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Radeon RX 7700 XTグラフィックボードとしてAcerからリリースされた、リングブレードの2連ファンGPUクーラーを搭載し、ファクトリーOCも施されたゲーミングモデル「Acer Nitro AMD Radeon RX 7700 XT Overclocking」をレビューしていきます。
待望のAMD製次世代アッパーミドルGPU「Radeon RX 7700 XT」が、前世代で同ナンバリングのRadeon RX 6700 XTをどの程度上回り、また競合NVIDIAのGeForce RTX 4060 Tiと真っ向から戦えるのか、実ゲームベンチマークでグラフィック性能を徹底比較します。
Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC レビュー目次
1.Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OCの外観
2.Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OCの分解
3.Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OCの検証機材・GPU概要
4.Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OCのゲーム性能
5.Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OCの温度・消費電力・ファンノイズ
6.Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OCのレビューまとめ
製品公式ページ:https://www.acer.com/jp-ja/desktops-and-all-in-ones/components/acer-nitro-radeon-rx-7700-xt-oc-12g
知らない人も多そうですが、実はAcer公式ストアでは今回レビューしている「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」も含め、いくつかAMD Radeon RX 7000シリーズのオリファンモデルが発売中です。
Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OCの外観
早速、「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」を開封していきます。「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」はスポンジ製スペーサーの中央に、静電防止ビニール袋で包装されるというシンプルな形で梱包されていました。
「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」のグラフィックボード本体を見ていきます。
「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」のGPUクーラー外装は全て黒色プラスチック製です。高級感はありませんが、とりたてて安っぽいわけでもなく、シンプルな形状です。
「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」のグラフィックボード側面もAcer、Nitro、Radeonのロゴがある以外は基本的に装飾のないフラットな形状です。
「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」の全長は280mmです。
従来のフルサイズよりも+20mm弱なのでRX 7800 XT リファレンスよりも大きく、アッパーミドルクラスとしてはやや大きめですが、3連ファンGPUクーラー搭載で全長300mm超も多いRadeon RX 7700 XT オリファンモデルの中では比較的にコンパクトな製品です。
「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」はPCIEブラケットからはみ出す高さ方向も+25mmとかなり大きいので、PCケースサイドパネルとの干渉についても注意が必要です。
なおグラフィックボード基板自体はPCIEブラケットと同じ高さなので、PCIE補助電源コネクタや電源ケーブルの干渉については心配ありません。
ただ、アッパーミドル帯においては競合NVIDIAの最新GPUであるRTX 4070は全長220~240mmのモデルもあり(RTX 4060 Tiに至ってはMini-ITX対応モデルも)、PCIE補助電源も8PIN 1つだけで足りるのに対して、「AMD Radeon RX 7700 XT」はオリファンモデルの多くが全長280mm以上かつ3スロット占有で従来のハイエンドGPUなサイズ、PCIE補助電源も8PIN×2を要します。
AMDがターゲットとしているRTX 2070やRX 5700 XTといった旧世代のアッパーミドルからのアップグレードとなると、”換装の際にPCケースや電源ユニットといった既存環境から使いまわす部品との互換性”、という意味でRTX 4070やRTX 4060 Tiに比べて門が狭いというのが正直な感想です。
ハイエンド帯では、競合NVIDIAのGeForce RTX 4080は全長300mm超、4スロット占有モデルが大半なので(3スロットに収まるRTX 4070 Tiも300mm超がほとんど)、AMDはRadeon RX 7900 XT/XTXのリファレンスモデルのコンパクトさ、またPCIE補助電源として12VHPWRではなく従来規格の8PINを採用していて、アップグレードが容易であることをアピールしていましたが、より購買層の広いアッパーミドル帯で関係が逆転しているのは皮肉です。
「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」の2連ファンGPUクーラーには100mm径ファンを2基搭載しています。
