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Intel Xeon W-3400XシリーズCPUに対応するW790チップセット搭載マザーボードとして、16基のDDR5 R-DIMMスロットにより1TB容量を超えるシステムメモリに対応し、PCIE5.0x16帯域のPCIEスロットを6基搭載するパーソナルWS向けモデル「Supermicro X13SWA-TF」をレビューします。
代理店公式ページ:https://www.ask-corp.jp/products/supero/motherboard/intel-w790/x13swa-tf.html
製品公式ページ:https://www.supermicro.com/ja/products/motherboard/x13swa-tf
Supermicro X13SWA-TF レビュー目次
1.Supermicro X13SWA-TFの外観・付属品
2.Supermicro X13SWA-TFの基板上コンポーネント詳細
3.Supermicro X13SWA-TFの検証機材
4.Supermicro X13SWA-TFのBIOSについて
・BIOSのアップデート手順について
5.Supermicro X13SWA-TFのOC設定について
・動的倍率OCと電力制限について
・メモリのオーバークロックについて
6.Supermicro X13SWA-TFの動作検証・OC耐性
7.Supermicro X13SWA-TFのレビューまとめ
【注意事項】
同検証は2023年5月上旬に行っておりSupermicro X13SWA-TFのBIOSはver 1.1を使用しています。2023年11月時点で最新バージョンのver2.0が配布されています。
最新BIOSでは修正されている不具合や追加されている機能もあると思うので、最新BIOSのリリースについては公式ページを各自でチェックしてください。
サポート:https://www.supermicro.com/ja/support/resources/downloadcenter/firmware/MBD-X13SWA-TF/BIOS
【Tips】
・電源プランは高パフォーマンスにする。(バランスはエクスプローラーの開閉でもラグる)
・Adaptive Override Voltageは現状で正常に適用されないので使用しない
・Active Core Countが正常に検出されず、単コアブーストが効かない
30コア以上のW-3400Xの場合、上記の設定は非推奨(2495Xなど2400X向けの設定)
・W-3400XはTBM3.0によるアクティブタスクの割り当てが上手く動作しない(ほぼランダム状態)
・PL2は設定値より10%低い値でCPU Package Powerが制御される
CPUの仕様なので希望する値よりも10%高く設定する
【BIOS:1.1におけるOC関連の不具合】
・By Core Usage倍率のOC設定が正常に適用されない
・VccINの手動設定が適用されない
・Specific Per Core最大倍率の設定が2カ所ある(ただのUI仕様かも)
Per Core Ratio Overrideは設定値が適用されるが、
VF Configuration ScopeのAll-Core/Per-Coreの設定値は適用されない
【2023年5月15日:初稿】
レビュー記事初稿を公開、BIOS:1.1で検証
【機材協力:Supermicro 国内正規代理店 アスク】
Supermicro X13SWA-TFの外観・付属品
まず最初にSupermicro X13SWA-TFの外観と付属品をチェックしていきます。マニュアル冊子も付属していますが、共通内容が英語で数ページ、日本語説明が2ページと簡易的なものなので、詳細マニュアル(英語のみ)は公式サポートページからダウンロードして下さい。
組み立て関連の付属品はSATAケーブル6本、リアI/Oバックプレート、PCIE 8PIN to EPS 8PIN変換ケーブルです。
「Supermicro X13SWA-TF」のリアI/Oバックプレートは黒地に白色でIOの説明アイコンが描かれているだけのシンプルなデザインです。裏側にはスポンジクッションがあります。
「Supermicro X13SWA-TF」のリアI/Oバックプレートは各種IOポートが塞がった状態で届くようです。USBポートなど各自で塞いでおきたいポートがある時を想定してでしょうか。
「Supermicro X13SWA-TF」はLGA4677ソケットに対応するCPUをCPUクーラーに固定するプロセッサーキャリアが付属しています。
Intel Xeon W-2400X/3400XシリーズCPUのパッケージボックス版には標準で各CPUに対応したプロセッサーキャリアが付属しているので通常は必要ありませんが、プラスチック製でツメが折れる可能性もあるので、予備として考えると嬉しい付属品です。
マザーボード全体像は次のようになっています。
「Supermicro X13SWA-TF」はSSI-EEBフォームファクタのマザーボードです。一般的なATXサイズのマザーボードよりも横幅が65mm程度大きいので注意してください。
「Supermicro X13SWA-TF」はSSI-EEBフォームファクタのマザーボードなのでマザーボード右端にあるSSI-EEB用のネジ穴に対応したPCケースに組み込むのが推奨ではありますが、ATX互換のネジ穴が7つあるので、内部スペースさえあればATX対応PCケースにも組み込みは可能です。
注意点として、「Supermicro X13SWA-TF」はATXでいうと中央と中央上には固定用のネジ穴ないので、この2カ所には絶対にマザーボードトレイのスペーサーを装着しない、もしくはPCケースに最初から装着済みの場合は外してください。
一応、背面の該当部位に素子の実装はありませんが、近年のPCケースではマザーボードトレイにネジ止めする時にマザーボードの位置がズレないよう、中央のスペーサーが凸形状になっていることがあります。そのままその他のネジを締めてしまうとマザーボードが破損する可能性があります。
「Supermicro X13SWA-TF」はマザーボード基板の色こそ、近年の自作PC向けで主流な黒色ですが、チップセットにヒートシンク装着されているだけの非常にシンプルというか、エンタープライズ向けサーバー製品らしさを感じるデザインです。
マザーボード上側を見てもリアI/Oカバー等の装飾類はなく、VRM電源回路と10Gb LANコントローラーにアルミニウム製ヒートシンクが乗っているだけです。
「Supermicro X13SWA-TF」のVRM電源クーラーは、電子工作用の部品として探せば見つかりそうな、簡素なアルミニウム製ヒートシンクです。Xeon W-3400シリーズの最上位モデル Intel Xeon w9-3495XはPBP:350Wと消費電力が大きいCPUなので、そういった上位モデルに対応できるのか少々不安になるクーラー構成です。ここは後ほど実機検証で詳しく見ていきます。
「Supermicro X13SWA-TF」は最大56コア112スレッドのXeon W9-3495Xにも対応できるようCPUコア向けに90A対応Dr. MOSで構成される8フェーズの堅牢なVRM電源回路が実装されています。
VRM電源回路にハイサイド/ローサイドMOS-FETとドライバICをワンパッケージし、低発熱で定評のあるDr. MOSを採用するのはハイエンドマザーボードでは定番ですが、「Supermicro X13SWA-TF」にはその中でも最上位クラスの90A対応Dr. MOS(MPS製MP87000)が使用されています。
定格でPBP200W以上かつ、末尾X付モデルならOCにも対応するIntel Xeon W-2400/3400シリーズCPUでも安定した大電力の供給が行えるように「Supermicro X13SWA-TF」にはEPS電源端子として8PIN×3が設置されています。
PBP:350WのIntel Xeon w9-3495XのようにCPU消費電力が大きいCPUを組み合わせる場合は2つ以上の8PIN電源を接続するよう、注記シールが貼られています。
「Supermicro X13SWA-TF」には3基のEPS電源端子があります。EPS電源を3基使用できる電源ユニットは少ないからか、「Supermicro X13SWA-TF」にはPCIE 8PIN補助電源をEPS 8PIN電源に変換できる変換ケーブルが付属しています。
マニュアルを見るとCPUコアへ電力供給を行うのは主にマザーボード上端の2基(JPW3/4)で、PCIEスロット左上にある1基(JPW2)はPCIEスロットの12V電力用という扱いのように記載されていますが、実際にはCPU消費電力も3基のEPS電源端子で分散します。
あと、自作PC向けマザーボード(W790でもASUSやASRockの製品も)だとCPU消費電力はEPS電源経由で基本的に賄われており、ATX24PINの12Vラインはせいぜい2~3A程度でほとんど使用されないのですが、「Supermicro X13SWA-TF」の場合はCPU消費電力に応じてATX24PINの12Vラインにも大きい電流が流れます。
以下USB規格に関する説明がありますが『USB3.2 Gen2 = USB3.1 Gen2』、『USB3.2 Gen1 = USB3.1 Gen1 = USB3.0』と考えて基本的に問題ありません。
リアI/Oには最新のUSB3.2 Gen2規格に対応した4基のUSB Type-A端子と1基のType-C端子が設置されています。Type-Cポートについては20Gbpsの高速通信が可能なUSB3.2Gen2x2にも対応しています。そのほかのUSB端子については2基のUSB2.0端子が搭載されています。
有線LANにはIntel I210-ATコントローラーの1Gb LAN(赤色、BMC/IPMIと共有)に加えて、Marvell AQtion AQC113Cによる10Gb LAN(黒色)も標準で搭載しています。
サーバー・ワークステーション向けのSupermicro製品ということもあり、シリアルポート(COM Port)、IPMI用のビデオ出力としてミニD-Sub15ピンも実装されています。
「Supermicro X13SWA-TF」に搭載されているネットワーク機器はWindows11の標準ドライバで動作します。
条件次第では問題になることもあるので詳しくはこちらの記事を参照してください。
Supermicro X13SWA-TFの基板上コンポーネント詳細
続いて「Supermicro X13SWA-TF」のマザーボード基板上の各種コンポーネントをチェックしていきます。「Supermicro X13SWA-TF」を含め、Intel W790チップセット搭載マザーボードは新CPUソケット”LGA4677”が採用されています。従来のCPUクーラーマウントと互換性がないので注意してください。
