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PLX PEX8749スイッチチップによって最大でPCIE3.0x16帯域のPCIEスロットに、PCIE3.0x4対応NVMe M.2 SSDを8枚増設可能なPCIE拡張カード「HighPoint SSD7140A」をレビューします。
代理店公式ページ:https://www.dirac.co.jp/ssd-7140/
製品公式ページ:https://www.highpoint-tech.com/ssd/ssd7140a-overview
HighPoint SSD7140A レビュー目次
1.HighPoint SSD7140Aの外観・付属品
2.HighPoint SSD7140Aの検証機材
3.HighPoint SSD7140Aの基本的な使い方
4.HighPoint SSD7140AとPCIEスロットの接続帯域について
5.HighPoint SSD7140AとSLCキャッシュについて
6.HighPoint SSD7140Aのレビューまとめ
HighPoint SSD7140Aの外観・付属品
まず簡単に「HighPoint SSD7140A」の外観や付属品についてチェックしていきます。以前レビューした旧モデル「HighPoint SSD7101A-1」は茶色い段ボール箱に梱包されていましたが、「HighPoint SSD7140A」はグレーのパッケージでメーカーロゴがプリントされています。
国内正規代理店であるディラック取り扱い品の場合は製品パッケージのどこかに、下のような正規取扱品証明シールが貼られています。製品保証にはこのシールも必要なので開封後も捨てずに保管しておいてください。
製品パッケージを開くと白色のスポンジスペーサーの中央に静電防止ビニールで保護された製品本体が収められていました。付属品は簡易マニュアルのみです。
「HighPoint SSD7140A」の拡張カード本体をチェックしていきます。
「HighPoint SSD7140A」はPCIEスロットを1スロット占有するPCIE拡張カードとなっており、最大でPCIE3.0x16帯域で接続可能です。
「HighPoint SSD7140A」のボード長は285mmです。M.2 SSD 4枚に対応した従来モデルよりも大幅に長くなっています。またボード右端にはオプションとしてPCIE補助電源 6PINコネクタが実装されています。補助電源を使用する場合は上記の全長285mmに加えて補助電源コネクタ&ケーブルのクリアランスも必要になります。
最近のハイエンドグラフィックボードは300mm前後のモデルも多く、オープンレイアウトなPCケースなら問題ないと思いますが、従来のフルサイズである275mm程度のグラフィックボードにしか対応しないPCケースは干渉する可能性があります。
「HighPoint SSD7140A」はPCIEスロットとPCIE補助電源を電力源として動作します。通常、PCIEスロットからは最大75Wの電力が供給できます。
NVMe M.2 SSDの消費電力は大きいものでも8W程度なので8W×8枚で64W、さらにスイッチチップなどボード自体の消費電力が加算されてギリギリ75Wに収まると思いますが、万全を期すなら接続を推奨します。
HighPoint製RAIDカードの初期モデルでは小径なブロアーファンで外排気する構造でしたが、「HighPoint SSD7140A」では50mm径のウィングブレードファンで冷やす内排気構造が採用されています。冷却ファンは左右に実装された4基のM.2スロット 2組をそれぞれ冷却できるように2基あります。
拡張カードにはM.2 SSDヒートシンクを兼ねたアルミニウム製ヒートシンクが基板全体を覆うように装着されています。厚みは1スロット占有です。
「HighPoint SSD7140A」に搭載された2基の冷却ファンは専用ソフトウェア HighPoint NVMe RAID Managerからファン動作設定を変更可能です。
標準設定は拡張カード上の温度センサーを制御ソースにした可変速度のAuto設定ですが、Low/Medium/Highの3段階の一定速度を選択できます。Offにすれば完全にファンを停止させることも可能です。
「HighPoint SSD7140A」にはバックプレート等は装着されておらず、明るい緑色のPCB基板が剥き出しです。
「HighPoint SSD7140A」のヒートシンクは拡張カード背面のプラスネジ6カ所で固定されており、ヒートシンクの着脱は容易です。
ヒートシンクにはM.2 SSDとの接触のための大判のサーマルパッド1枚、および拡張カードに実装されたスイッチチップを冷却するためのサーマルパッド1枚が標準で貼りつけられています。
