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フルHD解像度をターゲットとする最新ミドルクラスGPUのGeForce RTX 4060 Tiと組み合わせるCPUとして、自作PCやゲーミングBTO PCの解説記事では『Core i5 14400(13400)で十分』、もしくは同CPUが最適と紹介されることが多いですが、本当にCore i5で十分なのか、Intel Core i7 14700とCPUボトルネックを比較してみました。
RTX 4060 TiでCPUボトルネックを比較
冒頭でも述べた通り、グラフィックボードをGeForce RTX 4060 Tiに統一して、Core i7 14700とCore i5 13400のCPUボトルネック(ゲーム性能)を比較していきます。
検証機材やCPUゲーム性能に関する概要といった基本的な内容は過去に作成した、RTX 4090を使用したCore i9 14900Kのゲーム性能比較や、RTX 4070 Ti SUPERにおけるCore i7 14700とCore i5のゲーム性能比較とほぼ同じなのでこちらを参照してください。
ちなみに、CPU(やシステムメモリのメモリ周波数)がボトルネックを確認するのに便利な指標として、Intelが自社GPUのドライバの評価のため導入した”GPU Busy”というメトリックがあり、フレーム解析ソフトCapFrameXを使用することで簡単に確認できます。

CPU別ゲーミング性能の比較には近年の高画質PCゲームから以下の18タイトルを使用しています。
CPUやメモリのゲーム性能への影響を確認しやすいタイトル(テストシーン)を抜粋していますが、見ての通り、メジャータイトルばかりです。
【フルHDとWQHD/4K】
- Assassin’s Creed Mirage (アサシン クリード ミラージュ)
- Cyberpunk 2077 (サイバーパンク2077)
- Shadow of the Tomb Raider
- Marvel’s Spider-Man Remastered
- The Witcher 3: Next Gen Update
- Hogwarts Legacy (ホグワーツ・レガシー)
- Baldur's Gate 3 (バルダーズ・ゲート3)
- STAR WARS Jedi: Survivor (ジェダイ:サバイバー)
- F1 2023
- Far Cry 6
- Tom Clancy's Rainbow Six Extraction
- Forza Horizon 5
- MONSTER HUNTER RISE : SUNBREAK
- Call of Duty: Modern Warfare II
- Overwatch 2 (オーバーウォッチ 2)
- Microsoft Flight Simulator
- ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON (アーマード・コア6)
- Starfield
まずはフルHD解像度で検証した15種類のゲーム、各タイトルについて平均FPSと1% Low FPSでそれぞれ、Core i7 14700とCore i5 13400の性能比率を算出しグラフにまとめました。
RTX 4060 Tiにグラフィックボードを揃えて、Core i7 14700とCore i5 13400を比較するとフルHD・ハイフレームレートではCPUボトルネックによって平均FPSと最小FPS(1% Low FPS)の両方で10%以上も性能差があります。
2024年現在、フルHD/144FPS+のゲーミングモニタは珍しくもなく、ミドルクラスGPUとはいえRTX 4060 TiはフルHD・ハイフレームレートをターゲットにした製品でもあるので、Core i5はやはり力不足に感じます。


なお、Baldur's Gate 3の最小FPS(1% Low FPS)でCore i7 14700がCore i5 13400よりも比較的に大きいマイナス値になっているのは、DirectX11かつCPU・GPUの組み合わせ、グラフィック設定やフレームレートなど特定の条件でマイクロスタッターが生じるせいです。
続いて、WQHD解像度や4K解像度で検証した11種類のゲーム、各タイトルについて平均FPSと1% Low FPSでそれぞれ、Core i7 14700とCore i5 13400の性能比率を算出しグラフにまとめました。
RTX 4060 Tiで4K解像度だとDLSSを使用してもフレームレートは60~100FPS程度になるので(4Kが難しい重いタイトルだとWQHDでもその程度のフレームレートに)、平均フレームレートは誤差程度の違いしか生じません。

一方で最小フレームレート(1% Low FPS)に注目すると、RTX 4060 TiでもCore i7 14700とCore i5 13400で10%程度の差が出るタイトルもあります。
同じGPUで最小フレームレートが低いということは瞬間的にCPUバウンドなレンダリングが挿し込まれるとスタッターが生じるので、似たような平均フレームレートでも体感的な映像の滑らかさには差が出る、というケースです。

『RTX 4060 TiにCore i5で十分』は本当か?
『RTX 4060 TiならCore i5 13400/14400で十分』と解説する記事や動画は多いですが(当サイトも)、実際に検証してみると、RTX 4060 TiのフルHD/ハイフレームレートではCore i7に対してCore i5では10~20%もCPUボトルネックで性能が低下するタイトルがありました。平均フレームレートが60FPS前後になる4KやWQHDの高解像度であれば、フレームレートが頭打ちになる形の影響は軽微ですが、1% Low FPSに注目するとスタッター(カクツキ)としてはやはりCPUボトルネックが現れます。
- RTX 3060、RTX 4060、RTX 4060 TiのGPU性能の差はそれぞれ+20%程度
- そもそもGeForce RTXの60番台はフルHD解像度(+ハイフレームレート)がターゲット
- フルHD・WQHDで144~240Hzのゲーミングモニタは2~5万円で買える
場合によってはCPUボトルネックで1ランク下のGPUまで性能が制限されることや、最近のゲーミングモニタ事情を考えると、性能的に言えば『RTX 4060 Tiとの組み合わせでさえCore i5 13400/14400では不十分』というのが正直なところで、『5~6万円程度のミドルクラスGPUには3万円程度のCPUが価格的にバランスが良い』という予算の都合でしかないというのが実態です。
また、今回の検証では筆者が独自に調査をしてCPUボトルネックが生じやすいタイトルでCPUバウンドなシーンを抜粋していますが、同じゲームでもシーンによってGPU負荷が変わりフレームレートが上下するように、CPUバウンドかどうかもシーンによって変わります。
タイトル毎に全てのシーンを解析できない以上(現実的に)、『CPUボトルネックが生じないと言われているタイトルが本当にそうである保証はない』という点も注意が必要です。
先日公開されたファイナルファンタジーXIV 黄金のレガシーのベンチマークソフトは5種類のテストシーンで構成されていますが、中盤の多数キャラが表示されるマップ戦闘シーンはCore i9 14900K&DDR5-5600の環境で150FPS程度と非常にCPUバウンドであるのに対して、序盤や後半はGPU性能に応じて300~600FPSにフレームレートが伸びます。

