できる!本格水冷


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当サイトではPCケースのレビュー用サンプル提供などで水冷PCの組み立てレビューを行うこともあり、自作PCの本格水冷について簡単に予備知識の説明をしておきます。本格水冷を導入する上で必要な知識についてまとめていますし、最後には実際に本格水冷を導入する例も紹介しているので自作PCの本格水冷に興味のある方は参考にしてください。
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目次


1.本格水冷の導入費用っていくら?
2.本格水冷パーツの購入場所
3.
本格水冷であると便利なツール
4.本格水冷の基本
5.本格水冷のフィッティングについて
6.
本格水冷のチューブについて
7.本格水冷のポンプについて
8.本格水冷のパーツはどのメーカーがいいの?
9.本格水冷を実践してみる!(導入例)



本格水冷の導入費用っていくら?

CPU用の安い水冷キットを買って導入するだけなら2、3万円、GPU水冷ブロックやフィッティング等を買い足しても4、5万円です。しかしコスパを優先するならCPUはハイエンド空冷か簡易水冷を買って、「できる!水冷グラボ」みたいにGPUだけ水冷を導入するのが無難です。PCケースのレビュー用サンプル提供に伴い、実際に2つほど水冷PCを組んでみましたが水冷パーツだけで8~10万円ほど予算を使っています。
管理人の本音を言うと、ガチで水冷を導入する場合、水冷パーツだけでハイエンドPC組めるくらいの投資するつもりがないなら回れ右推奨。
管理人は試行錯誤しながらでいろいろ無駄も多かったので、初めての水冷でCPU冷やすだけなのに10諭吉は飛んで行った気が……。気づいたら次々に諭吉さんが消えていく水冷沼です。


本格水冷パーツの購入場所

管理人が使ったことがあるのは下の7か所(あと稀にebay)くらいです。
基本的にPPCSで全部手に入るので、急ぎで欲しい時に国内でちょろっと買えばOK。

国内
オリオスペック
クーリングラボ

海外
PPCS(北米最大手、取り扱いも多く国内よりも安いので一番おすすめ)
 <できる!個人輸入 本格水冷パーツの個人輸入 performance-pcs (PPCS) の使い方
EKWB公式通販
Bitspower公式通販
 <できる!個人輸入 ⑧ Bitspower公式通販から水冷パーツを直輸入
Aquatuning(PPCSで取り扱いの少ないパーツもある)

本格水冷であると便利なツール

本格水冷で必要(orあると便利なもの)なツールを列挙すると、「漏斗(細い部分の径が9~10mm)」、「六角レンチセット」、「モンキーレンチ」、「ラバーレンチ」、「SATAor4PINペリフェラル-ACアダプタ」となっており、これらは国内Amazonで購入可能です。
加えて注水用に「内径3/8インチ外径5/8インチのチューブ(1mあれば十分、透明推奨)」も水冷パーツショップで購入しておくのがおすすめです。
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国内Amazonなどで購入できるもの
国内か個人輸入で用意するもの
以上が今回の本格水冷導入で必要orあると便利な水冷パーツや工具になります。


本格水冷の基本

では本題の本格水冷のお話に入りましょう。本格水冷も簡易水冷も構造的には実は全く同じです。下の画像のように大体は下の5つの要素で構成されています。それぞれの役割も併記した通りです。
  • 冷媒液(クーラント)を動かす「ポンプ」
  • 冷媒液を貯めて経路中のエアを抜く「リザーバー」
  • CPUやGPUを冷やす「水冷ブロック」
  • クーラントの熱をエアに放熱する「ラジエーター」(&冷却ファン)
  • 上記のパーツを接続する「チューブ」と「フィッティング」
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主要なパーツは「ポンプ」「水冷ブロック」「リザーバー」「ラジエーター」の4つだけで、これらを1つのループに繋ぐために、「フィッティング」で調整して「チューブ」で接続しているだけです。
ちなみに簡易水冷の場合は「ポンプ」と「水冷ブロック」、「ラジエーター」と「リザーバー」がそれぞれ一体化しています。前者はわかると思いますが、後者については簡単に説明すると、下のラジエーターの模式図のようにラジエーターの一部(オレンジ色の部分)をエア溜まりとして使うことで経路内で気泡を含んだクーラントが延々と回り続けるのを防いでいます。
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簡易水冷の場合はリザーバーの貯水タンクや給水部としての機能は不要なので混入を避けられない微量のエアはラジエーターの一部に留めるという形を採用しています。
本格水冷の場合は基本的に経路内からエアは完全に抜ききります。エアが残った状態で水温(エアの温度)が上昇すると、エアは水に比べて温度上昇に対する体積膨張が大きいので経路内の圧力が上がり、アクリルのリザーバーや水冷ブロックが割れたり(最悪はペットボトル爆弾に)、チューブがすっぽ抜けてPCケース内水浸しの憂き目に合う可能性があるのでエア抜きや経路内圧力には細心の注意を払う必要があります。アクリルリザーバーがぶっ壊れるのはたいていエア抜き不足が原因です。初心者向けキットのぶっ壊れた報告は使い方が悪いケースが多いと思います。
簡易水冷の場合はエアを極力抜いて密閉しているので問題ありませんが、本格水冷の場合はエア抜きが杜撰だと内圧でヤバいことになります。
とはいえ圧力調整のためリザーバーの給水口をほんの少しだけ(空気が通れば問題ない)開けておくとか簡単な対処法もあるので対策さえわかっていればそこまで怯える必要もありません。リザーバーの上にaquacomputerの圧力弁などを付けておくと内圧問題解消には一番手っ取り早いです。
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本格水冷のフィッティングについて

