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VRR同期機能やVESA DisplayHDR 600に対応し、4K解像度かつ144HzリフレッシュレートでHDMI2.1ビデオ入力も搭載する32インチ量子ドットIPS液晶ゲーミングモニタ「MSI Optix MPG321UR-QD」をレビューします。
GeForce RTX 3080やRadeon RX 6800 XTを搭載した高性能ゲーミングPCはもちろん、PlayStation 5やXbox Series X/Sにも最適な4K/120Hz対応でHDMI2.1搭載のゲーミングモニタを徹底検証していきます。
製品公式ページ:https://jp.msi.com/Monitor/Optix-MPG321UR-QD
MSI Optix MPG321UR-QD レビュー目次
1.MSI Optix MPG321UR-QDの概要
2.MSI Optix MPG321UR-QDの開封・付属品
3.MSI Optix MPG321UR-QDの液晶モニタ本体
4.MSI Optix MPG321UR-QDのOSD操作・設定
・MSI Gaming OSD 2.0について
5.MSI Optix MPG321UR-QDの発色・輝度・視野角
6.MSI Optix MPG321UR-QDの144Hzリフレッシュレートについて
7.MSI Optix MPG321UR-QDの応答速度・表示遅延
8.MSI Optix MPG321UR-QDのFreeSync/G-Sync CPについて
9.MSI Optix MPG321UR-QDのMBR機能について
10.MSI Optix MPG321UR-QDのHDR表示やCSゲーム機対応について
11.MSI Optix MPG321UR-QDのレビューまとめ
【機材協力:MSI】
MSI Optix MPG321UR-QDの概要
「MSI Optix MPG321UR-QD」は解像度が3840×2160の4K解像度、モニタサイズが32インチの液晶モニタです。液晶パネルタイプはノングレア(非光沢)で発色や視野角に優れたIPS液晶パネル、さらに発色を向上させる量子ドット技術(Quantum Dot Technology)も採用されており、97% DCI-P3、99% Adobe RGBという非常に広い色域を実現しています。コントラスト比は通常1000:1、応答速度は1ms(MPRT)、4ms(GTG)です。「MSI Optix MPG321UR-QD」はHDR表示にも対応しており、標準輝度400nits(cd/m^2)、最大輝度600nits(cd/m^2)で、VESAがPCモニター向けに展開している輝度認証のVESA DisplayHDR 600を取得しています。
「MSI Optix MPG321UR-QD」のリフレッシュレートはネイティブ144Hzです。144Hzの高リフレッシュレートによって応答速度が高速になるのでブレや残像がなくなってクッキリとした滑らかな表示です。60FPSでは識別の難しいゲーム内遠方で動くエネミーやオブジェクトの発見などが容易になるので、オンライン対戦FPSゲームなど競技性の高いPCゲームにおいて対戦相手よりも優位に立つことができます。
「MSI Optix MPG321UR-QD」はゲーミングPCやコンソールゲーム機のPlayStation 5やXbox Series X/Sを組み合わせることで利用可能な可変リフレッシュレート同期機能「AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync、HDMI Variable Refresh Rate)」にも対応しており、ティアリングがなくスタッタリングを抑えた快適で鮮明なゲーミング環境を実現できます。NVIDIA製GPUとの互換性を証明するG-Sync Compatible認証も取得しています。
「MSI Optix MPG321UR-QD」のビデオ入力はDisplayPort1.4a×1とHDMI2.1×2、USB Type-C×1の4系統です。
USBハブとしてPCと接続する3基のアップストリーム端子に加えて周辺機器を接続するためのダウンストリームUSB2.0端子が6基搭載されています。
USB Type-Cでビデオ出力を行っている機器からもUSBハブとして使用できます。またUSB Type-CポートはUSB Power Delivery規格による最大15W(5V/3A)の給電にも対応します。
「MSI Optix MPG321UR-QD」のHDMIビデオ入力はver2.1なのでPlayStation 5やXbox Series X/Sを接続すると4K/120Hz表示に対応します。
「MSI Optix MPG321UR-QD」はDisplayPort1.4で策定されている映像データの非可逆圧縮伝送機能「Display stream compression (DSC)」に対応しています。DSCは映像データを非可逆圧縮しますが視覚的に画質を損なうことがなく、DisplayPortケーブル1本で4K解像度/144FPS/フルRGBの映像データの伝送が可能です。可変リフレッシュレート同期機能やHDR表示とも互換性があります。
「MSI Optix MPG321UR-QD」の寸法はモニタスタンド込みで幅727mm x 高さ482~582mm x 奥行252mm(モニタ単体では70mm)となっています。付属モニタスタンドは上下チルト、左右首振りスイーベル、昇降高さ調整、90度回転ピボットに対応しています。チルト角は上20度から下5度、スイーベル角は左右30度、高さ調整は最大100mmの範囲で調節可能です。本体重量はモニタスタンドありで10.1kg、モニタスタンドなしの液晶パネル本体のみは7.1kgとなります。VESA100x100マウントにも対応しておりモニタアームも使用可能です。
MSI Optix MPG321UR-QDの開封・付属品
まずは「MSI Optix MPG321UR-QD」を開封していきます。「MSI Optix MPG321UR-QD」は茶色パッケージの中にカラー刷りのパッケージが入っていました。
パッケージサイズは幅99cm×高さ57.5cm×厚み19.6cmで、32インチモニタが入っている箱としては横幅が広めです。重量は15kg程度です。側面には持ち手の穴はあるものの、成人男性でも1人で持ち運ぶのは少々大変だと思います。
パッケージを開くと液晶モニタ本体や付属品が収められた発泡スチロール製スペーサーが現れます。ケーブル等の付属品が入った面を上に向けて、発泡スチロール製スペーサーを取り出します。
発泡スチロール製スペーサーの上側に各種付属品とモニタスタンドが収納されており、下の段にはモニタ本体があります。
「MSI Optix MPG321UR-QD」の付属品を簡単にチェックしておくと、スタンド固定ネジ、VESAマウント用スペーサー、マウスケーブルバンジー、ACケーブル、Y-Typeオーディオケーブル、クイックマニュアルが付属します。
「MSI Optix MPG321UR-QD」はKVM機能によってDisplayPort1.4a×1とHDMI2.1×2を含めた4基のビデオ入力でモニタ上のUSBハブ端子を共有できるので、これら3つの機器とモニタを接続するためのUSBアップストリームケーブルも3セット付属しています。
ビデオ入力関連のケーブルについては、DisplayPortケーブル、HDMIケーブル、USB Type-Cケーブルの3本が付属しています。
「MSI Optix MPG321UR-QD」のHDMIビデオ入力は4K120FPSの映像伝送が可能なHDMI2.1に対応していますが、付属ケーブルはHDMI協会がHDMI2.1互換を証明するUltra High Speed HDMIケーブル認証を取得していました。
各種ケーブルを個別に購入する場合のオススメ製品も紹介しておきます。
視覚損失のない非可逆圧縮機能DSCによって4K/144Hz/HDR 10bit RGBに対応するDisplayPort1.4ケーブルなら「サンワサプライ KC-DP14シリーズ」を推奨しています。標準で付属するケーブルよりもケーブル径が細くて取り回しが良いので管理人も個人的に使用しており、おすすめのケーブルです。
HDMI2.1ケーブルについては「エレコム ウルトラハイスピードHDMIケーブル スリム CAC-HD21ESシリーズ」がおすすめです。標準で付属するケーブルよりもケーブル径が細くて取り回しが良いので管理人も個人的に使用しており、おすすめのケーブルです。
同製品は4.5mm径のスリムケーブルながら、HDMI2.1の正常動作を証明するUltra High Speed HDMIケーブル認証を取得しており、安心して使用できます。
当サイトでもGeForce RTX 30搭載PC、PlayStation 5、Xbox Series X/Sで正常動作を確認しています。
その他にもケーブル径5.0mm以下でスリムな48Gbps対応HDMI2.1ケーブルについてまとめた記事も公開しているので、こちらも参考にしてみてください。
長さ5m以上でも安定した動作が期待できる光ファイバー式HDMI2.1ケーブルでイチオシは、「Cable Matters Active 8K HDMI Fiber Optic Cable」です。
「Cable Matters Active 8K HDMI Fiber Optic Cable」は、HDMI協会の公式認証であるUltra High Speed HDMI認証を取得、さらにXbox Series X/S互換製品認証も取得しており、ケーブル性能の保証としては隙の無いカンペキな製品です。
5mが7000円、10mが10000円で光ファイバー式HDMIケーブルとしては標準的なお値段で、 信頼性の高さも考慮したらかなりリーズナブルだと思います。
当サイトでもGeForce RTX 30搭載PC、PlayStation 5、Xbox Series X/Sで正常動作を確認しています。
「MSI Optix MPG321UR-QD」はUSB Type-Cによるビデオ入力(DisplayPort1.4)にも対応しています。DisplayPort Alternate Modeに対応したモバイルPCや、近年の最新モデルでは対応の増えているスマートフォンのUSB Type-Cポート(USB3.1対応やDP Alt Mode対応の表記がある製品)からのビデオ表示が可能です。
USB Type-Cビデオ入力用のケーブルも付属していますが、個別に購入するので去れば「エレコム USB Type-Cケーブル USB3.1(Gen1) 2.0m」やCable Matters製のケーブルなどで正常に表示できているのでオススメです。
「MSI Optix MPG321UR-QD」に付属するモニタスタンドはフレームとフットプレートの2つの部品で構成されています。
