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KIOXIA製TLC型96層3D NAND BiCS4とMarvell 88SS1092メモリコントローラーを採用する高性能NVMe M.2 SSDの容量1TBモデル「Plextor M9PG Plus 1TB(型番:PX-1TM9PG+)」をレビューしていきます。2020年最新NVMe M.2 SSD各種と実用性能をベンチマーク比較し、さらに標準搭載のM.2 SSDヒートシンクの冷却性能も徹底検証していきます。
代理店公式ページ:https://www.aiuto-jp.co.jp/products/product_2941.php
製品公式ページ:https://www.goplextor.com/jp/Product/Detail/M9P(G)_Plus
データシート:https://www.goplextor.com/jp/uploadFile/a68cd04797074f529e7529dd7a3a8d4f
Plextor M9PG Plus 1TB レビュー目次
1.Plextor M9PG Plusについて
2.Plextor M9PG Plus 1TBの外観
3.Plextor M9PG Plus 1TBの検証機材と基本仕様
4.Plextor M9PG Plus 1TBのベンチマーク比較
5.Plextor M9PG Plus 1TBの連続書き込みについて
6.Plextor M9PG Plus 1TBの温度とサーマルスロットリングについて
7.Plextor M9PG Plus 1TBの実用性能比較
8.Plextor M9PG Plus 1TBのデータコピー・ゲームロード比較
9.Plextor M9PG Plus 1TBのレビューまとめ
【機材協力:Plextor(国内正規代理店アユート)】
Plextor M9PG Plusについて
「Plextor M9PG Plus」はメモリチップにKIOXIA製TLC型96層3D NAND BiCS4、メモリコントローラーにMarvell 88SS1092が採用された、M.2 2280フォームファクタでNVMe(PCIE3.0x4)接続の高速M.2 SSDです。「Plextor M9PG Plus」にはSSD容量として256GB(型番:PX-256M9PG+)、512GB(型番:PX-512M9PG+)、1TB(型番:PX-1TM9PG+)の3モデルがラインナップされています。
今回レビューする「Plextor M9PG Plus」はM.2 SSDに標準でヒートシンクを搭載したモデルですが、Plextor M9P Plusシリーズにはそれ以外に、SSDヒートシンクを搭載しない「Plextor M9PGN Plus」、PCIE拡張ボード型の「Plextor M9PY Plus」の2種類もラインナップされています。各モデルはいずれも256GB/512GB/1TBの容量が用意されています。
PCIE拡張ボード型の「Plextor M9PY Plus」については、下の動画(旧モデルM9Peですが)のように、専用に設計されたPCIE拡張ボード基板にメモリチップやメモリコントローラーが実装されているわけではなく、M9PGN Plusと同じNVMe M.2 SSDが同社オリジナルPCIE変換ボードに搭載された製品となっています。
「Plextor M9PG Plus」のアクセススピードは容量によって若干異なりますが、最大でシーケンシャル読出3400MB/s、シーケンシャル書込2200MB/s、ランダム読出340,000 IOPS、ランダム書込320,000 IOPSの高速アクセスを実現しています。
「Plextor M9PG Plus」のMTBFは250万時間、書込耐性は250GBが160TBW、500GBが320TBW、1TBが640TBWとなっており、メーカーによる製品保証期間は5年間です。
Plextor M9PG Plus スペック一覧 |
|||
容量 | 250GB PX-256M9PG+ |
500GB PX-512M9PG+ |
1TB PX-1TM9PG+ |
インターフェース |
NVMe(PCIE3.0x4) | ||
メモコン | Marvell 88SS1092 | ||
メモリ | KIOXIA製TLC型96層3D NAND BiCS4 | ||
キャッシュ |
512 MB LPDDR3L | 1024 MB LPDDR3L | |
連続読出 | 3400MB/s | ||
連続書込 | 1700MB/s | 2200MB/s | |
4Kランダム読出 | 300,000 IOPS | 340,000 IOPS | |
4Kランダム書込 | 300,000 IOPS | 320,000 IOPS | |