2基の冷却ファンにはファンノイズを抑えつつ高い静圧&風量を得ることが可能なバリアーリング搭載冷却ファンを採用しています。
「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」はTGP200W超の発熱に対応するため、大型放熱フィンを採用したヒートシンクが搭載されており、PCIEスロットを3スロット占有します。
「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」のGPUクーラーでは、VRAMチップとVRM電源はいずれもヒートシンク本体にサーマルパッド経由で直接接触しており理想的な冷却構造です。
「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」はファクトリーOCも施されたモデルですが、補助電源数はRX 7700 XTのリファレンス仕様と同じくPCIE 8PIN×2です。
「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」のビデオ出力はRX 7700 XTのリファレンス仕様と同じくHDMI2.1×1、DisplayPort2.1×3の4基が実装されています。
Radeon RX 7000シリーズではビデオ出力を司るディスプレイエンジンも刷新され、2022年に入って大分普及してきたHDMI2.1に加えて、4K/480Hzや8K/165Hzに対応する次世代規格DisplayPort2.1(UHBR13.5)をサポートしています。
「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」にはAcer Nitroのロゴや赤色ラインが描かれたプラスチック製バックプレートが装着されています。
基板の反りや破損を防止する保護プレートとしての役割を果たしますが、前述の通りプラスチック製かつ、VRM電源回路やVRAMチップとの間にはサーマルパッドが貼られていないので冷却補助の機能はありません。
近年のグラフィックボードでGPUクーラー設計のトレンドになっているフロースルー構造は採用されておらず、グラフィックボード右端はバックプレートによって完全に塞がっています。
加えて、1kgを超える大重量なGPUクーラーベースコアとGPUダイを適切な圧力で密着させるリテンションバックプレートは非採用でした。(GPUダイ周りのネジ4つにスプリングはありますが)
グラフィックボードの重量はPowerColor Hellhound Radeon RX 7700 XTが1268g、AMD Radeon RX 7800 XT リファレンスモデルが1103gに対して、「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」は1016gとなっています。
バックプレート等で基板の反りは防止されていますが、重量は1kgを軽く超過しているのでPCIEスロットへの負荷を考えるとVGAサポートステイなどで垂れ下がりを防止したほうがいいかもしれません。
Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OCの分解
「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」を分解してGPUクーラーやグラフィックボード基板についてチェックしていきます。なお今回は自己責任で(もしくはレビュー用サンプル貸出先の協力のもと特別に許可を頂いて)分解を行っています。GPUクーラーの取り外し(分解行為)は、一部を除く多くのメーカーではグラフィックボードの正規保証の対象外になる行為です。
今回はレビューのために分解していますが、繰り返しますが保証対象外になるので基本的には非推奨の行為なのでご注意下さい。
「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」のGPUクーラーは、基板裏面のコア周辺4カ所、バックプレート上3カ所、PCIEブラケット側2カ所の計9カ所のネジで固定されていました。
9カ所のネジを外すとGPUクーラーは容易に取り外しが可能です。さらにネジを外していくと、PCB基板から補強プレートや各種ヒートシンク、バックプレートも取り外しが可能です。
バックプレートはプラスチック製ですし、グラフィックボード基板背面との間にサーマルパッドはないので、放熱板としては機能しません。
「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」にはオリジナル基板が採用されています。
Radeon RX 7700 XTのGPUコアにはNavi 32と呼ばれる346mm^2のGPUダイが使用されています。(NVIDIA製GPUと違ってGPUコア天面に刻印がない)
Radeon RX 7700 XTのVRAMはGDDR6となっており、GDDR6メモリチップはMicron、Samsung、SK hynixが製造していますが、今回入手した「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」にはSK hynix製の16GbのGDDR6メモリチップが6枚搭載されています。
RDNA 3アーキテクチャの最も大きな特徴として、ゲーミング向けGPUでは世界初となるチップレット構造(複数のシリコンダイを1つのパッケージ状に実装する方式)を採用しています。
なお所謂、2個1的な複数のGPUダイが統合されているわけではなく、心臓部となるGPUコアのGCD(Graphics Core Die)と呼ばれるGPUダイが1つあり、それにぶら下がる形でMCD(Memory Cache Die)と呼ばれるメモリキャッシュダイが4基実装されています。
「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」のVRM電源回路はGPUコアの左側に6フェーズおよび右側に8フェーズで、計14フェーズが実装されています。このうち10フェーズがGPUコア向け、残りはVRAM向けとSOC向けが4フェーズです。
