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GeForce RTX 3090 TiグラフィックボードとしてMSIからリリースされた、4スロット占有3連ファンGPUクーラーTRI FROZR 2Sを搭載し、ファクトリーOCも施されたハイエンドモデル「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」をレビューしていきます。
製品公式ページ:https://jp.msi.com/Graphics-Card/GeForce-RTX-3090-Ti-SUPRIM-X-24G
MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G レビュー目次
1.MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24Gの外観
2.MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24Gの分解
3.MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24Gの検証機材
4.MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24Gのゲーム性能
5.MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24Gの温度・消費電力・ファンノイズ
6.MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24Gのレビューまとめ
【機材協力:MSI】
MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24Gの外観
早速、MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24Gを開封していきます。パッケージを開くと、スポンジスペーサー&静電防止ビニール袋という一般的な梱包でグラフィックボード本体が鎮座していました。
付属品はMSI SUPRIMデザインのオリジナルマウスパッドとVGAホルダー、PCIE5.0変換ケーブル(to PCIE 8PIN補助電源×3)、クイックマニュアルです。
「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」のグラフィックボード本体を見ていきます。
「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」のGPUクーラーの外装は中央がヘアライン仕上げのアルミニウムになっており、左右はプラスチック製ですがガンメタルカラーでスチールのようなマットな塗装が施されているので、中央との調和も取れていて非常に高級感があります。
グラフィックボード側面のSUPRIMロゴが描かれたプレートと、中央ファンの左右の横V字ラインには、アドレッサブルLEDイルミネーションが内蔵されています。専用アプリケーション「MSI Mystic Light Sync」を使用すれば、同社製マザーボードなど対応機器と同期させてライティング制御が可能です。
「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」の全長は338mmと非常に巨大です。近年主流なオープンスペースタイプのPCケースなら干渉の心配はありませんが、PCケースフロントにストレージベイがある少し古めのPCケースではグラフィックボード設置スペースのクリアランスに注意が必要です。
また「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」は全長も非常に巨大ですが、PCIEブラケットからはみ出す高さ方向も+35mmとかなり大きいので、PCケースサイドパネルとの干渉についても注意が必要です。
「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」の3連ファンGPUクーラーはTRI FROZR 2Sと名付けられており、100mm径の大型冷却ファンが計3基設置されています。
『右』および『左と中央』は2系統で個別に制御が可能で、MSI AfterBurnerなどチューニングソフト上では前者がFan1、後者がFan2として認識されます。
TRI-FROZR 2の冷却ファンには4世代目となりさらに改良された新型ファン「TORX FAN 4.0」が採用されています。TORX FAN 4.0では2枚のファンブレードを円弧を描く外周リングで一体化することで、スリムで振動しやすいファンブレードを安定させ、静圧を向上、ブレによるノイズの低減を実現しています。また軸受けには高耐久性なダブルボールベアリングが採用されています。
TORX FAN 4.0は外周リングによって補強されたファンブレードによって、前世代TORX FAN 3.0と比較して20%高い静圧を実現しており、TGP300Wクラスに対応すべくさらに高密度になったGPUクーラーヒートシンク放熱フィンへ十分なエアフローを供給できます。
「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」はTGP450Wの発熱に対応するため、大型放熱フィンを採用したヒートシンクが搭載されており、PCIEスロットを4スロット占有します。
「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」は補助電源コネクタとして、PCIE5.0補助電源や12VHPWRと呼ばれることの多い12+4PINを搭載しています。RTX 3090 Tiとしては一般的なPCIE補助電源の構成です。
補助電源部分のPCB基板は切り込みで引っ込んでいるので補助電源ケーブルを装着しても補助電源端コネクタやケーブルとPCケースの干渉が発生し難い構造になっています。
ただ切込みの深さは10mmほどで補助電源コネクタはカバーできていますが、ケーブルがはみ出すのでPCケースサイドパネルの干渉回避を考えると、もう10mmほど切込みは深めの方がよかったと思います。
12VHPWRに対応する電源ケーブルが付属する自作PC向け電源ユニットは2022年5月現在、まだ市場にほとんど出回っていませんが、「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」は現在主流なPCIE 8PIN補助電源に変換するケーブルが標準で付属しています。
この変換ケーブルを使用することでPCIE 8PIN補助電源を3基以上使用できる電源ユニットやPCシステムであれば「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」を組み込むことが可能です。
「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」のPCIE端子と各種ビデオ出力には黒色の保護カバーが装着されています。