消費電力 | DC 3.3V 2.5A (最大) |
||
MTBF | 250万時間 | ||
耐久性評価 | 160TBW | 320TBW | 640TBW |
保証期間 | メーカー5年 (ヒートシンク取り外しは保証対象外) |
Plextor M9PG Plus 1TBの外観
まず最初にPlextor M9PG Plus 1TBの外観や付属品について簡単にチェックしておきます。紙製のパッケージを開くとSSD本体はプラスチックのスペーサーに収められていました。付属品は保証規定書およびインストールガイドとなっています。
Plextor M9PG PlusシリーズのSSD本体デザインについて、SSD基板本体は普通にM.2 2280サイズ、M-Key型のM.2 SSDです。PCB基板は緑色になっています。
Plextor M9PG Plusシリーズの表面にはM.2端子のすぐ傍にメモリコントローラー、その隣にDRAMキャッシュ、逆側半分には2枚のメモリチップが実装されています。
Plextor M9PG Plusシリーズは概要でも紹介したようにSSDヒートシンクを標準で搭載しています。
ヒートシンクは熱電両面テープで固定されていますが、万一の脱落を防止するため、ヒートシンクを固定するフレームがM.2 SSD基板の裏面を覆っています。
フレームが裏面に回っていますがサーマルパッド等では接しておらず、そのまま浮いた状態です。またPlextor M9PG Plusシリーズは最大容量の1TBモデルも含めて全容量で背面にはメモリチップ等の実装が一切なく、片面実装となっています。
旧モデルのヒートシンクは厚み1mmもないペラペラなヒートシンク、凹凸のある内面でサーマルパッドが素子の中央と接していないなど、お粗末な出来でしたが、Plextor M9PG Plusシリーズは上の写真のようにヒートシンクは重厚かつSSD表面の素子としっかり密着しています。
Plextor M9PG Plus 1TBの検証機材と基本仕様
「Plextor M9PG Plus 1TB」の各種検証を行う環境としては、Intel Core i9 9900K&ASUS WS Z390 PROなどで構成されているベンチ機を使用しました。構成の詳細は下記テーブルの通りです。テストベンチ機の構成 | |
CPU | Intel Core i9 9900K(レビュー) Core/Cache:5.1/4.7GHz, 1.300V 殻割り&クマメタル化(レビュー) |
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36(レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z Black F4-4400C19D-16GTZKK DDR4 8GB*2=16GB (レビュー) 4000MHz, CL17-17-17-37-CR2 |
マザーボード |
ASUS WS Z390 PRO (レビュー) |
ビデオカード | 【基礎性能検証用】 MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC (レビュー) 【PCゲームロード時間検証用】 ZOTAC RTX 2080Ti AMP Extreme Core (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB MZ-N6E1T0B/IT (レビュー) |
OS | Windows10 Home 64bit |
電源ユニット | Corsair HX1200i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
ベンチ機のシステムストレージにはSamsung製3bit-MLC型64層V-NANDのメモリチップを採用するメインストリーム向け最新SATA接続M.2 SSD「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB」を使用しています。「Samsung SSD 860 EVO M.2」は2.5インチSATA SSDと同等のパフォーマンスをケーブルレスで発揮できる手軽さが魅力です。Samsung SSD 860 EVOの容量1TB以上のモデルは大容量データの連続書き込みにおける書き込み速度の低下というTLC型SSDの欠点も解消されているので、大容量ファイルをまとめて入れても余裕のあるメインストレージとしてお勧めのSSDです。
・「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB」をレビュー
「Plextor M9PG Plus 1TB」のボリュームをWindows10上で作成したところ、空きスペースは953GBでした。
