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4K解像度の有機EL(AMOLED)パネルを採用し、5000mAhバッテリーを内蔵する15.6インチサイズモバイルモニタ「INNOCN PU15-PRE」をレビューします。
自発光画素が生み出す完全な黒によって液晶パネルとは桁違いのコントラストを実現し、400nits超の高輝度も兼ね備えた「INNOCN PU15-PRE」が、PlayStation5などCSゲーム機用モニタとして、またミラーレス一眼など高画質カメラのスチル/Vlog用プレビューモニタとして通用するのか徹底検証していきます。
製品公式ページ:https://www.innocn.com/details/13/17.html
マニュアル:
INNOCN PU15-PRE レビュー目次
1.INNOCN PU15-PREの概要
2.INNOCN PU15-PREの開封・付属品
3.INNOCN PU15-PREの液晶モニタ本体
4.INNOCN PU15-PREのモニタカバーとスタンド
5.INNOCN PU15-PREのOSD操作・設定
6.INNOCN PU15-PREの発色・輝度・視野角
7.INNOCN PU15-PREの応答速度・表示遅延
8.INNOCN PU15-PREのHDR表示やCSゲーム機対応について
9.INNOCN PU15-PREのレビューまとめ
【機材協力:INNOCN.JP】
INNOCN PU15-PREの概要
「INNOCN PU15-PRE」は解像度が3840×2160の4K解像度で、画面サイズが15.6インチの有機ELモニタです。画素が自発光の有機ELパネルなので、100,000:1を超える液晶パネルとは2桁違いの圧倒的なコントラスト比を実現しています。発色についても100% DCI-P3をカバーしており非常に広色域、輝度は400cd/m^2です。「INNOCN PU15-PRE」に搭載されたビデオ入力はHDMI2.0(Mini)×1、USB Type-C×2 (DisplayPort Alternate Mode)の3系統です。全てのビデオ入力が4K/60Hzに対応します。「INNOCN PU15-PRE」はモバイルモニタながらステレオスピーカーを搭載しています。
「INNOCN PU15-PRE」はホストから電力供給を受けて動作する単純なモバイルモニタではなく、モニタに5000mAhのリチウムイオンバッテリーが内蔵され、公称のバッテリー寿命は4時間です。
「INNOCN PU15-PRE」の寸法は幅358mm x 高さ233mm x 奥行6.8mm、本体重量は940gです。スタンドカバーが標準で付属し、縦置きと横置きの両方に対応しています。
INNOCN PU15-PREの開封・付属品
まずは「INNOCN PU15-PRE」を開封していきます。「INNOCN PU15-PRE」は茶色段ボールのパッケージで梱包されており、その中にさらに、モニタ本体の化粧箱とスタンドカバーが封入された白いパッケージが収められています。
化粧箱の蓋を開くと、マニュアル等冊子類、半透明なビニールに保護された「INNOCN PU15-PRE」のモニタ本体が現れます。モニタ本体の下には、2つの白いパッケージがあり各種付属品が収められています。
「INNOCN PU15-PRE」はモバイルモニタながら7~8万円を超える高額な製品というだけあって、カラーキャリブレーションの証明書も付属します。
「INNOCN PU15-PRE」には、USB Type-C 3.1 Gen1通信ケーブル(DisplayPort Alternate Modeビデオ伝送対応)、Micro HDMI to HDMIケーブル、USB Type-C ACアダプタ、ACアダプタ用USB Type-Cケーブル、クリーニングクロスが付属します。
「INNOCN PU15-PRE」に付属するACアダプタには、USB Type-Cポートが1基だけ実装されており、付属の充電用Type-Cケーブルでモニタ本体と接続して充電します。Amazonで販売されている国内流通品についてはちゃんと国内コンセント対応でした。
「INNOCN PU15-PRE」の付属ACアダプタはUSB Power Delivery規格に対応しており、15V/3Aや20V/2.25Aのように最大45Wの給電が可能です。
