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KingstonのゲーミングブランドHyperXよりリリースされたアドレッサブルLEDイルミネーションを搭載するDDR4メモリ「HyperX Predator RGB」シリーズから、Intel XMP2.0によるDDR4-2933対応で8GB*4=32GBのメモリキット「HyperX Predator RGB DDR4メモリ HX429C15PB3AK4/32」のレビュー用サンプルをメーカーよりご提供いただけたのでレビューしていきます。HyperX Predator RGBは「HyperX赤外線同期テクノロジー(HyperX’s Infrared Sync technology)」という独自機能によって、ソフトウェア制御がない状態で時間が経過しても、全てのメモリモジュールの発光タイミングが綺麗に一致するので、イルミネーション搭載メモリの入門におすすめなメモリです。
製品公式ページ:https://www.hyperxgaming.com/jp/memory/predator-ddr4
データシート:https://www.kingston.com/dataSheets/HX429C15PB3A_8.pdf
HyperX Predator RGB レビュー目次
1.HyperX Predator RGBの外観
2.HyperX Predator RGBのLEDイルミネーション
3.メモリOC検証機材、メモリOCの基本と手順
4.HyperX Predator RGBのメモリOCを試す
5.HyperX Predator RGBのレビューまとめ
HyperX Predator RGBの外観
まず最初に「HyperX Predator RGB DDR4メモリ」の外観をチェックしていきます。「HyperX Predator RGB」のパッケージは、LEDイルミネーション非搭載で高選別OCモデルもラインナップされている標準モデルとほぼ同じデザインですが、メモリの一部が見える窓の左隣にLEDイルミネーション搭載を示すRGBロゴが描かれています。
パッケージを開けると中にはプラスチック製スペーサーに2枚ずつメモリが収められています。HyperX Predator RGB HX429C15PB3AK4/32は8GB×4のモデルなので4枚のメモリが入っています。
「HyperX Predator RGB」には、マットなグレーのベース上にブランドロゴの一部である”X”字を模した艶のあるブラックパターンが描かれたデザインのアルミニウム製メモリヒートシンクが装着されています。
真上から見ると中央にLEDイルミネーションの発光を拡散する半透明ディフューザーがあり、その中央にはHyperXのブランドロゴが描かれています。側面は凝ったデザインですが、PC組み込み後にメモリの顔になる上側は万人受けを狙えるシンプルなデザインです。
LEDイルミネーション非搭載でXMP4000MHz以上のモデルもラインナップされるHyperX Predator無印モデルと比較すると側面はほぼ同じデザインで、上側に少し覗いて見えるLEDイルミネーション用のディフューザーの存在だけが異なっています。
上から見てもLEDイルミネーションが発光していない状態では、いずれも中央にブランドロゴが描かれている以外はフラットなデザインなので似通っています。
「HyperX Predator RGB」をHyperX Predator無印やHyperX SavageやHyperX Furyと比較してみると、「HyperX Predator RGB」のメモリの背の高さは42.2mmなのでHyperX Predator無印とほぼ同じですが、ロープロファイルモデルのHyperX SavageやHyperX Furyに比べてかなり高いのがわかります。
「HyperX Predator RGB」の比較対象にG.Skill TridentZも加えて、実際にマザーボードメモリスロットに装着して高さを比較するとこんな感じになります。
「HyperX Predator RGB」の4枚組モデルをCPUソケット右側にメモリスロットが4基あるマザーボードに取り付けるとこんな感じになります。
HyperX Predator RGBのLEDイルミネーション