「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」のビデオ出力はHDMI2.1×1、DisplayPort1.4×3の4基が実装されています。
「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」にはアルミニウム製バックプレートが装着されています。2種類のカラーリング&ヘアライン仕上げで領域が斜めに分けられたスマートなデザインです。
バックプレートは基板の反りや破損を防止する保護プレートとしての役割に加えて、VRM電源回路やVRAMの実装部分裏側との間にはサーマルパッドが貼られているので冷却補助の役割も果たします。
ヘアライン仕上げのアルミニウムの質感だけでなく斜めにカットされた端面の美しく輝いており、MSIゲーミングブランドを代表するドラゴンロゴプレートに装着されたアクリルプレートも艶やかで、「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」は背面デザインにも強いこだわりを感じさせる仕上がりです。
1kg超へと大型化(大重量化)していくGPUクーラーでも、GPUコアとクーラーベースコアが適切な圧力で密接するように、板バネ構造のリテンションバックプレートも「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」には採用されています。
バックプレート右端にはエアスリットが設けられており、ファンからヒートシンクを通って背面に直接風が抜けるフロースルー構造も採用されています。
「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」は複数のBIOSを搭載したデュアルBIOSに対応し、PCIEブラケットの手前部分にはBIOS切り替え用のスライドスイッチが設置されています。
「Gamingモード(標準設定)」と「Silentモード」の2つのモードを簡単に切り替えることができます。スライドスイッチを切り替えてPCを起動後、BIOSが変更されていない場合はOSを再起動すると切り替わります。
なおグラフィックボードの重量はMSI GeForce RTX 3080 GAMING Z TRIO 12G LHRが1569g、Palit GeForce RTX 3090 Ti GameRock OCが1865gに対して、「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」は2144gでした。
バックプレート等で基板の反りは防止されているものの、グラフィックボードの重量は2kgを大きく超過しているのでPCIEスロットへの負荷が心配ですが、「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」には標準で専用GPUホルダーが付属するので、PCIEスロットへの負荷や垂れ下がりの点でも安心です。(下の写真は同じGPUホルダーが付属する別モデルから引用しています)
MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24Gの分解
「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」を分解してGPUクーラーやグラフィックボード基板についてチェックしていきます。なお今回は自己責任で(もしくはレビュー用サンプル貸出先の協力のもと特別に許可を頂いて)分解を行っています。GPUクーラーの取り外し(分解行為)は、一部を除く多くのメーカーではグラフィックボードの正規保証の対象外になる行為です。今回はレビューのために分解していますが、繰り返しますが保証対象外になるので基本的には非推奨の行為なのでご注意下さい。
「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」のバックプレートは12カ所のネジで固定されていました。
12カ所のネジを外すとバックプレートは容易に取り外しができます。バックプレートはアルミニウム製で、VRAMチップとVRM電源回路との間にサーマルパッドが貼り付けられており、放熱板としての役割も果たします。
さらにリテンションフレーム上のGPUコア周辺4ヶ所、基板右側の中央1カ所の5つのネジを外すと、GPUクーラーヒートシンク本体を取り外すことができます。グラフィックボード基板右上には、PCIEブラケットの補強のためのフレームが装着されています。
「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」のグラフィックボード基板には、PCIEブラケットの補強のための黒色の金属製フレームが装着されています。
「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」にはMSIが独自に設計したオリジナル基板が採用されています。
GeForce RTX 3090 TiのGPUコアにはGA102-350-A1が使用されていました。GDDR6Xメモリは今のところ1社しか量産していないのでMicron製。今回入手した「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」にはMicron製の16GbのGDDR6Xメモリチップが表面に12枚搭載されています。
同じ24GB容量のGDDR6Xメモリを搭載している初期モデルのRTX 3090は基板の両面に計24枚のメモリチップを搭載していましたが、RTX 3090 TiはGPUコア側の12枚だけで24GB容量を実装できているので、VRAMの冷却的には有利な設計です。
「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」のVRM電源回路はGPUコアの左右にそれぞれ1列ずつ12フェーズが実装されています。VRAMメモリ用はGPU周辺の四隅に4フェーズです。
「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」のGPUクーラー本体をチェックすると、GPUコアと接する部分は銅製ベースプレートが採用され、ベースコアからは8本の銅製ヒートパイプが伸び、アルミニウム製放熱フィンが4スロットスペース内いっぱいに展開されています。
GPUコアと接する部分には冷却性能の高さで定評のある銅製ベースプレートが採用されて、ニッケルメッキ処理も施されています。またGPUコア周辺のVRAMチップはヒートシンクにろう付けされた金属製プレートとサーマルパッドを介してヒートシンク本体で直接冷却するという理想的な構造です。
VRM電源回路のうち、GPUコア右側はヒートシンクにろう付けされた金属製プレートとサーマルパッドを介してヒートシンク本体で直接冷却するという理想的な構造ですが、もう半分のGPUコア左側は金属製補強フレームを介した冷却という構造です。
金属製フレーム自体にも突起状の放熱フィン構造があり、またチョークコイルについてはヒートシンク本体と接しているものの、できれば発熱の大きいMOS-FETはヒートシンク本体で直接冷却する構造にして欲しかったところ。
