無線LANといった2024年現在主流規格なコネクティビティを備え、さらには同社新機能として好評を博しているPCIEスロット固定ラッチ解除スイッチ”PCIe Slot Q-Release”まで採用されています。
「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」は高コストパフォーマンスを重視したマザーボードながら、製品名 AYWの元になっている“As You Wish(あなたのお望みのまま)”の言葉通り、思い通りに組みたいゲーミングPCを構築する母体として必要十分+αな機能を備えており、Intel Core Ultra 200SシリーズCPUのゲーミングPCを検討しているユーザーにオススメできる製品です。
ASUS製マザーボードではお馴染みですがBIOSやマニュアルの日本語ローカライズ品質は主要4社の中でも随一となっており、BIOSのテキストベースUIの使い勝手も良好です。そういう意味でも「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」は初心者にも優しいマザーボードだと思います。
マザーボードのOC耐性を評価する上で重要なファクターになるVRM電源について、「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」は非常に優秀な性能を発揮しました。
「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」であれば市販のAIO水冷クーラーやDIY水冷など環境を選ばず、VRM電源周りは標準装備のまま、Core Ultra 9 285Kの定格設定を運用できます。
市販クーラーで最高クラスの360サイズAIO水冷でもCore Ultra 9 285KはCPU温度的に定格PL:250Wよりも電力を増やすのが難しく、OCの伸びしろはそれほど大きくありませんし、OC・電力制限解除しないならこれで十分です。
メモリOCについては、検証機材に使用しているCUDIMMのG.Skill Trident Z5 CK(F5-8400C4052G24GX2-TZ5CK)でメモリ周波数8400MHz、一般的なUDIMMのG.Skill Trident Z5 RGB(F5-7200J3646F24GX2-TZ5RK)でメモリ周波数7200MHzがOCプロファイルを適用するだけで安定動作しました。
入手性の高いCrucial DDR5 Pro Overclockingの6400MHz/CL38の低レイテンシOC等も安定動作しているので、現状、メモリOC回りで「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」に不足を感じることはないはずです。
以上、「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」のレビューでした。
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16フェーズの堅牢VRM電源を搭載、PCIe Slot Q-Releaseにも対応する高コストパフォーマンスモデル「ASUS Z890 AYW GAMING WIFI W」をレビュー。
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) December 5, 2024
Core Ultra 9 285Kや8400MHz OCメモリも安定して運用できるのか徹底検証https://t.co/PzZk9oGEP3 pic.twitter.com/Uc962a2wfH
ASUS Z890 AYW GAMING WIFI Wは自作PC用マザーボードとして非常に優れた製品ですが、冒頭で少し触れたように、サイコムのゲーミングBTO PCでもマザーボードとしてカスタマイズから選択できます。
ATXミドルタワーのゲーミングPCとして同社で定番のG-Master Spear Z890は標準価格のまま変更できます。MBや電源ユニットなど細部まで高品質パーツで構成されたゲーミングBTO PCをお探しなら、サイコムはオススメのBTO PCメーカーです。
・サイコム ゲーミングPC「G-Master Spear Z890」の販売ページへ
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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