フットプレートをフレームに差し込んで底面のネジを締めるだけで簡単にモニタスタンドを組み立てられます。ネジにはレバーが付いているのでドライバー不要で組み立てが可能です。
モニタ本体を発泡スチロールのスペーサーに置いたまま、スタンド装着部の包装を開いて、モニタスタンドをはめ込みます。
モニタスタンドの組み立てまではツールレスなのですが、「MSI Optix MPG321UR-QD」はモニタ本体にモニタスタンドを装着する手順でプラスドライバーが必要になるので注意してください。
モニタスタンドをはめ込んだら、モニタスタンド下側左右のネジ穴に先ほど取り外したネジを使って固定します。
MSI Optix MPG321UR-QDの液晶モニタ本体
続いて「MSI Optix MPG321UR-QD」の液晶モニタ本体をチェックしていきます。「MSI Optix MPG321UR-QD」はフレームレス構造で、2mm程度の外枠を含めて上左右の非表示領域の幅は7mm程度、下は23mm程度です。下フレームの厚みは薄く、艶消しなのでディスプレイの光が反射することはありません。
「Acer Predator XB323QK NV」はディスプレイサイズが32インチなので、一般的な27インチの4Kモニタよりも大迫力な映像を楽しめます。(下写真は31.5インチと27インチのモニタをPS5と並べた時の比較です)
背面外装は黒色プラスチック製ですが、上端はカーボン風、くの字の中間は艶のあるアクリルプレート、下半分はヘアラインアルミニウム風の表面加工となっており、高級感を醸し出すデザインです。
モニタスタンドのフレームにはケーブルホールがあるので、電源ケーブルやビデオケーブルを綺麗にまとめることができます。
「MSI Optix MPG321UR-QD」の背面、中央から右にかけての斜めラインにはアドレッサブルLEDイルミネーションが内蔵されています。
「MSI Optix MPG321UR-QD」の背面に内蔵されたLEDイルミネーションはOSDメニューからオン・オフの切り替えが可能です。
標準では七色に点灯しますが、後ほど紹介するMSI Gaming OSD 2.0というWindows上アプリケーション(正確にはそれに付属するMSI Mystic Light)から発光カラーや発光パターンを設定できます。
「MSI Optix MPG321UR-QD」にはバネフレームのマウスバンジーが付属しており、マウスケーブルを浮かせてマウスの操作が可能です。マウスバンジーの固定穴はモニタ底面の左右にそれぞれあるので、下写真のように右利きだけでなく、左利きのユーザーも利用できます。
「MSI Optix MPG321UR-QD」のモニタ下フレームの中央、MSIロゴの下の黒いアクリルプレート部は調光センサー、その左右にある1mm程度の小さい穴はステレオマイクとなっています。
内蔵マイクはUSBアップストリームケーブルで接続したPCから使用でき、PCからは「Realtek USB2.0 Audio」という名前で認識されます。Windows10環境であればプリインストールの汎用ドライバで動くのでプラグアンドプレイで使用できます。
またOSD設定から「Sound Tune」を有効にするとモニタに搭載されたアクティブノイズキャンセリング機能も利用できます。
「MSI Optix MPG321UR-QD」のモニタ本体の厚さは最薄部で30mm、最厚部で75mmほどと最近の液晶モニタとしては厚みが少し大きめです。モニタ本体重量は7.2kg程度で、32インチモニタとしては標準的です。
「MSI Optix MPG321UR-QD」では背面下部、下向きにビデオ入力等のI/OポートやAC端子が実装されています。
I/Oポートとして左から順に、HDMI2.1ビデオ入力×2、DisplayPort1.4aビデオ入力×1、USB Type-C(DP1.4対応のDisplayPort Alternate Mode)×1、USB2.0ダウンストリーム端子×4、ステレオ入力&マイク出力用4極3.5mmジャックが設置されています。HDMIとDisplayPortの隣にはUSB2.0アップストリーム端子が1基ずつ併設されています。
ACポートは一般的なC13コネクタ(自作PC電源ユニットと同じ)で、各種IOポートとは逆の左側に離れて実装されています。
加えてモニタ正面から見て左側面には、2基のUSB2.0ダウンストリーム端子×2とマイク入力3.5mmジャックとヘッドホン出力3.5mmジャックが設置されています。
「MSI Optix MPG321UR-QD」のステレオ入力&マイク出力用4極3.5mmジャックは主にPCとの接続が想定されており、ステレオ出力3.5mmジャックと&マイク出力3.5mmジャックを1本のケーブルにまとめるY-Typeオーディオケーブルも付属しています。
「MSI Optix MPG321UR-QD」に搭載された2基のHDMIビデオ入力は4K120FPSの映像伝送が可能なHDMI2.1に対応しています。標準ではPlayStation 5やXbox Series X/SなどのCSゲーム機を想定して4K/120Hzを上限としたOSD設定が適用されていますが、PC接続で4K/144Hzが可能な設定も用意されています。
ゲーム機や動画プレイヤーなどからモニタの電源ON/OFF等の操作が可能になるHDMI CECにも対応しており、モニタOSD設定からオンオフの切り替えも可能です。
「MSI Optix MPG321UR-QD」は全4系統のビデオ入力に対して、モニタのUSB端子に接続されたキーボード・マウスをワンタッチで切り替えられるKVM機能に対応しています。
テレワーク需要で類似の機能を搭載した製品は増えていますが、「MSI Optix MPG321UR-QD」はHDMIやDisplayPortのビデオ入力数に合わせてそれぞれにUSBアップストリーム端子が併設されており、USB Type-Cビデオ入力+1ではなく、全てのビデオ入力でハブ端子の接続先を変更できるのが大きな特徴です。
KVM機能で共有できるUSBポート数は6基と数は多いですが、接続速度は全てUSB2.0です。USB3.0やUSB3.2 Gen1には非対応なので注意してください。
KVM機能によるUSBハブポートの接続先については、現在メインに表示しているビデオ入力へ自動的に切り替える自動が標準設定ですが、特定のビデオ入力に任意で固定・切り替えも可能です。Naviキー機能によるショートカット操作にも対応しています。
「MSI Optix MPG321UR-QD」の付属モニタスタンドの左右スイーベルの可動域は左右30度(60度)に対応しています。
「MSI Optix MPG321UR-QD」の付属モニタスタンドの上下チルトの可動域は仕様通り下に5度、上に20度です。
モニタの高さはモニタ本体とスタンドの付け根部分が上下に動く構造になっており、全高で高さ482mm~582mmの範囲内で調整できます。
「MSI Optix MPG321UR-QD」はVESA100x100規格のVESAマウントに対応しておりサードパーティ製のモニターアームを使用できます。モニタ単体の重量も7kgほどなのでモニターアームを問題なく利用可能です。
なお「MSI Optix MPG321UR-QD」のVESAネジ穴は背面外装から窪んだ場所にありますが、スタンドオフが付属するので、クイックリリースでスライドさせるタイプのモニターアームも問題なく使用できます。
オススメのモニターアームや調整機能が豊富なVESA汎用モニタースタンド、VESAマウントの干渉を避ける方法についてはこちらの記事で詳細に解説しているので、導入を検討している人は参考にしてください。
MSI Optix MPG321UR-QDのOSD操作・設定
「MSI Optix MPG321UR-QD」のOSD操作は正面から見て右裏に配置された操作スティックを使用します。操作スティックは上下左右と押下の5つの操作が可能で、操作ボタン各種の応答も良好でした。
また上記の操作スティックに加えて、操作スティックと同じ側の底面には白色の電源ボタン、逆側にはUSBケーブルで接続したPCからOSDアプリケーションを起動できるマクロキーが実装されています。
スティックボタンを押下すると、モニタ右下にOSDメニューが表示されます。OSD表示領域は32インチ画面の6分の1ほどと広く、文字も大きいので視認性は良く、また上述の通り操作スティックの反応も良いので操作性はかなり良好だと思います。日本語UIにももちろん対応しています。
またメインメニュー非表示の状態において操作スティックの上下左右操作はNavi キーと呼ばれる特定の設定のショートカットメニュー表示が割り当てられています。
標準では上に操作すると「ゲームモード」、右に操作すると「ビデオ入力選択」、下に操作すると「Smart Crosshair」、左に操作すると「KVM」のメニューが表示されます。
上下左右4種類のNavi キーに割り当てる設定は、OSD詳細設定メニューの「Navi キー」から任意に変更することができるので、各自で変更頻度の高いものに切り替えておくと便利です。
「MSI Optix MPG321UR-QD」のOSDメニューには大きく分けて、「G.I.」「ゲーム(ゲーム関連設定)」「プロフェッショナル」「イメージ(輝度やカラーの設定)」「入力源」「PIP/PBP」「Navi キー」「設定」の8つの項目が用意されています。
「MSI Optix MPG321UR-QD」ではOSD設定をまとめて切り替えることが可能なプロファイル、”ゲームモード”として、「ユーザー」「FPS」「レーシング」「RTS」「RPG」の5つが用意されています。
加えて”プロモード”という名前で、「アンチブルー」「ムービー」「オフィス」「sRGB」「Adobe RGB」「Display P3」「Eco」の7種類も用意されています。
ゲームモードとプロモードは用途別で2カ所に分けられていますが、OSD設定をまとめて切り替えるプロファイルという機能は共通しており、単純に12種類のプロファイルがあると考えればOKです。初期設定は「ユーザー」となっています。
ゲーム関連の表示設定はトップメニューで上にある「G.I.」や「ゲーム」に配置されています。
一般にオーバードライブと呼ばれる応答速度を調整する機能は、MSI Optix MPG321UR-QDでは「応答時間」の名前で配置されています。オーバードライブ補正の強度を通常/速い/最も速いの3段階で設定ができて、標準設定は”速い”になっています。
可変リフレッシュレート型同期機能のNVIDIA G-Sync CompatibleやAMD FreeSync Premium Pro (VESA Adaptive-Sync、HDMI Variable Refresh Rate)は「Adaptive-Sync」の名前で設定項目が配置されています。標準ではオンになっています。
