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メタリックな光沢と鮮やかなARGB LEDでそのままでも光っても美しい水冷ヘッドへ搭載した、240サイズ簡易水冷CPUクーラー「Fractal Design Lumen S24(型番:FD-W-L1-S2401)」をレビューします。
代理店公式ページ:https://www.ask-corp.jp/products/fractal-design/cpu-cooler/lumen.html
製品公式ページ:https://www.fractal-design.com/ja/products/water-cooling/lumen/lumen-s24/lumen-s24/
レビュー目次
1.Fractal Design Lumen S24の梱包・付属品
2.Fractal Design Lumen S24の水冷ヘッドと水冷チューブ
3.Fractal Design Lumen S24のラジエーターと冷却ファン
4.Fractal Design Lumen S24の検証機材・セットアップ
5.Fractal Design Lumen S24のファンノイズと冷却性能
6.Fractal Design Lumen S24のレビューまとめ
補足.空冷クーラーと水冷クーラーの違いについて
Fractal Design Lumen S24の梱包・付属品
まずはFractal Design Lumen S24の外観や付属品をチェックしていきます。240サイズなど大型ラジエーターを搭載する簡易水冷クーラーのパッケージはかなり大きいものが多いですが、「Fractal Design Lumen S24」はパッケージサイズ自体は必要最小限であるものの、長辺方向に開くパッケージが採用されており、開封スペースは若干広めに要します。
製品パッケージを開くと内容品に合わせた形のパルプモールドをスペーサーとして、CPUクーラー本体や各種付属品が収められていました。
マウントパーツを詳しく見ていくと、AMDプラットフォーム用のリテンションブラケットとIntel LGA1200用のバックプレートがあります。Intelプラットフォーム用のリテンションブラケットは水冷ヘッドに装着されています。
その他に、Intel LGA1200用スクリューピラー*4本、スクリューピラー固定用スペーサー*4個、Intel LGA1200用黒色プラスチック製スタンドオフ*4本、スプリング付きハンドスクリュー*4個、AMDプラットフォーム用フック、Intel LGA2066用スタンドオフスクリューとなっています。
Fractal Design Lumen S24には、冷却ファンを固定するための長ネジが4本×2セットで計8本、ラジエーターをPCケースに固定するための短ネジが4本×2セットで計8本が付属します。
「Fractal Design Lumen S24」には水冷ヘッドに接続するARGB対応VD-G型汎用3PIN LEDコネクタ変換ケーブルが付属します。
CPUクーラー本体を取り出すと、水冷ヘッドからラジエーターまで全体がビニールに包まれていました。
ラジエーターの放熱フィンは出荷前のメーカーによる梱包やユーザーが取り出し時に誤って握ってしまったりして潰してしまうことが多いので厚紙スリーブで保護されている配慮はありがたいです。
Fractal Design Lumen S24の水冷ヘッドと水冷チューブ
続いて「Fractal Design Lumen S24」の水冷ヘッド本体をチェックしていきます。「Fractal Design Lumen S24」の水冷ヘッドはシンプルな円柱形で余分なところのない洗練されたデザインです。丸みを帯びた天面プレートはプラスチック製ですが、一見して光沢のある金属のような質感で非常に高級感があります。
「Fractal Design Lumen S24」の天面プレートは水冷ヘッドの固定向きに合わせて90度回転させることもできます。
水冷ヘッドの円柱部分下側にはラバー被膜が施されマットな質感で、艶のある天面とのコントラストによっていっそう美しく感じます。
「Fractal Design Lumen S24」の水冷ヘッドには天面ロゴプレートの向きに合わせて、6時の方向にLEDケーブル接続用マイクロコネクタがあり、付属のLEDケーブルを接続できます。
「Fractal Design Lumen S24」の水冷ヘッドにはアドレッサブルLEDイルミネーションが内蔵されています。発光するというよりもトップカバーが色付くような感じなので、キラキラ感はなく、同社のシックなPCケースにもマッチします。
ちなみに同時発売のLumen RGBシリーズは搭載するファンのみが異なり、水冷ヘッドには同じLEDイルミネーションが搭載されています。
「Fractal Design Lumen S24」の水冷ヘッドに搭載されたLEDイルミネーションは、ARGB対応VD-G型汎用3PIN LEDヘッダーがあるLEDコントローラーによるライティング制御に対応しています。
