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Intel第12世代Alder Lake-Sシリーズから16コア24スレッドで倍率アンロックなOC対応の最上位モデル「Intel Core i9 12900K」について動作クロック、温度、消費電力に関する速報レビューをお届けします。
製品公式ページ:https://ark.intel.com/content/www/jp/ja/ark/products/134599/intel-core-i912900k-processor-30m-cache-up-to-5-20-ghz.html
Intel Core i9 12900K レビュー目次
1.Intel Core i9 12900Kの外観・付属品・概要
2.Intel Core i9 12900Kの検証機材・動作設定
3.Intel Core i9 12900Kの動作クロック・消費電力・温度
4.Intel Core i9 12900Kのレビューまとめ
【機材協力:MSI Japan】
【注:11月5日2時に追記 (11月4日22時公開)】
記事執筆時は分からなかったのですが、Intelから情報提供を受けている国内メディアによると、前世代ではPL1=TDPでしたが、Core i9 12900KなどK付きの第12世代CPUではPL1=PBP(旧TDP)ではなく、『PL1=MTP=PL2』が公式仕様とのこと。
Intel Core i9 12900Kの外観・付属品・概要
「Intel Core i9 12900K」の外観や付属品について簡単にチェックしておきます。またこの章では「Intel Core i9 12900K」の仕様等について簡単に触れておきたい概要もあれば紹介します。「Intel Core i9 12900K」の製品パッケージについて、外形はシンプルな立方体ですが、内部にIntel第12世代CPUダイをプリント後のシリコンウェーハを模した金色の円盤が内蔵されているところがユニークです。
サンプルイメージを見た時は、金色の円盤が見える左右側面はアクリル窓になっているかと思ったのですが、そのまま貫通していました。
第10世代と第11世代のCore i9-Kシリーズのパッケージを比較するとこんな感じです。サッカーボールと呼ばれた第9世代から第11世代までは順調にサイズが小さくなっていたのですが、第12世代で再び大きくなってしまいました。個人的には第11世代くらいのサイズがちょうどいいと思いました。
これまでのCore i9-Kシリーズと同じくパッケージ外装はシリアル番号などが記載された白色シールで封印されており、シールをカットすると外装が1枚に開きます。
内容品はシンプルで金色の円盤があり、金色の円盤を安置している黒色スペーサーの下には冊子とロゴシールがあります。
金色の円盤は半時計周りに回すと蓋が開き、見慣れた透明プラスチックスペーサーに収められたCPU本体が現れます。
パッケージのチェックはこの辺りにして、肝心の「Intel Core i9 12900K」のCPU本体を見ていきます。
「Intel Core i9 12900K」ではCPUソケットがLGA1700に変わり、CPUサイズも従来の正方形から縦長の長方形に変わっています。
前世代Core i9 11900Kと比較するとこんな感じです。横幅はほぼ同じですが縦が1cm弱伸びています。
CPUソケット名”LGA1700”の数字部分はCPUソケットのピン数を示しています。「Intel Core i9 12900K」は基板面積の変化に比べてピン数の増加が大きいので、底面の電極を見ると1つ1つが細かくなっているのが分かります。
重量を比較してみるとCore i9 11900Kは27gに対して、「Intel Core i9 12900K」は36gでした。
CPU基板本体の重量は6~7gでほぼ同じですが、第11世代CPUのIHSの重量が21gに対して、「Intel Core i9 12900K」など第12世代CPUのIHSの重量は29g、約40%も質量が増していました。
Intelの公式リリースによると、第12世代CPUでは『CPUダイとヒートスプレッダの間にはTIMとしてSTIMが採用され、前世代よりもさらにCPUダイとSTIM層を薄くし、放熱バッファとなるヒートスプレッダを厚くすることでCPU温度的にも改良が施されている』とのこと。
第11世代ではIHS周辺の素子レイアウトが非常にタイトで難しかったのですが、第12世代CPUは余裕があり殻割りそのものは難しくなさそうなので、殻割りクマメタル化どれくらい冷えるのか気になるところ。
パッケージや外観の話はこの辺りにして、続いて「Intel Core i9 12900K」のスペックについて見ていきます。