「MPRT Sync」については端的に言ってモーションブラーリダクション機能です。モニタリフレッシュレートが120Hzもしくは144Hzなど85Hz以上の時に設定が可能になります。Syncが名前に入っているように、可変リフレッシュレート同期機能とも併用が可能です。
黒の強弱を調節して暗がりの視認性を高める機能「ナイトビジョン」も用意されており、補正強度はオフ/通常/強い/最も強いの4段階で設定が可能です。補正を強くするほど、明るく(白く)なります。”A.I.”では表示内容に合わせて自動勝つ動的に明暗を調整してくれます。
「リフレッシュレート」ではその名の通り現在のモニタ表示で使用されているリフレッシュレートが表示されます。表示位置は四隅に加えて、カスタマイズでは操作スティックで画面上の任意の位置にリフレッシュレートOSDを表示できます。
表示されるリフレッシュレートはリアルタイムな値なので可変リフレッシュレート型同期機能を使用している時は当然、フレームレートと同期して変動するため可変リフレッシュレート型同期機能が正常に動作しているかどうかを確認するのにも利用できます。
「クロスヘア」は画面中心に照準線をハードウェアオーバーレイ表示し、FPSゲームのエイムなどサポートします。ゲーム内でクロスヘアが表示されないシューティングゲームにおいて非常に便利な機能です。
アイコンの種類や色と言った設定も豊富で、位置設定からはOSD操作スティックによってクロスヘアの表示位置を任意に微調整できます。
「アラームクロック」では任意の開始時間からカウントダウンタイマーを表示できます。初期プリセットは15分/30分/45分/60分ですが、いずれかを選択後に分単位・秒単位で調整も可能です。表示位置は四隅に加えて、カスタマイズでは操作スティックで画面上の任意の位置にアラームクロックOSDを表示できます。
また「MSI Optix MPG321UR-QD」ではゲーミング関連の便利機能に「Optix スコープ」が加わりました。
Optix スコープでは、スコープサイズ(拡大表示の面積)を小/中/大の3種類からスコープ比率を1.5倍/2.0倍/4.0倍の3種類の倍率から選択でき、設定を有効にすると、画面中央部分を選択したサイズと倍率で拡大表示します。
単純なOSDクロスヘアもゲーミングモニタによる”ハードウェアチート”と呼ばれることがありますが、スナイパー機能はガチでチート級です。
PIP/PBP機能について
「MSI Optix MPG321UR-QD」は2つのビデオ入力を画面上に同時に表示する「PIP/PBP」にも対応しています。PIPでは主副のビデオソースを4つのビデオ入力から自由に選択でき、ディスプレイ切り替えによる主副の入れ替え、オーディオ切り替えによるオーディオソースの切り替えに対応します。
副画面のサイズには小/中/大の3サイズの選択肢があり、32インチモニタ上でそれぞれ1/16、1/9、1/4程度の小窓として表示されます。副画面は表示サイズにモニタ側でリサイズされますが、出力機器としては最大で4K/60FPSで表示できます。
副画面の表示位置は右上/右下/左上/左下から選択できます。カスタマイズを選択するとOSD操作スティックを使用して任意の位置に小窓を移動できます。
PBPでは、4K画面を2560×2160と1280×2160の不均等で左右に分割する「モード1」、4K画面を1920×2160の2等分で左右に分割する「モード1」、4K画面を3840×1080の2等分で上下に分割する「モード3」の3つの表示モードが用意されています。
主副のビデオソースを4つのビデオ入力から自由に選択でき、ディスプレイ切り替えによる主副の入れ替え、オーディオ切り替えによるオーディオソースの切り替えに対応します。
「MSI Optix MPG321UR-QD」のPBPの動作チェックでは、GeForce RTX 3090搭載PCと、Intel iGPUで外部表示を行うSurface Pro 7+を使用しました。
不均等に分割するモード1において、1280×2160で細長く表示される副画面にGeForce RTX 3090搭載PCを選択したところ、ディスプレイ解像度で1280×2160を選択してもネイティブ解像度が2560×2160として認識されてしまい、下の写真のように上下がカットされる形にリサイズされてしまいました。
Intel iGPUを副画面にした場合は上の写真のように綺麗に表示されるので、GeForceドライバの問題だと思いますが、PBPでモード1を使用する際はご注意ください。
MSI Gaming OSD 2.0について
「MSI Optix MPG321UR-QD」はモニタのアップストリーム端子に付属のUSBケーブルを使用してPCと接続することで(もしくはUSB Type-Cビデオ入力で接続)、PCから専用アプリケーション「MSI Gaming OSD 2.0」を介して、各種OSD設定を行ったり、OSD設定をキーボード操作で調整できるホットキーが利用できます。MSI Gaming OSD 2.0はMSI Optix MPG321UR-QD サポートページからダウンロードできます。日本語に対応しており、UIもシンプルで分かりやすい設計です。
画質モード別に全てのOSD設定を細かく設定でき、任意のカスタムプロファイルも作成できます。いちいちモニタの背面にある操作スティックを弄る必要がないので、非常に便利な機能です。
MSI Gaming OSD 2.0を使用すればアプリケーションウィンドウ上で「MSI Optix MPG321UR-QD」のOSD設定にフルアクセスできます。
「MSI Optix MPG321UR-QD」のディスプレイ左下にはマクロキーが実装されています。マクロキーは標準ではUSBアップストリームケーブルで接続されたPC上でMSI Gaming OSD 2.0を起動する機能が割り当てられています。
マクロキーに割り当てる機能はMSI Gaming OSD 2.0から変更できます。
「MSI Gaming OSD 2.0」ではアプリケーションウィンドウ上でOSD設定にフルアクセスできるだけでなく、輝度の調整、OSDクロスヘアの表示、画質モードの切り替えなど各種OSD操作にホットキーを割り当てることができます。ショートカットキー1つでモニタ設定を切り替えることができるのは非常に便利です。
「MSI Gaming OSD 2.0」にはその他にもWindowsシステム設定の変更や、ウィンドウのリサイズなど便利な機能が用意されています。
「MSI Gaming OSD 2.0」のジョイスティックは、XboxコントローラーやMSI Force GC30/GC20などのゲームパッドを使用し、3つ以上の複数スイッチ押下をホットキーとしてOSD設定を変更できる機能です。
なお「MSI Optix MPG321UR-QD」でMSI Gaming OSD 2.0のジョイスティック機能を使用するには、USB Type-Cポートの隣にあるUSBポートにゲームパッドを有線接続する必要があります。MSI製ゲーミングモニタの中でもジョイスティック機能を使用する時に接続するUSBハブポートは異なるので注意してください。
MSI Optix MPG321UR-QDの発色・輝度・視野角
MSI Optix MPG321UR-QDの発色・輝度・視野角など画質についてチェックしていきます。直接的な画質ではありませんがMSI Optix MPG321UR-QDの液晶パネルは光沢のあるグレアではなくアンチグレアタイプなので暗転時に自分の顔などが映り込みません。
液晶パネルには大きく分けてIPS液晶パネルとVA液晶パネルとTN液晶パネルの3種類があり、各社個別の製品によって個体差はあるものの、この3つの液晶パネルの特性を簡単にまとめると次のテーブルのようになります。
「MSI Optix MPG321UR-QD」に採用されているIPS液晶パネルはTN液晶パネルやVA液晶パネルと比べると色再現性や視野角など一般に画質に直結する性能が優れている反面、価格が高価になりがちな液晶パネルです。TN液晶パネルに比べて応答速度が遅めなので、60Hzオーバーのリフレッシュレートを実現しているIPS液晶パネル採用ゲーミングモニタは少ないため、輪をかけて高価です。とはいえ画質とリフレッシュレートを両立できるので、予算に糸目をつかないエンスーゲーマー勢に好まれています。
液晶パネルの簡易比較表 | |||
IPS | VA | TN | |
色再現性 | ◎ | 〇 | △ |
コントラスト | 〇 | ◎ | △ |
視野角 | 〇 | 〇 | △ |
応答速度 | 〇 | △ | ◎ |
価格 (高RR) |
△ (×) |
△ | 〇 |
液晶パネルの種類による性能の違いについてはこちらの記事も参照してみてください。
・IPS/VA/TN液晶パネルを比較解説 - ゲーミングモニタの選び方[4]
「MSI Optix MPG321UR-QD」は144Hzの高速リフレッシュレートながら、IPS液晶パネルが採用されているので視野角も良好です。
「MSI Optix MPG321UR-QD」の発色について、色温度の標準設定である”通常”で、白色が極端に黄色や青色がかって見えることもなく、特に違和感はありませんでした。
色温度設定には寒色/通常/暖色/の3種類のプリセットがありますが、これらを切り替えても発色に違和感がある場合は、ユーザー設定でRGBのバランスを好みに合わせて整えてください。
「Ambient RGB Light」を有効にするとモニタ正面の下フレーム中央に設置された測光センサーによって最適な色温度になるように自動で調整されます。
ここからはカラーキャリブレータを使用して、色域・色再現性・輝度・コントラスト・均一性など画質に直結するモニタの性能について詳細な検証結果を見ていきます。なおこれらのモニタ性能(特に輝度の均一性)については同じ製品であっても個体差が大きいのでご注意ください。検証にはカラーフィルター式(色差式)のX-Rite i1 Display Pro PlusとDatacolor SpyderX、そして分光式(スペクトロメーター)のX-Rite i1 Basic Pro 3を使用しています。
余談ですが、分光式のi1 Basic Pro 3は20万円程と非常に高価ですが、一般的な用途であれば測定精度は十分なので、イラスト製作や写真編集でカラーキャリブレーションを行う場合、カラーフィルター式のX-Rite i1 Display ProかDatacolor SpyderX Proで十分です。ユーザー数の多さで面倒が少ないのはX-Rite i1 Displayだと思います。
「MSI Optix MPG321UR-QD」のディスプレイ輝度について白色点の輝度をOSD設定別で測定しました。OSD上の輝度設定10%刻みで0%~100%の輝度変化は次のようになっています。
「MSI Optix MPG321UR-QD」において、一般に見やすい明るさと言われる120cd/m^2は輝度0%前後、室内照明に依りますが個人的に見やすいと感じる明るさの180~200cd/m^2は輝度30%前後です。「MSI Optix MPG321UR-QD」はSDR表示でも最大輝度が427cd/m^2と比較的に明るいモニタです。