ニッケルメッキの施された銅製ベースプレートはピッカピカな完全鏡面です。これだけでもRTX 30 SUPRIMシリーズに採用されているGPUクーラー TRI FROZR 2Sの品質の高さが伝わってきます。
「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」のGPUクーラーでは銅製ベースプレートが採用されていますが、ヒートパイプで形成されるコア部分にも独自の工夫があります。
ヒートパイプのコアを成す部分が四角形に成型されヒートパイプ同士が密接しており、この構造はTRI FROZR 2Sの高い冷却性能を支える設計で「Core Pipe」と呼ばれています。
GPUコアと接する銅製ベースプレートからは8本の極太ヒートパイプが左へ抜ける構造で(中央の2本は右へも抜けてU字を描いて右側の放熱フィンへ)、GPUクーラーヒートシンクの放熱フィン全体へ効率的に熱を拡散します。
「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」は4スロットのスペースを最大限活用して放熱フィンが展開されています。
放熱フィンの設計も工夫されており、放熱表面積を拡大し、なおかつ冷却を要する場所へ的確にエアフローを送るデフレクタ構造(deflector、整流装置)、気流を分割して風切り音を低減しノイズを抑える波状に湾曲したフィン構造Wave-curved 2.0などが採用されています。
MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24Gの検証機材・GPU概要
外観やハードのチェックはこのあたりにして早速、「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」を検証用の機材に組み込みました。テストベンチ機の構成は次のようになっています。テストベンチ機の構成 | ||
ベンチ機1(温度・消費電力) |
ベンチ機2(ゲーム性能) |
|
OS | Windows11 Home 64bit |
|
CPU |
Intel Core i9 9900K (レビュー) |
Intel Core i9 12900K (レビュー) |
M/B | ASUS WS Z390 PRO (レビュー) |
ASUS ROG MAXIMUS Z690 HERO (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z Black F4-4400C19D-16GTZKK DDR4 8GB*2=16GB (レビュー) 4000MHz, 17-17-17-37-CR2 |
G.Skill Trident Z5 RGB F5-6000U3636E16GX2-TZ5RS DDR5 16GB*2=32GB (レビュー) 6000MHz, 36-36-36-76 |
システム ストレージ |
Samsung 860 EVO M.2 1TB (レビュー) |
Samsung SSD 980 PRO 500GB (レビュー) |
データ ストレージ |
Samsung 860 QVO 4TB (レビュー) | |
CPUクーラー |
Fractal Design Celsius S36(レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM (レビュー) |
|
電源 ユニット |
Corsair HX1200i (レビュー) |
|
PCケース/ ベンチ板 |
STREACOM BC1 (レビュー) |
「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」では、グラフィックボード側面のSUPRIMロゴが描かれたプレート、中央ファンの左右の横V字ライン、バックプレートのアクリルロゴプレートの3カ所にアドレッサブルLEDイルミネーションが内蔵されています。
MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24GのGPU概要
MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24Gに搭載されているGPU「GeForce RTX 3090 Ti」のスペックについて簡単に確認しておきます。GeForce RTX 3090 TiはGA102-350コアが使用されておりCUDAコア数は10752、GPUコアクロックはベース1560MHz、ブースト1860MHzです。VRAMには従来よりも高速な21.0GbpsのGDDR6Xメモリを24GB容量搭載しています。
GeForce RTX 3090 Tiは典型的なグラフィックボード消費電力を示すTGPが450Wに設定されており、PCIE補助電源として次世代規格のPCIE5.0補助電源12PINコネクタが採用されています。
「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」については、リファレンス仕様のブーストクロック1860MHzに対して、ブーストクロック1950MHzにファクトリーOCが施されています。パワーリミット(TGP)もリファレンス仕様の450Wを上回る480Wへ引き上げられています。電力制限の解除には非対応です。
「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」は上記のGamingモードに加えて、BIOSスイッチによって静音性重視なSilentモードに切り替えることが可能です。
Silentモードでもコアクロックやパワーリミット(TGP)の設定値はGamingモードと同じですが、ファン制御設定が低速になるよう変更されています。
今回レビューするGeForce RTX 3090 Tiをはじめとして、GeForce RTX 30シリーズに採用されるAmpereアーキテクチャにおいて、前世代Turingと比較してスペック上のCUDAコア数が2倍に激増していることについて簡単に説明しておきます。
まず純粋に事実として、複数のCUDAコアからなるCUDAコア群のストリーミングマルチプロセッサ(Streaming Multiprocessors:SMs)の『FP32スループットがTuring世代と比較してAmpereでは2倍に向上』しています。これは間違いありません。
一度、前世代Turingを振り返ると、TuringアーキテクチャではFP32とINT32を同時に実行できる(データパスが独立に用意されている)ことがアーキテクチャとしての新しい特徴でした。Turingでは1基のSMにFP32とINTが1:1割合で実装されていました。
Turingがこのようなアーキテクチャを採用したのは、PCゲームではFP32だけでなくINT32も実行されるから、というのが理由でしたが、同時に公表されていた統計を思い出すと、ゲームによって多少変動はあるもののFP32に対してINT32はせいぜい2:1の割合でした。
であればAmpereでは2つのデータパスのうち、INT32用のデータパス上にINT32の実行ユニットだけでなくFP32の実行ユニットも乗せれば、FP32とINT32の割合が現実に即した理想的な比率になり、省スペースに実装もできるというのは理にかなった話だと思いました。(下はSMの1/4を抜粋)
