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VRR同期&HDR機能認証AMD FreeSync Premiumを取得し、4K解像度かつネイティブ150HzリフレッシュレートでHDMI2.1ビデオ入力も搭載する28インチIPS液晶ゲーミングモニタ「ViewSonic VX2882-4KP」をレビューします。
GeForce RTX 3080やRadeon RX 6800 XTを搭載した高性能ゲーミングPCはもちろん、PlayStation 5やXbox Series X/Sにも最適な4K/120Hz対応でHDMI2.1搭載のゲーミングモニタを徹底検証していきます。
製品公式ページ:https://www.viewsonic.com/jp/products/lcd/VX2882-4KP
ViewSonic VX2882-4KP レビュー目次
1.ViewSonic VX2882-4KPの概要
2.ViewSonic VX2882-4KPの開封・付属品
3.ViewSonic VX2882-4KPの液晶モニタ本体
4.ViewSonic VX2882-4KPのOSD操作・設定
5.ViewSonic VX2882-4KPの発色・輝度・視野角
6.ViewSonic VX2882-4KPの150Hzリフレッシュレートについて
7.ViewSonic VX2882-4KPの応答速度・表示遅延
8.ViewSonic VX2882-4KPのFreeSync/G-Sync CPについて
9.ViewSonic VX2882-4KPのMBR機能について
10.ViewSonic VX2882-4KPのHDR表示やCSゲーム機対応について
11.ViewSonic VX2882-4KPのレビューまとめ
【機材協力:ViewSonic】
ViewSonic VX2882-4KPの概要
「ViewSonic VX2882-4KP」は解像度が3840×2160の4K解像度、モニタサイズが28インチの液晶モニタです。液晶パネルタイプはノングレア(非光沢)で発色や視野角に優れたIPS液晶パネルが採用されています。コントラスト比は通常1000:1、最大80,000,000:1(可変バックライト機能使用時)、応答速度は1ms(GTG, MPRT)です。「ViewSonic VX2882-4KP」はHDR表示にも対応しており、最大輝度は300nits(cd/m^2)です。VESAがPCモニター向けに展開している輝度認証のVESA DisplayHDRは取得していません。
「ViewSonic VX2882-4KP」のリフレッシュレートはネイティブ150Hzです。150Hzの高リフレッシュレートによって応答速度が高速になるのでブレや残像がなくなってクッキリとした滑らかな表示です。60FPSでは識別の難しいゲーム内遠方で動くエネミーやオブジェクトの発見などが容易になるので、オンライン対戦FPSゲームなど競技性の高いPCゲームにおいて対戦相手よりも優位に立つことができます。
「ViewSonic VX2882-4KP」はゲーミングPCやコンソールゲーム機のPlayStation 5やXbox Series X/Sを組み合わせることで利用可能な可変リフレッシュレート同期機能「AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync、HDMI Variable Refresh Rate)」にも対応しており、ティアリングがなくスタッタリングを抑えた快適で鮮明なゲーミング環境を実現できます。NVIDIA製GPUとの互換性を証明するG-Sync Compatible認証の取得については不明です。
「ViewSonic VX2882-4KP」のビデオ入力はDisplayPort1.4×2、HDMI2.1×2、USB Type-C×1の5系統です。
またUSBハブとして周辺機器を接続するためのダウンストリームUSB3.2 Gen1 Type-A端子が2基搭載されており、アップストリームケーブルで接続した機器や、USB Type-Cでビデオ出力を行っている機器のUSBハブとして使用できます。
「ViewSonic VX2882-4KP」のHDMIビデオ入力はver2.1なのでPlayStation 5やXbox Series X/Sを接続すると4K/120Hz表示に対応します。
「ViewSonic VX2882-4KP」はDisplayPort1.4で策定されている映像データの非可逆圧縮伝送機能「Display stream compression (DSC)」に対応しています。DSCは映像データを非可逆圧縮しますが視覚的に画質を損なうことがなく、DisplayPortケーブル1本で4K解像度/150FPS/フルRGBの映像データの伝送が可能です。可変リフレッシュレート同期機能やHDR表示とも互換性があります。
「ViewSonic VX2882-4KP」の寸法はモニタスタンド込みで幅638mm x 高さ415〜545mm x 奥行185mm(モニタ本体の奥行は57mm)となっています。付属モニタスタンドは上下チルト、左右首振りスイーベル、昇降高さ調整に対応しています。90度回転ピボットにも対応しています。チルト角は上20度から下5度、スイーベル角は左右45度、高さ調整は最大130mmの範囲で調節可能です。モニタスタンドを含めた本体重量は6.9kg、モニタ単体重量は4.8kg前後です。75mm x 75mmのVESAマウントにも対応しており重量的にもモニタアームが使用可能です。
ViewSonic VX2882-4KPの開封・付属品
まずは「ViewSonic VX2882-4KP」を開封していきます。「ViewSonic VX2882-4KP」は茶箱に製品名やイラストが黒でプリントされたパッケージが採用されており、パッケージサイズは幅87cm×高さ49cm×厚み13cmで、28インチモニタが入っている箱としては厚みは薄いですが左右の幅は大きめです。
上には持ち手もあるので、成人男性なら問題なく持ち運べると思います。
各種付属品はスペーサーに蓋もなく収められているので、保護スペーサーをパッケージから取り出す際は、付属品が脱落しないように、付属品のある面が上になるように確認してから引き出してください。
発泡スチロール製スペーサーの上側に各種付属品とモニタスタンドが収納されており、下の段にはモニタ本体があります。
「ViewSonic VX2882-4KP」の付属品を簡単にチェックしておくと、DisplayPortケーブル、HDMIケーブル、USB Type-Cケーブル、ACアダプタ、ACケーブルが付属します。
付属HDMIケーブルはHDMI協会がHDMI2.1互換を証明するUltra High Speed HDMIケーブル認証を取得していませんが、一応ケーブルには”Ultra High Speed HDMI”と刻印されていました。
各種ケーブルを個別に購入する場合のオススメ製品に付いても紹介しておきます。
視覚損失のない非可逆圧縮機能DSCによって4K/144Hz/HDR 10bit RGBに対応するDisplayPort1.4ケーブルなら「サンワサプライ KC-DP14シリーズ」を推奨しています。標準で付属するケーブルよりもケーブル径が細くて取り回しが良いので管理人も個人的に使用しており、おすすめのケーブルです。
HDMI2.1ケーブルについては「エレコム ウルトラハイスピードHDMIケーブル スリム CAC-HD21ESシリーズ」がおすすめです。標準で付属するケーブルよりもケーブル径が細くて取り回しが良いので管理人も個人的に使用しており、おすすめのケーブルです。
同製品は4.5mm径のスリムケーブルながら、HDMI2.1の正常動作を証明するUltra High Speed HDMIケーブル認証を取得しており、安心して使用できます。
当サイトでもGeForce RTX 30搭載PC、PlayStation 5、Xbox Series X/Sで正常動作を確認しています。
その他にもケーブル径5.0mm以下でスリムな48Gbps対応HDMI2.1ケーブルについてまとめた記事も公開しているので、こちらも参考にしてみてください。
長さ5m以上でも安定した動作が期待できる光ファイバー式HDMI2.1ケーブルでイチオシは、「Cable Matters Active 8K HDMI Fiber Optic Cable」です。
「Cable Matters Active 8K HDMI Fiber Optic Cable」は、HDMI協会の公式認証であるUltra High Speed HDMI認証を取得、さらにXbox Series X/S互換製品認証も取得しており、ケーブル性能の保証としては隙の無いカンペキな製品です。
5mが7000円、10mが10000円で光ファイバー式HDMIケーブルとしては標準的なお値段で、 信頼性の高さも考慮したらかなりリーズナブルだと思います。
当サイトでもGeForce RTX 30搭載PC、PlayStation 5、Xbox Series X/Sで正常動作を確認しています。
「ViewSonic VX2882-4KP」のACアダプタとACケーブルを繋ぐコネクタはC13コネクタ(自作PC電源ユニットと同じ)なので市販のACケーブルも使用できます。
「ViewSonic VX2882-4KP」に付属するモニタスタンドはフレームとフットプレートの2つの部品で構成されています。開封時点でメインフレームはモニタ本体に装着されています。
フットプレートをフレームに差し込んで底面のネジを締めるだけで簡単にモニタスタンドを組み立てられます。ネジにはレバーが付いているのでドライバー不要で組み立てが可能です。
モニタスタンドを組み立てたら、「ViewSonic VX2882-4KP」のモニタ本体背面の溝に斜め下の方向からモニタスタンドを差し込めば取り付け完了です。
モニタスタンドの取り外しは、根本の下にあるスイッチでロックを外して、装着した時と逆に動かして引き出すだけです。
ViewSonic VX2882-4KPの液晶モニタ本体
続いて「ViewSonic VX2882-4KP」の液晶モニタ本体をチェックしていきます。「ViewSonic VX2882-4KP」はフレームレス構造ですが、フレーム内パネル上には非表示領域があり、上左右の非表示領域の幅は7mm程度です。また「ViewSonic VX2882-4KP」の下側フレームは幅20mm程度ですが厚みは小さいので邪魔になることはないと思います。
