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GeForce RTX 4070グラフィックボードとしてMSIからリリースされた、3スロット占有3連ファンGPUクーラーTRI-FROZR 3を搭載し、大幅なファクトリーOCも施されたゲーミングモデル「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」をレビューしていきます。
RTX40シリーズのアッパーミドルRTX 4070が、前世代同クラスRTX 3070をどの程度上回り、前世代ハイエンドRTX 3080にどれくらい迫るのか、実ゲームのベンチマークでグラフィック性能を徹底比較します。
製品公式ページ:https://jp.msi.com/Graphics-Card/GeForce-RTX-4070-GAMING-X-TRIO-12G
MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G レビュー目次
1.MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12Gの外観
2.MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12Gの分解
3.MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12Gの検証機材・GPU概要
4.MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12Gのゲーム性能
5.MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12Gの温度・消費電力・ファンノイズ
6.MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12Gのレビューまとめ
【機材協力:MSI Japan】
MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12Gの外観
早速、「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」を開封していきます。外パッケージの中には黒色段ボールの内パッケージが入っており、マニュアル類の入った紙製ケースとスポンジ蓋を外すと、スポンジスペーサー&静電防止エアパッキン袋という一般的な梱包でグラフィックボード本体が鎮座していました。
マニュアルや保証書等以外の付属品はGPUホルダー、PCIE5.0電源変換ケーブル(12VHPWR to PCIE 8PIN×2)です。
「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」のグラフィックボード本体を見ていきます。
「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」のGPUクーラーの外装はプラスチック製ですが、ブラック&ガンメタルカラーのフレームにはスチールのようなマットな塗装が施されており安っぽさは感じない外観です。
MSIのGamingシリーズと言えばブランドロゴにもなっているドラゴンを模した造形が1つの特長でしたが、代を重ねるごとにその要素は薄くなり、RTX40世代では流行に合わせ、かなりシンプルな作りになっています。
グラフィックボード側面のプレートにはMSIテキストロゴとMSIゲーミングブランドを象徴するドラゴンマークがあり、加えて、中央ファンの2時と7時の方向にあるスリットのホワイトラインには、ARGB LEDイルミネーションが内蔵されています。
専用アプリケーション MSI Mystic Light Syncを使用すれば、同社製マザーボードなど対応機器と同期させてライティング制御が可能です。
「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」は全長337mmです。近年主流なオープンスペースタイプのPCケースなら干渉の心配はありませんが、PCケースフロントにストレージベイがある少し古めのPCケースではグラフィックボード設置スペースのクリアランスに注意が必要です。
「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」は基板とGPUクーラーがPCIブラケットから35mmほどはみ出しているのでPCケースとの干渉は十分に注意してください。PCケースとの干渉ではグラフィックボードの背の高さは長さに比べて見落としやすいポイントです。
なおグラフィックボード基板自体はPCIEブラケットより少し高い程度で、PCIE補助電源はさらに10mmほど引っ込んでいるので、PCIE補助電源コネクタや電源ケーブルの干渉については心配ありません。
「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」の3連ファンGPUクーラーはTRI-FROZR 3と名付けられており、95mm径の冷却ファンが計3基設置されています。『左と中央』および『右』は2系統で個別に制御が可能です。
TRI-FROZR 3の冷却ファンには5世代目となりさらに改良された新型ファン TORX FAN 5.0が採用されています。
TORX FAN 5.0では3枚のファンブレードを円弧を描く外周リングで一体化することで、スリムで振動しやすいファンブレードを安定させ、静圧を向上、ブレによるノイズの低減を実現しています。また軸受けには高耐久性なダブルボールベアリングが採用されています。
TORX FAN 5.0は外周リングによって補強されたファンブレードによって、前世代TORX FAN 4.0よりも高い性能を実現しており、一般的なリングブレードファン(Axial Fan)と比較して、20%以上も高い静圧と風量を実現しており、TGP450Wクラスに対応すべくさらに高密度になったヒートシンク放熱フィンへ十分なエアフローを供給できます。
「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」は大型放熱フィンを採用したヒートシンクが搭載されており、PCIEスロットを3スロット占有します。