INNOCN PU15-PREの液晶モニタ本体
続いて「INNOCN PU15-PRE」の液晶モニタ本体をチェックしていきます。「INNOCN PU15-PRE」は表示領域が15.6インチサイズのモバイルモニタで、寸法は横358mm x 縦233mm、A4用紙と比較すると次のようになっています。
「INNOCN PU15-PRE」の厚みを測定してみたところほぼ6.9mmと非常に薄いです。重量も本体のみで960g、付属の折りたたみ式モニタカバーを装着しても1400g程度なので持ち運びも苦になりません。
「INNOCN PU15-PRE」は表示領域の上下左右にある非表示領域もガラスパネルで一体になっています。ベゼル幅は上左右が約5mm、下が25mmです。表示領域と非表示領域を合わせたガラス面は横355mm×縦225mm程度でした。
モバイルモニタはディスプレイパネルに手指が触れやすく、特に「INNOCN PU15-PRE」はベゼルが狭いので、パネルの清掃用に専用のウェットティッシュとクリーニングクロスを用意しておくのがオススメです。皮脂汚れであれば専用品を使うと購入直後のように綺麗にできます。
・ゲーミングモニタを綺麗に拭く方法 - ゲーミングモニタの選び方[番外編]
「INNOCN PU15-PRE」の背面は薄緑がかったシルバーのアルミニウム製で堅牢かつ薄くしいデザインです。
「INNOCN PU15-PRE」のOSDメニュー操作用ボタンやIOポートが正面から見て右側にまとめて実装されています。中央にはスピーカーの穴が開いています。
「INNOCN PU15-PRE」の左側面にはIOポートやボタン類は実装されておらず、中央にスピーカーの穴だけが開いています。
「INNOCN PU15-PRE」の左側面の下側にはI/Oポートがあり、上から順にUSB Type-C端子(モニタの充電用)、ビデオ入力用USB Type-C端子、Mini HDMI端子が実装されています。
「INNOCN PU15-PRE」ではDP-Type-C双方向変換ケーブルのClub3D CAC-1557が正常に動作しました。USB Type-Cでビデオ出力できない一般的なデスクトップPCでもClub3D CAC-1557を使用すればDisplayPort経由でビデオ出力が可能です。
DisplayPort(PC)→Type-C(モニタ)で表示するDP-Type-C双方向変換ケーブルは、モニタとケーブルの相性で動作しないことがあるので注意してください。(そもそもモニタ側の問題で動作しないことも)
「INNOCN PU15-PRE」にはモニタ充電用にUSB ACアダプタが付属していますが、このACアダプタで充電したところ、20V電圧で充電されました。ただし一般的な5V電圧でも問題なく充電できました。充電時の電力も12~14W程度で大差ないので、電圧によらず充電速度もほぼ同じだと思います。
HDMIビデオ入力は小型端子のMini HDMIですが、HDMI2.0に対応しているので4K/60FPS映像を表示可能です。Mini HDMIのHDMI2.0対応ケーブルは探しても見つからないと思いますが、「エレコム mini HDMI ケーブル スーパースリム ブラック DH-HD14SSM BK (1m/1.5m/2m)」で正常動作を確認しています。
「INNOCN PU15-PRE」はHDMIビデオ入力を搭載しており、なおかつバッテリーも内蔵しているので、フィールドモニタや、Vlogのプレビューモニタとしても最適です。Amazonで販売されているMicro HDMI to Mini HDMIケーブルで正常に動作しました。
ビデオ入力用のUSB Type-C端子はDisplayPort Alternate Mode(USB 3.1やUSB3.2)に対応した最新モバイルPCやスマートフォンに接続することによってケーブル1本で映像入力と、モニタ内蔵バッテリーによる映像出力機器への電力供給が可能です。Surface Pro 7+を接続したところ、9V電圧で充電されました。
製品公式ページ等では2基のUSB Type-Cポートのうち、上側が充電用、下側がビデオ入力用と記載されていましたが、実際には充電用という上側のUSB Type-Cポートでもビデオ入力&外部機器への給電が可能でした。
