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Intel第10世代Comet Lake-Sシリーズから、10コア20スレッドでTDP65Wのスタンダードモデル「Intel Core i9 10900」をレビューします。
Core i9 10900をIntelの仕様値通りTDP65Wで運用できるのか、さらに前世代最上位モデルのCore i9 9900Kや、コア数で勝る競合製品のRyzen 9 3900Xと比較して、クリエイティブタスクやPCゲーミングにおいてどれくらい性能を発揮するのか、各種ベンチマーク比較によって徹底検証していきます。
製品公式ページ:https://www.intel.co.jp/content/www/jp/ja/products/processors/core/i9-processors/i9-10900.html
Intel Core i9 10900 レビュー目次
1.Intel Core i9 10900の外観・付属品・概要
2.Intel Core i9 10900の検証機材・動作設定
3.Intel Core i9 10900の動作クロック・消費電力・温度
4.Intel Core i9 10900の基礎ベンチマーク
5.Intel Core i9 10900のクリエイティブ性能
・3Dレンダリング性能
・動画エンコード性能
・RAW現像性能
・PCゲーム/スマホアプリのビルド性能
6.Intel Core i9 10900のゲーミング性能
・4K解像度/60FPSターゲット
・フルHD解像度/ハイフレームレート
・バトルロイヤル系PCゲーム/240FPSターゲット
7.CPUエンコーダとリアルタイム配信について
8.Intel Core i9 10900のレビューまとめ
・温度・消費電力について
・クリエイティブ性能について
・ゲーム性能について
・総評 - 電力制限解除は前提で検討すべし
リンク.Intel第10世代Comet Lake-Sのレビュー記事一覧へ
Intel Core i9 10900の外観・付属品・概要
「Intel Core i9 10900」の外観や付属品について簡単にチェックしておきます。またこの章では「Intel Core i9 10900」の仕様等について簡単に触れておきたい概要もあれば紹介します。「Intel Core i9 10900」の製品パッケージは第8/9世代からイラストデザインは変わっていますがサイズは同じで紙製です。(CPUクーラーが付属するので、比較しているCore i9 9900KFのパッケージより奥行きがあります)
「Intel Core i9 10900」にはCPUクーラーが標準で付属します。Intelの付属CPUクーラーには全高の高いモデル低いモデルがありますが、第10世代CPUでは最上位の「Intel Core i9 10900」でも全高の低いモデルです。天面に装着された冷却ファンの定格(最大)回転数は3000RPMです。
Core i5 10400など下位モデルはIntel純正でお馴染みのアルミニウム製ヒートシンクで銅柱なしの廉価なCPUクーラーですが、「Intel Core i9 10900」など一部の上位モデルではヒートシンクに黒塗装が施された新しいCPUクーラーが付属しており、アルミニウム製フィンの中央には銅柱が埋め込まれています。
「Intel Core i9 10900」などIntel第10世代Comet Lake-SはCPUソケットがIntel LGA1200に更新されていますが、CPUのPCB基板サイズなど基本的な形状は従来とほぼ共通です。
以下、刻印を除いて同仕様なのでCore i9 10900Kの写真で説明していきます。
前世代となる第9世代CoffeeLake Refresh-Sではヒートスプレッダの形状がかなり昔のものに先祖返り?して、CPUクーラーと接する面積が小さくなっていましたが、Core i9 10900などIntel第10世代Comet Lake-Sはヒートスプレッダが僅かながら大きくなっているように見受けられます。
コンマミリ単位で僅かに薄くなっているようにも見えますが、Core i9 10900とCore i9 9900KのPCB基板の厚みはほぼ同じです。
重量を比較するとCore i9 10900のほうが2g程度重く、ここからもヒートスプレッダの大型化が確認できます。同じ材質なら熱容量はヒートスプレッダの質量にほぼ直結するので、「Intel Core i9 10900」などIntel第10世代Comet Lake-SではCPUの発熱に対するヒートスプレッダのバッファ性能も高まっているはずです。
第9世代CoffeeLake Refresh-SではCPUダイの厚みが従来よりも増しており、ダイ研磨によって冷却性能が上がるとプロOCerが検証を行ったり、ダイ研磨の専用ツールが発売されるなど話題になりましたが、Intel第10世代Comet Lake-SではCPUダイを薄くすることで温度が下がっているとアピールされています。TIMは前世代に引き続きソルダリング寄りな性能のSTIMが採用されているとのこと。
「Intel Core i9 10900」は10コア20スレッドのCPUで、ベースクロックは2.8GHz、最大シングルブーストクロックは5.2GHz、最大全コアブーストクロックは4.6GHzとなっています。倍率アンロックなK付きCPUは従来のTDP95WからTDP125Wへ引き上げられていますが、「Intel Core i9 10900」はTDP65Wのままです。
新機能の「Thermal Velocity Boost」はCPU温度を閾値とした追加ブースト機能となっており、CPU温度が一定以下であれば全コア最大動作倍率、TBM3の単コア最大動作倍率の設定値を超えるコアクロックのブーストを可能にし、Core i9 10900では最大シングルブーストクロック5.2GHz/最大全コアブーストクロック4.6GHzの高速動作を実現します。
またIntel第10世代Comet Lake-SのCoreシリーズは、Intel製エンスージアスト向けCPUのCore-Xでいち早く採用された「Turbo Boost Max 3.0 Technology」に対応しています。TBM3.0は、CPUダイ上で最も電圧特性の良いコア(CPU個体ごとに異なる)を自動で選別し、非常に高い単コア最大ブーストクロックで動作させ、アクティブタスクへ優先的に割り当ててくれる機能です。
「Intel Core i9 10900」を、上位モデルのCore i9 10900K、前世代最上位のIntel Core i9 9900Kや、競合AMDのRyzen 9 3900Xと比較すると次のようになっています。
Intel Core i9 10900 スペック簡易比較 | ||||
Core i9 10900 |
Core i9 10900K | Core i9 9900K | Ryzen 9 3900X | |
コアスレッド | 10コア20スレッド | 10コア20スレッド | 8コア16スレッド | 12コア24スレッド |
ベースクロック | 2.8GHz | 3.7GHz | 3.6GHz | 3.8GHz |
全コア最大ブースト | 4.6GHz | 4.9GHz | 4.7GHz | ~4.3GHz |
単コア最大ブースト | 5.2GHz | 5.3GHz | 5.0GHz | 4.6GHz |
コア倍率OC |
X | O | ||
メモリOC |
O (Z490のみ) |
O (Z390のみ) |
O | |
L3キャッシュ | 20MB | 20MB | 16MB | 64MB |
TDP | 65W | 125W | 95W | 105W |
CPUクーラー | O | X | 付属 (Wraith Prism) |
|
iGPU |
O | X | ||
メモリ ch / pcs |
2 / 4 | |||
CPU直結PCIEレーン |
16 | 16 + 4 | ||
おおよその国内価格 (北米希望小売価格) |
5.9万円 (439ドル) |
7.2万円 (488ドル) |
5.8万円 (499ドル) |
6.0万円 (499ドル) |
Intel第10世代Comet Lake-Sのプラットフォーム関連について、まずCore i9とCore i7は定格メモリ周波数が従来の2666MHzから2933MHzへと引き上げられています。Core i5以下の定格メモリ周波数は2666MHzとなり、Core i5は据え置き、Core i3以下は従来モデルから引き上げという形です。
ネットワーク関連では、CPUにIntel AX201というWiFi6対応無線LANコントローラーがチップセットに統合されています。160MHz幅で通信可能にするGig+にも対応し、最大2400Mbpsで通信可能です。またオプショナルな要素として、Intel製2.5Gb LANコントローラー I225-V(Foxville)やThunderbolt3も増設IOとしてサポートします。
Intel第10世代Comet Lake-Sの対応マザーボードチップセットは新しい400シリーズチップセットとなり、CPUソケットもLGA1200に変わるので、Z390やH370など300シリーズチップセットを搭載するLGA1151ソケットの旧世代マザーボードとは非互換です。
400シリーズチップセットには、すでにマザーボード製品が各社から発表されている最上位「Intel Z490」に加えて、安価な「Intel H470」、「Intel B460」、「Intel H410」などもラインナップされています。
・主要4社Z490マザーボードを徹底比較!第10世代Core-Sにイチオシはどれか?