「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」は補助電源コネクタとして、12+4PINでPCIE5.0補助電源と呼ばれることの多い、最新電源コネクタ 12VHPWRを1基搭載しています。
12VHPWRに対応した電源ユニットと組み合わせた場合、電源ケーブル1本だけでスマートに配線が可能です。
12VHPWRに対応する電源ケーブルが付属する自作PC向け電源ユニットは2023年4月現在、まだ市場に多くは出回っていませんが、「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」は現在主流なPCIE 8PIN補助電源に変換するケーブルが標準で付属しています。
この変換ケーブルを使用することで、従来のPCIE 8PINを2基以上使用できる電源ユニットやPCシステムであれば「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」を組み込むことが可能です。
RTX 4070オリファンモデルにはPCIE補助電源として従来規格のPCIE 8PINを採用する製品と、最新電源コネクタ 12VHPWRを採用する製品(各社上位ブランドに多い)が混在しています。
12VHPWR採用モデルはPCIE 8PIN×2に変換するアダプタが通常は付属するので、PCIE補助電源が用意できず使用できない、ということになることはないと思いますが、一応注意してください。
「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」のPCIE端子と各種ビデオ出力には黒色の保護カバーが装着されています。
MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12Gのビデオ出力はリファレンス仕様と同じくHDMI2.1×1、DisplayPort1.4×3の4基が実装されています。
MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12GにはGeForce RTXロゴとドラゴンマークのブランドロゴが白色で刻印されたマットブラックのアルミニウム製バックプレートを搭載しています。
基板の反りや破損を防止する保護プレートとしての役割に加えて、VRAM実装部裏面との間にはサーマルパッドが貼られているので冷却補助の役割を果たします。
1kg超へと大型化(大重量化)していくGPUクーラーでも、GPUコアとクーラーベースコアが適切な圧力で密接するように、板バネ構造のリテンションバックプレートも「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」には採用されています。
バックプレート右端にはファン1.5基分のエアスリットが設けられており、ファンからヒートシンクを通って背面に直接風が抜けるフロースルー構造も採用されています。
なおグラフィックボードの重量はPNY GeForce RTX 4070 12GB VERTO Dual Fanが685g、PNY GeForce RTX 4070 Ti 12GB XLR8が1548gに対して、MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12Gは1231gでした。
バックプレート等で基板の反りは防止されているものの、グラフィックボードの重量は1kgを大きく超過しているのでPCIEスロットへの負荷が心配ですが、「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」には標準で専用GPUホルダーが付属するので、PCIEスロットへの負荷や垂れ下がりの点でも安心です。
下の写真は旧モデルですが、付属GPUホルダーはこんな感じで使用します。
MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12Gの分解
「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」を分解してGPUクーラーやグラフィックボード基板についてチェックしていきます。なお今回は自己責任で(もしくはレビュー用サンプル貸出先の協力のもと特別に許可を頂いて)分解を行っています。GPUクーラーの取り外し(分解行為)は、一部を除く多くのメーカーではグラフィックボードの正規保証の対象外になる行為です。
今回はレビューのために分解していますが、繰り返しますが保証対象外になるので基本的には非推奨の行為なのでご注意下さい。
「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」のバックプレート上、12個のネジを外すと、バックプレートを取り外すことができます。
「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」のバックプレートはアルミニウム金属製で、PCB基板背面の間にはVRAMチップの裏側部分にサーマルパッドが貼り付けられているので、バックプレートはそのまま放熱板としての役割も果たしています。
さらにGPUコア周辺、リテンションバックプレートの4個のネジを解除するとGPUクーラーが取り外せます。
GPUクーラーはア周辺4カ所と、バックプレート上の12か所の計16個のネジによって厳重に固定されていました。3スロットを占有する大型GPUクーラーでも安心な固定状態です。
「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」にはMSI独自設計のオリジナル基板が採用されています。
「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」のグラフィックボード基板自体はMini-ITXサイズのショート基板なので、GPUクーラーもMini-ITXサイズの小型モデル登場に期待したくなります。
RTX 4070のGPUコアにはAD104-250-A1が使用されていました。GDDR6Xメモリは今のところ1社しか量産していないのでMicron製。今回入手した「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」にはMicron製の16GbのGDDR6Xメモリチップが表面に6枚搭載されています。