「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」」のGPUクーラー本体をチェックすると、GPUコアと接する部分は銅製ベースプレートが採用され、ベースコアからは5本の銅製ヒートパイプが伸び、アルミニウム製放熱フィンが3スロットスペース内いっぱいに展開されています。
GPUコアと接する部分には冷却性能の高さで定評のある銅製ベースプレートが採用されています。GPUダイと接する銅製ベースプレートにはニッケルメッキが施されており、完全な鏡面ではありませんが、近い物が映り込む程度には平滑化されています。
GPUコア周辺のVRAMチップはGPUコアと共通の銅製ベースプレートに、VRM電源回路はヒートシンクにろう付けされた金属製プレートに、それぞれサーマルパッドを介して接し、ヒートシンク本体で直接冷却するという理想的な構造です。
GPUコアと接するベースプレートからは5本ヒートパイプが左右へ抜ける構造で、GPUクーラーヒートシンクの放熱フィン全体へ効率的に熱を拡散します。
ベースプレートから伸びる5本の銅製ヒートパイプによって3スロットを占有する大型GPUクーラー内部いっぱいに展開された極厚なアルミ製放熱フィンの迫力も圧巻です。
Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OCの検証機材・GPU概要
外観やハードのチェックはこのあたりにして早速、「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」を検証用の機材に組み込みました。テストベンチ機の構成は次のようになっています。テストベンチ機の構成 (ゲーム性能検証) |
|
OS | Windows11 Home 64bit |
CPU | Intel Core i9 14900K (レビュー) |
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36 (レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z5 RGB F5-7200J3445G16GX2-TZ5RK DDR5 16GB*2=32GB (レビュー) 7200MHz, 34-45-45-115 |
マザーボード |
ASUS ROG MAXIMUS Z790 HERO (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung SSD 990 PRO 1TB (レビュー) |
ゲームストレージ |
Nextorage NE1N 8TB (レビュー) |
電源ユニット | Corsair HX1500i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
ベンチ機のCPUには2024年現在ゲーミングシーンで最速CPUである「Intel Core i9 14900K」を使用しています。
近年では4K解像度・高画質設定の60~120FPSでもCPUボトルネックが生じるリッチグラフィックなゲームが増えています。
検証機材に使用しているCore i9 14900Kを始めとして、Intel第13/14世代CoreのK付き倍率アンロックモデルはそういったCPUバウンドな高画質ゲームでも旧世代CPUと比較して高い性能を発揮できるので、グラフィックボードを最新世代に買い替えるならGPUランクに合わせてCPUもアップグレードするのがオススメです。
・ゲームに最適なIntel製CPUはどれか、Core i9 14900Kと徹底比較
ベンチ機のシステムストレージには「Samsung SSD 990 PRO 1TB」を使用しています。
Samsung SSD 990 PROは、PCIE4.0対応SSDで最速クラスの性能を発揮し、なおかつ電力効率は前モデル980 PRO比で最大50%も向上しており、7GB/s超の高速アクセスでも低発熱なところも魅力な高性能SSDです。これからPCIE4.0対応プラットフォームの自作PCを組むなら、システム/データ用ストレージとして非常にオススメな製品です。
・「Samsung SSD 990 PRO 1TB」をレビュー。性能も電力効率もトップクラス!
ベンチ機のゲームインストール用ストレージには「Nextorage NE1N 8TB」を使用しています。
Nextorage Gシリーズ(NE1N)は、PHISON PS5018-E18 コントローラーと最新TLC型3D NANDを採用し、連続読み出しが7300MB/s、連続書き込みも6000MB/s以上というPCIE4.0対応SSDとしてハイエンドクラスの性能を発揮するゲーマー向けNVMe M.2 SSDです。
MTBF 160万時間、保証期間 5年、さらに保証条件の1つである書き込み耐性(TBW)は1TB当たり1200TBとスペック的にも高耐久なSSDであり、Nextorageはソニーのストレージ部門を源流とするのでストレージメーカーとしての信頼性も高いので安心して長く使えるSSDです。
・「Nextorage NE1N 8TB」をレビュー。PS5にも使える超大容量M.2 SSDを徹底検証
ベンチ機のシステムメモリには、Intel第13/14世代CPU向けメモリとしては4xメモリスロットのマザーボードでも動作可能な最速クラスの製品、メモリ周波数7200MHz/CL34の高メモリクロックかつ低レイテンシなメモリOCに対応した「G.Skill Trident Z5 RGB(型番:F5-7200J3445G16GX2-TZ5RK)」を使用しています。
G.Skill Trident Z5シリーズはIntel XMP3.0のOCプロファイルに対応した製品となっており、6000MHzの定番設定なモデルもあり、Intel第13/14世代CPUで高性能なPCを構築するお供としてオススメのOCメモリです。
ARGB LEDイルミネーションを搭載したバリエーションモデル G.Skill Trident Z5 Neo RGBもラインナップされています。
・「G.Skill Trident Z5 RGB」をレビュー。XMPで7200MHz OCに対応!
Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OCのGPU概要
Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OCに搭載されているGPU「Radeon RX 7700 XT」のスペックについて簡単に確認しておきます。Radeon RX 7700 XTのスペックは、コンピュートユニット数が54、シェーダー数が3456、コアクロックはゲームクロック2171MHz、最大ブーストクロック2544MHzです。
VRAMには従来よりも高速な18.0GbpsのGDDR6メモリを12GB容量搭載しています。メモリーバス幅は192bitなのでメモリ帯域は436GB/sです。またRDNA3アーキテクチャの特長でもある超高速キャッシュ 第2世代Infinity Cacheを48MB搭載し、有効メモリ帯域は1995GB/sであるとのこと。消費電力の指標となるTBP(Typical Board Power)は245Wです。
「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」のコアクロックはゲームクロック2276MHz、最大ブーストクロック2599MHzへファクトリーOCが施されています。
またGPU-ZからはRadeon RX 7000シリーズの電力制限値そのものは確認できないのですが、「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」において電力制限の基準値の調整可能幅は-10%~+15%でした。
Radeon RX 7700 XTのグラフィックボード全体の消費電力の指標値であるTBP(NVIDIA仕様でいうTGPのこと)は245Wが定格仕様値であり、その通りならGPUコア単体の電力制限は200Wに設定されていますが、ファクトリーOCが施された「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」では220Wへと引き上げられていました。
また継続的な許容電力であるSustainedに加え、短期的な許容電力のShortというパラメータもあり、こちらは40W程度大きい264Wです。
GPUコアの増強、コアクロックの高速化といった3Dグラフィックス関連の強化に加えて、RDNA 3アーキテクチャではメディアエンジン、所謂、ハードウェアエンコーダー/デコーダーも刷新され、新たにAV1コーデックのエンコードに対応しています。
現在最も普及しているH.264、圧縮効率に優れた次世代規格として期待されているHEVCとAV1の3種類について全てハードウェアによるエンコードとデコードをサポートしています。
AV1ハードウェアエンコーダーはAdobe Premiere Pro、FFmpeg、Handbrake、OBSなどがサポートし、8K解像度のエンコードで最大7倍も高速になるとのこと。
ストリーミングへのアプローチはAV1コーデックそのものの優れた圧縮効率による高画質化だけでなく、独自の機械学習フィルターという形でも提供が予定されています。
機械学習によって作られたフィルターをエンコード前ビデオフレームに適用することで、テキストやUIといった低ビットレートで崩れやすい要素も視認性を保ったまま変換できるとのこと。
またRyzen 7000シリーズCPUのようにハードウェアエンコーダに対応したiGPUを搭載するCPUを組み合わせた時にCPUとGPUのエンコーダを同時に使用し、マルチストリーム化することで、エンコード作業を高速化させる機能 AMD SmartAccess Video(SAV)も提供が予定されています。
AMD SmartAccess Videoは、AMD Advanced Media Framework SDK(AMD AMF)に対応したソフトウェアで使用でき、OBS Studio、FFmpeg、Adobe Premiere Proが実装予定とのこと。
Radeon設定によるRX 7700 XTのチューニングについて
Radeon RX 7000シリーズでも、デスクトップ右クリックメニューからアクセスできるRadeon設定の「パフォーマンスタブ - チューニング」の順にアクセスすると、前世代同様にコアクロック・メモリクロックやファン制御に関する設定が表示されます。チューニングを開くとまず、GPU動作プロファイルの選択が表示されます。
チューニングコントロールで「手動」を選択すると、大別してGPUコアクロック、VRAMコアクロック、ファン制御、電力制限の4種類の設定が表示されます。
GPUチューニングの横にあるスライドスイッチをON(赤色バー表示)に切り替えると最小周波数、最大周波数、GPUコア電圧(Voltage)の3種類の設定スライダーが表示されます。
高度な制御のスライドスイッチをONにすると設定値が%単位からMHzやmVといった実際の物理単位に変わります。「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」では最大周波数を5000MHzまで引き上げることが可能です。(安定動作するかどうかは別として)