ビデオ入力のType-C端子から「INNOCN PU15-PRE」の内蔵バッテリーによって給電するかどうかについてはOSD設定から明示的にオン/オフの切り替えが可能です。
USB Type-Cビデオ入力を備えたモバイルモニタについては、ビデオ伝送と一緒にモニタへ電力供給が可能な製品もありますが、「INNOCN PU15-PRE」は内蔵バッテリーから外部への電力供給は可能である一方、内蔵バッテリーの充電には非対応なので注意してください。
INNOCN PU15-PREのモニタカバーとスタンド
「INNOCN PU15-PRE」のモニタカバーとスタンドについてチェックしていきます。「INNOCN PU15-PRE」にはモニタスタンドとしても使用できる専用のモニタカバーが標準で付属します。
「INNOCN PU15-PRE」の付属モニタカバーはフレーム部分が、スマートフォンカバーなどでも見かけることの多い、柔らかいPVC製です。
上端を先に挿入して、下端をパチパチと嵌め込むと簡単に装着できます。
PVCレザーな保護カバーと、半透明なPVCフレームでモニタ全体を保護してくれます。
「INNOCN PU15-PRE」のモニタカバーは中央で合わせるように折り曲げることで(マグネットが内蔵されているので引っ付く)、スタンドとしても利用できます。
横置きについては2種類の折り曲げ方がありますが、どちらでもディスプレイの傾きはほぼ同じでした。
「INNOCN PU15-PRE」の付属スタンドカバーは45度の傾きで縦置きにも対応します。
「INNOCN PU15-PRE」の付属スタンドカバーは、保護カバーとしては十分な出来ですが、スタンドとしては縦・横ともに1段階で角度が決め打ちになってしまい、実用性は微妙です。とりあえず立てられる、という感じ。
本体の厚みが10mm程度に増えてもいいので、Surface Proのような無段階調整可能なキックスタンドを搭載して欲しかったところ。
INNOCN PU15-PREのOSD操作・設定
「INNOCN PU15-PRE」のOSD操作は、右上と右側面の上側に設置されている、電源ボタンを含めた3つのボタンを使用します。右上に実装されている電源ボタンは、長押しで電源のオン・オフ、短押しでOSDメニューの表示および選択項目の決定が割り当てられています。側面の2つのボタンで項目の切り替えや設定値の増減を行います。
電源ボタンを押下するとOSD設定メニューが表示されます。左側のアイコンに対していくつかの小項目が割り当てられており、小項目は右側に表示されます。UIは言語表示はほぼなく、アイコンと数字だけですが、見ればだいたい何の機能かは分かると思います。
大項目のうちいくつか(家アイコンやカラーパレットのアイコン)は小項目間の切り替えは可能ですが、大項目の選択に戻ることができず、OSDタイムアウトを待つしかない、といった具合で操作性には若干の難があります。
家アイコンの小項目は左から順に、ディスプレイ輝度、コントラスト調整、音量調整です。
四つ葉マークは画像モードの選択となっています。選択可能な画像モードは標準、文書、ムービー、ゲーム、Adobe RGB互換、sRGB互換、ブルーライトカットの7種類です。
上段で左から3番目のアイコンは色温度の設定です。6500K(暖色)、9300K(寒色)の2つのプリセットに加えて、RGB強度を0~100(標準は50)でマニュアル設定可能なUSERの3つから選択できます。
パレットアイコンの小項目は、色相、彩度、シャープネスです。
OSDアイコンではOSDタイムアウトの時間とOSDメニューの透明度を設定できます。
鍵と回転のアイコンは内蔵センサーによるオートローテーションのオン・オフの設定です。
バッテリーアイコンはUSB Type-C入力時にモニタの内蔵バッテリーから映像出力機器へ給電するかどうかを設定できます。アイコンが緑に点灯している時は給電を行います。
INNOCN PU15-PREの発色・輝度・視野角について
INNOCN PU15-PREの画質についてチェックしていきます。直接的な画質ではありませんがINNOCN PU15-PREのパネル表面は、PCモニタで一般的なアンチグレアではなく、鏡面な光沢仕上げです。発色においてメリットのある光沢面ですが、暗転時の映り込みが気になるのでご注意を。