Plextor M9PG Plus 1TBのベンチマーク比較
「Plextor M9PG Plus 1TB」の性能を測るためストレージに関する基本的なベンチマークソフトを使用して測定を行います。比較対象として同じくNVMe M.2 SSDの「Samsung SSD 970 PRO 1TB(レビュー)」、「Samsung SSD 970 EVO Plus 1TB(レビュー)」、「Kingston KC2000 1TB(レビュー)」、「WD Black SN750 NVMe SSD 1TB(レビュー)」、およびSATA SSDの「Samsung SSD 860 PRO 1TB(レビュー)」、「Samsung SSD 860 EVO 1TB(レビュー)」等でも同様の測定を行いました。まずはCrystalDiskMark7.0.0f (8GiB)について、「Plextor M9PG Plus 1TB」やその他の比較対象ストレージのベンチマーク結果は次のようになっています。
「Plextor M9PG Plus 1TB」のベンチマークススコアは連続読み出し3400MB/s、連続書き込み2100MB/sとなりました。製品仕様の通りの超高速な連続アクセススピードです。
ATTO Disk Benchmark 4.00.0f2(512B-64MB, 8GB, QD1/QD4)について、「Plextor M9PG Plus 1TB」やその他の比較対象ストレージのベンチマーク結果は次のようになっています。
ATTO Disk Benchmarkはブロックサイズ別のシーケンシャル性能を主にチェックするベンチマークなので4KB~1MBを抜粋してリード/ライト性能をグラフにして比較しました。
AS SSD Benchmark v2.0.6821.41776(5GB)について、「Plextor M9PG Plus 1TB」やその他の比較対象ストレージのベンチマーク結果は次のようになっています。
PCMark8 ストレージテストについて、「Plextor M9PG Plus 1TB」やその他の比較対象ストレージのベンチマーク結果は次のようになっています。
Plextor M9PG Plus 1TBの連続書き込みについて
「Plextor M9PG Plus 1TB」に連続書き込みを行った場合の動作についてチェックします。TLC型NANDやQLC型NANDと呼ばれる3bit以上のマルチレベルセルで動作するNANDが採用されているSSDでは、マルチレベルセル化によって遅くなる書き込み速度の底上げのため、NANDメモリの一部を高速キャッシュ領域とする機能が実装されています。2019年現在、TLCやQLCの記憶領域を動的にSLC化する製品が多いので、この高速キャッシュ領域のことをSLCキャッシュと呼ぶことにします。(可能性としてTLC型SSDやQLC型SSDがMLCで高速キャッシュを構築することもありうる)
このようなSLCキャッシュを有するSSDにおいては、連続した大容量の書き込みによって書き込み総量がSLCキャッシュを超過した場合、書き込み速度がステップ状にガクッと下がります。
例えば600MB/sが理論的な上限速度となるSATA SSDの場合は、動画ファイルなど数十GB以上の単一ファイルの連続書き込みが発生すると、SLCキャッシュ超過後はCrystalDiskMarkなどベンチマークソフトで表示される500MB/s程度の連続書き込み速度を維持できず、100~200MB/sまで書き込み速度が低下する可能性があります。
2.5インチSATA SSDの「Samsung 860 PRO 2TB(レビュー)」やNVMe M.2 SSDの「Samsung 970 PRO 1TB(レビュー)」はMLC型なので、HD Tune Proを使用して100GB以上の大容量な連続書き込みを行っても書き込み速度が下がることはなく、いずれも理想的な書き込み速度を維持することが可能です。
SATA SSDの「PNY CS1311 960GB」はSLCキャッシュによる書き込み速度の底上げを行っている典型的なTLC型SSDとなっており、書き込み開始直後は500MB/sの書き込み速度をマークしているものの、全容量960GBに対して1.5%程度の13~15GBを書き込んだ後は300~350MB/sまで書き込み速度が低下します。
しかしながら2018年から2019年初頭にかけて主流な64層3D NANDや、2019年以降に採用製品が増えつつある90層オーバーの最新3D NANDでは、SLCキャッシュを介さない書き込み速度が改善されています。
64層3D NANDを採用しているTLC型SATA SSDの「Samsung SSD 860 EVO(レビュー)」「WD Blue 3D NAND SATA SSD(レビュー)」「SanDisk SSD Ultra 3D(レビュー)」「Crucial MX500(レビュー)」などで、かつ容量が1TB以上の大容量モデルでは書き込み速度の低下は解消されています。(SATA3.0規格の速度上限が先にくるので)