本格水冷における経路の作り方はチューブやフィッティング以外のポンプや水冷ブロックなどの部品を水冷パーツとして次のようになります。
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チューブを使わずにフィッティングだけで水冷パーツを繋ぐ場合もありますが、基本は上に書いた通りです。
自作PCの本格水冷に使う水冷パーツのネジ穴は”G1/4”という規格(ネジの径とピッチ)で統一されています。ここ3,4年を見てもこの規格が完全に定着しているので、国内のオリオスペック、Coolinglabsや海外のPPCSなどで販売されているEKWB、Bitspower、XSPC、Alphacool、aquacomputerなど主要な水冷パーツブランドの出す水冷パーツは基本的に全て”G1/4”ネジのパーツと考えて問題ありません。
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ただし、G1/4の定められているのはネジの径とピッチだけで、ネジ部分の長さやOリング(フィッティングと水冷パーツ間での水漏れ防止のゴム)の嚙み合わせについてはメーカー独自仕様になっています。稀にネジ部分が長すぎて水冷パーツにフィッティングが固定できなかったり、Oリングの噛み合わせが悪くて水冷パーツとフィッティングの間から水が漏れる可能性があります。
初水冷など初心者の場合はポンプや水冷ブロックなどの水冷パーツとフィッティングのメーカーは揃えておくのが無難です。

フィッティングの種類もいくつか紹介しておきます。英語でEKWBが紹介しています
まずは下画像で左からストレートタイプの「エクステンダ」、「アダプタ」、そしてロータリー(回転機能付き)タイプの「アダプタ」、「エクステンド」になります。エクステンダは文字通り”延長”なので両端にはオスとメスのG1/4ネジが付いています。一方アダプタは両端にG1/4のオスもしくはメスが同種で付いています。下画像ではオスのアダプタですね。ロータリーは図の通りですが溝の前後で360度自由に回すことができます。
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エクステンダやアダプタは長さ調節のためEKWBでも6~50mmのバリエーションがあります。
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次は「アングル」というフィッティングです。基本的にロータリー機能付きのものがほとんどなので「ロータリーアングル」とも呼ばれます。90度、45度、30度、60度など角度を付けるフィッティングです。一番右のものは根元と中間で45度ずつ2段階のロータリーアングルになっています。
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最後が「分岐(スプリッタ)」です、分岐については「T分岐」や「Y分岐」などがあります。自作PCの本格水冷では並列ループを作るのは稀なので、この種の分岐フィッティングは排水口や温度センサーの取り付けに利用します。Bitspower製のロータリー付きT分岐は温度センサーの挿入にとても便利です。
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これらのフィッティングを組み合わせてチューブを繋ぎやすく調整するのがフィッティングの役割になっています。あとフィッティングのカラーについては各自お好みで問題ありませんが、ニッケルメッキは汚れに強いので特にこだわりがないのならシルバー(ニッケル)がおすすめです。
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本格水冷のチューブについて