「HyperX Predator RGB DDR4メモリ」のLEDイルミネーションをチェックしていきます。「HyperX Predator RGB」のメモリモジュール上に実装されたLEDイルミネーションは5つのアドレスに分割されており、個別にライティング制御が可能なアドレッサブルLEDイルミネーションになっています。
「HyperX Predator RGB」はソフトウェア制御を行わなくても、アドレッサブルな発光パターンでLEDイルミネーションが点灯します。標準発光パターンではCPUソケットを左、メモリスロットを右として、各メモリで下から上に7色に変化していきます。
他社製品では標準のアドレッサブルな発光パターンは時間の経過とともに各メモリモジュール間で色の遷移のタイミングがズレてくるのですが、HyperX Predator RGBは「HyperX赤外線同期テクノロジー(HyperX’s Infrared Sync technology)」という独自機能によって、ソフトウェア制御がない状態で時間が経過しても、全てのメモリモジュールの発光タイミングが綺麗に一致します。
なおIntel X299プラットフォームやAMD X399プラットフォームのマザーボードのように、メモリスロットがCPUソケットの左右に分かれている場合は、右側だけや左側だけであれば同期がとれるのですが、左右に分かれているメモリ同士は同期がとれず、時間の経過とともに発光にズレが生じます。
「HyperX Predator RGB」にはLEDイルミネーションを制御するための専用ソフトウェアはメーカーからは提供されておらず、代わりにマザーボードの国内主要4社のうちASUS、GIGABYTE、MSI製のマザーボードの一部が対応するライティング制御機能による操作に対応しています。ASUSではASUS AURA Sync、GIGABYTEではGIGABYTE RGB Fusion、MSIではMSI Mystic Lightという名前でライティング制御機能がリリースされています。ASRock Polychlome RGB Syncへの対応については未定となっています。
ASUS/GIGABYTE/MSIの3社のマザーボードを使用した検証機材に「HyperX Predator RGB」を組み込んでみたところ、公式にサポートが公表されているASUS AURA Sync(ver 1.06.29以降)、GIGABYTE RGB Fusion(ver B18.0424.1以降)、MSI Mystic Lightの3つのソフトウェアにおいて、「HyperX Predator RGB」のライティング制御が可能であることが確認できました。
ただしASUS AURA Sync(ver1.06.29)についてはAM4 X470環境ではメモリの同期設定が表示されず設定ができませんでした。MSI Mystic LightはAM4 X470環境で正常に動作しているのでASUS AURA Syncのソフトウェア側の問題だと思います。
設定可能な発光パターンはソフトウェアごとに若干異なりますが、各アドレスに対して個別に発光カラーが設定可能なのは、今のところASUS AURA Syncのみでした。
「ASUS AURA Sync」による設定を参考にして、「HyperX Predator RGB」のライティング制御について簡単に説明していきます。
「ASUS AURA Sync」には複数の発光パターンが用意されていますが、「HyperX Predator RGB」で選択可能な発光パターンは「Static(常に点灯)」「Breathing(ゆっくり点滅)」「カラーサイクル」の3つのみとなっており、それ以外の発光パターンを選択しても標準発光パターンで動作します。(ASUS AURA Syncでは「HyperX Predator RGB」に対応したバージョンが出たばかりなので今後のアップデートでその他の発光パターンにも対応するかもしれません)
標準発光パターンは上で説明した通り、全てのメモリモジュールが同期して、下から上へと七色に発光カラーが変化するアドレッサブルな発光パターンになっています。
「Static(常に点灯)」と「Breathing(ゆっくり点滅)」については、名前の通り選択した発光カラーに固定して発光、もしくはゆっくり明滅させることができます。
プルダウンメニューの「単色」では同期設定になっている全てのイルミネーションを同じ発光カラーにします。「個別設定」では、LEDパーツや各アドレスに対して個別に発光カラーを指定できます。
