Intel Core i9 12900KS


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単コア最大ブーストクロックが5.5GHzに達する16コア24スレッドCPUの選別ハイクロックモデル「Intel Core i9 12900KS」は非常に発熱の大きいCPUとして評価されていますが、標準モデル12900Kと同じ動作倍率で運用すると、12900K比でCPU消費電力が20%も減り、10度以上も低いCPU温度で運用できるようになります。VFカーブも活用すれば消費電力が1/3減、CPU温度は20度低下に!


製品公式ページ:https://ark.intel.com/content/www/jp/ja/ark/products/225916/intel-core-i912900ks-processor-30m-cache-up-to-5-50-ghz.html





Intel Core i9 12900KS レビュー目次


1.Intel Core i9 12900KSの外観・付属品・概要
2.Intel Core i9 12900KSの検証機材・動作設定


3.Intel Core i9 12900KSの動作クロック・消費電力・温度
4.Intel Core i9 12900KSを12900Kの動作倍率で運用すると




Intel Core i9 12900KSの外観・付属品・概要

「Intel Core i9 12900KS」の外観や付属品について簡単にチェックしておきます。またこの章では「Intel Core i9 12900KS」の仕様等について簡単に触れておきたい概要もあれば紹介します。
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「Intel Core i9 12900KS」の製品パッケージについて、プリントは多少異なりますが、基本的には先行して発売された標準モデル12900Kと共通です。
外形はシンプルな立方体ですが、内部にIntel第12世代CPUダイをプリント後のシリコンウェーハを模した金色の円盤が内蔵されているところがユニークです。
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パッケージのチェックはこの辺りにして、肝心の「Intel Core i9 12900KS」のCPU本体を見ていきます。
「Intel Core i9 12900KS」ではCPUソケットがLGA1700に変わり、CPUサイズも従来の正方形から縦長の長方形に変わっています。
Core i9 12900KSなどLGA1700ソケットに刷新されたIntel第12世代CPUを、前世代Core i9 11900Kと比較するとこんな感じです。横幅はほぼ同じですが縦が1cm弱伸びています。
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重量を比較してみるとCore i9 11900Kは27gに対して、「Intel Core i9 12900KS」は36gでした。
CPU基板本体の重量は6~7gでほぼ同じですが、第11世代CPUのIHSの重量が21gに対して、「Intel Core i9 12900KS」など第12世代CPUのIHSの重量は29g、約40%も質量が増していました。
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Intelの公式リリースによると、第12世代CPUでは『CPUダイとヒートスプレッダの間にはTIMとしてSTIMが採用され、前世代よりもさらにCPUダイとSTIM層を薄くし、放熱バッファとなるヒートスプレッダを厚くすることでCPU温度的にも改良が施されている』とのこと。
Intel 12th-Gen AlderLake-S_Thermal Improvement
第11世代ではIHS周辺の素子レイアウトが非常にタイトで難しかったのですが、第12世代CPUは余裕があり殻割りそのものはツールを使用すれば難しくありません。詳しくはこちらの記事で。



パッケージや外観の話はこの辺りにして、続いて「Intel Core i9 12900KS」のスペックについて見ていきます。
Alder Lake(アルダーレイク)のコードネームで呼ばれるIntel第12世代Core-S CPUでは、高性能コア「P-Core」と高効率コア「E-Core」の2種類の混成でCPUを構成するIntel Hybrid Computing Architectureが採用されており、「Intel Core i9 12900KS」を含めCore i9シリーズは、8コア16スレッドの高性能P-Coreと8コア8スレッドの高効率E-Coreを組み合わせた16コア24スレッド(8C/16T+8C8T)のCPUです。

「Intel Core i9 12900KS」は、P-Coreの単コア最大ブーストクロックが5.5GHz(TBM3.0有効時)、全コア最大ブーストクロックが5.2GHzとなっています。CPU消費電力の指標となるProcessor Base Powerは150W、Maximum Turbo Powerは241Wです。
「Intel Core i9 12900KS」の北米希望小売価格(1/1000個あたり)は739ドルからとのことで、国内では4月5日解禁時の予定販売価格は税込み10.5万円となっています。
Intel Core i9 12900KS_kv