「ViewSonic VX2882-4KP」の外装は黒色プラスチックで中央にはViewSonicのメーカーロゴが描かれていることを除けばシンプルな作りです。モニタスタンドもシンプルな形状、メタリックグレーの塗装です。
「ViewSonic VX2882-4KP」のモニタスタンドにはケーブルホールがあるので、各種ケーブルをまとめることができます。
「ViewSonic VX2882-4KP」のモニタ本体の厚さは最薄部で25mm、最厚部で60mmほどと最近の液晶モニタとしては厚標準的な厚みです。モニタ本体重量は4.7kg程度で、28インチモニタとしてはこちらも標準的です。
「ViewSonic VX2882-4KP」では背面下部、下向きにビデオ入力等のI/Oポートが実装されています。
I/Oポートとして左から順に、ACアダプタ接続用DC端子、2基のHDMI2.1ビデオ入力、2基のDisplayPort1.4ビデオ入力、1基のUSB Type-C(DP1.4対応のDisplayPort Alternate Mode)、3.5mmヘッドホンジャックがあり、カバーを挟んでさらに右にはUSB3.0アップストリーム端子、2基のUSB3.0ダウンストリーム端子が設置されていました。
なお「ViewSonic VX2882-4KP」にはUSBアップストリームケーブルが付属しないので、USBハブポートを使用したい場合はUSB3.0 Type-Bケーブルを各自で用意してください。
ここ数ヵ月で発売が相次いでいるHDMI2.1対応4K/144Hzゲーミングモニタの多くはビデオ入力の総数が4基ですが、「ViewSonic VX2882-4KP」は計5基のビデオ入力を搭載し、なおかつ全てのビデオ入力が4K/150Hz対応しているところが大きな特徴です。
「ViewSonic VX2882-4KP」の付属モニタスタンドの左右スイーベルの可動域は左右45度(90度)に対応しています。
「ViewSonic VX2882-4KP」の付属モニタスタンドの上下チルトの可動域は仕様通り下に5度、上に20度です。
モニタの高さはモニタ本体とスタンドの付け根部分が上下に動く構造になっており、全高で高さ415mm~545mmの範囲内で調整できます。
付属のスタンドはピボットに対応しており、縦向きにして使用できます。なお時計回りに90度の回転のみに対応しており、縦向きした時の下フレームの位置は左側で固定です。
「ViewSonic VX2882-4KP」はVESA75x75規格のVESAマウントに対応しておりサードパーティ製のモニターアームを使用できます。モニタ単体の重量も4.7kgほどなのでモニターアームを問題なく利用可能です。
VESA75x75規格だけに対応しているモニターアームであれば問題ないのですが、VESA100x100にも対応しているモニターアームを使用すると、「ViewSonic VX2882-4KP」のVESAネジ穴は外装から窪んだ場所にあるので、マウントプレートが外装と干渉してしまいます。
VESA100x100規格ではネジ規格がM4と決まっているので、軸の長さが15~20mmのM4ネジのスペーサーを用意すれば干渉することなく、VESA75x75とVESA100x100の両方に対応するモニターアームや、VESA75x75の変換プレートを利用できます。
なおVESAネジ穴が背面外装から窪んだ場所にあるモニタの場合、スライド式クイックリリースプレートを採用するモニターアームでは、背面外装とクリックリリースブラケットが干渉して設置できない可能性があります。また直接ネジ止めするタイプでも窪みの面積が狭くて、VESAブラケットとモニタ背面外装が直接干渉することも。
市販モニターアームのVESAブラケットがモニタ背面外装と干渉する場合はスペーサーやスタンドオフを使用してください。詳しくはこちらで。
オススメのモニターアームや調整機能が豊富なVESA汎用モニタースタンド、VESAマウントの干渉を避ける方法についてはこちらの記事で詳細に解説しているので、導入を検討している人は参考にしてください。
ViewSonic VX2882-4KPのOSD操作・設定
「ViewSonic VX2882-4KP」のOSD操作はモニタ底面の右下に設置されている6つのボタン(+電源ボタン)を使用します。OSDメニューの操作中に各ボタンに割り当てられた機能は、上写真のように真上にOSD表示されるので、それを参照しながら操作すればOKです。
「ViewSonic VX2882-4KP」ではアウトボックス後、初回起動時にOSD操作ボタンのいずれかを押下すると、OSDメニューのUI言語選択が表示されます。
電源ボタン以外のOSD操作ボタンを押下するとクイック設定メニューが表示されます。クイック設定メニューでは5つのボタン上にアイコンが表示され、その上に各アイコンの機能が記載されています。
各アイコンの描かれたボタンがショートカットキーになっており、押下するとそれぞれのショートカット設定が表示されます。各ボタンに割り当てられたショートカット機能は固定で変更できません。
クイックメニューで「三」マークの下にあるボタンを押下する詳細設定メニューが表示されます。 OSD表示領域は表示サイズを変更すれば28インチ画面の6分の1程度と広く、文字も大きいので視認性は良好です。
「ViewSonic VX2882-4KP」は初回起動時に言語選択が表示されますが、間違って日本語以外を選択してしまった場合、下画像の操作で日本語UIに切り替えが可能です。
「ViewSonic VX2882-4KP」のOSDメニューサイズは標準では28インチ画面の1/20以下と非常に小さく、視認性が悪いのですが、「設定メニュー - OSDサイズ」を”大”に切り替えると28インチ画面の6分の1程度に拡大されます。
「ViewSonic VX2882-4KP」の画質モードはViewModeと名付けられており、標準設定の「標準」に加えて、「映画」「ウェブ」「テキスト」「MAC」「モノクロ」、およびゲームジャンル別で「FPS」「RTS」「MOBA」、さらに「CUSTOM」の計10種の画質モードが用意されています。
FPS/RTS/MOBAの3種類ではゲーム関連の画質設定が配置された「画像調整」内の項目が各ジャンルに合わせて最適化され、固定となっていますが、CUSTOMでは自由に設定できます。
「ViewSonic VX2882-4KP」のOSDメニューには大きく分けて、「入力選択」「音声調整」「ViewMode」「カラー調整」「画像調整」「設定メニュー」の6つの項目が用意されています。
ゲーム関連の表示設定はトップメニューで右から2番目の「画像調整」に配置されています。
一般にオーバードライブと呼ばれる応答速度を調整する機能は、ViewSonic VX2882-4KPでは「応答速度」の名前で配置されています。オーバードライブ補正の強度を標準/高速/超高速の3段階で設定できます。標準設定は”標準”です。
黒の強弱を調節して暗がりの視認性を高める機能「Black Stabilization」は、0から100で10刻みの11段階で設定でき、数値を挙げるほど明るく(白く)なります。標準設定の設定値は”50”で無効化されています。
可変リフレッシュレート同期機能「Adaptive-Sync」は設定メニューのタブ内に、そのままの名前で設定項目が配置されています。(HDMI接続時はAMD FreeSync Premium Pro)
「ViewSonic VX2882-4KP」はモーションブラーリダクション機能に対応しており、設定メニューのタブ内に「1ms Mode」の名前で配置されています。リフレッシュレートが100Hz以上の時に選択可能となります。「1ms Mode」はVRR同期機能とは排他利用です。
PIP/PBP機能について
「ViewSonic VX2882-4KP」は2つのビデオ入力を画面上に同時に表示する「PIP/PBP」にも対応しています。「ViewSonic VX2882-4KP」では、PIP機能を有効にした時のディスプレイ入力が主入力となります。副入力のビデオソースは残りの4つのビデオ入力から自由に選択できます。
なお「ViewSonic VX2882-4KP」でPIPを使用時、モニタ搭載スピーカーや3.5mmヘッドホンジャックから出力される音声は主入力のみに固定され、副入力の音声は出力されません。
「入力切り替え」を選択すると主福ウィンドウの映像ソースが入れ替わります。
「操作画面設定」の設定項目は、ViewModeや画像調整など各種OSD設定の変更を適用する主福ウィンドウを選択できます。メインウィンドウを選択するとその後のOSD設定変更は主ウィンドウにのみ適用されます。全選択なら両方に適用されます。
PIPで副画面のサイズは0/33/66/100の4段階の設定値が選択でき、28インチモニタ上でそれぞれ1/16、1/9、1/6、1/4程度の小窓として表示されます。
副画面は表示サイズにモニタ側でリサイズされますが、出力機器としては最大で4K/150Hzで表示できます。画面リフレッシュレートは主画面の設定に依存し、副画面のリフレッシュレートが主画面を上回ると副画面の信号検出にエラーが表示されるようです。
PIPで副画面の表示位置は、左上を[0, 0]、右下を[100, 100]とした1刻みの2次元座標で自由に設定できます。
表示位置の自由度の高さは素晴らしいのですが、座標を1ズラすだけで画面が移動し、1秒程度動作が止まるので初期値の[100, 100]から設定値を大きく変更するのが大変です。
「ViewSonic VX2882-4KP」のPBP機能にはかなり問題があり、各映像ソースはアスペクト比を無視して1920×2160にリサイズされてしまいます。
「ViewSonic VX2882-4KP」のPBPでは4K画面が1920×2160で左右に2等分されます。左側が主入力、右側が副入力となります。画面リフレッシュレートは主画面の設定に依存し、副画面のリフレッシュレートが主画面を上回ると副画面の信号検出にエラーが表示されるようです。