カラーサイクル&スライダーからは発光カラーおよび輝度を選択でき、その左にあるアイコンから発光カラーを設定する部位を選択できます。アイコン一覧も下にあるボタンを押すと現在編集している部位に設定されているカラーに全ての部位を同期させることができます。
「HyperX Predator RGB」ではメモリモジュール上の発光部位は5分割されていますが、各メモリの同アドレスは設定が共有されるので、メモリ枚数に関わらず、メモリの上から下にアドレス1~アドレス5までそれぞれに発光カラーを設定することが可能です。
「カラーサイクル」ではメモリのLEDイルミネーションが同期して特定の発光カラーで点灯しながら緩やかに別の発光カラーへと遷移していきます。
メモリOC検証機材、メモリOCの基本と手順
ここからはメモリのオーバークロックを行いますが、その前に検証機材の紹介と、メモリOCの基本・手順についての説明を行います。HyperX Predator RGB DDR4メモリのメモリOCを行う環境としては、Core i7 8086Kなどで構成されるIntel環境とRyzen 7 2700Xなどで構成されているAMD環境を用意しました。
テストベンチ機の構成 | ||
OS | Windows10 Home 64bit | |
CPU |
Intel Core i7 8086K 殻割り&クマメタル化 (レビュー) |
AMD Ryzen 7 2700X (レビュー) |
M/B | ASUS ROG MAXIMUS X HERO(Wi-Fi AC) (レビュー) |
ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi) (レビュー) |
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36 (レビュー) |
Corsair H150i PRO RGB (レビュー) |
メインメモリ | HyperX Predator RGB HX429C15PB3AK4/32 DDR4 8GB*4=32GB |
|
グラフィックボード |
MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC ファンレス (レビュー) |
|
システム ストレージ |
Samsung 850 PRO 256GB (レビュー) |
WD Blue 3D NAND SATA SSD 500GB (レビュー) |
電源ユニット |
Corsair HX1200i (レビュー) |
|
PCケース/ ベンチ板 |
STREACOM BC1 (レビュー) |
実際にメモリのオーバークロックを行う前にメモリのOCについても紹介しておきます。
今回はASRock Z270 SuperCarrierの設定項目に合わせて紹介しますが、マザーボードメーカーによってレイアウトこそ多少異なるものの、メモリOC設定の方法については基本は共通なのでここの説明を一通り読めば予備知識としては十分だと思います。プラットフォーム別でも、18年最新のIntel第8世代CoffeeLake-S CPUに対応するIntel 300シリーズマザーボードであればほぼ全ての機種で似たような設定が可能です。またIntel Skylake-X&X299マザーボード環境、AMD Ryzen&AM4マザーボード環境、AMD Ryzen Threadripper&X399マザーボード環境でもメモリOCの手順はほぼ同じです。
まず大前提としてオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。最近のPCパーツは常識的な範囲内であればOCしても壊れることは滅多にないはずですが、データの破損は依然としてよくあることなので大切なデータは予め隔離するかバックアップをとってください。
CPUやGPUのオーバークロックと違ってメモリには負荷テストで落ちる(BSODやフリーズ)わけでもないのに、長期的に見てランダムにソフトウェアでエラーが発生するなどといったケースもあり、実用を兼ねるOCとしては比較的難易度が高いです。
最低限の安定性検証は必要なのでメモリOC時のストレステストについて、管理人は経験的にHCI memtestで200%カバーを確認後、動画のエンコードテストを30~60分で安定動作と判断しています。記事内で行ったメモリOCについては特に記載がなければ上記の検証クリアで安定動作としています。