Radeon VIIやRX 5000シリーズでは低電圧化耐性の指標になったもののRX 7000シリーズではどうなのかわかりませんが、とりあえず今回入手した個体については標準の最大周波数が2520MHz、GPUコア電圧が1150mVでした。
VRAMチューニングの横にあるスライドスイッチをON(赤色バー表示)に切り替えるとVRAM周波数(最大周波数)の設定スライダーが表示されます。
高度な制御のスライドスイッチをONにすると設定値が%単位からMHzの物理単位に変わります。「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」では定格の2250MHzから最大周波数を3000MHzまで引き上げることが可能です。
電源チューニングの横にあるスライドスイッチをON(赤色バー表示)に切り替えると電力制限の設定スライダーが表示されます。
電力制限の設定は各GPUの標準GPUコア電力制限に対するパーセンテージのオフセットですが、「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」では220Wを基準にして最大で+15%まで電力制限の引き上げが可能です。
ファンチューニングの横にあるスライドスイッチをON(赤色バー表示)に切り替えると、ゼロRPM(セミファンレス機能)の切り替えスイッチ、最大ファン速度の設定スライダーが表示されます。
また高度な制御のスライドスイッチをONにするとファン制御カーブの手動設定が表示されます。Radeon RX 7000シリーズにはGPU温度とジャンクション温度(複数あるGPUダイ上の温度センサーの最大値)の2種類の温度があり、ファン制御カーブはジャンクション温度を参照するようです。
温度とファン速度について5つの頂点を任意に指定してファン速度を制御できます。上述のセミファンレス機能との併用や、セミファンレス機能の無効化も可能です。
Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OCのゲーム性能
「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」の性能を測るべく各種ベンチマークを実行しました。性能比較には「GeForce RTX 4060 Ti」、「Radeon RX 7800 XT」、「GeForce RTX 4070」、「Radeon RX 6700 XT」、「GeForce RTX 3070」を使用しています。(特定のモデルや型番を指名していない場合、各GPUメーカーのリファレンスモデルもしくはリファレンス仕様のオリファンモデルです)
GPUが同じならオリファンモデル(ファクトリーOCやGPUクーラー冷却性能)による性能差は数%あるかどうかなので、今回は検証を割愛します。
Radeon RX 7700 XTの個別ゲームタイトルに関する性能については、すでに公開中のRadeon RX 7700 XTのレビューを参照してください。
実ゲーム性能の比率の平均を出してみたところ、AMD Radeon RX 7700 XTは、前世代アッパーミドルGPUであるRX 6700 XTを平均で20%以上、ベストケースでは30%以上も上回る性能を発揮しました。
上位モデルRX 7800 XTとRX 6800 XTの新旧同ナンバリング対決では買ったり負けたりで平均して5%程度上回るという感じでしたが、Radeon RX 7700 XTは前モデルRX 6700 XTをシンプルに上回る性能を発揮し、アーキテクチャ的に好適なゲームであれば30%以上の性能向上も期待できます。
もう1つ補足として、2023年最新世代においてRadeon RX 7700 XTと価格帯が近く、AMD公式にも競合製品として比較スライドが作成されている、NVIDIAの最新ミドルクラスGPU、GeForce RTX 4060 Tiとの比較です。
下はRadeon RX 7700 XTがパフォーマンスターゲットとするWQHD解像度における当サイトのベンチマーク比較の結果ですが、AMD公式スライド同様に平均的に15%程度上回る性能を発揮し、好適タイトルであれば25~30%上回るという感じです。
GeForce RTX 4060 TiがパフォーマンスターゲットとするフルHD解像度でもやはりRadeon RX 7700 XTの方が高速です。
比較に使用するゲームの抜粋次第なところもあるものの、当サイト的にはRadeon RX 7700 XTはGeForce RTX 4060 Tiよりも15%前後は高性能、という評価です。
ただ北米希望小売価格を見るとRadeon RX 7700 XTは449ドルから、GeForce RTX 4060 Tiは399ドルからで、RX 7700 XTのほうが高価なGPUなので、単純に価格が反映されただけ、とも言えるのですが。価格関連の話はまとめで。
ドライバレベルの中間フレーム生成機能 AFMFについて