PBPモードに切り替わっても実際のネイティブ解像度である1920×2160の設定は表示されず、またPCなど映像出力機器からはPBP中も3840x2160がネイティブ解像度のモニタとして認識されてしまうので、カスタム解像度で1920×2160を作成しても比率を合わせて綺麗に表示できません。
「ViewSonic VX2882-4KP」では、PBP機能を有効にした時のディスプレイ入力が主入力となります。副入力のビデオソースは残りの4つのビデオ入力から自由に選択できます。
なお「ViewSonic VX2882-4KP」でPBPを使用時、モニタ搭載スピーカーや3.5mmヘッドホンジャックから出力される音声は主入力のみに固定され、副入力の音声は出力されません。
「入力切り替え」を選択すると主福ウィンドウの映像ソースが入れ替わります。
「操作画面設定」の設定項目は、ViewModeや画像調整など各種OSD設定の変更を適用する主福ウィンドウを選択できます。メインウィンドウを選択するとその後のOSD設定変更は主ウィンドウにのみ適用されます。全選択なら両方に適用されます。
ViewSonic VX2882-4KPの発色・輝度・視野角
ViewSonic VX2882-4KPの発色・輝度・視野角など画質についてチェックしていきます。直接的な画質ではありませんがViewSonic VX2882-4KPの液晶パネルは光沢のあるグレアではなくアンチグレアタイプなので暗転時に自分の顔などが映り込みません。
液晶パネルには大きく分けてIPS液晶パネルとVA液晶パネルとTN液晶パネルの3種類があり、各社個別の製品によって個体差はあるものの、この3つの液晶パネルの特性を簡単にまとめると次のテーブルのようになります。
「ViewSonic VX2882-4KP」に採用されているIPS液晶パネルはTN液晶パネルやVA液晶パネルと比べると色再現性や視野角など一般に画質に直結する性能が優れている反面、価格が高価になりがちな液晶パネルです。TN液晶パネルに比べて応答速度が遅めなので、60Hzオーバーのリフレッシュレートを実現しているIPS液晶パネル採用ゲーミングモニタは少ないため、輪をかけて高価です。とはいえ画質とリフレッシュレートを両立できるので、予算に糸目をつかないエンスーゲーマー勢に好まれています。
液晶パネルの簡易比較表 | |||
IPS | VA | TN | |
色再現性 | ◎ | 〇 | △ |
コントラスト | 〇 | ◎ | △ |
視野角 | 〇 | 〇 | △ |
応答速度 | 〇 | △ | ◎ |
価格 (高RR) |
△ (×) |
△ | 〇 |
液晶パネルの種類による性能の違いについてはこちらの記事も参照してみてください。
・IPS/VA/TN液晶パネルを比較解説 - ゲーミングモニタの選び方[4]
「ViewSonic VX2882-4KP」は150Hzの高速リフレッシュレートながら、IPS液晶パネルが採用されているので視野角も良好です。
「ViewSonic VX2882-4KP」の発色について、色温度の標準設定である”標準”だと極端ではないものの、若干ですが黄色がかった印象でした。”寒色”のプリセットが一番白色に違和感を感じないと思います。
色温度設定には”sRGB/青色の濃さ/寒色/中間/暖色”の5種類のプリセットがありますが、これらを切り替えても発色に違和感がある場合は、ユーザー設定でRGBのバランスを好みに合わせて整えてください。
「ViewSonic VX2882-4KP」はガンマの設定にも対応しており、標準の2.2に加えて、1.8と2.6の3段階で調整できます。
「ViewSonic VX2882-4KP」では6軸色調や6軸彩度などでさらに詳細な発色調整が可能です。
ここからはカラーキャリブレータを使用して、色域・色再現性・輝度・コントラスト・均一性など画質に直結するモニタの性能について詳細な検証結果を見ていきます。なおこれらのモニタ性能(特に輝度の均一性)については同じ製品であっても個体差が大きいのでご注意ください。検証にはカラーフィルター式(色差式)のX-Rite i1 Display Pro PlusとDatacolor SpyderX、そして分光式(スペクトロメーター)のX-Rite i1 Basic Pro 3を使用しています。
余談ですが、分光式のi1 Basic Pro 3は20万円程と非常に高価ですが、一般的な用途であれば測定精度は十分なので、イラスト製作や写真編集でカラーキャリブレーションを行う場合、カラーフィルター式のX-Rite i1 Display ProかDatacolor SpyderX Proで十分です。ユーザー数の多さで面倒が少ないのはX-Rite i1 Displayだと思います。
「ViewSonic VX2882-4KP」のディスプレイ輝度について白色点の輝度をOSD設定別で測定しました。OSD上の輝度設定10%刻みで0%~100%の輝度変化は次のようになっています。
「ViewSonic VX2882-4KP」において、一般に見やすい明るさと言われる120cd/m^2は輝度20%前後、室内照明に依りますが個人的に見やすいと感じる明るさの180~200cd/m^2は輝度50%前後です。
「ViewSonic VX2882-4KP」はSDR表示において最大輝度が280cd/m^2程度なので、明るい環境では暗く感じるかもしれません。
SDR表示における最大輝度については1つ注意点があり、色温度の設定を標準設定の”標準”から”寒色”や”ユーザー設定”に切り替えると、最大輝度が240cd/m^2程度まで下がってしまいます。色温度設定”標準”は少し黄色がかった印象があり、プリセットの中で違和感が少ないのはおそらく”寒色”であること、またカラーキャリブレーション等で”ユーザー設定”を使用する可能性があることを考えると少々残念な仕様です。
「ViewSonic VX2882-4KP」ではOSD設定の設定メニュータブ内に「エコモード」という設定項目があり、これが”標準”以外になっているとディスプレイ輝度が制限されます。
エコモードはアウトボックス後の初回起動時点で有効になっており、初回起動後すぐにオン・オフの切り替えアラートが表示されますが、よくわからず省電力な設定を有効のままにしておくとディスプレイ輝度が制限されるので、画面が暗い時はエコモードの設定を確認してください。
「ViewSonic VX2882-4KP」のディスプレイ輝度の均一性(Uniformity)を検証しました。画面中央の輝度が約120cd/m^2になるOSD設定において、画面を横7×縦5の35分割として各位置の白色点の輝度を測定し、120cd/m^2を基準にしたパーセンテージで等高線マップにしています。
「ViewSonic VX2882-4KP」は中央部分の大半について最大差分でもおおむね20%以内に収まるので輝度の均一性は悪くありません。個体差の影響も大きいですが、今回のサンプル機は右端寄りで輝度が下がる傾向です。
液晶モニタにおいて輝度の低下が特に大きい四隅&四辺は、上のような領域分割測定では見落とされてしまうので、同様に中央120cd/m^2を基準にして個別に測定したところ次のようになりました。
「ViewSonic VX2882-4KP」については全体を白表示にしても左右端ギリギリまでいかないと暗さを感じませんが、やはり左右端、特に右上が少し暗い印象はあります。個体差もありますが、今回のサンプル機では左下が明るかったこともあり、右上の暗さは少々気になりました。
全体白表示なので強調されていますが、カラフルな画面が表示される実用シーンでは特に問題にならない程度だと思います。
画面中央の白色点が約120cd/m2になるOSD設定において「ViewSonic VX2882-4KP」のブラックレベルを測定したところ次のようになりました。ブラックレベルの測定にはX-Rite i1 Display Pro Plusを使用しています。
またこの時のコントラスト比も算出したところ次のようになっています。なおコントラスト比に大きく影響するブラックレベルはコンマ2桁での測定になるため測定精度が若干怪しく、ブラックレベル0.01の差でコントラスト比が大きく変わるので参考程度と考えてください。
続いて「ViewSonic VX2882-4KP」の色域と色の正確性を検証してみました。
「ViewSonic VX2882-4KP」ではガンマをOSD設定から変更できるので予備検証として各設定値のガンマカーブを確認したところ、設定値1.8でガンマ2.0、設定値2.2でガンマ2.5、設定値2.6でガンマ3.0と表示されました。ガンマは設定値の表記と実際のガンマカーブの差が大きいので注意してください。
「ViewSonic VX2882-4KP」では一般的なガンマ2.2に一致する設定がないようなので、標準設定値は”2.2”ですが、以降の発色関連の検証ではガンマカーブ2.2に近い設定値”1.8”を使用しました。
まずはモニタのOSD設定を標準設定にして(ディスプレイ輝度は120cd/m^2になるように調整、また前述の通りガンマ設定も変更)、任意のカラープロファイルを適用しない場合、次のようになりました。
「ViewSonic VX2882-4KP」は標準モードでそのまま使用しても97% sRGBに加えて、85% DCI-P3という広い色域をカバーしています。
Innoluxの4K/144Hz対応IPS液晶パネルを採用したモニタは、これまでいくつか検証してきたのですが、サンプル機の個体差なのか、今回入手した「ViewSonic VX2882-4KP」は緑の発色が弱く、sRGBを100%カバーにならなかったのは少し気になりますが。
色の正確性は平均ΔEが1.41でした。標準設定のままでも悪いというわけではありませんが、ガンマカーブのズレのせいか、特に良いというわけでもありません。X-Riteによると『ΔE=1程度で2つの色を横にくっつけて見比べた時に違いが判別できるレベル』とのこと。
次にX-Rite i1 Basic Pro 3を使用してカラーキャリブレーションを行いました。キャリブレーション設定は下のスクリーンショットの通りですが、i1 Profilerの標準設定をそのまま採用しています。
「ViewSonic VX2882-4KP」では色温度を標準設定にするとRGBの強さに差が大きいとアラートが出たので、手動で調整できるユーザー設定モードでR(赤)=92, G(緑)=90, B(青)=100としてキャリブレーションを行いました。