また18年に入ってから新たにリリースされた「Ram Test(レビュー)」という海外のメモリ安定性検証ソフトが軽量かつ使いやすく、1000円程の有料ソフトですがおすすめです。
その他にも負荷テストにはPrime95やOCCTなどかなり重いストレステストを使うユーザーも多いようですが、CPUにしろメモリにしろ専用負荷ソフトを使ってOCの安定性検証をしていても落ちるときは落ちるので、ある程度のところで見切りをつけて、日頃のバックアップを心掛け、落ちた時は設定を緩めるか電圧を盛るほうが手っ取り早いというのが管理人の持論です。
メモリOCに伴うBSODやフリーズ以外の細かいトラブルについては次の記事でまとめたりコメント欄を情報交換に開放しているので活用してください。
・DDR4メモリのオーバークロックで発症した不具合と解決策について
CPUの倍率変更OCと違って、メモリOCの設定段階では正常にPOSTできずBIOSにすらたどり着けないケースもあり、そういった場合はCMOSクリア(BIOS設定の初期化)が必要になる場合があります。CMOSクリアの方法はオンボードやリアI/Oに実装されたスイッチを使用したり、オンボードジャンパーピンを使用したりとマザーボードによって方法が異なります。メモリOCを実践する前に予めCMOSクリアの方法をチェックしておいてください。
前置きはこのあたりにして、メモリのオーバークロックに関するBIOSの設定について、Core i7 7700KなどKabyLake-S CPUに対応するZ270チップセット搭載マザーボードのASRock Z270 SuperCarrierを例に詳しく紹介していきます。
メモリの性能は簡単に言うと『動作クロックが高く』『タイミングが小さい』ほど性能が高くなります。
そのためメモリOCを手動で行う手順を簡単にすると、「1.電圧を上げて動作可能なクロックを探し」、「2.そのクロックにおいて正常に動作する最小のタイミングを探る」という2つの手順を繰り返すことになります。最初のメモリタイミング設定については「16-18-18-36」とか「18-18-18-38」とか「20-20-20-40」とか、何でもいいのでてきとうに決め打ちするか、マザーボードの自動設定にお任せしてしまいます。動いたらラッキーでタイミングを小さく刻み、動かなかったらタイミングを緩めてまたチャレンジする、という具合で特定のメモリ周波数についてチェックしていきます。
メモリのOCでは、G.SkillやCorsairなどからOCプロファイルを収録した選別済みOCメモリという便利なものが販売されています。XMPなどOCプロファイルによるOC対応がうたわれているOCメモリでは、上の手順によるメモリのオーバークロック、つまりOC耐性の選別をメモリメーカー側がすでに行って、その個体(メモリモジュール)について動作確認をしています。IntelプラットフォームではこういったOCプロファイルのことを「インテル エクストリーム・メモリー・プロファイル(XMP)」と呼んでいます。XMPはIntelが策定したものなので、厳密にいうとAMD環境には非対応ですが、XMPプロファイルに収録されたメモリ周波数とタイミングの設定値からAMD環境に合わせたメモリOCプロファイルを自動生成する機能として、「ASUS D.O.C.P」や「MSI A-XMP」などが各社マザーボードのBIOS上に機能として用意されており、XMPがほぼデファクトスタンダード的扱いになっているので、OCプロファイルによるメモリOCを”XMPでOCする”とまとめて表現してしまう場合もあります。
ともあれOCプロファイルによるメモリOCではメーカーが動作確認を行ったメモリモジュールでOCプロファイルを適用するだけなので、メーカーが確認済みもしくは類似の環境(主にQVLに記載のあるマザーボード)が用意できれば簡単にメモリをオーバークロックができます。
以上を念頭にBIOS(UEFI)メニューから行う具体的なメモリOCのBIOS設定を見ていきます。なおOC設定を詰めていく時はWindowsとBIOSを頻繁に行き来することになるので、BIOS(UEFI)への再起動ショートカットを作っておくと非常に便利です。BIOS(UEFI)への再起動ショートカットの作り方も別の記事で紹介しています。
ASRock Z270 SuperCarrierでは「OCツール - DRAM設定」の設定ページ内にある「設定の読み込み」で「自動(カスタム設定)」と「XMP」の2種類からメモリの動作クロックとタイミングを設定できます。