Intel Core i9 10900の検証機材・動作設定
以下、「Intel Core i9 10900」の各種検証を行うベンチ機、および比較対象となる各CPUのベンチ機の詳細となります。Intel LGA1200(Z490)環境 テストベンチ機の構成 | |
CPU | Intel Core i9-10900K(レビュー) Intel Core i9-10900(レビュー) Intel Core i7-10700K(レビュー) Intel Core i7-10700F(レビュー) Intel Core i5-10400(レビュー) Intel Core i3-10100(レビュー) |
マザーボード | ASUS ROG MAXIMUS XII EXTREME (レビュー) |
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36 (レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM x3 (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Ripjaws V F4-4000C15Q-32GVK DDR4 8GB*4=32GB (レビュー) 3600MHz, CL16-16-16-36-CR1 |
ビデオカード(共通) | ZOTAC RTX 2080Ti AMP Extreme Core (レビュー) |
システムストレージ(共通) | Samsung 860 PRO 256GB (レビュー) |
OS(共通) | Windows10 Home 64bit |
電源ユニット(共通) | Corsair HX1200i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
Intel LGA1200(Z490)環境では検証機材マザーボードとして「ASUS ROG MAXIMUS XII EXTREME」を使用しています。「ASUS ROG MAXIMUS XII EXTREME」でCPU動作設定を標準設定のAutoとした場合、同環境で検証する各CPUのBy Core Usage動作倍率は単コア/全コアは仕様通りで、長時間電力制限PL1による電力制限も正常に適用されます。短時間電力制限PL2や短期間電力制限時間Tauについても以下のテーブルで示すIntel公式仕様の通り設定されていました。
Intel第10世代CPUの電力制限仕様値 | ||||
TDP | PL1 | PL2 | Tau | |
Core i9 | 125W | 125W | 250W | 56s |
65W | 65W | 224W | 28s | |
35W | 35W | 123W | 28s | |
Core i7 | 125W | 125W | 229W | 56s |
65W | 65W | 224W | 28s | |
35W | 35W | 123W | 28s | |
Core i5 | 125W | 125W | 182W | 56s |
65W | 65W | 134W | 28s | |
35W | 35W | 92W | 28s | |
Core i3 | 65W | 65W | 90W | 28s |
35W | 35W | 55W | 28s |
長時間負荷をかけた時のCPU消費電力(CPU Package Power)がTDPの範囲内に収まるCPUについては特に追加の設定を設けていませんが、Core i9-10900Kのように全コア最大動作倍率においてTDPを大きく上回るCPUに関してはBy Core Usage動作倍率は定格のまま、『PL1=TDP、PL2=(テーブルの仕様値)、Tau=56s(125W) or 28s(65W)』のIntel公式仕様および『PL1/PL2無効化』の2つのケースで測定を行います。
「ASUS ROG MAXIMUS XII EXTREME」の場合、By Core Usage動作倍率および電力制限は下記のような形でBIOS上から設定が可能です。
上の設定はASUS製マザーボードのBIOSメニューから設定した例ですが、ASRock、GIGABYTE、MSIなど主要4社のマザーボードであれば同種の設定項目が用意されているはずなので、同じように電力制限を課すことができます。再起動等で初期化されることもあるので、確実性の高いBIOSからの設定が推奨なのですが、「Intel Extreme Tuning Utility」からも設定が可能です。
ベンチ機のシステムストレージにはSamsung製MLCタイプ64層V-NANDのメモリチップを採用する2020年最速のプロフェッショナル向け2.5インチSATA SSD「Samsung SSD 860 PRO 256GB」を使用しています。Samsung SSD 860 PROシリーズは容量単価が高価ではあるものの、システムストレージに最適な256GBや512GBモデルは製品価格としては手を伸ばしやすい範囲に収まっており、Intel Core-XやAMD Ryzen TRのようなハイエンドデスクトップ環境はもちろん、メインストリーム向けでもハイパフォーマンスな環境を目指すのであれば、システムストレージ用に一押しのSSDです。
・「Samsung SSD 860 PRO 256GB」をレビュー
CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。Thermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスで適量が塗布されていれば、CPUクーラー固定時の圧着でヒートスプレッダ全体へ自然に伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
サーマルグリスの代用品として、数年スパンの長期使用においても性能低下が基本的になく再利用も可能、グリスが零れてマザーボードが汚れたり壊れる心配もないので、炭素繊維サーマルシート「Thermal Grizzly Carbonaut」もオススメです。
・「Thermal Grizzly Carbonaut」はCore i9 9900Kを冷やせるか!?