「Supermicro X13SWA-TF」はシステムメモリの最新規格DDR5 R-DIMMに対応しています。
従来規格のDDR4と下方互換はなく、加えてIntel第13世代CPUやAMD Ryzen 7000で使用できる一般的なDDR5メモリ(DDR5 U-DIMM)も使用できないので注意してください。
システムメモリ用のDDR4メモリスロットはCPUソケット両側に計16基のスロットが設置されています。
16基のメモリスロットを全てを使用できるのはオクタチャンネルのXeon W-3400を組み合わせた場合です。Xeon W-2400はクアッドチャンネルのCPUなのでCPUソケット寄りの8基だけを使用できます。
「Supermicro X13SWA-TF」のメモリ固定時のツメはマザーボード上側の片側ラッチとなっています。最も近いPCIEスロットとの距離は十分なので、グラフィックボードを装着した状態でも干渉せずにメモリを交換することが可能です。
ただし、メモリスロットの下側と最上段のPCIEスロットの間隔は非常に狭いので、バックプレートを搭載しているグラフィックボードの場合、バックプレートの厚み次第ではメモリスロットと干渉する可能性があるので注意してください。
グラフィックボードなどを設置するPCIEスロットは上から[x16、x16、x16、x16、x16、N/A、x16]サイズのスロットが設置されています。
「Supermicro X13SWA-TF」に実装されている6基のx16サイズPCIEスロットはいずれもCPU直結PCIEレーンに接続されており、帯域はPCIE5.0x16です。
「Supermicro X13SWA-TF」では下から順に1番、2番…と数字が割り当てられていますが、接続仕様は同じなので、プライマリグラフィックボードはどこに設置しても大丈夫です。
ただし6基のPCIEスロットを全てを使用できるのはXeon W-3400を組み合わせた場合で、Xeon W-2400を組み合わせた時は上から数えて1段目/3段目/5段目の3基だけを使用できます。
最上段のPCIEスロットはCPUソケットとの間隔がほぼないので、縦長方向にCPUソケットのフットプリントを超えるような空冷CPUクーラーを組み合わせると最上段のPCIEスロットが排他利用になる可能性があります。
Noctua製LGA4677対応空冷CPUクーラーについては高性能モデルのNH-U14S DX-4677は最上段のPCIEスロットが排他利用です。
「Supermicro X13SWA-TF」でPBPの大きい上位CPUを使用する場合はPCIEスロットと干渉の心配がない、AIO水冷CPUクーラーを組み合わせたいところです。
一方、NH-U12S DX-4677はNoctua公式サイトの互換性リストではPCIEスロットと干渉すると記載されていましたが、実機で確認したところ、バックプレートのあるグラフィックボードでもギリギリで接触しない感じのクリアランスでした。
ただし、CPUクーラーを設置してグラフィックボードを装着するところまでは問題ありませんが、その後、グラフィックボードを外そうとするとPCIEスロットの固定ラッチへのアクセスが困難なので(定規など薄い板で何とか対応できるものの)、大きめの空冷CPUクーラーを検討している人は注意してください。
PCIE拡張カードとの干渉関連についてはもう1つ、1段目や2段目に長さが320mm以上の拡張ボードを設置すると、内部USB Type-Cヘッダーに接続したフロントUSBケーブルが干渉してしまいます。
またマニュアルでも言及されていますが、7段目に長さが238mm以上のPCIE拡張ボードを使用する場合、干渉を避けるためにTPMモジュールはマザーボード基板と水平でロープロファイルになるものを使用するようにとのこと。
「Supermicro X13SWA-TF」には3基のEPS電源端子がありますが、PCIEスロット左上にある1基(JPW2)はPCIEスロットの12V電力用という扱いのようです。複数枚のPCIE拡張ボードを使用する場合は、3つのEPS電源端子を接続してください。
なお「Supermicro X13SWA-TF」にはPCIE 8PIN補助電源をEPS 8PIN電源に変換できる変換ケーブルが付属しているので、電源ユニットに2つしかEPS電源がなくても大丈夫です。
Supermicro X13SWA-TFにはSATAストレージ用の端子は8基搭載されています。いずれもチップセットのコントローラーによる接続で、RAID0/1/5/10のハードウェアRAID構築にも対応しています。
高速NVMe接続規格に対応したM.2スロットは、メモリスロット横やPCIEスロット間に計4基が設置されています。
M2_1、M2_2、M2_3、M.2_4はいずれもCPU直結PCIE5.0x4レーンに接続されており、PCIE5.0x4接続のNVMe接続M.2 SSDに対応しています。排他利用はありません。
・PCIE4.0対応NVMe M.2 SSDのレビュー記事一覧へ
「Supermicro X13SWA-TF」はマザーボード備え付けのM.2 SSDヒートシンクがありませんが、公式マニュアルではM.2 SSDにヒートシンク装着が推奨されており、公式アクセサリのM.2 SSDヒートシンク(型番:SNK-C0156L)があるようです。このクラスの製品ならその分だけ製品価格に転嫁されたとしても、M.2 SSDヒートシンクはスロット分付属してもいい気がしますが。
対応ストレージは少ないですがNVMe対応U.2端子も「Supermicro X13SWA-TF」には2基実装されています。
U.2端子はPCH経由のPCIEレーンに接続されており、接続帯域はPCIE3.0x4で排他利用はありません。
またIntel W790プラットフォームはIntel VROC(Virtual RAID on CPU)という仮想RAID機能がサポートされておりCPU直結PCIEレーンに接続されたNVMe SSDでもハードウェアRAIDが構築可能です。
ただし一部を除く一般的なNVMe SSDを使用して、VROCでRAIDを構築するにはIntel VROC Upgrade Keyと呼ばれるライセンス認証ドングルが必要です。
マザーボードの右端には最新接続規格USB3.2 Gen2x2に対応する内部USB Type-Cヘッダー(正式名称はFront USB Type-E)が実装されています。
マザーボード下には内部USB3.0ヘッダーと内部USB2.0ヘッダーがそれぞれ1基だけ設置されていました。
Corsair iCUEやNZXT CAM対応製品など内部USB2.0を使用する機器も増えているので、内部USB2.0が不足する場合はUSB2.0ヘッダー増設ハブの「NZXT INTERNAL USB HUB (Gen3)」や「Thermaltake H200 PLUS」がおすすめです。
「Supermicro X13SWA-TF」のオンボードサウンドにはオーディオコーデックとしてRealtek ALC888Sが採用されていました。
必要十分な性能となっており、決して音質が悪いというわけではありませんが、一般の自作PC向けマザーボードだとエントリークラスなど廉価モデルに採用されることが多いチップです。Core-Xの後継というよりも、シンプルにサーバー・ワークステーション用に使う人の多いマザーボード製品なのでオンボードオーディオを気にすることはないと思いますが。
「Supermicro X13SWA-TF」にはオンボードのスタート・リセットスイッチはありませんが、POSTエラーのチェックができるDebug Code LEDやマザーボード備え付けでスピーカーが設置されています。CMOSのボタン電池も交換しやすい位置にあります。
「Supermicro X13SWA-TF」はCMOSクリアの方法が自作PCユーザーからすると少々特殊で、便利なスイッチや安価モデルで一般的な短絡する2PINヘッダーでもなく、半円が逆向きで向かい合うような接点となっています。
金属のマイナスドライバーなどを使って左右の接点間が通電するようにすれば(短絡させれば)、CMOSをクリアできます。
「Supermicro X13SWA-TF」のフロントパネルヘッダーはマザーボード右端に実装されており、一般的な自作PC用マザーボードとはレイアウトも違います。すぐ左隣にピンアサインが記載されているので判別に問題はありませんが。
冷却ファンを接続するためのコネクタについてはPWM対応4PINファンコネクタがマザーボード上に11基設置されています。これだけあればファン端子が不足することはないはずです。
1~10番のファン端子は2.5A、11番の水冷ポンプ用ファン端子は2Aの出力に対応しています。
Supermicro X13SWA-TFの検証機材
Supermicro X13SWA-TFを使用して検証機材と組み合わせてベンチ機を構築しました。Supermicro X13SWA-TF以外の検証機材は次のようになっています。
テストベンチ機の構成 | |
CPU | Intel Xeon w9-3495X (レビュー) |
CPUクーラー | Noctua NH-U14S DX-4677 (レビュー) ENERMAX LIQTECH TR4 II (レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Zeta R5 DDR5 R-DIMM F5-6400R3239G16GE8-ZR5K 16GB×8=128GB (レビュー) |
ビデオカード | MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC ファンレス (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung SSD 990 PRO 1TB (レビュー) |
OS | Windows 11 Pro 64bit |
電源ユニット | Corsair HX1500i 2022 (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
Intel Xeon W-2400X/3400XシリーズCPUの検証機ではシステムメモリとして、DDR5 R-DIMMながらIntel XMP3.0によるメモリOCに対応した「G.Skill Zeta R5 DDR5 R-DIMM(型番:F5-6400R3239G16GE8-ZR5K)」を使用しています。
サーバー・WS向けプラットフォームなのでOCに躊躇する人もいると思いますが、Xeon W-2400X/3400XをCore-Xの後継、ゲームもクリエイティブタスクもこなせる超高性能なハイエンドデスクトップとして運用したい人には、6000MHz超のメモリOCに対応したG.Skill Zeta R5 DDR5 R-DIMMシリーズはオススメです。
・「G.Skill Zeta R5 DDR5 R-DIMM」をレビュー。6400MHz/CL32のOCを試す!