マザーボードについては同社のMSI Mystic Lightを始めとして、ASUS AURA Sync、ASRock Polychlome RGB Sync、GIGABYTE RGB Fusionなど国内主要4社マザーボードのライティング制御機能による操作が可能です。
また「Fractal Design Adjust R1」のような市販のVD-G型3PIN LEDヘッダーのARGB対応LEDコントローラーでもライティング制御が可能です。上の写真や動画ではFractal Design Adjust R1を使用してライティングを制御しています。
Fractal Design Lumen S24のCPUと接触するベース部分は銅製ベースプレートが採用されています。ベースプレートはフィルムではなくプラスチックカバーで保護されていました。
標準で熱伝導グリスが均等に塗られているので、こだわりがなければ初回使用時は熱伝導グリスを用意する必要はありません。
銅製ベースは鏡面磨き上げではなく、指で触ると僅かながらザラザラした感じはあるものの、しっかり平滑化されています。
「Fractal Design Lumen S24」のリテンションブラケットはスライド構造で水冷ヘッドに着脱します。水冷ヘッドに装着するリテンションブラケットはIntel LGA115X/LAG1200/LGA2066用が標準で装着されており、加えてAMD AM4用も付属します。
「Fractal Design Lumen S24」の水冷チューブは円柱形の水冷ヘッドの側面(標準では3時の方向)からL字エルボーを介して出る構造になっています。
L字エルボーの水冷ヘッド側根本はロータリー式になっているので両側ともにチューブ同士が干渉しない範囲で180度自由に動かすことができます。根本の距離は広めでチューブも細いので同じ方向でも180度近くまで回すことができます。
「Fractal Design Lumen S24」水冷チューブには高耐久な耐熱性ゴムチューブを採用、上から柔軟性に優れ摩耗防止に適したナイロンスリーブが巻かれており取り回しにも優れています。
「Fractal Design Lumen S24」の水冷チューブの長さは400mmほどです。十分な長さがあるのでミドルタワー程度のPCケースであればトップやリアだけでなく、フロントのファンマウントスペースにもラジエーターを設置できます。
水冷チューブの外径は12.6mm程度で、ゴム製チューブにナイロンスリーブが巻かれています。やや太めですが丈夫なチューブなので曲げやすく取り回しにも優れています。かなり強く曲げてもチューブが折れて潰れなかったので安心してPCへ組み込むことができます。
Fractal Design Lumen S24のラジエーターと冷却ファン
続いてFractal Design Lumen S24のラジエーター部分をチェックしていきます。今回レビューする「Fractal Design Lumen S24」は240サイズラジエーターを採用し、LEDイルミネーション非搭載ファンが標準で付属するモデルですが、Fractal Design Lumenシリーズには240/280/360の3サイズのラジエーターと、LEDイルミネーション搭載ファン付属の有無で計6モデルがラインナップされています。
LEDイルミネーション搭載冷却ファンが付属する製品は「Lumen RGB」、冷却ファンにLEDイルミネーションがない製品は「Lumen」と名付けられています。LEDイルミネーション搭載冷却ファン付属の360サイズラジエーター搭載モデルは「Fractal Design Lumen S36 RGB」となります。Lumen RGBとLumenの両シリーズの違いは付属する冷却ファンだけで、水冷ヘッドやラジエーターの仕様は同じです。
「Fractal Design Lumen S24」のラジエーターのデザインは一般的なもので、一部メーカーの製品に採用されているように独自デザインではなく汎用的なものが使用されていました。
「Fractal Design Lumen S24」の放熱フィンのピッチについては水冷ユーザー視点で言うと少し密度が高いと感じました。密度が高い分、放熱フィンの放熱性能は高まりますが、静圧の低いケースファンや低回転数動作の場合、十分なパフォーマンスを発揮できない可能性もあるので注意が必要です。
水冷ポンプは上述の通り3PINファン端子から電源供給を行うので、マザーボードのPWM信号による速度調整には非対応ですが、電圧制御による速度調整には対応しています。
定格(最大)ポンプ回転数は仕様通り4000RPM前後に対して、電圧制御60%にするとポンプ回転数を3000RPM程度まで下げることもできます。
ラジエーターの厚さは一般的な30mm厚です。25mm厚の冷却ファンと組みわせることになるので、ファン&ラジエーターマウントスペースのクリアランスは55mmほど必要になります。
簡易水冷CPUクーラーでは水冷ヘッドにポンプが内蔵されているのが主流ですが、「Fractal Design Lumen S24」はラジエーターコアの中央に水冷ポンプが搭載されています。熱源のCPUからポンプが離れることで、ポンプの長寿命化が期待できる構造です。