Intel Core i9 10900の動作クロック・消費電力・温度
「Intel Core i9 10900」に関する検証のはじめに、「Intel Core i9 10900」の動作クロック、消費電力、温度など同CPUの基本的な動作についてチェックしていきます。「Intel Core i9 10900」は10コア20スレッドのCPUであり、定格動作において1コア~10コアまで同時に負荷がかかった時の最大動作倍率はコア数1~10に対して順番に[52, 52, 50, 49, 49, 48, 48, 47, 47, 46]です。全10コアへ同時に負荷がかかっても最大で4.6GHz動作が可能となっています。
HWiNFOから「Intel Core i9 10900」のコアクロックの挙動を確認したところ、確かに負荷の軽い場面では最大5.2GHz程度で動作するコアがありました。
Intel第10世代Core-S CPUの製品仕様によると、Intel Core i9 10900の電力制限は、「Turbo Boost Power Max(長期間電力制限/Power Limit 1)」が65W(=TDP)、「Turbo Boost Short Power Max(短期間電力制限/Power Limit 2)」が224W、「Turbo Boost Power Time Window(短期間電力制限時間/Tau)」が28sになっているはずです。
「Intel Core i9 10900」をZ490マザーボード「ASUS ROG MAXIMUS XII EXTREME(BIOS:0607)」と組み合わせてCPU動作をBIOS標準設定とすると、PL1:65W、PL2:225W、Tau:28sの電力制限で動作するので、Cinebenchのような短時間のベンチマークや、Aviult&x264エンコードの最初の1分弱など、全10コアへ同時に大きな負荷がかかった時の動作クロックは全コア4.6GHzに張り付きました。このときCPU Package PowerはTDP=PL1=65Wを大幅に超過し160W程度を示します。
仮にマザーボードの標準設定において電力制限が無効化されている場合、コアクロックは全コア4.6GHzに張り付いて変動せず、負荷開始からTauが経過しても、この消費電力が発生し続けます。
一方で「Intel Core i9 10900」を仕様通り電力制御(PL1:65W、PL2:224W、Tau:28s)で動作させると、負荷開始からTauで指定される短期間電力制限の期間内ではTDPを大きく上回る消費電力が発生しますが、Tau経過後はTDP(PL1:長時間電力制限)と同じ65WへCPU Package Powerが抑制されます。
「Intel Core i9 10900」はPL1:165Wの電力制限下において、全コアの実動平均コアクロックは3.3GHz程度となります。
続いてCPU消費電力の検証結果をチェックしていきますが、当サイトのCPUレビューでは主として”CPU温度への影響要因”という意味においてCPU消費電力を評価しているので、動画のエンコードによって長期間電力制限が効いている状態の平均的な消費電力をCPU消費電力として比較します。
個人的な意見としては短期間電力制限は短期間かつCPU温度によっても制御されるのでCPU温度への影響要因として比重は小さく、また瞬間ピーク電力はせいぜいがTDP+100W程度なので、マザーボードVRM電源の破損を心配するほどではなく、その程度の電力超過は電源ユニットで十分吸収できるので、評価対象としてあまり意味がないと思っています。
またCPU製品仕様のTDPについては、定義がIntel/AMDで厳密には異なり、各社の具体的な測定・算出方法も不明なので、CPU動作クロックを含めて総合的に判断する必要があるものの、基本的には長期間電力制限時の消費電力がTDP仕様値とほぼ一致、もしくはTDP仕様値を下回れば正常であると評価します。
当レビュー記事では簡単のため割愛しますが、CPUの消費電力に関する評価基準の補足として下記の記事も参考にしてください。
・2019年最新CPUの消費電力・発熱・TDP・温度について - 爆熱評価のウソほんと
CPU消費電力の測定には電源ユニット「Corsair HX1200i」のCorsair Linkによる電力ログ機能を用いてコンセントからの出力ではなく変換ロスを差し引いた入力電力をチェックしています。
また電力測定の際は上記の主電源ユニットに加えて、CPUへの電力供給を行うEPS端子を除いた、各種電源端子へ接続するために別の副電源ユニットを使用しています。そのため測定値にはEPS電源端子を経由して供給されるCPU消費電力以外の消費電力は含まれません。なお電源ユニットに対する実際の最大瞬間負荷は測定値より50~100W上回る場合があるので電源ユニットの電源容量選択の参考にする場合は注意してください。
CPUの消費電力や温度の測定を行う負荷テストについては、FF14ベンチマークの動画(再生時間6分40秒、4K解像度、60FPS、容量5.7GB)を変換ソースとして、Aviutl&x264を使って動画のエンコードを行います。動画エンコードの同時実行数については4~6コアは並列なし、8~14コアは2並列実行、16コア以上は3並列実行としています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTやPrimeなど専用負荷ソフトを使用しているレビューもありますが、管理人の私見としてはCPU負荷が非現実的なので、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースを想定した場合、ほぼ最大のCPU負荷となるx264による動画エンコードとストレステストに採用しています。
「Intel Core i9 10900」と比較対象の各CPUについて、上記負荷テスト中の”平均値を消費電力”、”最大値を瞬間的な最大電源負荷”と表記した場合、消費電力測定結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
TDP:65Wの添え字があるケースについては『PL1:65W、PL2:224W、Tau:56s』と電力制限を課しているので当然ですが、「Intel Core i9 10900」のCPU消費電力は92W程度となりました。電力制限を解除すると全コア4.6GHz動作となりEPS電源経由の消費電力は200W前後で推移します。
Z390環境における第8/9世代CPUのEPS電力と比較して、「Intel Core i9 10900」など第10世代CPU各種はCPU Package Powerに対するEPS電力の値が15~20W程度大きい(EPS電源経由の消費電力が大きい)という傾向が確認されています。
そこで、いくつかのCPUにおいてシステム消費電力(EPS電源消費電力と同じくCorsair HX1200iの出力電力ログを参照)と、CPU Package Power(HWiNFOによってソフトウェアモニタリング)の2種類についても測定し、『EPS電力とCPU Package Powerの差分』、『システム電力とEPS電力の差分』の2つを下のグラフにまとめました。
まず前提として、システム電力とEPS電力の差分(青色バー)がミニマックスでも5W程度の差に収まっているので、第10世代CPU&Z490の環境においてATX24PIN電源の消費電力がEPS電源へ転嫁されているというわけではないようです。
次に赤色バーに注目すると、EPS電力とCPU Package Powerの差分には第10世代CPUと第8/9世代CPUとの間にはやはり大きな差が見られます。
原因の1つとして、Z490環境については検証機材であるASUS ROG MAXIMUS XII EXTREMEは16フェーズと規模の大きいVRM電源回路を備えているので、その損失を考えたのですが、9フェーズ回路のASRock Z490 Phantom Gaming ITX/TB3で検証を行っても同じ結果が得られたので、VRM電源の損失という説は違うようです。
10コアダイの10900Kや10700KだけであればCPU Package Powerにマイナスのオフセットがかかっているという可能性も否定できなくはないのですが、第8世代CoffeeLake-Sをそのまま流用しているらしい6コアダイの10400でも同じ傾向になっており、8700Kと比較した時のコアクロックおよび消費電力との整合性を考えると、CPU Package Powerのオフセット説も疑問が残ります。
事実として第10世代CPUのEPS電源経由の消費電力は従来よりも15~20W程度大きいという傾向はあるものの、どうしてそうなるのか具体的な原因がわからないというのが正直なところです。
続いて「Intel Core i9 10900」は付属CPUクーラーで運用できるかどうかを検証してみました。検証負荷には消費電力測定と同様に動画のエンコードを実行しています。
付属CPUクーラーのファン回転数は2000RPMに固定しています。ファンノイズは40dB前後となっており、PCケースに入れてしまえば、そこまで煩くはありません。最大ファン回転数は3000RPMなのでファンノイズは上がりますが冷却性能的には多少の余力を残しています。
「Intel Core i9 10900」を付属CPUクーラーで冷やしてみると、仕様値通りにTDP65Wの電力制限が適用されていれば、短期間電力制限のブーストが効く最初の30秒弱でCPU温度が80度を超えますが、それ以降はCPU Package Powerが65Wに制限されるので70度前後に収まります。
PL1:65Wを大幅に超えるような電力制限解除に対応できる余力はありませんが、TDP65Wの仕様値通りであれば付属CPUクーラーで「Intel Core i9 10900」を運用可能です。
