AMD Radeon RX 7900 XT Reference


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新ゲーミングアーキテクチャ「RDNA3」を採用するAMDの次世代ハイエンドGPU Radeon RX 7000シリーズから「AMD Radeon RX 7900 XT」を搭載したAMD純正リファレンスグラフィックボードをレビューしていきます。
待望のAMD製次世代ウルトラハイエンドGPU「Radeon RX 7900 XT」が、前世代最上位Radeon RX 6900 XTをどの程度上回り、また競合NVIDIAのGeForce RTX 4070 Tiと真っ向から戦えるのか、実ゲームベンチマークでグラフィック性能を徹底比較します。

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製品公式ページhttps://www.amd.com/ja/products/graphics/amd-radeon-rx-7900xt




AMD Radeon RX 7900 XT レビュー目次


1.AMD Radeon RX 7900 XTの外観
2.AMD Radeon RX 7900 XTの分解


3.AMD Radeon RX 7900 XTの検証機材・GPU概要

4.AMD Radeon RX 7900 XTのゲーム性能

5.AMD Radeon RX 7900 XTの温度・消費電力・ファンノイズ

6.AMD Radeon RX 7900 XTのレビューまとめ








AMD Radeon RX 7900 XTの外観

早速、AMD Radeon RX 7900 XTを開封していきます。
「AMD Radeon RX 7900 XT」のリファレンスモデルはいくつかのベンダーからリリースされていていますが、基本的にAMD純正のリファレンスモデルを箱詰めしただけ、+αでファン中央に各社のロゴシールが貼られている、PCIE端子やビデオ出力ポートにカバーが付いているくらいの違いなので、どのベンダーの製品を買っても大差ありません。
SAPPHIRE、ASRock、Power Colorなど一部メーカー製品は他社の1年よりも長い2年保証になっているので、ここだけは気にしてもいいかもしれません。
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「AMD Radeon RX 7900 XT」のグラフィックボード本体を見ていきます。

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「AMD Radeon RX 7900 XT」のリファレンスモデルは少しだけアクセントカラーで赤色が入っていますが、基本的に黒一色のカラーリングです。
RX 6000シリーズのリファレンスモデルと比較すると、デザインはメカメカしくなっており、よりゲーマー志向を感じます。
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シルバーとブラックのツートンカラーな金属製外装を採用しています。比較的シンプルなデザインが多かったRadeonのリファレンスグラフィックボードと比較してゲーミング風なデザインに生まれ変わっています。
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リファレンスモデルというとGPUリリースの最初に投入される廉価モデルというか、高性能オリファンモデルの当て馬な印象が強いですが、「AMD Radeon RX 7900 XT」ではGPUクーラーからPCB基板までこだわり抜いた設計であることがAMD公式からもアピールされています。
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競合NVIDIAのGeForce RTX 40シリーズは準リファレンスモデルなFounders Editionでも全長300mm、各種オリファンモデルが300mmを大きく超えるのに対して、「AMD Radeon RX 7900 XT」のリファレンスモデルの全長は267mmです。
RX 6900/6800 XTのリファレンスモデルとほぼ同じサイズなので、前世代からサイズを気にせずアップグレードできるところは魅力です。
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「AMD Radeon RX 7900 XT」は全長も最新ハイエンドGPUとしては短めであるのに加えて、PCIEブラケットからはみ出す高さ方向も+10mm未満に収まっており、PCケースサイドパネルとの干渉についても基本的に大丈夫だと思います。
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今回レビューしている「AMD Radeon RX 7900 XT」と上位モデル AMD Radeon RX 7900 XTXはどちらもAMD純正のリファレンスモデル(の各社箱詰め品)が発売されていますが、デザインは似通っているものの、グラフィックボードのサイズは微妙に違います。
「AMD Radeon RX 7900 XT」の方が少しだけ小さいので、サイズ確認を間違えないように注意してください。
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競合NVIDIAの次世代ハイエンドGeForce RTX 4080は全長300mm超、4スロット占有モデルが大半なので(3スロットに収まるRTX 4070 Tiも300mm超がほとんど)、「AMD Radeon RX 7900 XT」やAMD Radeon RX 7900 XTXのリファレンスモデルのコンパクトさは魅力です。
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「AMD Radeon RX 7900 XT」のリファレンスモデルは前世代と同じく3連ファンの内排気型GPUクーラーを搭載しています。ファン径は前世代と同じく80mmです。
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3基の冷却ファンにはファンノイズを抑えつつ高い静圧&風量を得ることが可能なバリアーリング搭載冷却ファンを採用しています。
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「AMD Radeon RX 7900 XT」のリファレンスモデルはTGP300W超の発熱に対応するため、大型放熱フィンを採用したヒートシンクが搭載されており、PCIEスロットを3スロット占有します。
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「AMD Radeon RX 7900 XT」のリファレンスモデルの補助電源数はPCIE 8PIN×2です。
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競合NVIDIAの最新GPUであるGeForce RTX 40シリーズは新しいPCIE補助電源規格12VHPWRを採用しており、対応電源でない場合、変換ドングルが必要ですが、「AMD Radeon RX 7900 XT」は従来規格をそのまま採用しています。
サイズのコンパクトさに加えて、電源周りについても既存環境からグラフィックボードのアップグレードが用意であるとして、AMD公式がアピールしています。
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AMD Radeon RX 7900_reference_PCIE

今回購入したAMD Radeon RX 7900 XTリファレンスモデルのSAPPHIRE箱詰め品には付属しませんが、ASRockやMSIなど一部メーカーの箱詰め品では、PCIE端子や各種ビデオ出力に黒色の保護カバーが装着されています。
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「AMD Radeon RX 7900 XT」のビデオ出力はHDMI2.1×1、DisplayPort2.1×2、USB Type-C(DisplayPort2.1 Alternate Mode)×1の4基が実装されています。
「AMD Radeon RX 7900 XT」のリファレンスモデルにはThunderbolt3/4対応モニタなどクリエイター向け機器への対応を重視した結果、USB Type-Cビデオ出力も引き続き採用されています。(残念ながら多くのRX 7900オリファンモデルでは非採用ですが)
USB Type-Cポートは通常のUSBポートとしても使用できますが、DisplayPort Alternate ModeによってDisplayPort2.1互換なビデオ出力として使用できます。
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またRadeon RX 7900シリーズではビデオ出力を司るディスプレイエンジンも刷新され、2022年に入って大分普及してきたHDMI2.1に加えて、4K/480Hzや8K/165Hzに対応する次世代規格DisplayPort2.1をサポートしています。
AMD RDNA 3 Architecture_4_GCD_Display Engine