「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」のVRM電源回路はGPUコアの左側にGPUコア向け9フェーズ、VRAM周辺にVRAM向け2フェーズで計11が実装されています。
「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」のGPUクーラー本体をチェックすると、GPUコアと接するコアは銅製ベースプレートが採用され、ベースコアからは6本の銅製ヒートパイプが伸び、アルミニウム製放熱フィンが3スロットスペース内いっぱいに展開されています。
GPUコアと接する部分には冷却性能の高さで定評のある銅製ベースプレートが採用され、ニッケルメッキ処理も施されています。完全鏡面というほどではありませんが、接触するくらい近くにあるものなら反射する程度には綺麗に平滑化されています。
「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」のGPUクーラーでは銅製ベースプレートが採用されていますが、ヒートパイプで形成されるコア部分にも独自の工夫があります。
ヒートパイプのコアを成す部分が四角形に成型されヒートパイプ同士が密接しており、この構造はTRI FROZR 3の高い冷却性能を支える設計で「Core Pipe」と呼ばれています。
またGPUコア周辺のVRAMチップやVRM電源回路はヒートシンクにろう付けされた金属製プレートとサーマルパッドを介してヒートシンク本体で直接冷却するという理想的な構造です。
GPUコアと接するベースコアから伸びた6本のヒートパイプによって3スロットを占有する大型放熱フィン全体へ熱を拡散します。
ベースプレートから伸びる6本の銅製ヒートパイプによって3スロットを占有する大型GPUクーラー内部いっぱいに展開された極厚なアルミ製放熱フィンの迫力も圧巻です。
放熱フィンの設計も工夫されており、放熱表面積を拡大し、なおかつ冷却を要する場所へ的確にエアフローを送るデフレクタ構造(deflector、整流装置)、気流を分割して風切り音を低減しノイズを抑える波状に湾曲したフィン構造Wave-curved 2.0などが採用されています。
MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12Gの検証機材・GPU概要
外観やハードのチェックはこのあたりにして早速、「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」を検証用の機材に組み込みました。テストベンチ機の構成は次のようになっています。テストベンチ機の構成 (ゲーム性能検証) |
|
OS | Windows11 Home 64bit |
CPU | Intel Core i9 13900K (レビュー) |
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36 (レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z5 RGB F5-7200J3445G16GX2-TZ5RK DDR5 16GB*2=32GB (レビュー) 7200MHz, 34-45-45-115 |
マザーボード |
ASUS ROG MAXIMUS Z790 HERO (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung SSD 980 PRO 500GB (レビュー) |
ゲームストレージ |
Samsung SSD 870 QVO 8TB (レビュー) |
電源ユニット | Corsair HX1500i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
検証機ではシステムメモリとして、Intel第13世代CPU向けメモリとしては4xメモリスロットのマザーボードでも動作可能な最速クラスの製品、メモリ周波数7200MHz/CL34の高メモリクロックかつ低レイテンシなメモリOCに対応した「G.Skill Trident Z5 RGB(型番:F5-7200J3445G16GX2-TZ5RK)」を使用しています。
G.Skill Trident Z5シリーズはIntel XMP3.0のOCプロファイルに対応した製品となっており、6000MHzの定番設定なモデルもあり、Intel第13世代CPUで高性能なPCを構築するお供としてオススメのOCメモリです。
ARGB LEDイルミネーションを搭載したバリエーションモデル G.Skill Trident Z5 Neo RGBもラインナップされています。
・「G.Skill Trident Z5 RGB」をレビュー。XMPで7200MHz OCに対応!
MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12GのGPU概要
MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12Gに搭載されているGPU「GeForce RTX 4070」のスペックについて簡単に確認しておきます。「GeForce RTX 4070」はAD104-250コアが使用されておりCUDAコア数は5888、GPUコアクロックはベース1920MHz、ブースト2475MHzです。VRAMには従来よりも高速な21.0GbpsのGDDR6Xメモリを12GB容量搭載しています。メモリーバス幅は192bitなのでメモリ帯域は504GB/sです。
典型的なグラフィックボード消費電力を示すTGPは200Wに設定されており、PCIE補助電源は8PIN×1もしくは12VHPWRが使用されておりオリファンモデル次第です。12VHPWRの場合は基本的に変換ドングルが付属するので、既存のPCIE補助電源8PIN×2にも対応します。
「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」については、リファレンス仕様値2475MHzに対してブーストクロック2610MHzへファクトリーOCが施されています。パワーリミット(TGP)も210Wへ引き上げられており、手動設定の場合、電力制限は+12%で最大240Wまで解除が可能です。
GPUコアの増強、コアクロックの高速化といった3Dグラフィックス関連の強化に加えて、「GeForce RTX 4070」などGeForce RTX 40シリーズの新たな特長としてハードウェアエンコーダに最新の第8世代NVEncが実装されています。