またTLC型SSDの書き込み速度の低下はNVMe SSDでも発生することがあります。Samsung 970 EVO Plus 1TB(レビュー)」もTLC型NANDの一部を高速なSLCキャッシュとして用いて書き込み時にそこを優先的に使用する高速化技術「Intelligent TurboWrite」が使用されているので、SLCキャッシュ容量を超過する連続した大容量な書き込みが発生すると書き込み速度が低下します。
TLC型96層3D NANDをメモリチップに採用する「Plextor M9PG Plus 1TB」はどのような挙動を見せるのか確認してみたところ、製品仕様でも紹介されているように書き込み開始直後は2200MB/s程度の書き込みスピードを維持していますが、書き込み総量が55GB程度に達すると最大SLCキャッシュを超過するため書き込み速度は500MB/s前後まで減少しました。
「Plextor M9PG Plus 1TB」のSLCキャッシュは10GB前後の固定容量と最大45GB程度の可変容量の組み合わせで構成されています。
55GBを超える連続した大容量の書き込みが発生した後、10GB前後の容量のSLCキャッシュは比較的早く解放されますが、最大45GB程度のSLCキャッシュについては順次開放されていき、全てが解放されて使用可能になるまで比較的に長い時間がかかります。(正確には、前者は全く別の空きスペースをSLCキャッシュとして手配し、後者は特定の物理アドレスで場所が固定されていて、そこからデータを外に移し終わるまで時間がかかるのだと思います。)
SLCキャッシュの送料用に収まる50GB容量の動画ファイルのコピーにおいて途中で若干の速度低下が発生している部分があるのは、このSLCキャッシュ構成が影響していると考えられます。
「Plextor M9PG Plus 1TB」において総容量のうち半分程度を使用済みにしても、十分な時間が経過してSLCキャッシュが解放されると、0%使用時と同様に55GB程度のSLCキャッシュを使用できました。
Plextor M9PG Plus 1TBの温度とサーマルスロットリングについて
NVMe M.2 SSDでは重要になる項目として「Plextor M9PG Plus 1TB」の温度とサーマルスロットリングについてチェックしていきます。アクセススピードが数GB/sに及ぶ非常に高速なNVMe接続に対応したM.2 SSDでは、そのコンパクトさゆえに放熱性能には表面積的な限界があり、連続したアクセスが発生するとメモリチップやメモリコントローラーが高温になって速度制限がかかるサーマルスロットリングが発生する可能性があることが知られています。
「Plextor M9PG Plus 1TB」について、連続した高速アクセス発生時の温度やサーマルスロットリング発生の有無をソフトウェアモニタリングとサーモグラフィーカメラを使用して検証します。
Plextor M9PG Plus 1TBのSSD温度の測定やサーマルスロットリング発生の有無の確認については、ヒートシンクがないPCIE-M.2アダプタ拡張ボードにSSDを装着して検証を行います、
測定時の検証負荷としては上で行ったベンチマーク測定同様にCrystalDiskMark6.0.0(QD32, 8GiB)を使用して間を置かず複数回ベンチマークをループさせ、その間のSSD温度や読み出し・書き込み速度のモニタリング値はHWiNFOを使用してログを取得します。
「Plextor M9PG Plus 1TB」の検証結果を確認する前に比較参考のサンプルとして、2020年現在最速のNVMe M.2 SSDとして君臨している「Samsung SSD 970 PRO 1TB」において、上記の負荷テストを実行した結果を確認しておきます。
Samsung SSD 970 PRO 1TBのSSD温度とアクセススピードの推移は下のようになっています。Samsung SSD 970 PRO 1TBではメモリコントローラーとメモリチップの2種類の温度についてソフトウェアモニタリングが可能になっているようです。ベンチマークを複数回繰り返してもサーマルスロットリングによる大幅な速度低下は発生していませんが、2周目以降に連続書き込み速度の計測で若干速度低下が確認できます。1周目ですでにメモリコントローラーの温度は100度に達し、メモリチップも70度を超えておりかなり高温です。
負荷テスト終盤におけるSamsung SSD 970 PRO 1TBのサーモグラフィーは下のようになっています。サーモグラフィーでもソフトウェアモニタリング同様に、「Samsung SSD 970 PRO 1TB」の右端にあるメモリコントローラー温度は100度を上回り、左半分に実装されたメモリチップは70度半ばになっています。