「AMD Radeon RX 7900 XT」にはGPUクーラーと同様にブラック一色の金属製バックプレートが装着されています。
基板の反りや破損を防止する保護プレートとしての役割を果たしますが、VRM電源回路やVRAMチップとの間にはサーマルパッドが貼られていないので冷却補助の機能はありません。
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また近年のグラフィックボードでGPUクーラー設計のトレンドになっているフロースルー構造も採用されておらず、グラフィックボード右端はバックプレートによって完全に塞がっています。
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グラフィックボードの重量はAMD Radeon RX 6900 XTが1501g、AMD Radeon RX 7900 XTXが1813gに対して、AMD Radeon RX 7900 XTは1518gでした。
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バックプレート等で基板の反りは防止されていますが、重量は1kgを軽く超過しているのでPCIEスロットへの負荷を考えるとVGAサポートステイなどで垂れ下がりを防止したほうがいいかもしれません。




AMD Radeon RX 7900 XTの分解

「AMD Radeon RX 7900 XT」を分解してGPUクーラーやグラフィックボード基板についてチェックしていきます。

なお今回は自己責任で(もしくはレビュー用サンプル貸出先の協力のもと特別に許可を頂いて)分解を行っています。GPUクーラーの取り外し(分解行為)は、一部を除く多くのメーカーではグラフィックボードの正規保証の対象外になる行為です。
今回はレビューのために分解していますが、繰り返しますが保証対象外になるので基本的には非推奨の行為なのでご注意下さい。



【暇があれば更新予定】



AMD Radeon RX 7900 XTの検証機材・GPU概要

外観やハードのチェックはこのあたりにして早速、「AMD Radeon RX 7900 XT」を検証用の機材に組み込みました。テストベンチ機の構成は次のようになっています。
テストベンチ機の構成 (ゲーム性能検証)
OS Windows11 Home 64bit
CPU Intel Core i9 13900K
レビュー
CPUクーラー Fractal Design Celsius S36 (レビュー
Noctua NF-A12x25 PWM (レビュー
メインメモリ G.Skill Trident Z5 RGB
F5-7200J3445G16GX2-TZ5RK
DDR5 16GB*2=32GB (レビュー
7200MHz, 34-45-45-115
マザーボード
ASUS ROG MAXIMUS Z790 HERO
レビュー
システムストレージ
Samsung SSD 980 PRO 500GB (レビュー
ゲームストレージ
Samsung SSD 870 QVO 8TB (レビュー
電源ユニット Corsair HX1500i (レビュー
ベンチ板 STREACOM BC1 (レビュー


検証機ではシステムメモリとして、Intel第13世代CPU向けメモリとしては4xメモリスロットのマザーボードでも動作可能な最速クラスの製品、メモリ周波数7200MHz/CL34の高メモリクロックかつ低レイテンシなメモリOCに対応した「G.Skill Trident Z5 RGB(型番:F5-7200J3445G16GX2-TZ5RK)」を使用しています。
G.Skill Trident Z5シリーズはIntel XMP3.0のOCプロファイルに対応した製品となっており、6000MHzの定番設定なモデルもあり、Intel第13世代CPUで高性能なPCを構築するお供としてオススメのOCメモリです。
ARGB LEDイルミネーションを搭載したバリエーションモデル G.Skill Trident Z5 Neo RGBもラインナップされています。
「G.Skill Trident Z5 RGB」をレビュー。XMPで7200MHz OCに対応!
G.Skill Trident Z5 RGB Black

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AMD Radeon RX 7900 XTのGPU概要

「Radeon RX 7900 XT」のスペックについて簡単に確認しておきます。
「AMD Radeon RX 7900 XT」のスペックは、コンピュートユニット数が84、シェーダー数が5376、コアクロックはゲームクロック2000MHz、最大ブーストクロック2400MHzです。
VRAMには従来よりも高速な20.0GbpsのGDDR6メモリを20GB容量搭載しています。メモリーバス幅は320bitなのでメモリ帯域は800GB/sです。またRDNA3アーキテクチャの特長でもある超高速キャッシュ 第2世代Infinity Cacheを80MB搭載し、有効メモリ帯域は2900GB/sであるとのこと。
G発表当初、消費電力の指標となるTBP(Typical Board Power)は300Wとされていましたが、現在は公式ページで315Wに変更されています。
AMD Radeon RX 7900 XTX-and-XT_spec

今回レビューするのは「AMD Radeon RX 7900 XT」のリファレンスモデルなので、AMD公式のリファレンス仕様通り、コアクロックはゲームクロック2025MHz、最大ブーストクロック2394MHzです。(公式仕様と違ってキリの悪い数字ですがGPU-Zで確認できる値としては正常)
またGPU-ZからはRadeon RX 7000シリーズの電力制限値そのものは確認できないのですが、AMD Radeon RX 7900 XTリファレンスモデルにおいて電力制限の基準値の調整可能幅は-10%~+15%でした。
AMD Radeon RX 7900 XTX Reference_GPU-Z
Radeon RX 7900 XTのグラフィックボード全体の消費電力の指標値であるTBP(NVIDIA仕様でいうTGPのこと)は315Wと公表されていますが、GPUコア単体の電力制限は257Wに設定されていました。継続的な許容電力であるSustainedに加え、短期的な許容電力のShortというパラメータもあり、こちらは50W程度大きい308Wでした。
AMD Radeon RX 7900 XTX Reference_PPT