Intel第12世代Alder Lake-SシリーズCPUの高性能P-Coreは、第10世代Core CPUを基準にしてコアクロック当たりのシングルスレッド性能が28%も向上しているとアピールされています。
また高効率E-Coreは省電力に性能を振っており、もともとAtomシリーズ、Montの系譜なので性能に不安を感じる人もいるかもしれませんが、第10世代Core CPUと同等のシングルスレッド性能です。AMD製CPUでいうとRyzen 3000シリーズと同等なので、E-Coreの性能についても心配は全くありません。
Intel 12th Core_Core i9 12900KS_Perf_IPC
分かりやすさを優先するなら、Core i9 12900Kは、性能が10~20%向上した8コア16スレッドのCore i9 11900Kと、省電力性能が向上した8コア8スレッドのCore i7 10700を2個1にしたようなCPUです。
下位モデルのCore i7やCore i5なら4コア4スレッドのCore i3 10300が補助のE-Coreとして動作するようなイメージです。
Core i9 12900KS_hybrid

CPU消費電力に関する表記として、従来では”TDP(Thermal Design Power)”が使用されていましたが、Intel第12世代Core-Sからは、長期間電力制限PL1(=旧TDP)に当たる数値を「Processor Base Power (Base, PBP)」、短期間電力制限PL2に当たる数値を「Maximum Turbo Power (Turbo, MTP)」として、公式仕様に明記されるようになりました。
Intel 12th-Gen AlderLake-S_Base Power and Turbo Power
従来ではデータシートにこそ記載されているものの、半ば隠しパラーメータのような扱いだった短期間電力制限PL2、「Maximum Turbo Power (Turbo, MTP)」もCore i9 12900Kなど第12世代CPUではIntel公式ページでしっかりと明記されています。
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Intel 600シリーズチップセット搭載マザーボードのうち、コアクロックのOCに対応しているのは最上位のZ690だけです。
下位チップセットのH670やB660では定格のBy Core Usage倍率を上回るような動作倍率設定(OC設定)を行うことはできません。
一方で、動作倍率の引き下げによる省電力化は可能ですし、定格動作倍率の中でも動作電圧のマイナスオフセットによる省電力化、一定電力制限内での性能向上を狙うことは可能です。
省電力運用ならH670やB660の下位チップセット搭載マザーボードでも十分と言えばあながち間違いでもありませんが、V-Fカーブ調整に対応するのはZ690だけなので実のところ省電力運用においてもZ690は上位互換です。
Mini-ITX環境はI/O数的に下位チップセットで十分かと思いきや、省電力運用や冷却リソースが限られた中での性能追求ならZ690がベストな選択肢になり得ます。
Intel 600 Series_OC-Feature



Intel Core i9 12900KSの検証機材・動作設定

以下、「Intel Core i9 12900KS」の各種検証を行うベンチ機、および比較対象となる各CPUのベンチ機の詳細となります。

Intel LGA1700(Z690)環境 テストベンチ機の構成
CPU Intel Core i9-12900KS (レビュー
Intel Core i9 12900K (レビュー
マザーボード ASUS ROG MAXIMUS Z690 HERO
レビュー
CPUクーラー Fractal Design Celsius S36 (レビュー
Noctua NF-A12x25 PWM (レビュー
メインメモリ G.Skill Trident Z5 RGB
F5-6000U3636E16GX2-TZ5RS
DDR5 16GB*2=32GB (レビュー
6000MHz, 36-36-36-76
ビデオカード(共通) ZOTAC RTX 3090 AMP Extreme Holo
レビュー
システムストレージ(共通) Samsung SSD 980 PRO 500GB
レビュー
OS(共通) Windows 11 Home 64bit
電源ユニット(共通) Corsair HX1200i (レビュー
ベンチ板 STREACOM BC1 (レビュー