なお「MSI Optix MPG321UR-QD」は最低輝度でも128cd/m^2なので、暗い環境で使用したいという場合は注意が必要です。
「MSI Optix MPG321UR-QD」のディスプレイ輝度の均一性(Uniformity)を検証しました。画面中央の輝度が約120cd/m^2になるOSD設定において、画面を横7×縦5の35分割として各位置の白色点の輝度を測定し、120cd/m^2を基準にしたパーセンテージで等高線マップにしています。
「MSI Optix MPG321UR-QD」は差分10%以内に収まるポイントが1/4程度しかなく、このスコアだけを見ると均一性はあまり良くありません。しかしながら、端でも20%程度の輝度低下であり、中央から同心円で綺麗に輝度が下がっていくからか、体感的には均一性が良く感じるという少々不思議なモニタでした。
液晶モニタにおいて輝度の低下が特に大きい四隅&四辺は、上のような領域分割測定では見落とされてしまうので、同様に中央120cd/m^2を基準にして個別に測定したところ次のようになりました。
「MSI Optix MPG321UR-QD」については全体を白表示にしても左右端ギリギリまでいかないと暗さを感じませんが、やはり差分が30%程度になる左上と左下が少し暗い印象はあります。全体白表示なので強調されていますが、カラフルな画面が表示される実用シーンでは特に問題にならない程度だと思います。
画面中央の白色点が約120cd/m2になるOSD設定において「MSI Optix MPG321UR-QD」のブラックレベルを測定したところ次のようになりました。ブラックレベルの測定にはX-Rite i1 Display Pro Plusを使用しています。
またこの時のコントラスト比も算出したところ次のようになっています。なおコントラスト比に大きく影響するブラックレベルはコンマ2桁での測定になるため測定精度が若干怪しく、ブラックレベル0.01の差でコントラスト比が大きく変わるので参考程度と考えてください。
続いて「MSI Optix MPG321UR-QD」の色域と色の正確性を検証してみました。
まずはモニタのOSD設定を標準設定にして(ディスプレイ輝度のみ120cd/m^2になるように調整)、任意のカラープロファイルを適用しない場合、次のようになりました。
「MSI Optix MPG321UR-QD」は標準モードでそのまま使用しても100% sRGBに加えて、99% Adobe RGB、94% DCI-P3という極めて広い色域をカバーしています。
色の正確性は平均ΔEが1.21となっており、標準設定のままでもそこそこ優秀です。X-Riteによると『ΔE=1程度で2つの色を横にくっつけて見比べた時に違いが判別できるレベル』とのこと。
なお色域については「MSI Optix MPG321UR-QD」のOSD設定として用意されているプロモードのAdobe RGBやDisplay P3に切り替えると、それぞれのカバー範囲の三角形は対象の色域に近づくものの、カバー率は下がりました。
次にX-Rite i1 Basic Pro 3を使用してカラーキャリブレーションを行いました。キャリブレーション設定は下のスクリーンショットの通りですが、i1 Profilerの標準設定をそのまま採用しています。
「MSI Optix MPG321UR-QD」では色温度を標準設定にするとRGBの強さに差が大きいとアラートが出たので、手動で調整できるユーザー設定モードでR(赤)=97, G(緑)=100, B(青)=99としてキャリブレーションを行いました。
X-Rite i1 Basic Pro 3によってカラーキャリブレーションで作成したICCファイルを適用し、同じくX-Rite i1 Basic Pro 3で行った品質検証(色の正確性の検証)の結果は次のようになっています。X-Rite i1 Basic Pro 3は分光式(スペクトロメーター)のカラーキャリブレータなので、測定精度はこちらの方が高いはずです。
上の測定結果ではカラーキャリブレーション前の色の正確性はΔE 1.20でしたが、カラーキャリブレーション後にX-Rite i1 Basic Pro 3で測定した色の正確性はΔE 0.5と非常に優秀な数値です。
また分光型測色計(スペクトロメーター)で測定した輝度120cd/m^2における白色点のカラースペクトラムが次のようになっています。
カラースペクトラムから発色の良いモニタを見分けるざっくりとしたポイントは『RGB各色のピークが鋭く立ち上がり、かつ高さが同程度であること』です。一般的な液晶モニタは白色LEDバックライト(青色LEDを光源として赤緑(≒黄)蛍光体を組み合わせて白色を生成する)を採用しているので青色のピークが高くかつ鋭くなります。白色を基準として測定した場合、緑と赤のピークの高さは色温度のOSD設定で若干上下します。
以上から簡単化すると『緑と赤のピークが鋭くなっているかどうか』をチェックすればカラースペクトラムの良し悪しがざっくりと判定できます。
一般的な液晶パネル(IPS/VA/TNに依らず)であれば下画像の左側のように青のピークだけが強く、残りの分離が弱い波形になりますが、LG製Nano-IPSで有名なKSF蛍光体や、Quantum Dot(量子ドット)といった最新技術が採用された液晶パネルは各色の分離が良く、ピークも急峻になります。
「MSI Optix MPG321UR-QD」の液晶パネルには量子ドット技術(Quantum Dot Technology)が採用されており、赤緑青の分離は良好かつ、それぞれのピークも鋭く尖っています。
量子ドット技術採用パネルはIPSでもVAでも非常に高価になる傾向ですが、発色や色再現性では頭1つ飛び抜けた性能です。
MSI Optix MPG321UR-QDの144Hzリフレッシュレートについて
「MSI Optix MPG321UR-QD」の最大の特徴の1つである144Hzリフレッシュレートについてチェックしていきます。まずは「MSI Optix MPG321UR-QD」の特徴の1つである”144Hzリフレッシュレート”について、その意味自体は特に説明せずとも読者はご存知だと思いますが、一般的な60Hzリフレッシュレートの液晶モニタが1秒間に60回の画面更新を行うのに対して、144Hzリフレッシュレートであれば標準的な60Hzの2.4倍となる1秒間に144回の画面更新を行います。
最近では競技ゲーマー向け製品で240Hzの超高速リフレッシュレートなゲーミングモニタも普及しつつあり、さらには、それを1.5倍に上回る360Hzの超々高速なリフレッシュレート対応製品も各社から販売されています。
1秒間に144回の画面更新を行う144Hzリフレッシュレートの物理的なメリットとしては、単純に秒間コマ数が増えるので映像がより滑らかになります。上の章で詳しく検証したようにリフレッシュレートが上がると応答速度も上がって細部がクッキリとしたシャープな映像に見えやすくなり、加えて画面更新間隔が短くなるので表示遅延が小さくなり、一般的な60Hz環境よりもスピーディーなプレイで他者を圧倒しやすくなります。
「MSI Optix MPG321UR-QD」ではNVIDIA GeForce RTX 30シリーズやAMD Radeon RX 6000シリーズなど最新グラフィックボードのDisplayPort1.4のビデオ出力に接続することによって、モニタリフレッシュレートを144Hzなどに自由に設定できます。
ゲーミングPCとゲーミングモニタの接続にはDisplayPortを使用するのが現在の主流ですが、「MSI Optix MPG321UR-QD」に搭載された2基のHDMIビデオ入力は最新規格HDMI2.1に対応しており、4K/120FPSの映像伝送が可能です。
NVIDIA GeForce RTX 30シリーズやAMD Radeon RX 6000シリーズなど最新グラフィックボードのHDMI2.1ビデオ出力と接続した場合、「MSI Optix MPG321UR-QD」はフルRGBで4K/144Hzの表示に対応します。
なお標準ではPlayStation 5やXbox Series X/SなどのCSゲーム機を想定して4K/120Hzを上限としたOSD設定が適用されているので、PC接続で4K/144Hzを利用したい場合は設定を切り替えてください。
モニタリフレッシュレートの設定は、NVIDIA製GPUの場合は上のスクリーンショットのようにNVIDIAコントロールパネルから、AMD製GPUの場合はWindowsのディスプレイ設定から行います。
オンライン対戦FPSなど競技性の高いゲームにおいて144Hzや240Hzなど高リフレッシュレートのモニタを使用した時の実用的なアドバンテージとして、ゲーム内視線を左右に振った時の視認性が上がるという例は直感的にもわかりやすいメリットですが、その他にもゲーム内遠方に存在して動いているエネミーやオブジェクトの視認性が上がるというメリットも存在します。
下の比較動画では4分割して映像を並べていますが、右下以外の3つは右下画面の緑枠部分を拡大するよう接写して、「SONY DSC-RX100M5」の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影したものになっています。リフレッシュレート別で左上は60Hz、右上は120Hz、左下は240Hzとなっていますが、赤枠で囲った建物の出入り口付近で左方向に移動する敵の動きはリフレッシュレートが上がるほど視認しやすくなるのがわかると思います。
またハイリフレッシュレートなゲーミングモニタでは表示遅延も小さくなります。
表示遅延が小さいメリットとしては、視認と操作の繰り返し応答が良くなることに加えて、例えば下の動画のように壁に隠れたターゲットが壁から出てきた時、画面に表示されるのが実際に速くなります。
240~360Hz・FPSでシステム遅延が小さい環境の攻撃側に敵(守備側)が見えているのに対して、一般的な60Hz・FPSでシステム遅延が大きい環境の守備側は敵(攻撃側)が見えていない様子がハッキリと映っています。
主観の画面表示を基準にしてみると、クロスヘア中央にターゲットをエイムしてから撃ち始めた場合、240Hzのほうが60Hzより先に着弾します。ターゲットが逃げる場合は50ms程度の差で撃ち漏らす場合もあります。
技術云々ではなく、単純に、クロスヘア中央にエイムするという同じタイミングで撃ちあっていたら、リフレッシュレートが高いモニタを使っている方が勝ちます。加えて操作と画面表示の繰り返し応答も早いので、当然、リフレッシュレートが高い方がエイムもスムーズになります。
なお「MSI Optix MPG321UR-QD」で4K解像度/144FPSを狙うには、元から軽めのPCゲームや画質設定を下げた最新PCゲームであってもグラフィックボードのGPU性能はかなり高い水準で要求されます。