GPUコアの増強、コアクロックの高速化といった3Dグラフィックス関連の強化に加えて、RDNA 3アーキテクチャではメディアエンジン、所謂、ハードウェアエンコーダー/デコーダーも刷新され、新たにAV1コーデックのエンコードに対応しています。
現在最も普及しているH.264、圧縮効率に優れた次世代規格として期待されているHEVCとAV1の3種類について全てハードウェアによるエンコードとデコードをサポートしています。
AMD RDNA 3 Architecture_5_GCD_Media Engine
AV1ハードウェアエンコーダーはAdobe Premiere Pro、FFmpeg、Handbrake、OBSなどがサポートし、8K解像度のエンコードで最大7倍も高速になるとのこと。
AMD RDNA 3 Architecture_5_GCD_Media Engine_AV1
ストリーミングへのアプローチはAV1コーデックそのものの優れた圧縮効率による高画質化だけでなく、独自の機械学習フィルターという形でも提供が予定されています。
機械学習によって作られたフィルターをエンコード前ビデオフレームに適用することで、テキストやUIといった低ビットレートで崩れやすい要素も視認性を保ったまま変換できるとのこと。
AMD Radeon RX 7000_AV1 Encoding
またRyzen 7000シリーズCPUのようにハードウェアエンコーダに対応したiGPUを搭載するCPUを組み合わせた時にCPUとGPUのエンコーダを同時に使用し、マルチストリーム化することで、エンコード作業を高速化させる機能 AMD SmartAccess Video(SAV)も提供が予定されています。
AMD SmartAccess Videoは、AMD Advanced Media Framework SDK(AMD AMF)に対応したソフトウェアで使用でき、OBS Studio、FFmpeg、Adobe Premiere Proが実装予定とのこと。
AMD SmartAccess Video


Radeon設定によるRX 7900 XTのチューニングについて

Radeon RX 7000シリーズでも、デスクトップ右クリックメニューからアクセスできるRadeon設定の「パフォーマンスタブ - チューニング」の順にアクセスすると、前世代同様にコアクロック・メモリクロックやファン制御に関する設定が表示されます。
Radeon RX 7900 XT_Radeon-Setting_1
Radeon RX 7900 XT_Radeon-Setting_2
チューニングを開くとまず、GPU動作プロファイルの選択が表示されます。
Radeon 7900 XTなどRX 7000シリーズの上位モデルでは自動OCによって性能が向上するレイジモードが用意されています。
Radeon RX 7900 XT_Radeon-Setting_3

チューニングコントロールで「手動」を選択すると、大別してGPUコアクロック、VRAMコアクロック、ファン制御、電力制限の4種類の設定が表示されます。
Radeon RX 7900 XT_Radeon-Setting_4
GPUチューニングの横にあるスライドスイッチをON(赤色バー表示)に切り替えると最小周波数、最大周波数、GPUコア電圧(Voltage)の3種類の設定スライダーが表示されます。
高度な制御のスライドスイッチをONにすると設定値が%単位からMHzやmVといった実際の物理単位に変わります。Radeon RX 7900 XTリファレンスモデルでは最大周波数を5000MHzまで引き上げることが可能です。(当然、安定動作するような数値ではありませんが)
Radeon VIIやRX 5000シリーズでは低電圧化耐性の指標になったもののRX 7000シリーズではどうなのかわかりませんが、とりあえず今回管理人が入手した個体については標準の最大周波数が2860MHz、GPUコア電圧が1100mVでした。
Radeon RX 7900 XT_Radeon-Setting_5_GPU-Clock
VRAMチューニングの横にあるスライドスイッチをON(赤色バー表示)に切り替えるとVRAM周波数(最大周波数)の設定スライダーが表示されます。
高度な制御のスライドスイッチをONにすると設定値が%単位からMHzの物理単位に変わります。Radeon RX 7900 XTリファレンスモデルでは定格の2500MHzから最大周波数を3000MHzまで引き上げることが可能です。
Radeon RX 7900 XT_Radeon-Setting_6_VRAM-Clock
電源チューニングの横にあるスライドスイッチをON(赤色バー表示)に切り替えると電力制限の設定スライダーが表示されます。
電力制限の設定は各GPUの標準GPUコア電力制限に対するパーセンテージのオフセットですが、Radeon RX 7900 XTリファレンスモデルでは291Wを基準にして最大で+15%まで電力制限の引き上げが可能です。
Radeon RX 7900 XT_Radeon-Setting_7_Power

ファンチューニングの横にあるスライドスイッチをON(赤色バー表示)に切り替えると、ゼロRPM(セミファンレス機能)の切り替えスイッチ、最大ファン速度の設定スライダーが表示されます。
Radeon RX 7900 XT_Radeon-Setting_8-1_Fan
また高度な制御のスライドスイッチをONにするとファン制御カーブの手動設定が表示されます。Radeon RX 7000シリーズにはGPU温度とジャンクション温度(複数あるGPUダイ上の温度センサーの最大値)の2種類の温度があり、ファン制御カーブはジャンクション温度を参照するようです。
温度とファン速度について5つの頂点を任意に指定してファン速度を制御できます。上述のセミファンレス機能との併用や、セミファンレス機能の無効化も可能です。
Radeon RX 7900 XT_Radeon-Setting_8-2_Fan



AMD Radeon RX 7900 XTのゲーム性能

「AMD Radeon RX 7900 XT」の性能を測るべく各種ベンチマークを実行しました。性能比較には「Radeon RX 7900 XTX」、「GeForce RTX 4070 Ti」、「GeForce RTX 3080 Ti」、「Radeon RX 6900 XT」、「GeForce RTX 2080 Ti Founders Edition」を使用しています。
(特定のモデルや型番を指名していない場合、各GPUメーカーのリファレンスモデルもしくはリファレンス仕様のオリファンモデルです)


「AMD Radeon RX 7900 XT」を含めた各グラフィックボードについて、3DMarkで現在主流なDirectX11のベンチマーク FireStrikeによる比較になります。
AMD Radeon RX 7900 XT Reference_bench_fs

FireStrike Extreme Ultra
RX 7900 XT
62112 32614 16463
RX 7900 XTX
66306 38349 19544
RTX 4070 Ti
53714 27048 13464
RTX 3080 Ti
47119 23589 12056
RX 6900 XT
53597 27340 13542
RTX 2080 Ti FE
35575 16872 8550


「AMD Radeon RX 7900 XT」を含めた各グラフィックボードについて、3DMarkで最新タイトルでは採用が増えつつあるDirectX12ベンチマーク TimeSpy、およびレイトレーシング表現に対応したベンチマーク Port Royalによる性能比較となります。
AMD Radeon RX 7900 XT Reference_bench_ts-pr

TimeSpy Extreme Port Royal
RX 7900 XT
25416 12369 13559
RX 7900 XTX
29350 14372 15835
RTX 4070 Ti
22792 10940 14173
RTX 3080 Ti
19053 9586 12765
RX 6900 XT
19897 9641 9768
RTX 2080 Ti FE
14490 6641 8936