第8世代NVEncはAV1コーデックのエンコードに対応したところが、RTX 30シリーズの第7世代NVEncとの大きな違いです。(AV1コンテンツのデコード/再生はRTX 30シリーズですでに対応済み)
映像編集ソフトではDavinci Resolve、ビデオキャプチャソフトではOBS Studioなどが最新バージョンにおいてGeForce RTX 40シリーズによるAV1エンコードに対応しています。
AV1は従来のH.264(x264)よりも40%程度も圧縮効率に優れており、OBS Studioの場合、従来のH.264(x264)形式によってフルHD解像度で作成したコンテンツも、同等のビットレート、同等の映像品質で、AV1形式ならWQHD解像度にできます。
注意点として、RTX 4070 Ti以上の上位モデルが新たに2基のNVEncを搭載しているのと異なり、GeForce RTX 4070に実装されているハードウェアエンコーダNVEncは”1基”です。
最新の第8世代なのでAV1に対応しているだけでなく、H.264やHEVC(H.265)のエンコードも高速化していますが、Davinci ResolveなどデュアルNVEncによる書き出しに対応した映像編集ソフトでRTX 30シリーズと比較して2倍以上高速になる機能は使用できません。
レイトレーシング&DLSS 3(DLSS SR/FG)について
レイトレーシング表現やDLSSについて簡単に紹介しておきます。レイトレーシング(Raytracing)とは3Dグラフィックスのレンダリング手法の1つであり、現在主流なラスタライズ方式とある種の対になる言葉です。
レイトレーシングだけで3Dグラフィックスを全て描画しきるのはGPU性能的に現実的ではないので、ベースは従来のラスタライズ方式で行い、鏡面反射などエフェクトにレイトレーシング方式を使う、というハイブリッドなレンダリング方式が現在のレイトレーシング対応PCゲームの主流です。
レイトレーシング表現では、照明や光源(エリアライト)や太陽光(グローバルイルミネーション)の影響を厳密に再現し、光の反射や透過も現実に即して忠実に描写されます。
レイトレーシングを採用したわかりやすい例としては鏡に映る反射など、視覚(視点から見た)の外にある物体もリアルに描画することができます。小さい光源や太陽光などが生み出す影、反射によって生まれる光が現実に対して忠実に再現されるので、画面の中に引き込まれるような奥行き、陰影を感じる映像が生まれます。
なお高画質機能 Raytracing(レイトレーシング)はMicrosoftが提供するAPI”DirectX 12”内包されるDirectX Raytracing(DXR)を使用したレンダリング機能となっており、後述のDLSSと違ってNVIDIA独自技術というわけではなく、AMD/Intel製グラフィックボード、PlayStation 5やXbox Series S/Xといったコンソールゲーム機にも互換性のある機能です。
下はPlayStation 5のMarvel's Spider-Man Remasteredでレイトレーシング表現のオン/オフを比較したものですが、オフでは鏡面になっている窓ガラスにスパイダーマンの身体の鏡像がないだけでなく、風景の反射も反対側と比較してデタラメなのが一目瞭然です。
「NVIDIA DLSS」は”Deep Learning Super Sampling”の頭文字を取った略称となっており、その名の通り、近年流行りのディープラーニングによって高画質化(超解像化)する機能で、AIレンダリングの名前でもアピールされています。
DLSSが具体的にどのように動作するか簡単に説明すると、フルHD~WQHDのリアルタイムレンダリングソースから4K映像を生み出すDLSSの原型があります。このDLSSの原型が作り出した4K映像を、16Kなど現実的にはリアルタイムでのレンダリングが難しい超々高解像度のレンダリング結果を比較し、DLSSの原型の改良版1をNVIDIAの専用サーバーが作ります。
DLSSの原型の改良版1で再び4K映像を生み出し、16Kレンダリング結果と比較して、DLSSの原型の改良版2を生み出す……、というプロセスを何万回も繰り返すことで、ユーザーに提供される汎用の、もしくは個別ゲームタイトルに特化した専用のDLSSプロファイルが出来上がります。
GeForce RTX 30シリーズの登場と共にアップデートされたDLSS2.0では最終出力解像度に対して3種類のオリジナルレンダー解像度が選択でき、4K解像度の場合は、Quality(2560×1440)、Balanced(2240×1260)、Performance(1920×1080)の3種類から選択できます。
オリジナルのレンダー解像度がフルHD~WQHDなので、DLSSによる超解像(SuperSampling)プロセスを挟むとはいえ、ネイティブに4K解像度をレンダリングするよりもフレームレートは大幅に向上します。
現在のDLSSでは16Kレンダリング結果を目標に学習が繰り返されているので、高画質アンチエイリアス技術として一般的なTAAと比較してフレームレートが大幅に向上するだけでなく、画質も改善するという一挙両得な高画質化機能になっています。
フルHDやWQHDのレンダリングソースを高品質な4K解像度に超解像化することから始まったDLSSですが、この超解像機能(DLSS SR:Super Resolution)に加えて、GeForce RTX 40シリーズが対応する最新バージョンの”DLSS 3”ではAI中間フレーム生成機能 Frame Generationが追加されたのが大きなトピックです。
中間フレーム生成というと、倍速補間などと呼ばれることの多いテレビの高画質化機能が有名ですが、テレビの倍速補間は完成した映像フレームを2つ以上(一部のハイエンドテレビだと7つなど)をソースに中間フレームを作成しています。
ソースとなる映像フレーム数が多いほど生成される中間フレームの映像的な破綻はなくなりますが、遅延が大きくなるのでゲーム用途では到底実用できません。逆にソースとなる映像フレーム数を減らすと遅延は減りますが、単純なスクロールのような画面変化しか綺麗に補間できず、映像的な破綻が増えてしまいます。