従来では『CUDAコア数 = FP32実行ユニットの数』とカウントしていたので、同じく単純にFP32実行ユニットの数をカウントするとAmpereアーキテクチャのGeForce RTX 30シリーズでは、CUDAコア数が2倍に爆増します。確かに1クロックで同時に実行できるFP32の最大数は2倍になったのですが、即ちCUDAコア数が2倍になったとカウントするのかというとやや疑問も残ります。
GTX700からRTX2000まで4世代ほどは、『CUDAコア数の増加による比例』×『コアクロックの上昇やアーキテクチャ改良による性能向上』が次世代GPUの性能指標だったので、GTX10からRTX20でCUDAコア数が2倍であれば実際の性能は2倍以上ですが、RTX20からRTX30ではCUDAコア数が2倍になっても実際の性能は2倍以下なのでどうしても違和感が残ります。
ともあれPCゲームを含め実際のアプリケーションではINT32も使用されるので、実性能を見るとGeForce RTX 30シリーズはCUDAコア数に比例して単純に2倍の性能にはならず、INT32/FP32混合データパスの使用状態に応じて、性能の伸び幅(Performance gains)が変動します。
ただFP32など一般的なシェーダーだけでなく、レイトレーシング用コアやテンサーコアも新世代へアップグレードされているので、レイトレーシング表現やDLSSに対応したPCゲームであればRTX20に対して2倍に迫る性能も発揮できるようです。
またGeForce RTX 30シリーズの諸機能について、前世代RTX 20シリーズとの大きな違いとして、8K/60FPS映像を取り扱えるHDMI2.1に対応し、それに伴ってハードウェアデコーダのNVDecが第5世代にアップデートしています。第5世代NVDecでは、8Kなど超高解像度映像に使用されるAV1コーデックのデコードに対応しています。
ゲーム実況などリアルタイム配信・録画において好評を博したNVEncについてはRTX 20シリーズと同じく第7世代が採用されています。
MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24Gのゲーム性能
「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」の性能を測るべく各種ベンチマークを実行しました。性能比較には「GeForce RTX 3080 Ti」、「Radeon RX 6900 XT」、「GeForce RTX 2080 Ti Founders Edition」を使用しています。(特定のモデルや型番を指名していない場合、各GPUメーカーのリファレンスモデルもしくはリファレンス仕様のオリファンモデルです)
「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」を含めた各グラフィックボードについて、3DMarkで現在主流なDirectX11のベンチマーク FireStrikeによる比較になります。
FireStrike | Extreme | Ultra | |
RTX 3090 Ti MSI SUPRIM X |
52840 | 27000 | 14073 |
RTX 3080 Ti |
47430 | 23686 | 12084 |
RX 6900 XT |
54473 | 26775 | 13413 |
RTX 2080 Ti FE |
35670 | 16973 | 8311 |
「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」を含めた各グラフィックボードについて、3DMarkで最新タイトルでは採用が増えつつあるDirectX12ベンチマーク TimeSpy、およびレイトレーシング表現に対応したベンチマーク Port Royalによる性能比較となります。
TimeSpy | Extreme | Port Royal |
|
RTX 3090 Ti MSI SUPRIM X |
21719 | 11358 | 14644 |
RTX 3080 Ti |
18776 | 9607 | 12569 |
RX 6900 XT |
19737 | 9531 | 9757 |
RTX 2080 Ti FE |
14267 | 6711 | 8806 |
続いて近年の最新PCゲームを実際に用いたベンチマークになります。同一のグラフィック設定で同一のシーンについてフルHD(1920×1080)とWQHD(2560×1440)と4K(3840×2160)の3種類の解像度で平均FPSを比較しました。
ベンチマーク測定を行ったゲームタイトルは、『Assassin's Creed Valhara』、『Battlefield V』、『CONTROL』、『Cyberpunk 2077』、『DEATH STRANDING』、『Far Cry 6』、『FINAL FANTASY VII REMAKE INTERGRADE』、『Forza Horizon 5』、『God of War』、『Marvel's Guardians of the Galaxy』、『Metro Exodus』、『MONSTER HUNTER: WORLD』、『Shadow of the Tomb Raider』、『Tales of Arise』、『Watch Dogs Legion』、以上の15タイトルです。
Assassin's Creed Valhara(最高設定プリセット)に関する「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Battlefield V(最高設定プリセット, DirectX12, レイトレーシング表現:オフ)に関する「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
CONTROL(高設定プリセット, DirectX12, レイトレーシング表現:オフ)に関する「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Cyberpunk 2077(ウルトラ設定プリセット, レイトレーシング表現:オフ)に関する「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
DEATH STRANDING(最高設定プリセット, TAA)に関する「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Far Cry 6(最高設定プリセット, 高解像度テクスチャ:オフ, レイトレーシング表現:オフ)に関する「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
FINAL FANTASY VII REMAKE INTERGRADE(テクスチャ解像度:高設定、シャドウ解像度:高設定、キャラクター表示数:10)に関する「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
