NVIDIA GeForce RTX 30_Dynamic Boost 2.0GPU単体ではなくCPUとVRAMも含めたトータルで発熱を調停するNVIDIA GeForce RTX 30モバイルGPUの新機能「Dynamic Boost 2.0」について簡単に解説します。



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GPU単体ではなくCPUとVRAMも含めたトータルで発熱を調停するNVIDIA GeForce RTX 30モバイルGPUの新機能「Dynamic Boost 2.0」について簡単に解説します。
NVIDIA GeForce RTX 30モバイルGPUを搭載した高性能モバイルPCの性能評価に重要ではあるものの、補足的な内容に対して、説明がかなり長くなるので個別の記事にしました。

「Dynamic Boost 2.0」は冒頭で書いたようにGPU単体に電力制限(最大グラフィックパワー)を課すだけでなく、GPU、CPU、VRAMという発熱が大きく、モバイルPCの大型ヒートシンクによって一括で冷却されることの多い熱源をひとまとめにトータルの発熱として調停する機能です。
NVIDIA GeForce RTX 30_Dynamic Boost 2.0_power-sharing

以下、簡単化してCPUとGPUのトータルとして扱いますが、CPUの負荷(発熱、消費電力)が大きい時にGPUに割り当てられる電力が減るので、『3DMark TimeSpy グラフィックテストのようにCPU負荷の低いタスクに対するグラフィック性能』と『CPU負荷の大きい実PCゲームのグラフィック性能』の2種類について、一定のG電力を常に使用できるデスクトップ向けGPUを基準にすると、相対的な性能が大きく乖離するのでは?と気になった次第です。
簡単に言うと、TimeSpy グラフィックテストでは100Wの電力を使用できるのでRTX 3070モバイル版はRTX 3060デスクトップ版と同性能だけど、CPU負荷が大きい実ゲームでは90Wの電力しか使用できないので性能が10%低くなる、といったような現象が起こるのでは心配しました。
dynamic-boost-2-min

結論から言うと、
Dynamic Boost 2.0にはCPUの電力使用を抑制する機能も含まれているため、多くの実ゲームで3DMark TimeSpy グラフィックテストと同じような、デスクトップ版GPU比の相対性能を発揮できます。
ただし、
CPUの電力使用を抑制する機能が正常に動作しない、もしくは抑制できないほどCPUの使用率の上昇が要求される場合は、GPU電力が制限されて性能が低下する可能性もあります

簡単にまとめると、『RTX30モバイル版GPUの性能をざっくり把握する際に3DMark TimeSpy グラフィックテストのスコアは9割がた参考になるけど、稀にワーストケースで10~20%の性能低下もあり得る』という感じです。


Dynamic Boost 2.0にはCPUの電力使用を抑制する機能がある

「Dynamic Boost 2.0」は単純にCPU&GPUのトータルの発熱を調停するだけでなく、GPUができるだけ電力を使用できるようにCPUの電力使用を抑制する機能があります。
TimeSpy グラフィックテストをウィンドウモードで実行し、アクティブウィンドウになっている時、CPU電力は20W前後に抑制され、コアクロックやCPU使用率も下がり、逆にGPUは90~100Wの電力を使用できます。
3D-active
一方で、TimeSpy グラフィックテストを動かしたまま、アラーム&クロックをクリックしてアクティブウィンドウを移すと、CPU消費電力は40~60Wに上昇し、コアクロックも全コア最大ブーストクロックに貼りつきました。
3D-no-active
同じ試行をRTX 30デスクトップ版で試してみても、アクティブウィンドウに依らず、CPUのコアクロックや電力は後者の状態のまま変化はありませんでした。
また後ほどベンチマーク結果を掲載する実際のPCゲーム中においてもCPU電力は20W前後に収束するような挙動になっていたので、アクティブなアプリケーションを元にCPUの電力を抑制し、GPUにより多くの電力を供給するような調停が行われていると考えていいと思います。


Dynamic Boost 2.0の影響を実ゲームベンチでチェック

CPU負荷に引っ張られてGPU性能が低下するという「Dynamic Boost 2.0」に予想されるデメリットは生じないのか、実ゲームベンチマークでチェックしてみました。

検証にはRTX 3080モバイル版を搭載した「GIGABYTE AERO 15 OLED YC-9JP5760SP」を使用しています。同PCにおいてRTX 3080モバイル版の最大グラフィックパワーは105Wに設定されています。GPU&CPUの電力配分としては95W:20Wや70W:50Wのような挙動を主に確認しており、前者で理想的なグラフィック性能を発揮します。



RTX 3080モバイル版と各種デスクトップ向けGPUについて3DMark TimeSpyのベンチマークスコアを比較してみました。グラフィックスコアを参照しているので基本的にCPU性能に依存せずGPU性能にのみ比例します。またCPU負荷も小さいのでDynamic Boost 2.0が機能するRTX30モバイルGPUでも理想的な性能を確認できるはずです。
RTX 3080_Mobile_Perf_3DM-TS

3DMark TimeSpy グラフィックテストの傾向と一致するのか(CPU負荷に足を引っ張られることがないのか)をチェックするため、実ゲームのベンチマーク比較を見ていきます。

検証には、CONTROL(高設定プリセット, DirectX12, AMD製GPUはDirectX11)、DEATH STRANDING(最高設定プリセット, TAA)、Final Fantasy XV(最高設定プリセット, NVIDIA GameWorksはVXAOを除き有効)、Horizon Zero Dawn(最高画質設定プリセット)、Shadow of the Tomb Raider(最高設定プリセット, TAA, DirectX12)、Middle-Earth: Shadow of War(ウルトラ設定プリセット)の6タイトルについて、フルHD解像度とWQHD解像度で実際のゲーム性能もチェックしてみました。

まずはTimeSpy グラフィックテストと同じWQHD解像度における実ゲーム性能の検証結果です。
いずれのPCゲームでもTimeSpy グラフィックスコアの傾向と一致し、RTX 3080モバイル版の性能はRTX 3060のデスクトップ版よりも高速、タイトルによって若干前後するもののRTX 2070 SUPERのデスクトップ版と同等でした。
GIGABYTE AERO 15 OLED_RTX 3080_Perf_2560
続いてフルHD解像度ですが、フレームレートが上昇するため、実は逆に高解像度よりもCPU負荷が高くなる傾向があります。
フルHD解像度でも基本的にRTX 3080モバイル版の性能はRTX 2070 SUPERと同等でしたが、CPU負荷が高くなるFinal Fantasy XVでは相対的に見て性能が10%程度下がり、RTX 3060と同等の性能になりました。
GIGABYTE AERO 15 OLED_RTX 3080_Perf_1920_s
なおFinal Fantasy XVについては、製品版ゲームではなく公式ベンチマークにおいてWQHD解像度とフルHD解像度の両方でCPU負荷が高くなりCPU:50W、GPU:70Wで動作しました。
Dynamic Boost 2.0で抑制しきれないほどCPU負荷が大きい(正常にどうさしている)のではなく、CPUの電力使用の抑制が上手く動作していないという可能性もあるかもしれません。


RTX30モバイル版GPUの性能をざっくり把握する際に3DMark TimeSpy グラフィックテストのスコアは9割がた参考になるけど、稀にワーストケースで10~20%の性能低下もあり得る』という理解で良さそうです。




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