「HighPoint SSD7140A」ではスペーサーを装着するネジ穴が各スロットに3カ所あり、M2242、M2260、M2280の3規格に対応しています。M22110には非対応です。
「HighPoint SSD7140A」はPCIE3.0x16帯域を動的分配するRAIDカードなので、各M.2スロットの最大帯域はPCIE3.0x4接続ですが、NVMe M.2 SSD側に下方互換があるのでPCIE4.0接続の製品も使用できます。
公式に互換性リストも公開されており、一例としてPCIE4.0接続SSDのSamsung SSD 980 PROやSeagate FireCuda 530を使用できます。
最後に「HighPoint SSD7140A」の拡張カード基板について軽くチェックしておきます。
「HighPoint SSD7140A」にはPCIE3.0x16帯域を8基のPCIE3.0x4接続M.2スロットに動的分配するためのスイッチチップとしてBroadcomの「PLX PEX8749-CA80BC」が実装されていました。
「HighPoint SSD7140A」のボード上には各M.2スロットに対してPort 1~8の番号が割り振られているのですが、Windows OSから認識される順番はボード上に記載されたポート番号とは異なります。
一方で「HighPoint SSD7140A」のRAIDアレイ管理に使用する専用ソフトウェア HighPoint NVMe RAID Managerはボード上の番号通りにSSDが表示されます。管理が煩雑になるので、ボード上の番号、Windows OSの認識順などは一致させて欲しいところ。
HighPoint SSD7140Aの検証機材
「HighPoint SSD7140A」の検証機材として、Core i9 12900KやASUS ROG MAXIMUS Z690 HEROで構成されるメインストリーム向けのIntel Z690環境、Ryzen Threadripper 3970XやASRock TRX40 Taichiで構成されるエンスージアスト向けAMD TRX40環境を使用しました。検証機材の詳細は下のテーブルの通りです。
テストベンチ機の構成 | ||
CPU | Intel Core i9 12900K (レビュー) |
AMD Ryzen Threadripper 3970X (レビュー) |
マザーボード |
ASUS ROG MAXIMUS Z690 HERO (レビュー) |
ASRock TRX40 Taichi (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z5 RGB F5-6000U3636E16GX2-TZ5RS (レビュー) 6000MHz, 36-36-36-76-CR2 |
G.Skill Trident Z Neo F4-3600C16Q-64GTZN (レビュー) 3600MHz, CL16-16-16-36-CR1 |
ビデオカード | MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC ファンレス (レビュー) |
|
システム ストレージ |
Samsung SSD 980 PRO 500GB (レビュー) |
|
OS | Windows10 Home 64bit | |
電源ユニット | Corsair HX1200i (レビュー) | |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
「HighPoint SSD7140A」はPCIE3.0x4接続のNVMe M.2 SSDを8枚増設可能なRAIDカードなので、今回は組み込む検証機材SSDとして、Western Digitalから発売中のNAS向けNVMe M.2 SSD「WD Red SN700 NVMe SSD 1TB」を使用しています。
WD Red SN700 NVMe SSDシリーズのうち、容量1TB以上のモデルは連続読み出しと連続書き込みが3GB/s以上、さらにSLCキャッシュ超過後の書き込み速度も1500MB/s以上をキープするので、NASに使用する場合、10Gb LAN接続ならSSD性能がボトルネックになることはありません。
Western Digitalからは1TB~4TBの大容量がラインナップされる自作PC向けSSDとしてゲーマー向けモデルのWD_BLACK SN750 NVMe SSDが発売されていますが、「WD Red SN700 NVMe SSD」は常時稼働となるNASシステムに要求される信頼性に応えられるよう、24時間365日稼働の使用向けに設計・テストされています。
「WD Red SN700 NVMe SSD 1TB」は読み書き速度といった基本仕様はゲーマー向けモデルWD_BLACK SN750とほぼ同等である一方、書き込み耐性のスペック値がWD_BLACKより2倍も優れています。