「XMP」は上で紹介したように各メモリメーカーが一定環境で動作確認を行ったメモリのオーバークロックプロファイルがメモリに収録されており、その値が適用されて自動的にメモリ周波数とメモリタイミングがOCされます。XMPを使用しない場合は、「DRAM Frequency(メモリ周波数)」の項目とAutoにすると、DDR4メモリごとにSPDプロファイルに設定された2133MHz~2666MHzの動作周波数とタイミングによる定格動作となります。ASRock Z270 SuperCarrierなどASRock製のマザーボードでは「自動」モードが事実上のカスタム設定モードになっており、「DRAM Frequency(メモリ周波数)」でプルダウンメニューから動作周波数を選択できます。
XMP対応OCメモリの仕様値ではメモリ周波数に加えて「16-18-18-36」のようなメモリタイミングについての表記に見え覚えのある読者も多いと思います。このワンセットになった数字はファーストタイミングもしくはプライマリタイミングとも呼ばれ、Intel/AMD環境毎やマザーボードベンダー毎に表記がやや異なるものの、前から順に「CAS Latency (tCL」)」、「RAS to CAS (tRCD)」、「RAS Precharge (tRP)」、「RAS Active Time (tRAS)」となっています。ユーザーが各自でメモリタイミングを手動設定する場合は上の4つに加えて「Reflash Cycle Time (tRFC)」と「Command Rate:1 or 2」の計6つについて設定し、残りはマザーボードの自動設定にお任せしてしまうのが、比較的簡単でおすすめな設定方法です。
メモリのタイミングには他にも多くの項目がありますが、基本的には上の6つを適切に設定すればOKです。XMPの場合は自動的に動作確認済みのタイミングが適用されますし、マニュアル設定の場合でも設定値Auto(自動)であればマザーボード側がメモリ周波数に合わせて適当に設定を行ってくれます。
最初に書いたようにタイミングは小さい方が性能が高くなります。ただタイミングの設定は少し難しいのでXMPかAuto設定にお任せしてしまうのが手っ取り早くておすすめです。
なおメモリクロックもCPUコアクロック同様にBCLK(ベースクロック、FSBなどとも)に対する倍率なので、BCLKを変更することでBCLK:100MHz時の4133MHz上限から、例えばBCLK:120MHzにすると上限5000MHzに引き上げられます。ただしBCLKを使ったOCはかなり難易度が高いので基本的に100MHz固定が推奨です。
DDR4メモリでメモリ周波数をOCする場合2133MHz~2933MHzあたりまでであれば、DRAM電圧は定格の1.200Vで問題なく動作することが多いですが、メモリ周波数3000MHz以上を狙う場合はDRAM電圧を1.350V以上まで昇圧する必要があります。マザーボードによってはメモリ周波数に応じて自動で設定してくれるものもありますが、手動設定のほうが確実なので予め設定しておくのがおすすめです。
なおDRAM電圧を盛ると当然発熱は大きくなりますが、1.350~1.380V程度であればCPUソケット周辺に直接風の当たらない簡易水冷環境であってもOCメモリに設置されたヒートシンクによるパッシブ冷却で基本的に問題ありません。メモリ周波数4000MHz以上になると1.400V以上が要求され、OC自体も難しくなり発熱も大きくなってくるので、IntelプラットフォームのCoffeeLake-S(Z370)、KabyLake-S(Z270)、Skylake-X(X299)の環境では3200~3600MHz、AMDプラットフォームのRyzen(X470/X370)やRyzen Threadripper(X399)の環境では2933~3200MHzを狙うのが難易度的には比較的簡単なのでおすすめです。
説明の順番が前後してしまいましたが、初めてメモリのOCをする場合は、メモリ周波数やタイミングを変更する前に、HWinfoなどのモニタリングソフトを使用してBIOSで指定した電圧設定が正常に反映されているか確認しておくとメモリOCに失敗した時に原因切り分けに役立ちます。
Intel CPUのKabyLake-S(Core i7 7700Kなど)やBroadwell-E(Core i7 6950Xなど)でDDR4メモリの動作クロックを3000MHz以上にOCする場合はDRAM電圧だけでなく「電圧設定」の項目内にある「VCCSA」も適度に盛ってやるとメモリOCの動作が安定します。またAMD Ryzen CPU環境の場合は「SOC電圧」を昇圧します。