続いてチューブについてですが折り曲げが可能なPVCやシリコン製のチューブ(ソフトチューブ)以外にも、熱加工しないと折り曲げのできないアクリルパイプや、最近ではガラスパイプ、ステンレスパイプ、銅パイプなど(ハードチューブ)があります。
結論から言うと初心者はソフトチューブ一択です。
ハードチューブの代表格であるアクリルパイプはソフトチューブよりもクーラントによる色付きや黄ばみの影響が出にくかったり長期的な運用面では利点も少なくないのですが、ヒートガンという強力なドライヤーを使って折り曲げ加工をしたり、ノギスや定規を使って正確に配管をする必要があったりとかなりハードルが高いです。配管の折り曲げが無理なのでソフトチューブに比べるとやはりメンテナンスも難しかったりします。
そのため繰り返しますが、初心者はソフトチューブ一択です。

ソフトチューブを繋ぐフィッティングはタケノコ型とコンプレッション型の2種類が代表格ですが、どちらかというと見栄えがいいのでコンプレッション型のほうが主流のような気がします。実はタケノコ(l固定具必須)のほうが信頼性は高いです。ガスのチューブ配管とかでも使われていますし。
ただ自作PC用の水冷配管についてはコンプレッションでも問題ありませんし、管理人もコンプレッションしか使っていないのでチューブ用のフィッティングにはコンプレッション型をお勧めしています。コンプレッション型フィッティングについてはEKWBが公式に紹介しており、チューブの固定は次のような構造になっています。
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注:現行のEKWB製コンプレッションは手締め部分が小さいので固定の際は六角レンチが必要です。
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コンプレッション型フィッテイングの固定方法を見てもわかるようにチューブは内側と外側からフィッティングで締め付ける形で固定されているため、使用するチューブの内径と外径に合わせてフィッティングを選択する必要があります。
内径と外径の組み合わせについては「内径3/8インチ外径1/2インチ」もしくは「内径3/8インチ外径5/8インチ」のものが初心者にはおすすめです。
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チューブの内径と外径はチューブの取り回しに直結します。加えてチューブ壁の厚さ(外径と内径の差)はチューブを曲げた時の折れ難さに影響してきます。例えば上で書いた「内径3/8インチ外径1/2インチ」と「内径3/8インチ外径5/8インチ」の2本のチューブの断面は次のようになっています。
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この2つを似たような曲率で180度に曲げてやると、チューブ壁の薄い「内径3/8インチ外径1/2インチ」はチューブが潰れて(折れて)しまいますが、チューブ壁の厚い「内径3/8インチ外径5/8インチ」は折れずに曲がります。潰れた(折れた)部分は当然水が流れなくなるので、良くてポンプの故障、最悪はチューブがフィッティングから外れたり、アクリルパーツが割れてクーラントがブシャーと。
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「内径3/8インチ外径1/2インチ」もしくは「内径3/8インチ外径5/8インチ」の選び方ですが、「内径3/8インチ外径5/8インチ」は折れにくい分、チューブ壁が厚く固いですし外径が大きくチューブが太いので「内径3/8インチ外径1/2インチ」よりも若干取り扱いづらいです。ただ太いチューブは見た目で迫力があり水冷PCらしさは出ます。なので3/4インチとかの極太チューブも地味に人気があるそうな。

上の2種類をおすすめしましたが、管理人的にはフィッティングを利用してチューブは可能な限り直線か緩い弧を描く程度に配管するよう心掛けて「内径3/8インチ外径1/2インチ」を使うのがいいと思います。実際に管理人はフルタワーのメイン機とNcaseM1で組んだITXのサブ機の両方で「内径3/8インチ外径1/2インチ」のチューブを使っています。

チューブの内径と外径が決まれば対応するフィッティングは検索で簡単に絞れるようになります。例えばPPCSで販売されているEKWB製の「内径3/8インチ外径1/2インチ」対応フィッティングはこちら。PPCSはサイドバーの絞り込みチェックボックスを使えば簡単に希望の商品を抽出できるので便利です。
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たぶん組んでいてフィッティングが足りなくて2,3度買い足す羽目になると思いますが本格水冷とはそういうものなので諦めてください。それか事前にフィッティングを多めに買っておくとか……。こうして水冷沼にドプドプ使っていくのだ。

チューブの内径と外径を間違えたりコンプレッションフィッティングの内径と外径を間違えて通販で注文するのは水冷自作erの初心者あるあるなので十分に注意してください。



本格水冷のポンプについて

本格水冷の心臓部とも言えるポンプですが、自作PCの本格水冷では基本的にLaingの「D5」か「DDC (3.2)」と呼ばれるポンプのどちらかを使うのが鉄板です。初心者はまずこの2つのどちらかを使いましょう。