システムメモリの検証機材には、高級感のあるヒートシンクや8分割ARGB LEDを搭載してデザイン面でも優れ、16GB×2枚組み32GBの大容量で6000MHz/CL36のメモリOCに対応した「G.Skill Trident Z5 RGB F5-6000U3636E16GX2-TZ5RS」を使用しています。
「G.Skill Trident Z5 RGB」をレビュー。XMPで6000MHz OCに対応!
G.Skill Trident Z5 RGB

ベンチ機のシステムストレージには「Samsung SSD 980 PRO 500GB」を使用しています。Samsung SSD 980 PROは、PCIE4.0対応によって連続アクセススピードを最大で2倍に飛躍させただけでなく、ランダム性能の向上によってSSD実用性能においても前世代970 PROから大幅な向上を果たし、PCIE4.0アーリーアダプターなPhison PS5016-E16採用リファレンスSSDよりも高速なので、これからPCIE4.0対応プラットフォームの自作PCを組むなら、システム/データ用ストレージとして非常にオススメな製品です。
「Samsung SSD 980 PRO 1TB」をレビュー。堂々の最速更新
Samsung SSD 980 PRO 1TB

360サイズや240サイズなど120mmファンを複数搭載できるマルチファンラジエーターの簡易水冷CPUクーラーを使用するのであれば、「Noctua NF-A12x25 PWM」への換装もおすすめです。「Noctua NF-A12x25 PWM」は、超硬質かつ軽量な新素材「Sterrox LCP」の採用によってフレーム-ブレード間0.5mmの限界を実現させた次世代汎用120mm口径ファンとなっており、1基あたり3500円ほどと高価ですが、標準ファンよりも静音性と冷却性能を向上させることができます。
「Noctua NF-A12x25 PWM」を360サイズ簡易水冷に組み込む
Noctua NF-A12x25 PWM x3


CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。


グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。Thermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスで適量が塗布されていれば、CPUクーラー固定時の圧着でヒートスプレッダ全体へ自然に伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
Thermal Grizzly Kryonaut_apprication

サーマルグリスの代用品として、数年スパンの長期使用においても性能低下が基本的になく再利用も可能、グリスが零れてマザーボードが汚れたり壊れる心配もないので、炭素繊維サーマルシート「Thermal Grizzly Carbonaut」もオススメです。
「Thermal Grizzly Carbonaut」はCore i9 9900Kを冷やせるか!?
Thermal Grizzly Carbonaut_Core i9 9900K



Intel Core i9 12900KSの動作クロック・消費電力・温度

「Intel Core i9 12900KS」の動作クロック、消費電力、温度など同CPUの基本的な動作についてチェックしていきます。

「Intel Core i9 12900KS」は、8コア16スレッドの高性能P-Coreと8コア8スレッドの高効率E-Coreで構成された16コア24スレッドのCPUです。
Intel Core i9 12900KS_CPU-Z
「Intel Core i9 12900KS」の高性能P-Coreは8コア16スレッドのCPUであり、定格動作において1コア~8コアまで同時に負荷がかかった時の最大動作倍率は最大コア数から順番に[55, 55, 52, 52, 52, 52, 52, 52]です。P-Coreでは全8コアへ同時に負荷がかかっても最大で4.9GHz動作が可能となっています。
一方、高効率E-Coreは8コア8スレッドのCPUであり、定格動作において1コア~8コアまで同時に負荷がかかった時の最大動作倍率は最大コア数から順番に[40, 40, 40, 40, 40, 40, 40, 40]です。E-Coreでは全8コアへ同時に負荷がかかっても最大で4.0GHz動作が可能となっています。
Intel Core i9 12900KS_XTU

HWiNFOから「Intel Core i9 12900KS」のコアクロックの挙動を確認したところ、確かに負荷の軽い場面では最大5.5GHz程度で動作するコアがありました。
Intel Core i9 12900KS_tubo-clock_single