X-Rite i1 Basic Pro 3によってカラーキャリブレーションで作成したICCファイルを適用し、同じくX-Rite i1 Basic Pro 3で行った品質検証(色の正確性の検証)の結果は次のようになっています。X-Rite i1 Basic Pro 3は分光式(スペクトロメーター)のカラーキャリブレータなので、測定精度はこちらの方が高いはずです。
上の測定結果ではカラーキャリブレーション前の色の正確性はΔE 1.41でしたが、カラーキャリブレーション後にX-Rite i1 Basic Pro 3で測定した色の正確性はΔE 0.4と非常に優秀な数値です。
「ViewSonic VX2882-4KP」ではガンマカーブにズレがあり標準設定のままだと色差は多少ありますが、カラーキャリブレーションで補正が効く範囲のようです。
また分光型測色計(スペクトロメーター)で測定した輝度120cd/m^2における白色点のカラースペクトラムが次のようになっています。
カラースペクトラムから発色の良いモニタを見分けるざっくりとしたポイントは『RGB各色のピークが鋭く立ち上がり、かつ高さが同程度であること』です。一般的な液晶モニタは白色LEDバックライト(青色LEDを光源として赤緑(≒黄)蛍光体を組み合わせて白色を生成する)を採用しているので青色のピークが高くかつ鋭くなります。白色を基準として測定した場合、緑と赤のピークの高さは色温度のOSD設定で若干上下します。以上から簡単化すると『緑と赤のピークが鋭くなっているかどうか』をチェックすればカラースペクトラムの良し悪しがざっくりと判定できます。
一般的な液晶パネル(IPS/VA/TNに依らず)であれば下画像の左側のように青のピークだけが強く、残りの分離が弱い波形になりますが、LG製Nano-IPSで有名なKSF蛍光体や、Quantum Dot(量子ドット)といった最新技術が採用された液晶パネルは各色の分離が良く、ピークも急峻になります。
「ViewSonic VX2882-4KP」については緑がややなだらかなものの、赤と青のピークは急峻で、一般的なIPS液晶パネルよりも赤緑青の3色の分離が良好です。
「ViewSonic VX2882-4KP」のディスプレイパネルについてはIPSという分類以外の詳細は不明でしたが、赤色ピークの左に小さい山がある特長から推測するに、KSF蛍光体(LG製Nano-IPSで有名)の技術を採用した液晶パネルのようです。
KSF蛍光体では赤が強く出やすいのですが、赤と青の強弱については色温度の設定の影響だと思います。
ViewSonic VX2882-4KPの150Hzリフレッシュレートについて
「ViewSonic VX2882-4KP」の最大の特徴の1つである150Hzリフレッシュレートについてチェックしていきます。まずは「ViewSonic VX2882-4KP」の特徴の1つである”150Hzリフレッシュレート”について、その意味自体は特に説明せずとも読者はご存知だと思いますが、一般的な60Hzリフレッシュレートの液晶モニタが1秒間に60回の画面更新を行うのに対して、150zリフレッシュレートであれば標準的な60Hzの2.4倍となる1秒間に150回の画面更新を行います。
最近では競技ゲーマー向け製品で240Hzの超高速リフレッシュレートなゲーミングモニタも普及しつつあり、さらには、それを1.5倍に上回る360Hzの超々高速なリフレッシュレート対応製品も各社から販売されています。
1秒間に150回の画面更新を行う150Hzリフレッシュレートの物理的なメリットとしては、単純に秒間コマ数が増えるので映像がより滑らかになります。上の章で詳しく検証したようにリフレッシュレートが上がると応答速度も上がって細部がクッキリとしたシャープな映像に見えやすくなり、加えて画面更新間隔が短くなるので表示遅延が小さくなり、一般的な60Hz環境よりもスピーディーなプレイで他者を圧倒しやすくなります。
「ViewSonic VX2882-4KP」ではNVIDIA GeForce RTX 30シリーズやAMD Radeon RX 6000シリーズなど最新グラフィックボードのDisplayPort1.4のビデオ出力に接続することによって、モニタリフレッシュレートを150Hzなどに自由に設定できます。
ゲーミングPCとゲーミングモニタの接続にはDisplayPortを使用するのが現在の主流ですが、「ViewSonic VX2882-4KP」に搭載された2基のHDMIビデオ入力は最新規格HDMI2.1に対応しており、4K/120FPSの映像伝送が可能です。
NVIDIA GeForce RTX 30シリーズやAMD Radeon RX 6000シリーズなど最新グラフィックボードのHDMI2.1ビデオ出力と接続した場合、「ViewSonic VX2882-4KP」はフルRGBで4K/150Hzの表示に対応します。
なおNVIDIA製GPU環境における注意点として、2021年10月現在最新のGeForceドライバ496.13を使用してHDMI2.1ビデオ入力で4K/144Hzや4K/150Hzに設定するとブラックアウトしました。(DP接続なら問題なし、4K/120HzまではHDMIでも正常に動作)
1つ前のGeForceドライバ472.12では4K/144Hzや4K/150Hzが正常に動作するので、HDMI2.1ビデオ入力にNVIDIA製GPU環境を接続する場合はドライババージョンに注意してください。
モニタリフレッシュレートの設定は、NVIDIA製GPUの場合は上のスクリーンショットのようにNVIDIAコントロールパネルから、AMD製GPUの場合はWindowsのディスプレイ設定から行います。
オンライン対戦FPSなど競技性の高いゲームにおいて144Hzや240Hzなど高リフレッシュレートのモニタを使用した時の実用的なアドバンテージとして、ゲーム内視線を左右に振った時の視認性が上がるという例は直感的にもわかりやすいメリットですが、その他にもゲーム内遠方に存在して動いているエネミーやオブジェクトの視認性が上がるというメリットも存在します。
下の比較動画では4分割して映像を並べていますが、右下以外の3つは右下画面の緑枠部分を拡大するよう接写して、「SONY DSC-RX100M5」の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影したものになっています。リフレッシュレート別で左上は60Hz、右上は120Hz、左下は240Hzとなっていますが、赤枠で囲った建物の出入り口付近で左方向に移動する敵の動きはリフレッシュレートが上がるほど視認しやすくなるのがわかると思います。
またハイリフレッシュレートなゲーミングモニタでは表示遅延も小さくなります。
表示遅延が小さいメリットとしては、視認と操作の繰り返し応答が良くなることに加えて、例えば下の動画のように壁に隠れたターゲットが壁から出てきた時、画面に表示されるのが実際に速くなります。
240~360Hz・FPSでシステム遅延が小さい環境の攻撃側に敵(守備側)が見えているのに対して、一般的な60Hz・FPSでシステム遅延が大きい環境の守備側は敵(攻撃側)が見えていない様子がハッキリと映っています。
主観の画面表示を基準にしてみると、クロスヘア中央にターゲットをエイムしてから撃ち始めた場合、240Hzのほうが60Hzより先に着弾します。ターゲットが逃げる場合は50ms程度の差で撃ち漏らす場合もあります。
技術云々ではなく、単純に、クロスヘア中央にエイムするという同じタイミングで撃ちあっていたら、リフレッシュレートが高いモニタを使っている方が勝ちます。加えて操作と画面表示の繰り返し応答も早いので、当然、リフレッシュレートが高い方がエイムもスムーズになります。
なお「ViewSonic VX2882-4KP」で4K解像度/150FPSを狙うには、元から軽めのPCゲームや画質設定を下げた最新PCゲームであってもグラフィックボードのGPU性能はかなり高い水準で要求されます。
ゲーミングモニタとして「ViewSonic VX2882-4KP」を使用するのであれば2021年最新のハイエンドGPUであるNVIDIA GeForce RTX 3080やAMD Radeon RX 6800 XTがおすすめです。
・GeForce RTX 30シリーズのレビュー記事一覧へ
・Radeon RX 6000シリーズのレビュー記事一覧へ
非可逆圧縮伝送機能「Display stream compression (DSC)」について
「ViewSonic VX2882-4KP」が対応する非可逆圧縮伝送機能「Display stream compression (DSC)」について説明しておきます。「ViewSonic VX2882-4KP」はDisplayPort1.4で策定されている映像データの非可逆圧縮伝送機能「Display stream compression (DSC)」に対応しているのが大きな特徴の1つです。
「Display stream compression (DSC)」は映像データを非可逆圧縮しますが視覚的に画質を損なうことがなく、DisplayPortケーブル1本で4K解像度/150FPS/フルRGBの映像データの伝送が可能です。また2本のDisplayPortケーブルを使用する方式と異なり、可変リフレッシュレート同期機能やHDR表示とも互換性があります。
Cyberpunk 2077のサンプルイメージを例にDSCの効果を検証してみました。
まずはフルRGBとYCbCr422の比較ですが、表示内容によっては(割とワーストケースですが)、下のようにYCbCr422ではボヤけてしまいます。ピンクの縦縞部分がYCbCr422によるボヤけが特にわかりやすいです。一方、DSCではフルRGBと同等の画質を得られます。【原寸の比較画像リンク:RGB vs YCbCr422、RGB vs DSC】
YCbCr422では文字が色によっては滲んで見えることがありますが、DSCでは解消されてRGBと同じ表示が得られています。【原寸の比較画像リンク:RGB vs YCbCr422、RGB vs DSC】
ViewSonic VX2882-4KPの応答速度・表示遅延