続いて近年の最新PCゲームを実際に用いたベンチマーク比較になります。同一のグラフィック設定で同一のシーンについてフルHD(1920×1080)とWQHD(2560×1440)と4K(3840×2160)の3種類の解像度で平均FPSを比較しました。

最新タイトルでは専用ハードウェアによるレイトレーシング表現や、NVIDIA DLSS/AMD FSR/Intel XeSSといったAIを活用した超解像・倍速補間に対応したものも増えていますが、それらの機能は無効化し、ここでは従来のラスタライズ方式の3Dグラフィックス性能を比較しています。

ベンチマーク測定を行ったゲームタイトルは、『Assassin's Creed Valhara』、『Battlefield V』、『CONTROL』、『Cyberpunk 2077』、『DEATH STRANDING』、『Far Cry 6』、『FINAL FANTASY VII REMAKE INTERGRADE』、『Forza Horizon 5』、『God of War』、『Marvel's Guardians of the Galaxy』、『MONSTER HUNTER: WORLD』、『Shadow of the Tomb Raider』、『Tales of Arise』、『UNCHARTED: Legacy of Thieves Collection』、『Watch Dogs Legion』、以上の15タイトルです。
Game-Bench-2022_11


Assassin's Creed Valhara(最高設定プリセット)に関する「AMD Radeon RX 7900 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
AMD Radeon RX 7900 XT Reference_game_acv

Battlefield V(最高設定プリセット, DirectX12, レイトレーシング表現:オフ)に関する「AMD Radeon RX 7900 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
AMD Radeon RX 7900 XT Reference_game_bfv

CONTROL(高設定プリセット, DirectX12, レイトレーシング表現:オフ)に関する「AMD Radeon RX 7900 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
AMD Radeon RX 7900 XT Reference_game_cont

Cyberpunk 2077(ウルトラ設定プリセット, FSR:オフ, レイトレーシング表現:オフ)に関する「AMD Radeon RX 7900 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
AMD Radeon RX 7900 XT Reference_game_cyber

DEATH STRANDING(最高設定プリセット, TAA)に関する「AMD Radeon RX 7900 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
AMD Radeon RX 7900 XT Reference_game_deathST

Far Cry 6(最高設定プリセット, 高解像度テクスチャ:オフ, レイトレーシング表現:オフ)に関する「AMD Radeon RX 7900 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
AMD Radeon RX 7900 XT Reference_game_fc6

FINAL FANTASY VII REMAKE INTERGRADE(テクスチャ解像度:高設定、シャドウ解像度:高設定、キャラクター表示数:10)に関する「AMD Radeon RX 7900 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
なお、FINAL FANTASY VII REMAKE INTERGRADEは、標準では最大フレームレートが120FPSですが、アンリアルエンジン4のiniファイルによるカスタム設定を有効にするMODのFFVIIHookを使用して『フレームレート制限なし』、『可変レンダリング解像度:オフ』、『モーションブラー:オフ』の設定を適用しています。加えてNVIDIAコントロールパネルから垂直同期を無効化しています。
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Forza Horizon 5(エクストリーム設定プリセット, モーションブラー:オフ, レイトレーシング表現:オフ)に関する「AMD Radeon RX 7900 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
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God of War(ウルトラ設定プリセット, モーションブラー:オフ)に関する「AMD Radeon RX 7900 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
AMD Radeon RX 7900 XT Reference_game_gow

Marvel's Guardians of the Galaxy(ウルトラ設定プリセット, レイトレーシング表現:オフ)に関する「AMD Radeon RX 7900 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
なお、Marvel's Guardians of the Galaxyはゲームプレイ時の最大フレームレートは144FPSですが、ゲーム内ベンチマーク機能は144FPS以上で計測できるので、その結果を使用しています。
AMD Radeon RX 7900 XT Reference_game_guard

MONSTER HUNTER: WORLD(最高設定プリセット, DirectX12)に関する「AMD Radeon RX 7900 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
AMD Radeon RX 7900 XT Reference_game_mhw

Shadow of the Tomb Raider(最高画質設定プリセット, DirectX12, TAA, レイトレーシング表現:オフ)に関する「AMD Radeon RX 7900 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
AMD Radeon RX 7900 XT Reference_game_sottr

Tales of Arise(最高設定, モーションブラー:オフ)に関する「AMD Radeon RX 7900 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
なお、Tales of Ariseは、標準ではPlayStation 5やXbox Series Xのコンソールゲーム機版よりもオブジェクトや影の遠景描画が省略されているので、アンリアルエンジン4のiniファイルによるカスタム設定を有効にするMODのArise-SDKを使用して高画質化する設定を適用しています。
AMD Radeon RX 7900 XT Reference_game_toa

UNCHARTED: Legacy of Thieves Collection(ウルトラ設定プリセット, モーションブラー:オフ)に関する「AMD Radeon RX 7900 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
AMD Radeon RX 7900 XT Reference_game_unc

Watch Dogs Legion(最大設定プリセット, DirectX12, レイトレーシング表現:オフ)に関する「AMD Radeon RX 7900 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
AMD Radeon RX 7900 XT Reference_game_wdl


AMD Radeon RX 7900 XTなど6種類のGPUについて実ゲーム性能の比率の平均を出してみたところ、AMD Radeon RX 7900 XTは、前世代で同じ価格帯のRX 6900 XTを平均で50%程度、ベストケースでは60%以上も上回るという次世代GPUらしい卓越した性能を発揮しました。
AMD Radeon RX 7900 XT Reference_pefsum
実際に測定した上のベンチマーク結果であるフレームレートを見ての通り、従来のラスタライズ式3DグラフィックスなPCゲームなら、AMD FSR等の超解像機能を使用しなくても、余裕で4K/120FPSにも手が届く4KゲーミングモンスターなGPUです。
Radeon RX 7900 XT_4K-Gaming-perf


RX 7900 XTのラスタライズ性能の評価についての補足

前世代RX 6900 XTでは126MBの大容量キャッシュInfinity CacheによりフルHDやWQHDで性能を大きく伸ばす一方、100MB程度のキャッシュではヒット率が十分ではなく有効帯域が上がらず、結局、16GbpsのGDDR6メモリと256bitのバス幅で512GB/sというメモリ帯域がボトルネックになり4K解像度で性能が伸び悩むという弱点がありました。
「Radeon RX 7900 XT」は、20GbpsのGDDR6メモリと320bitのバス幅で800GB/sという非常に高速なメモリ帯域が確保されているので、GPUコアの増強に比例して4K解像度でも大幅に性能を伸ばしています。
Radeon RX 7900 XT_vs_RX6900XT_2160p