なお、FINAL FANTASY VII REMAKE INTERGRADEは、標準では最大フレームレートが120FPSですが、アンリアルエンジン4のiniファイルによるカスタム設定を有効にするMODのFFVIIHookを使用して『フレームレート制限なし』、『可変レンダリング解像度:オフ』、『モーションブラー:オフ』の設定を適用しています。
Forza Horizon 5(エクストリーム設定プリセット, モーションブラー:オフ)に関する「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
God of War(ウルトラ設定プリセット, モーションブラー:オフ)に関する「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Marvel's Guardians of the Galaxy(ウルトラ設定プリセット, TAA, レイトレーシング表現:オフ)に関する「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
なお、Marvel's Guardians of the Galaxyはゲームプレイ時の最大フレームレートは144FPSですが、ゲーム内ベンチマーク機能は144FPS以上で計測できるので、その結果を使用しています。
Metro Exodus(エクストリーム設定プリセット, DirectX12, レイトレーシング表現:オフ)に関する「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
MONSTER HUNTER: WORLD(最高設定プリセット, DirectX12)に関する「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Shadow of the Tomb Raider(最高画質設定プリセット, DirectX12, TAA, レイトレーシング表現:オフ)に関する「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Tales of Arise(最高設定, モーションブラー:オフ)に関する「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
なお、Tales of Ariseは、標準ではPlayStation 5やXbox Series Xのコンソールゲーム機版よりもオブジェクトや影の遠景描画が省略されているので、アンリアルエンジン4のiniファイルによるカスタム設定を有効にするMODのArise-SDKを使用して高画質化する設定を適用しています。
Watch Dogs Legion(最大設定プリセット, DirectX12, レイトレーシング表現:オフ)に関する「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24Gなど4種類のGPUについて実ゲーム性能の比率の平均を出してみたところ、MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24Gは、前世代最上位RTX 2080 Tiを平均で60%程度、ベストケースでは70%も上回る圧倒的な性能を発揮しました。
実際に測定した上のベンチマーク結果であるフレームレートを見ての通り、4K/60FPSゲーミングは当たり前、4K/120FPSにも手が届く4KゲーミングモンスターなGPUです。
MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24Gの温度・消費電力・ファンノイズ
MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24Gの負荷時のGPU温度やファンノイズや消費電力についてチェックしていきます。「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」のGPU温度とファンノイズの検証負荷としては約20分間に渡たり連続してGPUに100%近い負荷をかける3DMark TimeSpy(Extreme) Stress Testを使用しています。
「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」のテスト終盤におけるGPU温度は最大72度とTGP400W超のGPUとしては低めですが、ファン回転数は最大2000RPM程度と高めです。
ハードウェアスイッチで切り替えが可能な静音性重視のSilentモードに切り替えると、コアクロックや電力制限はそのままでファン制御だけ変更されるので、GPU温度が79度に上がる代わりに、ファン速度は右:1700RPM、中央&左:1500RPMに低下し、体感でもファンノイズはかなり低減されます。
「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」はアイドル時にファンが停止するセミファンレス機能に対応しており、GPU温度55度前後が始動閾値、GPU温度40度前後が停止閾値でヒステリシスも採用されています。製品によっては回転数が上下してふらつくことの多い始動や停止の直前も、閾値を上下した瞬間にピタッと切り替わります。
GPUコアクロックについては「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」の仕様値ではブーストクロック1950MHzとなっていますが、負荷テスト中の実動平均は2022MHzでした。
【備考】AMD、NVIDIAともに最新GPUでは実動コアクロックはGPUコア個体毎に異なる内部設定のV-Fカーブが支配的になっており、加えて負荷中のGPU温度も大きく影響します。ファクトリーOCが施されたオリファンモデルの公式仕様値として公表されているブーストクロックはOC耐性選別の1つの指標にはなると思いますが、実動コアクロックの優劣においてあまりあてになりません。
また実用条件に近い冷却性能の検証として、実際にPCケースへ「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」を組み込み、Time Spy Extreme グラフィックテスト1を1時間に渡ってループさせてGPU温度やファン回転数がどうなるかを確認してみました。
検証機材のPCケースには「Cooler Master MASTERCASE MAKER 5t」を使用しています。CPUクーラーは120サイズ簡易水冷でラジエーターを天面前方に設置、またPCケースのフロントに吸気ファンとして3基とリアに排気ファンとして1基の140mm角ケースファンをそれぞれ設置し、ファン回転数は1000RPMに固定しています。
PCケースのエアフローファンには空冷ヒートシンク、水冷ラジエーター、PCケースエアフローの全ての用途で一般的な140mmサイズファンを上回る性能を発揮する「Thermaltake TOUGHFAN 14」を使用しています。140mmサイズファン選びに迷ったらこれを買っておけば問題ない、高性能かつ高静音性なファンです。
・「Thermaltake TOUGHFAN 14」をレビュー。最強140mmファンの登場か!?