TDP65W動作時のIntel Core i9 10900の全コア動作クロックは実動平均で3.3GHz程度になっており、全コア4.6GHzに張り付く電力制限無効化との性能差は概算で40%程度です。ワークロードの重さによっては、これよりも実動コアクロックが低くなる可能性もありますが、ベースクロック仕様値の2.8GHzはTDP65W制限下でもクリアできていると見て問題ないと思います。
Core i9 10900の電力制限解除に対応可能なサードパーティ製CPUクーラーの参考として、「Intel Core i9 10900K」を120サイズ空冷CPUクーラーで冷やすと、電力制限無効化の全コア4.9GHzではベンチ板上での測定でもCPU温度が90度に達しました。一方で定格動作の通りにPL1=TDP=125Wの電力制限を適用するとCPU温度は60度前後に収まっています。
Core i9 10900の電力制限無効化で200W前後の発熱になる全コア4.6GHz張り付きの状態では240サイズ以上のマルチファン簡易水冷CPUクーラーが推奨ですが、Core i9 10900K相当となるPL1:125Wの電力制限解除であれば、一般的な120サイズ冷却ファンの空冷CPUクーラーでも問題なく運用が可能です。
なおCore i9 10900の電力制限解除による全コア4.6GHzについては、Core i9 10900Kの電力制限無効化による全コア4.9GHzほどではないもののやはり消費電力が200W前後とかなり大きくなるので、静音性も考慮すると空冷CPUクーラーでは苦しく、マルチファン簡易水冷が推奨です。240サイズラジエーターの簡易水冷CPUクーラーなら十分な静音性を維持したままで運用が可能です。
検証機材として組み合わせて使用されるマザーボードによっては、標準設定がTDP65Wを満たす定格動作を無視されていることがあります。そういったマザーボードを使用したレビューにおいてはIntel Core i9 10900は消費電力(発熱)が非常に大きく、CPU温度が高温になるためハイエンド空冷やマルチファン大型簡易水冷のCPUクーラーが必要である、と評価される恐れがありますが、仕様値通りにTDP65Wの動作設定であれば当然ながら消費電力は抑制され、付属のCPUクーラーを始めとして、一般的な空冷CPUクーラーでも問題なく運用できます。
当サイトでは約3年前のCore i9 7900Xのレビューから指摘していたことですが、『IntelはES品等の検証において定格動作設定を使用するガイドラインを示す』、『マザーボードベンダーはBIOS標準設定に定格動作を満たす設定を採用する』の2点を徹底してもらいたいというのが管理人の意見です。
Intel Core i9 10900の基礎ベンチマーク
Intel Core i9 10900の基本的なCPU性能を専用ベンチマークソフトで検証しました。この章ではPCMark 8とPCMark 10という総合ベンチマークソフトを使用していますが、デスクトップ向けの高性能CPUの性能比較ベンチマークとしては頭打ちな傾向があります。レビュー項目の1つとして参考までにスコア比較していますが、実用的なCPU性能については後半の個別性能比較を参考にしてください。
また同ベンチマークはシングルスレッド性能(動作クロックの高さ)が重要になる傾向も強く、近年のCPUを見ると、Intel第8/9世代Coreに比べて第2世代以前のAMD Ryzen CPUでは低めのスコアが出ていましたが、AMD第3世代RyzenはIntel第8/9世代Coreとそん色ないパフォーマンスを発揮できるようになっています。
まずは「PCMark 8 Creative Test (Run Accelerated)」のベンチマーク結果をチェックしていきます。「PCMark 8」は動画再生能力、DirectX9のグラフィック性能、Webブラウジング、ビデオチャットなど一般ユースにおけるPCの総合的な性能を測定するためのベンチマークソフトです。
「Intel Core i9 10900」を含めた各CPU環境のPCMark 8ベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
「PCMark 10 Extended」のベンチマーク結果をチェックしていきます。「PCMark 10」はPCMark 8と同様にPCの総合的な性能を測定するためのベンチマークソフトですが、DirectX11に対応するなどPCMark 8よりも最近のPCの性能測定に最適化されています。
「Intel Core i9 10900」を含めた各CPU環境について、PCMark 10ベンチマークの総合スコアを比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
「PCMark 10 Extended」にはPCの基本性能を測る「Essentials」、ビジネスアプリケーション性能を測る「Productivity」、クリエイティブ性能を測る Digital Content Creation」、ゲーム性能を測る「Gaming」の大きく分けて4つのテストグループがあるので、個別にベンチマークスコアを比較してみました。
PCの基本性能を測る「Essentials」は、アプリケーションの起動に要する時間を測る「App Start-up」、 ウェブブラウジングの性能を測る「Web Browsing」、1対1または多対多のビデオ会議をシミュレートする「Video Conferencing」の3つのワークロードで構成されています。
モバイル版Core i7 1065G7を搭載するSurface Pro 7との比較でわかりますが、一般的なPC利用において大半のデスクトップ向けCPUは十分な性能を備えています。
「Essentials」について「Intel Core i9 10900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
ビジネスアプリケーション性能を測る「Productivity」は、ワープロソフト(マイクロソフトWordなど)の処理性能をシミュレートする「Writing」、表計算ソフト(マイクロソフトExcelなど)の処理性能をシミュレートする「Spreadsheets」の2つのワークロードで構成されています。
モバイル版Core i7 1065G7を搭載するSurface Pro 7との比較でわかりますが、一般的なオフィスワークにおいて大半のデスクトップ向けCPUは十分な性能を備えています。
「Productivity」について「Intel Core i9 10900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
クリエイティブ性能を測る「Digital Content Creation」は、写真に対するフィルタリング処理の性能をシミュレートする「Photo Editing」、動画編集の性能をシミュレートするワークロード「Video Editing」、レイトレーシングによる3Dグラフィクス制作(3Dレンダリング)をシミュレーションする「Rendering and Visualization」の3つのワークロードで構成されています。
「Digital Content Creation」について「Intel Core i9 10900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
ゲーム性能を測る「Gaming」は、グラフィックボードの性能測定で幅広く活用されているベンチマークソフト「3DMark」に収録された「Fire Strike」と同じベンチマークテストを実行するワークロードです。
「Gaming」について「Intel Core i9 10900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Intel Core i9 10900のクリエイティブ性能
Intel Core i9 10900について3Dレンダリング、動画エンコード、RAW現像、PCゲーム/スマホアプリのビルドなどクリエイティブ作業に関する性能を各種ベンチマークソフトや実際のアプリケーションで検証しました。Intel Core i9 10900の3Dレンダリング性能
CPUのマルチスレッド性能を比較するベンチマークソフトとして国内外で最も知られている「Cinebench R15」をはじめとして、Cinebenchの2019年リリースの最新バージョン「Cinebench R20」、オープンソース3DCGソフト「Blender」の公式ベンチマークソフト、3Dレンダラー「Corona Renderer」の公式ベンチマークソフト、3Dレンダラー「V-Ray」の公式ベンチマークソフトの4種類を使用して、CPUの3Dレンダリング性能についてベンチマーク測定を行いました。Cinebench R15は3Dレンダリング性能を測定するベンチマークソフトになっており、マルチスレッド性能を測定するテストとシングルスレッド性能を測定するテストの2種類を実行しています。また2019年リリースの最新バージョンCinebench R20についてはマルチスレッド性能を測定するテストのみを実行しました。
Cinebench R15 マルチスレッド性能テストについて「Intel Core i9 10900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Cinebench R15 シングルスレッド性能テストについて「Intel Core i9 10900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Cinebench R20 マルチスレッド性能テストについて「Intel Core i9 10900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