Intel第12世代Core-S CPUの製品仕様によると、Intel Core i9 12900KSの電力制限は、「Processor Base Power(長期間電力制限/Power Limit 1)」が150W(=TDP)、「Maximum Turbo Power(短期間電力制限/Power Limit 2)」が241W、「Turbo Boost Power Time Window(短期間電力制限時間/Tau)」が56sです。
ただし例外的にK付きCPUはPL1=PL2=MTPが適用されるので、Intel Core i9 12900KSの電力制限はシンプルにPL1=PL2=241Wとなります。
Intel Package Power Control

なお上記の電力制限の参照値となるCPU Package PowerはそのままCPU消費電力のことですが、CPU個体差(V-Fカーブの違い、低電圧特性)で異なるだけでなく、組み合わせるマザーボードによってもCPU電圧の扱いに違いがあるため、そもそものCPU Package Powerが変わってしまいます。
同じCPU個体を使用していてもマザーボードによってCPU消費電力が変わるという事情があり、一概に評価するのが難しいのですが、今回はZ690マザーボードASUS ROG MAXIMUS Z690 HEROの例を紹介します。

「Intel Core i9 12900KS」にZ690マザーボードASUS ROG MAXIMUS Z690 HEROを組み合わせた場合、BIOS:1304だとThermal Velocity Boostが有効になっているのか、CPU温度が50~90度の間に1つ閾値があって、その閾値以上だと全コア最大動作倍率が51に、さらにCPU温度が90以上かつ臨界温度(一般に100度)になると全コア最大動作倍率が50に下がるようです。
Intel Core i9 12900KS_ASUS ROG MAXIMUS Z690 HERO_1304
クリエイティブタスクなど負荷の大きいシーンでは(CPU Package PowerはAVX2をどれくらい使用するかによっても変わるのですが)、Thermal Velocity Boostによって全コア最大動作倍率が51倍に下がるとCPU Package Powerは240W~250W程度に収まるので、MTP:241Wという仕様値を考えると、この動作がIntel公式仕様通りという気がします。
Intel Core i9 12900KS_temp_2_PL-No-and-TVB_1
Intel Core i9 12900KS_temp_2_PL-No-and-TVB_2

一方でASUS ROG MAXIMUS Z690 HEROのBIOSバージョンを現在最新の1403にすると、Thermal Velocity Boostが無効化されるのか、100度以下においてはCPU温度に依存したコア倍率制限が無くなり、100度以下に冷やせるのであれば全コア5.2GHz動作となります。(電力制限無効化の場合)
Intel Core i9 12900KS_ASUS ROG MAXIMUS Z690 HERO_1403
「Intel Core i9 12900KS」の電力制限無効化によるP-Core All 5.2GHzにおいて、Cinebench R23のマルチスレッドスコアは29600程度です。単コア5.5GHzなのでシングルスレッドスコアも12900Kより高く、2150前後をマークします。
Intel Core i9 12900KS_Cinebench R23

「Intel Core i9 12900KS」の電力制限無効において、CPU Package PowerはAVX2をどれくらい使用するかによって変わるのですが、x264動画エンコードだと270~280W前後に達しました。
Intel Core i9 12900KS_temp_1_PL-No_1
Intel Core i9 12900KS_temp_1_PL-No_2

上のグラフの通り、「Intel Core i9 12900KS」の電力制限無効にフル負荷をかけ続けると、360サイズ簡易水冷CPUクーラーを使用していても、CPU Package Powerが250W前後でCPU温度85~90度、280W前後でCPU温度95~100度になる感じです。
当サイト的に水冷ヘッドの性能に定評のあるFractal Design Celsius S36でもこういった次第なので、TVB無効で全コア5.2GHz動作になるマザーボードを組み合わせた場合は、BIOS設定から『PL1:240W、PL2:300W、Tau:56s』程度に電力制限を適用するのがオススメ。
ASUS ROG MAXIMUS Z690 HERO_BIOS_OC_22