次にゲーミングモニタのハードウェア性能として特に重要な、「ViewSonic VX2882-4KP」の応答速度や表示遅延についてチェックしていきます。まずは「ViewSonic VX2882-4KP」の応答速度について検証していきます。
なおゲーミングモニタを選ぶ、もしくはモニタの応答速度や残像を評価する上で重要な予備知識である『液晶モニタの応答速度とオーバードライブ機能』についてはこちらの記事で簡単に紹介しているので、よくわからないという人は先に確認してみてください。
・ゲーミングモニタの選び方[1] 応答速度とオーバードライブについて
「ViewSonic VX2882-4KP」のOSDメニュー上ではオーバードライブ機能は「応答速度」の名前で配置されています。オーバードライブ補正の強度を標準/高速/超高速の3段階で設定できます。
「ViewSonic VX2882-4KP」のオーバードライブ設定は60Hzから150Hzまで”標準”が最適な設定です。
”高速”にすると150Hzや144Hzでは多少オーバーシュートが強まるものの過渡応答が高速になるので違和感がなければ選んでもいいという感じですが、60~120Hzでオーバーシュートが強く出るので、総合的に見て”標準”に劣ります。”超高速”は最大リフレッシュレートの150Hzでも盛大にオーバーシュートが発生するので非推奨です。
応答速度の確認には「UFO Test: Ghosting」を使用します。同テストではUFOが移動する背景カラーを選択できますが、今回の検証ではブラック/グレー/ホワイトの3色を選択しています。
背景カラーがブラックの場合は各液晶パネルにおいて応答速度は高速な数値を示すので、概ね理想的な応答を確認することになります。背景カラーがホワイトの場合の応答速度は、ドキュメントやウェブページでテキストをスクロールした時の文字の滲み度合いの参考になります。背景カラーがグレーの場合、中間色に移るまでの応答速度を比較することになるので、一般的なゲームプレイにおける物理的な残像の少なさの指標として参考になります。
まずは簡単にシャッタースピードを十分に速くして「UFO Test: Ghosting」の様子を写真撮影してみたところ、「ViewSonic VX2882-4KP」では150Hzリフレッシュレートで動作させると、残像はワーストケースでも1フレーム程度に収まりました。ベストな状態ではしっかりと現在のフレームが単独で表示されます。
ハイリフレッシュレートなIPS液晶モニタは近年増えつつありますが、実はこれが可能な応答速度を実現している製品は本当に希少です。微妙な差ではありますが、4K液晶モニタとしては2020年最速応答だったLG 27GN950-Bを上回る性能を発揮したのはかなり驚きです。
さらに「ViewSonic VX2882-4KP」のリフレッシュレートを変えてみたり、他の液晶モニタを比較対象にしたりしながら、「UFO Test: Ghosting」の様子を「SONY DSC-RX100M5」の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影し、比較してみます。
「ViewSonic VX2882-4KP」のリフレッシュレートをネイティブ対応する最大値の150Hzや144Hzにした時、オーバードライブ設定は”標準”もしくは”高速”が最適設定です。さらに補正の強い”超高速”に変更するとオーバーシュートの逆像が大きく発生します。
可変リフレッシュレート同期機能を使用する場合、負荷に応じて60FPS~144FPSでフレームレート/リフレッシュレートが変動しますが、オーバードライブ設定を”高速”にすると60Hz~120Hzでオーバーシュートが強く出てしまいます。
150Hzや144Hzに固定であれば各自の好みで”高速”を選んでもいいですが、総合的に見て「ViewSonic VX2882-4KP」で最適なオーバードライブ設定は”標準”だと思います。
「ViewSonic VX2882-4KP」においてオーバードライブ設定の最適値は総合的に見て”標準”ですが、上の動画を見ての通り、補正が下限の”標準”であっても、60Hz(60FPS)まで下がるとオーバーシュートが多少発生してしまいます。
「ViewSonic VX2882-4KP」は4K/120Hzや4K/150Hzに対応するのが魅力なゲーミングモニタではあるのですが、コンソールゲーム機では60FPS上限なタイトルが多いのもまた事実なので、60Hz前後で最適な応答を見せるオーバードライブ設定も用意しておいて欲しかったところです。
ここからはSONY DSC-RX100M5の960FPS(16倍速)よりもさらに高速な5760FPS(96倍速)のスーパースローモーションカメラを使用して「ViewSonic VX2882-4KP」の応答速度を比較検証していきます。
5760FPSスーパースローでも144Hz時のオーバードライブ設定について確認しておくと、960FPSスーパースローでも見た通り、”標準”が最適な応答を見せ、”高速”だと過渡応答は高速になりますがオーバーシュートが強めに発生してしまいます。オーバードライブ設定は”標準”で決め打ちにすればOKです。
「ViewSonic VX2882-4KP」に使用されているInnolux製パネルは144Hzが定格のはずで150Hz動作は微OCな状態ですが、実性能を無視して無理やりリフレッシュレートを引き上げたというわけではなく、綺麗な応答を見せています。
続いて同等スペックの液晶モニタと応答速度を比較してみました。 比較対象には、同じく4K解像度/144Hz対応の「ASUS TUF Gaming VG28UQL1A」と「LG 27GP950-B」と「MSI Optix MPG321UR-QD」を使用し、144Hzリフレッシュレートで統一しています。
2021年末現在、4K/144Hz/HDMI2.1搭載ゲーミングモニタには、「LG 27GP950-B」などLG製パネル、「ASUS TUF Gaming VG28UQL1A」や「Acer Nitro XV282K KV」などInnolux製パネル、「MSI Optix MPG321UR-QD」などAUO製パネルの3種類があり、LG製とInnolux製パネルが1ms GTGの公称スペックで実際に応答速度も最速、AUO製は少し遅いものの量子ドット採用で発色が最優という特長に分けられます。
今回レビューする「ViewSonic VX2882-4KP」はASUS TUF Gaming VG28UQL1AやAcer Nitro XV282K KVと同じくInnolux製パネル、オーバードライブの最適化にも差がないようで、応答速度はほぼ同等です。
「UFO Test: Ghosting」において下の写真のようにUFOが微かに表示された瞬間を始点に、その地点のUFOが完全に消えた時点を終点にして、その間隔のフレーム数を応答速度として算出し比較してみました。なおオーバードライブ機能によって発生するオーバーシュート/アンダーシュートによる逆像が発生してから消えるまでの時間は別に計算しています。
測定には240Hz未満のモニタではSONY DSC-RX100M5の960FPSスーパースローモーションを使用していますが、240Hzを超えるモニタでは5760FPSのスーパースローモーションを使用しており、その場合は末尾に”*”マークを添えています。
評価の目安として、”1000msをリフレッシュレートで割って2倍した数値”よりも測定値が小さければ、画面更新に応答速度が追いついています。60Hzの場合は33.3ms、120Hzの場合は16.6ms、144Hzの場合は13.9ms、240Hzの場合は8.3ms、360Hzの場合は5.6msを下回っていればOKです。
まずは背景カラーがブラックの時の「ViewSonic VX2882-4KP」やその他の比較対象モニタの応答速度の計測結果となります。背景カラーがブラックの場合は各液晶パネルにおいて応答速度は高速な数値を示すので、概ね理想的な応答を確認することになります。
続いて背景カラーがホワイトの時の「ViewSonic VX2882-4KP」やその他の比較対象モニタの応答速度の計測結果となります。背景カラーがホワイトの場合の応答速度は、ドキュメントやウェブページでテキストをスクロールした時の文字の滲み度合いの参考になります。
最後に背景カラーがグレーの時の「ViewSonic VX2882-4KP」やその他の比較対象モニタの応答速度の計測結果となります。背景カラーがグレーの場合、中間色に移るまでの応答速度を比較することになるので、一般的なゲームプレイにおける物理的な残像の少なさの指標として参考になります。
最後に「ViewSonic VX2882-4KP」の表示遅延(内部遅延)について測定を行いました。
モニタにはGPUのビデオ出力が送られてきてから実際にモニタに表示されるまで遅延が存在し、この遅延が大きいと例えば、FPSゲームでゲームパッドのトリガーやマウスのクリックによる操作からワンテンポ遅れて、マズルフラッシュが表示される、といった現象が発生します。人間は当然目で見てから操作するので、格闘ゲームやFPSゲームなど1,2フレームを争うような競技性の高いゲームにおいてはモニタの表示遅延が可能な限り小さいことが望まれます。
システム表示遅延やディスプレイ表示遅延の測定には、フォトセンサーを使用した特殊な測定機器「PC Gaming Latency Tester」を使用しています。当サイトのレビュー用に特注した機器なので、詳細についてはこちらの記事を参照してください。
「ViewSonic VX2882-4KP」やその他の比較モニタのディスプレイ表示遅延の測定結果は次のようになりました。測定方法的に遅延が2ms以下であればディスプレイ内部の表示遅延は誤差の範囲内で十分に小さいと考えてOKです。
「ViewSonic VX2882-4KP」は120Hzや144Hzのハイリフレッシュレートでは理想的なディスプレイ表示遅延を発揮していますが、60Hz動作において数ms程度ではあるものの遅延が大きくなりました。
「ViewSonic VX2882-4KP」やその他の比較モニタのシステム表示遅延の測定結果は次のようになりました。この測定値は一般的なPCゲームにおける操作から画面表示の変化までの遅延に一致します。
グラフの通りリフレッシュレートを上げると応答速度だけでなく表示遅延も改善するのでゲーマーにとってハイリフレッシュレートなゲーミングモニタを選択するメリットは大きいということが分かると思います。