Alder Lake(アルダーレイク)のコードネームで呼ばれるIntel第12世代Core-S CPUでは、高性能コア「P-Core」と高効率コア「E-Core」の2種類の混成でCPUを構成するIntel Hybrid Computing Architectureが採用されており、最上位モデルの「Intel Core i9 12900K」は、8コア16スレッドの高性能P-Coreと8コア8スレッドの高効率E-Coreを組み合わせた16コア24スレッド(8C/16T+8C8T)のCPUです。
P-Coreの単コア最大ブーストクロックは5.2GHz(TBM3.0有効時)、全コア最大ブーストクロックは4.9GHzとなっています。CPU消費電力の指標となるProcessor Base Powerは125W、Maximum Turbo Powerは241Wです。
「Intel Core i9 12900K」の北米希望小売価格(1/1000個あたり)は589ドルからとのことで、国内では11月4日解禁時の予定販売価格は税込み7.9万円となっています。
Intel第12世代Alder Lake-SシリーズCPUの高性能P-Coreは、第10世代Core CPUを基準にしてコアクロック当たりのシングルスレッド性能が28%も向上しているとアピールされています。
また高効率E-Coreは省電力に性能を振っており、もともとAtomシリーズ、Montの系譜なので性能に不安を感じる人もいるかもしれませんが、第10世代Core CPUと同等のシングルスレッド性能です。AMD製CPUでいうとRyzen 3000シリーズと同等なので、E-Coreの性能についても心配は全くありません。
分かりやすさを優先するなら、Core i9 12900Kは、性能が10~20%向上した8コア16スレッドのCore i9 11900Kと、省電力性能が向上した8コア8スレッドのCore i7 10700(マルチスレッディング無効化)を2個1にしたようなCPUです。
下位モデルのCore i7シリーズやCore i5 12600K(F)なら4コア4スレッドのCore i3 10300(マルチスレッディング無効化)が補助のE-Coreとして動作するようなイメージです。
CPU消費電力に関する表記として、従来では”TDP(Thermal Design Power)”が使用されていましたが、Intel第12世代Core-Sからは、長期間電力制限PL1(=旧TDP)に当たる数値を「Processor Base Power (Base, PBP)」、短期間電力制限PL2に当たる数値を「Maximum Turbo Power (Turbo, MTP)」として、公式仕様に明記されるようになりました。
従来ではデータシートにこそ記載されているものの、半ば隠しパラーメータのような扱いだった短期間電力制限PL2、「Maximum Turbo Power (Turbo, MTP)」もCore i9 12900Kなど第12世代CPUではIntel公式ページでしっかりと明記されています。
「Intel Core i9 12900K」を、前世代最上位のIntel Core i9 11900Kや、競合AMDのメインストリーム向け上位モデルであるRyzen 9 5950XやRyzen 9 5950Xと比較すると次のようになっています。
Intel Core i9 12900K スペック簡易比較 | ||||
Core i9 12900K |
Core i9 11900K | Ryzen 9 5950X |
Ryzen 9 5900X | |
コアスレッド | 16コア 24スレッド |
8コア 16スレッド |
16コア 32スレッド |
12コア 24スレッド |
P-Core |
8C16T | 8C16T | 16C32T | 12C24T |
E-Core | 8C8T | - | - | - |
ベースクロック P-Core (E-Core) |
3.2GHz (2.4GHz) |
3.5GHz | 3.4GHz | 3.7GHz |
全コア最大 P-Core (E-Core) |
4.9GHz (3.9GHz) |
4.8GHz | ~4.4GHz | ~4.4GHz |
単コア最大 P-Core (E-Core) |
5.2GHz (3.7GHz) |
5.3GHz | 4.9GHz | 4.8GHz |
オーバークロック |
O | |||
L3キャッシュ | 30MB | 16MB | 64MB | 64MB |
PBP (TDP) | 125W | 105W | ||
MTP (max PPT) | 241W | 250W | 141W | |
CPUクーラー | X | |||
iGPU |
O | X | ||
対応メモリ |
DDR5 DDR4 (MBに依存) |
DDR4 | ||
メモリ ch / pcs |
2 / 4 | |||
CPU直結PCIEレーン |
PCIE5.0 x 16 + PCIE4.0 x 4 |
PCIE4.0 x 16 + 4 | ||
おおよその国内価格 (北米希望小売価格) |