設定の目安としてはIntel環境の「VCCSA」なら1.200~1.250V程度、AMD環境の「SOC電圧」なら1.100~1.200V程度を狙うといいようです。一部のマザーボードではメモリ周波数で高い数値を選んだ時やXMP適用時にこれらの電圧を自動的に昇圧してくれるものもありますが、メモリのOCを行うときはメモリ電圧同様に手動で設定しておくのがおすすめです。
また一部のマザーボードではメモリOCに伴いPCI-E拡張デバイスの検出不可やUSB機器同士の干渉といった不具合が生じる場合があります。グラフィックボードを検出できないと画面が暗転したまま表示できなくなるので非常に困ります。この不具合が発生した場合、CoffeeLake-SやSkylake-XなどIntel環境では「VCCIO」や「PCH Core Voltage」(マザーボードメーカーごとに表記が若干異なる)を1.150~1.200V程度に盛ると安定します。
検証機材のASRock Z270 SuperCarrierでもメモリ周波数を3000MHz以上にOCすると、PCI拡張デバイスの認識に不具合が発生しましたが、「VCCIO」を適当に盛ってやることでメモリをOCしても正常に動作しました。
メモリのオーバークロックの方法や基礎知識については以上となります。BIOS上のOC設定のレイアウトについてはマザーボードベンダーが決まればほぼ共通です。下記のレビュー記事一覧から自分が使っているのと同じメーカーのマザーボードのレビュー記事を探して、OC設定の章を参考にしてみてください。
・CoffeeLake-S対応Z370マザーボードのレビュー記事一覧へ
・Intel Core-X対応X299マザーボードのレビュー記事一覧
・第2世代Ryzen対応X470チップセット搭載AM4マザーボードのレビュー記事一覧
・X399チップセット搭載Socket TR4マザーボードのレビュー記事一覧へ
HyperX Predator RGBのメモリOCを試す
HyperX Predator RGB DDR4メモリはIntel XMP 2.0というメモリに収録されたプロファイルを使用したメモリOCに対応しているので、XMPプロファイルを使用した簡単にメモリのオーバークロックや、手動設定によるさらに高メモリ周波数なメモリOCを実践してみます。XMP2933MHz対応の8GB*4=32GBメモリキット「HyperX Predator RGB HX429C15PB3AK4/32」についてはHynix M-Dieの1Rankメモリモジュールが採用されていました。(メモリモジュールについてはロットやバージョンで変更される可能性があります。)
まずはIntel Core i7 8086K&Z370環境でXMPプロファイルを使用した「HyperX Predator RGB HX429C15PB3AK4/32」のメモリOCを実践してみます。
なおXMPによるオーバークロックについてはあくまでメーカーによる”動作確認済み”の選別品であって”動作保証ではない”ので注意してください。マザーボードやCPUとの相性によってはXMPプロファイル通りに動作しない場合もあります。「HyperX Predator RGB」の製品公式ページでは組み合わせ使用が推奨されるマザーボードのリストが掲載されていませんが、またマザーボードの公式サイトでも動作確認メモリのCVLが公開されているので、OCメモリの購入前にはそちらも合わせて参考にしてください。
「HyperX Predator RGB HX429C15PB3AK4/32」をCore i7 8086KとASUS ROG MAXIMUS X HEROの環境でXMPプロファイルを使用してメモリのオーバークロックを行ったところ、メモリ周波数2933MHz、メモリタイミング15-17-17-39-CR2で安定動作しました
「HyperX Predator RGB HX429C15PB3AK4/32」に収録されているXMPプロファイルのOC設定はメモリ周波数もさほど高くないので、さらに上を目指して手動設定でOCしてみました。
まずは下のようにメモリ周波数3200MHz、メモリタイミング16-18-18-38-CR1にBIOSから設定しました。