現行バージョンのFSR 2はフルHD~WQHDの低解像度レンダリング結果(各フレーム)を4Kなど高解像度へ1つ1つ高品質にアップスケールする機能ですが、2023年後半に中間フレーム生成(倍速補間)に対応した最新バージョン FSR 3が発表されました。2023年9月の正式リリース当初こそローンチタイトルはFORSPOKENとアヴェウムの騎士団(Immortals of Aveum)の2つだけでしたが、2024年8月時点ではCyberpunk 2077やHorizon Forbidden Westといったメジャータイトルも含め計60タイトル以上でFSR 3が利用できるようになっています。
さらにAMDからはFSR 3として実装されていないゲームでもドライバレベルで動作し、任意のDirectX 11/12のゲームで利用できる中間フレーム生成機能 AMD Fluid Motion Frames(AFMF)も登場しています。
FSR 3の中間フレーム生成機能がGPUメーカー問わず、NVIDIAやIntelのGPUでも利用できるのと違い、AFMFはRadeon RX 7000/6000シリーズなど比較的新しいAMD製GPUに限定される機能です。(ドライバレベルの機能なので当然と言えば当然ですが)
Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OCの温度・消費電力・ファンノイズ
「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」の負荷時のGPU温度やファンノイズや消費電力についてチェックしていきます。「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」のGPU温度とファンノイズの検証負荷としては約20分間に渡たり連続してGPUに100%近い負荷をかける3DMark TimeSpy(Extreme) Stress Testを使用しています。
「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」のテスト終盤におけるGPU温度は60度台半ばと低い値に収まっています。
ファン速度も瞬間的に1450RPM程度まで上がることがありますが、基本的に1300RPM前後という低めの速度で安定しています。これくらいファン速度が低ければ細かくファン速度が変動しても乱高下的にファンノイズが気になることはありません。
「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」はアイドル時にファンが停止するセミファンレス機能に対応しており、GPUホットスポット温度67度前後が始動閾値、GPUホットスポット温度48度前後が停止閾値でヒステリシスも採用されています。製品によっては回転数が上下してふらつくことの多い始動や停止の直前も、閾値を上下した瞬間にピタッと切り替わります。
GPUコアクロックについて、「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」の負荷テスト中の実動平均は2540MHzでした。
【補足】
コアクロック比較グラフはAIBモデル別の優劣を決めるための比較ではなく、特定のGPUがだいたいどの程度のコアクロックで動作するのか確認するために掲載しています。
AMD、NVIDIAともに最新GPUでは実動コアクロックはGPUコア個体毎に異なる内部設定のV-Fカーブが最も支配的なファクターです。加えて負荷中のGPU温度も5~10度刻みでブーストクロックの制御に影響します。
そのため、ファクトリーOCが施されたオリファンモデルの公式仕様値として公表されているブーストクロックは各メーカー内におけるOC耐性選別という意味で1つの指標にはなると思いますが、実動コアクロックの優劣にはあまり当てになりません。
今回検証している個体Aが他社AIBと比較して実動コアクロックが低くても、市場製品の個体Bは高い、個体Cは同程度…のように、本当に御神籤状態です。
また実用条件に近い冷却性能の検証として、実際にPCケースへ「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」を組み込み、1時間に渡って負荷をかけた時にGPU温度やファン回転数がどうなるかを確認してみました。
検証するGPUランクによって負荷を変えており、通常はTime Spy(Extreme) グラフィックテスト1、一部のウルトラハイエンドGPUにはPort Royal 4Kをループ再生させ、各GPUがMaxTGPに張り付く状態を検証しています。
検証機材のPCケースには「Cooler Master MASTERCASE MAKER 5t」を使用しています。
CPUクーラーは120サイズ簡易水冷でラジエーターを天面前方に設置、またPCケースのフロントに吸気ファンとして3基とリアに排気ファンとして1基の140mm角ケースファンをそれぞれ設置し、ファン回転数は1000RPMに固定しています。
PCケースのエアフローファンには空冷ヒートシンク、水冷ラジエーター、PCケースエアフローの全ての用途で一般的な140mmサイズファンを上回る性能を発揮する「Thermaltake TOUGHFAN 14」を使用しています。140mmサイズファン選びに迷ったらこれを買っておけば問題ない、高性能かつ高静音性なファンです。
・「Thermaltake TOUGHFAN 14」をレビュー。最強140mmファンの登場か!?