360サイズや240サイズなど120mmファンを複数搭載できるマルチファンラジエーターの簡易水冷CPUクーラーを使用するのであれば、「Noctua NF-A12x25 PWM」への換装もおすすめです。
「Noctua NF-A12x25 PWM」は、超硬質かつ軽量な新素材「Sterrox LCP」の採用によってフレーム-ブレード間0.5mmの限界を実現させた次世代汎用120mm口径ファンとなっており、1基あたり3500円ほどと高価ですが、標準ファンよりも静音性と冷却性能を向上させることができます。
・Noctua NF-A12x25シリーズのレビュー記事一覧へ
ベンチ機のシステムストレージには「Samsung SSD 990 PRO 1TB」を使用しています。
Samsung SSD 990 PROは、PCIE4.0対応SSDで最速クラスの性能を発揮し、なおかつ電力効率は前モデル980 PRO比で最大50%も向上しており、7GB/s超の高速アクセスでも低発熱なところも魅力な高性能SSDです。
これからPCIE4.0対応プラットフォームの自作PCを組むなら、システム/データ用ストレージとして非常にオススメな製品です。
・「Samsung SSD 990 PRO 1TB」をレビュー。性能も電力効率もトップクラス!
CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
普段は熱伝導グリスを上のようにてきとうに塗っているのですが、Intel Xeon W-2400X/3400XシリーズCPUはヒートスプレッダが大きいため、『最初に等間隔に9カ所小さめに熱伝導グリスを落として、さらにその間の4か所に少し大きめに熱伝導グリスを塗る』というNoctua式の塗り方が良い感じだったので今回はそれを採用しました。
この塗り方をするとXeon W-2400X/3400XシリーズCPUの大型ヒートスプレッダでもCPUクーラーの圧着でヒートスプレッダ全体へ熱伝導グリスが綺麗に伸びます。ただしグリスをかなり大量に使うので注意。
以上で検証機材のセットアップが完了となります。
Supermicro X13SWA-TFのBIOSについて
Supermicro X13SWA-TFを使用した検証機の構築も完了したので動作検証とOC耐性のチェックの前にBIOSの紹介をします。(OSから日付調整する前にスクショを取っている場合、日付がおかしいですが無視してください。また内容的に差異のないものは過去の同社製マザーボードのBIOSスクリーンショットを流用しています。)
「Supermicro X13SWA-TF」のシステムを起動してPOSTが完了すると下のようなブートメニューが表示されます。
BIOS:1.1においてブート画面のフルスクリーンロゴの無効化や、フルスクリーンロゴの表示時間(OS起動までの移行待機時間)の設定項目はありません。
ブートメニューでDelキーを押下するとBIOS設定メニューに移行します。
「Supermicro X13SWA-TF」はサーバー・ワークステーション向けマザーボードということもあって、自作PC向けの一般的なマザーボードと違って、青とグレーの2色という非常にクラシカルなテキストUIでBIOSメニューが表示されます。英語以外のUI言語はありません。
Supermicro X13SWA-TFのBIOSにおいて設定の保存とBIOSからの退出はトップメニュータブ最右端の「Save & Exit」から行えます。特定のブートデバイスを指定してBIOSから退出するBoot Override機能もあります。
ブートとOSインストール周りについて紹介します。とはいってもSupermicro X13SWA-TFのブート回りは下画像のように非常に簡潔にまとめられており初心者でも迷うことはないと思います。
OSのインストールも「Boot Option #1」に「UEFI 〇〇」というOSインストールメディアを設定して、Save Changes and ResetでOKです。
退出のメニューから「UEFI: 〇〇」をブートオーバーライドで指定して起動しても同様にOSのインストールデバイスから起動可能です。
BIOSのアップデートやWindows OSのインストール方法を紹介したところで、Supermicro X13SWA-TFのBIOS機能で管理人が気になったものをいくつかチェックしていきます。
「Supermicro X13SWA-TF」はBIOS:1.1において、マザーボード上のファン端子に接続されたファンの速度をBIOS上から制御する機能は用意されていません。
「Supermicro X13SWA-TF」のファン端子はBMC/IPMIによって外部から制御することが可能です。
Standard Speed/Full Speed/Optimal Speed/PUE2 Speed/Heavy I/O Speedの5種類のファン制御プリセットが用意されていますが、いずれも既定のファンカーブによる制御となり、ユーザーが各自でファンカーブを設定する機能は今のところありません。(BMC:01.01.14, BIOS:1.1)
ちなみに「Supermicro X13SWA-TF」のBMC/IPMIの使い方ですが、ルーター管理画面のような感じです。
「Supermicro X13SWA-TF」のBMC/IPMI管理用ポートは1Gb LANと共有されており、1Gb LANにルーターなどDHCPサーバーを接続すると自動的にIPアドレスが割り当てられます。IPアドレスは「Supermicro X13SWA-TF」のBIOSメニューからも確認が可能です。
「Supermicro X13SWA-TF」のBMC/IPMI管理用ポートに割り当てられたIPアドレスを確認したら、同じネットワークに繋がっているPCでウェブブラウザを開き、そのIPアドレスをアドレスバーに入力します。
「Supermicro X13SWA-TF」のBMC/IPMI管理用ページへのログイン画面が表示されるので、ユーザー名(初期設定ではADMIN)とパスワードを入力します。
管理者ユーザー名は”ADMIN”で共通ですが、パスワードは製品で異なり、「Supermicro X13SWA-TF」の場合はCPUソケットの下に貼ってあるシール等で確認できます。
「Supermicro X13SWA-TF」のBMC/IPMI管理用ページが表示されます。英語、中国語に加えて日本度にも対応していたのはかなり意外でした。
BIOSのアップデート手順について
「Supermicro X13SWA-TF」はBIOS:1.1において、BIOSメニュー内にBIOSアップデートの簡易ツールがありません。一般自作PCマザーボードと比べると分かり難いので手順について簡単に紹介します。最新のBIOSファイルを公式サポートページからダウンロードします。
サポート:https://www.supermicro.com/ja/support/resources/downloadcenter/firmware/MBD-X13SWA-TF/BIOS
サポートページからBIOSファイルをダウンロードしたらファイルを解凍してください。
解凍したフォルダの中にはアップデート手順(英語)が記載されたReadmeのテキストファイルに加えて、アップデートファイルが4つ入っています。
この4つをUSBメモリのルートにコピーしてください。USBメモリはファイルシステムがFAT32のものを使用してください。
加えて、BIOSアップデートイメージ(長い名前で拡張子が.binのファイル)の名前を”update.bin”など短くリネームしておくと後で楽です。
このUSBメモリをマザーボードのUSBポートに挿した状態で、PCを起動してBIOSメニューに入り、ブートオーバーライドから”UEFI : Built-in EFI Shell”を起動します。
Built-in EFI Shellを起動すると、下のスクリーンショットのような黒い画面のコマンドプロンプトが表示されます。
しばらく待って一番下の行にShell>と表示されたら、上の方にあるMapping tableの下にストレージがFS〇と表示されるので、アップデートファイルをコピーしたUSBメモリのストレージ番号を見つけます。