「HyperX Predator RGB HX429C15PB3AK4/32」をCore i7 8086KとASUS ROG MAXIMUS X HEROの環境で手動設定によってメモリのオーバークロックを行ったところ、メモリ周波数3200MHz、メモリタイミング16-18-18-38-CR1で安定動作しました。
また下のようにメモリ周波数3600MHz、メモリタイミング16-19-19-39-CR2にBIOSから設定しました。
「HyperX Predator RGB HX429C15PB3AK4/32」をCore i7 8086KとASUS ROG MAXIMUS X HEROの環境で手動設定によってメモリのオーバークロックを行ったところ、メモリ周波数3600MHz、メモリタイミング16-19-19-39-CR2で安定動作しました。CL以外の主要タイミングが若干大きくなり、Command Rateを2Tにする必要はあるものの、メモリ周波数3600MHzかつCL16が正常にどうさするので、XMP2933MHzと低めな仕様ですが、OC耐性はなかなか良好で素性の良いメモリだと思います。
さらに検証機をAMD Ryzen 7 2700X&AM4 X470環境に変えて、「HyperX Predator RGB HX429C15PB3AK4/32」でメモリのオーバークロックを実践してみました。Intel環境に比べてメモリのオーバークロックが難しい傾向にあるAMD Ryzen環境におけるOC耐性をチェックしていきます。
AMD RyzenおよびAMD Ryzen Threadripper環境ではInfinity Fabricというチップ内外のインターコネクトの構造上、メモリ周波数がエンコードや3Dゲームを含めた総合的なパフォーマンスに大きく影響することが知られています。AMD RyzenやAMD Ryzen Threadripperでハイパフォーマンスな環境構築を目指す上ではメモリ周波数3200MHzが1つの指標になっています。
まずは簡単に「HyperX Predator RGB HX429C15PB3AK4/32」をRyzen 7 2700XとASUS ROG CROSSHAIR VII HEROの環境でXMPプロファイルを使用してメモリのオーバークロックを行ったところ、メモリ周波数2933MHz、メモリタイミング16-17-17-39-CR1で安定動作しました
さらにRyzen環境でも「HyperX Predator RGB HX429C15PB3AK4/32」で、さらに上を目指して手動設定によってオーバークロックを実践してみました。
下のようにメモリ周波数3200MHz、メモリタイミング16-18-18-38-CR1にBIOSから設定しました。tFawの値も調整しています。
「HyperX Predator RGB HX429C15PB3AK4/32」をRyzen 7 2700XとASUS ROG CROSSHAIR VII HEROの環境で手動設定によってメモリのオーバークロックを行ったところ、メモリ周波数3200MHz、メモリタイミング16-18-18-38-CR1で安定動作しました。メモリ周波数と主要タイミングのみの設定ではエラーが発生したので、自動設定でtFAWを40に設定して微調整しましたが、Ryzen環境において4枚組32GBでメモリ周波数3200MHzのCL16が正常動作するのはなかなか良い結果です。
参考までに、容量下位モデルで8GB*2=16GBの2枚組メモリキット「HX429C15PB3AK2/16」を検討しているユーザーもいそうなので、HX429C15PB3AK4/32のうち2枚を使用して2枚組で同様にメモリ周波数3200MHzのオーバークロックを行ってみました。4枚組でも正常動作したので当然ですが、2枚組でも「HyperX Predator RGB」はRyzen環境でメモリ周波数3200MHzが正常に動作しました。ちなみに2枚組ではtFAWは弄っていません。
HyperX Predator RGBのレビューまとめ
最後にアドレッサブルLEDイルミネーション搭載DDR4メモリ「HyperX Predator RGB(型番:HX429C15PB3AK4/32)」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- 5分割(アドレス)のアドレッサブルLEDイルミネーション搭載
- ASUS AURA Sync、GIGABYTE RGB Fusion、MSI Mystic Lightに対応
- 簡単にメモリのオーバークロックが可能なIntel XMP 2.0に対応