NASによるバックアップではバックアップ対象の更新を全て記録するような機能もあり(QNAP製NASならスナップショット)、通常のPCよりも頻繁に書き込みアクセスが発生します。SSD内蔵の高速NASを構築するなら書き込み耐性に優れた「WD Red SN700 NVMe SSD」は特にオススメのSSDです。
HighPoint SSD7140Aの基本的な使い方
HighPoint SSD7140Aのソフト面での使い方について簡単に紹介します。近年のマザーボードではPCIEスロットの接続モードとしてx8やx16帯域のスロットで帯域をx4x4やx4x4x4x4などに分割する接続モードが用意されています。
まず最初の注意事項として、「HighPoint SSD7140A」を使用する場合、分割モードではなく通常モード(x16モード)に予め設定しておいてください。分割モードに設定したままでそのスロットに「HighPoint SSD7140A」を設置しているとPOSTで止まる可能性があります。
HighPoint SSD7140Aの使い方について、同拡張カードを単純にNVMe M.2 SSDが8枚増設できるアダプタとして使用するだけであれば追加のソフトウェアは必要なくWindows10/11の標準ドライバのみで動作します。
RAIDカードのコントローラー部分についてはデバイスマネージャー上でエラーが出ていますが、「HighPoint SSD7140A」に搭載されたSSD自体は個別に問題なく動作します。
M.2 SSDを最大8枚まで装着したHighPoint SSD7140Aをマザーボードに設置すれば、普通にNVMe SSDとして認識してくれるので、あとはコントロールパネルからボリュームの作成を行えばOKと、導入は非常に簡単です。
HighPoint SSD7140Aを使用する上で追加のソフトウェア(ドライバとRAIDマネージャー)が必要になるのはHighPoint SSD7140A専用ユーティリティー「HighPoint NVMe RAID Manager」によるRAID構築を行う場合です。
HighPoint NVMe RAID Managerを使用してRAIDを構築したい場合は製品サポートページからドライバとRAIDマネージャーをダウンロードしてください。
DLページ:https://www.highpoint-tech.com/ssd/ssd7140a-overview
「Driver for Windows 10/11」と「WebGUI - NVMe Manager」という2つのソフトをインストールすることになりますが、1.ドライバから2.RAIDマネージャーの順番でインストールしてください。インストール作業自体はインストーラーからポチポチクリックしていくだけなので難しいことはありません。
2022年5月現在、公式サポートページで配布されている最新ドライバ(v1.3.21.0.1_2022_01_07)を使用したところ、ASRock TRX40 TaichiやASUS ROG MAXIMUS Z690 HEROでは、デバイスマネージャー上にドライバ不明の基本システムデバイスが4つ検出されました。
今回の検証では特に実用上の問題は生じなかったのですがご注意を。
2つのソフトウェアをインストールするとHighPoint NVMe RAID ManagerのショートカットアイコンがデスクトップにできるのでそこからRAIDマネージャーを起動します。
Microsoft Edgeを使用したUIで次のような画面が起動します。初回起動時にIDとパスワードを尋ねられますが、空白のままOKを選択して進めても大丈夫です。
PhysicalのタブではHighPoint SSD7140AのPCIE接続についてリンクスピードやリンク帯域を確認できます。
Logicalのタブでは現在「HighPoint SSD7140A」に搭載されているストレージ、およびボリューム作成状態の一覧が表示されます。RAIDボリュームの作成もこのページで行います。
同じUIなので、以下、同社の他製品をレビューした時のスクリーンショットを流用しますが、HighPoint NVMe RAID ManagerからRAIDアレイを構築するには、HighPoint SSD7140Aのストレージやアレイの一覧が表示されるLogicalタブ左にある「Create Array」を選択します。
Create Arrayを選択すると下のような画面が表示されて、RAIDアレイのタイプ、アレイ名、初期化(フォーマット設定)、ブロックサイズ、使用するストレージ等を選択してRAIDアレイを構築できます。UIの言語は英語ですが簡単なことしか書かれていないので英語が苦手でも迷うことはないと思います。
RAIDの種類については、RAID0、RAID1、RAID10の3種類から選択可能です。