ゲーミングモニタとして「MSI Optix MPG321UR-QD」を使用するのであれば2021年最新のハイエンドGPUであるNVIDIA GeForce RTX 3080やAMD Radeon RX 6800 XTがおすすめです。
・GeForce RTX 30シリーズのレビュー記事一覧へ
・Radeon RX 6000シリーズのレビュー記事一覧へ
非可逆圧縮伝送機能「Display stream compression (DSC)」について
「MSI Optix MPG321UR-QD」が対応する非可逆圧縮伝送機能「Display stream compression (DSC)」について説明しておきます。「MSI Optix MPG321UR-QD」はDisplayPort1.4で策定されている映像データの非可逆圧縮伝送機能「Display stream compression (DSC)」に対応しているのが大きな特徴の1つです。
DSCは映像データを非可逆圧縮しますが視覚的に画質を損なうことがなく、DisplayPortケーブル1本で4K解像度/144FPS/フルRGBの映像データの伝送が可能です。また2本のDisplayPortケーブルを使用する方式と異なり、可変リフレッシュレート同期機能やHDR表示とも互換性があります。
Cyberpunk 2077のサンプルイメージを例にDSCの効果を検証してみました。
まずはフルRGBとYCbCr422の比較ですが、表示内容によっては(割とワーストケースですが)、下のようにYCbCr422ではボヤけてしまいます。ピンクの縦縞部分がYCbCr422によるボヤけが特にわかりやすいです。一方、DSCではフルRGBと同等の画質を得られます。【原寸の比較画像リンク:RGB vs YCbCr422、RGB vs DSC】
YCbCr422では文字が色によっては滲んで見えることがありますが、DSCでは解消されてRGBと同じ表示が得られています。【原寸の比較画像リンク:RGB vs YCbCr422、RGB vs DSC】
MSI Optix MPG321UR-QDの応答速度・表示遅延
次にゲーミングモニタのハードウェア性能として特に重要な、「MSI Optix MPG321UR-QD」の応答速度や表示遅延についてチェックしていきます。まずは「MSI Optix MPG321UR-QD」の応答速度について検証していきます。
なおゲーミングモニタを選ぶ、もしくはモニタの応答速度や残像を評価する上で重要な予備知識である『液晶モニタの応答速度とオーバードライブ機能』についてはこちらの記事で簡単に紹介しているので、よくわからないという人は先に確認してみてください。
・ゲーミングモニタの選び方[1] 応答速度とオーバードライブについて
「MSI Optix MPG321UR-QD」のOSDメニュー上ではオーバードライブ機能は「応答時間」の名前で配置されています。オーバードライブ補正の強度を通常/速い/最も速いの3段階で設定ができて、標準設定は”速い”になっています。
「MSI Optix MPG321UR-QD」のオーバードライブ設定は144Hzにおいて、”速い”もしくは”最も速い”でベストな応答を見せます。”速い”設定では素の残像がでて、”最も速い”では過渡応答は速くなりますがオーバーシュートによる逆像が強まるので、120~144Hz動作時についてはこの2種類のどちらを選ぶかはお好みでという感じです。
リフレッシュレートが100Hz以下になると”最も速い”では補正が強過ぎてオーバーシュートの逆像がかなり強く出てしまうので、”速い”の設定を推奨します。
応答速度の確認には「UFO Test: Ghosting」を使用します。同テストではUFOが移動する背景カラーを選択できますが、今回の検証ではブラック/グレー/ホワイトの3色を選択しています。
背景カラーがブラックの場合は各液晶パネルにおいて応答速度は高速な数値を示すので、概ね理想的な応答を確認することになります。背景カラーがホワイトの場合の応答速度は、ドキュメントやウェブページでテキストをスクロールした時の文字の滲み度合いの参考になります。背景カラーがグレーの場合、中間色に移るまでの応答速度を比較することになるので、一般的なゲームプレイにおける物理的な残像の少なさの指標として参考になります。
まずは簡単にシャッタースピードを十分に速くして「UFO Test: Ghosting」の様子を写真撮影してみたところ、「MSI Optix MPG321UR-QD」を144Hzリフレッシュレート、オーバードライブ設定を”速い”で動作させると、ベストケースでも1つ前の残像が残り、薄っすらとですが2つ前の像も見えました。
「MSI Optix MPG321UR-QD」は製品スペックが1ms(MPRT)、4ms(GTG)なので、同等スペックの4K/144Hz対応モニタの中でも1ms GTGとしてアピールされている製品と比較すると応答速度は少し遅めだと思います。
さらに「MSI Optix MPG321UR-QD」のリフレッシュレートを変えてみたり、他の液晶モニタを比較対象にしたりしながら、「UFO Test: Ghosting」の様子を「SONY DSC-RX100M5」の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影し、比較してみます。
「MSI Optix MPG321UR-QD」のリフレッシュレートをネイティブ対応する最大値の144Hzにした時、”速い”もしくは”最も速い”でベストな応答を見せます。
”速い”設定では素の残像がでて、”最も速い”では過渡応答は速くなりますがオーバーシュートによる逆像が強まるので、120~144Hz動作時についてはこの2種類のどちらを選ぶかはお好みでという感じです。
可変リフレッシュレート同期機能を使用する場合、負荷に応じて60FPS~144FPSでフレームレート/リフレッシュレートが変動しますが、”最も速い”では60Hz~90Hzでオーバーシュートがかなり強く出てしまいます。
120Hz以上で安定するなら”最も速い”でもいいですが、総合的に見て「MSI Optix MPG321UR-QD」で最適なオーバードライブ設定は”速い”だと思います。
なお60Hzにおいてオーバードライブ設定を”標準”に下げると、オーバーシュートによる逆像はなくなりますが、代わりに素の残像が出てしまいます。60Hz前後で最適な応答を見せるように”標準”と”速い”の中間くらいの設定があればよかったのですが。
ここからはSONY DSC-RX100M5の960FPS(16倍速)よりもさらに高速な5760FPS(96倍速)のスーパースローモーションカメラを使用して「MSI Optix MPG321UR-QD」の応答速度を比較検証していきます。
5760FPSスーパースローでも144Hzや120Hz時のオーバードライブ設定について確認しておくと、960FPSスーパースローでも見た通り、”速い”だと素の残像が出やすく、”最も速い”だと過渡応答は高速になりますがオーバーシュートによる逆像が強まります。
144Hzでは”最も速い”のほうがクッキリ感は強くなるかもしれませんが、VRR同期でリフレッシュレートが下がった時の応答を含め、総合的に考えるとオーバードライブ設定は”速い”で決め打ちにするのが手軽だと思います。
続いて同等スペックの液晶モニタと応答速度を比較してみました。
比較対象には、同じく4K解像度/144Hz対応の「LG 27GP950-B」と「Acer Nitro XV282K KV」を使用し、144Hzリフレッシュレートで統一しています。
ここ数か月で各社から発売されている4K/144Hz+対応かつHDMI2.1対応ゲーミングモニタの液晶パネルにはLG 27GP950-Bなどに採用されるLG製、Acer Nitro XV282K KVやGIGABYTE M28Uに採用されているInnolux製、そして今回新たに加わった「MSI Optix MPG321UR-QD」に採用されているAUO製、以上の3種類が存在しています。
動画を見ての通り、MSI Optix MPG321UR-QD」に採用されているAUO製の4K/144Hz対応液晶パネルはLG製やInnolux製と比べると応答速度ではやや劣るようです。AUO製パネルはQuantum Dot採用で発色については上回るのでどちらが良いかというと悩ましいところです。
「UFO Test: Ghosting」において下の写真のようにUFOが微かに表示された瞬間を始点に、その地点のUFOが完全に消えた時点を終点にして、その間隔のフレーム数を応答速度として算出し比較してみました。なおオーバードライブ機能によって発生するオーバーシュート/アンダーシュートによる逆像が発生してから消えるまでの時間は別に計算しています。
測定には240Hz未満のモニタではSONY DSC-RX100M5の960FPSスーパースローモーションを使用していますが、240Hzを超えるモニタでは5760FPSのスーパースローモーションを使用しており、その場合は末尾に”*”マークを添えています。
評価の目安として、”1000msをリフレッシュレートで割って2倍した数値”よりも測定値が小さければ、画面更新に応答速度が追いついています。60Hzの場合は33.3ms、120Hzの場合は16.6ms、144Hzの場合は13.9ms、240Hzの場合は8.3ms、360Hzの場合は5.6msを下回っていればOKです。
まずは背景カラーがブラックの時の「MSI Optix MPG321UR-QD」やその他の比較対象モニタの応答速度の計測結果となります。背景カラーがブラックの場合は各液晶パネルにおいて応答速度は高速な数値を示すので、概ね理想的な応答を確認することになります。
続いて背景カラーがホワイトの時の「MSI Optix MPG321UR-QD」やその他の比較対象モニタの応答速度の計測結果となります。背景カラーがホワイトの場合の応答速度は、ドキュメントやウェブページでテキストをスクロールした時の文字の滲み度合いの参考になります。
最後に背景カラーがグレーの時の「MSI Optix MPG321UR-QD」やその他の比較対象モニタの応答速度の計測結果となります。背景カラーがグレーの場合、中間色に移るまでの応答速度を比較することになるので、一般的なゲームプレイにおける物理的な残像の少なさの指標として参考になります。
最後に「MSI Optix MPG321UR-QD」の表示遅延(内部遅延)について測定を行いました。
モニタにはGPUのビデオ出力が送られてきてから実際にモニタに表示されるまで遅延が存在し、この遅延が大きいと例えば、FPSゲームでゲームパッドのトリガーやマウスのクリックによる操作からワンテンポ遅れて、マズルフラッシュが表示される、といった現象が発生します。人間は当然目で見てから操作するので、格闘ゲームやFPSゲームなど1,2フレームを争うような競技性の高いゲームにおいてはモニタの表示遅延が可能な限り小さいことが望まれます。