ViewSonic VX2882-4KPのFreeSync/G-Sync CPについて
続いて「ViewSonic VX2882-4KP」が対応する可変リフレッシュレート同期機能「AMD FreeSync / NVIDIA G-Sync Compatible (VESA Adaptive-Sync、HDMI Variable Refresh Rate)」についてチェックしていきます。モニタの画面更新(リフレッシュ)に関する基本的な予備知識や、「AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync)」と「NVIDIA G-Sync Compatible」の関係についてはこちらの記事を参考にしてください。
・ゲーミングモニタの選び方[3] FreeSyncとG-Sync Compatibleについて
なお当サイトのレビューではNVIDIA環境について、G-Syncモジュールが搭載されたモニタにおける可変リフレッシュレート同期機能を単純にG-Syncと呼び、AMD FreeSync(VESA Adaptive-Sync)に対応したモニタにおける可変リフレッシュレート同期機能はG-Sync CompatibleもしくはAdaptive-Syncと呼びます。またドライバでそのモニタが正式にサポートされている場合はG-Sync Compatible認証取得済みと補足します。
「ViewSonic VX2882-4KP」は48Hz~150Hzの範囲内で「AMD FreeSync / NVIDIA G-Sync Compatible (VESA Adaptive-Sync、HDMI Variable Refresh Rate)」など可変リフレッシュレート同期に対応しています。2021年10月現在、GeForce Driver 496.13でG-Sync Compatible認証を取得していません。
ここ最近発売が相次いでいるHDMI2.1搭載4K/144HzゲーミングモニタではHDMI2.1規格の一部としてVRR同期が内包されているのでNVIDIA製GPU環境でもHDMI経由でG-Sync Compatibleを使用できたのですが、「ViewSonic VX2882-4KP」ではなぜか非対応と表示されました。(GeForce Driver 496.13を使用)
今のところHDMI経由だとNVIDIA製GPU環境には非対応ですが、AMD製GPU環境やCSゲーム機であればVRR同期を有効化できます。DisplayPortとHDMI共に可変リフレッシュレート同期機能の対応フレームレートは48Hz~150Hzの範囲内です。
「ViewSonic VX2882-4KP」で可変リフレッシュレート同期機能が正常に動作してリフレッシュレートが可変になると、OSDメニューから確認できるリフレッシュレートが、メニューを開いたタイミングのフレームレートに合わせて変わります。機能が正しく動作しているかどうかはここを見て確認してください。
以下、「ViewSonic VX2882-4KP」で可変リフレッシュレート同期機能を使用する手順について説明しますが、共通の確認事項として、OSD設定で「Adaptive-Sync」の項目をオンにしてください。
AMD FreeSyncの使い方
可変リフレッシュレート同期「AMD FreeSync」を有効化する手順について説明します。AMD製GPU搭載PCの場合はRadeon設定のウィンドウ右上にある歯車アイコンを選択、トップメニュータブからディスプレイを選択の手順で表示される「Radeon FreeSync」のスライドスイッチから機能を有効化します。
また上で紹介した参考記事中で解説しているように、AMD FreeSyncではテアリング解消とマウス遅延低減のどちらを優先するかで垂直同期の有無を各自で選択する必要があります。垂直同期は通常ゲーム内設定でON/OFFの切り替えが可能ですが、ドライバ側が上書きしてゲーム内からは切り替えられない場合があります。ゲーム内で設定して希望通りの動作にならない時はRadeon Settingsのゲームプロファイルもチェックしてください。
NVIDIA G-Sync Compatibleの使い方
可変リフレッシュレート同期「NVIDIA G-Sync Compatible」を有効化する手順について説明します。2019年1月15日以降の最新ドライバによってNVIDIA GeForce環境でもAdaptive-Syncが利用可能になりました。ドライバの更新に合わせてG-Sync Compatible認証を取得するモニタが増えています。
417.71以降の最新ドライバをインストールして、DisplayPortビデオ出力にAdaptive-Sync対応モニタを接続すると、G-Sync対応モニタを接続した時と同様にAdaptive-Syncを有効化するための設定が、NVIDIAコントロールパネル上の「G-Syncの設定」に表示されます。
「G-SYNC、G-SYNCとの互換性を有効化(Enable G-SYNC, G-SYNC Compatible)」のチェックボックスをチェックして、下のモニタアイコンに使用するモニタの名前が表示・選択されていることを確認し、適用をクリックすればNVIDIA GeForce環境でAdaptive-Syncを有効化できます。
なおG-Sync Compatible認証を取得していない一般のAMD FreeSync/VESA Adaptive-Sync対応モニタでも、互換性が検証されていないと注記が表示されますが、NVIDIA製GPU環境においてAdaptive-Syncを利用できます。
AMD FreeSync/NVIDIA G-Sync Compatibleの効果
可変リフレッシュレート同期機能「AMD FreeSync / NVIDIA G-Sync Compatible」の効果やメリットについて説明していきます。機能的にはほぼ同じなので以下まとめてFreeSyncと呼ぶことがあります。AMD FreeSync / NVIDIA G-Sync Compatibleの検証に際してはリプレイ機能があって同一シーンで検証がしやすいので「Project Cars 2」を使用しています。またフレームレートやテアリングの発生の様子を確認しやすいように、画面左上にはGPUフレームレートOSD、画面左端にはGPUフレームバッファで色の変わるカラーバーが表示されるようにしています。加えてモニタが対応していればモニタOSDのリフレッシュレート表示機能も使用します。
画面右上のフレームレートはGPUフレームバッファから算出されているので必ずしもリフレッシュレートとは一致しません。画面左端のカラーバーは連続するフレーム間、つまりn番目とn+1番目のフレームではそれぞれ異なる色になっているため、同時に複数色のカラーバーが表示されている画面はテアリングが発生していることを意味します。
まずは同期なし、垂直同期、FreeSync、FreeSync+垂直同期の違いを分かりやすく体感してもらうため、モニタリフレッシュレート60HzにおいてGPU側出力フレームレートが30FPS~60FPSの間で変動するようにして、「SONY DSC-RX100M5」の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影して、画面表示の様子を比較してみました。
同期なしでは盛大にテアリングが発生し、垂直同期ではスタッター(カクつき)が発生しているのがわかります。一方でFreeSyncと垂直同期の両方を有効にした場合はテアリングもスタッターも発生しません。ただし例外として動画で50秒以降のフレームレートが40FPSを下回るとAMD FreeSyncの対応フレームレート外となるためスタッターが発生しています。またFreeSyncのみを有効にして垂直同期は無効の場合、同期なしと比べて圧倒的にテアリングが減っているのがわかります。ただし対応フレームレート内であっても稀にテアリングが発生し、対応フレームレート外では同期なし同様にテアリングが発生します。
続いて144Hzリフレッシュレートにおいて、GPU側出力フレームレートが100FPS前後で変動するようにして、先ほど同様に同期なし、垂直同期、FreeSync、FreeSync+垂直同期の様子を16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影して比較してみました。
FreeSync有効であれば同期なしのテアリングや垂直同期のスタッターに悩まされることなく滑らかで綺麗な映像が表示できています。FreeSyncの60Hz/50FPS前後と144Hz/100FPS前後を比較すると当然ですが後者の方がコマ割りが増えるので16倍速スローモーションでもスムーズに見えます。
FreeSyncのみを有効した時に映像フレームレートが対応フレームレート範囲外になるとテアリングが発生しますが、リフレッシュレートを上回ってしまう場合については、Radeon設定のRadeon Chillの最大FPSに”リフレッシュレートから3,4FPSを引いた値”を指定してください。(グローバル設定だけでなくゲームタイトル別に設定が可能)
なおNVIDIA GeForce環境でAdaptive-Syncを利用する場合も、フレームレートがリフレッシュレートを超過するとテアリングが発生するので、テアリングを完全になくすには垂直同期を有効化する必要があります。もしくは垂直同期無効においてテアリングをなくすには、NVIDIAコントロールパネルの「Max Frame Rate」に”リフレッシュレートから3,4FPSを引いた値”を指定してください。(グローバル設定だけでなくゲームタイトル別に設定が可能)
これの設定以外にもRivaTunerやNvidia Profile Inspectorを使用してゲーム内フレームレートがモニタリフレッシュレートを上回らないように設定することも可能です。
下の比較はいずれもFreeSyncが有効になっているのでスタッターもなく滑らかですが、単純にFreeSyncだけを有効にすると対応フレームレートの上限となるリフレッシュレートを超えた時にテアリングが発生します。