7.9万円 (589ドル) |
7.2万円 (488ドル) |
9.8万円 (799ドル) |
7.2万円 (549ドル) |
iGPU非搭載モデル の価格 |
7.7万円 (564ドル) |
6.1万円 (472ドル) |
Intel第12世代Core-Sプラットフォームの特長を順番に説明していくと、まず、従来のDDR4メモリ(DDR4-3200)に加えて、次世代システムメモリのDDR5メモリ(DDR5-4800)をサポートしています。
なお初期の情報では単純に”メモリ周波数4800MHzに対応”と伝えられていましたが、『メモリ周波数4800MHzが定格としてサポートされるのは、メモリスロットが2基のマザーボードで2枚までのメモリを使用した場合』とのこと。
Intel 600シリーズチップセット搭載ATXマザーボードで一般的な1チャンネル当たり2基のメモリスロットがあり4基のメモリスロットを搭載したマザーボードの場合、メモリを2枚搭載した場合の定格メモリ周波数は4400MHzになるようです。
さらに4枚組みにした場合、1Rankのメモリなら4000MHz、2Rankのメモリなら3600MHzが定格メモリ周波数となります。
Intel第12世代Core-Sでは組み合わせて使用するマザーボードによってサポートされるメモリ規格が変わるので注意が必要です。
ASRock、ASUS、GIGABYTE、MSIの主要4社の製品を見たところ、ハイエンドからアッパーミドルまでの上位製品は基本的にDDR5対応となっています。ミドルクラス以下ではDDR5対応とDDR4が混在し、メーカー毎にラインナップ展開が異なります。
ASUS製Z690マザーボードを例に挙げるとDDR5対応の「ASUS PRIME Z690-P」とDDR4対応の「ASUS PRIME Z690-P D4」のようにほぼ似た名前、対応メモリ以外の仕様もほぼ同じ、といった製品もあるので使用するメモリに合わせて購入するマザーボードには注意してください。(各社表記なしはDDR5対応、DDR4対応の場合は”DDR4”や”D4”の表記が末尾に付くことが多いようです)
PCIEレーンについてはCPU直結PCIEレーンとして、前世代同様にNVMe SSD用のPCIE4.0x4レーンを備えますが、主にグラフィックボード接続使用されるx16レーンは、PCIE4.0と比較して2倍の帯域で最大64GB/sの通信が可能な次世代規格のPCIE5.0対応へアップデートされています。
またIntel第12世代Alder Lake-Sがサポートする600シリーズチップセットの最上位Z690チップセットでは、CPU-PCH間の接続は前世代とレーン数ですがPCIE4.0相当のDMI4.0に更新されて帯域は倍増しており、PCHを介してPCIE4.0x12レーンとPCIE3.0x16レーンを利用できます。
Intel第12世代CPUをサポートするZ690チップセットをZ590やZ490の歴代Zシリーズチップセットと比較すると、CPU-PCH間帯域やPCH経由のPCIEレーンの増強はやはり目に留まりやすいポイントですが、その他にもZ690チップセットの特長として、USB3.2 Gen2x2 (20Gbps)対応、内部コントローラによるWiFi 6E対応、外部コントローラーによるThunderbolt4対応などが挙げられます。
・Intel 600シリーズマザーボードの関連記事一覧へ
Intel Core i9 12900Kの検証機材・動作設定
以下、「Intel Core i9 12900K」の各種検証を行うベンチ機、および比較対象となる各CPUのベンチ機の詳細となります。Intel LGA1700(Z690)環境 テストベンチ機の構成 | |
CPU | Intel Core i9-12900K(レビュー) |
マザーボード | MSI MEG Z690 UNIFY (レビュー) |
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36 (レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM x3 (レビュー) |
メインメモリ | Kingston FURY Beast DDR5 DDR4 16GB×2=32GB (レビュー) 5200MHz, CL40-40-40-80 |
ビデオカード(共通) | ZOTAC RTX 3090 AMP Extreme Holo (レビュー) |
システムストレージ(共通) | Samsung SSD 980 PRO 500GB (レビュー) |
OS(共通) | Windows 11 Home 64bit |
電源ユニット(共通) | Corsair HX1200i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