一方、DLSS 3のAI中間フレーム生成機能 Frame Generationは、3Dオブジェクトの動きを正しく追跡できるMotion Vector(3Dオブジェクトのピクセル単位での位置や向きの履歴)に、影のような光エフェクトを正しく追跡できるOptical Flowを組み合わせることで中間フレームを生成しています。
中間フレームの生成方法が全く異なるので、DLSS 3は2フレーム(現在と1つ前)による補間と同等かそれ以下という低遅延で倍速補間を実行でき、急にポップするオブジェクトや影などの光エフェクトが破綻しにくい、という特徴があります。
現在のビルドではUIやテキストにノイズが生じやすいといった欠点はあるものの、超解像のDLSS SRも徐々に改良されていったのでDLSS FGも対応ゲームが増えるにしたがって補間品質もアップデートされていくはずです。
あとDLSS FGの副次的な効果として、中間フレームはGPUが単独で生成するので、CPUボトルネックで伸び悩むシーンでもフレームレートが向上するという効果もアピールされています。有名どころではMicrosoft Flight Simulatorが該当します。
DLSS Frame GenerationはOptical Flow Acceleratorという専用ハードウェアを使用しているので、現在、この機能を使用できるのはGeForce RTX 40シリーズに限定されています。(Optical Flow Accelerator自体は全く同じものかは不明ですがRTX 30シリーズにも存在するので、今後、対応GPUに加わる可能性があるかも)
また上記の通り、DLSS 3による倍速補間はそれそのものが遅延を生じにくい設計ですが、”DLSS 3対応”ならNVIDIA製GPU環境の低遅延技術 Reflexも含むことになっており、よりゲーム操作にラグを感じない低遅延な表示が可能です。
MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12Gのゲーム性能
「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」の性能を測るべく各種ベンチマークを実行しました。性能比較には「GeForce RTX 4070 Ti」、「GeForce RTX 3080 10GB」、「GeForce RTX 3070」、「GeForce RTX 2080 Ti Founders Edition」を使用しています。(特定のモデルや型番を指名していない場合、各GPUメーカーのリファレンスモデルもしくはリファレンス仕様のオリファンモデルです)
「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」を含めた各グラフィックボードについて、3DMarkで現在主流なDirectX11のベンチマーク FireStrikeによる比較になります。
FireStrike | Extreme | Ultra | |
RTX 4070 MSI GAMING X TRIO |
44827 | 21660 | 10159 |
RTX 4070 Ti |
53714 | 27048 | 13464 |
RTX 3080 |
43191 | 21264 | 10792 |
RTX 3070 |
33213 | 16156 | 8176 |
RTX 2080 Ti FE |
35575 | 16872 | 8550 |
「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」を含めた各グラフィックボードについて、3DMarkで最新タイトルでは採用が増えつつあるDirectX12ベンチマーク TimeSpy、およびレイトレーシング表現に対応したベンチマーク Port Royalによる性能比較となります。
TimeSpy | Extreme | Port Royal |
|
RTX 4070 MSI GAMING X TRIO |
18134 | 8648 | 11357 |
RTX 4070 Ti |
22792 | 10940 | 14173 |
RTX 3080 |
17407 | 8671 | 11513 |
RTX 3070 |
12946 | 6331 | 7929 |
RTX 2080 Ti FE |
14490 | 6641 | 8936 |
続いて近年の最新PCゲームを実際に用いたベンチマーク比較になります。同一のグラフィック設定で同一のシーンについてフルHD(1920×1080)とWQHD(2560×1440)と4K(3840×2160)の3種類の解像度で平均FPSを比較しました。
最新タイトルでは専用ハードウェアによるレイトレーシング表現や、NVIDIA DLSS/AMD FSR/Intel XeSSといったAIを活用した超解像・倍速補間に対応したものも増えていますが、それらの機能は無効化し、ここでは従来のラスタライズ方式の3Dグラフィックス性能を比較しています。
ベンチマーク測定を行ったゲームタイトルは、『Assassin's Creed Valhara』、『Battlefield V』、『CONTROL』、『Cyberpunk 2077』、『DEATH STRANDING』、『Far Cry 6』、『FINAL FANTASY VII REMAKE INTERGRADE』、『Forza Horizon 5』、『God of War』、『Marvel's Guardians of the Galaxy』、『MONSTER HUNTER: WORLD』、『Shadow of the Tomb Raider』、『Tales of Arise』、『UNCHARTED: Legacy of Thieves Collection』、『Watch Dogs Legion』、以上の15タイトルです。
Assassin's Creed Valhara(最高設定プリセット)に関する「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Battlefield V(最高設定プリセット, DirectX12, レイトレーシング表現:オフ)に関する「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