PCケースに入れた状態で長時間負荷をかけると、「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」のGPU温度は67度前後、ホットスポット温度は84度前後とベンチ板上で測定した時と大差ありません。ファン回転数も1300RPM程度で同じです。
「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」のGPUクーラーは内排気ファンということもありPCケースの吸排気を最適化しないと冷却効率が下がるので、フロントx3/リアx1で140mmファンを設置して1000RPMで回しています。実際にPCケースへ組み込むユーザーはPCケースの吸排気にも注意してみてください。
加えて1時間のストレステスト終盤にサーモグラフィカメラ搭載スマートフォン「CAT S62 PRO」を使用してゲーム負荷時のグラフィックボード上の各所の温度をチェックしました。
「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」は、バックプレート表面や、背面や側面の隙間から確認できるPCB基板上のVRM電源回路やPCIE補助電源コネクタの付近の温度がホットスポットの最大値でも60~70度前後に収まっていました。
Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OCを含めていくつかのグラフィックボードについてサウンドレベルメーターを利用してゲーム負荷時のノイズレベルを測定・比較しました。
検証機材はベンチ台の上に平置きにしているので、サウンドレベルメーターをスタンドで垂直上方向に50cm程度離して騒音値を測定しています。
この測定方法において電源OFF時の騒音値は30dB未満です。目安として騒音値が35dBを超えたあたりからファンノイズがはっきりと聞こえるようになりますが、35~38dB以下であればPCケースに入れてしまえばファンノイズが気になることはそうそうないと思います。40dB前後になるとベンチ台上で煩く感じ始め、45dBを超えるとヘッドホンをしていてもはっきり聞き取れるくらいになります。
A特性で測定しているのである程度は騒音値にも反映されていますが、同じ騒音値でも周波数(ファン回転数)が高いほど体感としては大きな音に感じやすく、また不快に感じたり感じなかったりは音の性質(細かい乱高下の有無や軸ブレ)にもよるので注意してください。
ノイズレベルの測定結果は次のようになっています。
「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」は、ベンチ板上とPCケース組み込み時でファン速度が1300RPM程度と十分に低速なので、ノイズレベルも32dB以下に収まりました。
ファンの風切り音自体はファンが動作しているかどうか聞き分けるのも難しいレベルという非常に優れた静音性を発揮しています。
冷却ファンの軸受けにダブルボールベアリングが採用されているのか、ファンが始動するとベアリングのシャーという音が僅かに聞こえるものの、PCケースに組み込んでしまえばシャットアウトできる程度の音量です。
Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OCの消費電力と瞬間的な最大電源負荷を測定しました。
グラフィックボードの消費電力測定には、当サイトの検証に使用するためワンオフで特注した測定ツール「GPU Power Tester」を使用しています。GPU Power TesterはPCIEスロット経由とPCIE補助電源の消費電力を直接に測定しているので、シンプルにグラフィックボードそのものの消費電力をしることができます。
消費電力の測定にあたって検証するGPUランクによって負荷を変えており、通常はTime Spy(Extreme) グラフィックテスト1、一部のウルトラハイエンドGPUにはPort Royal 4K(GPU名に*マークを併記)をループ再生させ、各GPUがMaxTGPに張り付く状態を検証しています。
テスト全体から1ms間隔でモニタリングを行い、平均値を”消費電力”、最大値を”瞬間的な最大電源負荷”とします。
「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」の消費電力は246W、最大瞬間負荷は290Wでした。
「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」のTGPはファクトリーOCによって260~270W相当に設定されていますが、平均消費電力はリファレンスTGPの245Wとほぼ同じです。
十分に大きい3Dグラフィックス負荷でも電力制限のソースとなるGPU Core Powerは上限の220Wに張り付くことはなく、定格の200Wに対して平均204W程度でした。