PCケースに入れた状態で長時間負荷をかけると「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」のGPUの最大温度は78度、ファン回転数は2700RPM程度でベンチ板上で測定した時よりもかなり上昇しています。
「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」は、TORX FAN 4.0やヒートシンクの放熱フィン形状が上手く調整されているためファン回転数の高さに比べてファンノイズを煩く感じにくい、という特長はあるものの、流石にファン速度が2500RPMを超えてくると、PCケースに入っていてもファンの動作音が煩く感じます。
今回の検証では、PCIEスロットが7段、PSUカバーありのPCケースを使用したので、近年で一般的な2段目にグラフィックボードを設置するレイアウトの場合、「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」は3.5スロットを占有するので、GPUクーラー正面のスペースは2.5スロット分しかありません。
PCケース正面から吸気するエアーの温度が22~24度に対して、GPUクーラー正面辺りの温度が45~47度程度まで上昇していました。
TGP300Wで3スロット占有ならGPUクーラー正面の温度は高くても30度半ばに収まるので、近年のPCケース設計を考えるとGPUクーラーの大型化も4スロット以上はデメリットを感じる結果です。(TGPにも依りますし、フロースルー面の大きさ次第で多少は緩和されますが)
「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」を使用するのであれば、Fractal Design Torrentのように底面から直接吸気できるPCケースを選んだ方がいいかもしれません。
「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」のような、内排気型のGPUクーラーではPCケースの吸排気を最適化しないと冷却効率が下がるので、フロントx3/リアx1で140mmファンを設置して1000RPMで回していますが、さすがに400Wをゆうに超えるTGPなので、ベンチ板のような理想的な環境のままとはいきません。
ベンチ板測定時の結果をベストケースとすると、どこまでGPU温度やファン速度を下げられるかはPCケースの吸排気次第です。実際にPCケースへ組み込むユーザーはPCケースの吸排気にも注意してみてください。
加えて1時間のストレステスト終盤にサーモグラフィカメラ搭載スマートフォン「CAT S62 PRO」を使用してゲーム負荷時のグラフィックボード上の各所の温度をチェックしました。
TGP300W超のRTX 3080/3090ではVRM電源回路やPCIE補助電源付近がかなり高温になるモデルも散見されたのですが、「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」はホットスポットでも80度以下に収まっているので、運用上、特に心配する必要はありません。
MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24Gを含めていくつかのグラフィックボードについてサウンドレベルメーターを利用してゲーム負荷時のノイズレベルを測定・比較しました。
検証機材はベンチ台の上に平置きにしているので、サウンドレベルメーターをスタンドで垂直上方向に50cm程度離して騒音値を測定しています。
この測定方法において電源OFF時の騒音値は30dB未満です。目安として騒音値が35dBを超えたあたりからファンノイズがはっきりと聞こえるようになりますが、35~38dB以下であればPCケースに入れてしまえばファンノイズが気になることはそうそうないと思います。40dB前後になるとベンチ台上で煩く感じ始め、45dBを超えるとヘッドホンをしていてもはっきり聞き取れるくらいになります。
A特性で測定しているのである程度は騒音値にも反映されていますが、同じ騒音値でも周波数(ファン回転数)が高いほど体感としては大きな音に感じやすく、また不快に感じたり感じなかったりは音の性質(細かい乱高下の有無や軸ブレ)にもよるので注意してください。
ノイズレベルの測定結果は次のようになっています。
「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」は、ベンチ板上という比較的に理想的な状況なら、ゲーミングモードでファン速度2000RPMに対してノイズレベルが38dB程度、サイレントモードであればノイズレベルが33dB程度という非常に優秀な性能を発揮します。
「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」に採用されているTORX FAN 4.0はノイズレベルだけでなく体感的にもファンノイズを煩く感じにくい特長があるので、静音面でもポテンシャルは優れた製品です。
しかしながらPCケース組み込み時の検証でも見た通り、TGP400W超とGPU自体の発熱が非常に大きく、GPUクーラーが3.5スロットを占有するため、近年のPSUカバーを備えたPCケースではGPUクーラー正面のスペースが狭く、十分な排熱ができないためポテンシャルを発揮しきれない可能性があります。
MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24Gの消費電力と瞬間的な最大電源負荷を測定しました。