RAIDアレイを構築すると、Logical Device Informationの部分が更新されてRAIDアレイが表示されます。
HighPoint NVMe RAID Managerで構築したRAIDアレイの解除についてはMaintenanceを選択して。Array Informationのポップアップを開き、最後にDeleteをクリックすれば簡単に解除可能です。
RAIDの構築が完了したら後はWindowsのコントロールパネルからRAIDストレージに対してボリュームを作成するだけです。HighPoint SSD7140Aの専用ソフトウェアを使用したRAIDアレイの構築も上記のように非常に簡単な構造になっており導入のハードルは低いと思います。
HighPoint SSD7140AとPCIEスロットの接続帯域について
「HighPoint SSD7140A」を設置するPCIEスロットの接続帯域について解説します。「HighPoint SSD7140A」は最大接続帯域としてPCIE3.0x16に対応しています。
WD Red SN700 NVMe SSD 1TBを4枚使用し、HighPoint SSD7140Aの専用ユーティリティーで構築したRAID0ボリュームは、PCIIE3.0x16の帯域として理想的な13~14GB/s前後の連続読み出し性能が発揮できました。
RAIDを構築せずに個別ボリュームとして扱う場合、「HighPoint SSD7140A」をPCIIE3.0x16で接続し、拡張カード上に設置した8枚のSSDに対して同時に読み出しアクセスを行うと各SSDは1600~1700MB/sの読み出し速度を発揮します。
「HighPoint SSD7140A」をPCIE3.0x16よりもリンク帯域の低いPCIE3.0x4やPCIE3.0x8のPCIEスロットに設置しても、拡張カード上に設置された最大8基のストレージ自体は全て正常に認識され、RAIDアレイの構築など基本的な機能も問題なく使用できます。
同製品に搭載されているPLX PEX8749-CA80BCなどPCIEスイッチチップによって、1つのPCIEスロットに複数のNVMe M.2 SSDを増設可能な拡張カードの特長です。
一方で「ASUS HYPER M.2 X16 GEN 4 CARD」や「ASRock Hyper Quad M2 Card」のようにマザーボードのPCIE帯域分割機能(PCIE Bifurcation)によって1つのPCIEスロットに複数のNVMe M.2 SSDを増設する拡張カードも存在します。
スイッチチップ搭載型が数万円以上と非常に高価なのに対し、マザーボードのPCIE帯域分割機能によって複数のNVMe M.2 SSDを増設するタイプの拡張カードは、高価なスイッチチップを省略しているので1万円以下で購入できるコストパフォーマンスの高さが魅力です。
一方でPCIE帯域分割機能を利用する拡張カードのデメリットとして、組み合わせるマザーボードがPCIE帯域分割機能に対応している(BIOS上に帯域分割の設定がある)必要があること、そして増設可能な枚数が大元のPCIE帯域に依存する、といった制限があります。
PCIE帯域分割型の拡張カードでは、x16レーンのPCIEスロットであればBIOS設定から4つのPCIEx4帯域に分割することで4枚のNVMe M.2 SSDを増設できますが、x8レーンのPCIEスロットの場合は2枚のNVMe M.2 SSDしか増設できません。x4レーンのPCIEスロットとなるとただのPCIE to M.2変換ボードになってしまいます。
以上、複数のNVMe M.2 SSDを増設可能な拡張カードの諸事情に関する説明でしたが、本題に戻って、
「HighPoint SSD7140A」を使用するPCIEスロットのリンク帯域がPCIE3.0x16より低い場合のデメリットは、下のように複数のストレージへ同時アクセスが発生した時にトータルアクセススピードがPCIE3.0x8なら7.0GB/s程度、PCIE3.0x4なら3.5GB/s程度へ制限されるだけです。
例えばPCIE3.0x4において8つの個別ボリュームへ同時に読み込みアクセスが発生した場合は各ストレージへのアクセス速度はリンク帯域で決まる最大速度を分散させる形になります。
一方で同じタイミングでどれか1つのボリュームだけにアクセスがある場合は通常のPCIE3.0x4帯域のM.2スロットへ接続したNVMe M.2 SSDとして動作するので、PCIE3.0x4接続NVMe M.2 SSDの仕様値通りのパフォーマンスを発揮することが可能です。
「HighPoint SSD7140A」は、x16サイズスロットや右端に切り込みのあるx4サイズスロットへ物理的に設置さえできれば、内部帯域がPCIE3.0x8やPCIE3.0x4であっても使用できます。