ポンプについて説明するためまずはD5ポンプを例に使います。
これまでは「ポンプ」と一言で書いていましたが、水冷パーツとしてのポンプは「ポンプ本体」と「ポンプトップ」が別々に販売されている場合があります。
Laingの「D5」か「DDC (3.2)」などポンプ本体は本格水冷専用のポンプではなく熱帯魚水槽などの水路一般に利用されるポンプなので、各環境で利用するチューブやフィッティングと整合するための「ポンプトップ」が必要になるからです。上で書いたように自作PCの本格水冷用のポンプトップはG1/4ネジを使えるようにEKWBやXSPCなど各社がデザインしています。
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D5やDDCのポンプ本体に本格水冷用のポンプトップを取り付けることで、本格水冷に適したポンプになります。
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Laingの「D5」か「DDC (3.2)」ポンプ本体を使ったOEM品として、EKWB、Bitspower、XSPCなどが独自のポンプトップやリザーバー一体型トップを装着した本格水冷用ポンプを販売していると考えればOKです。「D5」や「DDC (3.2)」であればポンプ本体自体は共通なので当然、ポンプトップは各社で互換性があります。

次に「D5」と「DDC (3.2)」の違いについてですが、PCの本格水冷用途であれば流量や揚程といったポンプ性能についてはどちらも十分な性能があるので無視しても問題ありません。
速度調整については最近販売されているものであれば「D5」と「DDC (3.2)」ともにPWM速度調整に対応しており、自作PCマザーボードのファン端子に接続することでPWM調整可能です。D5については速度調整用の目盛りが付いているのでこれを回すことで5段階(実際は無段階)の速度調整が可能になっています。物理スイッチで速度調整を行いたいのであればD5ポンプのほうがいいと思います。
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ポンプの大きさや形状についてはD5ポンプは画像のように円柱型ですがDDCポンプは直方体になっており、D5ポンプはDDCポンプよりも一回り大きいので小型PCで組みたい場合はDDCポンプのほうがいいと思います。
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ポンプノイズについてはDDCよりもD5のほうが静かと評価する人が多いようです。ただD5もDDCも100%でフル回転させればどちらもポンプノイズは聞こえますし、DDCポンプであっても60~70%程度の回転であれば静かに運用することが可能です。

D5とDDCの両ポンプの違いは上のように考えればいいので、ポンプの設置スペースを十分に取ることができるならD5ポンプ、ITX機などコンパクトPCでD5ポンプの設置が難しい場合はDDCのように使い分けるといいと思います。初水冷ならばATXマザボ対応のフルタワーかミドルタワーで水冷を導入するはずなので個人的にはD5ポンプを使うのがおすすめです。

あと簡易水冷のポンプ一体型水冷ブロックを基準に考えると勘違いしやすいですが、本格水冷用のD5ポンプやDDCポンプは結構大きくて成人男性の握りこぶしくらいのサイズがありますので注意してください。
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本格水冷のパーツはどのメーカーがいいの?

グラボの水冷ブロックは基本的にEKWBが独走状態でCPUブロックは各社性能的にも大差ないので、わからない人はとりあえずEKWBで揃えておくのが無難です。グラボを水冷化する時は水冷ブロックに合わせて対応するグラボを用意するほうが手っ取り早いと思います。
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ポンプとリザーバーについては設置スペースに問題なければ「EK-XRES 100 Revo D5 PWM」がおすすめです。専用の「垂直ホルダー」や「水平ホルダー」を使うことで120mmファンに簡単に固定できるのでPCケースのフロントやボトムのファンを使ってポンプとリザーバーが簡単にPCケース内に固定できます。(後日これを使って水冷PCのレビュー予定です。)
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あとラジエーターについては国内で取り扱いの多い「Black Ice」よりも「Alphacool NexXxoS Full Copper シリーズ」がおすすめです。
「ファンの固定に国内ホームセンターで簡単に手に入るM3サイズのネジを採用」、「ラジエーターの横幅は120mmや140mmのファンとほぼ同じ」、「ラジエーターの厚さのバリエーションも豊富」など自作PC用の水冷ラジエーターとしては非常に使い勝手のいいモデルになっています。
本格水冷用ラジエーターは「Alphacool NexXxoS Full Copper」シリーズがおすすめDSC04383

あとクイックディスコネクトのKoolance QD3シリーズもおすすめです。
Koolance製クイックディスコネクト「QD3シリーズ」の紹介DSC03443

以上、自作PCに本格水冷を導入するための予備知識でした。


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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)



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