CONTROL(高設定プリセット, DirectX12, レイトレーシング表現:オフ)に関する「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Cyberpunk 2077(ウルトラ設定プリセット, FSR:オフ, レイトレーシング表現:オフ)に関する「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
DEATH STRANDING(最高設定プリセット, TAA)に関する「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Far Cry 6(最高設定プリセット, 高解像度テクスチャ:オフ, レイトレーシング表現:オフ)に関する「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
FINAL FANTASY VII REMAKE INTERGRADE(テクスチャ解像度:高設定、シャドウ解像度:高設定、キャラクター表示数:10)に関する「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
なお、FINAL FANTASY VII REMAKE INTERGRADEは、標準では最大フレームレートが120FPSですが、アンリアルエンジン4のiniファイルによるカスタム設定を有効にするMODのFFVIIHookを使用して『フレームレート制限なし』、『可変レンダリング解像度:オフ』、『モーションブラー:オフ』の設定を適用しています。加えてNVIDIAコントロールパネルから垂直同期を無効化しています。
Forza Horizon 5(エクストリーム設定プリセット, モーションブラー:オフ, レイトレーシング表現:オフ)に関する「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
God of War(ウルトラ設定プリセット, モーションブラー:オフ)に関する「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Marvel's Guardians of the Galaxy(ウルトラ設定プリセット, レイトレーシング表現:オフ)に関する「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
なお、Marvel's Guardians of the Galaxyはゲームプレイ時の最大フレームレートは144FPSですが、ゲーム内ベンチマーク機能は144FPS以上で計測できるので、その結果を使用しています。
MONSTER HUNTER: WORLD(最高設定プリセット, DirectX12)に関する「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Shadow of the Tomb Raider(最高画質設定プリセット, DirectX12, TAA, レイトレーシング表現:オフ)に関する「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Tales of Arise(最高設定, モーションブラー:オフ)に関する「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
なお、Tales of Ariseは、標準ではPlayStation 5やXbox Series Xのコンソールゲーム機版よりもオブジェクトや影の遠景描画が省略されているので、アンリアルエンジン4のiniファイルによるカスタム設定を有効にするMODのArise-SDKを使用して高画質化する設定を適用しています。
UNCHARTED: Legacy of Thieves Collection(ウルトラ設定プリセット, モーションブラー:オフ)に関する「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Watch Dogs Legion(最大設定プリセット, DirectX12, レイトレーシング表現:オフ)に関する「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12Gなど5種類のGPUについて実ゲーム性能の比率の平均を出してみたところ、MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12Gは、前世代同クラスのRTX 3070を30%程度上回る性能を発揮しました。
またGeForce RTX 4070は、前世代ではハイエンドモデルながらコストパフォーマンスの高さで好評を博したRTX 3080とフルHD/WQHD解像度なら同等の性能を実現しています。(当サイトの性能比較に使用しているタイトルが管理人の好みに寄っていて高画質PCゲーム系なのでWQHDでRTX 3080を若干下回る傾向ですが)
RTX 4070は最新アーキテクチャによる高い動作クロックや大容量キャッシュメモリによってフルHD/WQHD解像度ではRTX 3080と同等の性能を発揮するものの、高解像度になるにつれてメモリ帯域の低さがボトルネックとなり始めます。
WQHD解像度あたりから、キャッシュがボトルネックになるハイフレームレートな競技系ゲームか、VRAM帯域が重要になる高画質系PCゲームかで、得手不得手がバラける感じになり、4K解像度になると完全にメモリ帯域がボトルネックでネイティブレンダリングだとRTX 3080に対して後塵を拝するようになります。
RTX 4070そのものの4Kゲーム性能が低いというわけではありませんが、同価格帯の前世代RTX 3080が比較対象になると、4K解像度についてはDLSS 3のAI中間フレーム生成機能に頼らざるを得ない、という具合です。
もちろんDLSS 3(DLSS SR&FG)を使用できるRTX 4070とDLSS 2(DLSS SR)までのRTX 3080で4K性能を比較したらRTX 4070に軍配が上がるのは自明ですが、DLSS 3の対応タイトルがまだ少ない点はネックです。
MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12Gの温度・消費電力・ファンノイズ