USBメモリのストレージ番号が分かったら、【 FS0: 】と入力してエンターします。
注意点として、日本語キーボード環境の場合、":(コロン)"がそのキーや+Shiftで押下しても入力されないかもしれません。管理人の使用しているキーボードはLogicool KX800B 日本語版ですが、;(セミコロン)キーと+Shiftで":"が入力されました。
【 FS0: 】と入力すると、Shell>と表示されていた左端が、FS:0に変わります。ここで【 dir 】と入力するとFS0のストレージルート直下にあるファイル・フォルダの一覧が表示されます。
先ほどコピーした4つのアップデートファイルがあることが確認できたら、【 flash.nsh update.bin 】と入力します。BIOSイメージファイルの名前をupdate.binに短くリネームしたのはここで入力する必要があったからです。
選択したストレージに4つのアップデートファイルがあり、BIOSファイル名が正しければ、【 flash.nsh update.bin 】と入力したら、後は自動的にBIOSアップデートが進行します。
アップデートが完了したら自動的に再起動するのでそれまで待ってください。
ちなみにBMCファームウェアも同じ要領でアップデートできます。
BMCファームウェアをアップデートする時のコマンドは『SUM.efi -I Redfish_HI -u ADMIN -p Password -c UpdateBmc --file bmi.bin』です。(ファームウェアアップロードにかなり時間がかかりました。気長に待ってください)
上記コマンドにおいて管理者ユーザー名は”ADMIN”で共通ですが、”Password”は製品で異なるので、各自のパスワードを入力して下さい。
「Supermicro X13SWA-TF」の場合はCPUソケットの下に貼ってあるシール等で確認できます。BMC/IPMIにログインする時も使用します。
Supermicro X13SWA-TFのOC設定について
Supermicro X13SWA-TFを使用した場合のオーバークロックの方法を紹介します。なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。
自作PC向けマザーボード(W790でもASUS/ASRockも)ならOC関連の設定は大項目として分けられているのが一般的ですが、Supermicro X13SWA-TFでは主にAdvancedタブ内のOverclocking Feature、その他にCPU ConfigurationやChipset ConfigurationにOC関連の設定があります。
動的倍率OCと電力制限について
実用性能をバランスよく引き上げる常用向けの動的倍率OCと電力制限について紹介します。近年のIntel製CPUはアクティブコア数(大きい負荷のかかっているコア数)に応じて最大動作倍率が変化するBy Core Usage倍率により、例えばCore i9 13900Kなら最大5.8GHzのような単コア最大動作倍率で動作が可能になっており、高いシングルスレッド性能を発揮します。
優良コアが電圧を盛れば5GHz近いコアクロックで動作できる一方、同じコアクロックで全コアを稼働させることは相対的な不良コアの電圧特性的にも、CPUパッケージ全体での発熱的にも難しいので、シングルスレッド性能を損なう全コア一律のコアクロックを適用するマニュアルOCはベンチマークスコアを重視したOC競技的な設定となっており、現在の常用OCにおける主流、というか当サイトのオススメはBy Core Usage倍率とV-Fカーブを組み合わせた手法です。
例えばCore i9 13900KのPコアは1~8コアのアクティブコア数に応じて[58, 58, 55, 55, 55, 55, 55, 55]のようなBy Core Usage倍率が適用されています。(コアクロックはベースクロックBCLK、通常100MHzに対する倍率で決まる)
アクティブコア数が2コアまでであれば、そのアクティブコアは最大5.8GHzで動作します。所謂、単コア最大ブーストクロックのことです。(1コアではなく2コアまで等、複数コアの時もありますが、便宜上、単コアと呼びます)
一方、Cinebench R23のマルチスレッドテストやx264動画エンコードのように全コアへ大きな負荷がかかるシーンでは全コアが最大5.5GHzで動作できます。
なぜ”最大”と注釈つくかというと、特にCPU全体の発熱が大きくなる全コア負荷時については、長期間電力制限(Long Duration Package Power Limit; PL1)や臨界温度(Tj Max)、Thermal Velocity Boostによるコアクロック制限が適用されることがあるからです。
上記のようなマルチスレッド性能が重要になるクリエイティブタスクとは異なり、ゲームシーンでは全コア最大動作倍率が重要である一方、電力や温度といったCPU負荷自体は軽いという特長があります。
全コア最大動作倍率を高く設定することでゲームシーンで高い性能を実現しつつ、CPU負荷の大きいクリエイティブタスクではCPU Package PowerやCPU温度を制御ソースとして各自冷却環境(CPUクーラー)で冷やせる範囲内で最大の性能を発揮できるようにする、というのが最新CPUのパフォーマンスデザインです。
前置きの説明が長くなりましたが、Intel Xeon W-2400X/3400XシリーズCPUの動的倍率によるOC設定に話を戻します。
「Supermicro X13SWA-TF」の場合は、Overclocking Feature - OverclockingにBy Core Usage倍率の設定があります。
Intel Xeon W-2400X/3400XシリーズCPUで動的倍率OCを行う場合、CPUコア数が30コア未満のモデルであれば、Specific Per Coreで指定するうち、最大動作倍率をそのまま全コア負荷時に適用すればOKです。
ただし、56コアの3495XをOCする時は、全コア負荷時の倍率を40倍程度とし、少コアブーストと全コアブーストの倍率を別々に設定して下さい。(36コアの3475Xなど30コア以上のモデルはそうしたほうがいいかも)
下のスクリーンショットは4コアまで54倍、12コアまで46倍、56コアまで38倍の設定例です。こんな感じでコア倍率と上限アクティブコア数のセットを1~56コアまで任意の数のセットに分けて設定してください。
Core i9 13900Kなどメインストリーム向けCPUの第13/12世代CPUの場合、各P/E-Coreとキャッシュ(Ring)は共通の電圧(最大の電圧)で制御されます。電力と性能(コアクロック)の比例関係は2乗根的なカーブを描くので、マルチスレッド負荷時に一部のコアが単コア最大のような高クロックで動作してしまうと電力効率が下がり、性能が伸びないので、By Core Usageによってアクティブコア数に応じた最大倍率を設定しています。
一方で、Intel Xeon W-2400X/3400XシリーズCPUの場合は、Specific Per Core設定によって各コアに個別の電圧を適用できるので(そもそも各コアが個別のVIDで動作する)、By Core Usageによってアクティブコア数に応じた最大倍率を設定する必要はありません。
24コアの2495Xまでなら上記の通りで問題ありませんが、56コアの3495Xで検証したところ、BCU倍率を全コア最大にするとPL2よりも短い瞬間負荷(Cinebench R23の実効直後など)のタイミングでシステムが落ちました。CPU/MB/PSUいずれかの保護機能が働いたか、電圧不足でクラッシュ/BSODしたものと思います。
Xeon W-3400で30コア以上のモデルをOCする場合は、通常通り、少コアブーストと全コアブーストの倍率を別々に設定してください。
あと、3495Xの場合、400~800W程度の電力制限における実動コアクロックが3.0~3.8GHz程度と低いためか、PL1/PL2による実動クロックと、全コア負荷時のBCU倍率の差が大きいと電力制限下で実動コアクロックが大きく落ち込むことがあります。(ターボブーストの誤作動でBIOSの不具合かも?)