さて本題のPlextor M9PG Plus 1TBの温度やサーマルスロットリングの有無についてチェックしていきます。
まずソフトウェアモニタリングによるPlextor M9PG Plus 1TBのSSD温度とアクセススピードの推移は下のようになっています。Plextor M9PG Plus 1TBに関してソフトウェアモニタリングが可能な温度は最も高温になるメモリコントローラーではなくメモリチップの温度になっているようです。
ベンチマークを複数回繰り返してもサーマルスロットリングによる速度低下は確認されず、温度も60度以下で安定しています。標準搭載のM.2 SSDヒートシンクがしっかりと仕事をしてくれているようです。
負荷テスト終盤におけるPlextor M9PG Plus 1TBのサーモグラフィーは下のようになっています。サーモグラフィーで確認できるヒートシンク上のホットスポットは65度前後となっており、ソフトウェアモニタリングの温度よりも高いので、ソフトウェアモニタリングの検出値が正しいのであれば、最も高温になるメモリコントローラーはヒートシンク内で70~80度程度にはなっていそうです。
Plextor M9PG Plusシリーズはヒートシンクを着脱するとメーカー保証対象外になってしまいますが、ヒートシンクを標準で搭載しないPlextor M9PGN Plusシリーズは、マザーボード備え付けのM.2 SSDヒートシンク、もしくはサードパーティ製のさらに大型なM.2 SSDヒートシンクやヒートシンク付きPCIE拡張ボードを利用できます。
Plextor M9PGN Plusシリーズと組み合わせて、さらに高性能なM.2 SSDヒートシンクを使用したいということであれば、PCIE拡張ボードタイプなら「AquaComputer kryoM.2 無印/evo」、マザーボードM.2スロットで使用するコンパクトタイプなら「「SilverStone SST-TP02-M2」などがオススメです。
・M.2 SSDヒートシンクのレビュー記事一覧へ
SilverStone M.2 SSD専用放熱ヒートシンク/パッドセット SST-TP02-M2
SilverStone
Plextor M9PG Plus 1TBの実用性能比較
「Plextor M9PG Plus 1TB」の実用性能をPCMark10 Storage Testを使用してチェックしていきます。PCMark10 Storage Test」はWindows10 OSの起動速度、PhotoshopやPremiere ProといったAdobeアプリの起動速度、PCゲームの起動速度、AdobeアプリやMicrosoft Officeの素材領域としての読み出し・書き込み速度など、SSDの実用性能について測定できるベンチマークソフトです。PCMark10 Storage Testは、NVMe SSDなど最新の高速ストレージについて、Windows10 OSの起動、OfficeやAdobe系ソフトなどアプリケーションの起動、PCゲームの起動、OfficeやAdobe系ソフトで使用する素材データ領域としての読み出し・書き込み性能といった、実用的なストレージ性能を測定するベンチマークソフトとなっており、”Trace”と呼ばれる23種類のテストで構成されています。
当サイトでは同ベンチマークを使用した評価に当たって、ストレージの用途を、Windowsや各種アプリケーションをインストールする『システムストレージ』、PCゲームをインストールする『ゲームストレージ』、各種アプリケーションで使用する素材を保存しておく『データストレージ』の3種類に大別し、23種類のうち17種類のテストを下記のように振り分けました。
ベンチマーク測定に使用するPCMark10 Storage Testには上の概要で紹介したように23種類のテストがあるので、その中からシステム/ゲーム/データの3種類に大別された17種類のテストの結果を抜粋し、各テストにおいてSamsung SSD 970 PRO 1TBを基準として性能比率を算出、それらの平均値を取って、総合的なSSD実用性能としてパフォーマンスサマリーの比較グラフを作成しました。
システムストレージとしての性能に大別された7種類のテスト結果を使用して、各テストにおいてSamsung SSD 970 PRO 1TBを基準として性能比率を算出、それらの平均値を取って、システムストレージとしてのSSD実用性能としてパフォーマンスサマリーの比較グラフを作成しました。
ゲームストレージとしての性能に大別された3種類のテスト結果を使用して、各テストにおいてSamsung SSD 970 PRO 1TBを基準として性能比率を算出、それらの平均値を取って、ゲームストレージとしてのSSD実用性能としてパフォーマンスサマリーの比較グラフを作成しました。