システム表示遅延やディスプレイ表示遅延の測定には、フォトセンサーを使用した特殊な測定機器「PC Gaming Latency Tester」を使用しています。当サイトのレビュー用に特注した機器なので、詳細についてはこちらの記事を参照してください。
「MSI Optix MPG321UR-QD」やその他の比較モニタのディスプレイ表示遅延の測定結果は次のようになりました。測定方法的に遅延が2ms以下であればディスプレイ内部の表示遅延は誤差の範囲内で十分に小さいと考えてOKです。
「MSI Optix MPG321UR-QD」やその他の比較モニタのシステム表示遅延の測定結果は次のようになりました。この測定値は一般的なPCゲームにおける操作から画面表示の変化までの遅延に一致します。
グラフの通りリフレッシュレートを上げると応答速度だけでなく表示遅延も改善するのでゲーマーにとってハイリフレッシュレートなゲーミングモニタを選択するメリットは大きいということが分かると思います。
MSI Optix MPG321UR-QDのFreeSync/G-Sync CPについて
続いて「MSI Optix MPG321UR-QD」が対応する可変リフレッシュレート同期機能「AMD FreeSync / NVIDIA G-Sync Compatible (VESA Adaptive-Sync、HDMI Variable Refresh Rate)」についてチェックしていきます。モニタの画面更新(リフレッシュ)に関する基本的な予備知識や、「AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync)」と「NVIDIA G-Sync Compatible」の関係についてはこちらの記事を参考にしてください。
・ゲーミングモニタの選び方[3] FreeSyncとG-Sync Compatibleについて
なお当サイトのレビューではNVIDIA環境について、G-Syncモジュールが搭載されたモニタにおける可変リフレッシュレート同期機能を単純にG-Syncと呼び、AMD FreeSync(VESA Adaptive-Sync)に対応したモニタにおける可変リフレッシュレート同期機能はG-Sync CompatibleもしくはAdaptive-Syncと呼びます。またドライバでそのモニタが正式にサポートされている場合はG-Sync Compatible認証取得済みと補足します。
「MSI Optix MPG321UR-QD」は48Hz~144Hzの範囲内で「AMD FreeSync / NVIDIA G-Sync Compatible (VESA Adaptive-Sync、HDMI Variable Refresh Rate)」など可変リフレッシュレート同期に対応しています。
「MSI Optix MPG321UR-QD」はG-Sync Compatible認証を取得とのことですが、2021年10月現在最新のGeForce Driver 472.12ではG-Sync Compatible認証を未取得と表示されました。
従来のNVIDIA製GPUではHDMI経由でG-Sync Compatibleは利用できないケースが多かったのですが、HDMI2.1では伝送技術の規格の一部としてVRR同期が内包されているので、「MSI Optix MPG321UR-QD」ではHDMI経由でもG-Sync Compatibleを利用できます。
当然、AMD製GPU環境でもAMD FreeSyncを有効化できます。DisplayPortとHDMI共に可変リフレッシュレート同期機能の対応フレームレートは48Hz~144Hzの範囲内です。
可変リフレッシュレート同期機能が正常に動作してリフレッシュレートが可変になると、「MSI Optix MPG321UR-QD」のOSD機能で表示できるリフレッシュレートがフレームレートに合わせて変動するようになるので、機能が正しく動作しているかどうかはここを見て確認してください。
以下、「MSI Optix MPG321UR-QD」で可変リフレッシュレート同期機能を使用する手順について説明しますが、共通の確認事項として、OSD設定で「Adaptive-Sync」の項目をオンにしてください。同設定項目は標準ではオフになっています。
AMD FreeSyncの使い方
可変リフレッシュレート同期「AMD FreeSync」を有効化する手順について説明します。AMD製GPU搭載PCの場合はRadeon設定のウィンドウ右上にある歯車アイコンを選択、トップメニュータブからディスプレイを選択の手順で表示される「Radeon FreeSync」のスライドスイッチから機能を有効化します。
また上で紹介した参考記事中で解説しているように、AMD FreeSyncではテアリング解消とマウス遅延低減のどちらを優先するかで垂直同期の有無を各自で選択する必要があります。垂直同期は通常ゲーム内設定でON/OFFの切り替えが可能ですが、ドライバ側が上書きしてゲーム内からは切り替えられない場合があります。ゲーム内で設定して希望通りの動作にならない時はRadeon Settingsのゲームプロファイルもチェックしてください。
NVIDIA G-Sync Compatibleの使い方
可変リフレッシュレート同期「NVIDIA G-Sync Compatible」を有効化する手順について説明します。2019年1月15日以降の最新ドライバによってNVIDIA GeForce環境でもAdaptive-Syncが利用可能になりました。ドライバの更新に合わせてG-Sync Compatible認証を取得するモニタが増えています。
417.71以降の最新ドライバをインストールして、DisplayPortビデオ出力にAdaptive-Sync対応モニタを接続すると、G-Sync対応モニタを接続した時と同様にAdaptive-Syncを有効化するための設定が、NVIDIAコントロールパネル上の「G-Syncの設定」に表示されます。
「G-SYNC、G-SYNCとの互換性を有効化(Enable G-SYNC, G-SYNC Compatible)」のチェックボックスをチェックして、下のモニタアイコンに使用するモニタの名前が表示・選択されていることを確認し、適用をクリックすればNVIDIA GeForce環境でAdaptive-Syncを有効化できます。
なおG-Sync Compatible認証を取得していない一般のAMD FreeSync/VESA Adaptive-Sync対応モニタでも、互換性が検証されていないと注記が表示されますが、NVIDIA製GPU環境においてAdaptive-Syncを利用できます。
AMD FreeSync/NVIDIA G-Sync Compatibleの効果
可変リフレッシュレート同期機能「AMD FreeSync / NVIDIA G-Sync Compatible」の効果やメリットについて説明していきます。機能的にはほぼ同じなので以下まとめてFreeSyncと呼ぶことがあります。AMD FreeSync / NVIDIA G-Sync Compatibleの検証に際してはリプレイ機能があって同一シーンで検証がしやすいので「Project Cars 2」を使用しています。またフレームレートやテアリングの発生の様子を確認しやすいように、画面左上にはGPUフレームレートOSD、画面左端にはGPUフレームバッファで色の変わるカラーバーが表示されるようにしています。加えてモニタが対応していればモニタOSDのリフレッシュレート表示機能も使用します。
画面右上のフレームレートはGPUフレームバッファから算出されているので必ずしもリフレッシュレートとは一致しません。画面左端のカラーバーは連続するフレーム間、つまりn番目とn+1番目のフレームではそれぞれ異なる色になっているため、同時に複数色のカラーバーが表示されている画面はテアリングが発生していることを意味します。
まずは同期なし、垂直同期、FreeSync、FreeSync+垂直同期の違いを分かりやすく体感してもらうため、モニタリフレッシュレート60HzにおいてGPU側出力フレームレートが30FPS~60FPSの間で変動するようにして、「SONY DSC-RX100M5」の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影して、画面表示の様子を比較してみました。
同期なしでは盛大にテアリングが発生し、垂直同期ではスタッター(カクつき)が発生しているのがわかります。一方でFreeSyncと垂直同期の両方を有効にした場合はテアリングもスタッターも発生しません。ただし例外として動画で50秒以降のフレームレートが40FPSを下回るとAMD FreeSyncの対応フレームレート外となるためスタッターが発生しています。またFreeSyncのみを有効にして垂直同期は無効の場合、同期なしと比べて圧倒的にテアリングが減っているのがわかります。ただし対応フレームレート内であっても稀にテアリングが発生し、対応フレームレート外では同期なし同様にテアリングが発生します。
続いて144Hzリフレッシュレートにおいて、GPU側出力フレームレートが100FPS前後で変動するようにして、先ほど同様に同期なし、垂直同期、FreeSync、FreeSync+垂直同期の様子を16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影して比較してみました。
FreeSync有効であれば同期なしのテアリングや垂直同期のスタッターに悩まされることなく滑らかで綺麗な映像が表示できています。FreeSyncの60Hz/50FPS前後と144Hz/100FPS前後を比較すると当然ですが後者の方がコマ割りが増えるので16倍速スローモーションでもスムーズに見えます。
FreeSyncのみを有効した時に映像フレームレートが対応フレームレート範囲外になるとテアリングが発生しますが、リフレッシュレートを上回ってしまう場合については、Radeon設定のRadeon Chillの最大FPSに”リフレッシュレートから3,4FPSを引いた値”を指定してください。(グローバル設定だけでなくゲームタイトル別に設定が可能)
なおNVIDIA GeForce環境でAdaptive-Syncを利用する場合も、フレームレートがリフレッシュレートを超過するとテアリングが発生するので、テアリングを完全になくすには垂直同期を有効化する必要があります。もしくは垂直同期無効においてテアリングをなくすには、NVIDIAコントロールパネルの「Max Frame Rate」に”リフレッシュレートから3,4FPSを引いた値”を指定してください。(グローバル設定だけでなくゲームタイトル別に設定が可能)