Intel LGA1700(Z590)環境では検証機材マザーボードとして「MSI MEG Z690 UNIFY」を使用しています。
「MSI MEG Z690 UNIFY」において、各CPUのBy Core Usage動作倍率は単コア/全コアは仕様通りです。初回起動時のCPUクーラー設定(後ほどOC設定からも変更できる)でCPU電力制限を指定でき、前世代ではIntelの公式仕様通りの電力制限(PL1:125W、PL2:250W)が適用されていたのですが、なぜか、Core i9 12900Kを組み合わせるとBoxed Coolerの設定を選択してもPL1が仕様値の125Wではなく、PL2と同じ241Wに設定されました。
同じく前世代では適切に電力制限が適用されていたASUS製Z690マザーボードの「ASUS ROG MAXIMUS Z690 HERO」で検証しても、やはりPL1が125WではなくPL2と一致する241Wに設定されました。
なおIntel第12世代Alder Lake-Sシリーズについて、長時間電力制限PL1、短時間電力制限PL2、短期間電力制限時間TauのIntel公式仕様は下のテーブルの通りです。
Intel第12世代CPUの電力制限仕様値 | ||||
TDP | PL1 | PL2 | Tau | |
Core i9 (8C16T+8C8T) |
125W | 125W |
241W | 56s |
65W | - | - | - |
|
35W | - | - | - | |
Core i7 (8C16T+4C4T) |
125W | 125W | 190W | 56s |
65W | - | - |
- | |
35W | - | - | - | |
Core i5 (6C12T+4C4T) |
125W | 125W | 150W | 56s |
65W |
- | - | - |
電力制限以外にもCPU動作に大きく影響する項目についてまとめました。
Turbo Boost Max 3.0はアクティブなタスクに対して単コア最大動作倍率など最も高速に動作している(電圧特性に優れた)コアを割り当てる機能です。
Thermal Velocity Boostは閾値温度70度以下においてブーストクロックを引き上げる機能と説明されていますが、機能の実装としてはBy Core Usage倍率に対してTVB Ratio Clippingという設定によってCPU温度が閾値(一般に70度)以上の時に動作倍率を-1倍に、正確にはCPU毎に設定された倍率に引き下げるという形になっています。
AVX Voltage Guardband ScaleはAVX2やAVX512を実行時のコア電圧を調整する機能です。0~255の整数値で設定し、定格設定は128です。128以下では低電圧化、128以上では高電圧化します。(マザーボードに依っては1.00を基準に0.01~1.99で設定)
低電圧化というよりもAVX実行時の電力制限(AVX限定のPL1)に近い動作なので、Scale=1でもクラッシュすることはありませんが、性能は低下するものと思われます。
Turbo Boost Max 3.0は多くの600シリーズマザーボードで基本的に有効になっています。Thermal Velocity Boostは600シリーズマザーボードでも機能強化版が実装されていますが標準ではオフになっています。マザーボードによっては電力保護や省電力化の一環で同機能を使用した電力制限が設けられていることがあります。
さらに備考として、Z690マザーボードの中にはCPU個体毎のV-Fカーブ(Adaptive Mode)にマイナスオフセットを適用する低電圧化や、CPU Package Powerのモニタリング値にマイナスオフセットを適用してブーストを引き上げるチューニングが標準が施されているものがあります。
検証機材として採用しているMSI MEG Z690 UNIFYに関しては、PL1の扱いにだけ疑問が残るものの、それ以外ではIntel公式仕様を外れるようなチューニングは施されていないので、PL1の設定値にだけ気を配れば公式仕様に沿った検証が可能です。(この部分の下調べが、毎回、各メーカーのMBをとっかえひっかえで、実はとても大変でした。)
MSI MEG Z690 UNIFY(BIOS:1.11) Core i9 12900K標準動作設定 |
||
標準設定 | 定格 | |
単コア最大倍率 | 52 | 52 |
全コア最大倍率 | 49 | 49 |
Turbo Boost Max 3.0 | On | On |
TVB Ratio Clipping | Off | Off |
PL1, PL2, Tau | 241W, 241W, 56s No, No, - (初期設定に依る) |
125W (241W?), 241W, 56s |
AVX2 Offset | 0 | 0 |
AVX2 Voltage Guardband | 128 (1.00) |
128 (1.00) |