ポンプ電源は3PINファン端子ケーブルから取得します。変換ケーブルが付属するので、マザーボードファン端子の電力出力がポンプ非対応でも4PINペリフェラルから電源を取得できます。
「Fractal Design Lumen S24」は240サイズラジエーターを搭載した簡易水冷CPUクーラーなので、同社製の「Fractal Design Aspect 12 PWM」という120mm角冷却ファンが標準で2つ付属します。
Fractal Design Aspect 12 PWMの定格(最大)回転数は2000RPM、PWM速度調整に対応し、500~2000RPMの範囲内で制御可能です。
軸受にはMTTF(平均故障時間)がトップクラスの90,000時間であるライフルベアリングを軸受けに使用しています。固定用の支柱は空気力学に基づいて気流の乱れを抑えるステータストラットを採用、ファンブレードに対して垂直になっており、ファンブレードが支柱を通るときに通常発生するノイズを抑制する効果があります。
ファンブレードの後縁付近には航空機の翼のデザインによくみられる「トリップワイヤー技術」という構造をしており、マイクロ乱流層を発生させ全体的に効率の良い静かなエアフローを実現するそうです。
Fractal Design Aspect 12 PWMからはPWM対応4PINファンケーブルが伸びており、オス端子からは50mm程度のケーブル長でメス端子が分岐しており、ラジエーター上で隣り合ったファン同士を連結するデイジーチェーン接続が可能です。
Fractal Design Lumen S24には、冷却ファンを固定するための長ネジが4本×2セットで計8本、ラジエーターをPCケースに固定するための短ネジが4本×2セットで計8本が付属します。
冷却ファンのラジエーターへの固定やラジエーターのPCケースへの固定に使用するネジの規格はUNC No.6-32でした。日本国内のユーザーとしてはホームセンターで簡単に入手可能なM3かM4ネジを採用して欲しいところです。
冷却ファンをラジエーターに固定すると「Fractal Design Lumen S24」は下のようになります。
Fractal Design Lumen S24の検証機材・セットアップ
Fractal Design Lumen S24を検証機材のベンチ機にセットアップします。各種CPUクーラーの検証を行うベンチ機のシステム構成は次のようになっています。テストベンチ機の構成 | ||
CPU |
Intel Core i9 11900K (レビュー) |
AMD Ryzen 9 5950X (レビュー) |
M/B | MSI MEG Z590 ACE (レビュー) |
ASUS ROG Crosshair VIII Dark Hero (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z Neo F4-3600C16Q-64GTZN (レビュー) 3600MHz, CL16-16-16-36-CR1 |
|
グラフィックボード |
MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC ファンレス (レビュー) |
|
システム ストレージ |
Samsung SSD 980 PRO 500GB (レビュー) | |
OS | Windows10 Home 64bit | |
電源ユニット |
Corsair HX1200i (レビュー) | |
PCケース/ ベンチ板 |
STREACOM BC1 (レビュー) |
ベンチ機のシステムストレージには「Samsung SSD 980 PRO 500GB」を使用しています。
Samsung SSD 980 PROは、PCIE4.0対応によって連続アクセススピードを最大で2倍に飛躍させただけでなく、ランダム性能の向上によってSSD実用性能においても前世代970 PROから大幅な向上を果たし、PCIE4.0アーリーアダプターなPhison PS5016-E16採用リファレンスSSDよりも高速なので、これからPCIE4.0対応プラットフォームの自作PCを組むなら、システム/データ用ストレージとして非常にオススメな製品です。
・「Samsung SSD 980 PRO 1TB」をレビュー。堂々の最速更新
CPUクーラーの設置方法について、当サイトの評価基準となるチェックポイントは次の3つです。
- LGA115Xの場合、CPU固定バックプレートが単独でマザーボードに固定できるか
- マウントパーツ設置状態でCPUを交換できるか
- 空冷の場合、ネジ止めの場合はマザーボード側から固定できるか
簡易水冷or水冷ブロックの場合、ハンドスクリューなどツールレス固定ができるか
上の3項目を全て満たす例として本格水冷用のCPU水冷ブロックですが「EK-Supremacy EVO」のマウンタ構造は「バックプレートをM/Bに固定可能」「完全ツールレス」「マウンタ設置状態でCPUの交換が可能」なので本格水冷・簡易水冷クーラーの水冷ブロック固定方式としてはベストだと思っています。水冷クーラーメーカーにはどんどん真似してもらいたい理想的な構造です。