これの設定以外にもRivaTunerやNvidia Profile Inspectorを使用してゲーム内フレームレートがモニタリフレッシュレートを上回らないように設定することも可能です。
下の比較はいずれもFreeSyncが有効になっているのでスタッターもなく滑らかですが、単純にFreeSyncだけを有効にすると対応フレームレートの上限となるリフレッシュレートを超えた時にテアリングが発生します。
リフレッシュレートが144Hz(フレームレートの上限が144FPS)の場合は120FPS~140FPSが上限になるようにフレームレートに制限をかければ、マウス操作を低遅延しつつ、テアリングの発生も最小限に抑えて快適なゲームプレイが可能です。
またPUBGやCS:GOのようなオンライン対戦FPSや格闘ゲームなど1,2フレームを争う競技性の高いPCゲームでは、表示遅延(入力遅延)が発生する垂直同期は嫌われる傾向にありますが、144Hzや240Hzといったハイリフレッシュレートモニタにおいて、同期機能を無効化した場合に発生するテアリングがどのように影響するのか検証してみました。
テアリングはモニタ表示更新中のフレームバッファの更新で発生しますが、目で見た時の違和感はn番目とn+1番目のフレームの絵の差に影響されます。コマ割りが細かくなる高フレームレートではn番目とn+1番目の絵の違いは当然、低フレームレートの場合よりも小さくなります。そのため50FPSでは画面の分断のように知覚できたテアリングは、200FPSのような高フレームレートでは細かいノイズのような形で知覚されます。
100FPSを超える高フレームレートでは大きな分断に見えるテアリングの代わりに、細かいノイズのように感じるテアリングが増えてきます。『細かいノイズの発生程度であれば高リフレッシュレートモニタのテアリングは実用上は大した問題ではなく、可変リフレッシュレート同期機能は不要である』という意見がありますが、高リフレッシュレートモニタのアドバンテージとして先に解説した「ゲーム内遠方に存在して動いているエネミーやオブジェクトの視認性」と合わせて考えると、このノイズの有無は遠方の細かいエネミーやオブジェクトの発見に影響します。なので高リフレッシュレートモニタを使用するのであれば可変リフレッシュレート同期機能はあったほうがいい、というのが管理人の意見です。
MSI Optix MPG321UR-QDのMBR機能について
「MSI Optix MPG321UR-QD」はモーションブラーリダクション機能「MPRT Sync」に対応しています。MPRT Syncについて公式には詳細な説明がされていませんが、一般に言うところのMotion Blur Reduction(モーションブラーリダクション、残像抑制)機能の1種です。
モーションブラーリダクション機能についてはこちらの記事で簡単に紹介しているので、よくわからないという人は先に確認してみてください。
・ゲーミングモニタの選び方[2] モーションブラーリダクションについて
「MSI Optix MPG321UR-QD」に搭載されたモーションブラーリダクション機能「MPRT Sync」は、144Hzや120Hzなどリフレッシュレートが85Hz以上の時に選択できます。Syncが名前に入っているように、可変リフレッシュレート同期機能とも併用が可能です。
HDR表示とは併用できませんが、DisplayPortとHDMIの両方のビデオ入力で使用できます。
MPRT Sync使用時にモニタ輝度の設定項目はグレーアウトし、輝度は自動制御されます。
まずはモーションブラーリダクション機能「MPRT Sync」が具体的にどのような動作をしているのか確認していきます。「MSI Optix MPG321UR-QD」の144HzリフレッシュレートでMPRT Syncが動作している時の様子を5760FPSスーパースローモーションムービーで撮影してみました。5760FPSで144Hzのモニタを撮影しているので、モニタの1フレームが更新されるまでを撮影した動画は40フレームに分割されます。
前述の通り40フレーム周期で1リフレッシュとなっていますが、明転時間は8フレーム、暗転時間は32フレームです。明暗比率は1:4なのでゲーミングモニタのMBR機能としては暗転が長めです。
またモーションブラーリダクション機能では、残像感を低減させる効果が期待できる反面、バックライトを消灯するので時間平均の輝度が下がって画面が暗くなるというデメリットが指摘されます。
「MSI Optix MPG321UR-QD」はMBR機能を使用しても、180cd/m^2程度の明るさを確保できるので通常の室内利用では問題ないはずですが、室内照明がかなり明るい環境等では注意が必要です。
「MSI Optix MPG321UR-QD」に搭載された「MPRT Sync」などモーションブラーリダクション機能は、人の目の錯覚が引き起こす残像やボヤケを解消する機能なので、写真や動画を見せて残像が抑制されている様子を実際に見せるというような解説は厳密には不可能です。
そのためレビューでは管理人が試用してみたインプレッションを伝えることくらいしかできないのですが、MBR機能を有効にすると動いている物体の輪郭がクッキリとして確かに視認しやすくなりました。下の写真は管理人が「UFO Test: Strobe Crosstalk」を見た時の感覚を表現したイメージ図ですが、輪郭のボヤケがなくなってネイティブスピードでも倍速ハイスピード動画のスローモーションで輪郭を追っている時に近い感覚で追従して見ることができました。
「MSI Optix MPG321UR-QD」のMPRT Syncは名前に”Sync”とは言っているように、可変リフレッシュレート同期機能とも併用が可能です。
MSI Optix MPG321UR-QDのHDR表示やCSゲーム機対応について
最後に「MSI Optix MPG321UR-QD」のHDR表示やCSゲーム機の対応(4Kエミュレートなど)についてチェックしていきます。HDR表示やCSゲーム機対応について | |
HDMI ver, ポート数 |
HDMI2.1×2 |
HDR表示 | 対応 |
VRR同期 | 併用可能 |
カラーフォーマット | DP: 4K/144Hz/10bit RGB HDMI: 4K/144Hz/12bit RGB |
ピーク輝度(実測) | 713cd/m^2 |
輝度認証 | VESA DisplayHDR 600 |
ローカルディミング | 対応(1D型) |
4Kエミュレート | 4Kネイティブ対応 |
PlayStation 5 | 4K/120FPS対応, YUV422 (24Hzに非対応) |
Xbox Series X/S | 4K/120FPS対応 (24Hzに非対応) |
HDR表示への対応やカラーフォーマットについて
「MSI Optix MPG321UR-QD」はHDR表示に対応しており、VESAがPCモニタ向けに展開している輝度認証のVESA DisplayHDR 600を取得しています。「MSI Optix MPG321UR-QD」は映像ソース機器から常時、HDR信号を受け付けるように認識されますが、HDR映像の入力があると画像モードがHDRモードへ自動的に切り替わります。
HDRモードではディスプレイ輝度の項目がグレーアウトし、輝度制御が半自動になります。またHDRモードでは一部のゲーミング機能も排他利用(グレーアウト)になります。
「MSI Optix MPG321UR-QD」はDisplayPort1.4 DSCに対応しているので、最新グラフィックボードを搭載したゲーミングPCと接続した場合、4K/144Hz/HDR表示において、RGB 10bitのカラーフォーマットに対応します。G-Sync Compatibleなど可変リフレッシュレート同期機能も併用が可能です。
また「MSI Optix MPG321UR-QD」のHDMI2.1ビデオ入力は最新グラフィックボードと接続した場合、4K/144Hz/HDR表示において、RGB 12bitのカラーフォーマットに対応します。G-Sync Compatibleなど可変リフレッシュレート同期機能も併用が可能です。
HDRについて簡単に説明すると、HDR(ハイダイナミックレンジ)というのは、RGBの光の三原色の映像情報に加えて、輝度(明るさ)の情報が備わった映像ソースのことです。
従来の表示機器や映像ソースでは10^3程度のダイナミックレンジしかありませんでしたが、HDRに対応することでダイナミックレンジが10^5程度と100倍近く拡張され、従来よりも細かい階調で明るさや暗さを表現できるようになり、「明るい場所は明るく、暗い場所は暗く」なるように画面の明るさを操作することで、白飛びや黒潰れをなくして高画質を実現しています。
HDRに関する説明は色々とあると思いますが、管理人は『明るい場所はより明るく、暗い場所はより暗く』と大雑把に理解しています。
「明るい場所は明るく、暗い場所は暗く」するということは必ずしも”見えやすく”なるわけではありません。というか暗い場所は暗くなるので必然、暗い部分は見えにくくなります。逆に明るい場所が明るくなったら見えやすくなるかというと、再現可能な輝度の領域が増すので、ディスプレイによる描画は現実に近づきますが、太陽を覗き込んだ時のように特に明るい場所の周辺は光で潰れて(目の調光機能的な問題で)見えにくくなります。もちろん明暗が分かれることで境界線がクッキリして見えやすくなる場合もあります。
一部のゲーミングモニタに暗所を明るく(白く)して見えやすくする機能があるように、HDR表示は見やすさには直結しないので、見やすさという意味で画質が良くなるのかというと、その点はケースバイケースです。SDRダイナミックレンジの範囲内で平滑化されていた時に比べて、暗い部分が強調されることを考えると見えにくさの方が体感しやすい気がします。
HDRは原理的にはモニタから見える映像を”リアル”に近づける機能です。ただし実際のところはモニタ個別の色調設定などの都合で鮮やかになり過ぎたり色味が変わったりするので、「実際の視覚と同じ」という意味でリアルかというと疑問符が付くのですが。「明るい場所は明るく、暗い場所は暗く」なるので立体感は増して、平面表示の中に奥行を感じやすくなるという点ではリアルな表示に近づきます。個人的にはHDR表示の効果はSDRに比べて、鮮やかになって、立体感が増すと感じています。
4Kモニタの広告をフルHDモニタで見る以上に、SDRモニタでHDRについて体感的に理解することは困難です。なのでHDRについては店頭など実機で体験して気に入れば購入するくらいが正直なところおすすめです。HDRについては正直に言って”百聞は一見に如かず”な機能です。SDRモニタ上で調べるよりもHDR表示の実機を見て気に入るかどうかが全てな機能だと思います。
HDR表示におけるディスプレイ輝度やローカルディミングについて