備考 |
V-F電圧のオフセットなし CPU Package Powerモニタリング値のオフセットなし |
上述の通り、Intel第12世代CPU関連の検証機材として当サイトではZ690マザーボード「MSI MEG Z690 UNIFY」を統一検証機材に採用しています。
「MSI MEG Z690 UNIFY」はCore i9シリーズの常用限界OCにもパッシブ空冷のまま対応できる105A対応Dr. MOSで構成される21フェーズの超堅牢VRM電源を搭載することに始まり、5基のNVMe対応M.2スロットや2Gb超の有線・無線接続が可能なネットワークアダプタ、USB3.2 Gen2x2対応USB Type-Cポートなど足回りも優れ、第12世代CPU上位モデルのポテンシャルをフルに引き出すことが可能な製品です。
これだけのスペックなので価格は高価ですが、それに見合った価値があり、予算の問題がなければ間違いのない1枚だと思います。
・「MSI MEG Z690 UNIFY」をレビュー 【近日公開】
ベンチ機のシステムストレージには「Samsung SSD 980 PRO 500GB」を使用しています。Samsung SSD 980 PROは、PCIE4.0対応によって連続アクセススピードを最大で2倍に飛躍させただけでなく、ランダム性能の向上によってSSD実用性能においても前世代970 PROから大幅な向上を果たし、PCIE4.0アーリーアダプターなPhison PS5016-E16採用リファレンスSSDよりも高速なので、これからPCIE4.0対応プラットフォームの自作PCを組むなら、システム/データ用ストレージとして非常にオススメな製品です。
・「Samsung SSD 980 PRO 1TB」をレビュー。堂々の最速更新
360サイズや240サイズなど120mmファンを複数搭載できるマルチファンラジエーターの簡易水冷CPUクーラーを使用するのであれば、「Noctua NF-A12x25 PWM」への換装もおすすめです。「Noctua NF-A12x25 PWM」は、超硬質かつ軽量な新素材「Sterrox LCP」の採用によってフレーム-ブレード間0.5mmの限界を実現させた次世代汎用120mm口径ファンとなっており、1基あたり3500円ほどと高価ですが、標準ファンよりも静音性と冷却性能を向上させることができます。
・「Noctua NF-A12x25 PWM」を360サイズ簡易水冷に組み込む
CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。Thermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスで適量が塗布されていれば、CPUクーラー固定時の圧着でヒートスプレッダ全体へ自然に伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
サーマルグリスの代用品として、数年スパンの長期使用においても性能低下が基本的になく再利用も可能、グリスが零れてマザーボードが汚れたり壊れる心配もないので、炭素繊維サーマルシート「Thermal Grizzly Carbonaut」もオススメです。
・「Thermal Grizzly Carbonaut」はCore i9 9900Kを冷やせるか!?
Intel Core i9 12900Kの動作クロック・消費電力・温度
「Intel Core i9 12900K」に関する検証のはじめに、「Intel Core i9 12900K」の動作クロック、消費電力、温度など同CPUの基本的な動作についてチェックしていきます。「Intel Core i9 12900K」は、8コア16スレッドの高性能P-Coreと8コア8スレッドの高効率E-Coreで構成された16コア24スレッドのCPUです。
「Intel Core i9 12900K」の高性能P-Coreは8コア16スレッドのCPUであり、定格動作において1コア~8コアまで同時に負荷がかかった時の最大動作倍率は最大コア数から順番に[52, 51, 50, 50, 49, 49, 49, 49]です。P-Coreでは全8コアへ同時に負荷がかかっても最大で4.9GHz動作が可能となっています。
一方、高効率E-Coreは8コア8スレッドのCPUであり、定格動作において1コア~8コアまで同時に負荷がかかった時の最大動作倍率は最大コア数から順番に[39, 39, 39, 39, 37, 37, 37, 37]です。E-Coreでは全8コアへ同時に負荷がかかっても最大で3.7GHz動作が可能となっています。
HWiNFOから「Intel Core i9 12900K」のコアクロックの挙動を確認したところ、確かに負荷の軽い場面では最大5.2GHz程度で動作するコアがありました。