トータルアクセススピードには実帯域依存で制限がかかるものの、最低限PCIE3.0x4帯域があれば非同時の個別アクセスでは各SSDをPCIE3.0x4対応NVMe M.2 SSDとして仕様値通りに動作させることが可能なので、空きPCIEスロットを利用したストレージ増設ソリューションとしては非常に有用な拡張カードだと思います。
なお、今回検証に使用したASUS ROG MAXIMUS Z690 HEROにおいて一般にグラフィックボード用として使用するCPU直結のx16レーンPCIEスロットへ「HighPoint SSD7140A」を設置したところ、POSTエラーやOSが起動してもPCIE接続にエラーが出て動作が不安定になりました。
最上段にGPUを設置してx8/x8分割で下段に「HighPoint SSD7140A」という構成なら安定するのですが。
AMD TRX40のようにグラフィックボード以外のx16レーン拡張ボードの使用が想定されたプラットフォームであればPCIE3.0x16接続で問題なく動作するはずですが、グラフィックボードの設置が一般的なメインストリーム向け環境ではCPU直結のx16レーンで安定しない可能性もあるので、注意してください。
HighPoint SSD7140AとSLCキャッシュについて
2022年現在主流のTLC型NANDや一部製品で採用されているQLC型NANDを採用するSSDでは、メモリ領域の一部を高速なSLC NANDとして使用することで書き込み性能を改善する機能 SLCキャッシュが基本的にほぼ全ての製品で採用されています。HighPoint SSD7140Aでそういった所謂、TLC型SSDを用いた場合のRAIDアレイの動作についても簡単に紹介しておきます。
この検証ではHD Tune Proというベンチマークソフトを使用して、100GBの大容量な連続書き込みによる書き込み速度の低下をチェックしていきます。
WD Red SN700 NVMe SSD 1TBのシングルボリュームに対して100GBサイズの連続書き込みを行った結果が次のようになっています。
WD Red SN700 NVMe SSD 1TBのシングルボリュームでは書き込みサイズが13GB前後に達すると書き込み総量がSLCキャッシュを超過し、書き込み速度が3000MB/sから1500MB/sへとステップ状に下がっているのが確認できます。
WD Red SN700 NVMe SSD 1TBを4枚使用したRAID0ボリュームの構築でこのSLCキャッシュ機能がどうなるか見ていきます。
100GBサイズの連続書き込みを行ったところ、まず分かりやすいところで、書き込み性能が1枚の時と比較して約4倍にスケーリングされています。
さらに4枚のRAID0ボリュームではSLCキャッシュ容量が4倍の50GB程度に増量しているような動作となり、SLCキャッシュ超過後の書き込み速度も1500MB/sの4倍の6000MB/s程度となっています。
SSDのRAID0ボリュームは、CrystalDiskMark等で確認できる連続性能のスケーリングは目覚ましいものの、ランダム性能が改善しないので実用的にはあまり恩恵がないというのが実状です。(ベンチマーク上のランダム性能は下がる傾向はあるものの、逆にRAID0を構築することで実用的に性能が下がるということもありませんが)
TLC型SSDやQLC型SSDはRAID0の構築によってSLCキャッシュ容量の合算が可能であり、かつ超過後の書き込み速度も枚数に応じて倍増します。
大容量データを頻繁に読み書きするクリエーター向けPCであれば「HighPoint SSD7140A」に搭載した複数のSSDでRAIDボリュームを構築するメリットはあると思います。
HighPoint SSD7140Aのレビューまとめ
最後にPCIE3.0x4対応NVMe M.2 SSDを8枚増設可能な拡張カード「HighPoint SSD7140A」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- NVMe M.2 SSDを8枚刺し可能なPCIE拡張カード
- 最大リンク帯域はPCIE3.0x16
- 単純な複数枚刺し拡張カード使用であればドライバレスでも使用できる
- SSD 4枚以上のRAID0構築で連続性能では最高13~14GB/sを達成可能
- トータルアクセスに制限はあるがPCIE3.0x4やPCIE3.0x8帯域でも使用可能
- RAID0構築で枚数に応じてSLCキャッシュ容量や超過後の書き込み速度が倍増
- スイッチチップと8枚のSSDを冷やす大型ヒートシンク&冷却ファンを搭載
- 冷却ファンは専用ソフトウェアからファン速度設定を変更可能
- メインストリーム向け環境のCPU直結PCIEx16接続は不安定な可能性も
- 2022年5月現在、ドライバエラーあり(実用上は特に不具合はない?)