「INNOCN PU15-PRE」はディスプレイパネルに有機ELパネルを採用していますが、PCモニタで一般的な液晶パネルには大きく分けてIPS液晶パネルとVA液晶パネルとTN液晶パネルの3種類があります。各社個別の製品によって個体差はあるものの、これらのパネルの特性を簡単にまとめると次のテーブルのようになります。
「INNOCN PU15-PRE」に採用されている有機ELパネルは、色再現性、コントラスト、応答速度など一般に画質に影響するほぼ全ての要素で液晶パネルを上回ります。特にコントラストや応答速度については”桁違い”な性能です。
反面、液晶パネルの中でも高価とされるIPS液晶パネルよりも輪をかけてさらに高価であり、また同じ表示が続いた時に、パネルがその残像を永続的に残してしまう”焼き付き”と呼ばれる症状があったりと独自のデメリットもあります。
ディスプレイパネルの簡易比較表 | ||||
有機EL | IPS液晶 | VA液晶 | TN液晶 | |
色再現性 | ◎ | ◎ | 〇 | △ |
コントラスト (黒レベルの低さ) |
◎◎◎ | 〇 | ◎ | △ |
視野角 | 〇 | 〇 | 〇 | △ |
応答速度 | ◎◎◎ コンマms級 |
〇 | △ |
◎ |
大型テレビ | 48~80インチ超まで幅広く採用 |
近年は採用なし |
||
最大輝度 | △ |
◎ バックライト次第で1000nits超も |
- |
|
ハロー現象 | 発生しない |
部分駆動では 発生する可能性あり |
- |
|
価格 (高RR) |
×× |
△ (×) |
△ | 〇 |
有機ELディスプレイというと、大型テレビに採用されているLG製パネルのRGB+W配列や、1ピクセル当りにRGB画素が1:1対応ではないペンタイル配列といったサブピクセル構造が有名で、いずれも細かい文字の輪郭がにじむ傾向にあります。
「INNOCN PU15-PRE」に採用されている最新のSamsung製AMOLEDパネルはRGB画素の配列や各画素のサイズこそ独特ですが、1ピクセルに対してRGB画素が1:1で配置されているフルRGBなので、文字や線の滲みは生じません。
液晶パネルの種類による性能の違いについてはこちらの記事も参照してみてください。
・IPS/VA/TN液晶パネルを比較解説 - ゲーミングモニタの選び方[4]
「INNOCN PU15-PRE」は、色再現性とコントラストに優れた有機ELディスプレイパネルなので、光沢表面処理も相まって一般的なゲーミング液晶モニタを圧倒する綺麗さでした。上下左右どこから見ても色の破綻はなく視野角も良好です。
有機ELパネルの特長として左右から見ると若干青みがかる傾向がありますが、有機ELの大型TV(LG製パネル)と比べると、「INNOCN PU15-PRE」ではその傾向は弱めであまり気になりません。どちらかというと、単色に近い表示において、ガラス面の干渉で虹色っぽくなる方が気になる感じです。
「INNOCN PU15-PRE」の発色について、色温度の標準設定である”6500K(暖色)”で、白色が極端に黄色や青色がかって見えることもなく、特に違和感はありませんでした。
色温度設定には6500K(暖色)と9300K(寒色)の2種類のプリセットがありますが、これらを切り替えても発色に違和感がある場合は、ユーザー設定でRGBのバランスを好みに合わせて整えてください。
ここからはカラーキャリブレータを使用して、色域・色再現性・輝度・コントラスト・均一性など画質に直結するモニタの性能について詳細な検証結果を見ていきます。なおこれらのモニタ性能(特に輝度の均一性)については同じ製品であっても個体差が大きいのでご注意ください。検証にはカラーフィルター式(色差式)のX-Rite i1 Display Pro PlusとDatacolor SpyderX、そして分光式(スペクトロメーター)のX-Rite i1 Basic Pro 3を使用しています。
余談ですが、分光式のi1 Basic Pro 3は20万円程と非常に高価ですが、一般的な用途であれば測定精度は十分なので、イラスト製作や写真編集でカラーキャリブレーションを行う場合、カラーフィルター式のX-Rite i1 Display ProかDatacolor SpyderX Proで十分です。ユーザー数の多さで面倒が少ないのはX-Rite i1 Displayだと思います。