「Radeon RX 7900 XT」の4Kゲーミング性能(ラスタライズ)は、AMDが900ドル以下のGPUとして比較対象に挙げているNVIDIAの次世代ハイエンドGPUであるRTX 4070 Tiと比較して、今回検証した15タイトルでは平均して10%程度、ベストケースでは20%も上回る性能でした。
希望小売価格には100ドルの価格差がありますが、899ドルの希望小売価格のままでリファレンスモデルがそれなりに流通しているRX 7900 XTに対して、RTX 4070 Tiはリファレンスモデルがなく、799ドルで販売されているオリファンモデルは限定的で、実際には849ドル以上の製品が多いこともあり、ラスタライズ性能なら「Radeon RX 7900 XT」は価格も含めてシンプルにRTX 4070 Tiの上位互換だと思います。
Radeon RX 7900 XT_vs_RTX4070Ti_2160p

前世代だと4K高解像度では広帯域なVRAMメモリでRTX 3080/3090が強く、WQHD以下の低解像度では実行帯域が広い大容量キャッシュでRX 6800/6900XTが強いという傾向でしたが、上で見たように「Radeon RX 7900 XT」がVRAM帯域を増強したのに対して、逆にGeForce RTX 40シリーズは前世代比で16倍にキャッシュ容量を増強しています。RTX 4070 Tiの場合は48MBのL2キャッシュが実装されています。
大容量キャッシュによるアドバンテージが薄れたせいか、「Radeon RX 7900 XT」のラスタライズ性能はWQHDからフルHDへと解像度が下がるに従い、4Kの時よりもスケーリングが鈍っていきます。
一部タイトルで逆転を許すことはあるものの、やはり「Radeon RX 7900 XT」はRTX 4070 Tiに対して上位互換な性能を発揮します。
Radeon RX 7900 XT_vs_RTX4070Ti_1440p
Radeon RX 7900 XT_vs_RTX4070Ti_1080p


RX 7900 XTX/XTは2022年12月の発売から1月現在に、3度のドライバ更新が行われていますが。いずれもRX 7900シリーズ専用ドライバとして配信されており、リリースノートの通り、高解像度&HRRモニタで消費電力が大きい、一部ゲームでのクラッシュといった既知の不具合が修正できずに残っています。
4Kについては大きく変わらない気がしますが(XTXと違ってXTの場合はWQHDも)、RX 6900 XTとのスケーリングを見てもフルHDのハイフレームレートはドライバによる性能向上の余地があるように思うので、今後のドライバ改善に期待したいところです。
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レイトレーシング&DLSS SR/FGの性能を検証

上では一般的なPCゲーミングシーン(ラスタライズ式の3Dグラフィックス)における「AMD Radeon RX 7900 XT」の性能を比較検証してきましたが、ここからはRadeon RX 7000シリーズの大きな特徴である、前世代Radeon RX 6000シリーズよりも改良されたレイトレーシング表現や、中間フレーム生成にも対応したFSR 3の性能をチェックしていきます。
なおレイトレーシング表現の性能や、NVIDIA DLSS/AMD FSR/Intel XeSSなどの超解像・倍速補間の性能についてはRadeon RX 7900 XT リファレンス仕様の性能検証の結果を引用する形で紹介していきます。

最初に、レイトレーシング表現や超解像機能 AMD FSRについて簡単に紹介しておきます。
レイトレーシング(Raytracing)とは3Dグラフィックスのレンダリング手法の1つであり、現在主流なラスタライズ方式とある種の対になる言葉です。
レイトレーシングだけで3Dグラフィックスを全て描画しきるのはGPU性能的に現実的ではないので、ベースは従来のラスタライズ方式で行い、鏡面反射などエフェクトにレイトレーシング方式を使う、というハイブリッドなレンダリング方式が現在のレイトレーシング対応PCゲームの主流です。

レイトレーシング表現では、照明や光源(エリアライト)や太陽光(グローバルイルミネーション)の影響を厳密に再現し、光の反射や透過も現実に即して忠実に描写されます。

レイトレーシングを採用したわかりやすい例としては鏡に映る反射など、視覚(視点から見た)の外にある物体もリアルに描画することができます。小さい光源や太陽光などが生み出す影、反射によって生まれる光が現実に対して忠実に再現されるので、画面の中に引き込まれるような奥行き、陰影を感じる映像が生まれます。
RayTracing Sample (1)
RayTracing Sample (2)
RayTracing Sample (3)
なお高画質機能 Raytracing(レイトレーシング)はMicrosoftが提供するAPI”DirectX 12”内包されるDirectX Raytracing(DXR)を使用したレンダリング機能となっており、後述のDLSSと違ってNVIDIA独自技術というわけではなく、AMD/Intel製グラフィックボード、PlayStation 5やXbox Series S/Xといったコンソールゲーム機にも互換性のある機能です。
下はPlayStation 5のMarvel's Spider-Man Remasteredでレイトレーシング表現のオン/オフを比較したものですが、オフでは鏡面になっている窓ガラスにスパイダーマンの身体の鏡像がないだけでなく、風景の反射も反対側と比較してデタラメなのが一目瞭然です。
Marvel's Spider-Man Remastered_raytracing


AIやディープラーニングによる超解像技術というとGeForce RTXの専用ハードウェアを使用したNVIDIA DLSSが有名ですが、AMDからも超解像技術 FidelityFX Super Resolution、その最新バージョン FSR 2 が展開されています。
AMD FSRはその名の通り、AMD FidelityFXに属する機能の1つであり、AMD GPUOpenでオープンソース化されており、AMD製GPU環境に限定されず、マルチプラットフォームに対応する機能です。
NVIDIA DLSSと違いテンサーコアのような専用ハードウェアを必要としないので、AMD製の機能ながら逆にGeForce GTX 1060のような旧式、他社製GPUでも利用できることがアピールされています。
AMD FidelityFX Super Resolution_2022-12
RX 7900 XTXやRX 7900 XTの場合、リッチなレイトレーシング表現に対応する最新高画質PCゲームにおいて、AMD FSRによる超解像を併用することで、前世代最上位RX 6950 XTでも難しかった4K/60FPS以上のフレームレートを実現できます。
AMD FidelityFX Super Resolution_2022-12_Perf_4K-RT