グラフィックボードの消費電力測定には、当サイトの検証に使用するためワンオフで特注した測定ツール「GPU Power Tester」を使用しています。GPU Power TesterはPCIEスロット経由とPCIE補助電源の消費電力を直接に測定しているので、シンプルにグラフィックボードそのものの消費電力をしることができます。
消費電力の測定にあたってグラフィック負荷には上で行った温度検証と同様に3DMark TimeSpy ストレステストを使用しています。テスト全体から1ms間隔でモニタリングを行い、平均値を”消費電力”、最大値を”瞬間的な最大電源負荷”とします。
MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24Gの消費電力は481W、最大瞬間負荷は408Wでした。MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24GのTDP(パワーターゲット)は480Wに設定されているので、概ね設定値通りの消費電力です。
「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」の公式仕様でも推奨されているように、同グラフィックボードを使用するのであれば安定した電力供給のためにも、電源容量850W以上の電源ユニットを組み合わせる必要があると思います。
MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G レビューまとめ
最後に「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- 4K/120FPSゲーミングにも対応可能、4KゲーミングモンスターなGPU
- 前世代最上位モデルRTX 2080 Tiと比較しても平均60%程度、ベスト70%も高速
- RTX 3080 Tiよりも最大で10~15%程度も高性能
- ヘアライン仕上げのアルミニウムの素材感を活かした高級感のあるSUPRIMデザイン
- ファクトリーOCでTGP480WのRTX 3090 Tiを安定して運用可能なGPUクーラー
- GPUホルダーが標準で付属
- 性能重視と静音性重視の2種類動作モードを切り替え可能なBIOSスイッチ
- 全長338mm、全高がPCIEスロット+30mmと巨大なのでPCケースとの干渉に注意
- TGP400W超かつ3.5スロットのGPUクーラーなので放熱面でもPCケースを選ぶ
- ファン速度が高く、ファンノイズも大きめ
- RTX 3090 Tiは1999ドルからと非常に高価
GeForce RTX 3090 Tiは、前世代最上位GeForce RTX 2080 Tiと比較して平均で60%程度、ベストケースでは70%も上回るグラフィック性能を実現し、前世代から圧倒的な飛躍を遂げています。
2022年最新の超高画質なPCゲームですら素の最高画質設定で4K/60FPSをキープでき、高画質設定のまま4K/120FPSのハイフレームレートで快適なプレイも難しくなく、4Kゲーミングモンスターの登場といっても過言ではありません。
RTX 3090 Tiのグラフィック性能については基本的に文句はなく、2021年末頃から普及しつつある4K/120Hz対応ゲーミングモニタや、当サイトでもオススメしている40インチ以上の大型の有機ELテレビと組み合わせて4K/60FPS+ゲーミングに余裕で対応できるGPUだと思います。現在入手できるGPUとして最速であることも間違いありません。
TGPが450Wに引き上げられている点についても、PCケースや電源ユニットの選定には注意が必要ではあるものの、”安定運用できる程度に冷やせるなら性能重視で高TGPに”という近年のトレンドを加速させただけなので、個人的には目くじらをたてる必要はないと思っています
ただウルトラハイエンドクラスのGPUが、3080 10GB、3080 12GB、3080 Ti、3090、3090 Tiと順番に10%以下の性能差で渋滞気味に乱立し、未だグラボ価格が初期のMSRPに従わない状況なので、オリファンモデルによってはGPUランクと価格の上下関係が逆転していたり、価格面でも混乱をきたしているところはかなり気になる、というかネガティブに感じます。
4K解像度の60FPS~120FPSに対応可能なGeForce RTX 3090 Tiを使用するのであれば、4K/144Hz対応IPS液晶ゲーミングモニタの「ASUS TUF Gaming VG28UQL1A」や「LG 27GP950-B」や「MSI Optix MPG321UR-QD」、4K/120Hz有機ELテレビ「LG OLED TV C2/G2」など、4K解像度&ハイリフレッシュレートなディスプレイと組み合わせてラグジュアリーなゲーミング環境を構築したいところです。
・4K/120Hz+対応ゲーミングモニタのレビュー記事一覧へ
加えて補足しておくと、
「GeForce RTX 3090 Ti」は前世代TITAN RTXと同等となる24GBの超大容量VRAMを搭載することから分かるように、RTX30シリーズのナンバリングに名を連ねているものの、事実上、従来で言うところの”TITAN”ポジジョンな製品です。
3DレンダリングやディープラーニングなどGPGPU的なタスクに向いており、特に3Dレンダリングでは、Ampereアーキテクチャの大きな特徴の1つである2倍に増強されたFP32スループットが遺憾なく発揮されるので、前世代のTITAN RTXやGeForce RTX 2080 Tiと比較して2倍以上の性能を発揮できます。