「INNOCN PU15-PRE」のディスプレイ輝度について白色点の輝度をOSD設定別で測定しました。OSD上の輝度設定10%刻みで0%~100%の輝度変化は次のようになっています。
「INNOCN PU15-PRE」において、一般に見やすい明るさと言われる120cd/m^2は輝度25%前後、室内照明に依りますが個人的に見やすいと感じる明るさの180~200cd/m^2は輝度45%前後です。最大輝度が370~450cd/m^2程度なので屋外でも通用する明るさだと思います。
有機ELテレビの焼き付き防止や高輝度なHDR対応モニタに多い機能ですが、「INNOCN PU15-PRE」は白色の高輝度領域の広さに応じて全体の輝度が変わる自動輝度制御がSDR表示でも有効になっています。
上に掲載しているOSD設定に対する輝度グラフは画面全体を白色表示した時の中央輝度となっており、OSD設定で輝度100%にした時、10%部分の最大輝度は450cd/m^2程度でした。時間経過で輝度が下がることもなく、ハイライト部分の最大輝度は単純に面積だけに依存します。
「INNOCN PU15-PRE」のディスプレイ輝度の均一性(Uniformity)を検証しました。画面中央の輝度が約120cd/m^2になるOSD設定において、画面を横7×縦5の35分割として各位置の白色点の輝度を測定し、120cd/m^2を基準にしたパーセンテージで等高線マップにしています。
「INNOCN PU15-PRE」は最大差分7.1%、平均差分2.9%とディスプレイ輝度の均一性は極めて優秀です。液晶モニタではなかなかお目にかかれないレベルの綺麗な分布は、流石、自発光画素の有機ELといったところ。
写真で見てもこの通り、「INNOCN PU15-PRE」はディスプレイの末端まで輝度が下がることなく、目視では輝度の差は感じられません。
また有機ELパネルの自発光画素の特性、桁違いのコントラスト比による液晶パネルとの差を端的に表しているのが次の写真です。
バックライトの影響で黒色が完全に黒にならない液晶パネルに対して、画素1つ1つが自発光する有機ELでは黒背景の中で白色が煌々と浮かび上がります。
続いて「INNOCN PU15-PRE」の色域と色の正確性を検証してみました。
まずはモニタのOSD設定を標準設定のレースモードにして(ディスプレイ輝度のみ120cd/m^2になるように調整)、任意のカラープロファイルを適用しない場合、次のようになりました。
「INNOCN PU15-PRE」は標準モードでそのまま使用してもsRGBとDCI-P3の100%カバーに加え、95% Adobe RGBという非常に広い色域をカバーしています。
色の正確性は平均ΔEが0.49となっており、標準設定のままでもかなり優秀です。X-Riteによると『ΔE=1程度で2つの色を横にくっつけて見比べた時に違いが判別できるレベル』とのこと。
次にX-Rite i1 Basic Pro 3を使用してカラーキャリブレーションを行いました。キャリブレーション設定は下のスクリーンショットの通りですが、i1 Profilerの標準設定をそのまま採用しています。
「INNOCN PU15-PRE」では色温度を標準設定の6500K(R:46、G:47、B50)で問題ありませんが、一応、赤が少し弱いと表示されたので、手動設定で(R:47、G:47、B50)にしました。
カラーキャリブレーション後にX-Rite i1 Basic Pro 3で行った品質検証(色の正確性の検証)の結果は次のようになっています。X-Rite i1 Basic Pro 3は分光式(スペクトロメーター)のカラーキャリブレータなので、測定精度はこちらの方が高いはずです。
X-Rite i1 Basic Pro 3で測定した色の正確性はΔE 0.9と優秀な数値です。
また分光型測色計(スペクトロメーター)で測定した輝度120cd/m^2における白色点のカラースペクトラムが次のようになっています。
カラースペクトラムから発色の良いモニタを見分けるざっくりとしたポイントは『RGB各色のピークが鋭く立ち上がり、かつ高さが同程度であること』です。一般的な液晶モニタは白色LEDバックライト(青色LEDを光源として赤緑(≒黄)蛍光体を組み合わせて白色を生成する)を採用しているので青色のピークが高くかつ鋭くなります。白色を基準として測定した場合、緑と赤のピークの高さは色温度のOSD設定で若干上下します。以上から簡単化すると『緑と赤のピークが鋭くなっているかどうか』をチェックすればカラースペクトラムの良し悪しがざっくりと判定できます。