また現行バージョンのFSR 2はフルHD~WQHDの低解像度レンダリング結果を4Kなど高解像度へ1つ1つ高品質にアップスケールする機能ですが、2023年中には中間フレーム生成(倍速補間)に対応した最新バージョン FSR 3の登場が予告されています。
AMD FSR 3_1




【今回、レイトレーシング表現や超解像機能の性能については省略】

RX 7900 XTX/XTはRXT 4080/4070 Tiに対してラスタライズ性能で高いコストパフォーマンスを発揮しますが、代わりにレイトレーシング性能がトレードオフになっています。


他所の先行レビューでも分かっている通り、RX 7900 XTX/XTのレイトレーシング性能(レイトレーシング表現を有効にした時のフレームレート)はGeForce RTX 3080 Ti~3090 Tiと同程度です。
レイトレーシング表現の負荷が軽いタイトルであれば、ハイブリッドレンダリングなので、基礎となるラスタライズ性能に対してボトルネックにならず、RTX 4080やRTX 4070 Tiに近い性能を発揮することもありますが、Cyberpunk 2077やMarvel’s Spider-Man Remasteredのようにリッチなレイトレーシング表現を行うタイトルだとやはり及びません。
同社従来モデルとの比較であれば大幅な性能向上ではあるものの。

そういう事情もあって個人的にも時間を割いて検証するのが面倒なので(他の作業でスケジュールの都合もあり)、中間フレーム生成機能と噂されているFSR 3が出た頃合いを見計らって、その時にレイトレーシング性能を再検証する予定です。



AMD Radeon RX 7900 XTの温度・消費電力・ファンノイズ

「AMD Radeon RX 7900 XT リファレンスモデル」の負荷時のGPU温度やファンノイズや消費電力についてチェックしていきます。

「AMD Radeon RX 7900 XT リファレンスモデル」のGPU温度とファンノイズの検証負荷としては約20分間に渡たり連続してGPUに100%近い負荷をかける3DMark TimeSpy(Extreme) Stress Testを使用しています。
AMD Radeon RX 7900 XT Reference_Stress_TS

「AMD Radeon RX 7900 XT リファレンスモデル」のテスト終盤におけるGPU温度は最大67度と十分に低いものの、ファン速度は最大1700~1800RPMと高めです。
前世代RX 6900/6800 XTのリファレンスモデルは超静音性重視な動作設定になっていて、AIBパートナーによるオリファンモデルの存在意義が若干薄れてしまっていたので、それが理由で調整されてしまったのかもしれません。
あと、「AMD Radeon RX 7900 XT リファレンスモデル」はVRAMジャンクション温度が前世代よりも高めなので、GPUコアではなくVRAM温度を下げるためにファン速度が高めのチューニングになっているのかもしれません。
AMD Radeon RX 7900 XT Reference_temp_1

「AMD Radeon RX 7900 XT リファレンスモデル」はアイドル時にファンが停止するセミファンレス機能に対応しており、GPU温度62度前後が始動閾値、GPU温度34度前後が停止閾値でヒステリシスも採用されています。製品によっては回転数が上下してふらつくことの多い始動や停止の直前も、閾値を上下した瞬間にピタッと切り替わります。
ただし、ファン停止閾値がかなり低く設定されており、加えてGPU負荷(使用率or電力)もファン速度の制御ソースとなっているようで、アイドル状態になるとファン速度は500RPM前後とかなり遅くなるため、再びファン停止状態に移行するまでアイドル状態で放置しても10分程度を要しました。
AMD Radeon RX 7900 XT Reference_temp_2

なおRX 7900 XTX/XTのリファレンスモデルについてはGPUクーラーのベースコア構造として採用されているベイパーチャンバーに揮発冷媒液が十分に充填されておらず、正常に動作しない不良個体が少数ロット存在している、との情報があります。(現状で報告されているのはXTXのみですが、XTも念のため)
今回、管理人が入手した個体についてはGPUホットスポットの温度がベンチ板測定の垂直設置でも、後述のPCケース組み込み時の水平設置でも80度前後に収まっており、正常動作の個体でした。
RX 7900 XTX/XTのGPUホットスポット温度は、GPU-ZやMSI AfterBurnerなど有名どころのモニタリングソフトで確認できるので、長時間負荷をかけた時にGPUホットスポットの温度が100度以上に達していないか確認するのをオススメします。
AMD Radeon RX 7900 XT Reference_temp_HP

GPUコアクロックについて、「AMD Radeon RX 7900 XT リファレンスモデル」の負荷テスト中の実動平均は2227MHzでした。
AMD Radeon RX 7900 XT Reference_clock
【補足】
コアクロック比較グラフはAIBモデル別の優劣を決めるための比較ではなく、特定のGPUがだいたいどの程度のコアクロックで動作するのか確認するために掲載しています。

AMD、NVIDIAともに最新GPUでは実動コアクロックはGPUコア個体毎に異なる内部設定のV-Fカーブが最も支配的なファクターです。加えて負荷中のGPU温度も5~10度刻みでブーストクロックの制御に影響します。
そのため、ファクトリーOCが施されたオリファンモデルの公式仕様値として公表されているブーストクロックは各メーカー内におけるOC耐性選別という意味で1つの指標にはなると思いますが、実動コアクロックの優劣にはあまり当てになりません。
今回検証している個体Aが他社AIBと比較して実動コアクロックが低くても、市場製品の個体Bは高い、個体Cは同程度…のように、本当に御神籤状態です。


また実用条件に近い冷却性能の検証として、実際にPCケースへ「AMD Radeon RX 7900 XT リファレンスモデル」を組み込み、1時間に渡って負荷をかけた時にGPU温度やファン回転数がどうなるかを確認してみました。
検証するGPUランクによって負荷を変えており、通常はTime Spy(Extreme) グラフィックテスト1、一部のウルトラハイエンドGPUにはPort Royal 4Kをループ再生させ、各GPUがMaxTGPに張り付く状態を検証しています。
DSC03344_DxO
検証機材のPCケースには「Cooler Master MASTERCASE MAKER 5t」を使用しています。
CPUクーラーは120サイズ簡易水冷でラジエーターを天面前方に設置、またPCケースのフロントに吸気ファンとして3基とリアに排気ファンとして1基の140mm角ケースファンをそれぞれ設置し、ファン回転数は1000RPMに固定しています。
GPU-CaseIn-Test_2021
PCケースのエアフローファンには空冷ヒートシンク、水冷ラジエーター、PCケースエアフローの全ての用途で一般的な140mmサイズファンを上回る性能を発揮する「Thermaltake TOUGHFAN 14」を使用しています。140mmサイズファン選びに迷ったらこれを買っておけば問題ない、高性能かつ高静音性なファンです。
「Thermaltake TOUGHFAN 14」をレビュー。最強140mmファンの登場か!?
Thermaltake TOUGHFAN 14