ファイナルファンタジーXIV 黄金のレガシーについてさらに補足すると、上で説明した通りベンチマーク内のシーン3とシーン4は非常にCPUバウンドで、RTX 4060 TiのフルHD・最高品質において、Core i5 13400はCore i7 14700より平均フレームレートが20FPS程度も低くなります。

他にも実ゲームの例を挙げると、Shadow of the Tomb Raiderのクワク・ヤク、Hogwarts Legacyはホグズミードのように、序盤はほぼGPUバウンドだけど、ゲームを進めていくとCPUバウンドなシーンが現れるというケースもあります。
シーンだけでなく特定のグラフィック設定、例えばSTAR WARS Jedi: Survivorのようにレイトレーシングを有効にすると60FPS前後でもCPUバウンドになることもあります。
またGPUバウンドについては単純にGPU負荷に応じて平均フレームレートが下がるので分かり易い(検証し易い)のですが、同様にフレームレートが頭打ちになるだけでなく、CPUバウンドは瞬間的にスタッター(カクツキ)が生じるような形でも現れます。
平均フレームレートやGPU Busy等のメトリックで該当シーンを探すのが難しいので、スタッターとして現れるCPUボトルネックは、さらに発見・検証の難易度が上がります。
下グラフはStarfieldの例ですが、Core i7 14700とCore i5 13400の平均フレームレートはほぼ同じですが、Core i7 14700のほうがフレームタイムは安定し、スタッターもありません。

CPUボトルネックについてまとめると次の通り、
- 同じゲームでも、CPUバウンドかどうかはシーンで変わる
- FPS頭打ちだけでなく、瞬間的なスタッター(カクツキ)としても現れる
- 多数のメジャータイトルでCPUボトルネックを確認できる
少なくとも片手で足りるようなゲーム・シーンでしか検証していない解説記事・動画のCPUボトルネック評価を信用するのは止めておいた方が良いと思います。
Core i5を選択し、ゲームのプレイ中にカクツキやフレームレートの低下を感じた時に”CPUボトルネックのせい?”とか、”Core i7にしておけばよかったかも”とか考えずに済むので、そういう意味でCore i7を選ぶほうが精神安定的にメリットがあります。Core i7 14700以上のCPUでカクツキやフレームレートが発生するようなら、ゲームやドライバの問題と割り切れますし。
グラフィックボードと違って性能が足りないからといって気軽に交換できないので、長く使うつもりであるほど、”心の平穏を買う”と思って、CPUを今選ぶなら最初からCore i7 14700以上の製品を選ぶのがオススメです。
今買うならCore i7&RTX 4070シリーズがオススメ
フルHD/ハイフレームレートがターゲットになるミドルクラスGPUのRTX 4060 TiやRTX 4060に、Core i5 13400/14400を組み合わせるという構成は、ミドルクラスのゲーミングBTO PC・自作PCとして定番スペックですが、CPUボトルネックの存在を前提にすると性能面で微妙です。60FPS前後ならFPS頭打ちにはならないものの、RTX 4060/Tiの性能を活かせないのでもったいないし、最新高画質タイトルだとスタッターの発生が心配になります。かといってミドルクラスGPUにCore i7を組み合わせるのも価格面でアンバランスです。
RTX 4060/TiとCore i5 13400/14400の組み合わせが全くダメというわけではありませんが、「RTX 4070すればよかった」とか「Core i7にすればよかった」とか、後々(割かし早い段階で)物足りなくなるのが予想できる組み合わせなので、あまりオススメできない、という感じです。
現在進行形で満足して使っている、という反論もありそうですし、筆者の感じるニュアンスをどう伝えたものか苦慮しているのですが……。
RTX 4060 TiとCore i5 14400FのゲーミングPCなら16~18万円くらいで購入できるのに対して、RTX 4070とCore i7 14700は22~25万円くらいなので予算は厳しくなるかもしれませんが、GPUとCPUの価格のバランスだけでなく、性能のバランスも良く、後悔のない選択ということなら、Core i7とRTX 4070シリーズの組み合わせがベストだと思います。

CPUはCore i7 14700Fに決め打ち、RTX 4070、RTX 4070 SUPER、RTX 4070 Ti SUPERの3種類を松竹梅で予算に合わせてという感じでしょうか。さらに予算に余裕があるならCPUを14700Kにするとか、GPUをRTX 4080 SUPERにするとかはお好みで。
以上、『RTX 4060 TiにCore i5で十分は本当か? CPUボトルネックを徹底比較』でした。

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GeForce RTX 4060 Tiとの組み合わせるCPUとして『Core i5 14400(13400)で十分』と紹介されることが多いですが、本当にCore i5で十分なのか、Intel Core i7 14700とPCゲーミングのCPUボトルネックを徹底比較。https://t.co/hpNTUcCISu
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) May 1, 2024
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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