Intel Core i9 12900KSを12900Kの動作倍率で運用すると

少々前置きが長くなりましたが、本題、選別ハイクロックモデル「Intel Core i9 12900KS」に標準モデル12900Kの動作倍率を適用するとどうなるのかチェックしていきます。
今回は、360サイズ簡易水冷CPUクーラーを使用して「Intel Core i9 12900KS」の温度や消費電力を検証しています。
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なお以下の検証結果はCPUの個体差、電圧特性で変わるのでご注意を。
ASUS製Z690マザーボードには電圧特性の良さを示す”SP値”という独自の機能があるのですが、今回の検証では、SP:86(P-Core:94, E-Core:72)のCore i9 12900Kと、SP:97(P-Core:106, E-Core:79)のCore i9 12900KSを使用しています。どちらも超当たり石ではありませんが、そこそこ良い個体のはずです。
Intel Core i9 12900KS_ASUS-SP-Score-horz
以下、管理人の私見ですが、Core i9 12900Kは10個には届かないものの結構な数を購入して選別しましたが、SPは80~86前後でした。メディアサンプルや初期流通では稀に90以上の個体があったようですが、現在、新品で入手できる12900KはSPが80台前半から半ばではないかと思います。
12900KSは1個しか購入していないので海外フォーラムのスクショとかを流し見た感想ですが、90台後半で良個体、100超えたら当たり石だと思います。



CPUの消費電力や温度の測定を行う負荷テストについては、FF14ベンチマークの動画(再生時間6分40秒、4K解像度、60FPS、容量5.7GB)を変換ソースとして、Aviutl&x264を使って動画のエンコードを行います。動画エンコードの同時実行数については4~6コアは並列なし、8~14コアは2並列実行、16コア以上は3並列実行としています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTやPrimeなど専用負荷ソフトを使用しているレビューもありますが、管理人の私見としてはCPU負荷が非現実的なので、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースを想定した場合、ほぼ最大のCPU負荷となるx264による動画エンコードとストレステストに採用しています。
Core i9 7980XE_Test


まずは標準モデルIntel Core i9 12900Kを電力制限無効で負荷をかけたケースを見ていきます。
動画エンコードによって負荷をかけると、CPU Package Powerは平均で200W程度、ピークでは220W程度に達します。360サイズ簡易水冷CPUクーラーを使用すればCPU温度は平均76.0度、最大81度です。
Intel Core i9 12900K_temp_PL-No_1
なお動画エンコード程度のAVX使用であれば、電力制限無効化でCPU Package Powerは平均200W程度となりCPU温度も十分に低いので、P-Core All 4.9GHzとE-Core All 3.7GHzでいずれも最大動作倍率に張り付きます。
Intel Core i9 12900K_temp_PL-No_2

続いて「Intel Core i9 12900KS」にCore i9 12900Kの動作倍率を適用したケースを見ていきます。
「Intel Core i9 12900KS」は標準V-Fカーブのままでも12900Kと比較してどれくらい電圧値が低いのか、言い換えればどれくらい電力特性が良く、省電力性能に優れたCPUダイが選別されているのかチェックしたいので、BIOS設定は単純にBy Core Usage倍率を12900Kと同じにするだけです。
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12900Kの動作倍率を適用した「Intel Core i9 12900KS」へ動画エンコードによって負荷をかけると、CPU Package Powerは平均で166W程度に収まります。360サイズ簡易水冷CPUクーラーを使用すればCPU温度は平均64.2度、最大67度です。
Intel Core i9 12900KS_temp_3_eq12900K_1
動画エンコード程度のAVX使用であれば、電力制限無効化でCPU Package Powerは160W~170W程度となりCPU温度も十分に低いので、P-Core All 4.9GHzとE-Core All 3.7GHzでいずれも最大動作倍率に張り付きます。
Intel Core i9 12900KS_temp_3_eq12900K_2