データストレージとしての性能に大別された7種類のテスト結果を使用して、各テストにおいてSamsung SSD 970 PRO 1TBを基準として性能比率を算出、それらの平均値を取って、データストレージとしてのSSD実用性能としてパフォーマンスサマリーの比較グラフを作成しました。
当レビュー記事中では簡単に、総合、システム、ゲーム、データの4種類のサマリーのみを取り挙げていますが、PCMark10 Storage Testの測定データの取り扱いに関する注意、リアルタイムでの最新データ(当レビュー記事のデータは執筆当時のものなので、新製品の比較データは掲載されていない)、個別のTraceの比較データについては下の記事で解説しているので、詳細についてはこちらを参照してください。
・本当に速いSSDはどれか?SSDの実用性能を比較
Plextor M9PG Plus 1TBのデータコピー・ゲームロード性能比較
続いて「Plextor M9PG Plus 1TB」で大容量・多数データのコピーやPCゲームのロード時間など実際の使用について性能比較をしてみました。比較対象として同じくNVMe M.2 SSDの「Samsung SSD 970 PRO 1TB(レビュー)」、「Samsung 970 EVO Plus 1TB(レビュー)」、「Kingston KC2000 1TB(レビュー)」、「WD Black SN750 NVMe SSD 1TB(レビュー)」、およびSATA SSDの「Samsung SSD 860 EVO 1TB(レビュー)」等でも同様の測定を行いました。
まずはファイルのコピーに関する実性能比較となります。検証に使用するデータとしては総容量が約80GBで多数のファイルが入ったPCゲームフォルダ(The Witcher 3とRise of the tomb Raiderなど)、および容量50GBの単一動画ファイルの2種類を使用しています。
データのコピーにおいては当然ですが、元データのあるストレージの読み出し性能とコピー先の書き込み性能の両方が重要になります。測定においては書き込み先/読み出し元の対象となるストレージが必要になるため、各ストレージのコピー相手にはM.2-PCIE変換アダプタ「Aquacomputer kryoM.2」に設置したSamsung SSD 970 PRO 1TBを使用しています。
コピーテストにおいて検証ストレージがコピー相手の「Samsung SSD 970 PRO 1TB」と同じくNVMe SSDの場合は、ASUS WS Z390 PROの1段目PCIEスロットにグラフィックボード、3段目PCIEスロットにコピー相手ストレージの「Samsung SSD 970 PRO 1TB」、5段目PCIEスロットに検証ストレージを設置しています。
Z390プラットフォームでは通常、複数のNVMe SSDへ同時にアクセスが発生すると、CPU-チップセット間のDMI 3.0の帯域がボトルネックになってトータルのアクセススピードが4GB/s程度に制限されますが、ASUS WS Z390 PROではPLXスイッチチップを介するものの、コピーテストで使用する2つのNVMe SSDはそれぞれCPU直結PCIEレーンに接続されているので、この問題は発生しません。
「Plextor M9PG Plus 1TB」など各種検証ストレージとSamsung SSD 970 PRO 1TBとの間で50GBの動画ファイルおよび80GBのゲームフォルダをコピーした時間の比較結果は次のようになりました。
まずは50GBの動画ファイルのコピーについてですが、動画ファイルは単一の大容量ファイルなので実際のコピーではベンチマークのシーケンシャルリード・ライト性能が重要になってきます。
Plextor M9PG Plus 1TBは動画ファイルのコピー読み出しにおいて、Samsung 970 PRO 1TBやSamsung 970 EVO Plus 1TBには僅かに及ばないものの、WD Black SN750 NVMe SSD 1TBやKingston KC2000 1TBなど競合するTLC型NVMe M.2 SSDと同等の読み出し速度でした
Plextor M9PG Plus 1TBはPCIE3.0x4帯域のNVMe接続に対応した高速SSDなので、SATA3.0接続のSSDと比較すると4倍近い高速な読み出し速度を実現しており、読み出し速度は2000MB/s程度となっています。
Plextor M9PG Plus 1TBは動画ファイルのコピー書き込みにおいて、所要時間27秒程度で、Samsung 970 PRO 1TBやSamsung 970 EVO Plus 1TBには僅かに及ばないものの、Kingston KC2000 1TBと同等、SLCキャッシュの小さいWD Black SN750 NVMe SSD 1TBよりも高速でした。