リフレッシュレートが144Hz(フレームレートの上限が144FPS)の場合は120FPS~140FPSが上限になるようにフレームレートに制限をかければ、マウス操作を低遅延しつつ、テアリングの発生も最小限に抑えて快適なゲームプレイが可能です。
またPUBGやCS:GOのようなオンライン対戦FPSや格闘ゲームなど1,2フレームを争う競技性の高いPCゲームでは、表示遅延(入力遅延)が発生する垂直同期は嫌われる傾向にありますが、144Hzや240Hzといったハイリフレッシュレートモニタにおいて、同期機能を無効化した場合に発生するテアリングがどのように影響するのか検証してみました。
テアリングはモニタ表示更新中のフレームバッファの更新で発生しますが、目で見た時の違和感はn番目とn+1番目のフレームの絵の差に影響されます。コマ割りが細かくなる高フレームレートではn番目とn+1番目の絵の違いは当然、低フレームレートの場合よりも小さくなります。そのため50FPSでは画面の分断のように知覚できたテアリングは、200FPSのような高フレームレートでは細かいノイズのような形で知覚されます。
100FPSを超える高フレームレートでは大きな分断に見えるテアリングの代わりに、細かいノイズのように感じるテアリングが増えてきます。『細かいノイズの発生程度であれば高リフレッシュレートモニタのテアリングは実用上は大した問題ではなく、可変リフレッシュレート同期機能は不要である』という意見がありますが、高リフレッシュレートモニタのアドバンテージとして先に解説した「ゲーム内遠方に存在して動いているエネミーやオブジェクトの視認性」と合わせて考えると、このノイズの有無は遠方の細かいエネミーやオブジェクトの発見に影響します。なので高リフレッシュレートモニタを使用するのであれば可変リフレッシュレート同期機能はあったほうがいい、というのが管理人の意見です。
ViewSonic VX2882-4KPのMBR機能について
「ViewSonic VX2882-4KP」はモーションブラーリダクション機能に対応しています。モーションブラーリダクション機能についてはこちらの記事で簡単に紹介しているので、よくわからないという人は先に確認してみてください。
・ゲーミングモニタの選び方[2] モーションブラーリダクションについて
「ViewSonic VX2882-4KP」はモーションブラーリダクション機能に対応しており、設定メニューのタブ内に「1ms Mode」の名前で配置されています。リフレッシュレートが100Hz以上の時に選択可能となります。「1ms Mode」はVRR同期機能とは排他利用です。
MBR機能が有効になるとディスプレイ輝度は固定になることが多いですが、「ViewSonic VX2882-4KP」は通常時同様に輝度を0%~100%の範囲内で設定できます。
まずはモーションブラーリダクション機能「1ms Mode」が具体的にどのような動作をしているのか確認していきます。
「ViewSonic VX2882-4KP」の144HzリフレッシュレートでMBR機能が動作している時の様子を5760FPSスーパースローモーションムービーで撮影してみました。5760FPSで144Hzのモニタを撮影しているので、モニタの1フレームが更新されるまでを撮影した動画は40フレームに分割されます。
一般的なMBR機能では通常表示前後にバックライトを消灯した黒表示を挟むのですが、「ViewSonic VX2882-4KP」のMBR機能をハイスピードカメラで観測すると、水色がかった点灯(緑と青が点灯)と赤黒い消灯(赤だけが点灯)が交互に表示されているのが分かります。
視覚は時間平均されるので通常は画面が水色がかって見えたり、赤黒くみえたりすることはありませんが、「ViewSonic VX2882-4KP」のMBR機能は、このような性質があるため、まばたきするタイミングによっては、赤色もしくは水色の残像が見えることがあります。
画質に関する章のカラースペクトルで言及したように、「ViewSonic VX2882-4KP」にはKSF蛍光体(LG製Nano-IPSで有名)の技術を採用した液晶パネルが使用されています。
液晶パネルのバックライトにおいて青色LEDから白色光を生成する蛍光体は色々とあり、一般にその応答は高速なのですが、KSF蛍光体は赤色成分の応答が遅いので上のような表示になっています。(液晶パネルの応答とは別の現象で、バックライトの輝度が変化した時にだけ影響します)
『赤色成分の応答が遅い』という性質を分かりやすく確認するため、白黒赤緑青の5色の帯の静止画を表示して、KSF蛍光体の液晶パネルにMBR機能を有効にしました。下の静止画を単純に表示しているだけなので、液晶画素自体には一切変化がありません。
144Hzを5760FPSで撮影した1リフレッシュ、40フレームのうち変化が分かりやすいように一部を抜粋していますが、見ての通り、緑色と青色は1/5760単位で1~2フレーム以内に点灯と消灯が可能です。一方で赤色は緑・青色が点灯してからゆっくりと明るく、逆に消灯してからゆっくりと暗くなっています。
白色は赤緑青の三原色の合成なので、MBRの点灯タイミングは水色がかり、消灯タイミングは赤黒くなります。
またMBR機能では、残像感を低減させる効果が期待できる反面、バックライトを消灯するので時間平均の輝度が下がって画面が暗くなるというデメリットが指摘されます。
「ViewSonic VX2882-4KP」のMBR機能は明暗比率が1:2程度となっており、輝度設定を最大にした場合、120cd/m^2程度の明るさになります。160~200cd/m^2程度あると室内利用ならまず問題ないのですが、120cd/m^2程度だと室内照明によっては暗く感じるかもしれません。
「ViewSonic VX2882-4KP」に搭載された「1ms Mode」などモーションブラーリダクション機能は、人の目の錯覚が引き起こす残像やボヤケを解消する機能なので、写真や動画を見せて残像が抑制されている様子を実際に見せるというような解説は厳密には不可能です。
そのためレビューでは管理人が試用してみたインプレッションを伝えることくらいしかできないのですが、MBR機能を有効にすると動いている物体の輪郭がクッキリとして確かに視認しやすくなりました。下の写真は管理人が「UFO Test: Strobe Crosstalk」を見た時の感覚を表現したイメージ図ですが、MBR機能を有効にすると輪郭のボヤケがなくなってネイティブスピードでも倍速ハイスピード動画のスローモーションで輪郭を追っている時に近い感覚で追従して見ることができました。
ViewSonic VX2882-4KPのHDR表示やCSゲーム機対応について
最後に「ViewSonic VX2882-4KP」のHDR表示やCSゲーム機の対応(4Kエミュレートなど)についてチェックしていきます。HDR表示やCSゲーム機対応について | |
HDMI ver, ポート数 |
HDMI2.1 (24Gbps) ×2 |
HDR表示 | 対応 |
VRR同期 | 併用可能 |
カラーフォーマット | DP: 4K/150Hz/10bit RGB HDMI: 4K/150Hz/12bit RGB |
ピーク輝度(実測) | 281cd/m^2 |
輝度認証 | - |
ローカルディミング | 非対応 |
4Kエミュレート | 4Kネイティブ対応 |
PlayStation 5 | 4K/120FPS対応, YUV420 |
Xbox Series X/S | 4K/120FPS対応 |
HDR表示への対応やカラーフォーマットについて
「ViewSonic VX2882-4KP」はHDR表示に対応しています。VESAがPCモニタ向けに展開している輝度認証のVESA DisplayHDRは取得していません。「ViewSonic VX2882-4KP」では、カラー調整タブ内のHDR10が”自動”(標準設定)の状態でHDR信号を認識すると、ViewModeがグレーアウトして、HDRモードに切り替わります。HDRモードではOSDメニュー右下の解像度・リフレッシュレートの後にHDRと表示されます。
多くのHDR対応モニタではHDRモードにおいて輝度は自動調整になることが多いですが、「ViewSonic VX2882-4KP」ではSDR表示と同様に輝度を調整できます。なおHDRモードでは発色関連の設定はグレーアウトして自動設定となります。
加えてゲーミング関連の設定が配置されている画像調整タブ内のいくつかの設定項目もHDRモードではグレーアウトします。
「ViewSonic VX2882-4KP」はDisplayPort1.4 DSCに対応しているので、最新グラフィックボードを搭載したゲーミングPCと接続した場合、4K/150Hz/HDR表示において、RGB 10bitのカラーフォーマットに対応します。G-Sync Compatibleなど可変リフレッシュレート同期機能も併用が可能です。
また「ViewSonic VX2882-4KP」のHDMI2.1ビデオ入力の伝送レートはフルスペックの48Gbpsではなく24Gbpsですが、視覚損失のない非可逆圧縮機能 Display Stream Compression (DSC) 1.2aに対応しているので、最新グラフィックボードと接続した場合、4K/144Hz/HDR表示において、RGB 12bitのカラーフォーマットに対応します。G-Sync Compatibleなど可変リフレッシュレート同期機能も併用が可能です。
HDRについて簡単に説明すると、HDR(ハイダイナミックレンジ)というのは、RGBの光の三原色の映像情報に加えて、輝度(明るさ)の情報が備わった映像ソースのことです。
従来の表示機器や映像ソースでは10^3程度のダイナミックレンジしかありませんでしたが、HDRに対応することでダイナミックレンジが10^5程度と100倍近く拡張され、従来よりも細かい階調で明るさや暗さを表現できるようになり、「明るい場所は明るく、暗い場所は暗く」なるように画面の明るさを操作することで、白飛びや黒潰れをなくして高画質を実現しています。
HDRに関する説明は色々とあると思いますが、管理人は『明るい場所はより明るく、暗い場所はより暗く』と大雑把に理解しています。