Cinebench R23や動画エンコードを実行した時に冷やせる範囲の消費電力になる実動コアクロックに対して、+1~2倍程度に全コア負荷時のBCU倍率を設定するのがオススメです。
Intel Xeon W-2400X/3400XシリーズCPUは「Intel Turbo Boost Max 3.0 Technology (TBM3.0)」に対応しています。
TBM3.0は、CPUダイ上で最も電圧特性の良いコア(CPU個体ごとに異なる)を自動で選別し、非常に高い単コア最大ブーストクロックで動作させ、アクティブタスクへ優先的に割り当ててくれる機能です。
Windows 11 OSにおいてはCPU/MBが報告する優先順位とは別に、最大動作倍率やVIDの情報からOS側が最もパフォーマンスの良い上位コアをいくつか自動で選択し、アクティブタスクを優先的に割り当ててくれます。
Intel Xeon W-2400X/3400XシリーズCPUの電圧特性が優良なコアは、Windows上で使用できるIntel公式のOCツール Extreme Tuning Utility (XTU)から確認が可能です。優良コアには星マーク(★)が付いています。
XTUで確認できる優良コアはCPU/MBが指定するものですが、モニタリングソフトのHWiNFOからWindows OSが指定するアクティブタスク割り当ての優先順位も確認できます。
以下で説明するOC設定後は単コア最大ブーストを割り当てたコアが上位の#1~#4になっているか確認してください。ここが不一致だとTBM3.0が上手く機能しません。
Intel Xeon W-2400X/3400XシリーズCPUは各CPUコアに対する最大動作倍率と電圧の設定に対応しています。Overclocking FeatureのProcessorを開くと、Specific Per Core最大倍率とFIVR電圧の設定が表示されます。
「Supermicro X13SWA-TF」において定格のSpecific Per Core最大倍率を上回る倍率で各コアを動作させる、つまりオーバークロックするにはPer Core Ratio OverrideをEnabledにして、各コアに対して最大倍率を設定する必要があります。
Specific Per Core最大倍率の簡単なオススメ設定の一例として、Xeon w9-3495Xの場合は上位1~4コアに単コア最大ブーストとして-倍、残りのコアには一律で-倍を設定します。
なお、VF Configuration ScopeのAll-Core/Per-CoreにもFIVR電圧と一緒に並んで最大動作倍率を指定する項目がありますが、こちらは定格のSpecific Per Core最大倍率(x46~x48)よりも小さい倍率しか適用できません。
続いて電圧設定について説明していきます。
Intel Xeon W-2400X/3400XシリーズCPUには統合電圧レギュレータ(FIVR)がCPU上に実装されており、マザーボードのVRM電源回路から供給されるCPU全体への電圧(VccIN)を源泉にして、CPU各コアやメッシュなど個別のユニットに対して異なる電圧レールで電力が供給されます。
CPU FIVRへの電圧(VccIN 1.800~OCで最大2.200V程度)と、FIVRから各CPUコアへの電圧(VccCORE n: 0.900~1.250V, OCで最大1.500V程度)は似た名前で別の設定項目として用意されているので電圧設定を行う際は間違えないように注意して下さい
CPUには個体差がありますが、電圧特性に応じたCPUコア電圧とコアクロック(周波数)の比例関係を指定するV-Fカーブがそれぞれ収録されています。
CPUコア電圧モードを分類すると、まず定格モードがあり、定格のV-Fカーブに対して、周波数に依らず一定の昇圧or降圧を行うオフセットモード、さらに周波数に依らず一定の電圧を適用するオーバーライド(マニュアル)モードがあります。
Intel Xeon W-2400X/3400XシリーズCPUを動的OC倍率でオーバークロックする時に使用するのがアダプティブモードです。
一例としてCore i9 13900Kでは最小動作倍率800MHzから最大動作倍率5800MHz(a頂点)までのV-Fカーブが定格モードとして収録されています。
最大動作倍率を6000MHzにOCした時にV-Fカーブがどうなるかというと、5800MHz~6000MHzの間にはV-Fカーブがないので、そのままだと5800MHzの電圧値が続きますが、Additional Turbo Mode Voltage(Adaptive Voltage Override)という電圧値を設定することで、新たにOC最大倍率(便宜上、Additional Turbo Ratioと呼ぶ)に対するb頂点が決まります。a頂点とb頂点の間のVFカーブは自動的に補間されます。
なお、Intel Xeon W-2400X/3400XシリーズCPUの場合、Specific Per Coreでコア毎にAdditional Turbo Mode Voltageを設定できますが、上記グラフでb頂点を決定するAdditional Turbo RatioはSpecific Per Coreで設定したそれぞれの最大動作倍率ではなく、全コアのうち最も大きい倍率で統一されるので注意してください。(By Core Usageの最大倍率も含む)
定格最大48倍に対して、あるコアの最大動作倍率を50倍、Additional Turbo Mode Voltageを1.300Vにしても、残りコアの最も大きい最大動作倍率が54倍の場合、54倍の電圧値が1.300Vとなり(最大動作倍率を超えるので54倍で動作しなくとも)、最大動作倍率の50倍で動作する時の電圧値は自動補間の値が適用されます。
定格最大倍率における各コアの電圧値(a頂点の電圧)については、Intel XTUでBy Core Usage倍率を一律で最大倍率(Intel Xeon w7-2495Xなら48倍)にすると、一時的に省電力機能が無効化されて、48倍における電圧値が確認できます。
この挙動を流用すると、全コア倍率を『x45→x46→x47→…』と順番に引き上げていくことで、各CPUコアのコアクロックに対する標準VID、つまりV-Fカーブを確認できます。Additional Turbo Mode Voltageの設定や、設定後の補間電圧の確認にも役立つので覚えておいてください。
ちなみに、Intel Xeon w9-3495Xの場合、x48までV-Fカーブのあるコアとx46までしかV-Fカーブがないコアがあります。
「Supermicro X13SWA-TF」ではFIVRによる各CPUコアへの供給電圧の設定は、上で説明したSpecific Per Core最大倍率と同じく、Overclocking FeatureのProcessor内に配置されています。
VF Configuration ScopeをPer Coreに切り替えると、各コアへ個別に電圧を設定できます。
Specific Per Coreで単コア最大ブーストを適用した上位コアについては、電圧モードはAdaptive Modeを選択し、動作倍率に合わせて[Additional Turbo Mode Voltage, Offset Voltage]を設定します。
一例ですがXeon w9-3495Xの上位コアに対する単コア最大ブーストに54倍を設定した場合は[-V, -V]、単コア最大ブーストに55倍を設定した場合は[-V, -V]です。
単コア最大ブーストに対する電圧値(Additional Turbo Mode Voltage)の決定方法ですが、Specific Per Coreで上位コアのうち1つだけ単コア最大ブーストを適用し、Manual Modeで固定電圧を適用します。
OSを起動したらCinebench R23のシングルスレッドテストを実行し、タスクマネージャーやHWiNFOで上記コアが単コア最大ブーストで動作しているか確認します。数回実行してBSODにならなければOKです。(上位コアそれぞれで確認するとベストですが、面倒なら代表して1つだけで確認でも)
個体差もありますがXeon w7-2495Xなら1.400Vくらいで54倍が動作するはずです。
残りのコアについても、電圧モードはAdaptive Modeを選択し、動作倍率に合わせて[Additional Turbo Mode Voltage, Offset Voltage]を設定します。面倒ですが1つずつ設定します。
残りコアの動作倍率を50倍に設定した場合、Additional Turbo Mode Voltageは1.350V程度です。
CPUコアクロックのOCによってCPU消費電力が大幅に上昇すると、FIVRによる電力変換が不安定になるので、マザーボードからFIVRに供給される電圧(VccIN)も昇圧します。VccINの設定項目はOverclocking FeatureのProcessorではなく、SVID/FIVR内にSVID Voltage Override(VccIn)として配置されています。
VccINの定格値は1.800V程度となっており、手動で調整する時は1.900~2.200Vの範囲内です。
SVID SupportがEnabledとDisabledのどちらでもVccINの設定項目が表示されますが、設定値が反映されるのはSVID SupportをDisabledにした時だけです。
自作PC向けマザーボードの場合、SVIDの無効化はCPU Package Powerによる電力制限の無効化になることがありますが、「Supermicro X13SWA-TF」ではSVID SupportをDisabledにしても特に影響はなかったので、単純にVccINのマニュアル設定に対応する、とだけ考えればOKです。