電力制限値まで余裕があるので、さらに大きい消費電力が発生する可能性も否定できませんが、せいぜい+10~20Wの発熱なので「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」のGPUクーラーなら静音性を維持しつつ余裕で冷やせます。
Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC レビューまとめ
最後に「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- WQHD/ハイフレームレートに最適、FSR 3で4Kにも対応可能なGPU
- ドライバレベルの中間フレーム生成機能 AFMF2に対応
- RTX 4060 Tiと比較して平均で15%程度は高速、好適タイトルなら25~30%程度も
- RX 6700 XTと比較して平均で20%程度は高速、好適タイトルなら30%以上も
- 高圧縮かつ高画質な次世代コーデックAV1のハードウェアエンコードに対応
- TGP250W前後をノイズレベル32dB以下で冷やせる非常に高静音なGPUクーラー
- 全長280mmなのでRX 7700 XTオリファンモデルの中ではコンパクトな部類
- 全長280mm、3スロット占有でアッパーミドルGPU搭載グラボとしては巨大
- レイトレーシング性能は競合のGeForce RTX 40よりも低い
- RX 7700 XT 一般に価格が税込み6~7万円からと高価 (2024年8月現在)
Radeon RX 7700 XTは、前世代アッパーミドルGPUのRadeon RX 6700 XTと比較して平均で20%程度、ベストケースでは30%以上も上回る性能を実現しています。
主にWQHD/ハイフレームレートなPCゲーミングをターゲットにしたGPUですが、超解像技術 AMD FidelityFX Super Resolutionやその中間フレーム生成対応の最新バージョン FSR3を併用することで、4K解像度やAMD製GPUが相対的に弱いとされるレイトレーシング表現にも対応可能です。
GeForce RTX 40シリーズはAI中間フレーム生成機能 DLSS 3を使用できますが、対応タイトルは一部の最新メジャータイトルに限定されています。AMDからもすでにFSR 3も発表されているので、ゲーム埋め込み型の中間フレーム生成機能について今後登場する新規タイトルでは特別差はないと思います。またAV1ハードウェアエンコード対応は両者共通です。
「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」については当サイトの測定環境においてノイズレベル32dB以下という優れた冷却性能と静音性を発揮しました。PCケースに組み込んでしまえば、GPUクーラーのファンノイズを聞き分けるのも難しいレベルの静かさです。
アッパーミドルGPUにはオーバーキル感すらある全長280mmかつ3スロット占有で巨大なグラフィックボードですがPCケースに収まるなら買って間違いのないRX 7700 XTオリファンモデルです。
AcerはゲーミングPCやモニタ等の周辺機器では比較的有名なメーカーですが、グラフィックボードはAMD Radeon RX 7000やIntel Arc Aで自社製オリファンモデルの販売に参入したばかりなので、国内で販売されていることを知らない人も多いと思います。
実はAcer公式ストアでは、今回レビューしている「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」も含め、いくつかAMD Radeon RX 7000シリーズのオリファンモデルが発売中です。
以上、「Acer Nitro Radeon RX 7700 XT OC」のレビューでした。
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3スロット占有2連ファンGPUクーラー搭載のスタンダードゲーミングモデル「Acer Nitro AMD Radeon RX 7700 XT Overclocking」をレビュー。
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) August 15, 2024
6万円台で最安値クラスのRX 7700 XTオリファンモデルの冷え具合や静音性を徹底検証。https://t.co/xvFuBkI35l pic.twitter.com/y1dY14LR1U
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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