3DCGソフト「Blender」の公式ベンチマークソフトについて「Intel Core i9 10900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
「Blender」の公式ベンチマークソフトのレンダリング時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i9 9900Kを基準にして(全CPU比較データではCore i5 9400Fが基準)、「Intel Core i9 10900」を含めた各種CPUのレンダリング速度を性能比としてグラフ化しました。 【全CPU比較データ】
3Dレンダラー「Corona Renderer」の公式ベンチマークソフトについて「Intel Core i9 10900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
3Dレンダラー「Corona Renderer」の公式ベンチマークソフトのレンダリング時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i9 9900Kを基準にして(全CPU比較データではCore i5 9400Fが基準)、「Intel Core i9 10900」を含めた各種CPUのレンダリング速度を性能比としてグラフ化しました。 【全CPU比較データ】
3Dレンダラー「V-Ray」の公式ベンチマークソフトについて「Intel Core i9 10900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
3Dレンダラー「V-Ray」の公式ベンチマークソフトのレンダリング時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i9 9900Kを基準にして(全CPU比較データではCore i5 9400Fが基準)、「Intel Core i9 10900」を含めた各種CPUのレンダリング速度を性能比としてグラフ化しました。 【全CPU比較データ】
Intel Core i9 10900の動画エンコード性能
続いて無料で利用できる動画編集ソフトとして国内外で多数のユーザーがいる「Aviutl」と、商用動画編集ソフト「TMPGEnc Video Mastering Works 7」と「Adobe Premiere Pro(Media Encoder)」を使用して、「Intel Core i9 10900」を含めた各種CPUの動画エンコード性能を比較していきます。AviutlとTMPGEnc Video Mastering Works 7はいずれも、現在主流なH.264 (MPEG-4 AVC) ビデオストリームへエンコードを行う「x264」エンコーダ、そしてH.264より高圧縮・高画質で次世代規格として期待されているH.265(HEVC) ビデオストリームへエンコードを行う「x265」エンコーダが使用できるので、CPUをリソースとして各エンコーダで共通の動画ファイルのエンコードを行いました。
エンコードを行う動画ファイルについては、Tom Clancy's Ghost Recon Wildlandsのゲーム内ベンチマーク(60秒ほど)をNVIDIA ShadowPlayで録画したものを使用しています。1920×1080/60FPS/50Mbpsと3840×2160/60FPS/120Mbpsの2種類の動画ファイルを作成し、「1920×1080 to 1920×1080」、「3840×2160 to 1920×1080」、「3840×2160 to 3840×2160」の3種類のエンコードを行っています。
Aviutlのx264/x265のエンコード設定は次のスクリーンショットのようになっています。TMPGEnc Video Mastering Works 7については固定ビットレートで1920×1080へエンコードする場合は25Mbps、3840×2160へエンコードする場合は60Mbpsに設定しています。
エンコーダと解像度設定が同じであればaviutlとTMPGEncのCPU別エンコード速度の傾向は概ね一致するので、aviutlのケースを抜粋してグラフを掲載します。厳密にはソフトウェアによって若干CPUメーカー別で得意不得意もあるので、aviutlとTMPGEncの全CPU比較データはリンクから各自で参照してください。x2/x3/x4のバーについては同じエンコードを添え字の数だけ並列実行した時の合計変換フレームレートを示しています。
なおフルHD解像度では8コア16スレッド程度、4K解像度では16コア32スレッド程度でマルチスレッド分散がボトルネックになり始め、1つのエンコードだけではCPUが遊び始めます。20コアオーバーのウルトラメニーコアCPUでマルチスレッド性能をフル活用しようと思うと、8K解像度のような超高解像度のエンコード、もしくは4K動画の複数並列エンコードを行う必要があるので注意してください。
x264エンコーダによって1920×1080解像度の動画をH.264 (MPEG-4 AVC)の1920×1080解像度へエンコードした時のエンコード速度について「Intel Core i9 10900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)】
x264エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.264 (MPEG-4 AVC)の1920×1080解像度へエンコードした時のエンコード速度について「Intel Core i9 10900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)】
x264エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.264 (MPEG-4 AVC)の3840×2160解像度へエンコードした時のエンコード速度について「Intel Core i9 10900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)】
x265エンコーダによって1920×1080解像度の動画をH.265(HEVC)の1920×1080解像度へエンコードした時のエンコード速度について「Intel Core i9 10900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)】
x265エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.265(HEVC)の1920×1080解像度へエンコードした時のエンコード速度について「Intel Core i9 10900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)】
x265エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.265(HEVC)の3840×2160解像度へエンコードした時のエンコード速度について「Intel Core i9 10900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)】
加えてAdobe Premiere Pro(Media Encoder)による動画エンコードについても、「Intel Core i9 10900」を含めた各種CPUの動画エンコード性能を比較しました。
Adobe Premiere Proのエンコード設定はCPUリソースのx264エンコードで、1920×1080へエンコードする場合は25Mbps、3840×2160へエンコードする場合は60Mbpsの固定ビットレートです。Media Encoderでは1つのプロジェクトを複数の設定で同時にエンコードできますが、複数のプロジェクトを同時にエンコードすることができないので単一エンコードのみを比較しています。
Adobe Premiere Proによる動画エンコードについてはAMD Ryzen CPUは苦手である評価されていることが多いですが、2020年現在では最適化も進んでおり、コアスレッド数とコアクロックに比例した性能が発揮できるようになっています。
【Adobe Premiere Pro 全CPU比較データ:1920to1920 / 3840to1920 / 3840to3840】
Intel Core i9 10900のRAW現像性能
続いてDxO PhotoLabによるRAW現像を行って「Intel Core i9 10900」を含めた各種CPUの性能を比較していきます。「SONY DSC-RX100M5」で撮影した5472×3648解像度のRAW画像ファイル 100枚に対して、DxO PhotoLabの画質プリセット「DxO 標準」をベースにノイズ除去を「PRIME」に変更したプリセットを適用し、RAW現像を行いました。なおDxO PhotoLabによるRAW現像は並列処理数を設定できますが、CPUコア数の半分もしくはそれより一つ少ないくらいの並列処理で最速になるようです。DxO PhotoLabによるRAW現像速度について「Intel Core i9 10900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Intel Core i9 10900のPCゲーム/スマホアプリのビルド性能