By Core Usage倍率でオーバークロックを行う場合は、IccMaxを無制限に引き上げてください。電力制限や臨界温度と同様、高負荷時にコアクロック低下の原因になります。
「Supermicro X13SWA-TF」ではIccMaxの設定は、Overclocking Feature内ではなく、同じAdvancedタブ内のCPU Configuration内にあり、Advanced Power Management Configuration - Package Current Configの順でアクセスすると表示されます。
「Supermicro X13SWA-TF」の場合は、Current Limit Overrideを有効にするとIccMaxの数値入力(Current Limitation)が表示され最大で1999に設定できます。1999を入力した時の電流制限はXTU上で確認すると819.12Aでした。
なおCurrent Limit Overrideを有効にした時点でモニタリングソースが1/8の値で検出されるようになるので電流制限は実質無効化となります。
なおLock IndicationはIccMaxを変更できなくなるようにロックする機能なので、上記設定やIntel XTUで変更する場合はDisabledにしてください。
By Core Usage倍率によるオーバークロックで全コア最大動作倍率も引き上げている場合は、電力制限や臨界温度を使用して、高負荷時のCPUコアクロックに制限をかけ、CPU温度や消費電力を下げます。
「Supermicro X13SWA-TF」では電力制限の設定は、Overclocking Feature内ではなく、同じAdvancedタブ内のCPU Configuration内にあり、Advanced Power Management Configuration - SOCKET PAPL Configの順でアクセスすると表示されます。
CPU電力詳細設定には「短期間電力制限(Short Duration Power Limit、PL2)」「長期間電力制限(Long Duration Power Limit、PL1)」という2つの電力制限機能があり、電力制限がかかる閾値(単位はW)と電力制限がかかるまでの時間を設定できます。
電力制限がかかるとCPU Package Powerがその指定電力内に収まるようにコアクロックに制限がかかります。
Package PAPL Limit CSR LockはIntel XTUなどWindows OS上のアプリケーションからPL1/PL2が変更できなくなるようにロックする機能です。EnabledのままでもBIOSから行ったPL1/PL2の設定は反映されるので、Intel XTUを使用しないならどちらでもOKです。
CPU温度が一定以上(臨界温度)に達した時にCPUコアクロックを下げる、所謂、サーマルスロットリングが発生する閾値を指定するのがCPU Tj Maxです。
Tj MaxはIntel製CPUでは一般的に100度に設定されています。基本的には上記のPL1/PL2の電力制限でCPUクーラーの性能に応じたコアクロック制限をかけ、Tj MaxはCPUクーラーに故障が発生した時のセーフティ的な使い方オススメです。
「Supermicro X13SWA-TF」の場合、Tj MaxはSpecific Per Core最大倍率やFIVR電圧と同じく、Overclocking FeatureのProcessor内に配置されています。
拡張命令のAVX-512やTMULに対しては動作倍率を下げるRatio Offsetを使用して実行時の発熱を低減することが可能です。ネガティブオフセットはBy Core Usage倍率に対して適用されます。
AVX命令実行時は要求電圧も上がる傾向なので、2/512/TMUL(AMX)いずれも一律で3~4のネガティブオフセットを適用しておくのがオススメ。
「Supermicro X13SWA-TF」の場合、AVXオフセットはSpecific Per Core最大倍率やFIVR電圧と同じく、Overclocking FeatureのProcessor内に配置されています。ただしBIOS:1.1ではTMUL(AMX)のオフセット設定はあるのですが、AVX2とAVX512のオフセット設定がありません。
キャッシュ動作倍率も変更可能で、設定項目はOverclocking FeatureのMesh/Ring内に配置されています。
CPUコアクロック同様にベースクロックに対する動作倍率でキャッシュの動作周波数を設定できます。
Intel Xeon W-2400X/3400XシリーズCPUの場合、キャッシュ(メッシュ)のFIVR電圧はCPUコアと別になっているので、キャッシュ周波数をOCする場合は、CPUコア電圧同様に昇圧します。
動作検証くらいでしか一部コアの無効化を行うことはないと思いますが、「Supermicro X13SWA-TF」のCPUコアの有効・無効化の設定方法は管理人もよく分かりません。
『0』で全コア有効、『FFFF FFFF FFFF FFFF』で全コア無効というのは分かるのですが、右上のヘルプガイドが仕事をしてない感……。各コアの有効・無効をコア数に応じて表示するか(これがベスト)、56コアもあって設定が面倒になるということなら、ヘルプガイドの設定例を分かるように書いて欲しいです。
メモリのオーバークロックについて
メモリのオーバークロックについても簡単に紹介しておきます。メモリの性能について簡単に言うと「動作クロックが高く」「タイミングが小さい」ほど性能は高くなります。
そのためメモリOCを手動で行う手順を簡単にすると「電圧を上げて動作可能なクロックを探し」、「そのクロックにおいて正常に動作する最小のタイミングを探る」という2つの手順を繰り返すことになります。
なお、 メモリOCではPOSTすらクリアできずBIOSに到達できないことも少なくありません。メモリ設定を初期化できるようにCMOSクリアの手順を事前に確認しておいてください。
Intel XMPやAMD EXPOのOCプロファイルによるメモリOCは上の手順によるOC選別をメーカー側がすでに行い動作確認をしているので、メーカーが動作確認を行ったOCプロファイルを適用するだけで簡単にメモリをオーバークロックできます。
「Supermicro X13SWA-TF」はBIOS:1.1において、XMPのOCプロファイル適用に対応しておらず、メモリタイミングの調整やメモリOC関連の電圧調整にも非対応です。今後もサポートする予定はないとのこと。
一応、メモリ周波数の設定は、Advancedタブ内で、Chipset Configuration - North Bridge - Memory Configurationの順番にアクセスすると表示されます。
Memory Configurationにおいて、Enforce DDR Memory Frequency PORを無効化(Disabled)すると、その下にあるMemory Frequencyからメモリ周波数を変更できます。Enforce DDR Memory Frequency PORを無効化しないとメモリ周波数を選択しても適用されないので注意してください。
ただし前述の通り、BIOS:1.1ではメモリ電圧やメモリタイミングを調整できないので、CPU&MBの仕様としてメモリ速度が4800MHzのXeon W-2400X/3400X&W790環境で、JEDEC準拠のネイティブ5600MHzメモリが5600MHzで動かせる、程度のOCとなります。
Supermicro X13SWA-TFの動作検証・OC耐性
BIOS周りの管理人的に気になるところの紹介はこのあたりにしてSupermicro X13SWA-TFを使用した検証機で具体的に動作検証とOC耐性をチェックしていきます。「Supermicro X13SWA-TF」のW790チップセットはインテル プラットフォーム・トラスト・テクノロジー(Intel PTT)、所謂、ファームウェアTPM(fTPM)に対応しており、TPM 2.0を利用できるので特に問題なくWindows 11 OSをインストールできます。
ただし「Supermicro X13SWA-TF」の初期設定ではファームウェアTPMでなく、ディスクリートTPMを使用する設定になっているので、PTTを手動で有効化する必要があります。
Advancedタブから、”PCH-FW Configuration - PTT Configuration”の順番に操作するとPTTの設定にアクセスできるので、TPM Device SelectionでPTTを選択してください。
「Supermicro X13SWA-TF」はBIOS:1.1からRe-Size BARをサポートしていますが、BIOSの標準設定では同機能は無効化されています。
最新グラフィックボードでRe-Size BARを使用したい場合は、AdvancedタブのPCIe/PCI/PnP Configurationを開き、Re-Size BAR Supportを有効化してください。(Above 4G Decodingは標準で有効)
「Supermicro X13SWA-TF」にIntel Xeon w9-3495Xを組み込んだ場合のBIOS標準設定における動作について、CPUコア動作倍率も電力制限もIntel公式仕様値の通りです。
OC設定でも紹介したようにBIOSから「長期間電力制限(Long Duration Power Limit, PL1)」、「短期間電力制限(Short Duration Power Limit, PL2)」は任意に変更が可能です。