またIntel第12世代Core-S CPUの製品仕様によると、Intel Core i9 12900Kの電力制限は、「Processor Base Power(長期間電力制限/Power Limit 1)」が125W(=TDP)、「Maximum Turbo Power(短期間電力制限/Power Limit 2)」が241W、「Turbo Boost Power Time Window(短期間電力制限時間/Tau)」が56sになっているはずです。
「Intel Core i9 12900K」をZ690マザーボード「MSI MEG Z690 UNIFY(BIOS:1.11)」と組み合わせ、初期設定においてIntel公式仕様と一致する(はずの)モードを選択すると、PL1:241W、PL2:241W、Tau:56sの電力制限で動作します。
現時点ではK付きCPUの動作としてこれが正しいのか分からないのですが、ひとまず、BIOS設定から手動で『PL1:125W、PL2:241W、Tau:56s』となるように設定して動作をチェックしました。
Intel公式ページの表記に合わせて『PL1:125W、PL2:241W、Tau:56s』でCore i9 12900Kを動作させたところ、Cinebenchのような短時間のベンチマークや、Aviult&x264エンコードの最初の1分弱など、全コアへ同時に大きな負荷がかかった時の動作クロックはP-Coreなら4.9GHz、E-Coreなら3.7GHzに張り付きました。このときCPU Package PowerはPBP=PL1=125Wを大幅に超過し230W程度を示します。
仮にマザーボードの標準設定において電力制限が無効化されている場合、コアクロックは最大動作倍率に張り付いて変動せず、負荷開始からTauが経過しても、この消費電力(もしくはそれ以上)が発生し続けます。
なおCore i9 12900Kのフル負荷がかかった時のCPU消費電力については、AVX2をどれくらい使用するかによって220~300Wの範囲で大きく変わる可能性があります。
上のスクリーンショットはAviult&x264エンコードとなっており、CPU Package Powerは220~250Wくらいで変動するので、Core i9 12900KのMTP:241Wの範囲内に概ね収まり、最大動作倍率に張り付きますが、Cinibench R23では260~280WになるのでMTPの範囲内でも最大動作倍率よりも実際のコアクロックが低くなります。
AVX2を多く使用するタスクほどCPU消費電力が増大し、冷やすのも難しくなるのですが、Intel第12世代CPUではAVX実行時のコアクロックを引き下げるオフセット設定に加えて、AVX Voltage Guardband Scaleと呼ばれるAVXに限定した電力制限的な機能もあります。この辺りは各自で上手く調整してください。
「Intel Core i9 12900K」を仕様通り電力制御(PL1:125W、PL2:241W、Tau:56s)で動作させると、負荷開始からTauで指定される短期間電力制限の期間内ではPBPを大きく上回る消費電力が発生しますが、Tau経過後はPBP(PL1:長時間電力制限)と同じ125WへCPU Package Powerが抑制されます。
「Intel Core i9 12900K」はPL1:125Wの電力制限下において、P-Coreの実動平均コアクロックは4.0~4.1GHz程度、E-Coreの実動平均コアクロックは3.2GHz程度となります。(AVXの使用量にも依る)
続いてCPU消費電力やCPU温度の検証結果をチェックしていきます。
当サイトのCPUレビューでは主として”CPU温度への影響要因”という意味においてCPU消費電力を評価しているので、動画のエンコードによって長期間電力制限が効いている状態の平均的な消費電力をCPU消費電力として比較します。
個人的な意見としては短期間電力制限は短期間かつCPU温度によっても制御されるのでCPU温度への影響要因として比重は小さく、また瞬間ピーク電力はせいぜいがTDP+100W程度なので、マザーボードVRM電源の破損を心配するほどではなく、その程度の電力超過は電源ユニットで十分吸収できるので、評価対象としてあまり意味がないと思っています。
またCPU製品仕様のTDPについては、定義がIntel/AMDで厳密には異なり、各社の具体的な測定・算出方法も不明なので、CPU動作クロックを含めて総合的に判断する必要があるものの、基本的には長期間電力制限時の消費電力がTDP仕様値とほぼ一致、もしくはTDP仕様値を下回れば正常であると評価します。
当レビュー記事では簡単のため割愛しますが、CPUの消費電力に関する評価基準の補足として下記の記事も参考にしてください。
・2019年最新CPUの消費電力・発熱・TDP・温度について - 爆熱評価のウソほんと
CPU消費電力の測定には電源ユニット「Corsair HX1200i」のCorsair Linkによる電力ログ機能を用いてコンセントからの出力ではなく変換ロスを差し引いた入力電力をチェックしています。