当然ですが、「Intel Core i9 12900KS」を12900Kと同じ動作倍率にするとマルチスレッド性能は12900Kと同等になります。
ただ、「Intel Core i9 12900KS」はP-Core All 5.2GHzで動作する素質がある個体だけあって、単コア最大5.2GHzの設定だと12900KSのほうがシングルスレッドは高いスコアをマークしやすくなっています。
Intel Core i9 12900K_Cinebench R23
Intel Core i9 12900KS(=12900K)_Cinebench R23

CPUや動作設定毎に別グラフだと分かり難いので、「Intel Core i9 12900KS」の電力制限無効、電力制限無効&TVB、12900K同等設定、およびCore i9 12900Kの電力制限無効の4種類について動画エンコード負荷テスト中のCPU温度を比較したのが次のグラフです。
「Intel Core i9 12900KS」は電力制限を無効化した場合、TVBが有効・無効に依らず(241W制限としてもTVB有効時からマイナス5度前後)、非常に高温なのは上で説明した通りです。
しかしながら「Intel Core i9 12900KS」を12900Kと同じ動作倍率に下げると、元の動作倍率の時と比べて20~30度も温度が低下し、Core i9 12900Kそのものと比較しても10度以上も低温で運用できるようになります。
Intel Core i9 12900KS_temp_vs-12900K_temp
同じく4種類について負荷テスト中のCPU Package Powerを比較したのが次のグラフです。
Core i9 12900K標準モデルのCPU消費電力が200W前後に対して、「Intel Core i9 12900KS」を12900Kと同じ動作倍率にすると、160W前後という20%も少ない消費電力で12900Kと同等の性能を発揮できます。
Intel Core i9 12900KS_temp_vs-12900K_power

【4月15日追記】
Core i9 12900KSの省電力化の結果が予想外に良く、個人的にも気になったので、CPU個体差で省電力化にどれくらい差が出るのかチェックしてみました。つまり12900KSおかわり。

初回でSP 97(P-Core 106)という割と良い石が手に入ったのですが、2つ目はSP 88(P-Core 93)でした。
12900Kで多いSP 80~86程度の個体よりは良いですが、12900KSとしては少々首を傾げる感じのスコアです。ただ今回は12900KSの下限を見てみたかったので好都合?
Intel Core i9 12900KS_#2

まずは、SP値が本当にOC耐性に反映されているのか、12900KS #1(SP97)と12900KS #2(SP88)で比較してみた簡易レポートです。
ASUS ROG MAXIMUS Z690 HEROにおいて、P-Core Sync All:5.3GHz or 5.4GHz、ロードラインキャリブレーション:Level 7の設定で統一し、CPUコア電圧だけを0.020V刻みで調整し、Cinebench R23が10秒前後のインターバルを置いて複数回完走できるCPUコア電圧を探ってみました。
(第12世代CPUはマザーボードやLLCでコア電圧の設定値がかなり変わるのでご注意を)

12900KS #1(SP97)はP-Core All 5.3GHzの場合、1.220VでCinebench R23を完走、1.200Vでは完走できることもあるものの、複数回試すとBSODでした。P-Core All 5.4GHzの場合は1.300Vで完走、1.280VではBSODです。

一方、12900KS #2(SP88)はP-Core All 5.3GHzの場合、1.260VでCinebench R23を完走、1.240Vでは1発でBSODでした。P-Core All 5.4GHzの場合は1.360VでもBSODとなり、CPU消費電力が300Wを超えてCPU温度100度以上でノックアウト判定です。

という感じで、今回入手した2つの12900KSについてはSP値に比例したOC耐性があることが簡易検証ではあるものの確認できました。ちなみにP-Core All 5.4GHzのCinebench R23スコア。
screenshot.1649932785