逆に3DレンダリングではVRAM速度の恩恵は受けにくいので、CUDAコア数に差があるRTX 3080 10GB/12GBとは10~20%近い性能差を期待できるものの、RTX 3080 Tiとの性能差は4Kゲーミングにおけるそれよりも小さめです。
ただしRTX 3090 Tiは24GBという超大容量なVRAMを使用できるので、大データの3Dレンダリングや8Kの動画編集など10GB/12GBではクラッシュ・フリーズしてしまうようなシーンでも正常に動作できるところは長所です。
また上述の通りAmpere世代ではナンバリングになったもののTITANポジションな製品ですが、ナンバリングになった恩恵ともいうべきか、RTX 3090 TiはASUS/MSI/ZOTACなどNVIDIA公式のパートナーメーカーによる各社オリジナルの高性能GPUクーラーを搭載できるようになりました。
外排気ブロアーファンのTITAN Xpは言うに及ばず、内排気になって多少は冷却・静音が改善されたTITAN RTXと比較しても、GeForce RTX 3090 Tiは全長300mm超かつ3スロット以上を占有する大型GPUクーラーの搭載によって、大幅に静音性を向上させ、TITANポジションながら各世代の80Tiナンバリングモデル並みの静音性を実現したところも注目ポイントです。
「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」のGPUクーラーについては、TGP450Wの1チップGPUであるRTX 3090 Tiを安定動作可能な冷却性能を実現しています。静音性についてもベンチ板測定時でサイレントモードならノイズレベル33dB程度に収まっているのでポテンシャルは非常に優れています。
とはいえグラフィックボードの消費電力が400~500Wにも達してしまうと、GPUクーラー自体の冷却性能もそうですが、PCケース内外への吸排気も含めて、空冷GPUクーラーで”優秀”と評価できるような静音性を実現するのはやはり難しいと感じました。
「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」のGPUクーラー自体はサイズ相応に高性能ですが、TGP450Wによって得られる性能はやはり静音性とトレードオフになっているため、クーラーの良さを実感し難いというのが実状です。
TGP400W超のGPUに対して本格的に性能/冷却/静音の両立を追求するなら、AIO水冷の採用を検討する必要があるのかなと思います。
TGP480WにファクトリーOCが施されたRTX 3090 Tiをしっかりと冷やし、ノイズレベルも35dB程度に抑えられるポテンシャルは感じるものの、「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」は近年主流なPSUカバーを備えたPCケースでは3.5スロットを占有する厚みの大きいGPUクーラーが仇になる傾向も確認でき、組み合わせて使用するPCケースを選ぶ、とも感じました。
「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」を使用するのであれば、Fractal Design Torrentのように底面から直接吸気できるPCケースを選んだ方がいいかもしれません。
MSI SUPRIMシリーズはGeForce RTX 30シリーズで新登場したハイエンドブランドですが、従来のMSIゲーミングブランドを代表するドラゴンをモチーフにしたMSI GAMINGシリーズとは対照的で、同社クリエーター向けモデルの影響も感じ、高級感のある洗練されたデザインに仕上がっています。
ヘアライン仕上げのアルミニウムの素材感を活かしたGPUクーラーデザインはそのままでも美しいですが、七色に光るLEDイルミネーションも綺麗なので、魅せる自作PC用の部品としてもオススメできる製品です。
ハイエンドモデルなので同GPU搭載オリファンモデルの中でも特に高価なところ(場合によっては上位GPUの廉価モデルに手が届く)は欠点ですが、GPUクーラーの性能や見た目の高級感など、価格面を除けばトップクラスに優れた製品であることは間違いありません。
以上、「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」のレビューでした。
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4スロット占有3連ファンGPUクーラーTRI FROZR 2Sを搭載し、ファクトリーOCも施されたハイエンドモデル「MSI GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」をレビュー。
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) June 21, 2022
RTX 3080 TiやRTX 2080 TiやRX 6900 XTと実ゲーム性能をベンチマークで徹底比較。https://t.co/8JoMvDUT2r pic.twitter.com/9iR3SgZWlc
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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