PCケースに入れた状態で長時間負荷をかけると、「AMD Radeon RX 7900 XT リファレンスモデル」のGPU温度は64度程度、ホットスポット温度は81度程度、ファン回転数は1800RPM程度でベンチ板上で測定した時と大差ありません。
ファン速度は比較的に高速なのでPCケースに入れた状態でもファンノイズはファン動作が分かる程度にハッキリと聞こえるものの、ウィングブレード構造のファンは風切り音が気になり難いので、距離にも依りますが煩く感じるほどではないと思います。
AMD Radeon RX 7900 XT Reference_Stress_IC

「AMD Radeon RX 7900 XT リファレンスモデル」のGPUクーラーは内排気ファンということもありPCケースの吸排気を最適化しないと冷却効率が下がるので、フロントx3/リアx1で140mmファンを設置して1000RPMで回しています。実際にPCケースへ組み込むユーザーはPCケースの吸排気にも注意してみてください。

加えて1時間のストレステスト終盤にサーモグラフィカメラ搭載スマートフォン「CAT S62 PRO」を使用してゲーム負荷時のグラフィックボード上の各所の温度をチェックしました。


「AMD Radeon RX 7900 XT リファレンスモデル」は、バックプレート表面や、背面や側面の隙間から確認できるPCB基板上のVRM電源回路やPCIE補助電源コネクタの付近の温度がホットスポットの最大値でも70度以下に収まっていました。(GPUクーラーやバックプレートでほぼ完全に覆われているので内部温度をサーモグラフィで正確に測ることはできないのですが)
AMD Radeon RX 7900 XT Reference_FLIR (1)
AMD Radeon RX 7900 XT Reference_FLIR (2)
AMD Radeon RX 7900 XT Reference_FLIR (3)
AMD Radeon RX 7900 XT Reference_FLIR (4)


AMD Radeon RX 7900 XTを含めていくつかのグラフィックボードについてサウンドレベルメーターを利用してゲーム負荷時のノイズレベルを測定・比較しました。
検証機材はベンチ台の上に平置きにしているので、サウンドレベルメーターをスタンドで垂直上方向に50cm程度離して騒音値を測定しています。
GPU-Noise-Test
この測定方法において電源OFF時の騒音値は30dB未満です。目安として騒音値が35dBを超えたあたりからファンノイズがはっきりと聞こえるようになりますが、35~38dB以下であればPCケースに入れてしまえばファンノイズが気になることはそうそうないと思います。40dB前後になるとベンチ台上で煩く感じ始め、45dBを超えるとヘッドホンをしていてもはっきり聞き取れるくらいになります。
A特性で測定しているのである程度は騒音値にも反映されていますが、同じ騒音値でも周波数(ファン回転数)が高いほど体感としては大きな音に感じやすく、また不快に感じたり感じなかったりは音の性質(細かい乱高下の有無や軸ブレ)にもよるので注意してください。

ノイズレベルの測定結果は次のようになっています。
「AMD Radeon RX 7900 XT」は、ベンチ板上とPCケース組み込み時でファン速度が1700~1800RPMと比較的に高速で、ノイズレベルは36~38dBとやや大きめです。PCケースに入れた状態でもハッキリとファン動作を認識できるファンノイズです。

「AMD Radeon RX 6900 XT リファレンスモデル」に採用されているバリアーリング付きファンは体感的にもファンノイズを煩く感じにくい特長があるとはいえ、やはりファンノイズは距離が近ければ煩く感じるかもしれないくらいの大きさです。
前世代RX 6900/6800 XTは静音性的にもリファレンスモデルで十分でしたが、RX 7900 XTではリファレンスモデルのコンパクトさを求めないのであれば、静音性に優れたAIBパートナーのオリファンモデルを選ぶ方が良さそうです。
AMD Radeon RX 7900 XT Reference_noise


AMD Radeon RX 7900 XTの消費電力と瞬間的な最大電源負荷を測定しました。
グラフィックボードの消費電力測定には、当サイトの検証に使用するためワンオフで特注した測定ツール「GPU Power Tester」を使用しています。GPU Power TesterはPCIEスロット経由とPCIE補助電源の消費電力を直接に測定しているので、シンプルにグラフィックボードそのものの消費電力をしることができます。
消費電力の測定にあたって検証するGPUランクによって負荷を変えており、通常はTime Spy(Extreme) グラフィックテスト1、一部のウルトラハイエンドGPUにはPort Royal 4K(GPU名に*マークを併記)をループ再生させ、各GPUがMaxTGPに張り付く状態を検証しています。
テスト全体から1ms間隔でモニタリングを行い、平均値を”消費電力”、最大値を”瞬間的な最大電源負荷”とします。



「AMD Radeon RX 7900 XT リファレンスモデル」の消費電力は308W、最大瞬間負荷は400Wでした。「AMD Radeon RX 7900 XT リファレンスモデル」のTGPは315Wに設定されていますが、GPUコア単体の電力制限257Wに対して負荷テスト中の平均電力も257W前後に張り付いていました。その状態で上のような実測値だったので、概ね公式仕様の通りの消費電力です。
とはいえ「AMD Radeon RX 7900 XT」はグラフィックボード単体で300W以上の消費電力を要求するので、安定した電力供給のためにも、電源容量800W以上の電源ユニットを組み合わせる必要があると思います。
あと電力制限について継続的な許容電力であるSustainedに加え、短期的な許容電力のShortというパラメータの2種類が設定されているせいか、瞬間最大負荷が平均値よりも+100W程度とかなり大きくなりました。瞬間的な変動なので電源ユニット側で吸収できる程度の負荷だと思いますが、品質の悪い電源だとこの負荷が発生した時に落ちることもあるかもしれないので、一応、注意してください。
AMD Radeon RX 7900 XT Reference_power