- 非常に高価
PCIE3.0x4対応NVMe M.2 SSDの複数枚刺しが可能なPCIE拡張カード「HighPoint SSD7140A」については概ね予想通りの検証結果が得られたと思います。
RAID0の構築によってシーケンシャル性能は帯域の増加に伴って綺麗にスケーリングされ、単独で最大3500MB/sのアクセススピードを実現するPCIE3.0x4接続のNVMe M.2 SSDを使用すれば4枚で連続読み出しが13~14GB/sに達します。
ただしRAID0の特性としては既知な事実ですがランダム性能は改善しない(若干低下する傾向あり)ので、ベンチマークスコアのような性能向上が体感できる用途は比較的限られています。
一方で、大容量な連続書き込みでSLCキャッシュを超過すると書き込み速度が大幅に低下するTLC型SSDやQLC型SSDではRAID0の構築によってキャッシュ容量の合算が可能であり、かつ超過後の書き込み速度も枚数に応じて倍増するので、そういった足回り的にはRAID0にもメリットがあります。
個人的には高速かつコンパクトなNVMe M.2 SSDをPCIEスロット1つという限られたスペースに8つも増設できるという機能それ自体に「HighPoint SSD7140A」の価値を見出しています。
2.5インチSATA SSDのようにマザーボードと接続する通信ケーブルと電源ケーブルを個別に必要とするという配線上の手間も排除できるので、省スペースで高速かつ大容量なストレージを手軽に(価格は除く)増設できるところはやはり魅力です。
拡張カードにスイッチチップが実装されているためトータルアクセススピードがPCIEの実際の接続帯域を上限として制限がかかるということに目をつぶれば、PCIE3.0x4帯域のスロットに設置してもNVMe M.2 SSDの8枚刺しが可能であり、アクセスが分散しなければ各SSDは仕様値どおりのパフォーマンスが発揮できます。
Intel第12世代Core-SやAMD Ryzen 5000に対応したマザーボードでもチップセット経由でPCIE3.0x4帯域のPCIEスロットをサブに備えていることは多いので、メインストリームプラットフォームで活用できる汎用性もまた魅力だと思います。
以上、「HighPoint SSD7140A」のレビューでした。
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PLX PEX8749スイッチチップによって最大でPCIE3.0x16帯域のPCIEスロットに、PCIE3.0x4対応NVMe M.2 SSDを8枚増設可能なPCIE拡張カード「HighPoint SSD7140A」をレビューhttps://t.co/R01o2sOfWe pic.twitter.com/At4bqJ5wKW
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) June 1, 2022
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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>HighPoint SSD7140Aの使い方について、同拡張カードを単純にNVMe M.2 SSDが4枚増設できるアダプタとして使用するだけであれば追加のソフトウェアは必要なくWindows10/11の標準ドライバのみで動作します。
4枚増設→8枚増設
>拡張カードにスイッチチップが実装されているためトータルアクセススピードがPCIEの実際の接続帯域を上限として制限がかかるということに目をつぶれば、PCIE3.0x4帯域のスロットに設置してもNVMe M.2 SSDの4枚刺しが可能であり、アクセスが分散しなければ各SSDは仕様値どおりのパフォーマンスが発揮できます。
4枚刺し→8枚刺し
アクセスが分散→アクセスが集中
ではないでしょうか。