「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」の負荷時のGPU温度やファンノイズや消費電力についてチェックしていきます。「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」のGPU温度とファンノイズの検証負荷としては約20分間に渡たり連続してGPUに100%近い負荷をかける3DMark TimeSpy(Extreme) Stress Testを使用しています。
「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」のテスト終盤におけるGPU温度は最大61度と十分に低いものの、ファン速度も最大900RPMと非常に低速です。
「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」はアイドル時にファンが停止するセミファンレス機能に対応しており、GPU温度48度前後が始動閾値、GPU温度38度前後が停止閾値でヒステリシスも採用されています。製品によっては回転数が上下してふらつくことの多い始動や停止の直前も、閾値を上下した瞬間にピタッと切り替わります。
GPUコアクロックについて、今回入手した「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」の負荷テスト中の実動平均は2786MHzでした。
【補足】
コアクロック比較グラフはAIBモデル別の優劣を決めるための比較ではなく、特定のGPUがだいたいどの程度のコアクロックで動作するのか確認するために掲載しています。
AMD、NVIDIAともに最新GPUでは実動コアクロックはGPUコア個体毎に異なる内部設定のV-Fカーブが最も支配的なファクターです。加えて負荷中のGPU温度も5~10度刻みでブーストクロックの制御に影響します。
そのため、ファクトリーOCが施されたオリファンモデルの公式仕様値として公表されているブーストクロックは各メーカー内におけるOC耐性選別という意味で1つの指標にはなると思いますが、実動コアクロックの優劣にはあまり当てになりません。
今回検証している個体Aが他社AIBと比較して実動コアクロックが低くても、市場製品の個体Bは高い、個体Cは同程度…のように、本当に御神籤状態です。
GeForce RTX 4070のようにTGPが200Wを下回ると、下記のような参考環境のミドルタワーPCではベンチ板測定とあまり差が出ないので、PCケース組み込み時の検証については割愛しています。
PCケースのエアフローファンには空冷ヒートシンク、水冷ラジエーター、PCケースエアフローの全ての用途で一般的な140mmサイズファンを上回る性能を発揮する「Thermaltake TOUGHFAN 14」を使用しています。140mmサイズファン選びに迷ったらこれを買っておけば問題ない、高性能かつ高静音性なファンです。
・「Thermaltake TOUGHFAN 14」をレビュー。最強140mmファンの登場か!?
「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」を含めていくつかのグラフィックボードについてサウンドレベルメーターを利用してゲーム負荷時のノイズレベルを測定・比較しました。
検証機材はベンチ台の上に平置きにしているので、サウンドレベルメーターをスタンドで垂直上方向に50cm程度離して騒音値を測定しています。
この測定方法において電源OFF時の騒音値は30dB未満です。目安として騒音値が35dBを超えたあたりからファンノイズがはっきりと聞こえるようになりますが、35~38dB以下であればPCケースに入れてしまえばファンノイズが気になることはそうそうないと思います。40dB前後になるとベンチ台上で煩く感じ始め、45dBを超えるとヘッドホンをしていてもはっきり聞き取れるくらいになります。
A特性で測定しているのである程度は騒音値にも反映されていますが、同じ騒音値でも周波数(ファン回転数)が高いほど体感としては大きな音に感じやすく、また不快に感じたり感じなかったりは音の性質(細かい乱高下の有無や軸ブレ)にもよるので注意してください。
ノイズレベルの測定結果は次のようになっています。
「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」は、全長300mm超かつ3スロット占有というTGP300W超級の大型GPUクーラーを搭載しているだけあって(TGP200WのRTX 4070にはオーバーキルな冷却性能)、ファン速度は最大でも800~900RPMと非常に低速なので、ノイズレベル32dB未満という極めて優秀な数値を叩き出しています。
「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」に採用されているTORX FAN 5.0はノイズレベルだけでなく体感的にもファンノイズを煩く感じにくい特長があり、800~900RPM程度の低速だと、PCケースに組み込んでしまえば、ファンが動作しているのか停止しているのか音から聞き分けるのも難しいくらいの静音性です。
「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」の消費電力と瞬間的な最大電源負荷を測定しました。
グラフィックボードの消費電力測定には、当サイトの検証に使用するためワンオフで特注した測定ツール「GPU Power Tester」を使用しています。GPU Power TesterはPCIEスロット経由とPCIE補助電源の消費電力を直接に測定しているので、シンプルにグラフィックボードそのものの消費電力をしることができます。
消費電力の測定にあたって検証するGPUランクによって負荷を変えており、通常はTime Spy(Extreme) グラフィックテスト1、一部のウルトラハイエンドGPUにはPort Royal 4K(GPU名に*マークを併記)をループ再生させ、各GPUがMaxTGPに張り付く状態を検証しています。
テスト全体から1ms間隔でモニタリングを行い、平均値を”消費電力”、最大値を”瞬間的な最大電源負荷”とします。
「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」の消費電力は205W、最大瞬間負荷は228Wでした。概ねTGP仕様値通りの消費電力です。
今回の負荷テストでは電力制限ソースのTotal Board Powerが平均205W程度だったので、一部の負荷が大きいタイトルではこれよりも消費電力が増える可能性はありますが、それでも+10W未満なので「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」のGPUクーラーなら十分に冷却は可能であり、静音性にも大きな影響はありません。
MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G レビューまとめ
最後に「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- WQHD/ハイフレームレートに最適、DLSS 3で4Kにも対応可能なGPU
- RTX 3070と比較して平均30%程度も高速
- フルHD/WQHDならRTX 3080と比較しても同等(4Kでは10%程度劣るが)
- GeForce RTX 40の最新機能であるAI中間フレーム生成機能 DLSS 3に対応
- 高圧縮かつ高画質な次世代コーデックAV1のハードウェアエンコードに対応
- TGP200WのRTX 4070をノイズレベル32dB以下で冷やせるGPUクーラー
- GPUホルダーが標準で付属
- 全長337mm、全高がPCIEスロット+30mmと巨大なのでPCケースとの干渉に注意
- PCIEスロットを3スロット占有
- 12VHPWR電源コネクタは取り扱いに注意が必要 【解説記事へ】
- RTX 4070 Ti以上の上位モデルと異なり、デュアルNVEncによる高速エンコードには非対応
- RTX 4070一般に価格が税込み9万円後半からと高価 (2023年5月現在)
GeForce RTX 4070は、前世代同クラスのRTX 3070を30%程度上回る性能を発揮し、ハイエンドモデルながらコストパフォーマンスの高さで好評を博したRTX 3080とフルHD/WQHD解像度なら同等の性能を実現しています。
最新アーキテクチャによる高い動作クロックと大容量キャッシュメモリのおかげでハイフレームレートに対するボトルネックが解消されているので、フルHD/WQHD解像度のハイフレームレートなPCゲーミングに最適なGPUです。
VRAM帯域の影響でネイティブ4Kの性能は鈍化する傾向はあるものの、GeForce RTX 4070は最新のDLSS 3に対応しているので、フルHD/WQHDをソースにアップスケールするDLSS SRやAIフレーム補間機能DLSS FGを併用すれば、4Kゲーミングでも大幅な性能向上が期待できます。
GeForce RTX 4070については、フルHD/WQHDの性能は同等、ネイティブレンダリングでやや劣る4K性能をAIフレーム生成機能DLSS 3でカバー、AV1ハードウェアエンコード対応 、国内価格は税込み9万円後半から、という特長なので、70番台の数字さえ無視すれば、 RTX 3080がDLSS 3とAV1に対応してそのままスライドしたようなGPUです。
TGP320WからTGP200Wへと大幅に消費電力が削減されているので、全長220~250mm以下、2スロット占有のコンパクトモデルが登場し、PCIE 8PIN×1の補助電源で運用できるようになった、というメリットもありますが、最も重要な性能と価格の2つについて、落胆こそないものの、驚きも喜びもない、というのが正直なところです。まあRTX 4070 Tiで前振りも効いていたので予定調和と言えばそうですが。
希望小売価格が599ドルからとなるGeForce RTX 4070の登場によって、GeForce RTX 40シリーズの発売以降も下位モデルとして併売されていたGeForce RTX 3080、3070 Ti、3070は第一線から外れますが、さらに下位モデルのRTX 3060 Ti以下はまだしばらく現役続投となります。
ただRTX 4070が9万円台後半に対して、RTX 3070は国内価格が7万円前後なので、在庫が続く限りはBTO PCなどでも、RTX 4070の下位モデル的な選択肢としてまだ残るような気がします。
「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」については、RTX 4070のファクトリーOCによるTGP210Wという発熱に対して、GPU温度は60度前後に収まり、なおかつ同測定環境においてファン速度1000RPM未満、ノイズレベル32dB以下という極めて優秀な冷却性能と静音性を発揮しました。
全長300mm超かつ3スロット占有の大型GPUクーラーはRTX 4070にはオーバーキル感のある装いですが、PCケースに組み込んでしまえばファン動作の聞き分けも難しい、ほぼ無音な動作が可能なので、静音性や冷却性能で選ぶならRTX 4070搭載グラフィックボードの中でもオススメの1台です。
GPUクーラーの性能面についてはRTX 4070に対して過剰性能と言えるくらいの高性能で問題はありませんが、グラフィックボードは全長が337mm、3スロット占有と非常に大きく、またPCIE補助電源についてはRTX 4070オリファンモデルでは従来規格のPCIE 8PINの製品もありますが、「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」は12VHPWRなので(PCIE 8PIN×2の変換ケーブルが標準で付属するものの)、組み込む環境が対応できるかどうかには十分注意してください。
以上、「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」のレビューでした。
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超大型クーラーTRI-FROZR 3を搭載し、大幅なファクトリーOCも施されたゲーミングモデル「MSI GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」をレビュー。
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) May 21, 2023
RTX 3070をどの程度上回り、RTX 3080へどこまで迫るのか、実ゲームベンチマークで徹底比較https://t.co/GHL9TL2Bve pic.twitter.com/wUzMgmyevZ
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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