最後に「Unreal Engine 4」や「Unity」などフリーウェアながら高画質なPCゲームやスマホゲームを製作可能なゲームエンジンを使用したゲーム制作におけるCPU性能の検証として、「Unreal Engine 4」で「Intel Core i9 10900」を含めた各種CPUの性能を比較していきます。検証にはEpic Games Storeで無料配布されているデモプロジェクト「Infiltrator」を使用したビルド時間の比較を行います。検証設定としてリアルタイム表示はオフ、ライティングの品質をプロダクションとしています。Unreal Engine 4のバージョンは4.22.3、Windows10のバージョンは1903で統一しています。
「Unreal Engine 4 - Infiltrator」のビルド時間について「Intel Core i9 10900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
「Unreal Engine 4 - Infiltrator」のビルド時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i9 9900Kを基準にして(全CPU比較データではCore i5 9400Fが基準)、「Intel Core i9 10900」を含めた各種CPUのビルド速度を性能比としてグラフ化しました。 【全CPU比較データ】
Intel Core i9 10900のゲーミング性能
Intel Core i9 10900のPCゲームに関する性能を実ゲームを用いたベンチマーク測定で検証しました。なお章タイトルではゲーミング性能と表記してはいますが、Intel第7/8/9世代Core-SやAMD第2/3世代Ryzenなどここ数年で発売された4コア4スレッド以上のCPUであればフルHD~4K解像度の60FPSターゲットにおいてCPUボトルネックが発生するケースは多くありません。そのためCPUゲーム性能比較の具体的な内容は”高フレームレートにおけるCPUボトルネック比較”と表現するのが実状に即しています。
ただし最新の超高画質で重いゲームの場合、ゲームプレイの裏で次のシーンのロード作業が動くとロードが遅くなったりスタッター(カクツキ)が発生することがあるので、ゲーミングPCに搭載するCPUとしてIntel Core i5 10400やAMD Ryzen 5 3600など6コア12スレッド以上を個人的に推奨しています。
ゲームタイトルにもよりますがPCゲームにおけるCPU負荷は基本的にTDP内に収まることが多く、CPUコアクロックは全コア最大動作倍率に張り付きます。フレームレートに対するCPUボトルネックの緩和においては、この全コア最大動作倍率の高さが重要になり、クリエイティブタスクと違って電力制限は支配的ではなくなります。(PCゲームではIntel製CPUのPL1、AMD製CPUのPPTは影響をほとんど及ぼさなくなる)
Core i9 9900KやRyzen 7 3700XのようにTDPに対して全コア動作倍率の高いCPUでは、PCゲームにおいてもCPU使用率が高くなるハイフレームレートでCPU消費電力がTDPを超過するタイミングもありますが、TDP内に制限した場合と比較して大きな差は出ません。
そのためクリエイティブタスクなどここまでの検証において複数の電力制限で測定していたCPUも、PCゲームでは簡単のため電力制限が緩い方だけを使用して性能を測定します。
「Intel Core i9 10900」の場合は、200~300FPSの超高フレームレートでCPU負荷が比較的大きい状態でもCPU Package PowerはTDP65Wを下回るなら(もしくはTauのリセットが効く範囲内でのブーストが機能するなら)、全コア4.6GHzの高速動作となります。
ただし「Intel Core i9 10900」の場合はゲーム負荷時のコアクロックとPL1の関係に注意が必要です。
「Intel Core i9 10900」は10コア/4.6GHzという多コア高クロックに対してTDP65WとPL1の値が小さいため、ハイフレームレートなPCゲーミングなど一部のCPU負荷の高いゲーミングシーンにおいて、PL1以上のCPU負荷がTauを超過する長時間に渡って発生する可能性があります。
一例としてAssassin's Creed Odysseyでは100FPSを超えるハイフレームレートでCPU負荷をかけるとCPU Package Powerが100~120Wで推移します。
上のようにPL1を超えるCPU負荷が発生すると、Tauの時間内であれば(リセットが効く限りは繰り返しも可)、全コア4.6GHzで動作しますが、連続してTauの制限時間を超過すると、PL1:65Wの電力制限が発生し、コアクロックが低下します。こうなると当然CPUボトルネックが強まって、全コア4.6GHz動作の時よりもフレームレートが低下する可能性が高くなります。
ゲーム中にPL1:65Wの電力制限が発生した時の実動クロックは、上の章で紹介したクリエイティブタスクで100%負荷がかかった時のように全コア3.3GHzまで下がることは基本的になく、その時のCPU負荷によって前後しますが、現実的には4.0~4.6GHzの範囲内で変動すると思います。
各CPUのゲーミング性能を測定するため統一検証機材として、2020年最速のGPUである「NVIDIA GeForce RTX 2080 Ti」を搭載したグラフィックボード「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme Core」を使用しています。
ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme Coreは、RTX 2080 TiのAIBパートナーの中でも屈指のOCチューニング力を誇るZOTACによって良質なGPUコアが選別され、リファレンスよりも200MHz以上も高いブーストクロック、さらにGDDR6メモリのメモリクロックまで引き上げるという、RTX 2080 Tiグラフィックボードで最速を狙えるファクトリーOCが施されています。加えて、ZOTACを高品質メーカーとして一躍ブランド力を押し上げたAMP Extremeシリーズの代名詞とも言える3スロットを占有する超弩級な大型GPUクーラーが採用され、静音性も非常に優れたモデルです。
・「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme」をレビュー
CPU別ゲーミング性能の比較には近年の高画質PCゲームから、Assassin's Creed Odyssey、Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands、Shadow of the Tomb Raider、Middle-Earth: Shadow of Warの4種類を使用しています。60FPSの標準フレームレートをターゲットとした4K(3840×2160)解像度/高画質設定と、100FPS以上のハイフレームレートをターゲットとしたフルHD(1920×1080)解像度/中画質設定の2種類について、各ゲームで平均フレームレートと最小フレームレートを測定しました。
なおCPUボトルネック比較の性質上、平均FPSと最小FPSをある程度の精度で測定する必要があるため、検証ではほぼ同一シーンで測定が可能なゲーム内ベンチマークを使用しています。
Intel Core i9 10900のゲーム性能 - 4K解像度/60FPSターゲット
まずは60FPSの標準フレームレートをターゲットとした4K(3840×2160)解像度/高画質設定のゲーミング性能について「Intel Core i9 10900」や比較対象CPUのベンチマーク結果をチェックしていきます。なお上述の通り60FPSターゲットでは基本的にCPUボトルネックは発生しないので、グラフの掲載順は性能(平均フレームレート)による昇順ではなく、当サイト既定のCPU分類順としています。
Assassin's Creed Odyssey(4K解像度、超高-画質プリセット)に関する「Intel Core i9 10900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands(4K解像度、非常に高い-画質プリセット)に関する「Intel Core i9 10900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Shadow of the Tomb Raider(4K解像度、DirectX12、最高-画質プリセット)に関する「Intel Core i9 10900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Middle-Earth: Shadow of War(4K解像度、ウルトラ-画質プリセット)に関する「Intel Core i9 10900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Intel Core i9 10900のゲーム性能 - フルHD解像度/ハイフレームレート