「明るい場所は明るく、暗い場所は暗く」するということは必ずしも”見えやすく”なるわけではありません。というか暗い場所は暗くなるので必然、暗い部分は見えにくくなります。逆に明るい場所が明るくなったら見えやすくなるかというと、再現可能な輝度の領域が増すので、ディスプレイによる描画は現実に近づきますが、太陽を覗き込んだ時のように特に明るい場所の周辺は光で潰れて(目の調光機能的な問題で)見えにくくなります。もちろん明暗が分かれることで境界線がクッキリして見えやすくなる場合もあります。
一部のゲーミングモニタに暗所を明るく(白く)して見えやすくする機能があるように、HDR表示は見やすさには直結しないので、見やすさという意味で画質が良くなるのかというと、その点はケースバイケースです。SDRダイナミックレンジの範囲内で平滑化されていた時に比べて、暗い部分が強調されることを考えると見えにくさの方が体感しやすい気がします。
HDRは原理的にはモニタから見える映像を”リアル”に近づける機能です。ただし実際のところはモニタ個別の色調設定などの都合で鮮やかになり過ぎたり色味が変わったりするので、「実際の視覚と同じ」という意味でリアルかというと疑問符が付くのですが。「明るい場所は明るく、暗い場所は暗く」なるので立体感は増して、平面表示の中に奥行を感じやすくなるという点ではリアルな表示に近づきます。個人的にはHDR表示の効果はSDRに比べて、鮮やかになって、立体感が増すと感じています。
4Kモニタの広告をフルHDモニタで見る以上に、SDRモニタでHDRについて体感的に理解することは困難です。なのでHDRについては店頭など実機で体験して気に入れば購入するくらいが正直なところおすすめです。HDRについては正直に言って”百聞は一見に如かず”な機能です。SDRモニタ上で調べるよりもHDR表示の実機を見て気に入るかどうかが全てな機能だと思います。
HDR表示におけるディスプレイ輝度やローカルディミングについて
「ViewSonic VX2882-4KP」はVESAがPCモニタ向けに展開している輝度認証のVESA DisplayHDRは取得していません。VESAがMicrosoft Store上で無料アプリとして公開しているVESA DisplayHDR Compliance Testsから、「ViewSonic VX2882-4KP」のディスプレイ輝度の扱いが確認できました。(データの読み方については管理人も怪しいので参考までに)
近年のモニタにおいてHDRモードのディスプレイ輝度は高輝度領域の広さや高輝度表示の継続時間に依存するので、i1 Display Pro Plusを使用してHDR時の最大輝度を条件別で測定してみました。なお持続最大輝度は十数秒後で測定しているのでもう少し下がる可能性もあります。
「ViewSonic VX2882-4KP」は全体と10%部分、長時間の持続輝度のいずれも280cd/m^2の明るさで大きな変動はありませんでした。
HDMI2.1搭載4K/144Hz対応ゲーミングモニタの多くはVESA DisplayHDR 400以上の認証を取得しており、実際にHDR表示において400d/m^2以上の最大輝度を発揮するので、それらと比較すると「ViewSonic VX2882-4KP」はHDRの表現力に劣ります。
また他社製品の多くは1D型なのでローカルディミングとして微妙という事実もあるものの、「ViewSonic VX2882-4KP」はローカルディミングや可変バックライトに一切対応していないというところも気になりました。
CSゲーム機接続時の4KエミュレートやHDCP対応について
「ViewSonic VX2882-4KP」に搭載された4基のHDMIサブ入力のうち2基はHDMI2.1に対応しているので、PlayStation 5やXbox Series X/Sを組み合わせた場合、4K/120Hzの表示が可能です。またゲーム機が対応していればVRR同期機能も利用できます。PlayStation 5のHDMI2.1ビデオ出力の帯域は規格上限の48Gbpsではなく32Gbpsなので4K/120Hzにおけるカラーフォーマットは最大でYUV422となりますが、「ViewSonic VX2882-4KP」のビデオ入力の帯域上限が24Gbpsであり、PlayStation 5は圧縮伝送機能DSCに対応していないので、「ViewSonic VX2882-4KP」とPlayStation 5を組み合わせた時の4K/120HzのカラーフォーマットはYUV420になってしまいます。
ViewSonic VX2882-4KPのレビューまとめ
最後に「ViewSonic VX2882-4KP」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- 画面サイズ28インチでゲーミングモニタとしてはちょうどいいサイズ
- 発色や視野角に優れたIPS液晶パネルで、実測85% DCI-P3の広色域
- 液晶パネルは反射防止のアンチグレア
- IPS液晶としてはトップクラスに高速な応答速度
- ビデオ入力はDisplayPort1.4×2とHDMI2.1×2とUSB Type-Cの計5系統
- DP1.4とUSB Type-CはDSC機能によって4K/150Hz/10bit RGB/HDR/VRRに完全対応
- HDMI2.1は4K/150Hz/12bit RGB/HDR/VRRに完全対応
- 可変リフレッシュレート同期機能に対応(48FPS~150FPS)
- HDR表示では最大輝度が400cd/m^2以上
- HDMI2.1搭載なのでPS5やXbox SXを接続時は4K/120FPSやVRR同期に対応
- モニタ本体重量4.6kgかつVESAマウント対応でモニターアームを使用可能
- 税込み8.9万円と4K/144Hz+/HDMI2.1搭載モニタの中では安価な製品(2021年10月)
- VESAマウントが75×75で窪んだ位置にあるので、100×100互換のアームは干渉する
- PIP/PBPの音声出力に副入力は選択できない、PBPでアスペクト比が固定されない
- 標準で280cd/m^2程度の最大輝度は、色温度設定を変更すると240cd/m2程度に下がる
- NVIDIA製GPUとの互換性を示すG-Sync Compatible認証は未取得(機能自体は利用可能)
- HDMI接続時、NVIDIA製GPU環境ではVRR同期を使用できない(GeForce Driver 496.13)
- HDMI2.1の帯域が24Gbpsなので、PS5と組み合わせた時に4K/120HzでYUV420になる
- HDRでも最大輝度が280cd/m^2と低く、ローカルディミングにも非対応
「ViewSonic VX2882-4KP」は3840×2160の4K解像度ながらネイティブ150Hzの高速リフレッシュレートで動作し、DP1.4 DSCやHDMI2.1によって4K/144HzをフルRGBで表示しながら、可変リフレッシュレート同期機能やHDR表示にも対応するというハイエンドゲーマー待望の欲張りスペックを実現した製品です。
「ViewSonic VX2882-4KP」はゲーミングモニタではまだ採用の少ない次世代規格HDMI2.1対応ビデオ入力を搭載しており、PlayStation5やXbox Series X/Sを接続した場合、4K/120FPSの表示が可能、またゲーム機が対応していれば可変リフレッシュレート同期機能も使用できます。大型テレビを置けない私室で、PlayStation5やXbox Series X/Sを使いたい人には最適なモニタです。
「ViewSonic VX2882-4KP」は可変リフレッシュレート同期機能「AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync、HDMI Variable Refresh Rate)」に対応しています。VRR同期対応フレームレートとして48FPS~150FPSの幅広いフレームレートをカバーしており、60FPS前後しか維持できない最新の高画質な重いゲームから、100FPS以上を維持できる競技性の高い軽めなゲームまで、テアリングやスタッターのないクリアで滑らかな表示を実現します。
残念ながらNVIDIA製GPUとの互換性を証明するG-Sync Compatible認証は今のところ取得していませんが、NVIDIA製GPU環境でもVRR同期機能自体は利用できます。
各社から発売の相次いでいるHDMI2.1搭載4K/144Hzゲーミングモニタについては似たり寄ったりな形に収まっているのですが、「ViewSonic VX2882-4KP」は150Hzと少し高いリフレッシュレートに対応していたり、4K/150Hzに対応する5基のビデオ入力を搭載していたりと尖った長所もあるのですが、HDR表示の表現力が乏しい、PIP/PBPや最大輝度など細かい不具合あるといった気になる点も散見されます。
「ViewSonic VX2882-4KP」は税込み8.9万円程と、同等スペックの製品と比較して安価であるというメリットもあるので、今回のレビュー内容も参考にしながら総合的に検討してみてください。
以上、「ViewSonic VX2882-4KP」のレビューでした。
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VRR同期&HDR機能認証AMD FreeSync Premiumを取得し、4K解像度かつネイティブ150HzリフレッシュレートでHDMI2.1ビデオ入力も搭載する28インチIPS液晶ゲーミングモニタ「ViewSonic VX2882-4KP」をレビュー。
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) October 29, 2021
PlayStation5やXbox Series Xに最適なゲーミングモニタを徹底検証https://t.co/8ljVwVGnOs pic.twitter.com/QQRh2mCuqg
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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色々な人に相談したり
サイト等をみたりしてこのブログの方に行き着きました
VX2882-4KPが気になってますが
他にオススメな物があればいくつか知りたいです
使用としてはPS5に接続しFFやKH系のムービー物や
Apexの様なfpsで使用します