「INNOCN PU15-PRE」については赤緑青の分離も綺麗で、いずれも急峻なピークを描いています。
INNOCN PU15-PREの応答速度・表示遅延
次にゲーミングモニタのハードウェア性能として特に重要な、「INNOCN PU15-PRE」の応答速度や表示遅延についてチェックしていきます。応答速度の確認には「UFO Test: Ghosting」を使用します。同テストではUFOが移動する背景カラーを選択できますが、今回の検証ではブラック/グレー/ホワイトの3色を選択しています。
背景カラーがブラックの場合は各液晶パネルにおいて応答速度は高速な数値を示すので、概ね理想的な応答を確認することになります。背景カラーがホワイトの場合の応答速度は、ドキュメントやウェブページでテキストをスクロールした時の文字の滲み度合いの参考になります。背景カラーがグレーの場合、中間色に移るまでの応答速度を比較することになるので、一般的なゲームプレイにおける物理的な残像の少なさの指標として参考になります。
5760FPS(96倍速)のスーパースローモーションカメラを使用して「INNOCN PU15-PRE」の応答速度を比較検証します。比較対象には、4K解像度/144Hz対応の「LG 27GN950-B」を使用し、60Hzリフレッシュレートで統一しています。
見ての通り有機ELパネルの応答速度は非常に高速で、走査線のような暗転をまたぐとコンマmsで画素の変化が完了しています。ただし、なぜか変化後も薄っすらと残像が残っています。
続いて「INNOCN PU15-PRE」の表示遅延(内部遅延)について測定を行いました。
モニタにはGPUのビデオ出力が送られてきてから実際にモニタに表示されるまで遅延が存在し、この遅延が大きいと例えば、FPSゲームでゲームパッドのトリガーやマウスのクリックによる操作からワンテンポ遅れて、マズルフラッシュが表示される、といった現象が発生します。人間は当然目で見てから操作するので、格闘ゲームやFPSゲームなど1,2フレームを争うような競技性の高いゲームにおいてはモニタの表示遅延が可能な限り小さいことが望まれます。
システム表示遅延やディスプレイ表示遅延の測定には、フォトセンサーを使用した特殊な測定機器「PC Gaming Latency Tester」を使用しています。当サイトのレビュー用に特注した機器なので、詳細についてはこちらの記事を参照してください。
「INNOCN PU15-PRE」やその他の比較モニタのディスプレイ表示遅延の測定結果は次のようになりました。測定方法的に遅延が2ms以下であればディスプレイ内部の表示遅延は誤差の範囲内で十分に小さいと考えてOKです。
「INNOCN PU15-PRE」はディスプレイ表示遅延が一般的なモニタよりも20ms程度大きいという結果になりました。有機ELパネルの焼き付き防止処理で遅延しているのでしょうか。
「INNOCN PU15-PRE」やその他の比較モニタのシステム表示遅延の測定結果は次のようになりました。この測定値は一般的なPCゲームにおける操作から画面表示の変化までの遅延に一致します。
ディスプレイ表示遅延が20ms程度大きいので、トータルのシステム表示遅延も一般的な60Hzモニタよりも20ms程度大きくなります。とはいえ1フレーム程度の遅延なので、操作に不快感を覚えることはないはずです。
INNOCN PU15-PREのHDR表示やCSゲーム機対応について
最後に「INNOCN PU15-PRE」のHDR表示やCSゲーム機の対応(4Kエミュレートなど)についてチェックしていきます。HDR表示やCSゲーム機対応について | |
HDMI ver, ポート数 |
HDMI2.0×1 (Mini HDMI) |
HDR表示 | 非対応 |
VRR同期 | 非対応 |
カラーフォーマット | HDMI: 4K/60Hz/8bit RGB (USB Type-C: 4K/60Hz/10bit RGB) |
ピーク輝度(実測) | 450cd/m^2 |
輝度認証 | - |
ローカルディミング | 対応(画素自発光のOLED) |
4Kエミュレート | 4Kネイティブ対応 |