前置きはこのあたりにしてベンチ機へFractal Design Lumen S24をセットアップします。
「Fractal Design Lumen S24」のCPUクーラーマウントにおいてIntel LGA1200(LAG115X)環境では、Intel LGA115X/1200用バックプレート、Intel LGA115X用スクリューピラー*4本、スクリューピラー固定用スペーサー*4個、スクリューピラー固定用スタンドオフ*4本を使用して最初に下準備を行います。
まず最初にバックプレートをIntel LGA1151など使用する環境に合わせて組み立てますが、バックプレートの対応する穴にスクリューピラーを挿入し、プラスチック製の薄型スペーサーで固定します。スクリューピラーの太さに対してスペーサーの内径はギリギリの寸法で脱落防止になっています。
マザーボードを裏返してCPUソケット周辺のネジ穴に合わせてバックプレートを装着し、バックプレートを落とさないように注意して表に戻したら、プラスチック製スタンドオフでバックプレートを固定します。
マウントパーツは単独でもマザーボードに固定されているので、CPUクーラーの設置が完了していない状態でもバックプレートなどが脱落することはなく、PCケースに設置した状態でもCPUクーラーの設置が容易になっています。
水冷ヘッドをマザーボードに固定する準備はこれで完了したので熱伝導グリスをCPUのヒートスプレッダに塗布します。熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。熱伝導効率も高く、柔らかいグリスで塗布しやすいのでおすすめです。
グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
熱伝導グリスを塗ったらバックプレートから延びるネジに水冷ヘッドの足のネジ穴が合うようにしてCPUクーラーを装着します。CPUの上に乗せたらグリスが広がるように力の入れすぎに注意して水冷ヘッドをグリグリと捻りながら押し込んでください。
Fractal Design Lumen S24の水冷ヘッドの固定ネジはツールレスな大型ローレットナットなので固定は容易です。プラスドライバーでも締められますが、そこまで強く締める必要はないので対角順に水冷ヘッドがグラグラ動かない程度に手でネジを締めてください。
AMD Ryzen CPUに対応するAM4マウントについては、AMDプラットフォーム用のブラケットを水冷ヘッドに装着してから、マザーボードに標準で備え付けられている固定器具へフックを引っかけるだけなので装着は非常に簡単です。
水冷ヘッド側面から水冷チューブの出ている簡易水冷CPUクーラーでは最左端にあるメモリスロットの距離次第で水冷トップ右のチューブエルボーとメモリが干渉してCPUクーラーを設置できない場合がありますが、「Fractal Design Lumen S24」では十分なクリアランスが確保されているので、概ね干渉は起こらないと思います。
簡易水冷CPUクーラーはラジエーター設置の手間やスペース確保の問題はありますが、マザーボード上のメモリなどのコンポーネントとの干渉は大型のハイエンド空冷CPUクーラーより発生し難く、水冷ヘッドの設置自体も基本的にツールレスで容易なのが長所だと思います。
Fractal Design Lumen S24のファンノイズと冷却性能
本題となるFractal Design Lumen S24の冷却性能と静音性についてチェックしていきます。検証システムをベンチ板に置いた状態で測定を行っているためCPUクーラーが水冷・空冷によらず基本的にCPUクーラーの理想的な性能をチェックすることになります。
まずはサウンドレベルメーター(騒音計)を使用して「Fractal Design Lumen S24」のファンノイズをファン回転数別で測定しました。検証機材はベンチ台の上に平置きにしているので、サウンドレベルメーターをスタンドで垂直上方向に50cm程度離して騒音値を測定しています。
この測定方法において電源OFF時の騒音値は30dB未満です。目安として騒音値が35dBを超えたあたりからファンノイズがはっきりと聞こえるようになりますが、35~38dB以下であればPCケースに入れてしまえばファンノイズが気になることはそうそうないと思います。40dB前後になるとベンチ台上で煩く感じ始め、45dBを超えるとヘッドホンをしていてもはっきり聞き取れるくらいになります。
A特性で測定しているのである程度は騒音値にも反映されていますが、同じ騒音値でも周波数(ファン回転数)が高いほど体感としては大きな音に感じやすく、また不快に感じたり感じなかったりは音の性質(細かい乱高下の有無や軸ブレ)にもよるので注意してください。
Fractal Design Lumen S24のラジエーター冷却ファンのファンノイズを測定したところ次のようになりました。
Fractal Design Lumen S24はラジエーター冷却ファンを1100~1300RPM前後に収まるようにするとノイズレベル35dB前後となり、静音動作で運用できると思います。