「MSI Optix MPG321UR-QD」はVESAがPCモニタ向けに展開している輝度認証のVESA DisplayHDR 600を取得しています。VESAがMicrosoft Store上で無料アプリとして公開しているVESA DisplayHDR Compliance Testsから、「MSI Optix MPG321UR-QD」のディスプレイ輝度の扱いが確認できました。(データの読み方については管理人も怪しいので参考までに)
近年のモニタにおいてHDRモードのディスプレイ輝度は高輝度領域の広さや高輝度表示の継続時間に依存するので、i1 Display Pro Plusを使用してHDR時の最大輝度を条件別で測定してみました。なお持続最大輝度は十数秒後で測定しているのでもう少し下がる可能性もあります。
「MSI Optix MPG321UR-QD」は10%部分であれば瞬間的なピーク輝度で713cd/m^2、全体表示や持続的にも700cd/m^2に近い数値の非常に高い輝度を発揮でき、VESA DisplayHDR 600の輝度認証を取得しているのも納得の性能です。
「MSI Optix MPG321UR-QD」が最大で700cd/m^2に近い輝度を発揮できるのは間違いないのですが、輝度測定を繰り返していると、400~500cd/m^2程度まで輝度が下がってしまい、一定時間の暗転表示では回復せず、モニタ電源を切らないと回復しない症状がありました。
VESA DisplayHDR Compliance Testsを使用して検証したので同アプリとの相性問題という可能性もあると思います。
10%部分の高輝度表示については周辺のバックライトが暗転時よりも、周辺のバックライトが明転時の方が輝度が高くなる、ローカルディミングの輝点に対する追従が遅い(後述)、といった現象も確認しているので、今後のファームウェアアップデートでローカルディミングによる輝度制御については改善を期待したいところです。
「MSI Optix MPG321UR-QD」はHDRモードになると自動的にローカルディミングが有効になります。ただしバックライト部分制御は短冊状に分割するだけの一次元型で分割数が少ないという欠点があります。
部分制御のゾーン数が少ないので動画を見ての通り、輝点に対してかなりの広範囲でバックライトが点灯してしまいます。ローカルディミングを採用するのであれば、フルアレイ型で少なくとも100単位のゾーン数は実現して欲しかったところです。(分割を分かりやすくするため実際に目視した時よりも動画は強調されている場合があります。)
CSゲーム機接続時の4KエミュレートやHDCP対応について
「MSI Optix MPG321UR-QD」のHDMIサブ入力はHDMI2.1に対応しているので、PlayStation 5やXbox Series X/Sを組み合わせた場合、4K/120Hzの表示が可能です。またゲーム機が対応していればVRR同期機能も利用できます。将来的にファームウェアアップデートで対応するかもしれませんが、10月現在の最新ファームウェアにおいて「MSI Optix MPG321UR-QD」はPlayStation 5やXbox Series X/Sから24Hzに非対応のモニタと認識されました。ゲーム関連は問題ないのですが、24FPSや30FPSの映像作品などでは問題があるかもしれません。
ゲーム機や動画プレイヤーなどからモニタの電源ON/OFF等の操作が可能になるHDMI CECにも対応していました。
MSI Optix MPG321UR-QDのレビューまとめ
最後に「MSI Optix MPG321UR-QD」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- 画面サイズ32インチで4Kゲーミングモニタとしてはちょうどいいサイズ
- 発色や視野角に優れたIPS液晶パネル
- Quantum Dot技術採用で、97% DCI-P3、99% Adobe RGBの広色域
- 液晶パネルは反射防止のアンチグレア
- ビデオ入力はDisplayPort1.4aとHDMI2.1×2とUSB Type-Cの計4系統
- DP1.4はDSC機能によって4K/144Hz/10bit RGB/HDR/VRRに完全対応
- HDMI2.1は4K/144Hz/12bit RGB/HDR/VRRに完全対応
- 可変リフレッシュレート同期機能に対応(48FPS~144FPS)
- HDR輝度認証のVESA DisplayHDR 600を取得
- HDMI2.1搭載なのでPS5やXbox SXを接続時は4K/120FPSやVRR同期に対応
- 4つのビデオ入力全てで6基のUSBハブポートを共有可能なKVMスイッチ機能
- モニタ本体重量7.2kgかつVESAマウント対応でモニターアームを使用可能
- マウスケーブルを宙吊りできるマウスバンジーが付属
- OSDフルアクセスやホットキー設定が可能なPCアプリ「Gaming OSD 2.0」に対応
- アクティブノイズキャンセリング機能に対応したステレオマイクを内蔵
- 製品価格が税込み15.9万円と非常に高価
- LG製やInnolux製の液晶パネル採用製品に比べて応答速度は遅い
- 最小輝度が128cd/m^2で高め
- ガンマや彩度などの調整がなく、発色関連の設定が最小限
- ローカルディミングは1次元型で分割数も少ない
- HDMIで24Hz非対応とPS5やXbox SXに認識される
「MSI Optix MPG321UR-QD」は3840×2160の4K解像度ながらネイティブ144Hzの高速リフレッシュレートで動作し、DP1.4 DSCやHDMI2.1によって4K/144HzをフルRGBで表示しながら、可変リフレッシュレート同期機能に加えて、DisplayHDR 600認証を取得する高輝度なHDRにも対応するというハイエンドゲーマー待望の欲張りスペックを実現した製品です。
「MSI Optix MPG321UR-QD」はゲーミングモニタではまだ採用の少ない次世代規格HDMI2.1対応ビデオ入力を搭載しており、PlayStation5やXbox Series X/Sを接続した場合、4K/120FPSの表示が可能、またゲーム機が対応していれば可変リフレッシュレート同期機能も使用できます。大型テレビを置けない私室で、PlayStation5やXbox Series X/Sを使いたい人には最適なモニタです。
「MSI Optix MPG321UR-QD」は可変リフレッシュレート同期機能「AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync、HDMI Variable Refresh Rate)」に対応しています。VRR同期対応フレームレートとして48FPS~144FPSの幅広いフレームレートをカバーしており、60FPS前後しか維持できない最新の高画質な重いゲームから、100FPS以上を維持できる競技性の高い軽めなゲームまで、テアリングやスタッターのないクリアで滑らかな表示を実現します。
残念ながらNVIDIA製GPUとの互換性を証明するG-Sync Compatible認証は今のところ取得していませんが(おそらく今後のドライバアップデートで追加)、NVIDIA製GPU環境でもVRR同期機能自体は利用できます。
「MSI Optix MPG321UR-QD」は国内発売された4K/144Hz/HDMI2.1搭載ゲーミングモニタとしては、第3の液晶パネルとなるAUO製パネルが採用されています。
公式にアピールされている通り、IPSタイプの液晶パネルであり、Quantum Dot技術も採用されているので、97% DCI-P3、99% Adobe RGBという極めて優れた広色域を実現しており、実際にこの目で見ても「MSI Optix MPG321UR-QD」は発色の鮮やかさなら、これまでレビューしてきたLG製やInnolux製のパネルを採用する製品を上回っていました。
一方でスペック値で言うところの1ms GTGを標榜するLG製やInnolux製のパネルを採用した製品に比べて、AUO製パネルを採用する「MSI Optix MPG321UR-QD」は応答速度でやや劣るという結果でした。発色の良さを取るか、応答速度の高速さを取るかの選択は悩ましいところです。
「MSI Optix MPG321UR-QD」はKVMスイッチ機能に対応しており、モニタのUSBハブ端子に接続したマウスキーボードなどのUSB機器を、デスクトップPCとモバイルPC/スマートフォンで共有できます。
KVM機能自体はモニタに搭載されることも増えていますが、「MSI Optix MPG321UR-QD」ではDisplayPortやHDMIといった複数のビデオ入力にそれぞれUSBアップストリーム端子が併設されているので、全てのビデオ入力で6基のUSBハブ端子に接続されたUSB機器を共有できるところは大きな特徴です。
OSD設定にフルアクセスでき、ホットキー設定も可能なPCアプリ「MSI Gaming OSD 2.0」に対応していることなどMSI製品独自の魅力もあります。
アラームクロックやOSDクロスヘアなどPCゲームをプレイする時に役立つ便利機能をショートカットキー1つで操作でき、またプレイするPCゲームに合わせた画質モードの切り替えもワンタッチなので、MSIがE-Sports向けモニタを謳うのも納得です。
税込み15.9万円という製品価格そのものだけでなく、4K/144Hz/HDMI2.1搭載という類似スペックの製品との比較でも高価な部類ですが、4K/144Hz/フルRGB/HDR/VRR同期対応という充実のスペックに加えて、クリエイター向けにも活躍できるプロ級広色域のパネル品質を考えれば、「MSI Optix MPG321UR-QD」は検討する価値のある製品だと思います。
以上、「MSI Optix MPG321UR-QD」のレビューでした。
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VRR同期機能やDisplayHDR 600に対応し、4K/144HzでHDMI2.1ビデオ入力も搭載する32インチ量子ドットIPS液晶ゲーミングモニタ「MSI Optix MPG321UR-QD」をレビュー。量子ドットでプロ級の発色、全ビデオ入力対応のKVMも魅力。https://t.co/ktXdBoo3g6 pic.twitter.com/X8IRSo8hpm
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) October 6, 2021
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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同じ第三の液晶パネルですので、類似品と思いますが、KVM機能の有無が目立った違いと思います。
後は入力系統の違い?と思いますが、カラープロファイルをみると
わずかに違いがありますので、そのあたりの観点で比較頂けると幸いです。