電力制限以外にもCPU動作に大きく影響する項目についてまとめました。
Turbo Boost Max 3.0はアクティブなタスクに対して単コア最大動作倍率など最も高速に動作している(電圧特性に優れた)コアを割り当てる機能です。
Thermal Velocity Boostは閾値温度70度以下においてブーストクロックを引き上げる機能と説明されていますが、機能の実装としてはBy Core Usage倍率に対してTVB Ratio Clippingという設定によってCPU温度が閾値以上の時に動作倍率を-1倍に(正確にはCPU毎に設定された倍率に)引き下げるという形になっています。
AVX Voltage Guardband Scaleは該当するAVX命令実行時のコア電圧を調整する機能です。0~255の整数値で設定し、定格設定は128です。128以下では低電圧化、128以上では高電圧化します。(マザーボードに依っては1.00を基準に0.01~1.99で設定)
低電圧化というよりもAVX実行時の電力制限(AVX限定のPL1)に近い動作なので、Scale=1でもクラッシュすることはありませんが、性能は低下するものと思われます。
なおIntel Xeon W-2400X/3400Xについては、定格設定ではBy Core Usage倍率に応じて異なるAVXオフセット値が適用されています。
Supermicro X13SWA-TF (BIOS: 1.1) Xeon w9-3495Xの標準動作設定 |
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標準設定 |
定格 | |
単コア最大倍率 | 48 | 48 |
全コア最大倍率 | 29 | 29 |
Turbo Boost Max 3.0 | On | On |
TVB Ratio Clipping (70度以上で-1倍) |
非対応 | 非対応 |
PL1, PL2, Tau | 無効化 |
350W, 420W, 1s |
AVX2 / 512 / TMUR Offset | -1 / -4 / -4 (全コア時) |
-1 / -4 / -4 (全コア時) |
Voltage Guardband | 非対応 | 非対応 |
備考 |
- |
続いてSupermicro X13SWA-TFを使用した場合のCPUやメモリのオーバークロック耐性をチェックしてみました。
なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。
まずは「Supermicro X13SWA-TF」に56コア112スレッドCPUのXeon w9-3495Xを組み合わせて長時間負荷をかけ続けた時に、VRM電源周辺温度はどれくらいなのか、サーモグラフィーカメラ搭載スマートフォン CAT S62 PROを使用してチェックします。
CPUを定格で運用もしくはOC設定を適用した際のCPU温度やVRM電源温度を検証するストレステストについては、下記の動画エンコードを使用しています。
ストレステストについては、FF14ベンチマークの動画(再生時間7分、4K解像度、60FPS、容量5.7GB)をソースとしてHandBrakeによるx264動画エンコードを使用しています。
Intel Xeon w9-3495Xは56コア112スレッドのCPUなので、同じ動画のエンコードを8つ並列して実行し、30分程度負荷をかけ続けます。ストレステスト中のファン回転数は一定値に固定しています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から管理人の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。
まずは「Supermicro X13SWA-TF」においてXeon w9-3495Xを定格で動作させてみました。CPU関連はBIOS標準設定のままです。
メモリOC設定については、検証機材メモリに「G.Skill Zeta R5 DDR5 R-DIMM F5-6000R3039G16GQ4-ZR5K」を使用していますが、「Supermicro X13SWA-TF」ではXMPを使用できないので、メモリ周波数のみ5600MHzとしてJEDEC準拠の5600MHzスペックで動作させています。
上記の動作設定においてストレステスト中のCPU温度やCPU使用率のログは次のようになりました。CPUクーラーにはENERMAX LIQTECH TR4 II 360 (LGA4677 Ready)を使用し、冷却ファン Noctua NF-A12x25 PWMのファン回転数は1500RPMで固定しています。
Xeon w9-3495XはPBP:350WのCPUなので定格でもPL1:350Wが許容されており、CPU消費電力は300W超に達しますが、56コアに分散されるのでCPU温度的にはメチャクチャ余裕があります。今回はAIO水冷を使用していますが、Noctuaの120サイズ空冷でも余裕です。
電力制限やAVXオフセットが効くので動画エンコードなどのフル負荷においてCPUコアクロックが最大動作倍率に張り付くことはありませんが、「Supermicro X13SWA-TF」のVRM電源温度などマザーボード原因でスロットリングが発生することはなく、Xeon w9-3495XをCore All 2.3~2.4GHz程度の実動値で安定して動作させることができました。
Xeon w9-3495Xは定格動作でもフルに負荷をかけるとCPU消費電力が300W超に達するので、AIO水冷CPUクーラーを組み合わせたVRM電源周りがパッシブ空冷の状態では、VRM電源温度は90~100度と非常に高温になりました。
VRM電源のオーバーヒートによるコアクロックのスロットリングこそ発生していないものの、ギリギリで踏みとどまった感はあるので、「Supermicro X13SWA-TF」にAIO水冷やDIY水冷のCPUクーラーを組み合わせる場合はVRM電源周りの冷却に注意したいところです。
AIO水冷CPUクーラーを組み合わせたVRM電源周りがパッシブ空冷の状態では、Xeon w9-3495Xの定格運用であっても「Supermicro X13SWA-TF」のVRM電源温度は非常に高くなることが分かったので、ここからは92mm角ファン(1500RPM)をスポットクーラーとして使いながら、VRM電源周りの温度をチェックしていきます。
「Supermicro X13SWA-TF」で水冷クーラーを使用する人は、同じように、SilverStone(SST-FDP01B)や親和産業(SS-NVRM-FSTY60)から発売されているVRM電源冷却用のファンマウントでVRM電源クーラーに風が当たるようファンを増設してみてください。
まずは先ほど同様にXeon w9-3495Xの定格動作でフル負荷をかけてみました。
CPU温度やコアクロックは先ほどと変わりないので、やはりスポットクーラーなしでもスロットリングは発生していなかったようです。
一方でソフトウェアモニタリング可能な「Supermicro X13SWA-TF」のVRM電源温度は、スポットクーラーなしだと最大98度にも達していましたが、今回は60度前後に収まっています。
サーモグラフィーで確認してみても、スポットクーラーで適切に風を当ててやれば、CPU Package Powerで350W、EPS電源経由の消費電力(Supermicro X13SWA-TFの場合はATX24PINの12Vラインも含むので測定値からマイナス50~60W程度の値)で380W程度の負荷でも「Supermicro X13SWA-TF」のVRM電源温度は60度前後に収まっていました。
続いて「Supermicro X13SWA-TF」のVRM電源回路&クーラーがXeon w9-3495XのOC(電力制限解除)にどれくらい耐えられるのかチェックしていきます。
Xeon w9-3495XのOC設定について、ひとまずコア倍率には触れず、単純に電力制限だけを解除し、長期間電力制限 PL1:420W、短期間電力制限 PL2:550Wとしました。
同様にストレステストを行うとCPU温度やCPU使用率のログは次のようになりました。CPUクーラーにはENERMAX LIQTECH TR4 II 360 (LGA4677 Ready)を使用し、冷却ファン Noctua NF-A12x25 PWMのファン回転数は1500RPMで固定しています。
Xeon w9-3495Xの電力制限解除によって、PL1:420Wの設定値の通り、CPU Package Powerで420Wという強烈な発熱が生じていますが、LGA4677の大型IHSに最適化されたAIO水冷CPUクーラーを使用しているので、CPU温度は60度未満に収まっており、こちらはまだ大分余裕があります。
一方でVRM電源温度は先ほどの定格動作よりは上昇していますが、80度未満に収まっています。
「Supermicro X13SWA-TF」ではPL1:420Wの電力制限解除なら、VRM電源温度などマザーボード原因でスロットリングが発生することもなく安定しており、コアクロックは定格よりも10%程度向上しています。
サーモグラフィーで確認してみても、スポットクーラーで適切に風を当ててやれば、CPU Package Powerで420W、EPS電源経由の消費電力で450W程度の負荷なら「Supermicro X13SWA-TF」のVRM電源温度は80度未満に収まっていました。
ここからはXeon w9-3495Xのコア倍率にも手を加えていきます。