上のグラフの通り、冷却ファンを付属品から「Noctua NF-A12x25 PWM」に交換すれば標準ファンと同じノイズレベルにおいて300PRM~400RPM程度高いファン回転数で運用でき、より高い冷却性能と静音性を実現できます。1台あたり3500円ほどと高価ですが、CPUクーラーのパフォーマンスを追及するのであれば、一押しの冷却ファンです。
またベージュ&ブラウンの独特なカラーリングが苦手という人には、NF-A12x25とほぼ同等品で黒一色なカラーリングの「Thermaltake TOUGHFAN 12」がオススメです。
続いて「Fractal Design Lumen S24」の冷却性能をチェックしていきます。
CPUクーラーの冷却性能を検証するためのストレステストについては、FF14ベンチマークの動画(再生時間6分40秒、4K解像度、60FPS、容量5.7GB)を変換ソースとして、Aviutl&x264を使って動画のエンコードを行います。動画エンコードの同時実行数については4~6コアは並列なし、8~14コアは2並列実行、16コア以上は3並列実行としています。テスト中のファン回転数については一定値に固定します。
注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から管理人の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。
2021年3月末に発売されたばかりのIntel第11世代Rocket Lake-S最上位モデル、8コア16スレッドCPUの「Intel Core i9 11900K」を使用して、Intel第11世代Core-S環境における、「Fractal Design Lumen S24」の冷却性能を検証していきます。
Core i9 11900Kの動作設定は単純に電力制限を無効化し(MSI MEG Z590 ACEの場合はCPU Cooler TuningをWater Cooler、Thermal Velocity Boost Ratio Clippingもオフに)、メモリのOC設定は「メモリ周波数:3600MHz(IMCはGear1)」「メモリ電圧:1.350V」「メモリタイミング:16-16-16-36-CR2」としています。
Core i9 11900Kを電力制限無効化で全コア4.8GHz動作にすると、Cinebench R23のスコアは15600ほどとなります。CinebenchR23では拡張命令AVX-512は使用されないので、AVX2までを許可する設定を適用してx264エンコードによるストレステストを実行すると、システムの消費電力(マイナス30~40WでCore i9 11900Kの消費電力)は260W前後に達します。
「Fractal Design Lumen S24」のラジエーター冷却ファンを1400RPM(ポンプ速度は最大)に固定してストレステストを実行したとこ、「Fractal Design Lumen S24」は電力制限によって全コア4.8GHzとなるCore i9 11900Kを安定動作させることができ、CPU温度は最大73度、平均70.7度に収まりました。
CPU温度が70度前後と十分に低いので、CPU Package Powerは200W前後で安定し、実動CPUコアクロックは4.8GHzに張り付きました。
続いてAMD Ryzen 5000シリーズ最上位モデル、16コア32スレッドCPUの「AMD Ryzen 9 5950X」を使用して、AMD Ryzen 5000シリーズ環境における「Fractal Design Lumen S24」の冷却性能を検証していきます。
Ryzen 9 5950XのOC設定については、Precision Boost Overdriveを有効化して「PPT = 300W、TDC = 255A、EDC = 200A」、「OC Scaler:10x」、「Max:200Hz」としています。またCurve OptimizerはAll Core設定で一律に「-10Count」としました。
メモリのOC設定は「メモリ周波数:3600MHz」「メモリタイミング:16-16-16-36」「Command Rate:GearDownMode」「メモリ電圧:1.350V」としました。
この設定でRyzen 9 5950XをOCするとCinebench R23のスコアは29000ほどとなります。またこの動作設定において上で紹介したx264エンコードによるストレステストを実行すると、システムの消費電力(マイナス50~60WでRyzen 9 5950Xの消費電力)は280W前後に達します。
「Fractal Design Lumen S24」のラジエーター冷却ファンを1400RPM(ポンプ速度は最大)に固定してストレステストを実行したところ、「Fractal Design Lumen S24」はPBOによって全コア4.3~4.4GHz前後にクロックアップしたRyzen 9 5950XのCPU温度を最大84.4度、平均82.1度に収めることができました。