- Intel環境で手動OCによって3200MHz-CL16-CR1や3600MHz-CL16-CR2で正常動作
- AMD環境で手動OCによって3200MHz-CL16-CR1が正常動作
- HyperX赤外線同期テクノロジーによる同期はCPUソケットを挟むと機能しない
- AM4 X470ではASUS AURA Sync(ver1.06.29)で設定できなかった
「HyperX Predator RGB HX429C15PB3AK4/32」のレビュー用サンプルによる検証ではIntel Z370環境において、XMPプロファイルのメモリ周波数2933MHzを上回って、手動設定によるオーバークロック、メモリ周波数3200MHz&メモリタイミング16-18-18-38-CR1やメモリ周波数3600MHz&メモリタイミング16-19-19-39-CR2で正常動作が確認できました。XMP2933MHzと製品仕様としては低めな設定になっていますが、最大でメモリ周波数3600MHzもあっさりと回って安定動作してくれるので、おそらく互換性を重視した設定になっており、メモリモジュール自体の品質は優秀なのだと思います。
また今回の「HyperX Predator RGB HX429C15PB3AK4/32」のサンプル機のメモリモジュールはHynix M-Dieとなっており、Hynix製メモリについてはAMD Ryzenの発売当初、Ryzenとは相性が悪くメモリ周波数を上げにくいとも言われていましたが、4枚組32GBでもあっさりと2933MHzのXMPプロファイルで正常動作し、手動OCによって3200MHzも回りました。第2世代Ryzenになってキャッシュの改良やAGESAコードの更新によってメモリの互換性が改善されたことも理由の1つだとおもいますが、HX429C15PB3AK4/32で使用されているメモリモジュールの素性の良さも同じく優れたOC耐性に影響していると思います。
メモリについては必要な容量(現在のゲーミングデスクトップPCなら16GB~32GBあれば十分)さえ満たせば、OCによる性能の向上はCPUやGPUのOCに比べると実感しにくい部類なので、一口にOCメモリと言っても性能向上を狙うよりはオシャレなヒートシンク目当てに自作PCの装飾的な感覚で購入するのが一般的にはおすすめな買い方です
ただしAMD RyzenおよびAMD Ryzen Threadripper環境ではInfinity Fabricというチップ内外のインターコネクトの構造上、メモリ周波数がエンコードや3Dゲームを含めた総合的なパフォーマンスに大きく影響することが知られています。そのためAMD RyzenやAMD Ryzen Threadripperでハイパフォーマンスな環境構築を目指すのであれば是非ともメモリ周波数3200MHz動作を狙いたいところです。
5分割アドレッサブルLEDイルミネーションで色鮮やかにライトアップすることができる「HyperX Predator RGB」はPCをオシャレに装飾したいユーザーにとって非常に魅力的な製品です。七色に変化するRGBもしくはアドレッサブルな発光パターンを標準にしているLEDイルミネーションは数多く存在するものの、いずれも時間経過とともに各メモリの発光カラーや変化にズレが生じますが、HyperX Predator RGBは「HyperX赤外線同期テクノロジー(HyperX’s Infrared Sync technology)」という独自機能によって、ソフトウェア制御がない状態で時間が経過しても、全てのメモリモジュールの発光タイミングが綺麗に一致するので、ソフトウェアを使わずそのまま導入するLEDイルミネーション搭載メモリの入門機としてはおすすめメモリだと思います。
なおライティング制御についてはASUS AURA Sync、GIGABYTE RGB Fusion、MSI Mystic Lightなどマザーボードの機能に対応しており、同期機能があるので必須ではないものの、選択肢の1つとして簡単なものでもいいので、オリジナルのライティング制御ソフトウェアがあってもよかったとは思います。
以上、「HyperX Predator RGB」のレビューでした。
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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