PlayStation 5 | 4K/60FPS対応 |
Xbox Series X/S | 4K/60FPS対応 |
HDR表示への対応やカラーフォーマットについて
「INNOCN PU15-PRE」はUSB Type-CとHDMIのいずれもHDR表示に対応していません。HDR表示におけるディスプレイ輝度やローカルディミングについて
「INNOCN PU15-PRE」は画素自発光の有機ELパネルを採用したモニタなので、画素レベルでローカルディミングに対応しており、LEDバックライト式の液晶モニタと違い、輝点に引っ張られて暗所のバックライトが点灯するハロー現象は生じず、暗所は完全な黒色になります。CSゲーム機接続時の4KエミュレートやHDCP対応について
「INNOCN PU15-PRE」のHDMIサブ入力はHDMI2.0に対応しているので、PlayStation 5やXbox Series X/Sを組み合わせた場合、4K/60Hzの表示が可能です。HDCP2.2もサポートしています。INNOCN PU15-PREのレビューまとめ
最後に「INNOCN PU15-PRE」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- 画面サイズ15.6インチでモバイルモニタとしてはちょうどいいサイズ
- 発色、視野角、コントラスト、応答速度などオールラウンドで画質に優れた有機ELパネル
- ディスプレイパネルは発色に有利な光沢仕上げ
- ビデオ入力はUSB Type-C(DP Alt Mode)とMini HDMI2.0の計2系統
- 4時間動作が可能な5000mAhの大容量バッテリーを搭載
- ステレオスピーカーを内蔵
- 10点タッチパネル機能を搭載
- 縦横モニタスタンドを兼ねたモニタカバーが標準で付属
- モバイルモニタながら7万円以上と高価
- 付属カバーのスタンド機能は角度調整に非対応
- USB Type-Cケーブル1本でモニタの充電&ビデオ表示には非対応
- ボタンが少なく、OSDの操作性が悪い
- HDR表示に非対応
自発光画素の有機ELパネルを採用した「INNOCN PU15-PRE」は、100,000:1を超える文字通り桁違いコントラスト性能によって既存の液晶モニタでは実現するのが難しい鮮やかな映像表示が可能です。
有機ELパネルのもう1つの特長である応答速度については、近年の高速なIPS液晶なら実用上、60Hz程度のリフレッシュで残像感に差が出ることもないので(60Hzくらいだと応答速度以前にモージョンブラーが問題になる)、あまり気にする必要はありません。
120HzやVRRは仕方ないとして、HDRに非対応なところは玉に瑕ですが、HDRに対応する液晶モバイルモニタと比較しても、「INNOCN PU15-PRE」のほうが飛び抜けて高画質なので、15.6インチサイズで大きさに問題がないのであれば、PlayStation 5やXbox Series Xと組み合わせるゲーミングモニタとしてオススメです。
また「INNOCN PU15-PRE」は5000mAhの大容量バッテリーを内蔵しているところも大きな特徴です。屋外でも通用する400nits超の高輝度表示も可能なので、スチル用フィールドモニタやVlogのプレビューモニタとしても活躍が期待できる製品だと思います。
以上、「INNOCN PU15-PRE」のレビューでした。
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15.6インチ4K有機ELパネルを採用、5000mAhバッテリーも内蔵するモバイルモニタ「INNOCN PU15-PRE」をレビュー。
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) August 2, 2021
PlayStation5用ゲーミングモニタやミラーレス一眼のスチル/Vlog用モニタとして通用するのか徹底検証https://t.co/PTRZ4WY2Hp pic.twitter.com/1MybO3zKr8
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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