AMD Radeon RX 7900 XT レビューまとめ

最後に「AMD Radeon RX 7900 XT」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。

良いところ
  • 4K/120FPSゲーミングにも対応可能、4KゲーミングモンスターなGPU
  • RX 6900 XTと比較しても平均25%程度、ベストケースで40%近くも高速
  • ラスタライズ性能では競合のGeForce RTX 40よりコストパフォーマンスが高い
  • 高圧縮かつ高画質な次世代コーデックAV1のハードウェアエンコードに対応
  • 全長267mm、3スロット占有でウルトラハイエンドGPUとしてはコンパクトなグラボ
  • TGP315WのRX 7900 XTをノイズレベル36~38dBで冷やせるGPUクーラー
  • リファレンスモデル箱詰め品は14.9万円からとオリファンモデルよりも安価(発売当時)
悪いところor注意点
  • レイトレーシング性能は競合のGeForce RTX 40よりも低い
  • リファレンスモデルのGPUクーラーはファンノイズが大きめ
  • リファレンスモデルは初回後の流通は少なく、入手が難しい
  • RX 7900 XT 一般に価格が税込み14.9万円からと非常に高価 (2023年1月現在)

Radeon RX 7900 XTは、前世代で同じ価格帯のRadeon RX 6900 XTと比較して平均で25%程度、ベストケースでは40%近くも上回るという次世代GPUらしい卓越した性能を実現しています。
近年の超高画質なPCゲームですらラスタライズ式ならFSRのような超解像機能を必要とせず、素の最高画質設定で4K/60~120FPSを余裕でキープできます。
なお上位モデルRX 7900 XTXは+100ドルの価格差でRX 7900 XTより20%も性能が上となっており、国内価格で見ても両者は15万円と18万円からなので、明らかに人気がRX 7900 XTXへ偏っています。15万円以上のグラボでこの価格差&性能差だと仕方のない結果だと思います。RX 7900 XTXをこの価格設定のまま売り続けるなら、RX 7900 XTは100ドルくらい値下げしないと、やはりXTXに目移りする人が続出するかと。
AMD Radeon RX 7900 XT Reference_pefsum

4K解像度/120FPSにも対応可能なRadeon RX 7900 XTを使用するのであれば、4K/144Hz対応IPS液晶ゲーミングモニタの「ASUS TUF Gaming VG28UQL1A」や「LG 27GP950-B」や「MSI Optix MPG321UR-QD」、4K/120Hz有機ELテレビ「LG OLED TV C2/G2」や4K/120Hz有機ELモニタ「ASUS ROG Swift OLED PG42UQ」など、4K解像度&ハイリフレッシュレートなディスプレイと組み合わせてラグジュアリーなゲーミング環境を構築したいところです。
4K/120Hz+対応ゲーミングモニタのレビュー記事一覧へ
4K_120Hz+_Gaming Monitor


AMDがRadeon RX 7900 XTの比較対象に上げているGeForce RTX 4070 Tiに対して、ラスタライズ性能なら10~20%上回り、シンプルに上位互換です。
一方で、レイトレーシング表現を有効にするとRTX 4070 Tiに軍配が上がり、採用タイトルはまだ少ないもののAIフレーム生成機能DLSS 3を使用できるところにも差があります。(AMDも2023年中にはFSR 3を発表予定ですが)
北米希望小売価格には100ドルの差があるものの国内価格に限っては、RX 7900 XTもRTX 4070 Tiも15~17万円程度で販売されているので、ラスタライズ性能のコスパを取るか、レイトレーシング性能&DLSS3を取るかで選ぶ感じになると思います。

また全長300mm超かつ3~4スロットを占有する大型モデルの多いRTX 4070に対して、Radeon RX 7900 XTのリファレンスモデルは前世代RX 6900/6800 XTのリファレンスモデルと同じサイズで、PCIE補助電源も従来規格のまま8PIN×2となっており、既存システムからそのままアップグレードしやすいところも魅力です。

一方で従来製品と比較する場合、10万円以下で購入できる既存モデルのRX 6800 XTやRTX 3080でも4K解像度のPCゲーミングには十分な性能があるので(RX 6800 XTは4K解像度で性能が伸び悩むとはいえ)、+30%程度のラスタライズ性能、強化されたレイトレーシング性能(RX 6800 XT比で)、AV1エンコード対応といったRadeon RX 7900 XTの特長に+5万円の価値があるかどうかは各自で判断してください。


Radeon RX 7900 XTについて税込み15万円からという価格はRTX 40シリーズの対抗という意味ではポジティブなポイントであり、見方次第ではネガティブなポイントです。
ネーミングが最上位の9番台で899ドルという設定なので、RX 6900 XTの後継、RX 6800 XTの上位モデルという位置付けですが、RX 6900/6800 XTと比較して性能差が+30%程度で上から2番目のモデルとなると、やはりユーザー目線ではシンプルにRX 6800 XTの後継、699ドルの次世代ハイエンドとして期待するポジションだと思います。
XTXとXTで紛らわしいものの、RX 6800 XTに対しては置き換えではなく、上位モデルの追加として受け入れ易いところは、NVIDIAのRTX 4080/4070 TiとRTX 30の関係とは大きく違いますが。

余談ですが、899ドルのRadeon RX 7900 XTで既に”699ドルのRX 6800 XTより30%程度高速”のカードを切ってしまったので、RX 7000シリーズで699ドルなど下位モデルをどうするのかという心配もあります。
NVIDIAもそうですが、AMDでも10万円以下のグラフィックボードで同価格帯の性能向上は今世代、期待するのは難しいのかなと。


「AMD Radeon RX 7900 XT リファレンスモデル」のGPUクーラーについては、TGP315WのRX 7900 XTにフル負荷をかけ続けた場合、同測定環境においてノイズレベル36~38dB程度となっており、ファンノイズをしっかり認識できるものの、煩いと感じるかどうかは距離による、というくらいの静音性です。
同製品に採用されているバリアーリング付きファンは体感的にもファンノイズを煩く感じにくい特長があることもあって、静音性が悪いとまではいかないものの、良いとか優秀とか評価できるレベルではありません。

前世代RX 6900/6800 XTは静音性的にもリファレンスモデルで十分でしたが、RX 7900 XTでは全長267mmかつ3スロット占有に収まるというリファレンスモデルのコンパクトさを求めないのであれば、静音性に優れたAIBパートナーのオリファンモデルを選ぶ方が良さそうです。


以上、「AMD Radeon RX 7900 XT」のレビューでした。
AMD Radeon RX 7900 XT Reference

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