今回は検証に使用したコピーデータのサイズが50GBだったので、ほぼ全てのデータがキャッシュ内2200MB/sで転送されたためこのような結果になりましたが、Plextor M9PG Plusは前章でも解説したようにTLC型SSDなので、1TBモデルの場合は最大55GB程度のSLCキャッシュを超過した後は書き込み速度が実測500MB/sまで低下します。
TLC型の競合製品を見るとキャッシュ外ではSamsung 970 EVO Plus 1TBが1750MB/s、WD Black SN750 NVMe SSD 1TBが1500MB/s、Kingston KC2000 1TBが1400MB/sとなっており、Plextor M9PG Plus 1TBはキャッシュ外書き込み速度が低速なので注意が必要です。
続いてゲームフォルダのコピーについてですが、ゲームフォルダは大小様々なファイルを含むので、実際のコピーではベンチマークの連続性能だけでなく、ランダム性能も重要になってきます。
Plextor M9PG Plus 1TBはゲームフォルダのコピー読み出しにおいて、大きな差ではありませんが、Samsung 970 EVO Plus 1TB、WD Black SN750 NVMe SSD 1TB、Kingston KC2000 1TBなど競合する比較機種の中では最も遅いという結果でした。実用性ベンチマークでは最速だったので意外な結果です。
やはり動画ファイルのコピー読み出し同様にSATA3.0 SSDよりも3倍も高速な読み出し速度です。
Plextor M9PG Plus 1TBはゲームフォルダのコピー書き込みにおいて、50%程度の大差がついてSamsung 970 EVO Plus 1TB、WD Black SN750 NVMe SSD 1TB、Kingston KC2000 1TBなど競合する比較機種の中では最も遅いという結果でした。上述の通りPlextor M9PG Plus 1TBは最大55GB程度のSLCキャッシュを超過すると角込み速度は500MB/s程度まで下がるので、総容量80GBのコピー書き込みの結果としては順当なところです。
続いて実際にPCゲームのロード時間も比較してみました。
PCゲームのロード時間比較に関してはゲームインストールデータへのアクセスが最も大きくなる4K解像度/最高グラフィック設定を対象とするため、統一検証機材として、2019年最新にして最速のGPUである「NVIDIA GeForce RTX 2080 Ti」を搭載したグラフィックボード「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme Core」を使用しています。
ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme Coreは、RTX 2080 TiのAIBパートナーの中でも屈指のOCチューニング力を誇るZOTACによって良質なGPUコアが選別され、リファレンスよりも200MHz以上も高いブーストクロック、さらにGDDR6メモリのメモリクロックまで引き上げるという、RTX 2080 Tiグラフィックボードで最速を狙えるファクトリーOCが施されています。加えて、ZOTACを高品質メーカーとして一躍ブランド力を押し上げたAMP Extremeの代名詞とも言える3スロットを占有する超弩級な大型GPUクーラーが採用され、静音性も非常に優れたモデルです。
・「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme」をレビュー
The Witcher 3ではグラフィック設定をフル解像度/最高グラフィック設定として、『スタートメニューのロード画面からノヴィグラドの広場まで』のロード時間を比較しています。
Rise of the Tomb RaiderではフルHD解像度においてグラフィック設定をDirectX12で個別に最高グラフィック設定として、『スタートメニューのロード画面からシベリアの荒野まで』のロード時間を比較しています。
Final Fantasy XV PC版では4K以上の超高解像度向けに無料配布されている「FFXV WINDOWS EDITION 4K Resolution Pack」を使用して4K解像度/最高グラフィック設定で、『スタートメニューのロード画面からレスタルムまで』についてロード時間を比較しています。
以上の条件で「Plextor M9PG Plus 1TB」など各ストレージについてゲームのロード時間比較を行った結果は次のようになりました。