また電力測定の際は上記の主電源ユニットに加えて、CPUへの電力供給を行うEPS端子を除いた、各種電源端子へ接続するために別の副電源ユニットを使用しています。そのため測定値にはEPS電源端子を経由して供給されるCPU消費電力以外の消費電力は含まれません。なお電源ユニットに対する実際の最大瞬間負荷は測定値より50~100W上回る場合があるので電源ユニットの電源容量選択の参考にする場合は注意してください。
CPUの消費電力や温度の測定を行う負荷テストについては、FF14ベンチマークの動画(再生時間6分40秒、4K解像度、60FPS、容量5.7GB)を変換ソースとして、Aviutl&x264を使って動画のエンコードを行います。動画エンコードの同時実行数については4~6コアは並列なし、8~14コアは2並列実行、16コア以上は3並列実行としています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTやPrimeなど専用負荷ソフトを使用しているレビューもありますが、管理人の私見としてはCPU負荷が非現実的なので、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースを想定した場合、ほぼ最大のCPU負荷となるx264による動画エンコードとストレステストに採用しています。
空冷CPUクーラーでも検証したかったのですが、今回は時間の都合で360サイズ簡易水冷CPUクーラーのみを使用して「Intel Core i9 12900K」の温度や消費電力を検証してみました。
まずは「Intel Core i9 12900K」を公式仕様通りの電力制御(PL1:125W、PL2:241W、Tau:56s)で負荷をかけたケースを見ていきます。
「Intel Core i9 12900K」は短期間電力制限PL2によって全コアが最大動作倍率付近で動作すると、ベンチ板上で360サイズ簡易水冷CPUクーラーを使用した測定でもCPU温度が80度近くまで達しますが、Tauが経過し、CPU Package Powerが200Wに制限されるようになるとCPU温度は55度前後に収まります。
後述のように電力制限を125W以上に解除して200Wクラスの発熱になる状態では大型ハイエンド空冷や、240サイズ以上のマルチファン簡易水冷CPUクーラーが推奨ですが、仕様値通りにPBP125Wの電力制限が適用されていれば、「Intel Core i9 12900K」は一般的な120サイズ冷却ファンの空冷CPUクーラーでも問題なく運用できるはずです。
なお動画エンコード程度のAVX使用であれば、PL1:125Wの制限下において、P-Coreの実動平均コアクロックは4.0~4.1GHz程度、E-Coreの実動平均コアクロックはは3.2GHz程度となります。
PL1:125Wで動作させた時のCore i9 12900KのCinebench R23のスコアがこちら。Core i9 11900Kの電力制限無効化と比較しても大幅に上回るマルチスレッド性能です。
続いて、MSI MEG Z690 UNIFYやASUS ROG MAXIMUS Z690 HEROといった第12世代CPUのレビュー用メディアキットで採用されているZ690マザーボードにおいて、定格扱いになっているPL1=PL2=241Wの設定で負荷をかけたケースを見ていきます。
電力制限を241Wに設定しているので、CPU Package Powerは当然、241W前後に張り付くように推移しています。360サイズ簡易水冷CPUクーラーを使用していてもCPU温度は平均81.8度、最大87度です。強制的にコアクロックが低下する臨界温度100度まではまだ余裕はありますが、やはり高温です。
Core i9 12900Kは前世代より微細化されたプロセスで製造されておりCPUコアの実装密度が高いためか、Core i9 10900KやCore i9 11900Kに比べてCPU Package Powerに対するCPU温度が高めな印象です。
なお動画エンコード程度のAVX使用であれば、PL1:241Wの制限下において、P-Coreの実動平均コアクロックはは4.8~4.9GHz程度、E-Coreの実動平均コアクロックはは3.7GHz程度となります。E-Coreのほうは最大動作倍率に張り付きますが、P-CoreはPL:241WだとAVXの使用次第で最大動作倍率よりも少し下がってしまうようです。
続いて電力制限PL1/PL2を完全に無効化した設定で負荷をかけたケースを見ていきます。
Core i9 12900KとMSI MEG Z690 UNIFYを組み合わせて電力制限を無効化して、動画エンコードによって負荷をかけると、CPU Package Powerは平均で240W程度、ピークでは260W程度に達します。360サイズ簡易水冷CPUクーラーを使用していてもCPU温度は平均82.4度、最大88度です。