「Supermicro X13SWA-TF」のVRM電源がXeon w9-3495XのOC、CPU消費電力の上昇にどこまで耐えられるか見ていきたいので、OC設定はWindows OS上から調整が可能なIntel XTUを使用して行いました。
Intel XTUから行うOC設定はシンプルで、By Core Usage倍率の56コアをx30倍に、PL1:500W、PL2:600Wとしています。
上記の動作設定においてストレステスト中のCPU温度やCPU使用率のログは次のようになりました。CPUクーラーにはENERMAX LIQTECH TR4 II 360 (LGA4677 Ready)を使用し、冷却ファン Noctua NF-A12x25 PWMのファン回転数は1500RPMで固定しています。
Xeon w9-3495XのOCによってCPU Package Powerで500W、EPS電源経由の消費電力で600W前後という強烈な発熱が生じていますが、LGA4677の大型IHSに最適化されたAIO水冷CPUクーラーを使用しているので、CPU温度は60度前後に収まっており、こちらはまだ大分余裕があります。
しかし、VRM電源温度が原因のスロットリングこそ発生していないものの、ストレステストを開始して5分程度でVRM電源温度のソフトウェアモニタリング値は90度前後に達しています。
サーモグラフィーで確認してみても、CPU Package Powerで500W、EPS電源経由の消費電力で600W程度の負荷ともなると、「Supermicro X13SWA-TF」のVRM電源温度は90度を超えてきます。
「Supermicro X13SWA-TF」においてXeon w9-3495XをOCする場合、VRM電源周りにスポットクーラーで適切に風を当ててやったとしても、長期的に運用が可能なのはPL1:500W以下に収める必要がありそうです。
コアクロックからの概算ですが、定格の350Wに対して+70~80Wの電力制限解除(500W付近ではBCU 56c:x30のOCも必要)で10%程度ずつマルチスレッド性能が上がっていく感じです。
最後に「Supermicro X13SWA-TF」のメモリOC性能についてもチェックしておきます。
Supermicro X13SWA-TFの環境(BIOS:1.1)のOC検証では、検証機材メモリとして16GB×8枚組み128GB容量のDDR5 R-DIMMメモリキット「G.Skill Zeta R5 DDR5 R-DIMM F5-6400R3239G16GE8-ZR5K」を使用しています。
「Supermicro X13SWA-TF」はXMPによるメモリOCに対応していませんが、BIOSからメモリ周波数を5600MHzにすることで、JEDEC準拠の5600MHzスペックにOCが可能です。
「G.Skill Zeta R5 DDR5 R-DIMM F5-6400R3239G16GE8-ZR5K」はメモリモジュール自体はSPDプロファイルとして5600MHzが収録されている、SK Hynix製のネイティブ5600MHzということもあり、5600MHzで問題なく動作し、メモリストレステストもクリアできました。
またネイティブ5600MHzに対応する16GB容量メモリモジュール「Team DDR5 R-DIMM 5600MHz TE16GFREV2MH」を8枚組み合わせて、同じようにメモリ周波数5600MHzを試したところ、こちらも問題なく動作し、メモリストレステストもクリアできました。
さらに「G.Skill Zeta R5 DDR5 R-DIMM F5-6400R3239G16GE8-ZR5K」と「Team DDR5 R-DIMM 5600MHz TE16GFREV2MH」で合わせて16枚のDDR5 R-DIMMメモリが手元にあったので、複数製品の混合は実用上は非推奨ですが、オクタチャンネル 2DPCの16枚組みが動くのか試してみました。
初回起動時にメモリ認識が完了するまで時間がかかるものの(複数製品混合だからではなくプラットフォーム自体の製品仕様として)、異なる製品が混ざっていてもオクタチャンネル 2DPCの256GB容量があっさりと起動し、同様にメモリ周波数5600MHzのメモリOCも問題なく安定しました。
Supermicro X13SWA-TFのレビューまとめ
最後に「Supermicro X13SWA-TF」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- 黒一色のシンプルなWSデザイン
- 90A対応Dr. MOSで構成される8フェーズの堅牢なVRM電源回路
- 空冷やVRM用ファンを併用したAIO水冷の環境なら
350Wの3495XでもVRM電源温度は60~70度程度 - オクタチャンネル 2DPCで16枚のメモリをフル搭載可能
- 16GB×16枚組みでメモリ周波数5600MHz/CL46が安定動作
- PCIE5.0 x16帯域の16サイズPCIEスロットを6基搭載
- PCIE5.0x4接続のNVMe対応M.2スロットをマザーボード上に4基搭載
- PCIE3.0x4帯域のU.2 SSDポート(SFF-8643)を2基搭載
- Marvell AQtions製10Gb LANをリアI/Oに標準搭載
- ATXよりも横幅が65mm程度大きいSSI-EEBサイズ
- ネジ穴の一部はATX互換だが、中央の中・上にネジ穴がないのでスペーサーに注意
- 140mm幅の大型空冷は最上段のPCIEスロットが排他利用に
- AIO水冷の場合、PBP300W以上のCPUはVRM電源周りの冷却に注意
- BIOS:1.1ではOC関連で設定が適用されない不具合がいくつか
- Intel XMP3.0によるメモリOCには非対応
- オンボードサウンドがRealtek ALC888(音質が悪い、というわけではないけど)
- 税込み15万円と高価(W790としては普通。2023年5月現在)
「Supermicro X13SWA-TF」はXeon W-3400シリーズCPUに最適化されたパーソナルWS向けマザーボードです。
Xeon W-3400シリーズCPUはオクタチャンネル 2DPCで最大16枚のメモリに対応しますが、16基のメモリスロットを搭載したW790マザーボードは今のところ「Supermicro X13SWA-TF」しかないので、現状で1TB、将来的には最大4TBの大容量システムメモリを必要とする人には貴重な製品です。
また「Supermicro X13SWA-TF」は、定格でもPBP:350Wの消費電力が発生するXeon w9-3495Xにも対応可能な90A対応Dr. MOSで構成されるVRM電源回路を搭載することに始まり、PCIE5.0x16帯域の6基のx16サイズPCIEスロット、4基のPCIE5.0対応NVMe SSD用M.2スロット&2基のPCIE3.0x4帯域U.2ポート、Marvell AQtions製10Gb LANなど、パーソナルワークステーションの土台としてXeon W-3400シリーズCPUのポテンシャルを余すことなく引き出します。
「Supermicro X13SWA-TF」のBIOSではクラシカルなUIが採用されており、自作PC向けマザーボードと比較するとUIが英語のみなど若干ハードルが高い点はありますが、OSインストールやブート設定といった基本的な部分は特に問題ないはずです。
「Supermicro X13SWA-TF」は、Xeon w9-3495Xなど倍率アンロックなXeon W-3400Xシリーズにも対応するマザーボードですが、OC機能のサポートについてはハード面でもソフト面でも限定的で、定格運用を基本とした設計です。
定格運用ならPBP:350WのXeon w9-3495Xでも必要十分なVRM電源回路ですが、CPU消費電力が500Wを超えるようなOCとなると電源回路もクーラーもやはり不足を感じます。またIntel XMP3.0のOCプロファイル適用によるメモリOCにも非対応です。
90A対応Dr. MOSなどで構成される高品質な8フェーズVRM電源回路が実装されているので、PBP:350WのXeon w9-3495XでVRM電源回路へ長期的に負荷をかけ続けても、空冷環境やVRM用ファンを増設した水冷環境ならVRM電源温度は60~70度に収まります。定格運用を前提とするなら、Xeon W-3400シリーズCPU用マザーボードとしては必要十分な装備です。
メモリOCについてはIntel XMP3.0はサポートしていないものの、ネイティブ5600MHzのDDR5 R-DIMMを16枚使用して、CPU・MBのスペック的にはOCとなるJEDECスペックのメモリ周波数5600MHzが安定動作したので、「Supermicro X13SWA-TF」を選ぶようなユーザーにとっては不足はないと思います。
以上、「Supermicro X13SWA-TF」のレビューでした。
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16基のDDR5 R-DIMMにより1TBを超えるシステムメモリに対応し、PCIE5.0x16帯域のPCIEスロットを6基搭載するパーソナルWS向けモデル「Supermicro X13SWA-TF」をレビュー。Xeon w9-3495Xで徹底検証https://t.co/RwM5dNORko
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) November 21, 2023
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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