CPU温度が80度前後と十分に低いので、CPU Package Powerは200W前後で安定し、実動CPUコアクロックは4.3~4.4GHz前後でした。
なおIntel Core-XやAMD Ryzen Threadripperのようなエンスー向けCPUはもとより、Intel Core i9 11900KやAMD Ryzen 9 5950XなどTDP100Wクラスのメインストリーム向け最上位CPUの冷却に「Fractal Design Lumen S24」を使用する場合、CPU自体の冷却は上述の通り十分なのですが、これらのCPUはVRM電源への負荷も大きく、マザーボードによってはVRM電源周りが高温になることが予想されます。
マザーボードスペーサーのネジ穴を利用して固定できるフレキシブルファンアーム「サイズ 弥七」や、可変アルミニウム製ファンフレームでVRM電源を狙って設置が容易な「IN WIN MARS」をスポットクーラーに使用することによって、VRM電源が弱めな比較的安価なマザーボードでもメインストリーム向け最上位CPUを運用できるようになるので、「Fractal Design Lumen S24」と一緒に使用するのがおすすめです。
・マザーボードVRM電源クーラーのレビュー記事一覧へ
Fractal Design Lumen S24のレビューまとめ
最後に簡易水冷CPUクーラー「Fractal Design Lumen S24(型番:FD-W-2-S2401)」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- メタリックな質感でスタイリッシュな水冷ヘッド
- 水冷ヘッドにアドレッサブルLEDイルミネーションを搭載
- 水冷ヘッドの向きに合わせて、トッププレートを90度回転可能
- 電力制限無効化で全コア4.8GHzのCore i9 11900Kを運用可能な冷却性能
- PBOで4.3~4.4GHzにクロックアップしたRyzen 9 5950Xを運用可能な冷却性能
- バックプレート等のマウントパーツを単独でマザーボードに固定可能
- 水冷ヘッドはスプリング付きローレットナットでツールレスに固定可能
- 国内正規代理店アスクを介した5年間の長期保証
- 水冷チューブが太く、やや硬めで取り回し難いかも
- ファン・ラジエーターの固定ネジが国内で入手の容易なM3やM4ではなくUNC No.6-32
冷却性能の検証結果からもわかるように「Fractal Design Lumen S24」は、OC・電力制限無効化によって最大200Wクラスの電力負荷になるメインストリーム向け最上位CPUのCore i9 11900KやRyzen 9 5950Xに余裕で対応可能な優れた冷却性能を実現しています。
Fractal Design Lumenシリーズの中でも240サイズラジエーターの「Fractal Design Lumen S24」は、ATX対応ミドルタワーPCケースはもちろんのこと、同社のFractal Design Era ITXのようなMini ITX対応PCケースでも使用できる汎用性が高さも魅力です。
またFractal Design Lumenシリーズの水冷ヘッドは、プラスチック製ながらメタリックな質感のトップカバーはそのままで見ても美しく、LEDイルミネーションを点灯してもキラキラせずに全体が色付くように光が拡散するので、いずれにせよシックなデザインの同社製PCケースにもマッチします。
また同時発売のFractal Design Lumen RGBシリーズなら冷却ファンにもアドレッサブルLEDイルミネーションを搭載しており、さらに豪華なライトアップが可能です。
以上、「Fractal Design Lumen S24」のレビューでした。
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メタリックな光沢と鮮やかなARGB LEDでそのままでも光っても美しい水冷ヘッドへ搭載した、240サイズ簡易水冷CPUクーラー「Fractal Design Lumen S24」をレビュー。
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) October 4, 2021
Core i9 11900KやRyzen 9 5950Xで冷却性能を検証。https://t.co/OdWVAZfeGP pic.twitter.com/ruFn4TpeF8
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補足:空冷クーラーと水冷クーラーの違いについて
「空冷クーラー」と「水冷クーラー」の2種類ついて同じところと違うところ、また原理的に考えた冷却性能の比較を簡単に補足しておきます。関連記事
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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