なお動画エンコード程度のAVX使用であれば、電力制限無効化でCPU Package Powerの最大値は260W程度となり、P-CoreとE-Coreの両方が最大動作倍率に張り付きます。
MSI MEG Z690 UNIFYで電力制限を241Wから少し引き上げて288Wにする設定を設けていたのも、AVXの使用に依らず、最大動作倍率に張り付く設定だったと考えれば納得がいきます。
なお今回、Core i9 12900Kの発売前検証で使用できたもう1つのZ690マザーボード「ASUS ROG MAXIMUS Z690 HERO(BIOS:0604)」では、動作倍率や電力制限の設定こそIntelの公式仕様やMSI MEG Z690 UNIFYと共通でしたが、
【11月28日追記】 複数のZ690マザーボードで検証したところ、MSI MEG Z690 UNIFYが標準よりも高電圧化されているようです。
以上のように、CPU Package Powerが125W、少し上を見て160Wくらいの負荷であれば120サイズ空冷CPUクーラーでも問題なく運用できると思いますが、200Wを超えると大型のハイエンド空冷クーラーやマルチファンの簡易水冷CPUクーラーが要求されます。220~250W辺りで360サイズ簡易水冷CPUクーラーでもやや厳しくなってきます。
流石にDIY水冷を導入するのはハードルが高いと思いますが、最近のPCケースなら360サイズラジエーターを問題なく設置できるはずなので、「Intel Core i9 12900K」を電力制限無効や全コア5GHz超の手動OCで使い倒したい人には「MSI MPG CORELIQUID K360」や「ASUS ROG RYUJIN II 360」や「Fractal Design Celsius S36」のような360サイズ簡易水冷CPUクーラーがオススメです。
・「MSI MPG CORELIQUID K360」をレビュー
検証機材として組み合わせて使用されるマザーボードによっては、標準設定がTDP125Wを満たす定格動作を無視されていることがあります。
そういったマザーボードを使用したレビューにおいてはIntel Core i9 12900Kは消費電力(発熱)が非常に大きく、CPU温度が高温になるためハイエンド空冷やマルチファン大型簡易水冷のCPUクーラーが必要である、と評価される恐れがありますが、仕様値通りにTDP125Wの動作設定であれば当然ながら消費電力は抑制され、一般的な空冷CPUクーラーでも問題なく運用できます。
当サイトでは約4年前のCore i9 7900Xのレビューから指摘していたことですが、『IntelはES品等の検証において定格動作設定を使用するガイドラインを示す』、『マザーボードベンダーはBIOS標準設定に定格動作を満たす設定を採用する』の2点を徹底してもらいたいというのが管理人の意見です。
Intel Core i9 12900Kのレビューまとめ
「Intel Core i9 12900K」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ or 概要
- メインストリーム向け16コア24スレッドCPU
- PL1:125W制限下において、実動平均はP-Coreが4.0~4.1GHz程度、E-Coreが3.2GHz程度
- PL1:125Wなら空冷CPUクーラーでも問題なく運用可能
- IPC向上によりCore i9 11900Kよりも高速なシングルスレッド性能
- 144FPS~240FPSのハイフレームレートなPCゲーミングで最速クラス
- 7.9万円程度と高価(2021年11月現在)
- PL2:240Wクラスは360サイズ簡易水冷でもギリギリ
- ピーク負荷が大きいのでVRM電源が弱いMBでの運用は非推奨(Z690なら基本問題なし)
【今回は速報のショートレビューなので細かい評価については割愛します。】
以上、「Intel Core i9 12900K」の速報レビューでした。
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Intel第12世代Alder Lake-Sシリーズから16コア24スレッドで倍率アンロックなOC対応の最上位モデル「Intel Core i9 12900K」について動作クロック、温度、消費電力に関する速報レビューをお届けします。https://t.co/gvExUVv4DB pic.twitter.com/9jPvPFQrf1
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) November 4, 2021
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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