ゲームロード時間を測定して比較してみたところ、SSD対HDDで2~3倍の時間差が生まれるのに対して、SSDの中では、QLCよりもMLC、SATAよりもNVMe、NANDよりもOptaneのようにして高速になる傾向は見受けられますが、それでもせいぜい1,2割程度と、実用的にはランダム要因な誤差に吸収されるくらいの時間差です。
今後PCゲームがさらに高解像度・高画質化してテクスチャなどのゲームデータが大きくなっていけば、NVMe SSDがSATA SSDよりもゲームのロード時間で明確に優位に立つかもしれません。
なおゲームストレージとしての性能についてはPCMark10 Storage Testを使用した実用性能比較の章でも比較していますが、今回の検証結果とはストレージ種類別の性能差の傾向が異なります。理由については、PCMark10 Storage Testは『ゲームクライアントの起動からスタートメニューまで』のロード時間に対して、今回の比較では『スタートメニューから任意のセーブ状況まで』のロード時間となっているからではないかと思います。
Plextor M9PG Plus 1TBのレビューまとめ
最後にNVMe M.2 SSD「Plextor M9PG Plus 1TB(型番:PX-1TM9PG+)」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- NVMe規格として理想的な連続読み出し3400MB/sと連続書き込み2200MB/s(最大)
- 2020年最新NVMe M.2 SSDの中でも頭一つ飛びぬけた実用性能
- M9PG Plusシリーズは標準で高性能なM.2 SSDヒートシンクを搭載(取り外すと保証外に)
- TLC型なので高速NVMe M.2 SSDとしては安価な価格帯
- メーカー正規保証期間が5年間
- TLC型なので大容量の連続書き込みではSLCキャッシュ超過後に速度低下が発生する
1TBはSLCキャッシュ容量が約10~55GB程度、超過後の書き込み速度は500MB/s - SLCキャッシュのうち大容量な45GB程度の開放が遅い
「Plextor M9PG Plus 1TB」を検証してみたところ、CrystalDiskMarkなどの基礎的な各種ベンチマークでは最新NVMe M.2 SSDらしい高速アクセススピードを発揮し、SSD実用性能を測定するPCMark10ストレージテストでは並み居る競合製品から頭一つ飛びぬけた性能を見せました。標準搭載のM.2 SSDヒートシンクも旧モデルとは打って変わって、高い冷却性能を実現しており、マザーボード備え付けのM.2 SSDヒートシンクがない環境であっても安心して運用できます。
「Plextor M9PG Plus 1TB」にはTLCタイプの96層3D NANDメモリが採用されているので、多くのTLC型SSDと同様の特徴が大容量書き込み時にでており、今回検証した1TBモデルでは容量可変で最大55GB程度のSLCキャッシュを超過する連続した大容量な書き込みアクセスでは理想値2200MB/sから500MB/sまで書き込み速度が低下します。
「Plextor M9PG Plus 1TB」はPCMark10ストレージテストの測定結果の通りベンチマーク上の実用性能は非常に高いのですが、SLCキャッシュ回りが微妙です。
まずSLCキャッシュ超過後の書き込み速度が500MB/s、SATA SSDと同程度まで低下してしまい、主要な競合NVMe M.2 SSDが1GB/sを超えるのと比較するとSATA SSD同等というのはかなり遅いです。またSLCキャッシュ容量について、最大容量は55GBと大きいのですが、短期間に繰り返して利用できるのは10GB程度となっており、残りの40GB以上は一度使用すると開放されるまでに1時間以上かかるので、比較的遅い超過後の書き込み速度をSLCキャッシュ容量の大きさではカバーできません。
読み出しメインのゲームストレージや数GB程度の素材を取り扱うデータストレージとしてであれば高いパフォーマンスを期待できますが、数十GBの大容量データを取り扱う用途では急激に利便性が下がるので注意が必要です。
以上、「Plextor M9PG Plus 1TB」のレビューでした。
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KIOXIA製NAND BiCS4を採用する高性能NVMe M.2 SSD「Plextor M9PG Plus 1TB」をレビュー。
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) June 14, 2020
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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ちなみにOptionROMは搭載されているかわかりますか?