続いて100FPS以上のハイフレームレートをターゲットとしたフルHD(1920×1080)解像度/中画質設定のゲーミング性能について「Intel Core i9 10900」や比較対象CPUのベンチマーク結果をチェックしていきます。Assassin's Creed Odyssey(フルHD解像度、中-画質プリセット)に関する「Intel Core i9 10900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands(フルHD解像度、中-画質プリセット)に関する「Intel Core i9 10900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Shadow of the Tomb Raider(フルHD解像度、DirectX12、中-画質プリセット)に関する「Intel Core i9 10900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Middle-Earth: Shadow of War(フルHD解像度、中-画質プリセット)に関する「Intel Core i9 10900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Intel Core i9 10900のゲーム性能 - バトルロイヤル系PCゲーム
最後に近年流行りのオンライン対戦PCゲームの中でも競技ゲーマーにも愛用される240Hzの超ハイリフレッシュレートなゲーミングモニタのユーザーが多いであろうバトルロイヤル系PCゲームにおけるCPU別ゲーム性能をチェックしていきます。検証にはバトルロイヤルというジャンルにおける4大タイトルと言っても過言ではない、Apex Legends、Call of Duty: Black Ops 4、Fortnite、PlayerUnknown’s Battlegroundsを使用します。
Apex Legends(フルHD解像度、RTX 2080 Tiの既定プリセット)に関する「Intel Core i9 10900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。
一応、平均FPSの昇順で並べましたが、Apex Legendsは240FPSターゲットでもCPUボトルネックの影響が小さいタイトルとなっており、第1/2世代Ryzenが若干劣る程度で、第3世代Ryzenや第9世代Coreなど最新CPUは6コア6スレッド以上ならほぼ横並びです。
Call of Duty: Black Ops 4(フルHD解像度、RTX 2080 Tiの既定プリセット)に関する「Intel Core i9 10900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。
Fortnite(フルHD解像度、高-画質プリセット)に関する「Intel Core i9 10900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。
PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS(フルHD解像度、中-画質プリセット)に関する「Intel Core i9 10900」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。
PUBGのベンチマーク測定に使用しているトレーニングモードは他プレイヤーの影響を受けやすく測定精度は他の検証に比べるとやや劣るのですが、今回検証した中ではIntel Core i9 10900とCore i9 9900Kが頭1つ飛びぬけ、第3世代Ryzen各種やCore i7(8C8T, 6T12T)は測定誤差の範囲内でほぼ同性能といった具合でした。それ以下ではCore i5(6C6T)、Core i3(4C4T)、第2世代Ryzenと順に性能がスケーリングしていきます。
CPUエンコーダとリアルタイム配信について
ゲーム実況やライブ配信と呼ばれるPCゲームのリアルタイム配信について、現在ではNVIDIA GeForce GTX 1660やAMD Radeon RX 580などミドルクラスGPUをエンコーダとすることでフルHD解像度で必要十分な画質とフレームレートが得られます。GPUエンコーダは動作自体も軽いので、これらGPUエンコーダの登場によってリアルタイム配信やプレイ動画の録画におけるCPUエンコーダの役目は終わったというのが一時期の私見でしたが、メインストリーム向けCPUのコアスレッド数の増加に伴い、x264 Mediumのような高画質プリセットのプレイ&録画が一般ユーザー的にも現実的になってきています。
Youtube LiveやTwitchなどリアルタイム配信(ライブストリーミング)サービスで、PS4/Xbox/Switch等のコンシューマーゲーム機やPCゲームのプレイ動画・ゲーム実況を快適に配信するのに必要なCPU性能については、現在、連載を続けている【快適配信】シリーズで詳細に解説しています
一口にゲーム実況と言っても、『1.ビデオキャプチャを使用してPCは録画配信作業のみを行う』、『2.PC1台で同時にゲームプレイと録画配信を行う』の2つのケースに大別され、どちらで使用するのかで要求されるCPU性能やCPUメーカー毎の得手不得手など事情が変わってくるので注意してください。
ざっくりと現状でCPUを使用したリアルタイム配信・ゲーム実況に要求されるCPU性能だけ述べておくと、『ビデオキャプチャを使用した配信の最低水準は6コア12スレッドのCPU』、『ゲームをプレイしながら配信の最低水準は8コア16スレッドのCPU』です。
・【快適配信】シリーズの記事一覧へ
画質と快適性を求めるなら録画・配信専用マシンもオススメ
ビデオキャプチャ業界の進歩も目覚ましく、2018年に発売された「AVerMedia Live Gamer Ultra」は4K/60FPS/HDRやフルHD/240FPSの映像ソースを無遅延なパススルー表示しつつ、フルHD/60FPSのプレイ動画として録画・配信できるUSB接続外付け機器型ビデオキャプチャとなっており、プレイ動画の録画・配信に関する多様なニーズを網羅し得る名機です。・4K/HDRや240FPSのパススルー対応「AVerMedia Live Gamer Ultra」をレビュー
前述の通りフルHD/60FPSの録画・配信であればGTX 1060程度の性能のGPUをエンコーダとすることで必要十分な画質が得られて動作も軽いので、録画配信のために高性能な反面、非常に高額なCPUに投資するよりも、多少コストがかかっても「AVerMedia Live Gamer Ultra」などのビデオキャプチャと組み合わせて録画・配信用サブ機を構築するほうが、録画・配信の手法としてはわかりやすくてハードルが低いと思います。
・AVerMedia製ビデオキャプチャの最新おすすめ機種を機能比較
「AVerMedia Live Gamer Ultra」などUSB接続外付け機器型ビデオキャプチャと組み合わせて録画・配信用サブ機を構築するのであれば、ASRock Deskmini GTX 1060ベアボーン採用BTO PCの「G-GEAR alpha」や「GALLERIA Mini 1060」がおすすめです。
PCサイズはコンパクトなのでサブ機としてもあまり余分にスペースを占有せず、GPUにはGTX 1060を搭載しておりフルHD/60FPSのGPUエンコードにも余裕で対応できて、CPUには最大で「G-GEAR alpha」ならCore i7 8700、「GALLERIA Mini 1060」ならCore i7 7700を選択可能、2基の2.5インチSATA SSDと3基のM.2 SSDを搭載可能なのでストレージ拡張性も十分です。ASRock Deskmini GTXシリーズについてはレビューも公開しているので参考にしてみてください。
・GTX 1060搭載で容積2.7LのスーパーコンパクトPC「GALLERIA Mini 1060」をレビュー
・G-GEAR alphaシリーズの販売ページへ
Intel Core i9 10900のレビューまとめ
「Intel Core i9 10900」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ or 概要
- Intel初のメインストリーム向け10コア20スレッドCPU
- 定格でメモリ周波数2933MHzに対応
- PL1:125W前後の電力制限解除なら空冷CPUクーラーでも問題なく運用可能
- Core i9 9900Kよりも20%程度高いクリエイティブタスク性能(適切に電力制限を解除すれば)
- ハイフレームレートPCゲーミングでは現状で最速クラス(適切に電力制限を解除すれば)
- TDP65Wの電力制限下において全コアが実動平均で3.3GHz程度
- 電力制限無効化の場合はマルチファン簡易水冷CPUクーラーを推奨
- 価格の近い競合製品Ryzen 9 3900Xと比較してクリエイティブタスク性能で劣る
温度・消費電力について
温度・消費電力に関する章や補足記事で解説した通り。Intel Core i9 7900Xの登場以降、Intel CPUは検証機材に使用するマザーボードに依るとはいえ基本的にIntelの仕様を満たす電力制限が無効化されていることが多く、Intel Core i9 10900もまたCPU温度と消費電力が非常に高いと多くのレビューでは評価される可能性が高いと思われます。しかしながら電力制限をIntelの仕様に合わせて設定すれば当然、Core i9 10900は問題なくTDP65WのCPUとして運用することができ、TDP65Wの電力制限を課していれば120サイズの一般的な空冷CPUクーラーはもちろん、付属CPUクーラーでも適切な温度で運用が可能です。
ただし「Intel Core i9 10900」の性能を価格相応に魅力のあるレベルで発揮するためには、実際のところ、PL1:125W程度に電力制限を解除する必要があります。