さて本題、SP値が大きく違うCore i9 12900KSを12900Kの動作倍率に下げるとどうなるのか、結果はこちら。
電圧特性が良いので当然、12900KS #1(SP97)のほうがCPU Package Powerは低いのですが、12900K動作倍率において12900KS #2(SP88)との差は10W以下でした。
P-Core All 5.3~5.4GHzのCinebench R23だと完走できる電圧において40~60Wは差があったので、12900KS #2(SP88)はもっと微妙な、12900K寄りの結果になると思っていたので意外です。
Intel Core i9 12900KS_#_temp_vs-12900K_power

P-CoreのSP値に関しては検証に使用した12900Kは94で、12900KS #2よりも高いのですが、CPU消費電力は12900KS #2のほうが明確に低くなりました。

12900Kと同等の動作倍率でもSP値に比例してCPU消費電力は変わりますが、5.3GHz超のOC耐性に比べれば影響は小さいようです。

OC耐性的にハズレ石なCore i9 12900KSだったとしても、省電力化する運用なら余裕で12900Kを上回る電力効率を発揮できるというのは朗報かと思います。



さらに省電力化を詰める方法として、Intel第12世代CPUはZ690マザーボードと組み合わせた場合にP-CoreのV/Fカーブ(動作周波数と動作電圧の関係)を細かく調整できます。
既定の周波数に対して設定されたCPU個体毎のストック電圧に対して、+/-のオフセット電圧を設定できます。Core i9 12900KSの場合は800MHz、1800MHz、4000MHz、4800MHz、5200MHz、5300MHz、5500MHzに対してmV単位でコア電圧オフセット値を指定できます。
なお5500MHzについては7~11番のV-Fポイントが割り当てられていますが、7番と8番のV-Fポイントに同じ設定値を適用してください。(同時に操作してPOST失敗の場合は、降圧時は8番の設定を適用してから再度BIOSに入って7番、昇圧時はその逆、という手順で)
BCU倍率で最大倍率を既定最大値(55倍)より大きく設定した場合は11番も必要なら調整します。
Intel Core i9 12900KS_VFc (1)
今回は「Intel Core i9 12900KS」の動作倍率を12900Kと同等に下げており、P-Core All 4.9GHzなので、4.8GHzのV/F Point 4を-80mV、5.2GHzのV/F Point 5を-50mVに設定しました。
Intel Core i9 12900KS_VFc (2)

12900Kの動作倍率を適用、さらにVFカーブで低電圧化も施した「Intel Core i9 12900KS」へ動画エンコードによって負荷をかけると、CPU Package Powerは平均で140W程度に収まります。360サイズ簡易水冷CPUクーラーを使用すればCPU温度は平均55.5度、最大59.0度です。
Intel Core i9 12900KS(VFc)_temp_vs-12900K_temp
Intel Core i9 12900KS(VFc)_temp_vs-12900K_power
Cinebench R23でも当然性能低下はなし。Cinebench R23はx264エンコードよりも消費電力が高くなりますが、それでもCPU Package Powerは150Wを超えないくらいです。
Intel Core i9 12900KS(=12900K)_VFc_Cinebench R23
screenshot.1649783077


「Intel Core i9 12900KS」は予算や発熱を度外視して性能を追求するユーザー向け製品という評価が一般的で、それも1つの正解です。
しかしハイクロックが回るということは、当然、同じコアクロックなら標準モデルよりも低電圧で動作する(可能性が高い)ので、BIOS設定で動作倍率、電力制限、V-Fカーブを弄る知識があれば、省電力性重視な運用も可能です。むしろポテンシャルで言えば最も上位互換な存在です。

今回は単純に動作倍率を12900Kに揃えただけですが、Intel Z690マザーボードならV-Fカーブによる低電圧化にも対応するので、さらなる省電力化も狙えます。
Mini-ITX対応Z690マザーボードと組み合わせれば、CPUクーラー性能が限られる小型PCで性能を追求するのにも最適なCPUだと思います。第12世代Core i9とMini-ITXで自作PCを組もうと思っている人は検討してみてはどうかなと。

以上、『Core i9 12900KSを12900Kとして使うと激冷えに!』でした。
Intel Core i9 12900KS


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