折角、Intelのメインストリーム向け10コア20スレッドCPU「Intel Core i9 10900」で自作PCを組むのであれば、コストパフォーマンスを重視するにしてもPL1:125Wに対応可能な120サイズ空冷CPUクーラー、もしくはCPUの最大性能を引き出すことが可能な240サイズ以上の簡易水冷CPUクーラーを使用するのがオススメです。
クリエイティブ性能について
「Intel Core i9 10900」のクリエイティブ性能については、10コア20スレッドのCPUが全コア3.3GHz(TDP65W制限)もしくは全コア4.6GHz(電力制限無効化)で動作するという額面通りのパフォーマンスです。電力制限を無効化して全コア4.6GHzで動作させた時の性能は、全コア4.9GHzで動作する上位モデルCore i9 10900Kに対してコアクロックに比例して10%未満まで迫ります。同世代下位モデルのCore i7 10700Kや前世代のメインストリーム向け最上位CPUであるCore i9 9900Kなど8コア16スレッドCPUと比較して、コアスレッド数に比例した20%程度の性能向上を果たしています。
しかしながら、Core i9 10900はTDP65Wの仕様値通りに電力制限を課すと実動コアクロックが3.3GHz前後まで低下するので、全コア4.6GHz時よりも40%程度まで下がり、TDP95W動作のCore i9 9900Kと同程度の性能になってしまいます。
”多コアをゆっくり”というワッパの法則の通り、Core i9 10900のワットパフォーマンスは同電力制限を課した8コア16スレッドの10700Kや9900Kよりも悪いということは決してなく、PL1:65Wという条件でマルチスレッド性能を見れば現状、Intel製メインストリーム向けCPUで最速であることも間違いないのですが、Core i9 10900を10コア20スレッドCPUとしての魅力ある形で運用しようとすると、PL1:125W程度までは少なくとも電力制限を緩める必要があります。
一方で競合AMDのメインストリーム向けCPUである第3世代Ryzenと比較すると、希望小売価格で競合するRyzen 9 3900Xは12コア24スレッドCPUなので、消費電力が140~150Wで一致するTDP125W制限ではコアスレッド数に比例して20%程度の性能差があり、電力制限無効化の全コア4.6GHzでもCore i9 10900はRyzen 9 3900Xに及びません。
TDP65Wの仕様値通りで運用すると10コア20スレッドにも関わらず、8コア16スレッドのRyzen 7 3700Xと同程度の性能になってしまうので、AMD第3世代Ryzenに対するIntel第10世代Core-Sのワットパフォーマンスの低さが如実に現れる結果です。やはり「Intel Core i9 10900」を使うのであればワットパフォーマンスに目をつぶっても、10コア20スレッドCPUらしいマルチスレッド性能を発揮するPL1:125W以上で運用したいところです。
ゲーム性能について
Intelが第9世代に引き続き第10世代Comet Lake-S、特にCore i9 10900Kの発表スライドで掲げた”世界最速のゲーミングCPU(World's Fastest Gaming processor)”の売り文句の通り、100FPSオーバーのハイフレームレートにおけるCPUボトルネック緩和に関しては、Core i9 10900Kが最速です。今回レビューした「Intel Core i9 10900」は最大動作倍率で勝る10900Kには当然で及びませんでしたが(それでもほぼ僅差)、前世代最上位のCore i9 9900Kを上回る性能を発揮できます。100FPSオーバーのハイフレームレートにおけるCPUボトルネック緩和に関してトップランナーはCore i9 10900Kですが電力制限の扱い等で若干初心者にはオススメし難いきらいがある一方、上で紹介したように「Intel Core i7 10700K」は電力制限無効化でも一般的な120サイズの空冷CPUクーラーで運用が可能と導入が容易であり、コストパフォーマンス的にも最適なモデルだと思います。
ただし「Intel Core i9 10900」の場合はゲーム負荷時のコアクロックとPL1の関係に注意が必要です。
「Intel Core i9 10900」は10コア/4.6GHzという多コア高クロックに対してTDP65WとPL1の値が小さいため、ハイフレームレートなPCゲーミングなど一部のCPU負荷の高いゲーミングシーンにおいて、PL1以上のCPU負荷がTauを超過する長時間に渡って発生する可能性があります。ゲーム性能の面においても「Intel Core i9 10900」が十全な性能を発揮するにはPL1:125W以上への電力制限の解除が推奨されます。
ゲーム性能検証の冒頭でも述べたようにフルHD~4K解像度の60FPSターゲットであれば4コア4スレッド以上の最新CPUであればどれを使用しても大差はありません。
ただし最新の超高画質で重いゲームの場合、ゲームプレイの裏で次のシーンのロード作業が動くとロードが遅くなったりスタッター(カクツキ)が発生することがあるので、ゲーミングPCに搭載するCPUとしては、2万円台半ばから購入できることもありCore i5 10400やAMD Ryzen 5 3600など6コア12スレッド以上を個人的に推奨しています。
60FPSターゲットであってもAssassin's Creed OdysseyのようにCPUによって差が出るケースもあるので、PCゲームメーカーの最適化の優先順位まで考慮するとIntelのメインストリーム向け最新CPUのPCゲーミングにおける安定性にはやはり信頼がおけます。
またプレイ動画の配信についてはNVIDIA GeForceグラフィックボードで使用可能なハードウェアエンコーダNVEncの動作が軽快で、画質も最新Turing世代ではCPUによるx264の実用プリセットに迫る品質に改良されているので主流になりつつあります。この分野ではCPUの存在感は薄まりつつありますが、プレイ動画の作成や編集においては依然として動画のエンコード性能しかりCPUの性能(この場合はマルチスレッド性能)が重要であることは間違いないので、プレイ動画の作成という面もゲーム性能と捉えるなら、その意味でもCore i9 10900は優れたゲーミングCPUです。
なおIntel第10世代Core-S環境においてゲーム性能を遺憾なく発揮するには3200MHz~3600MHzにメモリ周波数をOCする必要があり、Z490マザーボードとの組み合わせが必須なので注意してください。
下位チップセットのH470やB460マザーボードではメモリ周波数が定格値を上限として制限されるので、メモリOCを行うにはZ490マザーボードを選択しなければなりません。(メモリのOC自体は3200MHz~3600MHzならOCプロファイルで簡単に動くので難しくありません) 【詳しくはCore i5 10400のレビュー記事で】
OCメモリの選び方や具体的なオーバークロックの設定方法については、こちらの記事を参考にしてください。
・【できる!メモリOC】 OCメモリの選び方から設定まで完全解説
総評 - 電力制限解除は前提で検討すべし
「Intel Core i9 10900」はTPD65WのCPUとして運用できるか、できるできない論で言えば運用できるというのが答えですが、TPD65Wで運用した時に10コア20スレッドCPUとして魅力のある性能が発揮できるか、というと競合製品の手前、”否”が答えになると思います。Intel製CPUの中で見ればTDP65Wの電力制限において8コア16スレッドのCore i7等を上回って最速ですが、AMD製CPUのほうが現状ではワットパフォーマンスが優れるので、この点についてはどうしようもありません。CPU消費電力65W前後で8コア以上のマルチスレッド性能を追求していくとIntel製CPUでは厳しいというのが実状です。
とはいえ「Intel Core i9 10900」もPL1:125W程度へ電力制限を緩和すれば、10コアCPUとして十分なマルチスレッド性能と、メインストリーム向けCPUとしての扱いやすさ(120サイズ空冷CPUクーラーで十分運用できる)を兼ね備え、なおかつゲーム性能でも競合を上回る2020年現在最速クラスゲーミングCPUと評価できます。
どの程度まで電力制限を解除するかは組み合わせるCPUクーラーの性能に合わせて調整すべきですが、120サイズ空冷CPUクーラーで対応可能なPL1:125Wが1つの目安になると思います。
電力制限の解除が前提になるので自作PC中級者以上でないと難しいきらいはありますが、最上位モデルCore i9 10900Kよりも1万円程度安価であり、在庫も比較的豊富で入手しやすく、倍率アンロックを除けば性能面でもそれほど大きな差はないので、Intel製の10コア20スレッドCPUで自作PCを組みたいということであれば10900Kよりもオススメできる製品だと思います。
以上、「Intel Core i9 10900」のレビューでした。
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Intel Core i9 10900 レビュー
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) June 26, 2020
良い
✅10コア20スレッド
✅PL1:125W程度なら空冷で運用可能
✅9900Kよりも20%程度高いクリエイティブ性能(*)
✅ハイフレームレートPCゲーミングでは最速クラス(*)
*適切に電力制限を解除すれば
悪いor注意
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